説明

レンズ装置

【課題】レンズ鏡胴本体に対して回転するとともに光軸方向にスライド移動するリング部材のスライド移動による切替え時の感触を向上させる。
【解決手段】レンズ鏡胴本体10に対してエンドレス回転が可能に配設されるとともに、光軸方向の第1のスライド位置と第2のスライド位置との間でスライド自在に配設された第1フォーカスリング20を第1のスライド位置又は第2のスライド位置に移動させる際に、第1フォーカスリング20は、スライド位置の中間位置を越えると、電磁石14と永久磁石26との反発力によりスライド方向に付勢され、第2フォーカスリング30又は第3フォーカスリング40と連結する移動端まで移動させられる。また、電磁石14は磁力が調整可能になっており、これにより第1フォーカスリング20の切替え時の操作感触を任意に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ装置に係り、特にレンズ装置のリング部材のクリック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビの取材等で使用される持ち運び可能なENG(Electronic News Gathering)カメラに用いられるレンズ装置において、フォーカスリングを手動で回動操作することによりフォーカスレンズを移動させて焦点調節を行うマニュアルフォーカス(MF)時に、フォーカスリングの回動位置に応じた絶対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力する第1のMFモードと、フォーカスリングの回転量に応じた相対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力する第2のMFモードとを有するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
図12は特許文献1に記載のレンズ装置の要部の拡大断面図である。
【0004】
このレンズ装置は、レンズ鏡胴本体の一部を構成する前固定環1の外周部に、第1フォーカスリング2、及び第2フォーカスリング3がそれぞれ回動可能に配置され、第1フォーカスリング2は、回動範囲が規制されておらず、エンドレス回転させることができるとともに、光軸方向にスライド可能に配設され、第2フォーカスリング3は、ストッパーにより約120度の範囲内で回動できるように規制されている。
【0005】
第1フォーカスリング2と第2フォーカスリング3とが対向する端面には、それぞれ鋸歯状のクラッチ部2A、3Aが形成されており、図13に示す状態では、クラッチ部2A,3Aが連結(噛合)し、第1フォーカスリング2と第2フォーカスリング3とが一体的に回動する。従って、この状態で、第1フォーカスリング2を手動で回動させる場合には、約120度の範囲内でのみ回動させることができる。
【0006】
一方、第1フォーカスリング2を、クリック用弾性部材4を乗り越えるように前方にスライドさせると、前記クラッチ部2A、3Aの連結が外れる。これにより第1フォーカスリング70は、エンドレス回転できるようになる。
【0007】
クリック用弾性部材4は、図14に示すように前固定環1の周囲を3等分割した各位置に配設され、その中央部の上面にかまぼこ形状を有する凸部4Aが形成されている。第1フォーカスリング2の内周面のうちのほぼ中央部の内周面には、2つの斜面を有する断面三角形状の当接部2Bが形成されている。この第1フォーカスリング2をスライド操作し、第1フォーカスリング2の当接部2Bが、クリック用弾性部材4の凸部4Aを押し下げて乗り越える、図12に示す位置に移動すると、第1フォーカスリング2の端部に形成されたクラッチ部2Aが、第2フォーカスリング72の端部に形成されたクラッチ部3Aと噛み合い、第1フォーカスリング70と第2フォーカスリング72とが一体的に回動できるようになる。
【0008】
一方、第1フォーカスリング2を、図12上で左方向にスライド操作し、第1フォーカスリング2の当接部2Bが、クリック用弾性部材4の凸部4Aを押し下げて乗り越える所定の位置に移動すると、クラッチ部2A、3Aの連結が外れる。これにより、第1フォーカスリング2はエンドレス回転が可能になる。
【0009】
そして、第1フォーカスリング2をスライド操作し、第1フォーカスリング2の当接部2Bが、クリック用弾性部材4の凸部4Aを乗り越えて移動するときにクリック力が生じ、クリック感が得られる。
【0010】
また、クリック感を操作者に付与するために、マグネットを使用した操作モード選択装置が提案されている(特許文献2)。
【0011】
この操作モード選択装置は、操作ダイヤルにN極とS極とを交互に同一円周上に設けたクリック感用可動マグネットを配置し、このクリック感用可動マグネットと対向する位置に、同一ピッチで異なる磁極を交互に同一円周上に設けたクリック感用固定マグネットを配置して構成され、前記クリック感用固定マグネットとの間の吸引力、反発力によって生じるクリック感を操作ダイヤルに付与するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−43706号公報
【特許文献2】特開2010−176971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載のレンズ装置のクリック機構は、第1フォーカスリング2のスライド位置が切り替わるときの感触(「カチッ」というクリック感)が弱いという問題がある。また、第1フォーカスリング2がクリック用弾性部材4を乗り越えた際に、クリック用弾性部材4により付与される両端側への引き込み力が弱いという問題がある。尚、クリック用弾性部材4の弾性力を強くすることにより上記の問題を解決することが考えられるが、この場合には、クリック用弾性部材4を乗り越えるための第1フォーカスリング2の操作力が過大となり、操作しにくくなるという問題がある。
【0014】
一方、特許文献2に記載の操作モード選択装置は、操作ダイヤルを所定の角度ずつ回動させる毎に、クリック感用固定マグネットとクリック感用可動マグネットとの相互の吸引力及び反発力とによりクリック感が得られるが、このクリック感は、操作ダイヤルを回動させる際に生じる操作ダイヤルの負荷の変化であり、操作ダイヤルの移動後に「カチッ」という感触が指先に返ってくるものではない。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レンズ鏡胴本体に対して回転するとともに光軸方向にスライド移動するリング部材のスライド移動による切替え時の感触を向上させることができるレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために本発明の一の態様に係るレンズ装置は、レンズ鏡胴本体に対してエンドレス回転が可能に配設されるとともに、光軸方向の第1のスライド位置と第2のスライド位置との間でスライド自在に配設された第1のリング部材と、前記レンズ鏡胴本体に対して所定の回動範囲内のみで回動自在に配設された第2のリング部材であって、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置に移動すると、該第1のリング部材の一方の側面と当接可能に配設された第2のリング部材と、前記レンズ鏡胴本体に対してエンドレス回転が可能に配設された第3のリング部材であって、前記第1のリング部材が前記第2のスライド位置に移動すると、該第1のリング部材の他方の側面と当接可能に配設された第3のリング部材と、前記レンズ鏡胴本体の外周面に設けられた電磁石と前記第1のリング部材の内周面に設けられた永久磁石とからなるクリック機構であって、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置と第2のスライド位置との中間位置に位置するときに、互いに反発するようにそれぞれS極、N極が設けられ、前記第1のリング部材が前記中間位置からずれると、該第1のリング部材を前記第2のリング部材の端面又は第3のリング部材の端面に押圧するように磁力により付勢するクリック機構と、前記電磁石の磁力を調整することにより前記第1のリング部材の切替え時の操作感触を調整する操作感触調整手段と、を備えたことを特徴としている。
【0017】
本発明の一の態様によれば、前記レンズ鏡胴本体の外周面に設けられた電磁石と前記リング部材の内周面に設けられた永久磁石とからなるクリック機構は、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置と第2のスライド位置の中間に位置するときに、互いに反発するようにそれぞれS極、N極が設けられ、前記第1のリング部材が前記中間位置からずれると、該第1のリング部材を前記第2のリング部材の端面又は第3のリング部材の端面に押圧するように磁力により付勢することができる。前記第1のリング部材をスライドさせる際に、第1のリング部材が中間位置に近づくにつれて大きな操作力を必要とし、中間位置を越えると、第1のリング部材は、電磁石と永久磁石との磁力により他方のスライド位置に移動させられ、第2又は第3のリング部材に当接するとともに、磁力により付勢される。この第1のリング部材の当接時に良好な切替え感触を得ることができ、また、第1のリング部材のスライド位置が中間位置の前後で第1のリング部材の操作力が変化し、クリック感を得ることができる。更に、前記操作感触調整手段により前記電磁石の磁力を調整することにより前記第1のリング部材の切替え時の操作感触を任意に調整することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係るレンズ装置において、前記電磁石及び永久磁石の少なくとも一方は、リング状に形成されていることを特徴としている。これにより、前記第1のリング部材の回転位置にかかわらず、前記電磁石と永久磁石との間で磁力が得られるようにしている。
【0019】
本発明の更に他の態様に係るレンズ装置において、前記第1のリング部材のスライド方向の両端面に設けられた第1の磁性部材と、前記第2のリング部材及び第3のリング部材の前記第1のリング部材の端面に対向する面に設けられた第2の磁性部材と、を備え、前記第1、第2の磁性部材の少なくとも一方は永久磁石により構成され、前記第1のリング部材は、該第1のリング部材の第1のスライド位置への移動時又は第2のスライド位置への移動時に磁力により前記第2のリング部材又は第3のリング部材と吸着されることを特徴としている。
【0020】
本発明の更に他の態様によれば、前記第1のリング部材の一方の端面に設けられた第1の磁性部材と、前記第2のリング部材の前記第1のリング部材の一方の端面に対向する面に設けられた第2の磁性部材とが当接し、前記第1、第2の磁性部材の少なくとも一方の磁石による磁力により吸着させることができ、同様に第1のリング部材を第2のスライド位置に移動させると、第1のリング部材の他方の端面に設けられた第1の磁性部材と、前記第3のリング部材の前記第1のリング部材の他方の端面に対向する面に設けられた第2の磁性部材とが当接し、前記第1、第2の磁性部材の少なくとも一方の磁石による磁力により吸着させることができる。上記磁力による第1、第2のリング部材間の当接時、又は第1、第3のリング部材間の当接時に良好な切替え感触(「カチッ」という指先に返ってくる感触)を得ることができる。また、前記第1のリング部材と第2のリング部材とは磁力により吸着するため、第1のリング部材を操作することにより第2のリング部材を所定の回動範囲内で回動させることができ、前記第1、第2の磁性部材は、第1のリング部材から第2のリング部材に回動力を伝達し、又は切断するためのクラッチ部として機能することができる。
【0021】
本発明の更に他の態様に係るレンズ装置において、前記第1の磁性部材及び第2の磁性部材の少なくとも一方は、リング状に形成されていることを特徴としている。これにより、前記第1のリング部材の回転位置にかかわらず、前記第1、第2の磁性部材の間で吸着力が得られるようにしている。
【0022】
本発明の更に他の態様に係るレンズ装置において、前記第1のリング部材の前記第1のスライド位置への移動時に前記第2のリング部材の回動位置に応じた絶対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力する第1のマニュアルフォーカスモードと、前記第1のリング部材の前記第2のスライド位置への移動時に前記第1のリング部材又は第3のリング部材の回転量に応じた相対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力する第2のマニュアルフォーカスモードとを切り替えるフォーカスモード切替え手段を備えたことを特徴としている。これにより、前記第1のリング部材を前記第1のスライド位置に移動させると、第1のマニュアルフォーカスモードに切り替えられ、前記第1のリング部材により回動可能な第2のリング部材の回動位置に応じた絶対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力することができ、また、前記第1のリング部材を前記第2のスライド位置に移動させると、第2のマニュアルフォーカスモードに切り替えられ、前記第1のリング部材の回動量、又は第1のリング部材により回動可能な第3のリング部材の回転量に応じた相対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力することができる。
【0023】
本発明の更に他の態様に係るレンズ装置において、前記第1のリング部材の光軸方向の第1のスライド位置又は第2のスライド位置への移動に伴って、前記第1のリング部材と第2のリング部材とを機械的に連結又は非連結させるクラッチ部を設けたことを特徴としている。これにより、前記第1のリング部材と第2のリング部材とが当接すると、前記第1のリング部材と第2のリング部材とが機械的に連結されるため、前記第1のリング部材の回動力を前記第2のリング部材に確実に伝達することができる。
【0024】
本発明の更に他の態様に係るレンズ装置において、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置又は第2のスライド位置にある場合には、前記電磁石への通電をオフし、又は微弱電流に切り替え、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置又は第2のスライド位置から移動すると、前記電磁石への通電をオンにする制御手段を備えたことを特徴としている。前記電磁石を常時通電すると、消費電力が過大になるが、前記第1のスライド部材がスライド移動するときのみ通電することにより、消費電力を低減することができる。
【0025】
本発明の更に他の態様に係るレンズ装置において、前記第1のリング部材の前記第1のスライド位置又は第2のスライド位置からの移動を、前記電磁石の回路に生じる誘導起電力により検出する検出手段を備えたことを特徴としている。前記第1のリング部材をスライド移動させると、同時に永久磁石も移動することになり、前記電磁石のコイルに誘導起電力が発生する。前記検出手段は、この誘導起電力を検出することにより前記第1のリング部材の移動を検知する。
【0026】
本発明の更に他の態様に係るレンズ装置において、前記操作感触調整手段は、前記電磁石をオンする際に、該電磁石への通電の立ち上がり特性を変更する手段を更に備えたことを特徴としている。前記電磁石をオンする際に、該電磁石への通電の立ち上がり特性を変更可能にすることにより、前記第1のリング部材を移動させる際の初期の操作感触を調整することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、レンズ鏡胴本体に対して回転するとともに光軸方向にスライド移動するリング部材のスライド移動時に、磁力の調整が可能な電磁石と永久磁石との間に生じる磁力により、リング部材のスライド移動時の切替え時の切替え力を調整できるようにしたため、操作者の好みの切替え感触を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るレンズ装置の第1の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリングがスライド方向の中間位置に位置している状態を示す図
【図2】本発明に係るレンズ装置の第1の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリングがスライド方向の一端に位置している状態を示す図
【図3】本発明に係るレンズ装置の第1の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリングがスライド方向の他端に位置している状態を示す図
【図4】図2の要部拡大図
【図5】電磁石の第1の実施形態を示す回路図
【図6】電磁石の第2の実施形態を示す回路図
【図7】電磁石の制御動作を示すフローチャート
【図8】電磁石の第3の実施形態を示す回路図
【図9】本発明に係るレンズ装置の第2の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリングがスライド方向の中間位置に位置している状態を示す図
【図10】本発明に係るレンズ装置の第2の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリングがスライド方向の一端に位置している状態を示す図
【図11】本発明に係るレンズ装置の第2の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリングがスライド方向の他端に位置している状態を示す図
【図12】従来のレンズ装置の要部断面図
【図13】従来のレンズ装置の第1フォーカスリングと第2フォーカスリングとが連結された状態を示す斜視図
【図14】従来のレンズ装置のレンズ鏡胴本体の要部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明に係るレンズ装置の実施の形態について説明する。
【0030】
本発明に係るレンズ装置は、例えば民生用のビデオカメラ、テレビ放送用のENGカメラ、監視用カメラ等に適用されるレンズ装置である。
【0031】
光学系の焦点位置を変更するフォーカスレンズは、光軸方向に移動可能に配設され、ボイスコイルモータ(VCM)等の動力によって電動で光軸方向に駆動されるようになっている。
【0032】
レンズ装置には、AF/MF切替えスイッチ、ノンロック式のAFプッシュスイッチ等の操作スイッチが設けられており、これらのスイッチの操作によりフォーカスレンズを制御できるようになっている。
【0033】
AF/MF切替えスイッチは、被写体像のコントラストが最大になるように自動的にフォーカスレンズを移動させて焦点調節を行うオートフォーカス(AF)モードと、後述する第1フォーカスリング20を手動で回転操作することによりフォーカスレンズを移動させて焦点調節を行うマニュアルフォーカス(MF)モードとを切り替えるスイッチである。AFプッシュスイッチは、AF/MF切替えスイッチによりMFモードに切り替えられている場合に、キートップが押下(プッシュ)されている期間だけAFモードに切り替えるスイッチである。
【0034】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係るレンズ装置の第1の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリング20がスライド方向の中間位置に位置している状態に関して示している。
【0035】
図1において、レンズ装置のレンズ鏡胴本体10は、非磁性体であるアルミ合金により形成されており、このレンズ鏡胴本体10には、それぞれポリカーボネート等の樹脂からなる第1フォーカスリング20、第2フォーカスリング30及び第3フォーカスリング40がそれぞれ回動可能に配置されている。
【0036】
第1フォーカスリング20は、回転範囲が規制されておらず、エンドレス回転が可能に配設されるとともに、光軸方向(矢印A,B方向)にスライド可能に配設されている。また、第2フォーカスリング30は、図示しないストッパーにより約120度の範囲内で回動できるように規制され、第3フォーカスリング40は、回転範囲が規制されておらず、エンドレス回転が可能に配設されている。
【0037】
前記レンズ鏡胴本体10の外周面の一部、前記第2フォーカスリング30及び第3フォーカスリング40により、所定幅を有する周状の凹溝12が形成され、第1フォーカスリング20の下面側には、前記凹溝12と係合する凸部20Aが形成されている。
【0038】
上記第1フォーカスリング20の凸部20Aの両側面には、それぞれ磁石(永久磁石)22、24が配設され、これらの磁石22、24に対向する第2フォーカスリング30、及び第3フォーカスリング40の側面には、それぞれ磁石(永久磁石)32、42が配設されている。
【0039】
ここで、前記磁石22と磁石32、及び磁石24と磁石42の各一対の磁石は、互いに吸着力が作用するように(N極とS極とが対向するように)磁極の方向が決定されて配置されている。また、前記磁石22と磁石32、及び磁石24と磁石42の各一対の磁石のうちの少なくとも一方は、リング状に形成されており、これにより、第1フォーカスリング20の回転位置にかかわらず、上記磁石間で吸着力が得られるようになっている。
【0040】
また、レンズ鏡胴本体110の外周面(第2フォーカスリング30と第3フォーカスリング40との間の外周面)には、電磁石14が設けられている。
【0041】
一方、第1フォーカスリング20の内周面(電磁石14と対向する位置)には、磁石(永久磁石)26が配設されている。尚、この実施形態では、レンズ鏡胴本体10側の電磁石14は、通電時に図1上で上方がN極となり、下方がS極となるように構成され、第1フォーカスリング20側の磁石26は、電磁石14と対向する側がN極になっている。
【0042】
図1に示すように第1フォーカスリング20は、スライド方向(矢印AB方向)の中間位置に位置しており、この状態では、レンズ鏡胴本体10側の電磁石14と第1フォーカスリング20側の磁石26とは、互いに反発するように同じ極性の磁極が対向している。また、電磁石14と磁石26のうちの少なくとも一方は、リング状に形成されており、これにより、第1フォーカスリング20の回転位置にかかわらず、電磁石14と磁石26との間で反発力等の磁力が得られるようになっている。
【0043】
更に、第2フォーカスリング30及び第3フォーカスリング40の周囲には、それぞれ歯車34,44が形成されており、これらの歯車34,44は、それぞれ図示しない絶対位置検出型センサ(アブソリュートエンコーダ)、及び相対位置検出型センサ(インクリメンタルエンコーダ)の検出軸の歯車に連結している。
【0044】
上記絶対位置検出型センサにより第2フォーカスリング30の絶対的な回転位置を検知することができるとともに、相対位置検出型センサにより第3フォーカスリング40の相対的な回転量を検知することができるようになっている。
【0045】
次に、上記構成の第1の実施形態のレンズ装置の作用について説明する。
【0046】
図1は、第1フォーカスリング20がスライド方向(矢印AB方向)の中間位置に位置している状態に関して示している。この状態では、磁石22と磁石32との間隔、及び磁石24と磁石42との間隔が同じため、同じ磁力で互いに吸引して釣り合っているが、この状態は不安定な状態である。また、通電された電磁石14と磁石26とは、互いに同じ極性の磁極(N極)が対向し、反発力が発生するため、この状態は不安定な状態である。従って、通常、この中間位置で第1フォーカスリング20が停止することはない。
【0047】
図2及び図3は、それぞれ本発明に係るレンズ装置の第1の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリング20がスライド方向(矢印A方向)の一端の第1のスライド位置に位置している状態、及び第1フォーカスリング20がスライド方向(矢印B方向)の他端の第2のスライド位置に位置している状態に関して示している。
【0048】
図2に示すように、第1フォーカスリング20が手動により矢印A方向にスライド操作され、図1に示した中間位置を越えると、第1フォーカスリング20は、磁石22と磁石32との間に生じる磁力により吸引されて矢印A方向の移動端(第1のスライド位置)まで移動する。
【0049】
同様に、第1フォーカスリング20が図1に示した中間位置を越えると、電磁石14と磁石26との反発力により、第1フォーカスリング20は、矢印A方向の移動端まで移動する。
【0050】
図4は図2の要部拡大図である。図4に示すように電磁石14と磁石26との間では、同じ極性の磁極同士により反発力が発生し、この反発力により第1フォーカスリング20には、第2フォーカスリング30と当接する付勢力が加わる。
【0051】
このように第1フォーカスリング20は、磁石22と磁石32との間に生じる磁力により吸引されるとともに、電磁石14と磁石26との反発力により、矢印A方向の第1のスライド位置まで移動する。そして、第1フォーカスリング20の矢印A方向の移動端では、第1フォーカスリング20側の磁石22が第2フォーカスリング30側の磁石32に当接し、磁石22と磁石32とが吸着固定される。上記磁石22、32間の吸着力、及び電磁石14と磁石26による付勢力による当接時に、第1フォーカスリング20に触れている指先には、「カチッ」という感触が伝わり、良好な切替え感触が得られる。
【0052】
ここで、第1フォーカスリング20を回転させると、第1フォーカスリング20に磁力により吸着している第2フォーカスリング30が同時に回転する。第2フォーカスリング30は、前述したように回動範囲が約120°に制限されているため、第1フォーカスリング20は、この制限された回動範囲内で回動可能になる。
【0053】
一方、図2に示す状態から第1フォーカスリング20を、磁石22と磁石32との吸着力、及び電磁石14と磁石26による付勢力に抗して矢印B方向にスライド操作し、第1フォーカスリング20が、図1に示した中間位置を越えると、第1フォーカスリング20は、図3に示すように磁石24と磁石42との間に生じる磁力により吸引されるとともに、電磁石14と磁石26との反発力により、矢印B方向の移動端(第2のスライド位置)まで移動する。そして、第1フォーカスリング20の矢印B方向の移動端では、第1フォーカスリング20側の磁石24が第3フォーカスリング40側の磁石42に当接し、磁石24と磁石42とが吸着固定される。上記磁石24、42間の吸着力、及び電磁石14と磁石26による付勢力による当接時に、第1フォーカスリング20に触れている指先には、「カチッ」という感触が伝わり、良好な切替え感触が得られる。
【0054】
ここで、第1フォーカスリング20を回転させると、第1フォーカスリング20に磁力により吸着している第3フォーカスリング40が同時に回転する。第3フォーカスリング40は、前述したように回転範囲が規制されておらず、エンドレス(エンド端なし)で回転可能に配設されているため、第1フォーカスリング20は、第3フォーカスリング40とともにエンドレスで回転させることができる。
【0055】
ところで、前述したようにAF/MF切替えスイッチによりMFモードに切り替えられると、第1フォーカスリング20の手動操作によるフォーカスレンズの移動制御が可能になる。また、MFモードに切り替えられている場合には、第1フォーカスリング20のスライド位置に応じて、フルMFモード(エンド端付き)とAF/MFモード(エンド端なし)との切替えが行われる。
【0056】
第1フォーカスリング20のスライド位置(図2に示した第1のスライド位置、及び図3に示した第2のスライド位置)は、第1フォーカスリング20のスライド位置に応じてON/OFFする、フォトインタラプタやマイクロスイッチ等の検出手段(図示せず)の検出信号により検知することができる。そして、フォーカスモード切替え手段は、前記検出手段により第1フォーカスリング20が図2に示した第1のスライド位置にあることが検知されると、フルMFモード(エンド端付き)に切り替え、第1フォーカスリング20が図3に示した第2のスライド位置にあることが検知されると、AF/MFモード(エンド端なし)に切り替える。
【0057】
図2に示したように第1フォーカスリング20と第2フォーカスリング30とが連結され、MFモードとしてフルMFモード(エンド端付き)に切り替えられると、第2フォーカスリング30の歯車34に連結している絶対位置検出型センサからの絶対位置信号(至近から無限遠の範囲内の撮影距離を指令する信号)に基づいてフォーカスレンズが駆動制御される。このようにフルMFモードに切り替えられると、第1フォーカスリング20を手動で操作することにより、フォーカスレンズを所望の撮影距離に対応する位置に移動させることができる。尚、第1フォーカスリング20は、ストッパーによって回動範囲が規制されている端付きの第2フォーカスリング30に連結しているため、その回動範囲が第2フォーカスリング30と同様に規制され、至近端から無限遠端に対応する回動範囲内で回動できるようになっている。
【0058】
上記フルMFモードは、第1フォーカスリング20が第2フォーカスリング30を介して回動範囲が制限されており、操作者は、第1フォーカスリング20がエンド端に到達したときの操作感によってフォーカスレンズが至近端又は無限遠端に到達したことを認識することができる。このような第1フォーカスリング20のみによるフォーカス操作は、本職のカメラマン等が使い慣れた方式である。
【0059】
一方、図3に示したように第1フォーカスリング20と第3フォーカスリング40とが連結され、MFモードとしてAF/MFモード(エンド端なし)に切り替えられると、第1フォーカスリング20を回転させることによりフォーカスレンズを移動させるMFモードと、前述したAFプッシュスイッチの押下によるAFモードとを適宜使い分けてフォーカス制御を行うことができる。
【0060】
即ち、AF/MFモード時に第1フォーカスリング20が操作されると、第1フォーカスリング20とともに回転する第3フォーカスリング40の歯車44に連結している相対位置検出型センサからの相対位置信号に基づいて、第1フォーカスリング20の回動量に対応した移動量だけフォーカスレンズを移動させることができる。
【0061】
尚、AF/MFモード時にAFプッシュスイッチの押下によりAFモードに一時的に切り替え、その後、AFプッシュスイッチから手を離してMFモードに切り替えると、AFモードによって自動的に合焦したフォーカスレンズの位置を引き継いで、第1フォーカスリング20を操作した分だけフォーカスレンズを変位させることができ、使い勝手がよくなる。
【0062】
また、第1の実施形態では、一対の磁石22と磁石32、及び磁石24と磁石42を使用しているが、一対の磁石のうちの一方は、磁石の替わりに鉄等の軟磁性材料からなる磁性部材としてもよい。
【0063】
<電磁石の制御>
図5は電磁石14の第1の実施形態を示す回路図である。図5に示すように、スイッチ50をONにすると、直流電源52から可変抵抗54を介して電磁石14のコイル14Aに直流電流が流れ、電磁石14が磁化されて磁力を発生する。スイッチ50は、例えば、レンズ装置が装着されるカメラ等の電源スイッチのON/OFFに同期してON/OFFすることができる。
【0064】
可変抵抗54は、操作感触調整器(図示しない)の操作に応じて段階的、又は連続的に抵抗値を変更できるようになっている。この可変抵抗54により、電磁石14のコイル14Aに流す電流を調整することができ、電磁石14から発生する磁力を調整することができる。即ち、第1フォーカスリング20をスライド移動させる際の切替え力を可変にし、操作者の好みの切替え感触が得られるように調整することができる。
【0065】
図6は電磁石14の第2の実施形態を示す回路図である。尚、図5に示した回路と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図6に示す電磁石14の回路は、電流計60と制御部62とが追加されている点で、図5に示した第1の実施形態と相違する。
【0067】
電磁石14に常時通電すると、消費電力が過大になるが、第1フォーカスリング20がスライド移動するときのみ通電することにより、消費電力を低減することができる。
【0068】
電流計60は、電磁石14への通電をOFFにした状態で、第1フォーカスリング20をスライド移動させたときに生じる誘導起電力による電流値の変化を検出する。制御部62は、電流計60が検出する電流値の変化に基づいて第1フォーカスリング20のスライド移動を検知すると、一定時間だけスイッチ50をONにする。
【0069】
図7は上記制御部62による電磁石14の制御動作を示すフローチャートである。
【0070】
図7に示すように制御部62は、まず、電磁石14を一定時間ONにする(ステップS10、S12)。一定時間は、例えば、第1フォーカスリング20がスライド操作される時間よりも長い適宜の時間である。
【0071】
電磁石14を一定時間ONにした後、電磁石14をOFFにする(ステップS14)。その後、制御部62は、電流計60からの検出電流に基づいて誘導起電力が発生したか否かを検知する(ステップS16)。そして、誘導起電力が発生したことを検知すると、第1フォーカスリング20がスライド移動を開始したと判断し、ステップS10に遷移し、電磁石14をONにさせる。これにより、電磁石14と第1フォーカスリング20側の磁石との間に反発力を発生させ、切替え感触が発生するようにする。
【0072】
尚、上記ステップS14では、電磁石14をOFFにして消費電力を低減するようにしたが、これに限らず、電磁石14への通電を微弱電流に切り替え、これにより消費電力を低減するようにしてもよい。また、誘導起電力の発生の有無により第1フォーカスリング20がスライド移動を開始したか否かを検知するようにしたが、これに限らず、第1フォーカスリング20の第1のスライド位置、及び第2のスライド位置を検出する検出器の検出出力に基づいて第1フォーカスリング20がスライド移動を開始したか否かを検知するようにしてもよい。
【0073】
図8は電磁石14の第3の実施形態を示す回路図である。尚、図6に示した回路と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
図8に示す電磁石14の回路は、コンデンサC1,C2と抵抗RによるCR積分回路と、スイッチS1,S2が追加されている点で、図6に示した第2の実施形態と相違する。
【0075】
操作者は、スイッチS1,S2のON/OFFを適宜選択し、電磁石14への通電の立ち上がり特性を設定できるようになっている。いま、コンデンサC1,C2の容量がC1よりもC2の方が大きい場合、スイッチS1,S2が共にOFFのとき、最も通電の立ち上がりが速く、続いて、スイッチS1のみがON、スイッチS2のみがON、スイッチS1,S2が共にONの順に、通電の立ち上がりが遅くなる。
【0076】
このようにスイッチS1,S2のON/OFFを適宜選択することにより、電磁石14への通電の立ち上がり特性を設定すること、即ち、第1フォーカスリング20を移動させる際の初期の操作感触を調整することができる。
【0077】
[第2の実施形態]
図9は本発明に係るレンズ装置の第2の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリング120がスライド方向の中間位置に位置している状態に関して示している。
【0078】
前述した第1の実施形態のレンズ装置は、第1フォーカスリング20、第2フォーカスリング30及び第3フォーカスリング40のリング間に互いに吸引する磁石を設けるようにしたが、第2の実施形態のレンズ装置は、磁石の替わりにクラッチ部が設けられている点で相違する。
【0079】
即ち、第1フォーカスリング120の両端面には、鋸歯状の機械的なクラッチ部124、126が形成されており、第2フォーカスリング130及び第3フォーカスリング140の内側の端面には、前記クラッチ部124、126と噛み合う鋸歯状のクラッチ部132、142が形成されている。
【0080】
次に、上記構成の第2の実施形態のレンズ装置の作用について説明する。
【0081】
図9は、第1フォーカスリング120がスライド方向(矢印AB方向)の中間位置に位置している状態に関して示している。この状態では、レンズ鏡胴本体10側の電磁石14と第1フォーカスリング120側の磁石26とが、レンズ鏡胴本体110の径方向に反発し、第1フォーカスリング120のスライド方向(矢印AB方向)への反発力は発生していない。尚、第1の実施形態と同様に、この状態は不安定な状態であるため、通常、この中間位置で第1フォーカスリング120が停止することはない。
【0082】
図10及び図11は、それぞれ本発明に係るレンズ装置の第2の実施形態を示す要部断面図であり、第1フォーカスリング120がスライド方向(矢印A方向)の一端の第1のスライド位置に位置している状態、及び第1フォーカスリング120がスライド方向(矢印B方向)の他端の第2のスライド位置に位置している状態に関して示している。
【0083】
図10に示すように、第1フォーカスリング120が手動により矢印A方向にスライド操作され、図9に示した中間位置を越えると、第1フォーカスリング120は、電磁石14と磁石26との反発力により矢印A方向の移動端まで移動する。
【0084】
第1フォーカスリング120の矢印A方向の移動端では、第1フォーカスリング120側のクラッチ部124が第2フォーカスリング130側のクラッチ部132に当接し、クラッチ部124、132が噛み合う。尚、クラッチ部124、132が噛み合っている状態では、第1フォーカスリング120は、図10に示すように電磁石14と磁石26との反発力により第2フォーカスリング130側に付勢される。
【0085】
上記電磁石14と磁石26による付勢力による当接時に、第1フォーカスリング120を介して良好な切替え感触が得られる。
【0086】
ここで、第1フォーカスリング120を回転させると、第1フォーカスリング120が磁力により付勢され、クラッチ部124、132により機械的に連結された第2フォーカスリング130を同時に回転させることができ、これにより第2フォーカスリング130の回動位置に応じた絶対位置信号を出力することができる。
【0087】
尚、第1フォーカスリング120は、クラッチ部124、132により第2フォーカスリング130と機械的に連結されるため、第2フォーカスリング130がエンド端に達したときには、第1フォーカスリング120を確実に停止させることができる。これにより、第1フォーカスリング120がエンド端に到達したときの操作感が得られる。
【0088】
一方、図10に示す状態から第1フォーカスリング120を、電磁石14と磁石26による付勢力に抗して矢印B方向にスライド操作し、第1フォーカスリング120が、図9に示した中間位置を越えると、図11に示すように、第1フォーカスリング120は、電磁石14と磁石26との反発力(図10の場合とは逆方向の反発力)により矢印B方向の移動端まで移動する。
【0089】
また、第1フォーカスリング120をスライドさせる際に、第1フォーカスリング120が中間位置に近づくにつれて大きな操作力を必要とし、中間位置を越えると、急激に操作力が不要となるとともに、第1フォーカスリング120は、電磁石14と磁石26との反発力により矢印B方向の移動端まで移動する。この第1フォーカスリング120の操作力の変化により、良好な切替え感触が得られる。
【0090】
第1フォーカスリング120の矢印B方向の移動端では、第1フォーカスリング120側のクラッチ部126が第3フォーカスリング140側のクラッチ部142に当接し、クラッチ部126、142が噛み合う。尚、クラッチ部126、142が噛み合っている状態では、第1フォーカスリング120は、電磁石14と磁石26との反発力により第3フォーカスリング140側に付勢され、クラッチ部126、142を介して第3フォーカスリング140と機械的に連結される。
【0091】
ここで、第1フォーカスリング120を回転させると、第1フォーカスリング120に磁力により付勢され、クラッチ部126、142により機械的に連結された第3フォーカスリング140を同時に回転させることができ、これにより第3フォーカスリング140の回転量に応じた相対位置信号を出力することができる。
【0092】
尚、第2の実施形態では、第1フォーカスリング120の第1のスライド位置又は第2のスライド位置において、クラッチ部124、132、又はクラッチ部126、142が確実に連結するように電磁石14を常時通電するか、又は常時微弱電流を流しておくことが好ましい。
【0093】
[その他]
上記実施形態では、第3フォーカスリングには、相対位置検出型センサと連結される歯車44が形成されているが、第1フォーカスリング側に相対位置検出型センサと常時連結される歯車を形成するようにしてもよい。この場合、第3フォーカスリングは、第1フォーカスリングがAF/MFモード(エンド端なし)に切り替えられたときの切替え感触を発生させるとともに、該第1フォーカスリングを保持するリング部材として機能することになる。また、第1フォーカスリングと連結される相対位置検出型センサは、第1フォーカスリングによりAF/MFモード(エンド端なし)に切り替えられているときに動作可能にする。
【0094】
また、この実施形態では、フォーカスリングのクリック機構について説明したが、これに限らず、レンズ鏡胴本体の周囲を回動するとともに、光軸方向にスライド移動するリング部材であれば、そのリング部材のスライド方向のクリック機構として適用できる。
【0095】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0096】
10、110…レンズ鏡胴本体、14…電磁石、20、120…第1フォーカスリング、22、24、26、32、42…磁石(永久磁石)、30、130…第2フォーカスリング、40、140…第3フォーカスリング、34、44…歯車、50…スイッチ、52…直流電源、54…可変抵抗、60…電流計、62…制御部、124、126、132、142…クラッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡胴本体に対してエンドレス回転が可能に配設されるとともに、光軸方向の第1のスライド位置と第2のスライド位置との間でスライド自在に配設された第1のリング部材と、
前記レンズ鏡胴本体に対して所定の回動範囲内のみで回動自在に配設された第2のリング部材であって、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置に移動すると、該第1のリング部材の一方の側面と当接可能に配設された第2のリング部材と、
前記レンズ鏡胴本体に対してエンドレス回転が可能に配設された第3のリング部材であって、前記第1のリング部材が前記第2のスライド位置に移動すると、該第1のリング部材の他方の側面と当接可能に配設された第3のリング部材と、
前記レンズ鏡胴本体の外周面に設けられた電磁石と前記第1のリング部材の内周面に設けられた永久磁石とからなるクリック機構であって、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置と第2のスライド位置との中間位置に位置するときに、互いに反発するようにそれぞれS極、N極が設けられ、前記第1のリング部材が前記中間位置からずれると、該第1のリング部材を前記第2のリング部材の端面又は第3のリング部材の端面に押圧するように磁力により付勢するクリック機構と、
前記電磁石の磁力を調整することにより前記第1のリング部材の切替え時の操作感触を調整する操作感触調整手段と、
を備えたことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記電磁石及び永久磁石の少なくとも一方は、リング状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第1のリング部材のスライド方向の両端面に設けられた第1の磁性部材と、
前記第2のリング部材及び第3のリング部材の前記第1のリング部材の端面に対向する面に設けられた第2の磁性部材と、を備え、
前記第1、第2の磁性部材の少なくとも一方は永久磁石により構成され、前記第1のリング部材は、該第1のリング部材の第1のスライド位置への移動時又は第2のスライド位置への移動時に磁力により前記第2のリング部材又は第3のリング部材と吸着されることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第1の磁性部材及び第2の磁性部材の少なくとも一方は、リング状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第1のリング部材の前記第1のスライド位置への移動時に前記第2のリング部材の回動位置に応じた絶対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力する第1のマニュアルフォーカスモードと、前記第1のリング部材の前記第2のスライド位置への移動時に前記第1のリング部材又は第3のリング部材の回転量に応じた相対位置信号をフォーカスレンズの移動指令として出力する第2のマニュアルフォーカスモードとを切り替えるフォーカスモード切替え手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記第1のリング部材の光軸方向の第1のスライド位置又は第2のスライド位置への移動に伴って、前記第1のリング部材と第2のリング部材とを機械的に連結又は非連結させるクラッチ部を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置又は第2のスライド位置にある場合には、前記電磁石への通電をオフし、又は微弱電流に切り替え、前記第1のリング部材が前記第1のスライド位置又は第2のスライド位置から移動すると、前記電磁石への通電をオンにする制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記第1のリング部材の前記第1のスライド位置又は第2のスライド位置からの移動を、前記電磁石の回路に生じる誘導起電力により検出する検出手段を備えたことを特徴とする請求項7に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記操作感触調整手段は、前記電磁石をオンする際に、該電磁石への通電の立ち上がり特性を変更する手段を更に備えたことを特徴とする請求項7又は8に記載のレンズ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−203341(P2012−203341A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70297(P2011−70297)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】