説明

レンズ鏡筒の絞機構

【課題】コンパクトで部品点数が少ない構成で絞羽根と周辺部材の干渉を防ぐことができるレンズ鏡筒の絞機構を得る。
【解決手段】支持環の撮影光路用開口の周囲に形成され光軸と直交する絞羽根支持面と、この絞羽根支持面上に形成されて光軸側から支持環の外径方向に向けて延設された長溝と、支持環に対して光軸と平行な回動軸を中心として回動可能に支持され、絞羽根支持面に沿って回動して撮影光路用開口の開口径を変化させる絞羽根とを有し、光軸を中心とする4つの象限のうち対角位置にある2つの象限の一方と他方に長溝と絞羽根の回動中心を配置し、絞羽根はいずれの回動位置にあるときも長溝を幅方向に橋絡して絞羽根支持面に支持される形状をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ鏡筒の絞機構に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒で光線が通る開口径を変化させる可変開口絞機構は様々なタイプが知られているが、特許文献1のように光軸と直交する面に沿って回動する絞羽根(セクター)を用いるものが多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−117135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開口形成部材として絞羽根を用いる可変開口絞機構では、絞羽根が回動する際に、他の部位との干渉による動作不良の発生を防ぐ必要がある。その対策として、引っ掛かりを生じ得る段差部が絞羽根に隣接して存在する場合には、当該段差部と絞羽根の間にシートなどの干渉防止部材を配していたが、干渉防止部材による構成の複雑化や大型化(特に光軸方向の厚み増大)を防ぎたいという要求があった。
【0005】
本発明は以上の問題意識に基づきなされたものであり、コンパクトで部品点数が少ない構成で絞羽根と周辺部材の干渉を防ぐことができるレンズ鏡筒の絞機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光軸上に撮影光路用開口を有する支持環と、支持環の撮影光路用開口の周囲に形成され光軸と直交する絞羽根支持面と、支持環の絞羽根支持面上に形成され、撮影光路用開口が位置する光軸側から支持環の外径方向に向けて延設された長溝と、支持環に対して光軸と平行な回動軸を中心として回動可能に支持され、絞羽根支持面に沿って回動して撮影光路用開口の開口径を変化させる絞羽根とを有するレンズ鏡筒の絞機構において、光軸を中心とする4つの象限のうち対角位置にある2つの象限の一方と他方に長溝と絞羽根の回動中心を配置し、絞羽根はいずれの回動位置にあるときも長溝を幅方向に橋絡して絞羽根支持面に支持される形状をなすことを特徴としている。
【0007】
具体的には、絞羽根が少なくとも、長溝と絞羽根の回動中心が設けられる前記2つの象限以外の2つの象限で絞羽根支持面と常時重畳して支持されるように構成するとよい。
【0008】
絞羽根は、光軸方向に貫通して撮影光路用開口との重畳位置の変化によりその開口径を変化させる開口部と、該開口部の周囲の遮光板部とを有し、該遮光板部が開口部の全体を囲む閉鎖開口形状とすることが好ましい。あるいは、遮光板部が開口部を部分的に囲み該開口部の一部が外縁に開放された開放開口形状とすることも可能である。
【0009】
本発明は、単独の支持環と絞羽根からなる絞機構にも適用可能であるが、絞羽根支持面を光軸方向に対向させた前後一対の支持環を備え、該一対の支持環の絞羽根支持面の間に一対の絞羽根を光軸方向に隣接させて設けた構成においてより有効となる。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、特別な干渉防止用の部材を設けることなく、支持環の絞羽根支持面上に形成した長溝に対する絞羽根の干渉を防ぐことができ、コンパクトで部品点数が少ないレンズ鏡筒の絞機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した可変開口絞機構を搭載したズームレンズ鏡筒の一実施形態を示す撮影状態(ズーム域)での断面図である。
【図2】同ズームレンズ鏡筒の収納(沈胴)状態での断面図である。
【図3】可変開口絞機構を構成する絞羽根とその支持構造を示す、光軸方向前方から見た分解斜視図である。
【図4】可変開口絞機構を構成する絞羽根とその支持構造を示す、光軸方向後方から見た分解斜視図である。
【図5】可変開口絞機構の大開口形成状態における2群レンズ移動枠と第2絞羽根を示す図である。
【図6】可変開口絞機構の大開口形成状態におけるシャッタブロックと第1絞羽根を示す図である。
【図7】可変開口絞機構の小開口形成状態における2群レンズ移動枠と第2絞羽根を示す図である。
【図8】可変開口絞機構の小開口形成状態におけるシャッタブロックと第1絞羽根を示す図である。
【図9】第2の実施形態の可変開口絞機構の大開口形成状態における2群レンズ移動枠と第2絞羽根を示す図である。
【図10】第2の実施形態の可変開口絞機構の大開口形成状態におけるシャッタブロックと第1絞羽根を示す図である。
【図11】第2の実施形態の可変開口絞機構の小開口形成状態における2群レンズ移動枠と第2絞羽根を示す図である。
【図12】第2の実施形態の可変開口絞機構の小開口形成状態におけるシャッタブロックと第1絞羽根を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に図1及び図2を参照して、本発明を適用した沈胴式ズームレンズ鏡筒ZLの一実施形態の全体構造を説明する。このズームレンズ鏡筒ZLの撮像光学系は、物体(被写体)側から順に第1レンズ群LG1、シャッタS、可変開口絞A、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ25及び撮像素子26を備えている。以下の説明中で光軸方向とは、この撮影光学系の光軸Oと平行な方向を意味し、前方とは光軸方向の前方(被写体側)、後方とは光軸方向の後方(像面側)を意味する。
【0013】
ズームレンズ鏡筒ZLは固定部材として筒状のハウジング22を有し、ハウジング22の後部に撮像素子ホルダ21が固定される。ローパスフィルタ25と撮像素子26はユニット化されて撮像素子ホルダ21の前面部に固定されている。
【0014】
第3レンズ群LG3は、ズームレンズ鏡筒ZLにおけるフォーカスレンズ群であり、3群レンズ枠51に保持されて光軸方向に移動可能に支持されている。3群レンズ枠51は、図示を省略したAFモータの駆動によって光軸方向に移動される。
【0015】
ハウジング22の内側には、3群レンズ枠51の支持駆動手段とは別に、図示を省略したズームモータにより駆動制御される変倍群(カム環)ブロックが支持されている。変倍群(カム環)ブロックは、直進案内環10、カム環11、繰出筒12及び2群レンズブロック80を含んでいる。
【0016】
カム環11は、繰出筒12と共にズームレンズ鏡筒ZLの外観筒を構成しており、ハウジング22の内周面に形成したカム環ガイド溝22aに対して摺動可能に嵌るガイド突起11aを有する。カム環11は、ズームモータにより回転駆動されるズームギヤ(図示略)の駆動力をギヤ部11bで受けて回転され、カム環ガイド溝22aの案内により回転しながら光軸方向に移動する。
【0017】
直進案内環10は、ハウジング22の内面に形成した直進案内溝22bに対して直進案内突起10aを摺動可能に係合させることで、光軸方向に直進移動可能に案内されている。直進案内突起10aの基部を構成する壁部と回転案内爪10bの間に回転案内爪11cを挟むことによって(図1の下半断面参照)、2群用直進案内環10とカム環11は、相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように結合されている。
【0018】
図3及び図4に示すように、2群レンズブロック80は、2群レンズ移動枠(支持環)8の前部にシャッタブロック(支持環)100を固定した構成であり、2群レンズ移動枠8から外径方向に突出する直進案内キー8aを、直進案内環10に形成した光軸方向への長孔である直進案内スロット10cに対して摺動可能に係合させることにより光軸方向へ直進案内されている。シャッタブロック100は光軸Oを囲む環状をなす筐体を有し、シャッタSは該筐体内に光軸Oと平行な軸により軸支された複数枚のシャッタ羽根で構成され、この複数のシャッタ羽根をシャッタブロック100に内蔵したアクチュエータにより駆動することで、シャッタSが開閉される。シャッタブロック100の後部には、ズームレンズ鏡筒ZLの状態(焦点距離)に応じて開口径が変化する可変開口絞Aが設けられている。可変開口絞Aは、光軸Oと平行な軸により軸支された第1絞羽根74と第2絞羽根75を有し、ズーム域のテレ端側(図1の下半断面)では開放F値を小さくするため開口径を大きくし、ワイド端側(図1の上半断面)では有害光線(像性能に寄与しない収差大の光)の入射を制限するべく開口径を小さくするように開度が切り替えられる。可変開口絞Aの詳細については後述する。
【0019】
また、2群レンズ移動枠8の内部には、自由端部に第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ保持枠6の基部が光軸方向に軸線を向けた回動軸(図示せず)を中心として揺動可能に支持されている。第2レンズ群LG2は、ワイド端からテレ端までのズーム域全体においては、図1に示す光軸上への挿入位置に位置し、収納位置においては、図2に示す光軸からの退避位置(光軸O上からの離脱位置)に位置する。
【0020】
カム環11の内周面に形成した2群制御カム溝CG2に対し、2群レンズ移動枠8に設けた2群用カムフォロアCF2が摺動可能に係合している。2群用カムフォロアCF2は、直進案内キー8aの外径部に設けられ、直進案内環10を径方向に貫通する直進案内スロット10cを通して2群用カムフォロアCF2との係合位置まで突出されている。2群レンズ移動枠8(2群レンズブロック80)は直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群制御カム溝CG2の形状に従って、2群レンズ移動枠8(2群レンズブロック80)が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
【0021】
繰出筒12内には第1レンズ群LG1が保持されている。繰出筒12は内面側に設けた直進案内キー12a(図1)を直進案内環10の直進案内溝10dに対して摺動可能に係合させることで光軸方向へ直進案内されている。なお、繰出筒12の直進案内機構である直進案内溝10d及び直進案内キー12aと、2群レンズブロック80の直進案内機構である直進案内スロット10c及び直進案内キー8aを、図1の上半断面で同一断面位置に示しているが、それぞれの直進案内機構の実際の周方向位置は異なる。
【0022】
カム環11の内周面に形成した1群制御カム溝CG1に対し、繰出筒12の後端部付近に設けた1群用カムフォロアCF1が摺動可能に係合している。繰出筒12は直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、1群制御カム溝CG1の形状に従って繰出筒12が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
【0023】
以上の構造によって変倍群(カム環)ブロックは、ズームモータによってカム環11を回転駆動させると、該カム環11と直進案内環10が光軸方向に移動すると共に、カム環11の1群制御カム溝CG1と2群制御カム溝CG2の案内によって繰出筒12と2群レンズブロック80が光軸方向に所定の軌跡で相対移動する。図1の上半に示すワイド端と図1の下半に示すテレ端の間のズーム域では、この繰出筒12と2群レンズブロック80の相対移動によって第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の位置を変化させて焦点距離を変化させる。また、AFモータの駆動力により第3レンズ群LG3を保持する3群レンズ枠51を光軸方向に移動させることによりフォーカシングを行う。図1の上半のワイド端位置からズームモータを収納方向に駆動すると、カム環11や直進案内環10を含む変倍群(カム環)ブロックが光軸方向後方に移動されて撮像素子ホルダ21に接近し、やがて図2に示す収納状態になる。この収納動作の途中で、2群レンズ移動枠8内に保持された2群レンズ保持枠6は撮像素子ホルダ21に設けた退避案内突起(不図示)に当接し、図1に示す光軸上への挿入位置から図2に示す光軸からの退避位置に回動される。
【0024】
図3ないし図8は、ズームレンズ鏡筒ZLに搭載された可変開口絞Aとその支持構造の一実施形態を示している。2群レンズブロック80を構成する2群レンズ移動枠8は、その周縁部から前方に突出する係止腕8bを備え、シャッタブロック100はこの係止腕8bをスナップフィットさせる係止凹部100aを備えていて、2群レンズ移動枠8とシャッタブロック100の間に可変開口絞Aを支持した状態で、係止腕8bと係止凹部100aが係合している。可変開口絞Aを構成する第1絞羽根74と第2絞羽根75はそれぞれ、薄板状の遮光板部74d、75d上に光軸方向へ貫通する態様で回動中心穴74a、75a、開閉カム穴74b、75b、及び開口形成部74c、75cを有している。第1絞羽根74と第2絞羽根75はいずれも、開口形成部74c、75cの周囲が遮光板部74d、75dによって閉じられた(遮光板部74d、75dが開口形成部74c、75cを囲む環状をなす)閉鎖開口形状をなし、それぞれの開口形成部74c、75cは、部分円形状の大径穴部74c1、75c1と部分円形状の小径穴部74c2、75c2の組み合わせによって形成されている。
【0025】
2群レンズ移動枠8の前面(シャッタブロック100に対向する側の面)には、第1絞羽根74と第2絞羽根75のそれぞれの回動中心穴74a、75aに嵌まる2つの軸突起81、82が突出形成されている。第1絞羽根74は軸突起81を中心に回動(揺動)可能に支持され、第2絞羽根75は軸突起82を中心に回動(揺動)可能に支持される。第1絞羽根74と第2絞羽根75は、開口形成部74c、75cの大径穴部74c1、75c1が重なって大開口Aaを形成する大開口形成位置(図5、図6)と、開口形成部74c、75cの小径穴部74c2、75c2が重なって小開口Abを形成する小開口位置(図7、図8)に回動することができる。2群レンズ移動枠8に支持される第2レンズ群LG2は、全レンズ群中で最も小径のレンズ群であり、この小径レンズ群の前方に配置することで可変開口絞Aを小型にすることができる。
【0026】
2群レンズ移動枠8の前面にはまた、光軸Oと直交する平面である絞羽根支持面8cと、絞羽根支持面8cの中央付近に形成され光軸Oを中心とする円形状の中央開口8dと、中央開口8dに連通する貫通長溝部(長溝)8eが形成されている。貫通長溝部8eは、中央開口8dが形成された光軸O側から、2群レンズ移動枠8の外縁部近傍に形成される外縁開口部8fまで外径方向に向けて延設される。第2絞羽根75は絞羽根支持面8cの前方に隣接しており、絞羽根支持面8cに沿って回動する。中央開口8dと貫通長溝部8eはいずれも光軸Oと平行な方向に貫通形成されており、2群レンズ保持枠6の前端部付近が進入する。具体的には、2群レンズ保持枠6が図1に示す光軸上の挿入位置にあるときには、2群レンズ保持枠6の前端部付近が中央開口8dに進入し(図1)、2群レンズ保持枠6が光軸O上から離脱する退避位置に向けて移動するとき、2群レンズ保持枠6の前端部付近が貫通長溝部8eに進入する。図5に示すように、中央開口8dは大開口Aa(大径穴部75c1)よりも大径である。
【0027】
シャッタブロック100には、光軸Oを中心とする円形状の固定開口100bが、光軸Oと平行な方向に貫通形成されている。図6に示すように、固定開口100bは大開口Aa(大径穴部74c1)よりも小径である。つまり、可変開口絞Aが大開口Aaを形成するとき、光軸Oを中心とする実際の光路開口は固定開口100bによって規定される。シャッタブロック100の後面(2群レンズ移動枠8に対向する側の面)には、固定開口100bの周囲に絞羽根支持面100cと有底長溝部(長溝)100dが形成されている。絞羽根支持面100cは光軸Oと直交する平面である。第1絞羽根74は絞羽根支持面100cの後方に隣接しており、絞羽根支持面100cに沿って回動する。有底長溝部100dは、絞羽根支持面100cに対して光軸方向前方にオフセットして形成された有底の凹部であり、固定開口100bが形成された光軸O側から、シャッタブロック100の外縁部近傍に形成される外縁開口部100eまで外径方向へ向けて延設される。有底長溝部100d内には、図示を省略するNDフィルタが支持される。なお、シャッタSは固定開口100bの前方に位置している。
【0028】
シャッタブロック100と2群レンズ移動枠8の間には、光軸と平行な開閉軸72が回転自在に支持されている。図1と図2に示すように、シャッタブロック100には、開閉軸72の前端小径部を挿入支持する回動支持穴100xが形成され、2群レンズ移動枠8には、開閉軸72の後端小径部を挿入支持する回動支持穴8xが形成されている。この開閉軸72は、径方向に突出する径方向腕72aを有し、この径方向腕72a上の偏心位置に、軸突起81と軸突起82の間に位置して、第1絞羽根74と第2絞羽根75の開閉カム穴74b、75bに共通に嵌まる開閉ピン72bが設けられている。開閉カム穴74b、75bは、大開口維持領域74b1、75b1と小開口維持領域74b2、75b2を有しており、開閉ピン72bが大開口維持領域74b1、75b1と小開口維持領域74b2、75b2の間を移動するときに、第1絞羽根74と第2絞羽根75が回動中心穴74a、75aを中心に回動して開口形成部74c、75cによる開口径が大開口Aaと小開口Abの間で変化する。つまり、開閉ピン72bが大開口維持領域74b1、75b1内に位置するときには、同開口径が大開口Aaに維持され、開閉ピン72bが小開口維持領域74b2、75b2内に位置するときには、同開口径が小開口Abに維持される。2群レンズ移動枠8の前面には、第1絞羽根74が当接可能なストッパ突起86と第2絞羽根75が当接可能なストッパ突起87が突出形成されていて、各絞羽根74、75はそれぞれ対応するストッパ突起86、87に対して小開口形成位置で当接してその位置が正確に維持される。
【0029】
2群レンズ移動枠8には、軸突起81と同軸に、該軸突起81より大径のバネ掛け柱83が形成されており、このバネ掛け柱83に回動付勢バネ84のコイル部84aが嵌められている。回動付勢バネ84は、コイル部84aから延びて反力受け部85に支持されるトーション腕84bと、コイル部84aから延びて開閉軸72に形成したバネ掛け腕部72cに支持されるトーション腕84cを有しており、開閉軸72を図5及び図7の時計方向、図6及び図8の反時計方向に回動付勢している。この回動付勢バネ84の回動付勢力によって図5に示すようにバネ掛け腕部72cが2群レンズ移動枠8の内周面に当接することで、開閉軸72の自由状態での位置が決まる。開閉軸72の自由状態の位置で開閉ピン72bは、第1絞羽根74と第2絞羽根75の開閉カム穴74b、75bの大開口維持領域74b1、75b1に位置して、開口形成部74c、75cによる開口径を大開口Aaに維持する。つまり、本実施形態の可変開口絞Aは常開型として構成されている。
【0030】
開閉軸72にはまた、径方向に突出させて回動制御突起72dが形成されている。この回動制御突起72dは、ズームレンズ鏡筒ZLのテレ端からワイド端の直前においては外力を受けることがなく、従って第1絞羽根74と第2絞羽根75は大開口Aaに維持されている(図5及び図6)。これに対し、2群レンズ移動枠8が撮影領域の後方端に位置するワイド端近傍においては、回動制御突起72dが直進案内環10の内面に形成した強制回動案内面(図示略)に係合して、回動付勢バネ84の力に抗して回動し、その結果、第1絞羽根74と第2絞羽根75は、開閉軸72の開閉ピン72b及び開閉カム穴74b、75bを介して、小開口Abになる(図7及び図8)。つまり、短焦点距離側で有害光の除去が図られる。
【0031】
シャッタブロック100の絞羽根支持面100cと2群レンズ移動枠8の絞羽根支持面8cはいずれも、第1絞羽根74と第2絞羽根75の回動平面と略平行な面であり、第1絞羽根74が絞羽根支持面100cに面して位置し、第2絞羽根75が絞羽根支持面8cに面して位置している。シャッタブロック100の後面側では、絞羽根支持面100cと有底長溝部100dとの間に段差があり、2群レンズ移動枠8の前面側では、絞羽根支持面8cと中央開口8d及び貫通長溝部8eとの間に段差がある。以下に述べるように、これらの段差に対して引っ掛かりを生じずにスムーズに第1絞羽根74と第2絞羽根75の回動を行うことが可能な構造になっている。
【0032】
まず、第2絞羽根75と2群レンズ移動枠8の関係を説明する。図5及び図7に示すように、光軸Oを中心として90度ずつ等分した4つの角度範囲である第1〜第4象限Q1〜Q4を設定すると、第1象限Q1に外縁開口部8fを含む貫通長溝部8eが形成されていて、これと対角の位置にある第3象限Q3に第2絞羽根75の回動中心である回動中心穴75a及び軸突起82が設けられている。そして、図5の大開口形成位置から図7の小開口形成位置までの第2絞羽根75の回動域の全体において、第2絞羽根75の遮光板部75dと絞羽根支持面8cの重畳領域が、第1象限Q1から第4象限Q4の全てに存在している。この配置により、回動平面(光軸Oと直交する平面)に対する第2絞羽根75の傾きを絞羽根支持面8cによって抑え、第2絞羽根75の平面性を維持することができる。また、貫通長溝部8eが形成される第1象限Q1を挟む両側の第2象限Q2及び第4象限Q4で第2絞羽根75の遮光板部75dと絞羽根支持面8cが常時重畳し、第1象限Q1において第2絞羽根75(遮光板部75d)が貫通長溝部8eを幅方向(図5及び図7の左右方向)に跨ぐ橋絡形状となるため、第2絞羽根75において貫通長溝部8eの縁部と干渉する可能性を持つ箇所がなくなる。従って、第2絞羽根75の回動に際して、貫通長溝部8eの縁部に対して第2絞羽根75の一部が引っ掛かることなくスムーズに動作させることができる。特に、第2絞羽根75を開口形成部75cの外側全体が遮光板部75dによって囲まれた閉鎖開口形状としたことにより、平面性の維持、貫通長溝部8eとの干渉防止に関してより有利になっている。
【0033】
続いて第1絞羽根74とシャッタブロック100の関係を説明する。図6及び図8に示すように、光軸Oを中心として90度ずつ等分して設定した第1〜第4象限Q1〜Q4のうち、第1象限Q1に外縁開口部100eを含む有底長溝部100dが形成されていて、これと対角の位置にある第3象限Q3に第1絞羽根74の回動中心である回動中心穴74aが設けられている。そして、図6の大開口形成位置から図8の小開口形成位置までの回動域の全体において、第1絞羽根74の遮光板部74dと絞羽根支持面100cの重畳領域が、第2象限Q2、第3象限Q3及び第4象限Q4に存在している(第1象限Q1については、図6の大開口形成位置付近を除き、第1絞羽根74の回動域の大半で遮光板部74dが絞羽根支持面100cと重畳する)。前述の第2絞羽根75と2群レンズ移動枠8の関係と同様に、第2象限Q2及び第4象限Q4で第1絞羽根74の遮光板部74dと絞羽根支持面100cが常時重畳し、第1絞羽根74(遮光板部74d)が有底長溝部100dを幅方向(図6及び図8の左右方向)に跨ぐ橋絡形状となっているため、第1絞羽根74において有底長溝部100dの縁部と干渉する可能性を持つ箇所が存在しない。また、回動平面(光軸Oと直交する平面)に対する第1絞羽根74の傾きを絞羽根支持面100cによって抑え、第1絞羽根74の平面性を維持することができる。よって、第1絞羽根74は、有底長溝部100dの縁部に対して引っ掛かることなくスムーズに動作することができる。特に、第1絞羽根74を開口形成部74cの外側全体が遮光板部74dによって囲まれた閉鎖開口形状としたことにより、平面性の維持、有底長溝部100dとの干渉防止に関してより有利になっている。
【0034】
以上の構成により、第2絞羽根75と2群レンズ移動枠8の間や、第1絞羽根74とシャッタブロック100の間に干渉防止用の別部材を設けずに可変開口絞Aを構成することができ、構成の簡略化と小型化(特に光軸方向の薄型化)を達成することができる。
【0035】
図9ないし図12に絞羽根の形状を異ならせた別実施形態を示す。図9ないし図12において、先の実施形態と共通する要素は同じ符号で示している。この実施形態における第1絞羽根174と第2絞羽根175は、先の実施形態の第1絞羽根74や第2絞羽根75のように開口形成部74c、75cの外側全体が遮光板部74d、75dで囲まれた閉鎖開口形状ではなく、開口形成部174c、175cの一部が遮光板部174d、175dに囲まれずに各絞羽根174、175の外縁に開放された開放開口形状となっている。詳細には、開口形成部174c、175cのうち小径穴部174c2、175c2は先の実施形態の小径穴部74c2、75c2と同じ形状であり、これに続く大径穴部174c1、175c1が第1絞羽根174と第2絞羽根175の外縁に連通している。第1絞羽根174と第2絞羽根175はいずれも、回動中心穴74a、75aから遠い遮光板部174d、175dの先端側に、大径穴部174c1、175c1の形成領域から延長された遮光板延長部174e、175eを有する。第1絞羽根174は、図12に示す小開口形成位置で、遮光板延長部174eの先端を2群レンズ移動枠8の前面のストッパ突起186に当接させ、第2絞羽根175は、図11に示す小開口形成位置で、遮光板延長部175eの先端を2群レンズ移動枠8の前面のストッパ突起187に当接させる。
【0036】
第2絞羽根175は、図9の大開口形成位置から図11の小開口形成位置までの回動域の全体で、第2象限Q2と第4象限Q4にて遮光板延長部175eを含む遮光板部175dを絞羽根支持面8cと重畳させ、遮光板部175dが貫通長溝部8eを幅方向(図9及び図11の左右方向)に跨ぐ橋絡形状とされている。第1絞羽根174も同様に、図10の大開口形成位置から図12の小開口形成位置までの回動域の全体で、第2象限Q2と第4象限Q4にて遮光板延長部174eを含む遮光板部174dを絞羽根支持面100cと重畳させ、遮光板部174dが有底長溝部100dを幅方向(図10及び図12の左右方向)に跨ぐ橋絡形状とされている。これにより、回動平面(光軸Oと直交する平面)に対する第1絞羽根174と第2絞羽根175の傾きを抑え、貫通長溝部8eや有底長溝部100d内への各絞羽根174、175の進入(干渉)を防ぐことができる。
【0037】
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、図示実施形態は、焦点距離に応じて開放F値を変化させるズームレンズ鏡筒の可変開口絞機構へ適用したものであるが、広く露光制御用の絞機構一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
6 2群レンズ保持枠
8 2群レンズ移動枠(支持環)
8c 絞羽根支持面
8d 中央開口
8e 貫通長溝部(長溝)
8f 外縁開口部
8x 回動支持穴
10 直進案内環
11 カム環
12 繰出筒
21 撮像素子ホルダ
22 ハウジング
25 ローパスフィルタ
26 撮像素子
51 3群レンズ枠
72 開閉軸
72b 開閉ピン
74 174 第1絞羽根
74a 回動中心穴
74b 開閉カム穴
74b1 大開口維持領域
74b2 小開口維持領域
74c 174c 開口形成部
74c1 174c1 大径穴部
74c2 174c2 小径穴部
74d 174d遮光板部
75 175 第2絞羽根
75a 回動中心穴
75b 開閉カム穴
75b1 大開口維持領域
75b2 小開口維持領域
75c 175c 開口形成部
75c1 175c1 大径穴部
75c2 175c2 小径穴部
75d 175d 遮光板部
80 2群レンズブロック
81 82 軸突起
84 回動付勢バネ
86 87 ストッパ突起
100 シャッタブロック(支持環)
100a 係止凹部
100b 固定開口
100c 絞羽根支持面
100d 有底長溝部(長溝)
100e 外縁開口部
100x 回動支持穴
174e 175e 遮光板延長部
A 可変開口絞
Aa 大開口
Ab 小開口
CF1 1群用カムフォロア
CG1 1群制御カム溝
CF2 2群用カムフォロア
CG2 2群制御カム溝
LG1 第1レンズ群
LG2 第2レンズ群
LG3 第3レンズ群
O 光軸
S シャッタ
ZL ズームレンズ鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸上に撮影光路用開口を有する支持環;
前記支持環の前記撮影光路用開口の周囲に形成した、光軸と直交する絞羽根支持面;
前記支持環の前記絞羽根支持面上に形成され、前記撮影光路用開口が位置する光軸側から前記支持環の外径方向に向けて延設された長溝;及び
前記支持環に対して光軸と平行な回動軸を中心として回動可能に支持され、前記絞羽根支持面に沿って回動して前記撮影光路用開口の開口径を変化させる絞羽根;
を有し、
光軸を中心とする4つの象限のうち対角位置にある2つの象限の一方と他方に前記長溝と前記絞羽根の回動中心を配置し、前記絞羽根はいずれの回動位置にあるときも前記長溝を幅方向に橋絡して前記絞羽根支持面に支持される形状をなすことを特徴とするレンズ鏡筒の絞機構。
【請求項2】
請求項1記載のレンズ鏡筒の絞機構において、前記絞羽根は、少なくとも、前記長溝と前記絞羽根の回動中心が設けられる前記2つの象限以外の2つの象限で前記絞羽根支持面と常時重畳して支持されるレンズ鏡筒の絞機構。
【請求項3】
請求項1または2記載のレンズ鏡筒の絞機構において、前記絞羽根は、光軸方向に貫通して前記撮影光路用開口との重畳位置の変化によりその開口径を変化させる開口部と、該開口部の周囲の遮光板部とを有し、該遮光板部が前記開口部の全体を囲む閉鎖開口形状をなすレンズ鏡筒の絞機構。
【請求項4】
請求項1または2記載のレンズ鏡筒の絞機構において、前記絞羽根は、光軸方向に貫通して前記撮影光路用開口との重畳位置の変化によりその開口径を変化させる開口部と、該開口部の周囲の遮光板部を有し、該遮光板部が前記開口部を部分的に囲み該開口部の一部が外縁に開放された開放開口形状をなすレンズ鏡筒の絞機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のレンズ鏡筒の絞機構において、前記絞羽根支持面を光軸方向に対向させた前後一対の前記支持環を備え、該一対の支持環の絞羽根支持面の間に一対の前記絞羽根が光軸方向に隣接して設けられているレンズ鏡筒の絞機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−220584(P2012−220584A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83980(P2011−83980)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】