レンズ鏡筒及びそれを有する光学機器
【課題】 振動部材と接触部材とを圧接させるための磁石の磁力を効率よく利用し、吸着力を大きくすることができるとともに、他の機器への影響も低減してレンズ保持部材を移動させることができるレンズ鏡筒を得ること。
【解決手段】 レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有すること。
【解決手段】 レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ保持枠を光軸方向に駆動する駆動源を有するレンズ鏡筒及びそれを有する光学機器に関し、特に駆動源として振動型のリニアアクチュエータを用いるデジタルカメラ、ビデオカメラ、TVカメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、ビデオカメラ等の光学機器において、レンズを保持枠を駆動する駆動源として振動型のリニアアクチュエータを使用したものが知られている(特許文献1)。特許文献1の光学機器では、レンズを保持するレンズ保持部材と、固定部材に固定された振動部材と、該振動部材に圧接し、レンズ保持部材に固定された接触部材(スライダー)とにより振動型のリニアアクチュエータを構成している。ここで振動部材は電気−機械エネルギー変換作用によって振動が励起されるものである。そして、振動部材と接触部材とがこれらの間に作用する磁力により圧接されており、接触部材はレンズ保持枠に固定されている。そして振動部材に駆動振動を励起することにより、接触部材とともにレンズ保持部材を光軸方向へ移動させる構成をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-301456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9は特許文献1において振動部材19と接触部材(スライダー)18の磁石18aとの間に生ずる磁気分布の説明図である。図9に示すように、振動部材(振動子)と接触部材(スライダー)の磁石とを吸着させる磁界は接触部材の磁石からでた磁束が、振動部材を通り、さらに、振動部材と接触部材の周りの磁気抵抗が高い空間内を通っている。そして、磁束が接触部材の磁石の反対側の面から磁石に入っている。そのため、振動部材と接触部材の間を通る磁束は、遠回りして、磁気回路の磁気抵抗が大きくなり、大きな磁束が発生せず、吸着力が大きく低下する傾向があった。また、磁界が周りの空間に広く分布しているので、光量調節装置等、他の機能に悪影響を及ぼす場合があった。
【0005】
本発明は、振動部材と接触部材とを圧接させるための磁石の磁力を効率よく利用し、吸着力を大きくすることができるとともに、他の機器への影響も低減してレンズ保持部材を移動させることができるレンズ鏡筒及びそれを有する光学機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズ鏡筒は、レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動部材と接触部材とを圧接させるための磁石の吸着力を効率よく利用し、他の機器への影響も低減してレンズ保持部材を移動させることができるレンズ鏡筒が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施例を示すレンズ鏡筒の外装を取り除いた状態のレンズ鏡筒の4方向から見た図
【図2】本発明の第1の実施例を示すレンズ鏡胴の光軸を含む断面図
【図3】本発明の第1の実施例を示すレンズ鏡胴の分解斜視図
【図4】第2レンズ群を駆動する超音波モータの部分拡大図
【図5】第4レンズ群を駆動する超音波モータの部分拡大図
【図6】第2レンズ群及び第4レンズ群のリニアアクチュエータ部を光軸方向から見た模式図
【図7】第2レンズ群及び第4レンズ群の超音波モータ部を光軸方向から見た模式図の他の実施例
【図8】撮影装置の構成を示した要部概略図
【図9】従来のリニアアクチュエータ部の構成における磁界分布
【図10】本実施例のリニアアクチュエータ部の構成における磁界分布
【図11】図7の振動部材の要部斜視図
【図12】振動部材と接触部材が横方向にずれたときの磁界の説明図
【図13】振動部材と接触部材が対向する位置で圧接されたときの説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のレンズ鏡筒を参考のため後述する各部材に付した符番を用いて説明すると次のとおりである。本発明のレンズ鏡筒は、レンズユニット2と、レンズユニット2を保持するレンズ保持部材12とを有している。更に電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材19および振動部材19と圧接する接触部材18を含み、レンズ保持部材12を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータ102と、を有している。レンズ保持部材12には接触部材18又は振動部材19のいずれか一方が固定されている。振動部材19と接触部材18は、これらの間に作用する磁力により圧接されている。接触部材18は、振動部材19と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石18bを有している。この他、磁石18bの振動部材19と対向していない側(反対側)には、強磁性体が配置されている。また振動部材19は磁石18bの磁界の方向が反転する位置に対向した位置に凹部501eを有している。
【0010】
図1(A)〜(D)は、本発明の実施例1の撮影装置(光学機器)に用いられるレンズ鏡筒を、外装を取り除いて前方、右側方、後方および左側方の4方向から見たときの要部概略図である。図2は実施例1のレンズ鏡筒の光軸を含む面で切断した要部断面図である。図3は実施例1のレンズ鏡筒の分解斜視図である。図4(A),図4(B)は実施例1のレンズ鏡筒の一部を構成する第2レンズユニットを駆動する振動型リニアアクチュエータの部分拡大図である。図5(A),図5(B)は実施例1のレンズ鏡筒の一部を構成する第4レンズユニットを駆動する振動型リニアアクチュエータの部分拡大図である。図5(C)は、実施例1のレンズ鏡筒の一部を構成する光量調節ユニットの概略構成図である。図6、図7は、実施例1の一部分の第2レンズユニット及び第4レンズユニットのリニアアクチュエータ部を光軸方向から見た模式図である。図10はそのときの磁力線を示した説明図である。図8は実施例1のレンズ鏡筒を有する撮影装置の各部材の要部概略図である。図11は本発明に係る振動型リニアアクチュエータの説明図である。図12、図13は本発明に係る振動型リニアアクチュエータの磁力線の説明図である。
【0011】
本実施例のレンズ鏡筒が有するズームレンズは、ズーミングに際して第2、第4レンズユニットが移動する4群構成のズームレンズである。これらの図において、物体側から順に、1は固定の第1レンズユニットである。2は変倍(ズーミング)のために光軸方向に移動する第2レンズユニットである。15は光量調節ユニットである。3は固定の第3レンズユニットである。4は変倍に伴う像面変動の補正および焦点調節のために光軸方向に移動する第4レンズユニットである。5は後述する撮像素子やローパスフィルタ(LPF)等の各種のフィルターを保持し、カメラ本体CBに固定される後部鏡筒である。6は第1レンズユニット1を保持し、ビス7,8,9により後部鏡筒5に固定された第1レンズ保持部材である。10,11は後部鏡筒5と第1レンズ保持部材6により光軸方向に平行又は略平行に保持されたガイドバー(ガイド部材)である。
【0012】
12は第2レンズユニット2を保持する第2レンズ保持部材であり、像側に不要光をカットするマスク32が固定されている。この第2レンズ保持部材12は、係合部12aにおいてガイドバー10に係合して光軸方向にガイドされ、係合部12bにおいてガイドバー11に係合してガイドバー10の回りでの回転が阻止されている。13は第3レンズユニット3を保持し、ビス16により後部鏡筒5に固定された第3レンズ保持部材である。14は第4レンズユニット4を保持する第4レンズ保持部材であり、係合部14aにおいてガイドバー11に係合して光軸方向にガイドされる。そして、第4レンズ保持部材14は係合部14bにおいてガイドバー10に係合してガイドバー11の回りでの回転が阻止されている。光量調節ユニット15は、光軸方向から見て左右方向(水平方向)よりも上下方向(垂直方向)に長い外形形状より成っている。この光量調節ユニット15は、ビス17により後部鏡筒5に固定されている。
【0013】
ここで、図5(C)に示すように、光量調節ユニット15は、一対の絞り羽根15a,15bをメータ15dにより回動されるレバー15cによって上下方向に平行又は略平行移動させることにより、開口径を増減させるいわゆるギロチン型の絞りである。15fは光量調節ユニット15の地板に形成された開口部である。絞り羽根15a,15bは、左右に設けられたガイドピン15eによって上下方向にガイドされる。このギロチン型の絞りは、いわゆる虹彩型や鋏型とは異なり、絞り羽根15a,15bを上下方向に平行又は略平行移動させるため、左右方向の寸法は上下方向の寸法よりも大幅に小さい。
【0014】
18は、振動部材(振動子)19と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上(図6、図10では1回)反転している磁石18bと、摩擦材18dとを接合して構成されたスライダ(接触部材)である。本実施例では、図6及び図10に示すように、磁界が反転しているところを着磁境界52で示している。スライダ18は第2レンズ保持部材12に形成された溝部12c内に接着等で固定されている。19は電気−機械エネルギー変換素子19dと該電気−機械エネルギー変換素子19dの電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される板状の弾性部材とにより構成される振動子(振動部材)である。振動部材19は第1レンズ保持枠6に固定されている。
【0015】
ここで、該振動子19の弾性部材19cは強磁性体である。該強磁性体19cがスライダ18の磁石18bと引き合うことにより、スライダ18の摩擦材18dとの圧接面18aと振動子19の弾性部材19cにおいて光軸方向2箇所に形成された圧接面19a,19bとが圧接される。18cは、磁石18bの、該圧接面18aと反対側の面に当接したヨーク(強磁性体)である。磁石18bは振動子19と向き合う面において、磁界の方向が第2レンズ保持枠12の移動方向に同じで且つ第2レンズ保持枠12の移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石により構成している。これにより、図10に示すように振動子19とスライダ18を吸着させる磁界は、磁石18bから出て、振動子19を通り、磁石18bの同じ面から磁石18bに入る。これにより、磁気回路が短くなり、振動子19とスライダ18の磁気回路が短くなり、磁気抵抗が減少する。また、スライダ18の振動子19と反対側も磁石18bからでた磁束は、ヨーク18cを通り、同じ面から磁石18bに入るので、振動子19とスライダ18を通る磁気回路が短くなり、磁気抵抗が小さくなる。ここで、図10における矢印が磁力線であり、矢印の向きが磁界の向きを表している。
【0016】
このような構成により、周りの磁気抵抗の高い空間を通過する磁束が減少し、振動子19とスライダ18を通る磁気回路が短くなり、磁気抵抗が小さくなるので、磁束が大きくなり、振動子19とスライダ18の吸着力を大きくすることができる。また、振動子19とスライダ18の周りの空間の磁界が小さくなるので、磁石18bの磁界による光量調節装置等の他の機器への影響を低減することができる。さらに、ヨーク18cを配置することで、振動子19と反対側も磁石18bからでた磁束は、ヨーク18cを通り、同じ面から磁石18bに入る。これにより、振動子19とスライダ18を通る磁気回路は、磁気抵抗の小さいヨーク18cをと送るので、磁気抵抗が小さくなる。振動子19とスライダ18の周りの空間も同様に磁界が減少し、磁石18bの磁界による光量調節装置等の他の機器への影響を低減すると言う同様の効果を得られる。
【0017】
これらスライダ18および振動子19を有する第1の振動型リニアアクチュエータ102では、フレキシブル配線板20を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が電気−機械エネルギー変換素子に入力される。これにより、振動子19の圧接面19a,19bに略楕円運動が発生し、スライダ18の圧接面18aに光軸方向の駆動力が発生する。21は振動子19が振動子保持部材23に固定される際に用いられるスペーサである。22はスペーサ21が振動子保持部材23に固定される板バネである。該板バネ22は、その板面の面内方向には変形しにくく、板面に垂直な方向には変形しやすい形状より成っている。また、板バネ22は、その面内に含まれる任意の軸を中心とした回転方向の変形が容易であり、該変形により振動子19の圧接面19a,19bをスライダ18の圧接面18aに対して平行に維持している。板バネ22が面内方向に変形しにくいことにより、振動子19の光軸方向(すなわち、駆動方向)への変位は制限される。
【0018】
振動子保持部材23は、ビス26,27により第1レンズ保持部材6に固定されている。この振動子保持部材23には、ビス24、25により板バネ22が固定されている。28は第2レンズ保持部材12の移動量(位置)を検出するためのスケールであり、第2レンズ保持部材12に形成された溝部12d内に接着等で固定されている。29はスケール28に対して投光し、スケール28からの反射光を受光して第2レンズ保持部材12の光軸方向の移動量を検出するための投受光素子である。これら投受光素子29およびスケール28により検出器としての第1のリニアエンコーダ105が構成されている。30は投受光素子29に対して信号を入出力するためのフレキシブル配線板であり、ビス31により第1レンズ保持部材6に固定されている。
【0019】
ガイドバー10と、振動子19およびスライダ18を有する第1の振動型リニアアクチュエータ102と、投受光素子29およびスケール28により構成される第1のリニアエンコーダとは、図1(A)に示すようになっている。即ち、光軸方向前方から見て、光量調節ユニット15の外周面のうち該光量調節ユニット15の光軸位置から最も近い外面の1つである平面状の右側面(光軸方向視において直線状の右長辺部)に沿うように、つまりは該右側面に近接して配置されている。また、第1の振動型リニアアクチュエータ102と第1のリニアエンコーダ105は、上下方向(垂直方向)においてガイドバー10を挟むように該ガイドバー10に隣接して配置されている。
【0020】
33は第4レンズ保持部材14に固定された板バネである。34は磁石と摩擦材とが接合されて構成されたスライダ(接触部材)であり、板バネ33に接着等で固定されている。板バネ33は、その板面の面内方向には変形しにくく、板面に垂直な方向には変形しやすい形状を有する。この板バネ33は、面内に含まれる任意の軸を中心とした回転方向の変形が容易であり、これによりスライダ34の圧接面34aを振動子35の圧接面35a,35bに対して平行に維持している。板バネ33が面内方向に変形しにくいことにより、スライダ34の光軸方向(すなわち、駆動方向)への変位は制限される。振動子35は、電気−機械エネルギー変換素子と該電気−機械エネルギー変換素子により振動が励起される板状の弾性部材とにより構成される。ここで、該振動子35の弾性部材は強磁性体であり、該強磁性体35がスライダ34の磁石と引き合うことにより、スライダ34の摩擦材の圧接面34aと振動子35の弾性部材において光軸方向2箇所に形成された圧接面35a,35bとが圧接される。これらスライダ34および振動子35を有する第2の振動型リニアアクチュエータ103では、フレキシブル配線板36を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が電気−機械エネルギー変換素子に入力される。それにより、振動子35の圧接面35a,35bに略楕円運動が発生し、スライダ34の圧接面34aに光軸方向の駆動力が発生する。
【0021】
ここで、図2に示すように、光軸直交方向視において、第2レンズ保持部材12(ガイドバー10との係合部12a)の光軸方向での可動範囲L2は、光量調節ユニット15よりも物体側(図2の左側)から像面側に延びている。また、第4レンズ保持部材14(ガイドバー11との係合部14a)の光軸方向での可動範囲L4は、光量調節ユニット15よりも像面側から光量調節ユニット15の厚み内まで延びている。即ち、第2レンズ保持部材12と第4レンズ保持部材14の可動範囲の一部は、光軸方向において相互に重複している。また、第1の振動型リニアアクチュエータ102の設置範囲(スライダ18が設けられた範囲)の一部と第2の振動型リニアアクチュエータ103の光軸方向における設置範囲(スライダ34が設けられた範囲)の一部は重複している。例えば光軸方向において互いに重複している。
【0022】
37は振動子35が振動子保持部材39に固定されるスペーサである。38はスペーサ37が振動子保持部材39に固定される板バネである。該板バネ38は、その板面の面内方向には変形しにくく、板面に垂直な方向には変形しやすい形状を有する。この板バネ38は、面内に含まれる任意の軸を中心とした回転方向の変形が容易であり、これにより、振動子35の圧接面35a,35bをスライダ34の圧接面34aに対して平行に維持する。板バネ38が面内方向に変形しにくいことにより、振動子35の光軸方向(すなわち、駆動方向)への変位は制限される。振動子保持部材39はビス46,47により後部鏡筒5に固定されている。この振動子保持部材39には、ビス42,43により板バネ38が固定されている。48は第4レンズ保持部材14の移動量(位置)を検出するためのスケールであり、第4レンズ保持部材14に形成された溝部14d内に接着等で固定されている。49はスケール48に対して投光し、スケール48からの反射光を受光して第4レンズ保持部材14の移動量を検出するための投受光素子である。これら投受光素子49およびスケール48により検出器としての第2のリニアエンコーダ106が構成されている。50は投受光素子49に対して信号を入出力するためのフレキシブル配線板であり、ビス51により後部鏡筒5に固定されている。ガイドバー11と、振動子35およびスライダ34を有する第2の振動型リニアアクチュエータ103と、投受光素子49およびスケール48により構成される第2のリニアエンコーダ106の配置について説明する。
【0023】
図1(A)に示すように、光軸方向前方から見て、光量調節ユニット15の外周面のうち光量調節ユニット15の光軸位置から最も近いもう1つの外平面である左側面(光軸方向視において直線状の左長辺部)に沿うように、左側面に近接して配置されている。また、第2の振動型リニアアクチュエータ103と第2のリニアエンコーダ105は、上下方向においてガイドバー11を挟むように該ガイドバー11に隣接して配置されている。第1の振動型リニアアクチュエータ102、ガイドバー10および第1のリニアエンコーダ105と、第2の振動型リニアアクチュエータ103、ガイドバー11および第2のリニアエンコーダ106とが、光軸中心を通って略対称に配置されている。特に光軸中心を通って上下方向に延びる軸に対して略対称に配置されている。
【0024】
図8において、101はCCDセンサおよびCMOSセンサ等により構成される撮像素子である。102は第2レンズユニット2(第2レンズ保持部材12)の駆動源であり、スライダ18および振動子19を含む第1の振動型リニアアクチュエータ(第2レンズ群駆動源)である。103は第4レンズユニット4(第4レンズ保持部材14)の第4レンズ群駆動源であり、スライダ34および振動子35を含む第2の振動型リニアアクチュエータである。104は光量調節ユニット15の光量調節装置駆動源としてのモータである。105はスケール28および投受光素子29を含む第1のリニアエンコーダとしての第2レンズ群エンコーダである。106はスケール48および投受光素子49を含む第2のリニアエンコーダとしての第4レンズ群エンコーダである。これらのエンコーダ105、106はそれぞれ、第2レンズユニット2および第4レンズユニット4の光軸方向での相対位置(基準位置からの移動量)を検出する。
【0025】
本実施例では、エンコーダとして光学式エンコーダを用いているが、磁気式エンコーダを用いてもよいし、電気抵抗を用いて絶対位置を検出するエンコーダ等を用いてもよい。107は絞りエンコーダであり、例えば、光量調節ユニット15の駆動源であるモータ104の内部に設けられたホール素子によって該モータ104のロータとステータの回転位置関係を検出する方式のものなどが用いられる。117は該撮影装置の動作の制御を司るコントローラとしてのCPUである。108はカメラ信号処理回路(カメラ処理回路)であり、撮像素子101の出力に対して増幅やガンマ補正などを施す。これらの所定の処理を受けた映像信号のコントラスト信号は、AEゲート109およびAFゲート110を通過する。
【0026】
これらのゲート109,110により、露出決定およびピント合わせのために最適な信号の取り出し範囲が全画面内から設定される。これらのゲート109,110の大きさは可変であったり、複数設けられたりする場合もある。114はオートフォーカス(AF)のためのAF信号処理回路であり、映像信号の高周波成分を抽出してAF評価値信号を生成する。115はズーム操作を行うためのズームスイッチである。116はズームトラッキングメモリであり、変倍に際して合焦状態を維持するために、被写体距離と第2レンズユニット2の光軸方向の位置とに応じた、第4レンズユニット4を駆動すべき目標位置情報を記憶する。なお、ズームトラッキングメモリ116としては、CPU117内のメモリを使用してもよい。
【0027】
上記構成において、撮影者によりズームスイッチ115が操作されると、CPU117は変倍用の第2レンズユニット2を駆動するために第1の振動型リニアアクチュエータ102を制御する。それとともに、第1のズームトラッキングメモリ116の情報と第2レンズユニットエンコーダ105の検出結果から求めた現在の第2レンズユニット2の光軸上の位置とに基づいて第4レンズユニット4の目標駆動位置を算出する。そして、該目標駆動位置に第4レンズユニット4を駆動するよう第2の振動型リニアアクチュエータ103を制御する。第4レンズユニット4が目標駆動位置に達したか否かは、第4レンズユニットエンコーダ106の検出結果から求められた現在の第4レンズユニット4の位置と目標駆動位置とが一致したか否かによって判別される。また、オートフォーカス動作においては、CPU117は、AF信号処理回路114で得られたAF評価値がピークを示す位置を探索するように第4レンズユニット4を光軸方向へ駆動するため、第2の振動型リニアアクチュエータ103を制御する。さらに、適正露出を得るために、CPU117は、AEゲート109を通過した輝度信号の平均値が所定値となるようにする。即ち絞りエンコーダ107の出力が該所定値に対応した値となるように、光量調節ユニット15のメータ104を制御して開口径を調整する。
【0028】
上記構成において、第2、第4レンズユニット2、4の駆動のためのスライダ18は磁石18bを用いて構成される。即ち、振動子19を吸着することによって振動型リニアアクチュエータとしての駆動力を発生するために必要な圧接力を得ている。このため、圧接力の反力が第2レンズ保持部材12には作用しない。これにより、第2レンズ保持部材12におけるガイドバー10,11との係合部12a,12bに発生する摩擦力が大きくならず、摩擦による駆動負荷も大きくならない。しかも、板バネ22にて発生する力は小さいので、該板バネ22からガイドバー10,11との係合部12a,12bに作用する力も小さく、係合部12a,12bに発生する摩擦力をほとんど増加させることがない。したがって、低出力で小型の振動型リニアアクチュエータを使用することができ、この結果、レンズ鏡筒の小型化を図ることを容易にしている。また、大きな圧接力が第2レンズ保持部材12に作用することがないので、第2レンズ保持部材12におけるガイドバー10,11との係合部12a,12bに発生する摩擦力が大きくならない。したがって、スライダ18、振動子19を有する第1の振動型リニアアクチュエータ102を大出力化したり大型化したりする必要がなく、係合部12a,12bのガイドバー10,11との摩擦による摩耗を低減することもできる。また、第2レンズ保持部材12(第2レンズユニット2)の微小駆動も正確に行うことが容易となる。また、スライダ18や振動子19が製造誤差等でいずれかの圧接面18a、19a、19bの光軸に平行な軸に対する位置や該軸回りでの傾きが光軸方向において変化した場合でも、板バネ22が変形して振動子19の位置や傾き(向き)が変化する。これによって、両圧接面18a、19a、19bは光軸方向に平行に維持され、適正な面接触状態が維持される。また、本実施例において、板バネ22は、上記圧接力よりも小さな力で変形するようにバネ定数が設定されている。このため、圧接面の位置や傾きが変わった場合でも圧接力は大きく変わらない。したがって、第1の振動型リニアアクチュエータ102が本来持つ性能に応じた出力が安定的に得られる。
【0029】
一方、スライダ34は振動部材(振動子)35と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石を用いて構成されている。振動子35を吸着することによって第2の振動型リニアアクチュエータ103としての駆動力を発生するために必要な圧接力を得ている。このため、圧接力の反力が第4レンズ保持部材14には作用しない。これにより、第4レンズ保持部材14におけるガイドバー11,10との係合部14a,14bに発生する摩擦力が大きくならず、摩擦による駆動負荷も大きくならない。しかも、板バネ33,38にて発生する力は小さいので、該板バネ33,38からガイドバー11,10との係合部14a,14bに作用する力も小さく、係合部14a,14bに発生する摩擦力をほとんど増加させない。したがって、低出力で小型の振動型リニアアクチュエータを使用することができ、この結果、レンズ鏡筒の小型化を図ることが容易となる。また、大きな圧接力が第4レンズ保持部材14に作用することがないので、第4レンズ保持部材14におけるガイドバー11,10との係合部14a,14bに発生する摩擦力が大きくならない。したがって、スライダ34、振動子35を有する第2の振動型リニアアクチュエータ103を大出力化したり大型化したりする必要がなく、係合部14a,14bのガイドバー11,10との摩擦による摩耗を低減することもできる。また、第4レンズ保持部材14(第4レンズユニット4)の微小駆動も正確に行うことが容易となる。また、スライダ34や振動子35が製造誤差等でいずれかの圧接面34a、35a、35bの光軸に平行な軸に対する位置や該軸回りでの傾きが光軸方向において変化した場合でも、板バネ33,38が変形して振動子34の位置や傾きが変化する。これにより、両圧接面34a、35a、35bは光軸方向に平行に維持され、適正な面接触状態が維持される。また、本実施例において板バネ33,38は、上記圧接力よりも小さな力で変形するようにバネ定数が設定されている。このため、圧接面の位置や傾きが変わった場合でも圧接力は大きく変わらない。したがって、第2の振動型リニアアクチュエータ103が本来持つ性能に応じた出力が安定的に得られる。
【0030】
上述したように、本実施例では、図1(A)に示すように光軸方向視において、ガイドバー10と第1の振動型リニアアクチュエータ102(18、19)と第1のリニアエンコーダ105(28、29)とを適切に配置している。即ち、光量調節ユニット15のうち光軸から最も近い平面の1つである右側面に沿うように(近接するように)配置している。また、ガイドバー10の上下方向に隣接するように第1の振動型リニアアクチュエータ102(18、19)と第1のリニアエンコーダ105(28、29)が配置されている。さらに、光軸方向視において、ガイドバー11と第2の振動型リニアアクチュエータ103(34、35)と第2のリニアエンコーダ106(48、49)とを適切に配置している。即ち、光量調節ユニット15のうち光軸から最も近い平面の1つである左側面に沿うように(近接するように)配置している。また、ガイドバー11の上下方向に隣接するように第2の振動型リニアアクチュエータ103と第2のリニアエンコーダ106が配置されている。
【0031】
光量調節ユニット15の物体側および像面側に第2および第4レンズ保持部材12,14(第2および第4レンズユニット2,4)をそれぞれ駆動する2つの振動型リニアアクチュエータが配置されている。これらレンズ保持部材12,14をそれぞれ光軸方向にガイドする2つのガイドバー10、11およびこれらレンズ保持部材12,14のそれぞれの位置を検出する2つのリニアエンコーダを有しながらも全体を小型に構成することができる。また、ガイドバー10,11に隣接してスライダ18,34を配置しているので、第2および第4レンズ保持部材12,14をスムーズに駆動することができる。しかも、ガイドバー10,11に隣接してスケール28,48を配置している。よって、第2および第4レンズ保持部材12,14におけるガイドバー10,11への係合部12a,12b,14a,14bのがたによるスケール28,48の変位が少なく、精度良く位置検出を行うことができる。
【0032】
なお、第1、第2の振動型リニアアクチュエータ102、103と第1、第2のリニアエンコーダ105、106とが、これらの駆動対象および位置検出対象であるレンズ保持部材をガイドするガイドバーに対して、光軸を挟んだ反対側に配置されている。よって、該ガイドバー10、11に対するレンズ保持部材12、14の係合部の係合がたによって、駆動開始時に該ガイドバー10、11を支点として第1、第2のリニアエンコーダ105、106が駆動方向とは反対側に変位する可能性がある。これは、位置検出精度を悪化させる原因になる。
【0033】
本実施例では、第1、第2の振動型リニアアクチュエータ102、103と第1、第2のリニアエンコーダ105、106がこれらの駆動対象および位置検出対象である第2、第4レンズ保持部材12、14をガイドするガイドバーと同じ側に配置されている。このため、そのような問題は生じず、精度良く位置検出を行うことができる。
【0034】
以上、本実施例では第2レンズユニット2を構成するリニアアクチュエータ部についてのみ説明したが、第4レンズユニット4も同様な構成を成していても構わない。また、本実施例では、磁界の方向がレンズの移動方向に同じで且つレンズの移動方向に垂直な方向に、1回反転している場合について説明したが、反転回数は2回でも3回でも構わない。
【0035】
また、本実施例において、振動子19は従来の形状を用いて説明したが、例えば図7と図11に示すように、磁石18bの着磁境界52の対向する位置に振動子501の圧接部501aと圧接部501bには凹部501eを設けた形状でも構わない。これにより、図12の矢印に示す様に横からの衝撃によりスライダ18と振動子501が横ずれする場合でも、横にずれると磁束が曲がり、磁気回路がながくなり、磁気回路の磁気抵抗が大きくなる。磁気回路の磁気抵抗は小さい方が安定していて、磁気回路の磁気抵抗は小さくなろうとして、磁気回路は短くなろうという性質により、図13に示す様に着磁境界52と振動子501が対向する場所に落ち着くため横ずれが起こりにくい。
【0036】
本実施例の振動型リニアアクチュエータでは、相対的に移動する一方に接触部材(スライダー)を設け、他方に振動部材(振動子)を設けていれば良く、双方の配置はどのようであっても良い。以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0037】
以上のように本実施例によれば、振動部材19と接触部材(スライダー)18とを圧接させるための力をこれらの間に作用する磁力によって発生させるため、圧接力の反力が外部に伝わらないようにすることができる。さらに、振動部材19と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石18bにより接触部材18を構成している。これにより振動部材19と接触部材18を吸着させる磁気回路は、接触部材18の磁石18bからでた磁束は、振動部材19を通り、接触部材18の同じ面から接触部材18の磁石18bにはいり、短い経路となる。それにより、周りの磁気抵抗の高い空間を通過する磁界が減少する。そのため、振動部材19と接触部材18を吸着させる磁気回路が短くなり、磁気抵抗が小さくなり、磁束が大きくなり、振動部材19と接触部材18間の吸着力を大きくすることができる。また、周りの空間の磁束が小さくなるので、光量調節装置等の他の機器への影響を低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・第1群レンズ群、2・・・第2レンズ群、3・・・第3レンズ群、4・・・第4レンズ群、5・・・後部鏡筒、6・・・第1レンズ群枠、7,8,9・・・ビス、10,11・・・バー、12・・・第2レンズ群枠、12c・・・四角穴、12d・・・四角穴、32・・・マスク、13・・・第3レンズ群枠、16・・・ビス、14・・・第4レンズ群枠、14d・・・四角穴、15・・・光量調節装置、17・・・ビス光量調節装置、18・・・スライダ、18a・・・圧接面18a、18b・・・磁石、18c・・・ヨーク、19・・・振動子、19a,19b・・・圧接面、20・・・フレキシブル配線版、21・・・スペーサ、22・・・板バネ、23・・・振動子枠、24,25,26,27・・・ビス、28・・・スケール、29・・・投受光素子、30・・・フレキシブル配線版、31・・・ビス、33・・・板バネ、34・・・スライダ、34a・・・圧接面、35・・・振動子、35a,35b・・・圧接面、36・・・フレキシブル配線版、37・・・スペーサ、38・・・板バネ、39・・・振動子枠、42,43,46,47・・・ビス、48・・・スケール、49・・・投受光素子、50・・・フレキシブル配線版、51・・・ビス、52・・・磁界の向きが反転するところ(着磁境界)、101・・・固体撮像素子、102・・・第2レンズ群2の駆動源、103・・・第4レンズ群4駆動源、104・・・光量調節装置駆動源、105・・・第2レンズ群エンコーダ、106・・・第4レンズ群エンコーダ、107・・・光量調節装置エンコーダ、108・・・カメラ信号処理回路、109・・・AEゲート、110・・・AFゲート、114・・・AF信号処理回路、115・・・ズームスイッチ、116・・・ズームトラッキングメモリ、117・・・CPU
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ保持枠を光軸方向に駆動する駆動源を有するレンズ鏡筒及びそれを有する光学機器に関し、特に駆動源として振動型のリニアアクチュエータを用いるデジタルカメラ、ビデオカメラ、TVカメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、ビデオカメラ等の光学機器において、レンズを保持枠を駆動する駆動源として振動型のリニアアクチュエータを使用したものが知られている(特許文献1)。特許文献1の光学機器では、レンズを保持するレンズ保持部材と、固定部材に固定された振動部材と、該振動部材に圧接し、レンズ保持部材に固定された接触部材(スライダー)とにより振動型のリニアアクチュエータを構成している。ここで振動部材は電気−機械エネルギー変換作用によって振動が励起されるものである。そして、振動部材と接触部材とがこれらの間に作用する磁力により圧接されており、接触部材はレンズ保持枠に固定されている。そして振動部材に駆動振動を励起することにより、接触部材とともにレンズ保持部材を光軸方向へ移動させる構成をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-301456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9は特許文献1において振動部材19と接触部材(スライダー)18の磁石18aとの間に生ずる磁気分布の説明図である。図9に示すように、振動部材(振動子)と接触部材(スライダー)の磁石とを吸着させる磁界は接触部材の磁石からでた磁束が、振動部材を通り、さらに、振動部材と接触部材の周りの磁気抵抗が高い空間内を通っている。そして、磁束が接触部材の磁石の反対側の面から磁石に入っている。そのため、振動部材と接触部材の間を通る磁束は、遠回りして、磁気回路の磁気抵抗が大きくなり、大きな磁束が発生せず、吸着力が大きく低下する傾向があった。また、磁界が周りの空間に広く分布しているので、光量調節装置等、他の機能に悪影響を及ぼす場合があった。
【0005】
本発明は、振動部材と接触部材とを圧接させるための磁石の磁力を効率よく利用し、吸着力を大きくすることができるとともに、他の機器への影響も低減してレンズ保持部材を移動させることができるレンズ鏡筒及びそれを有する光学機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズ鏡筒は、レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動部材と接触部材とを圧接させるための磁石の吸着力を効率よく利用し、他の機器への影響も低減してレンズ保持部材を移動させることができるレンズ鏡筒が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施例を示すレンズ鏡筒の外装を取り除いた状態のレンズ鏡筒の4方向から見た図
【図2】本発明の第1の実施例を示すレンズ鏡胴の光軸を含む断面図
【図3】本発明の第1の実施例を示すレンズ鏡胴の分解斜視図
【図4】第2レンズ群を駆動する超音波モータの部分拡大図
【図5】第4レンズ群を駆動する超音波モータの部分拡大図
【図6】第2レンズ群及び第4レンズ群のリニアアクチュエータ部を光軸方向から見た模式図
【図7】第2レンズ群及び第4レンズ群の超音波モータ部を光軸方向から見た模式図の他の実施例
【図8】撮影装置の構成を示した要部概略図
【図9】従来のリニアアクチュエータ部の構成における磁界分布
【図10】本実施例のリニアアクチュエータ部の構成における磁界分布
【図11】図7の振動部材の要部斜視図
【図12】振動部材と接触部材が横方向にずれたときの磁界の説明図
【図13】振動部材と接触部材が対向する位置で圧接されたときの説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のレンズ鏡筒を参考のため後述する各部材に付した符番を用いて説明すると次のとおりである。本発明のレンズ鏡筒は、レンズユニット2と、レンズユニット2を保持するレンズ保持部材12とを有している。更に電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材19および振動部材19と圧接する接触部材18を含み、レンズ保持部材12を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータ102と、を有している。レンズ保持部材12には接触部材18又は振動部材19のいずれか一方が固定されている。振動部材19と接触部材18は、これらの間に作用する磁力により圧接されている。接触部材18は、振動部材19と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石18bを有している。この他、磁石18bの振動部材19と対向していない側(反対側)には、強磁性体が配置されている。また振動部材19は磁石18bの磁界の方向が反転する位置に対向した位置に凹部501eを有している。
【0010】
図1(A)〜(D)は、本発明の実施例1の撮影装置(光学機器)に用いられるレンズ鏡筒を、外装を取り除いて前方、右側方、後方および左側方の4方向から見たときの要部概略図である。図2は実施例1のレンズ鏡筒の光軸を含む面で切断した要部断面図である。図3は実施例1のレンズ鏡筒の分解斜視図である。図4(A),図4(B)は実施例1のレンズ鏡筒の一部を構成する第2レンズユニットを駆動する振動型リニアアクチュエータの部分拡大図である。図5(A),図5(B)は実施例1のレンズ鏡筒の一部を構成する第4レンズユニットを駆動する振動型リニアアクチュエータの部分拡大図である。図5(C)は、実施例1のレンズ鏡筒の一部を構成する光量調節ユニットの概略構成図である。図6、図7は、実施例1の一部分の第2レンズユニット及び第4レンズユニットのリニアアクチュエータ部を光軸方向から見た模式図である。図10はそのときの磁力線を示した説明図である。図8は実施例1のレンズ鏡筒を有する撮影装置の各部材の要部概略図である。図11は本発明に係る振動型リニアアクチュエータの説明図である。図12、図13は本発明に係る振動型リニアアクチュエータの磁力線の説明図である。
【0011】
本実施例のレンズ鏡筒が有するズームレンズは、ズーミングに際して第2、第4レンズユニットが移動する4群構成のズームレンズである。これらの図において、物体側から順に、1は固定の第1レンズユニットである。2は変倍(ズーミング)のために光軸方向に移動する第2レンズユニットである。15は光量調節ユニットである。3は固定の第3レンズユニットである。4は変倍に伴う像面変動の補正および焦点調節のために光軸方向に移動する第4レンズユニットである。5は後述する撮像素子やローパスフィルタ(LPF)等の各種のフィルターを保持し、カメラ本体CBに固定される後部鏡筒である。6は第1レンズユニット1を保持し、ビス7,8,9により後部鏡筒5に固定された第1レンズ保持部材である。10,11は後部鏡筒5と第1レンズ保持部材6により光軸方向に平行又は略平行に保持されたガイドバー(ガイド部材)である。
【0012】
12は第2レンズユニット2を保持する第2レンズ保持部材であり、像側に不要光をカットするマスク32が固定されている。この第2レンズ保持部材12は、係合部12aにおいてガイドバー10に係合して光軸方向にガイドされ、係合部12bにおいてガイドバー11に係合してガイドバー10の回りでの回転が阻止されている。13は第3レンズユニット3を保持し、ビス16により後部鏡筒5に固定された第3レンズ保持部材である。14は第4レンズユニット4を保持する第4レンズ保持部材であり、係合部14aにおいてガイドバー11に係合して光軸方向にガイドされる。そして、第4レンズ保持部材14は係合部14bにおいてガイドバー10に係合してガイドバー11の回りでの回転が阻止されている。光量調節ユニット15は、光軸方向から見て左右方向(水平方向)よりも上下方向(垂直方向)に長い外形形状より成っている。この光量調節ユニット15は、ビス17により後部鏡筒5に固定されている。
【0013】
ここで、図5(C)に示すように、光量調節ユニット15は、一対の絞り羽根15a,15bをメータ15dにより回動されるレバー15cによって上下方向に平行又は略平行移動させることにより、開口径を増減させるいわゆるギロチン型の絞りである。15fは光量調節ユニット15の地板に形成された開口部である。絞り羽根15a,15bは、左右に設けられたガイドピン15eによって上下方向にガイドされる。このギロチン型の絞りは、いわゆる虹彩型や鋏型とは異なり、絞り羽根15a,15bを上下方向に平行又は略平行移動させるため、左右方向の寸法は上下方向の寸法よりも大幅に小さい。
【0014】
18は、振動部材(振動子)19と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上(図6、図10では1回)反転している磁石18bと、摩擦材18dとを接合して構成されたスライダ(接触部材)である。本実施例では、図6及び図10に示すように、磁界が反転しているところを着磁境界52で示している。スライダ18は第2レンズ保持部材12に形成された溝部12c内に接着等で固定されている。19は電気−機械エネルギー変換素子19dと該電気−機械エネルギー変換素子19dの電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される板状の弾性部材とにより構成される振動子(振動部材)である。振動部材19は第1レンズ保持枠6に固定されている。
【0015】
ここで、該振動子19の弾性部材19cは強磁性体である。該強磁性体19cがスライダ18の磁石18bと引き合うことにより、スライダ18の摩擦材18dとの圧接面18aと振動子19の弾性部材19cにおいて光軸方向2箇所に形成された圧接面19a,19bとが圧接される。18cは、磁石18bの、該圧接面18aと反対側の面に当接したヨーク(強磁性体)である。磁石18bは振動子19と向き合う面において、磁界の方向が第2レンズ保持枠12の移動方向に同じで且つ第2レンズ保持枠12の移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石により構成している。これにより、図10に示すように振動子19とスライダ18を吸着させる磁界は、磁石18bから出て、振動子19を通り、磁石18bの同じ面から磁石18bに入る。これにより、磁気回路が短くなり、振動子19とスライダ18の磁気回路が短くなり、磁気抵抗が減少する。また、スライダ18の振動子19と反対側も磁石18bからでた磁束は、ヨーク18cを通り、同じ面から磁石18bに入るので、振動子19とスライダ18を通る磁気回路が短くなり、磁気抵抗が小さくなる。ここで、図10における矢印が磁力線であり、矢印の向きが磁界の向きを表している。
【0016】
このような構成により、周りの磁気抵抗の高い空間を通過する磁束が減少し、振動子19とスライダ18を通る磁気回路が短くなり、磁気抵抗が小さくなるので、磁束が大きくなり、振動子19とスライダ18の吸着力を大きくすることができる。また、振動子19とスライダ18の周りの空間の磁界が小さくなるので、磁石18bの磁界による光量調節装置等の他の機器への影響を低減することができる。さらに、ヨーク18cを配置することで、振動子19と反対側も磁石18bからでた磁束は、ヨーク18cを通り、同じ面から磁石18bに入る。これにより、振動子19とスライダ18を通る磁気回路は、磁気抵抗の小さいヨーク18cをと送るので、磁気抵抗が小さくなる。振動子19とスライダ18の周りの空間も同様に磁界が減少し、磁石18bの磁界による光量調節装置等の他の機器への影響を低減すると言う同様の効果を得られる。
【0017】
これらスライダ18および振動子19を有する第1の振動型リニアアクチュエータ102では、フレキシブル配線板20を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が電気−機械エネルギー変換素子に入力される。これにより、振動子19の圧接面19a,19bに略楕円運動が発生し、スライダ18の圧接面18aに光軸方向の駆動力が発生する。21は振動子19が振動子保持部材23に固定される際に用いられるスペーサである。22はスペーサ21が振動子保持部材23に固定される板バネである。該板バネ22は、その板面の面内方向には変形しにくく、板面に垂直な方向には変形しやすい形状より成っている。また、板バネ22は、その面内に含まれる任意の軸を中心とした回転方向の変形が容易であり、該変形により振動子19の圧接面19a,19bをスライダ18の圧接面18aに対して平行に維持している。板バネ22が面内方向に変形しにくいことにより、振動子19の光軸方向(すなわち、駆動方向)への変位は制限される。
【0018】
振動子保持部材23は、ビス26,27により第1レンズ保持部材6に固定されている。この振動子保持部材23には、ビス24、25により板バネ22が固定されている。28は第2レンズ保持部材12の移動量(位置)を検出するためのスケールであり、第2レンズ保持部材12に形成された溝部12d内に接着等で固定されている。29はスケール28に対して投光し、スケール28からの反射光を受光して第2レンズ保持部材12の光軸方向の移動量を検出するための投受光素子である。これら投受光素子29およびスケール28により検出器としての第1のリニアエンコーダ105が構成されている。30は投受光素子29に対して信号を入出力するためのフレキシブル配線板であり、ビス31により第1レンズ保持部材6に固定されている。
【0019】
ガイドバー10と、振動子19およびスライダ18を有する第1の振動型リニアアクチュエータ102と、投受光素子29およびスケール28により構成される第1のリニアエンコーダとは、図1(A)に示すようになっている。即ち、光軸方向前方から見て、光量調節ユニット15の外周面のうち該光量調節ユニット15の光軸位置から最も近い外面の1つである平面状の右側面(光軸方向視において直線状の右長辺部)に沿うように、つまりは該右側面に近接して配置されている。また、第1の振動型リニアアクチュエータ102と第1のリニアエンコーダ105は、上下方向(垂直方向)においてガイドバー10を挟むように該ガイドバー10に隣接して配置されている。
【0020】
33は第4レンズ保持部材14に固定された板バネである。34は磁石と摩擦材とが接合されて構成されたスライダ(接触部材)であり、板バネ33に接着等で固定されている。板バネ33は、その板面の面内方向には変形しにくく、板面に垂直な方向には変形しやすい形状を有する。この板バネ33は、面内に含まれる任意の軸を中心とした回転方向の変形が容易であり、これによりスライダ34の圧接面34aを振動子35の圧接面35a,35bに対して平行に維持している。板バネ33が面内方向に変形しにくいことにより、スライダ34の光軸方向(すなわち、駆動方向)への変位は制限される。振動子35は、電気−機械エネルギー変換素子と該電気−機械エネルギー変換素子により振動が励起される板状の弾性部材とにより構成される。ここで、該振動子35の弾性部材は強磁性体であり、該強磁性体35がスライダ34の磁石と引き合うことにより、スライダ34の摩擦材の圧接面34aと振動子35の弾性部材において光軸方向2箇所に形成された圧接面35a,35bとが圧接される。これらスライダ34および振動子35を有する第2の振動型リニアアクチュエータ103では、フレキシブル配線板36を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が電気−機械エネルギー変換素子に入力される。それにより、振動子35の圧接面35a,35bに略楕円運動が発生し、スライダ34の圧接面34aに光軸方向の駆動力が発生する。
【0021】
ここで、図2に示すように、光軸直交方向視において、第2レンズ保持部材12(ガイドバー10との係合部12a)の光軸方向での可動範囲L2は、光量調節ユニット15よりも物体側(図2の左側)から像面側に延びている。また、第4レンズ保持部材14(ガイドバー11との係合部14a)の光軸方向での可動範囲L4は、光量調節ユニット15よりも像面側から光量調節ユニット15の厚み内まで延びている。即ち、第2レンズ保持部材12と第4レンズ保持部材14の可動範囲の一部は、光軸方向において相互に重複している。また、第1の振動型リニアアクチュエータ102の設置範囲(スライダ18が設けられた範囲)の一部と第2の振動型リニアアクチュエータ103の光軸方向における設置範囲(スライダ34が設けられた範囲)の一部は重複している。例えば光軸方向において互いに重複している。
【0022】
37は振動子35が振動子保持部材39に固定されるスペーサである。38はスペーサ37が振動子保持部材39に固定される板バネである。該板バネ38は、その板面の面内方向には変形しにくく、板面に垂直な方向には変形しやすい形状を有する。この板バネ38は、面内に含まれる任意の軸を中心とした回転方向の変形が容易であり、これにより、振動子35の圧接面35a,35bをスライダ34の圧接面34aに対して平行に維持する。板バネ38が面内方向に変形しにくいことにより、振動子35の光軸方向(すなわち、駆動方向)への変位は制限される。振動子保持部材39はビス46,47により後部鏡筒5に固定されている。この振動子保持部材39には、ビス42,43により板バネ38が固定されている。48は第4レンズ保持部材14の移動量(位置)を検出するためのスケールであり、第4レンズ保持部材14に形成された溝部14d内に接着等で固定されている。49はスケール48に対して投光し、スケール48からの反射光を受光して第4レンズ保持部材14の移動量を検出するための投受光素子である。これら投受光素子49およびスケール48により検出器としての第2のリニアエンコーダ106が構成されている。50は投受光素子49に対して信号を入出力するためのフレキシブル配線板であり、ビス51により後部鏡筒5に固定されている。ガイドバー11と、振動子35およびスライダ34を有する第2の振動型リニアアクチュエータ103と、投受光素子49およびスケール48により構成される第2のリニアエンコーダ106の配置について説明する。
【0023】
図1(A)に示すように、光軸方向前方から見て、光量調節ユニット15の外周面のうち光量調節ユニット15の光軸位置から最も近いもう1つの外平面である左側面(光軸方向視において直線状の左長辺部)に沿うように、左側面に近接して配置されている。また、第2の振動型リニアアクチュエータ103と第2のリニアエンコーダ105は、上下方向においてガイドバー11を挟むように該ガイドバー11に隣接して配置されている。第1の振動型リニアアクチュエータ102、ガイドバー10および第1のリニアエンコーダ105と、第2の振動型リニアアクチュエータ103、ガイドバー11および第2のリニアエンコーダ106とが、光軸中心を通って略対称に配置されている。特に光軸中心を通って上下方向に延びる軸に対して略対称に配置されている。
【0024】
図8において、101はCCDセンサおよびCMOSセンサ等により構成される撮像素子である。102は第2レンズユニット2(第2レンズ保持部材12)の駆動源であり、スライダ18および振動子19を含む第1の振動型リニアアクチュエータ(第2レンズ群駆動源)である。103は第4レンズユニット4(第4レンズ保持部材14)の第4レンズ群駆動源であり、スライダ34および振動子35を含む第2の振動型リニアアクチュエータである。104は光量調節ユニット15の光量調節装置駆動源としてのモータである。105はスケール28および投受光素子29を含む第1のリニアエンコーダとしての第2レンズ群エンコーダである。106はスケール48および投受光素子49を含む第2のリニアエンコーダとしての第4レンズ群エンコーダである。これらのエンコーダ105、106はそれぞれ、第2レンズユニット2および第4レンズユニット4の光軸方向での相対位置(基準位置からの移動量)を検出する。
【0025】
本実施例では、エンコーダとして光学式エンコーダを用いているが、磁気式エンコーダを用いてもよいし、電気抵抗を用いて絶対位置を検出するエンコーダ等を用いてもよい。107は絞りエンコーダであり、例えば、光量調節ユニット15の駆動源であるモータ104の内部に設けられたホール素子によって該モータ104のロータとステータの回転位置関係を検出する方式のものなどが用いられる。117は該撮影装置の動作の制御を司るコントローラとしてのCPUである。108はカメラ信号処理回路(カメラ処理回路)であり、撮像素子101の出力に対して増幅やガンマ補正などを施す。これらの所定の処理を受けた映像信号のコントラスト信号は、AEゲート109およびAFゲート110を通過する。
【0026】
これらのゲート109,110により、露出決定およびピント合わせのために最適な信号の取り出し範囲が全画面内から設定される。これらのゲート109,110の大きさは可変であったり、複数設けられたりする場合もある。114はオートフォーカス(AF)のためのAF信号処理回路であり、映像信号の高周波成分を抽出してAF評価値信号を生成する。115はズーム操作を行うためのズームスイッチである。116はズームトラッキングメモリであり、変倍に際して合焦状態を維持するために、被写体距離と第2レンズユニット2の光軸方向の位置とに応じた、第4レンズユニット4を駆動すべき目標位置情報を記憶する。なお、ズームトラッキングメモリ116としては、CPU117内のメモリを使用してもよい。
【0027】
上記構成において、撮影者によりズームスイッチ115が操作されると、CPU117は変倍用の第2レンズユニット2を駆動するために第1の振動型リニアアクチュエータ102を制御する。それとともに、第1のズームトラッキングメモリ116の情報と第2レンズユニットエンコーダ105の検出結果から求めた現在の第2レンズユニット2の光軸上の位置とに基づいて第4レンズユニット4の目標駆動位置を算出する。そして、該目標駆動位置に第4レンズユニット4を駆動するよう第2の振動型リニアアクチュエータ103を制御する。第4レンズユニット4が目標駆動位置に達したか否かは、第4レンズユニットエンコーダ106の検出結果から求められた現在の第4レンズユニット4の位置と目標駆動位置とが一致したか否かによって判別される。また、オートフォーカス動作においては、CPU117は、AF信号処理回路114で得られたAF評価値がピークを示す位置を探索するように第4レンズユニット4を光軸方向へ駆動するため、第2の振動型リニアアクチュエータ103を制御する。さらに、適正露出を得るために、CPU117は、AEゲート109を通過した輝度信号の平均値が所定値となるようにする。即ち絞りエンコーダ107の出力が該所定値に対応した値となるように、光量調節ユニット15のメータ104を制御して開口径を調整する。
【0028】
上記構成において、第2、第4レンズユニット2、4の駆動のためのスライダ18は磁石18bを用いて構成される。即ち、振動子19を吸着することによって振動型リニアアクチュエータとしての駆動力を発生するために必要な圧接力を得ている。このため、圧接力の反力が第2レンズ保持部材12には作用しない。これにより、第2レンズ保持部材12におけるガイドバー10,11との係合部12a,12bに発生する摩擦力が大きくならず、摩擦による駆動負荷も大きくならない。しかも、板バネ22にて発生する力は小さいので、該板バネ22からガイドバー10,11との係合部12a,12bに作用する力も小さく、係合部12a,12bに発生する摩擦力をほとんど増加させることがない。したがって、低出力で小型の振動型リニアアクチュエータを使用することができ、この結果、レンズ鏡筒の小型化を図ることを容易にしている。また、大きな圧接力が第2レンズ保持部材12に作用することがないので、第2レンズ保持部材12におけるガイドバー10,11との係合部12a,12bに発生する摩擦力が大きくならない。したがって、スライダ18、振動子19を有する第1の振動型リニアアクチュエータ102を大出力化したり大型化したりする必要がなく、係合部12a,12bのガイドバー10,11との摩擦による摩耗を低減することもできる。また、第2レンズ保持部材12(第2レンズユニット2)の微小駆動も正確に行うことが容易となる。また、スライダ18や振動子19が製造誤差等でいずれかの圧接面18a、19a、19bの光軸に平行な軸に対する位置や該軸回りでの傾きが光軸方向において変化した場合でも、板バネ22が変形して振動子19の位置や傾き(向き)が変化する。これによって、両圧接面18a、19a、19bは光軸方向に平行に維持され、適正な面接触状態が維持される。また、本実施例において、板バネ22は、上記圧接力よりも小さな力で変形するようにバネ定数が設定されている。このため、圧接面の位置や傾きが変わった場合でも圧接力は大きく変わらない。したがって、第1の振動型リニアアクチュエータ102が本来持つ性能に応じた出力が安定的に得られる。
【0029】
一方、スライダ34は振動部材(振動子)35と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石を用いて構成されている。振動子35を吸着することによって第2の振動型リニアアクチュエータ103としての駆動力を発生するために必要な圧接力を得ている。このため、圧接力の反力が第4レンズ保持部材14には作用しない。これにより、第4レンズ保持部材14におけるガイドバー11,10との係合部14a,14bに発生する摩擦力が大きくならず、摩擦による駆動負荷も大きくならない。しかも、板バネ33,38にて発生する力は小さいので、該板バネ33,38からガイドバー11,10との係合部14a,14bに作用する力も小さく、係合部14a,14bに発生する摩擦力をほとんど増加させない。したがって、低出力で小型の振動型リニアアクチュエータを使用することができ、この結果、レンズ鏡筒の小型化を図ることが容易となる。また、大きな圧接力が第4レンズ保持部材14に作用することがないので、第4レンズ保持部材14におけるガイドバー11,10との係合部14a,14bに発生する摩擦力が大きくならない。したがって、スライダ34、振動子35を有する第2の振動型リニアアクチュエータ103を大出力化したり大型化したりする必要がなく、係合部14a,14bのガイドバー11,10との摩擦による摩耗を低減することもできる。また、第4レンズ保持部材14(第4レンズユニット4)の微小駆動も正確に行うことが容易となる。また、スライダ34や振動子35が製造誤差等でいずれかの圧接面34a、35a、35bの光軸に平行な軸に対する位置や該軸回りでの傾きが光軸方向において変化した場合でも、板バネ33,38が変形して振動子34の位置や傾きが変化する。これにより、両圧接面34a、35a、35bは光軸方向に平行に維持され、適正な面接触状態が維持される。また、本実施例において板バネ33,38は、上記圧接力よりも小さな力で変形するようにバネ定数が設定されている。このため、圧接面の位置や傾きが変わった場合でも圧接力は大きく変わらない。したがって、第2の振動型リニアアクチュエータ103が本来持つ性能に応じた出力が安定的に得られる。
【0030】
上述したように、本実施例では、図1(A)に示すように光軸方向視において、ガイドバー10と第1の振動型リニアアクチュエータ102(18、19)と第1のリニアエンコーダ105(28、29)とを適切に配置している。即ち、光量調節ユニット15のうち光軸から最も近い平面の1つである右側面に沿うように(近接するように)配置している。また、ガイドバー10の上下方向に隣接するように第1の振動型リニアアクチュエータ102(18、19)と第1のリニアエンコーダ105(28、29)が配置されている。さらに、光軸方向視において、ガイドバー11と第2の振動型リニアアクチュエータ103(34、35)と第2のリニアエンコーダ106(48、49)とを適切に配置している。即ち、光量調節ユニット15のうち光軸から最も近い平面の1つである左側面に沿うように(近接するように)配置している。また、ガイドバー11の上下方向に隣接するように第2の振動型リニアアクチュエータ103と第2のリニアエンコーダ106が配置されている。
【0031】
光量調節ユニット15の物体側および像面側に第2および第4レンズ保持部材12,14(第2および第4レンズユニット2,4)をそれぞれ駆動する2つの振動型リニアアクチュエータが配置されている。これらレンズ保持部材12,14をそれぞれ光軸方向にガイドする2つのガイドバー10、11およびこれらレンズ保持部材12,14のそれぞれの位置を検出する2つのリニアエンコーダを有しながらも全体を小型に構成することができる。また、ガイドバー10,11に隣接してスライダ18,34を配置しているので、第2および第4レンズ保持部材12,14をスムーズに駆動することができる。しかも、ガイドバー10,11に隣接してスケール28,48を配置している。よって、第2および第4レンズ保持部材12,14におけるガイドバー10,11への係合部12a,12b,14a,14bのがたによるスケール28,48の変位が少なく、精度良く位置検出を行うことができる。
【0032】
なお、第1、第2の振動型リニアアクチュエータ102、103と第1、第2のリニアエンコーダ105、106とが、これらの駆動対象および位置検出対象であるレンズ保持部材をガイドするガイドバーに対して、光軸を挟んだ反対側に配置されている。よって、該ガイドバー10、11に対するレンズ保持部材12、14の係合部の係合がたによって、駆動開始時に該ガイドバー10、11を支点として第1、第2のリニアエンコーダ105、106が駆動方向とは反対側に変位する可能性がある。これは、位置検出精度を悪化させる原因になる。
【0033】
本実施例では、第1、第2の振動型リニアアクチュエータ102、103と第1、第2のリニアエンコーダ105、106がこれらの駆動対象および位置検出対象である第2、第4レンズ保持部材12、14をガイドするガイドバーと同じ側に配置されている。このため、そのような問題は生じず、精度良く位置検出を行うことができる。
【0034】
以上、本実施例では第2レンズユニット2を構成するリニアアクチュエータ部についてのみ説明したが、第4レンズユニット4も同様な構成を成していても構わない。また、本実施例では、磁界の方向がレンズの移動方向に同じで且つレンズの移動方向に垂直な方向に、1回反転している場合について説明したが、反転回数は2回でも3回でも構わない。
【0035】
また、本実施例において、振動子19は従来の形状を用いて説明したが、例えば図7と図11に示すように、磁石18bの着磁境界52の対向する位置に振動子501の圧接部501aと圧接部501bには凹部501eを設けた形状でも構わない。これにより、図12の矢印に示す様に横からの衝撃によりスライダ18と振動子501が横ずれする場合でも、横にずれると磁束が曲がり、磁気回路がながくなり、磁気回路の磁気抵抗が大きくなる。磁気回路の磁気抵抗は小さい方が安定していて、磁気回路の磁気抵抗は小さくなろうとして、磁気回路は短くなろうという性質により、図13に示す様に着磁境界52と振動子501が対向する場所に落ち着くため横ずれが起こりにくい。
【0036】
本実施例の振動型リニアアクチュエータでは、相対的に移動する一方に接触部材(スライダー)を設け、他方に振動部材(振動子)を設けていれば良く、双方の配置はどのようであっても良い。以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0037】
以上のように本実施例によれば、振動部材19と接触部材(スライダー)18とを圧接させるための力をこれらの間に作用する磁力によって発生させるため、圧接力の反力が外部に伝わらないようにすることができる。さらに、振動部材19と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石18bにより接触部材18を構成している。これにより振動部材19と接触部材18を吸着させる磁気回路は、接触部材18の磁石18bからでた磁束は、振動部材19を通り、接触部材18の同じ面から接触部材18の磁石18bにはいり、短い経路となる。それにより、周りの磁気抵抗の高い空間を通過する磁界が減少する。そのため、振動部材19と接触部材18を吸着させる磁気回路が短くなり、磁気抵抗が小さくなり、磁束が大きくなり、振動部材19と接触部材18間の吸着力を大きくすることができる。また、周りの空間の磁束が小さくなるので、光量調節装置等の他の機器への影響を低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・第1群レンズ群、2・・・第2レンズ群、3・・・第3レンズ群、4・・・第4レンズ群、5・・・後部鏡筒、6・・・第1レンズ群枠、7,8,9・・・ビス、10,11・・・バー、12・・・第2レンズ群枠、12c・・・四角穴、12d・・・四角穴、32・・・マスク、13・・・第3レンズ群枠、16・・・ビス、14・・・第4レンズ群枠、14d・・・四角穴、15・・・光量調節装置、17・・・ビス光量調節装置、18・・・スライダ、18a・・・圧接面18a、18b・・・磁石、18c・・・ヨーク、19・・・振動子、19a,19b・・・圧接面、20・・・フレキシブル配線版、21・・・スペーサ、22・・・板バネ、23・・・振動子枠、24,25,26,27・・・ビス、28・・・スケール、29・・・投受光素子、30・・・フレキシブル配線版、31・・・ビス、33・・・板バネ、34・・・スライダ、34a・・・圧接面、35・・・振動子、35a,35b・・・圧接面、36・・・フレキシブル配線版、37・・・スペーサ、38・・・板バネ、39・・・振動子枠、42,43,46,47・・・ビス、48・・・スケール、49・・・投受光素子、50・・・フレキシブル配線版、51・・・ビス、52・・・磁界の向きが反転するところ(着磁境界)、101・・・固体撮像素子、102・・・第2レンズ群2の駆動源、103・・・第4レンズ群4駆動源、104・・・光量調節装置駆動源、105・・・第2レンズ群エンコーダ、106・・・第4レンズ群エンコーダ、107・・・光量調節装置エンコーダ、108・・・カメラ信号処理回路、109・・・AEゲート、110・・・AFゲート、114・・・AF信号処理回路、115・・・ズームスイッチ、116・・・ズームトラッキングメモリ、117・・・CPU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有し、前記磁石の前記振動部材と対向していない側には、強磁性体が配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有し、前記振動部材は前記磁石の磁界の方向が反転する位置に対向した位置に凹部を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のレンズ鏡筒を有することを特徴とする光学機器。
【請求項1】
レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有し、前記磁石の前記振動部材と対向していない側には、強磁性体が配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
レンズユニットと、前記レンズユニットを保持するレンズ保持部材と、電気−機械エネルギー変換作用により振動が励起される振動部材および該振動部材と圧接する、接触部材を含み、前記レンズ保持部材を光軸方向に駆動する振動型のリニアアクチュエータと、を有するレンズ鏡筒において、前記振動部材と前記接触部材は、これらの間に作用する磁力により圧接されており、前記接触部材は、前記振動部材と向き合う面において、磁界の方向が移動方向に同じで且つ移動方向に垂直な方向に、1回以上反転している磁石とを有し、前記振動部材は前記磁石の磁界の方向が反転する位置に対向した位置に凹部を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のレンズ鏡筒を有することを特徴とする光学機器。
【図8】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−271622(P2010−271622A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125109(P2009−125109)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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