レンズ鏡筒およびカメラ
【課題】リニア型の振動波アクチュエータを搭載し、且つ小型化が可能なレンズ鏡筒およびそれを備えたカメラを提供する提供する。
【解決手段】本発明のレンズ鏡筒30は、電気機械変換素子50の励振により光軸OAに沿った方向の駆動力を駆動面35cに発生する振動子35と、前記駆動面35cに加圧接触し、前記駆動力により前記振動子35に対して前記光軸OAに沿って直進相対運動する相対運動部材36と、前記振動子35の前記駆動面35cと前記相対運動部材36との間に、光軸OAと交わらない方向に加圧力を発生させる加圧機構34と、を備えるリニア型の振動アクチュエータ10および、撮影用レンズL3を保持し、前記相対運動部材36とともに、該相対運動部材36によって前記光軸OAに沿って直進運動するレンズ環38を備えたこと、を特徴とする。
【解決手段】本発明のレンズ鏡筒30は、電気機械変換素子50の励振により光軸OAに沿った方向の駆動力を駆動面35cに発生する振動子35と、前記駆動面35cに加圧接触し、前記駆動力により前記振動子35に対して前記光軸OAに沿って直進相対運動する相対運動部材36と、前記振動子35の前記駆動面35cと前記相対運動部材36との間に、光軸OAと交わらない方向に加圧力を発生させる加圧機構34と、を備えるリニア型の振動アクチュエータ10および、撮影用レンズL3を保持し、前記相対運動部材36とともに、該相対運動部材36によって前記光軸OAに沿って直進運動するレンズ環38を備えたこと、を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒およびカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータは、特許文献1に記載の様に、圧電体の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行性振動波(以下、進行波と略する)を発生させるものである。この進行波によって、駆動面には楕円運動が生じ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動子は駆動される。この様な振動アクチュエータは、低回転でも高トルクを有するという特徴がある。このため、駆動装置に搭載した場合に、駆動装置のギアを省略することができ、ギア騒音をなくすことで静寂化を達成したり、位置決め精度が向上したりできるといった利点がある。
【0003】
また、リニア型の振動アクチュエータを使用してスチールカメラのレンズ鏡筒、または電子カメラの交換式レンズ鏡筒のオートフォーカスレンズ(以下、AFレンズという)を直接直進駆動させるといった技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【特許文献2】特開2006−187114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のリニア型の振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒は、振動子と相対運動部材との間の加圧の方向が径方向であり、その加圧構造はAFレンズ保持枠の側面から径方向外側に向かって配置されている。このため、レンズ鏡筒が径方向に大型化するといった課題がある。
【0006】
本発明は、小型化が可能なレンズ鏡筒およびそれを備えたカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、電気機械変換素子(50)の励振により光軸(OA)に沿った方向の駆動力を駆動面(35c)に発生する振動子(35,235,435)と、前記駆動面(35c)に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子(35,235,435)に対して前記光軸(OA)に沿って直進相対運動する相対運動部材(36,236,436)と、前記振動子(35,235,435)の前記駆動面(35c)と前記相対運動部材(36,236,436)との間に、光軸(OA)と交わらない方向に加圧力を発生させる加圧機構(34,234,434)と、を備えるリニア型の振動アクチュエータ(10,210,410)、および、撮影用レンズ(L3)を保持し、前記相対運動部材(36,236,436)とともに、該相対運動部材(36,236,436)によって前記光軸(OA)に沿って直進運動するレンズ環(38,238,438)、を備えたこと、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記加圧機構(34,234,434)は、前記加圧力を、前記光軸(OA)に対してねじれの位置となる方向に生じさせること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記加圧機構(34,234,434)は、前記加圧力を、前記光軸(OA)と略直交し、交わらない方向に生じさせること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記加圧機構(34,234,434)は、前記加圧力を、前記光軸(OA)を中心とした円周の接線方向に生じさせること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記振動子(35,235,435)、前記相対運動部材(36,236,436)、前記加圧機構(34,234,434)は、光軸(OA)と交わらない方向に並置されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)において、固定部(32A,32B)に固定され且つ前記光軸(OA)に沿って延びる第一直進案内軸(241)と、前記固定部(32A,32B)に固定され且つ前記光軸(OA)に沿って延びるとともに、前記第一直進案内軸(241)に対して前記光軸(OA)を中心として対称位置に配置された第二直進案内軸(242)と、を備え、前記レンズ環(38,238,438)は、前記第一直進案内軸(241)に案内されて移動する第一案内部(243)と、前記第二直進案内軸(242)に案内されて移動する第二案内部(244)と、を有し、前記第二案内部(244)は、前記第二直進案内軸(242)に対して、前記光軸(OA)を中心とした径方向に移動可能に保持されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記レンズ環(438)は、前記相対運動部材(436)と一体的に接合されるとともに、該相対運動部材(436)に対して前記光軸(OA)を中止として対称位置に配置された第三案内部(444)を有し、前記レンズ鏡筒(30)は、固定部に固定され、前記光軸(OA)に沿って延びるともに、前記第三案内部(444)を案内する第三直進案内軸(442)を備えること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)を備えるカメラ(1)である。
請求項9に記載の発明は、電気機械変換素子(50)の励振により光軸(OA)に沿った方向の駆動力を駆動面(35c)に発生する振動子(35,235,435)と、前記駆動面(35c)に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子(35,235,435)に対して前記光軸(OA)に沿って直進相対運動する相対運動部材(36,236,436)と、前記振動子(35,235,435)の前記駆動面(35c)と前記相対運動部材(36,236,436)との間に、前記光軸(OA)とねじれの位置となる方向に加圧力を発生させる加圧機構(34,234,434)と、を備えるリニア型の振動アクチュエータ(10,210,410)、および、撮影用レンズ(L3)を保持し、前記相対運動部材(36,236,436)とともに、該相対運動部材(36,236,436)によって前記光軸(OA)に沿って直進運動するレンズ環(38,238,438)、を備えたこと、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リニア型の振動波アクチュエータを搭載し、且つ小型化が可能なレンズ鏡筒およびそれを備えたカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】レンズ鏡筒が取り付けられたカメラを説明する図である。
【図2】第一実施形態の振動アクチュエータが組み込まれた状態のレンズ鏡筒の部分断面図である。
【図3】図2に示すA方向から見た部分拡大図である。
【図4】図2に示すB−B方向から見た図である。
【図5】第一実施形態の振動子を詳細に説明する図である。
【図6】振動子の発生を説明する図である。
【図7】第一実施形態の振動アクチュエータの駆動装置を説明するブロック図である。
【図8】本発明の第二実施形態のレンズ鏡筒を説明する図である。
【図9】光軸OAに対するAF環のチルトを説明する図である。
【図10】(a)は本発明の第三実施形態を説明する図であり、(b)は第三実施形態の変形形態を示したものである。
【図11】本発明の第四実施形態の振動アクチュエータを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒、およびカメラの実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、レンズ鏡筒30が取り付けられた電子カメラ1を説明する図である。本実施形態の電子カメラ1は、撮像素子3と、AFE(Analog front end)回路4と、画像処理部5と、を備える。
さらに、電子カメラ1は、音声検出部6と、バッファメモリ7と、記録インターフェイス8と、モニタ9と、操作部材13と、メモリ11と、CPU12とから構成され、外部機器のPC13との接続が可能となっている。
【0012】
撮像素子3は、受光面に受光素子が二次元的に配列されたCMOSイメージセンサなどによって構成される。撮像素子3は、レンズ鏡筒30の撮影光学系Lを通過した光束による被写体増を光電変換してアナログ画像信号を生成する。アナログ画像信号は、AFE回路4に入力される。
そして、操作部材13または画像の状況により撮像素子3への露光時間(シャッタースピード)が決定される。
【0013】
AFE回路4は、アナログ画像信号に対するゲイン調整(ISO感度に応じて信号増幅)行う。具体的には、CPU12からの感度設定指示に応じて、撮像感度を所定範囲内で変更する。AFE回路4は、さらに、内蔵するA/D変換回路によってアナログ処理後の画像信号をデジタルデータに変換する。そのデジタルデータは、画像処理部5に入力される。
【0014】
画像処理部5は、デジタル画像データに対して、各種の画像処理を行う。
バッファメモリ7は、画像処理部5による画像処理の前工程や後工程での画像データを一時的に記録する。
【0015】
音声検出部6は、マイクと信号増幅部とから構成され、主に動画撮影時に被写体方向からの音声を検出して取り込み、そのデータをCPU12へ伝達する。音声検出部6は電子カメラ1の内臓マイクの場合と、外部マイクを電子カメラ1の接点に取り付ける場合とがあり、外部マイクを取り付けた場合には、それを検知されるようになっている。
【0016】
記録インターフェイス8は、不図示のコネクタを有し、該コネクタに記録媒体が接続され、接続された記録媒体に対して、データの書き込みや、記録媒体からのデータの読み込みを行う。
【0017】
モニタ9は、液晶パネルによって構成され、CPU12からの指示に応じて画像や操作メニューなどを表示する。
【0018】
操作部材13は、モードダイヤル、十字キー、決定ボタンやレリーズボタンを示し、各操作に応じた操作信号をCPU12へ送出する。静止画撮影や動画撮影の設定は、該操作部材13により設定される。
【0019】
CPU12は、不図示のROMに格納されたプログラムを実行することによって電子カメラ1が行う動作を統括的に制御する。例えば、AF(オートフォーカス)動作制御、AE(自動露出)動作制御、オートホワイトバランス制御などを行う。
メモリ11は、画像処理した一連の画像データを記録する。
この様な構成の電子カメラ1において、動画に対応した画像がカメラ1に取り込まれる。
【0020】
電子カメラ1に取り付けられたレンズ鏡筒30は、撮影光学系Lを備え、撮影光学系Lは、複数の光学レンズにより構成され、被写体像を撮像素子3の受光面に結像させる。図1では、光学レンズ系を簡略化して、単レンズとして図示している。また、光学レンズ群の内、AF用の光学レンズL3(図2に図示)は、振動アクチュエータ10の駆動により駆動される。
【0021】
(第一実施形態)
図2は、振動アクチュエータ10が組み込まれた状態のレンズ鏡筒30の部分断面図であり、図3は、図2に示すA方向から見た部分拡大図であり、図4は、図2に示すB−B方向から見た図である。
【0022】
なお、説明と理解を容易にするために、図中、必要に応じてXYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ1の位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0023】
レンズ鏡筒30は、電子カメラ1に対して固定される外側固定筒31と、被写体側より順に並ぶ光学レンズL1,L2,L3,L4を含む、上述の撮影光学系Lとを備える。
撮影光学系Lのうちの光学レンズL3は、AF用の光学レンズであり、振動アクチュエータ10により駆動される。それ以外の光学レンズのうち、光学レンズL3よりも被写体側にある光学L1,L2は、外側固定筒31よりも内側における被写体側に配置された内側第一固定筒32Aに固定され、光学レンズL3よりも結像側にある光学L4は、外側固定筒31よりも内側における、像側に配置された内側第二固定筒32Bに固定されている。
【0024】
本実施形態で振動アクチュエータ10は、内側第一固定筒32Aの外周面に配置されている。
振動アクチュエータ10は、内側第一固定筒32Aの外周面に固定された支持部材33と、支持部材33に取り付けられた加圧バネ34と、加圧バネ34によって加圧される振動子35と、振動子35によって駆動される移動子36と、移動子36における振動子35と逆側の面と接し、内側第一固定筒32Aに外面に設けられた固定部材32Aaに固定されたリニアガイド40とを備える。
【0025】
支持部材33は、図4に示すように、内側第一固定筒32Aの外周面のYプラス側における、中央よりもややXプラス側に固定されている。そして、支持部材33は、その固定されている部分から光軸OAに沿ってZマイナス側に延びる延在部33aを有する。延在部33aは、光軸OAに対して垂直な面で切断した断面が矩形となっている。
【0026】
加圧バネ34は、一端が延在部33aにおけるXマイナス側を向く側面33bに取り付けられた板状部材である。
振動子35は、延在部33aの側面33bと対向する側面35aを有する略直方体の部材である。振動子35の側面35aの略中央部には、光軸OAと垂直な方向に延びる溝35bが設けられている。
そして、支持部材33の側面33bに一端が取り付けられた加圧バネ34の他端は、所定の角度で短手方向に沿って折れ曲がり、その折れ曲がった角部が、側面35aの溝35bに嵌り、振動子35をXマイナス方向に加圧している。
【0027】
また、移動子36は、振動子35における側面35aと反対側(Xマイナス側)の駆動面35cに隣接して配置されている。移動子36は、アルミニウムといった軽金属からなり、駆動面35cと対向する摺動面36aの表面には耐摩耗性向上のための摺動メッキが設けられている。
リニアガイド40は、移動子36の摺動面36aと反対側(Yマイナス側)の面36bと接し、第一内側固定筒32に固定されたガイド固定部40Aに固定されている。
リニアガイド40とは直線方向のベアリングで、移動子36を直進方向(図3、4のZ方向)に可動で、それ以外の方向(X,Y方向)の移動を規制する機能を有する。リニアガイド40の内部は球部材と滑らかな摺動部材から構成され、X方向やY方向から付勢力を受けてもZ方向に摺動抵抗無く滑らかに可動される。
【0028】
移動子36における、摺動面36aには、突起部37が設けられている。
また、光学レンズL3を保持するAF環38が、内側第一固定筒32Aの内周側に配置されている。
AF環38は、光軸OAと垂直な断面が円環状であって、光軸OAを中心とした対称位置(Y軸に沿った直径の両端)に、外形側に突出し、それぞれ嵌合穴43a,44aが設けられたガイド部43,44をそれぞれ2つずつ備える。
【0029】
一方、内側第一固定筒32Aと内側第二固定筒32Bとの間に渡って、第一直進レール41および第二直進レール42が設けられている。そして、ガイド部43の嵌合穴43aには第一直進レール41が挿通され、ガイド部44の嵌合穴44aには第二直進レール42が挿通されている。
【0030】
AF環38のZマイナス側には、Yプラス方向に延び、移動子36と連結するための連結部39が設けられている。
連結部39は、AF環38に固定されるとともに、第一直進レール41が貫通する穴が設けられたベース部39aと、ベース部39aのXマイナス側からYプラス方向(略径方向)に延びるフォーク部39bを有する。フォーク部39bの先端には溝39cが形成されている。そして、溝39cは、移動子36の摺動面36aに設けられた突起部37に嵌合している。そして、移動子36の光軸OAに沿った方向の駆動力は連結部39によりAF環38に伝達され、AF環38が駆動される。
【0031】
図5は、振動子35を詳細に説明する図である。
振動子35は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子や電歪素子等を例とした電気−機械変換素子(以下、圧電体と称する)50と、電気―機械変換素子50の駆動面35c側に設置された摺動部材51,52から構成されている。振動子35には縦1次モード振動の定在波と、曲げ2次モード振動の定在波が発生される。
【0032】
圧電体50の表面には4分割された電極55(55a,55b,55c,55d)が設けられており、裏面は分割のないGND電極が設けられている。4電極とも分極方向は同じである。駆動信号A相は電極55aおよび55dに印加し、駆動信号B相は、電極55bおよび55cに印加する。
【0033】
振動子35の中央部には、上述したように溝35bが設けられており、加圧バネ34がこの溝35bに嵌ることで、加圧位置のずれ防止ととともに、長手方向への支持も出来る様にされている。
摺動部材51,52は、耐摩耗性の良いエンジニアプラスチック材料から構成され、縦1次モード振動の定在波の振幅が最大になり、且つ曲げ2次モード振動の定在波の振幅が最大になる位置である図の場所に設けられている。
【0034】
次に、振動子35の振動の発生について、時系列的に説明する。図6(a)〜(e)は振動子の発生を説明する図である。
【0035】
(a)t=1:A相の電圧が−でB相の電圧が+の場合
圧電体50の電極55aが設けられた部分P1は長手方向に縮み、電極55bが設けられた部分P2は長手方向に伸び、電極55cが設けられた部分P3は長手方向に伸び、電極55dが設けられた部分P4は長手方向に縮むため、図6(a)中央右側の様な曲げ変位が発生する。
また、部分P1は長手方向に縮み、部分P2は長手方向に伸び、部分P3は長手方向に伸び、部分P4は長手方向に縮み、長さ方向の変位は相殺されるため、図6(a)中央左側の様に縦方法変位は発生しない。
【0036】
(b)t=2:A相の電圧が+、B相の電圧が+の場合
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に伸び、部分P3は長手方向に伸び、部分P4は長手方向に伸びる。このため、図6(b)中央右側の様に曲げ変位は発生しない。
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に伸び、部分P3は長手方向に伸び、部分P4は長手方向に伸びるため、図6(b)中央左側の様な長さ方向の変位が発生する。
【0037】
(c)t=3:A相の電圧が+、B相の電圧が−の場合
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に縮み、部分P3は長手方向に縮み、部分P4は長手方向に伸びるため、図6(c)中央右側の様な曲げ変位が発生する。
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に縮み、部分P3は長手方向に縮み、部分P4は長手方向に伸びるため、長さ方向の変位は相殺されるため、図6(c)中央左側の様に縦方法変位は発生しない。
【0038】
(d)t=4:A相の電圧が−、B相の電圧が+の場合
部分P1は長手方向に縮み、部分P2は長手方向に縮み、部分P3は長手方向に縮み、部分P4は長手方向に縮むため、図6(d)中央右側の様に曲げ変位は発生しない。
部分P1が長手方向に縮み、部分P2が長手方向に縮み、部分P3が長手方向に縮み、部分P4が長手方向に縮むため、図6(d)中央左側の様な長さ方向の変位が発生する。
【0039】
(e)t;5:t=1の場合、上記(a)に戻る
【0040】
この様に振動を発生させた場合、摺動部材51,52が貼られたC点、D点は図6の最も右側に示す図の様に楕円運動が発生する。この摺動部材51,52に移動子36を加圧接触させると、移動子36は楕円運動により摩擦力を受け、駆動される。
【0041】
図7は、第一実施形態の振動アクチュエータ10の駆動装置100を説明するブロック図である。振動アクチュエータ10の駆動/制御について説明する。
発振部101は、制御部102の指令により所望の周波数の駆動信号を発生する。
移相部103は、該発振部101で発生した駆動信号を位相が90°ずらした2つの駆動信号に分ける。
増幅部104,105は、移相部103によって分けられた2つの駆動信号をそれぞれ所望の電圧に昇圧する。
増幅部104,105からの駆動信号は、振動アクチュエータ10に伝達され、この駆動信号の印加により振動子に定在波が発生、摺動部材に楕円運動が発生し、移動子36が光軸OAに沿った方向に駆動される。
検出部106は、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等により構成され、移動子36の駆動によって駆動された駆動物の位置や速度を検出し、検出値を電気信号として制御部102に伝達する。
【0042】
制御部102は、レンズ鏡筒30内またはカメラ1のCPU12からの駆動指令を基に振動アクチュエータ10の駆動を制御する。制御部102は、検出部106からの検出信号を受け、その値を基に、位置情報と速度情報を得て、目標位置に位置決めされるように発振器の周波数や増幅部104,105の電圧を制御する。また、制御部102は、レンズ鏡筒30やカメラ1より撮影情報(静止画モード/動画モード等)が伝達されるようになっている。このレンズ鏡筒30やカメラ1より伝達された撮影情報を基に、駆動信号の周波数をきめ細かに制御する。
【0043】
以上、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
【0044】
(1)本実施形態によると、一端が支持部材33に固定された加圧バネ34の他端により振動子35が加圧され、その加圧により振動子35は移動子36側に押圧される。このときの加圧力は、光軸OAと垂直且つ光軸OAと交わらない方向に生じる。より詳細には、加圧力は光軸OAを中心とした円周の接線方向に生じる。また、換言すると、振動アクチュエータ10は、光軸OAを中心とした筒状の内側第一固定筒32Aの外周面に取り付けられ、その振動アクチュエータ10の加圧バネ34の加圧力は、内側第一固定筒32Aの略接線方向に生じる。さらに言い換えると、加圧バネ34の加圧力は、光軸OAと、第一直進レール41とを結ぶ直線l(図4に図示)と直交する方向(Xマイナス方向)に生じる。
したがって、加圧バネ34がレンズ鏡筒30の径方向に突出せず、レンズ鏡筒30の径方向への大型化が防止可能で、リニア型振動アクチュエータ10のコンパクトな搭載が可能となる。
【0045】
(2)本実施形態によると、振動アクチュエータ10の各構成部材、すなわち加圧バネ34、振動子35、移動子36、リニアガイド40は、光軸OAと垂直且つ光軸OAと交わらない方向に並置されている。より詳細には、振動アクチュエータ10のそれらの構成部材は、光軸OAを中心とした円周の接線方向に並置されている。また、換言すると、振動アクチュエータ10のそれらの構成部材は、光軸OAを中心とした内側第一固定筒32Aの外周面に取り付けられ、その振動アクチュエータ10内の加圧バネ34の加圧力は、内側第一固定筒32Aの略接線方向に生じる。さらに言い換えると、振動アクチュエータ10の構成部材は、光軸OAと、第一直進レール41とを結ぶ直線l(図4)と直交する方向(Xマイナス方向)に生じる。
したがって、加圧バネ34がレンズ鏡筒30の径方向に突出しないため、レンズ鏡筒30の径方向への大型化が防止可能で、振動アクチュエータ10のコンパクトな搭載が可能となる。
【0046】
(3)また、振動アクチュエータ10における加圧力をリニアガイド40で受け、移動子36に設けられた突起部37に、AF環38に設けられた連結部39の溝39cを嵌合させてAF環38を直進駆動させる。このため、AF環38の直進を案内している第一直進レール41と第二直進レール42には、直進駆動力以外のカが加わらない(径方向の力が加わらない)。
これにより、AFレンズL3の直進運動時の摺動抵抗(ロス)が低減し、効率の良いAFレンズL3駆動が可能となる。
【0047】
(第二実施形態)
図8は、本発明の第二実施形態のレンズ鏡筒の振動アクチュエータ210を説明する図であり、第一実施形態の図3に対応する図である。第二実施形態においては、移動子236の突起部237が、移動子236の摺動面236aとリニアガイド側の側面236bの双方に設けられている。AF環238に固定されている連結部239にも、ベース部239aの両端から2つのフォーク部239bが延び、これらフォーク部239bに形成されたそれぞれの溝239cが、2箇所の突起部237にそれぞれ嵌合されている。それ以外の部分については第一実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0048】
また、移動子236の中心軸と、AF環238を案内する第一直進レール241の中心軸とが、AF環238における同一の径方向に配置されている。そして、上述のように、連結部239の2つのフォーク部239bは、その径を中心とした対称の位置において突起部237と嵌合している。
これにより、移動子236の駆動力は、連結部239、AF環238に均等に加わる。そして、AF環238を直進駆動させる時の、直進方向以外のカ(特にローリング方向の力)が、AF環238に加わらないようになる。
【0049】
また、AF環238のガイド部243に設けられた嵌合穴243aは円形の穴であるが、本実施形態においてガイド部244に設けられた嵌合穴244aはU字穴(U字溝)である。
嵌合穴244aはU字穴とすることにより、以下の効果を有する。
図9に示すように、連結部239の位置はAFレンズL3の中心Oを通る光軸OAと垂直な断面から、光軸OAに沿ってZマイナス方向にずれた位置に配置されている。このため、AF環238は、重心位置との関係で、光軸OAに対してチルトする方向に力が加わる。
移動子236およびAF環238が、光軸OA方向に移動する際、この力により、わずかにチルトが生じる場合もある。図9は、光軸OAに対するチルトの状態を説明する図であり、AF環238の軸線が光軸OAに対してα傾いている(実際にはこのように大きな角度とはならないが、誇張して図示している)。ガイド部244の穴が円形の穴の場合、連結部239に直進力が加えられた場合、この傾きによって第二直進レール242とガイド部244の穴との間に摺動負荷が生じる可能性がある。
【0050】
しかし、本実施形態によると、AF環238が若干傾いても、ガイド部244の穴がU字溝であって一方が開放しているので、径方向に逃げられるようになっている。
【0051】
また、AF環238の径方向に対して、移動子236の中心軸と、AF環238を案内する第一直進レール241の中心軸位置および第二直進レール242の中心軸位置が一直線となっている。これにより、チルト運動が発生した時の摺動負荷がさらに軽減される。
この様に、第二実施形態では、第一実施形態よりも、さらにAFレンズの直進運動時の摺動抵抗(ロス)を低減することができる。
【0052】
(第三実施形態)
図10は、本発明の第三実施形態を説明する図である。
第三実施形態は、第一実施形態に対して、移動子に設けられた突起部337とAF環に接続されたフォーク部339aの溝339cとの嵌合方法が異なる。その他の部分は同様であるので説明は省略する。
【0053】
突起部337と溝339cとの隙間があると、起動および停止時に、突起部337と溝339cの側面が衝突し、衝撃力が発生し、AF環に伝達される。それを繰り返していくと、直進レールと溝との摺動部が傷み、これにより摺動抵抗が生じる。
図10(a)に示す実施形態では、突起部337を円柱状の樹脂とし、その径は溝339cの幅よりもやや大きくなっている。そして、溝339cに突起部337を嵌め込む様にして、突起部337と連結部339(フォーク部339a)と嵌合させる。このようにすることで、溝339cと突起部337とが光軸OA方向に隙間なく嵌め合わされ、がたが生じず、起動および停止時に、突起部337と溝339cの側面が衝突して衝撃力が発生することがない。したがって、直進レールとガイド部との摺動部が傷むことなく、摺動抵抗が低減される。
【0054】
また、図10(b)は、第三実施形態の変形形態を示したもので、連結部339’のフォーク部339a’を2部材にし、ネジ340で止めることにより突起部337’を挟み込んでいる。この変形形態においても、溝339c’と突起部337’とが光軸OA方向に隙間なく嵌め合わされるため、がたが生じず、起動および停止時に、突起部337’と溝339c’の側面が衝突して衝撃力が発生することがない。したがって、直進レールとガイド部との摺動部が傷むことなく、摺動抵抗が低減される。
【0055】
(第四実施形態)
図11は、本発明の第四実施形態の振動アクチュエータ410を説明する図である。第四実施形態は、移動子436とAF環438とが一体的に製造されている。その他の部分は第2実施形態と同様であるのでその説明は省略する。振動子435は、支持部材433との間に設置された加圧バネ434により、移動子436に加圧接触される。移動子436は、振動子435によってリニアガイド440側に押圧され、振動子435の駆動力により光軸OAに沿って直進駆動される。リニアガイド440は、固定筒の外面に設けられた固定部材432Aaに固定支持される。
【0056】
AF環438における移動子436が設けられている部分に対して光軸OAを挟んだ対称の位置には、第二実施形態と同様にU字状の溝444bが設けられたガイド部444が形成されている。本実施形態では、第一および第二実施形態と異なり、第一直進レールは設けられておらず、第二直進レール442のみ設けられている。
ガイド部444の溝444bには、その第二直進レール442が挿通されている。溝444bも、第二実施形態と同様に、U字状に形成され、径方向に逃げられるようになっている。
【0057】
本実施形態では、移動子436をAF環438と一体化したことで、第一直進レールを省略することができ、部品点数を低減することができる。
また、振動アクチュエータ410の加圧方向を上述の実施形態と同様にレンズ鏡筒の周方向にし、移動子436の出力取出しスペースをレンズ鏡筒30の径方向に設けたため、移動子36とAF環438とを一体的に接続できる構成が可能となった。
【0058】
上述の実施形態では、縦1次振動モードと曲げ2次振動モードとを組み合わせた振動子を用いたが、他の振動モードの組み合わせ、例えば、縦1次振動モードと曲げ4次振動モードの組み合わせの振動アクチュエータでも良く、リニア型振動アクチュエータなら、同様な効果が得られる。
【0059】
(変形例)
上述した実施形態1〜4では、振動子35に対する加圧力を光軸OAと垂直且つ光軸OAと交わらない方向としたが、光軸と交わらない方向(例えば、光軸の方向に対してねじれの位置となる方向)に加圧してもよい。また、例えば、光軸と垂直方向から少し傾いた略垂直方向で、光軸と交わらない方向に加圧してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:カメラ、10,210,310:振動アクチュエータ、30:レンズ鏡筒、34,234,434:加圧バネ、35,235,435:振動子、35c:駆動面、36,236,436:移動子、38,238,438:AF環
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒およびカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータは、特許文献1に記載の様に、圧電体の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行性振動波(以下、進行波と略する)を発生させるものである。この進行波によって、駆動面には楕円運動が生じ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動子は駆動される。この様な振動アクチュエータは、低回転でも高トルクを有するという特徴がある。このため、駆動装置に搭載した場合に、駆動装置のギアを省略することができ、ギア騒音をなくすことで静寂化を達成したり、位置決め精度が向上したりできるといった利点がある。
【0003】
また、リニア型の振動アクチュエータを使用してスチールカメラのレンズ鏡筒、または電子カメラの交換式レンズ鏡筒のオートフォーカスレンズ(以下、AFレンズという)を直接直進駆動させるといった技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【特許文献2】特開2006−187114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のリニア型の振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒は、振動子と相対運動部材との間の加圧の方向が径方向であり、その加圧構造はAFレンズ保持枠の側面から径方向外側に向かって配置されている。このため、レンズ鏡筒が径方向に大型化するといった課題がある。
【0006】
本発明は、小型化が可能なレンズ鏡筒およびそれを備えたカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、電気機械変換素子(50)の励振により光軸(OA)に沿った方向の駆動力を駆動面(35c)に発生する振動子(35,235,435)と、前記駆動面(35c)に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子(35,235,435)に対して前記光軸(OA)に沿って直進相対運動する相対運動部材(36,236,436)と、前記振動子(35,235,435)の前記駆動面(35c)と前記相対運動部材(36,236,436)との間に、光軸(OA)と交わらない方向に加圧力を発生させる加圧機構(34,234,434)と、を備えるリニア型の振動アクチュエータ(10,210,410)、および、撮影用レンズ(L3)を保持し、前記相対運動部材(36,236,436)とともに、該相対運動部材(36,236,436)によって前記光軸(OA)に沿って直進運動するレンズ環(38,238,438)、を備えたこと、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記加圧機構(34,234,434)は、前記加圧力を、前記光軸(OA)に対してねじれの位置となる方向に生じさせること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記加圧機構(34,234,434)は、前記加圧力を、前記光軸(OA)と略直交し、交わらない方向に生じさせること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記加圧機構(34,234,434)は、前記加圧力を、前記光軸(OA)を中心とした円周の接線方向に生じさせること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記振動子(35,235,435)、前記相対運動部材(36,236,436)、前記加圧機構(34,234,434)は、光軸(OA)と交わらない方向に並置されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)において、固定部(32A,32B)に固定され且つ前記光軸(OA)に沿って延びる第一直進案内軸(241)と、前記固定部(32A,32B)に固定され且つ前記光軸(OA)に沿って延びるとともに、前記第一直進案内軸(241)に対して前記光軸(OA)を中心として対称位置に配置された第二直進案内軸(242)と、を備え、前記レンズ環(38,238,438)は、前記第一直進案内軸(241)に案内されて移動する第一案内部(243)と、前記第二直進案内軸(242)に案内されて移動する第二案内部(244)と、を有し、前記第二案内部(244)は、前記第二直進案内軸(242)に対して、前記光軸(OA)を中心とした径方向に移動可能に保持されていること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)において、前記レンズ環(438)は、前記相対運動部材(436)と一体的に接合されるとともに、該相対運動部材(436)に対して前記光軸(OA)を中止として対称位置に配置された第三案内部(444)を有し、前記レンズ鏡筒(30)は、固定部に固定され、前記光軸(OA)に沿って延びるともに、前記第三案内部(444)を案内する第三直進案内軸(442)を備えること、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒(30)を備えるカメラ(1)である。
請求項9に記載の発明は、電気機械変換素子(50)の励振により光軸(OA)に沿った方向の駆動力を駆動面(35c)に発生する振動子(35,235,435)と、前記駆動面(35c)に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子(35,235,435)に対して前記光軸(OA)に沿って直進相対運動する相対運動部材(36,236,436)と、前記振動子(35,235,435)の前記駆動面(35c)と前記相対運動部材(36,236,436)との間に、前記光軸(OA)とねじれの位置となる方向に加圧力を発生させる加圧機構(34,234,434)と、を備えるリニア型の振動アクチュエータ(10,210,410)、および、撮影用レンズ(L3)を保持し、前記相対運動部材(36,236,436)とともに、該相対運動部材(36,236,436)によって前記光軸(OA)に沿って直進運動するレンズ環(38,238,438)、を備えたこと、を特徴とするレンズ鏡筒(30)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リニア型の振動波アクチュエータを搭載し、且つ小型化が可能なレンズ鏡筒およびそれを備えたカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】レンズ鏡筒が取り付けられたカメラを説明する図である。
【図2】第一実施形態の振動アクチュエータが組み込まれた状態のレンズ鏡筒の部分断面図である。
【図3】図2に示すA方向から見た部分拡大図である。
【図4】図2に示すB−B方向から見た図である。
【図5】第一実施形態の振動子を詳細に説明する図である。
【図6】振動子の発生を説明する図である。
【図7】第一実施形態の振動アクチュエータの駆動装置を説明するブロック図である。
【図8】本発明の第二実施形態のレンズ鏡筒を説明する図である。
【図9】光軸OAに対するAF環のチルトを説明する図である。
【図10】(a)は本発明の第三実施形態を説明する図であり、(b)は第三実施形態の変形形態を示したものである。
【図11】本発明の第四実施形態の振動アクチュエータを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒、およびカメラの実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、レンズ鏡筒30が取り付けられた電子カメラ1を説明する図である。本実施形態の電子カメラ1は、撮像素子3と、AFE(Analog front end)回路4と、画像処理部5と、を備える。
さらに、電子カメラ1は、音声検出部6と、バッファメモリ7と、記録インターフェイス8と、モニタ9と、操作部材13と、メモリ11と、CPU12とから構成され、外部機器のPC13との接続が可能となっている。
【0012】
撮像素子3は、受光面に受光素子が二次元的に配列されたCMOSイメージセンサなどによって構成される。撮像素子3は、レンズ鏡筒30の撮影光学系Lを通過した光束による被写体増を光電変換してアナログ画像信号を生成する。アナログ画像信号は、AFE回路4に入力される。
そして、操作部材13または画像の状況により撮像素子3への露光時間(シャッタースピード)が決定される。
【0013】
AFE回路4は、アナログ画像信号に対するゲイン調整(ISO感度に応じて信号増幅)行う。具体的には、CPU12からの感度設定指示に応じて、撮像感度を所定範囲内で変更する。AFE回路4は、さらに、内蔵するA/D変換回路によってアナログ処理後の画像信号をデジタルデータに変換する。そのデジタルデータは、画像処理部5に入力される。
【0014】
画像処理部5は、デジタル画像データに対して、各種の画像処理を行う。
バッファメモリ7は、画像処理部5による画像処理の前工程や後工程での画像データを一時的に記録する。
【0015】
音声検出部6は、マイクと信号増幅部とから構成され、主に動画撮影時に被写体方向からの音声を検出して取り込み、そのデータをCPU12へ伝達する。音声検出部6は電子カメラ1の内臓マイクの場合と、外部マイクを電子カメラ1の接点に取り付ける場合とがあり、外部マイクを取り付けた場合には、それを検知されるようになっている。
【0016】
記録インターフェイス8は、不図示のコネクタを有し、該コネクタに記録媒体が接続され、接続された記録媒体に対して、データの書き込みや、記録媒体からのデータの読み込みを行う。
【0017】
モニタ9は、液晶パネルによって構成され、CPU12からの指示に応じて画像や操作メニューなどを表示する。
【0018】
操作部材13は、モードダイヤル、十字キー、決定ボタンやレリーズボタンを示し、各操作に応じた操作信号をCPU12へ送出する。静止画撮影や動画撮影の設定は、該操作部材13により設定される。
【0019】
CPU12は、不図示のROMに格納されたプログラムを実行することによって電子カメラ1が行う動作を統括的に制御する。例えば、AF(オートフォーカス)動作制御、AE(自動露出)動作制御、オートホワイトバランス制御などを行う。
メモリ11は、画像処理した一連の画像データを記録する。
この様な構成の電子カメラ1において、動画に対応した画像がカメラ1に取り込まれる。
【0020】
電子カメラ1に取り付けられたレンズ鏡筒30は、撮影光学系Lを備え、撮影光学系Lは、複数の光学レンズにより構成され、被写体像を撮像素子3の受光面に結像させる。図1では、光学レンズ系を簡略化して、単レンズとして図示している。また、光学レンズ群の内、AF用の光学レンズL3(図2に図示)は、振動アクチュエータ10の駆動により駆動される。
【0021】
(第一実施形態)
図2は、振動アクチュエータ10が組み込まれた状態のレンズ鏡筒30の部分断面図であり、図3は、図2に示すA方向から見た部分拡大図であり、図4は、図2に示すB−B方向から見た図である。
【0022】
なお、説明と理解を容易にするために、図中、必要に応じてXYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ1の位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0023】
レンズ鏡筒30は、電子カメラ1に対して固定される外側固定筒31と、被写体側より順に並ぶ光学レンズL1,L2,L3,L4を含む、上述の撮影光学系Lとを備える。
撮影光学系Lのうちの光学レンズL3は、AF用の光学レンズであり、振動アクチュエータ10により駆動される。それ以外の光学レンズのうち、光学レンズL3よりも被写体側にある光学L1,L2は、外側固定筒31よりも内側における被写体側に配置された内側第一固定筒32Aに固定され、光学レンズL3よりも結像側にある光学L4は、外側固定筒31よりも内側における、像側に配置された内側第二固定筒32Bに固定されている。
【0024】
本実施形態で振動アクチュエータ10は、内側第一固定筒32Aの外周面に配置されている。
振動アクチュエータ10は、内側第一固定筒32Aの外周面に固定された支持部材33と、支持部材33に取り付けられた加圧バネ34と、加圧バネ34によって加圧される振動子35と、振動子35によって駆動される移動子36と、移動子36における振動子35と逆側の面と接し、内側第一固定筒32Aに外面に設けられた固定部材32Aaに固定されたリニアガイド40とを備える。
【0025】
支持部材33は、図4に示すように、内側第一固定筒32Aの外周面のYプラス側における、中央よりもややXプラス側に固定されている。そして、支持部材33は、その固定されている部分から光軸OAに沿ってZマイナス側に延びる延在部33aを有する。延在部33aは、光軸OAに対して垂直な面で切断した断面が矩形となっている。
【0026】
加圧バネ34は、一端が延在部33aにおけるXマイナス側を向く側面33bに取り付けられた板状部材である。
振動子35は、延在部33aの側面33bと対向する側面35aを有する略直方体の部材である。振動子35の側面35aの略中央部には、光軸OAと垂直な方向に延びる溝35bが設けられている。
そして、支持部材33の側面33bに一端が取り付けられた加圧バネ34の他端は、所定の角度で短手方向に沿って折れ曲がり、その折れ曲がった角部が、側面35aの溝35bに嵌り、振動子35をXマイナス方向に加圧している。
【0027】
また、移動子36は、振動子35における側面35aと反対側(Xマイナス側)の駆動面35cに隣接して配置されている。移動子36は、アルミニウムといった軽金属からなり、駆動面35cと対向する摺動面36aの表面には耐摩耗性向上のための摺動メッキが設けられている。
リニアガイド40は、移動子36の摺動面36aと反対側(Yマイナス側)の面36bと接し、第一内側固定筒32に固定されたガイド固定部40Aに固定されている。
リニアガイド40とは直線方向のベアリングで、移動子36を直進方向(図3、4のZ方向)に可動で、それ以外の方向(X,Y方向)の移動を規制する機能を有する。リニアガイド40の内部は球部材と滑らかな摺動部材から構成され、X方向やY方向から付勢力を受けてもZ方向に摺動抵抗無く滑らかに可動される。
【0028】
移動子36における、摺動面36aには、突起部37が設けられている。
また、光学レンズL3を保持するAF環38が、内側第一固定筒32Aの内周側に配置されている。
AF環38は、光軸OAと垂直な断面が円環状であって、光軸OAを中心とした対称位置(Y軸に沿った直径の両端)に、外形側に突出し、それぞれ嵌合穴43a,44aが設けられたガイド部43,44をそれぞれ2つずつ備える。
【0029】
一方、内側第一固定筒32Aと内側第二固定筒32Bとの間に渡って、第一直進レール41および第二直進レール42が設けられている。そして、ガイド部43の嵌合穴43aには第一直進レール41が挿通され、ガイド部44の嵌合穴44aには第二直進レール42が挿通されている。
【0030】
AF環38のZマイナス側には、Yプラス方向に延び、移動子36と連結するための連結部39が設けられている。
連結部39は、AF環38に固定されるとともに、第一直進レール41が貫通する穴が設けられたベース部39aと、ベース部39aのXマイナス側からYプラス方向(略径方向)に延びるフォーク部39bを有する。フォーク部39bの先端には溝39cが形成されている。そして、溝39cは、移動子36の摺動面36aに設けられた突起部37に嵌合している。そして、移動子36の光軸OAに沿った方向の駆動力は連結部39によりAF環38に伝達され、AF環38が駆動される。
【0031】
図5は、振動子35を詳細に説明する図である。
振動子35は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子や電歪素子等を例とした電気−機械変換素子(以下、圧電体と称する)50と、電気―機械変換素子50の駆動面35c側に設置された摺動部材51,52から構成されている。振動子35には縦1次モード振動の定在波と、曲げ2次モード振動の定在波が発生される。
【0032】
圧電体50の表面には4分割された電極55(55a,55b,55c,55d)が設けられており、裏面は分割のないGND電極が設けられている。4電極とも分極方向は同じである。駆動信号A相は電極55aおよび55dに印加し、駆動信号B相は、電極55bおよび55cに印加する。
【0033】
振動子35の中央部には、上述したように溝35bが設けられており、加圧バネ34がこの溝35bに嵌ることで、加圧位置のずれ防止ととともに、長手方向への支持も出来る様にされている。
摺動部材51,52は、耐摩耗性の良いエンジニアプラスチック材料から構成され、縦1次モード振動の定在波の振幅が最大になり、且つ曲げ2次モード振動の定在波の振幅が最大になる位置である図の場所に設けられている。
【0034】
次に、振動子35の振動の発生について、時系列的に説明する。図6(a)〜(e)は振動子の発生を説明する図である。
【0035】
(a)t=1:A相の電圧が−でB相の電圧が+の場合
圧電体50の電極55aが設けられた部分P1は長手方向に縮み、電極55bが設けられた部分P2は長手方向に伸び、電極55cが設けられた部分P3は長手方向に伸び、電極55dが設けられた部分P4は長手方向に縮むため、図6(a)中央右側の様な曲げ変位が発生する。
また、部分P1は長手方向に縮み、部分P2は長手方向に伸び、部分P3は長手方向に伸び、部分P4は長手方向に縮み、長さ方向の変位は相殺されるため、図6(a)中央左側の様に縦方法変位は発生しない。
【0036】
(b)t=2:A相の電圧が+、B相の電圧が+の場合
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に伸び、部分P3は長手方向に伸び、部分P4は長手方向に伸びる。このため、図6(b)中央右側の様に曲げ変位は発生しない。
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に伸び、部分P3は長手方向に伸び、部分P4は長手方向に伸びるため、図6(b)中央左側の様な長さ方向の変位が発生する。
【0037】
(c)t=3:A相の電圧が+、B相の電圧が−の場合
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に縮み、部分P3は長手方向に縮み、部分P4は長手方向に伸びるため、図6(c)中央右側の様な曲げ変位が発生する。
部分P1は長手方向に伸び、部分P2は長手方向に縮み、部分P3は長手方向に縮み、部分P4は長手方向に伸びるため、長さ方向の変位は相殺されるため、図6(c)中央左側の様に縦方法変位は発生しない。
【0038】
(d)t=4:A相の電圧が−、B相の電圧が+の場合
部分P1は長手方向に縮み、部分P2は長手方向に縮み、部分P3は長手方向に縮み、部分P4は長手方向に縮むため、図6(d)中央右側の様に曲げ変位は発生しない。
部分P1が長手方向に縮み、部分P2が長手方向に縮み、部分P3が長手方向に縮み、部分P4が長手方向に縮むため、図6(d)中央左側の様な長さ方向の変位が発生する。
【0039】
(e)t;5:t=1の場合、上記(a)に戻る
【0040】
この様に振動を発生させた場合、摺動部材51,52が貼られたC点、D点は図6の最も右側に示す図の様に楕円運動が発生する。この摺動部材51,52に移動子36を加圧接触させると、移動子36は楕円運動により摩擦力を受け、駆動される。
【0041】
図7は、第一実施形態の振動アクチュエータ10の駆動装置100を説明するブロック図である。振動アクチュエータ10の駆動/制御について説明する。
発振部101は、制御部102の指令により所望の周波数の駆動信号を発生する。
移相部103は、該発振部101で発生した駆動信号を位相が90°ずらした2つの駆動信号に分ける。
増幅部104,105は、移相部103によって分けられた2つの駆動信号をそれぞれ所望の電圧に昇圧する。
増幅部104,105からの駆動信号は、振動アクチュエータ10に伝達され、この駆動信号の印加により振動子に定在波が発生、摺動部材に楕円運動が発生し、移動子36が光軸OAに沿った方向に駆動される。
検出部106は、光学式エンコーダや磁気エンコーダ等により構成され、移動子36の駆動によって駆動された駆動物の位置や速度を検出し、検出値を電気信号として制御部102に伝達する。
【0042】
制御部102は、レンズ鏡筒30内またはカメラ1のCPU12からの駆動指令を基に振動アクチュエータ10の駆動を制御する。制御部102は、検出部106からの検出信号を受け、その値を基に、位置情報と速度情報を得て、目標位置に位置決めされるように発振器の周波数や増幅部104,105の電圧を制御する。また、制御部102は、レンズ鏡筒30やカメラ1より撮影情報(静止画モード/動画モード等)が伝達されるようになっている。このレンズ鏡筒30やカメラ1より伝達された撮影情報を基に、駆動信号の周波数をきめ細かに制御する。
【0043】
以上、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
【0044】
(1)本実施形態によると、一端が支持部材33に固定された加圧バネ34の他端により振動子35が加圧され、その加圧により振動子35は移動子36側に押圧される。このときの加圧力は、光軸OAと垂直且つ光軸OAと交わらない方向に生じる。より詳細には、加圧力は光軸OAを中心とした円周の接線方向に生じる。また、換言すると、振動アクチュエータ10は、光軸OAを中心とした筒状の内側第一固定筒32Aの外周面に取り付けられ、その振動アクチュエータ10の加圧バネ34の加圧力は、内側第一固定筒32Aの略接線方向に生じる。さらに言い換えると、加圧バネ34の加圧力は、光軸OAと、第一直進レール41とを結ぶ直線l(図4に図示)と直交する方向(Xマイナス方向)に生じる。
したがって、加圧バネ34がレンズ鏡筒30の径方向に突出せず、レンズ鏡筒30の径方向への大型化が防止可能で、リニア型振動アクチュエータ10のコンパクトな搭載が可能となる。
【0045】
(2)本実施形態によると、振動アクチュエータ10の各構成部材、すなわち加圧バネ34、振動子35、移動子36、リニアガイド40は、光軸OAと垂直且つ光軸OAと交わらない方向に並置されている。より詳細には、振動アクチュエータ10のそれらの構成部材は、光軸OAを中心とした円周の接線方向に並置されている。また、換言すると、振動アクチュエータ10のそれらの構成部材は、光軸OAを中心とした内側第一固定筒32Aの外周面に取り付けられ、その振動アクチュエータ10内の加圧バネ34の加圧力は、内側第一固定筒32Aの略接線方向に生じる。さらに言い換えると、振動アクチュエータ10の構成部材は、光軸OAと、第一直進レール41とを結ぶ直線l(図4)と直交する方向(Xマイナス方向)に生じる。
したがって、加圧バネ34がレンズ鏡筒30の径方向に突出しないため、レンズ鏡筒30の径方向への大型化が防止可能で、振動アクチュエータ10のコンパクトな搭載が可能となる。
【0046】
(3)また、振動アクチュエータ10における加圧力をリニアガイド40で受け、移動子36に設けられた突起部37に、AF環38に設けられた連結部39の溝39cを嵌合させてAF環38を直進駆動させる。このため、AF環38の直進を案内している第一直進レール41と第二直進レール42には、直進駆動力以外のカが加わらない(径方向の力が加わらない)。
これにより、AFレンズL3の直進運動時の摺動抵抗(ロス)が低減し、効率の良いAFレンズL3駆動が可能となる。
【0047】
(第二実施形態)
図8は、本発明の第二実施形態のレンズ鏡筒の振動アクチュエータ210を説明する図であり、第一実施形態の図3に対応する図である。第二実施形態においては、移動子236の突起部237が、移動子236の摺動面236aとリニアガイド側の側面236bの双方に設けられている。AF環238に固定されている連結部239にも、ベース部239aの両端から2つのフォーク部239bが延び、これらフォーク部239bに形成されたそれぞれの溝239cが、2箇所の突起部237にそれぞれ嵌合されている。それ以外の部分については第一実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0048】
また、移動子236の中心軸と、AF環238を案内する第一直進レール241の中心軸とが、AF環238における同一の径方向に配置されている。そして、上述のように、連結部239の2つのフォーク部239bは、その径を中心とした対称の位置において突起部237と嵌合している。
これにより、移動子236の駆動力は、連結部239、AF環238に均等に加わる。そして、AF環238を直進駆動させる時の、直進方向以外のカ(特にローリング方向の力)が、AF環238に加わらないようになる。
【0049】
また、AF環238のガイド部243に設けられた嵌合穴243aは円形の穴であるが、本実施形態においてガイド部244に設けられた嵌合穴244aはU字穴(U字溝)である。
嵌合穴244aはU字穴とすることにより、以下の効果を有する。
図9に示すように、連結部239の位置はAFレンズL3の中心Oを通る光軸OAと垂直な断面から、光軸OAに沿ってZマイナス方向にずれた位置に配置されている。このため、AF環238は、重心位置との関係で、光軸OAに対してチルトする方向に力が加わる。
移動子236およびAF環238が、光軸OA方向に移動する際、この力により、わずかにチルトが生じる場合もある。図9は、光軸OAに対するチルトの状態を説明する図であり、AF環238の軸線が光軸OAに対してα傾いている(実際にはこのように大きな角度とはならないが、誇張して図示している)。ガイド部244の穴が円形の穴の場合、連結部239に直進力が加えられた場合、この傾きによって第二直進レール242とガイド部244の穴との間に摺動負荷が生じる可能性がある。
【0050】
しかし、本実施形態によると、AF環238が若干傾いても、ガイド部244の穴がU字溝であって一方が開放しているので、径方向に逃げられるようになっている。
【0051】
また、AF環238の径方向に対して、移動子236の中心軸と、AF環238を案内する第一直進レール241の中心軸位置および第二直進レール242の中心軸位置が一直線となっている。これにより、チルト運動が発生した時の摺動負荷がさらに軽減される。
この様に、第二実施形態では、第一実施形態よりも、さらにAFレンズの直進運動時の摺動抵抗(ロス)を低減することができる。
【0052】
(第三実施形態)
図10は、本発明の第三実施形態を説明する図である。
第三実施形態は、第一実施形態に対して、移動子に設けられた突起部337とAF環に接続されたフォーク部339aの溝339cとの嵌合方法が異なる。その他の部分は同様であるので説明は省略する。
【0053】
突起部337と溝339cとの隙間があると、起動および停止時に、突起部337と溝339cの側面が衝突し、衝撃力が発生し、AF環に伝達される。それを繰り返していくと、直進レールと溝との摺動部が傷み、これにより摺動抵抗が生じる。
図10(a)に示す実施形態では、突起部337を円柱状の樹脂とし、その径は溝339cの幅よりもやや大きくなっている。そして、溝339cに突起部337を嵌め込む様にして、突起部337と連結部339(フォーク部339a)と嵌合させる。このようにすることで、溝339cと突起部337とが光軸OA方向に隙間なく嵌め合わされ、がたが生じず、起動および停止時に、突起部337と溝339cの側面が衝突して衝撃力が発生することがない。したがって、直進レールとガイド部との摺動部が傷むことなく、摺動抵抗が低減される。
【0054】
また、図10(b)は、第三実施形態の変形形態を示したもので、連結部339’のフォーク部339a’を2部材にし、ネジ340で止めることにより突起部337’を挟み込んでいる。この変形形態においても、溝339c’と突起部337’とが光軸OA方向に隙間なく嵌め合わされるため、がたが生じず、起動および停止時に、突起部337’と溝339c’の側面が衝突して衝撃力が発生することがない。したがって、直進レールとガイド部との摺動部が傷むことなく、摺動抵抗が低減される。
【0055】
(第四実施形態)
図11は、本発明の第四実施形態の振動アクチュエータ410を説明する図である。第四実施形態は、移動子436とAF環438とが一体的に製造されている。その他の部分は第2実施形態と同様であるのでその説明は省略する。振動子435は、支持部材433との間に設置された加圧バネ434により、移動子436に加圧接触される。移動子436は、振動子435によってリニアガイド440側に押圧され、振動子435の駆動力により光軸OAに沿って直進駆動される。リニアガイド440は、固定筒の外面に設けられた固定部材432Aaに固定支持される。
【0056】
AF環438における移動子436が設けられている部分に対して光軸OAを挟んだ対称の位置には、第二実施形態と同様にU字状の溝444bが設けられたガイド部444が形成されている。本実施形態では、第一および第二実施形態と異なり、第一直進レールは設けられておらず、第二直進レール442のみ設けられている。
ガイド部444の溝444bには、その第二直進レール442が挿通されている。溝444bも、第二実施形態と同様に、U字状に形成され、径方向に逃げられるようになっている。
【0057】
本実施形態では、移動子436をAF環438と一体化したことで、第一直進レールを省略することができ、部品点数を低減することができる。
また、振動アクチュエータ410の加圧方向を上述の実施形態と同様にレンズ鏡筒の周方向にし、移動子436の出力取出しスペースをレンズ鏡筒30の径方向に設けたため、移動子36とAF環438とを一体的に接続できる構成が可能となった。
【0058】
上述の実施形態では、縦1次振動モードと曲げ2次振動モードとを組み合わせた振動子を用いたが、他の振動モードの組み合わせ、例えば、縦1次振動モードと曲げ4次振動モードの組み合わせの振動アクチュエータでも良く、リニア型振動アクチュエータなら、同様な効果が得られる。
【0059】
(変形例)
上述した実施形態1〜4では、振動子35に対する加圧力を光軸OAと垂直且つ光軸OAと交わらない方向としたが、光軸と交わらない方向(例えば、光軸の方向に対してねじれの位置となる方向)に加圧してもよい。また、例えば、光軸と垂直方向から少し傾いた略垂直方向で、光軸と交わらない方向に加圧してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:カメラ、10,210,310:振動アクチュエータ、30:レンズ鏡筒、34,234,434:加圧バネ、35,235,435:振動子、35c:駆動面、36,236,436:移動子、38,238,438:AF環
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子の励振により光軸に沿った方向の駆動力を駆動面に発生する振動子と、
前記駆動面に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子に対して前記光軸に沿って直進相対運動する相対運動部材と、
前記振動子の前記駆動面と前記相対運動部材との間に、光軸と交わらない方向に加圧力を発生させる加圧機構と、
を備えるリニア型の振動アクチュエータ、および、
撮影用レンズを保持し、前記相対運動部材とともに、該相対運動部材によって前記光軸に沿って直進運動するレンズ環、を備えたこと、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒において、
前記加圧機構は、前記加圧力を、前記光軸に対してねじれの位置となる方向に生じさせること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒において、
前記加圧機構は、前記加圧力を、前記光軸と略直交し、交わらない方向に生じさせること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1から3に記載のレンズ鏡筒において、
前記加圧機構は、前記加圧力を、前記光軸を中心とした円周の接線方向に生じさせること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
前記振動子、前記相対運動部材、前記加圧機構は、光軸と交わらない方向に並置されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
固定部に固定され且つ前記光軸に沿って延びる第一直進案内軸と、
前記固定部に固定され且つ前記光軸に沿って延びるとともに、前記第一直進案内軸に対して前記光軸を中心として対称位置に配置された第二直進案内軸と、
を備え、
前記レンズ環は、前記第一直進案内軸に案内されて移動する第一案内部と、前記第二直進案内軸に案内されて移動する第二案内部と、を有し、
前記第二案内部は、前記第二直進案内軸に対して、前記光軸を中心とした径方向に移動可能に保持されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
前記レンズ環は、前記相対運動部材と一体的に接合されるとともに、該相対運動部材に対して前記光軸を中止として対称位置に配置された第三案内部を有し、
前記レンズ鏡筒は、固定部に固定され、前記光軸に沿って延びるともに、前記第三案内部を案内する第三直進案軸を備えること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備えるカメラ。
【請求項9】
電気機械変換素子の励振により光軸に沿った方向の駆動力を駆動面に発生する振動子と、
前記駆動面に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子に対して前記光軸に沿って直進相対運動する相対運動部材と、
前記振動子の前記駆動面と前記相対運動部材との間に、前記光軸とねじれの位置となる方向に加圧力を発生させる加圧機構と、
を備えるリニア型の振動アクチュエータ、および、
撮影用レンズを保持し、前記相対運動部材とともに、該相対運動部材によって前記光軸に沿って直進運動するレンズ環、を備えたこと、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項1】
電気機械変換素子の励振により光軸に沿った方向の駆動力を駆動面に発生する振動子と、
前記駆動面に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子に対して前記光軸に沿って直進相対運動する相対運動部材と、
前記振動子の前記駆動面と前記相対運動部材との間に、光軸と交わらない方向に加圧力を発生させる加圧機構と、
を備えるリニア型の振動アクチュエータ、および、
撮影用レンズを保持し、前記相対運動部材とともに、該相対運動部材によって前記光軸に沿って直進運動するレンズ環、を備えたこと、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒において、
前記加圧機構は、前記加圧力を、前記光軸に対してねじれの位置となる方向に生じさせること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒において、
前記加圧機構は、前記加圧力を、前記光軸と略直交し、交わらない方向に生じさせること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1から3に記載のレンズ鏡筒において、
前記加圧機構は、前記加圧力を、前記光軸を中心とした円周の接線方向に生じさせること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
前記振動子、前記相対運動部材、前記加圧機構は、光軸と交わらない方向に並置されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
固定部に固定され且つ前記光軸に沿って延びる第一直進案内軸と、
前記固定部に固定され且つ前記光軸に沿って延びるとともに、前記第一直進案内軸に対して前記光軸を中心として対称位置に配置された第二直進案内軸と、
を備え、
前記レンズ環は、前記第一直進案内軸に案内されて移動する第一案内部と、前記第二直進案内軸に案内されて移動する第二案内部と、を有し、
前記第二案内部は、前記第二直進案内軸に対して、前記光軸を中心とした径方向に移動可能に保持されていること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
前記レンズ環は、前記相対運動部材と一体的に接合されるとともに、該相対運動部材に対して前記光軸を中止として対称位置に配置された第三案内部を有し、
前記レンズ鏡筒は、固定部に固定され、前記光軸に沿って延びるともに、前記第三案内部を案内する第三直進案軸を備えること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備えるカメラ。
【請求項9】
電気機械変換素子の励振により光軸に沿った方向の駆動力を駆動面に発生する振動子と、
前記駆動面に加圧接触し、前記駆動力により前記振動子に対して前記光軸に沿って直進相対運動する相対運動部材と、
前記振動子の前記駆動面と前記相対運動部材との間に、前記光軸とねじれの位置となる方向に加圧力を発生させる加圧機構と、
を備えるリニア型の振動アクチュエータ、および、
撮影用レンズを保持し、前記相対運動部材とともに、該相対運動部材によって前記光軸に沿って直進運動するレンズ環、を備えたこと、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−54171(P2013−54171A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191586(P2011−191586)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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