説明

レンチキュラーシート作製装置および作製方法

【課題】レンチキュラーシートの作製装置および作製方法を提供する。
【解決手段】
感光体と、前記感光体上に所定ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射部と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像部と、前記縞状の透明トナー像を透明基材上に転写するための転写部とを有し、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に形成するための透明トナー像形成転写部と、前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成部とを備えるレンチキュラーシート作製装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3次元の立体画像の表示用に用いられるレンチキュラーシートの作製装置および作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンチキュラー(lenticular)シートは、シート表面に多数の細長い微細な半円柱状の凸レンズ(レンチキュラーレンズ)を並列に配置したものであり、当該シートの裏面に印刷されたレンチキュラー画像(2つ以上の画像を短冊状に分割し、レンチキュラーレンズのピッチに合わせて交互に並べられた画像)が凸レンズの屈折効果により、見る角度によって画像が切り替わる。このようなレンチキュラーシートを用いると、見る角度を変えることで複数の画像を切りかえることが可能になる。特に、左右の目からの視差を利用することにより3D眼鏡等の特別な装置を用いることなしに立体感のある画像が実現できるため、ポスターや看板等の用途に広く使用されている。
【0003】
このようなレンチキュラーシートの作製方法としては、例えば、透光性を示す透明基材の片面側にレンチキュラーレンズを形成するための熱可塑性の樹脂層、もう一方の面側にトナーによる像形成を行うための熱可塑性の受像層を設けた透明基材を用いてトナーによる画像形成を行った後、レンチキュラーレンズを形成するための樹脂層を加熱下で加圧して凹凸形状に成型してレンズ形成を行うことで表面にレンズ層を有する画像が得られるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−26477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法におけるレンチキュラーレンズの形成には、透明基材上に形成された熱可塑性樹脂層を熱プレス等により凹凸形状に成型してレンチキュラーレンズを形成するための装置の他に、透明基材上に熱可塑性樹脂層を形成するための装置を別途要する。それゆえ、透明トナー像の形成からレンチキュラーレンズの形成までの一連の工程を全て電子写真方式で行うことにより、単一の装置で手軽に作製できるレンチキュラーシート作製装置および作製方法が望まれている。
【0006】
ところで、電子写真方式を用いた画像形成装置は、高画質の画像を再現性および操作性良く、かつ安価に形成できることから、複写機、プリンタ、ファクシミリ、およびこれらの2種以上の機能を有する複合機などとして広く利用されている。電子写真方式は、感光体上への光照射により潜像形成を行い、通常5〜10μm程度のトナー粒子で潜像を現像して、感光体上に形成されたトナー像を所望の記録媒体に転写、定着する。ここで、トナーとして光透過性の良好な透明トナーを用いると、様々なサイズや厚み、材料の記録媒体上に透明トナー像を形成することができる。このように透明トナーを用いることで、記録媒体上に透明のトナー像が形成可能となり、透明トナー像を設けた記録媒体をさらに表面に凹凸形状を設けたローラ等で成形することで比較的容易にレンチキュラーシートを作製できる。これら電子写真方式のレンチキュラーシート作製装置に用いられる記録媒体としては、紙、プラスチックフィルムやOHP用シートなどの両面が平滑な記録シートの他に、透明基材の片面側にレンチキュラーレンズ層が形成されたレンチキュラーシートがある。
【0007】
ここで、良好な3D画像等を得るには、ある程度の厚みを有する良質のレンズの形成が極めて重要である。レンズの厚みは、主に解像度と透明基材の厚みにより決定され、一般に、高い解像度ほど、良好な3D効果を発揮するのに要するレンズの厚みが増す。3D画像は、レンズの仕様に合わせて形成された画像を、レンズを通して見ることによって得られるが、レンズの厚みが薄すぎる場合、レンズで光を十分に曲げることができないため、良好な3D画像が得られない。それゆえ、高いレンズ効果(高解像度・良好な3D効果等)を発揮するレンチキュラーシートの作製には、ある程度の厚みを有する透明トナー像の形成が不可欠である。
【0008】
しかしながら、透明トナー量が多ければ多いほど、透明トナーと透明基材との接着性および透明トナーとレンズ形成ローラ表面との離型性の両立が困難になる。すなわち、定着に要する透明トナー量が多くなると、レンズ形成に要する熱量も多くなり、透明トナー像の加熱不足による「低温オフセット」の問題が生じやすくなる。一方、透明トナーを透明基材に十分定着するには、透明基材と透明トナーとの界面温度が重要であり、この温度を一定以上に確保する必要がある。そのため、加熱される面側の温度をより高くする必要があるが、透明トナー量が多いと、透明トナー像内部での温度差が大きくなり、ひいては透明トナー像内部での温度差が大きくなるため、透明トナー像内部での凝集力が低下し、「ホットオフセット」の問題が生じやすくなる。それゆえ、従来の電子写真方式の画像形成法によって透明基材の全面に透明トナー像による「層」を形成する場合、厚みを増すとレンズ形成に要する透明トナー量が透明基材の全面にわたって増大するため、オフセット等の問題が生じやすくなり、良好なレンズ形成の妨げとなっていた。
【0009】
また、透明基材の全面に透明トナー像を形成した後、熱および圧力の作用によりレンズ形成ローラでレンズ形成する場合、本来透明トナーを必要としない領域まで透明トナー像を形成している。さらに、レンズ部の凹部は、本来透明トナーが不要な部分であり、必要以上に透明トナーを消費するだけでなく、レンズ形成に要する消費電力も増大する。
【0010】
それゆえ、透明トナーを用いて電子写真方式で透明基材表面にレンズ形成する際に良好なレンズ形成が可能となり、かつ透明トナーの消費量やレンズ形成に要する消費電力も抑制できるレンチキュラーシート作製装置および作製方法が望まれていた。
【0011】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、透明トナーを用いて電子写真方式で透明基材表面にレンズ形成する際に、レンズ形成に要する透明トナー量が最小限に抑えられるため、オフセット等の問題が生じにくく、良好なレンズ形成が可能であり、また、レンズ形成に要する透明トナーの消費量や消費電力も抑制可能なレンチキュラーシート作製装置および作製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置は、感光体と、前記感光体上に所定ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射部と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像部と、前記縞状の透明トナー像を透明基材上に転写するための転写部とを有し、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に形成するための透明トナー像形成転写部と、前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成部とを備えるレンチキュラーシート作製装置を提供するものである。
この発明によるレンチキュラーシート作製方法は、感光体上に所定ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射工程と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像工程と、前記縞状の透明トナー像を透明基材上に転写するための転写工程とを有し、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に形成するための透明トナー像形成工程と、前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成工程とを有するレンチキュラーシート作製方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置によれば、透明トナー像形成時にレンズ形成部に形成されたレンズ成型用の型を構成する溝の形状に整合するように、透明基材上の所定の位置に縞状の透明トナー像を形成することにより、従来のような透明基材の全面にわたって透明トナー層を形成する場合と比べ、各透明トナー像の厚みを増しても透明トナーの増加量が少なくて済む。そのため、オフセット等の問題が生じにくく、良好なレンズ形成が可能となる。また、レンズ形成に要する透明トナーの消費量や消費電力も抑制できるため、無駄のない効率的なレンチキュラーシート作製装置が実現できる。レンチキュラーシート作製方法についても同様である。
【0014】
また、電子写真方式を用いて、感光体上に光照射により潜像形成を行い、感光体上に形成された光透過性の良好な透明トナー像を透明基材に転写、定着することで、様々なサイズや厚み、材料の透明基材上に縞状の透明トナー像を形成することが可能となる。さらに、透明基材上に縞状の透明のトナー像を形成し、当該縞状の透明トナー像を設けた透明基材を表面に凹凸形状の溝を設けた型で成形することにより、解像度の高い良質な3D効果を有するレンチキュラーシートを高画質の画像を比較的容易かつ安価に作製可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の第1実施形態に係るレンチキュラーシート作製装置の構成を示す説明図である。
【図2】図1に示す定着部の構成を示す断面図である。
【図3】図1に示すレンズ形成部の構成を示す断面図である。
【図4】図3に示すレンズ形成部の要部斜視図である。
【図5】図4に示すレンズ形成部の透明基材の搬送方向から見た要部断面拡大図である。
【図6】図4に示すレンズ形成部の変形例の要部斜視図である。
【図7】図6に示すレンズ形成部のローラ軸方向から見た要部断面拡大図である。
【図8】図1に示すレンチキュラーシート作製装置の第1変形例の構成を示す説明図である。
【図9】図1に示すレンチキュラーシート作製装置の第2変形例の構成を示す説明図である。
【図10】この発明の第2実施形態に係るレンチキュラーシート作製装置の構成を示す説明図である。
【図11】図10に示すレンズ形成部の図5対応図である。
【図12】この発明の第3実施形態に係るレンズ形成部の要部斜視図である。
【図13】図12に示すレンズ形成部の図5対応図である。
【図14】図12に示すレンズ形成部の実施例1および比較実施例によるレンズ形成結果を示す説明図である。
【図15】図12に示すレンズ形成部の第1変形例の要部斜視図である。
【図16】図12に示すレンズ形成部の第2変形例の要部斜視図である。
【図17】図16に示すレンズ形成部の構成を示す断面図である。
【図18】図16に示すレンズ形成部の図5対応図である。
【図19】図12に示すレンズ形成部の第3変形例の要部斜視図である。
【図20】この発明の第3実施形態に係るレンズ形成部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置は、感光体と、前記感光体上に所定ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射部と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像部と、前記縞状の透明トナー像を透明基材上に転写するための転写部とを有し、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に形成するための透明トナー像形成転写部と、前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成部とを備える。
この発明によるレンチキュラーシート作製方法は、感光体上に所定ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射工程と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像工程と、前記縞状の透明トナー像を透明基材上に転写するための転写工程とを有し、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に形成するための透明トナー像形成工程と、前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成工程とを有する。
【0017】
本発明によるレンチキュラーシート作製装置は、(i)レンズ形成部の溝部と、(ii)透明トナー像との間の相対的関係に着目して、透明基材上の、溝部と整合する位置に縞状の透明トナー像を形成するため、レンズ形成に直接必要な部分にのみ透明トナーを形成でき、良好かつ無駄のないレンズ形成が実現できる。レンチキュラーシート作製方法についても同様である。
【0018】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、透明基材上に縞状の透明トナー像を重ねて形成する複数の透明トナー像形成転写部と、積層された前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して所定ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成部とを備え、各透明トナー形成部は、感光体と、前記感光体上に前記ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射部と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像部と、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に転写するための転写部とを有するものであってもよい。
この発明によるレンチキュラーシート作製方法において、透明基材上に縞状の透明トナー像を重ねて形成する複数の透明トナー像形成工程と、積層された前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して所定ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成工程とを有し、透明トナー形成工程が、感光体上に前記ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射工程と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像工程と、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に転写するための転写工程とを有するものであってもよい。
【0019】
このようにすれば、透明基材上に縞状の透明トナー像を重ねて形成することによって、少しずつ繰り返し定着することが可能となるため、一度に多量の透明トナーを溶かす場合と比べて耐オフセット性が著しく向上する。
さらに、電子写真方式において、1回の定着プロセスによって良好に形成される透明トナー像の厚みの範囲は、現状では数ミクロンから数十ミクロン程度であるが、繰り返し定着することによって、厚みのある透明トナー像の形成が可能となるため、電子写真方式においても、解像度の高い良質な3D画像が実現できる。
【0020】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記透明トナー像形成転写部は、前記縞状の透明トナー像を構成する各透明トナー像の横断面積の幅を前記透明基材から遠い層ほど小さく前記透明基材上に重ねて形成するものであってもよい。
この発明によるレンチキュラーシート作製方法において、前記透明トナー像形成工程は、前記縞状の透明トナー像を構成する各透明トナー像の横断面積の幅を前記透明基材から遠い層ほど小さく前記透明基材上に重ねて形成するものであってもよい。
【0021】
このようにすれば、縞状の透明トナー像を構成する各透明トナー像の横断面積を凸形状に形成して、対応する溝の凹形状に整合させることができ、溝による透明トナー像のスムーズな押圧により、良好なレンズ形成が可能となる。
【0022】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記透明トナー像形成転写部は、前記縞状の透明トナー像を構成する各透明トナー像の厚みを、対応する前記溝の深さよりも厚く、かつ各透明トナー像の横断面積を、対応する前記溝の横断面積以上の大きさに形成するものであってもよい。
【0023】
このようにすれば、透明トナー像の厚みを溝の深さよりも厚くすることにより、レンズ形成時における押圧力を確保し、また、透明トナー像の横断面積を溝の横断面積以上にすることで、レンズ形成に必要な透明トナー量の不足もなく、良好なレンズ形成が可能になる。
【0024】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記レンズ形成部は、ヒータにより加熱され軸周りに回転するレンズ形成ローラと、前記レンズ形成ローラに対向して配設され、前記レンズ形成ローラを加圧する加圧ローラとからなり、前記レンズ形成ローラは、前記レンズ形成ローラの回転方向に形成された前記溝を有する型を外周面上に備え、前記加圧ローラは、前記レンズ形成ローラを加圧し前記レンズ形成ローラとの間にレンズ形成ニップ部を形成し、前記透明基材は、前記レンズ形成ニップ部に搬送され、前記レンズ形成ローラは、前記レンズ形成ニップ部において、前記縞状の透明トナー像を前記型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するものであってもよい。
【0025】
このようにすれば、レンズ形成部をローラ形状として加圧ローラとの間に所定の長さのレンズ形成ニップ部を形成することで、加圧力をレンズ形成ニップ部に集中させることができ、レンズ形成に十分な押圧力が確保できる。また、レンズ形成ニップ部を所定の線速で透明基材を通過させることにより、レンズ形成に要する加熱時間の微妙な調整が可能となるため、オフセット等の問題が回避しやすくなり、良好なレンズ形成が可能となる。
【0026】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記レンズ形成部は、ヒータを備えるベルト支持部材と、軸周りに回転するベルト支持ローラと、前記ベルト支持部材およびベルト支持ローラ間に回転可能に張架され前記ヒータにより加熱される無端状のレンズ形成ベルトと、前記レンズ形成ベルトを介して前記ベルト支持ローラに対向して配設される加圧ローラとからなり、前記レンズ形成ベルトは、前記ベルト支持ローラの回転方向に形成された前記溝を有する型を外周面上に備え、前記加圧ローラは、前記レンズ形成ベルトを加圧し前記レンズ形成ベルトとの間にレンズ形成ニップ部を形成し、前記透明基材は、前記レンズ形成ニップ部に搬送され、前記レンズ形成ベルトは、前記レンズ形成ニップ部において、前記縞状の透明トナー像を前記型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するものであってもよい。
【0027】
このようにすれば、レンズ形成部をベルト形状とすることで熱容量を小さくでき、またヒータを備えるベルト支持部材によりレンズ形成ベルトを加熱することで、素早い昇温が可能となってウォームアップ時間の大幅な短縮等が実現できるため、レンズ形成が容易にできる。
【0028】
また、レンズ形成ベルトを用いた場合、レンズ形成ベルトの外周長をベルト支持ローラの直径に依存せず自由に設定できるため、レンズ形成ベルト外周面全体での溝の間隔の均一性を確保しやすい。それゆえ、ローラ外周面上に溝を形成する場合とは異なり、隣接する溝間の間隔を周全体において終始一定に保つべく、ローラの外周長がレンチキュラーレンズのピッチ幅のちょうど整数倍になるようにローラの直径を設計する必要がない。
【0029】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記型は、前記軸方向に形成された前記溝を有するものであってもよい。
【0030】
このようにすれば、溝をレンズ形成ローラまたはレンズ形成ベルトの軸方向に形成することにより、細長の透明シートをレンチキュラーシート作製装置に対して縦送りに供給することで、透明シートの短手方向に沿ったレンチキュラーレンズが簡単に形成できるため、レンチキュラーシートの生産性が向上する。特に、細長シートの短手方向に沿ったレンチキュラーレンズを縦方向から見て3D効果を得るレンチキュラーシートの量産が容易に実現できる。
【0031】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記透明トナー像形成転写部は、前記透明基材上への前記縞状の透明トナー像の形成位置を調整する調整機構をさらに備え、前記調整機構は、前記透明基材面に平行かつ前記搬送方向に直交する方向に前記形成位置を調整することにより、前記レンズ形成ニップ部における前記縞状の透明トナー像を前記型に整合させるものであってもよい。
【0032】
このようにすれば、レンズ形成ローラまたはレンズ形成ベルト上に形成された溝および透明基材上に形成された透明トナー像間の位置にずれが発生した場合でも、調整機構により透明トナー像の形成位置を透明基材面に平行かつ透明基材の搬送方向に直交する方向に調整することにより、位置合わせが容易にでき、良好なレンズ形状を有するレンチキュラーシートが作製可能になる。
【0033】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記調整機構は、前記搬送方向に前記形成位置を調整することにより、前記レンズ形成ニップ部における前記縞状の透明トナー像を前記型に整合させるものであってもよい。
【0034】
このようにすれば、レンズ形成ローラまたはレンズ形成ベルト上に形成された溝および透明基材上に形成された透明トナー像間の位置にずれが発生した場合でも、調整機構により透明トナー像の形成位置を透明基材の搬送方向に調整することにより、位置合わせが容易にでき、良好なレンズ形状を有するレンチキュラーシートが作製可能になる。
【0035】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記溝部の前記軸方向の長さは、前記レンズ形成ニップ部における前記透明基材の前記軸方向の長さよりも長いものであってもよい。
【0036】
このようにすれば、レンズ形成ローラまたはレンズ形成ベルトの外周面上の溝部の軸方向の長さを、レンズ形成ニップ部において、通紙可能な透明基材の軸方向の長さよりも長くすることにより、レンズ形成ニップ部における溝部および透明基材間の接触状態が常に一様かつ安定になるため、精度の高いレンチキュラーシートが作製可能になる。
例えば、レンズ形成ローラの溝部とそれ以外の部分の外径が異なる場合、透明基材の幅が溝部より大きいとき、透明基材と溝部・非溝部との接触状態が一様でなくなるため、良好なレンズ形成の妨げとなるが、上のようにすれば、このような不都合がなくなる。
【0037】
この発明によるレンチキュラーシート作製装置において、前記軸から前記レンズ形成ニップ部における前記溝部表面までの長さの最大値は、前記軸から前記レンズ形成ニップ部における前記溝部以外の前記レンズ形成部表面までの長さの最大値以上であるものであってもよい。
【0038】
このようにすれば、軸からレンズ形成ニップ部における溝部表面までの長さの最大値が、軸からレンズ形成ニップ部における溝部以外のレンズ形成部表面までの長さの最大値以上にすることにより、透明基材のサイズによらず、レンズ形成ニップ部における溝部および透明基材間の接触状態が一様かつ安定になるため、精度の高いレンチキュラーシートが作製可能になる。
【0039】
ところで、レンズ形成するためのレンズ形成ローラは、その表面をダイヤモンドバイトのような切削工具で切削加工された表面に溝部を有するローラである。このローラの溝部の形状がレンズの出来具合に大きな影響を与えるため、少なくとも溝部については非常に精密に加工する必要がある。
【0040】
しかしながら、様々なサイズの透明基材のサイズに対応する際には、溝部の形状を非常に高精度に仕上げたとしても、透明基材の幅のサイズによっては、満足のいくレンズが形成できないことがある。ここで、透明基材の幅のサイズとは、透明基材の通紙方向に対して直交する方向の長さである。透明基材の幅のサイズがレンズ形成ローラ表面に形成された溝部の長さより長い場合、切削加工をしていない非溝部が透明基材と接することで、溝部と透明基材との接触状態が不十分となり、レンズ形状にばらつきが発生したり、最悪レンズ形成そのものが不可能となったりする。この発明によるレンチキュラーシート作製装置は、前記問題を解決するものであり、いかなる幅の透明基材に対しても良好かつ均一なレンズが形成可能となる。
【0041】
なお、良好なレンズ形成のためには、(i)レンズ形成部の溝部、(ii)透明トナー像、(iii)透明基材の間のサイズ・位置・形状等の相対的関係が重要であるが、ここでは(i)レンズ形成部の溝部と(iii)透明基材との相対的関係に着目し、所定サイズの透明基材に対して溝部の長さを調節することにより、レンズ形成ニップ部における溝部および透明基材間の接触状態を確保し、良好なレンズ形成を可能にしている。
【0042】
ここで示した種々の好ましい態様は、それら複数を組み合わせることもできる。
以下、図面に基づいてこの発明の実施形態に係るレンチキュラーシート作製装置について詳述する。なお、以下の説明はすべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0043】
なお、図面は模式的なものであり、各図面の寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。同様に、図面相互間においても互いの寸法の比率等が異なることに留意すべきである。それゆえ、具体的な寸法等については、以下の説明または技術常識等を参酌して判断すべきである。
【0044】
≪第1実施形態≫
図1〜図5に基づき、この発明の第1実施形態に係るレンチキュラーシート作製装置について説明する。
【0045】
≪レンチキュラーシート作製装置の構成≫
レンチキュラーシート作製装置100は、透明基材表面に凹凸形状を有するレンズ層が形成されたレンチキュラーシートを電子写真方式により作製する装置である。図1に示すように、レンチキュラーシート作製装置100は、透明トナー像形成部1と転写部2と透明基材供給部3と定着部4とレンズ形成部5と透明基材排出部6とからなる。
【0046】
透明トナー像形成部1は、感光体ドラム11と帯電部12と、光走査部13と、現像部14と、現像剤補給容器15と、ドラムクリーナ16と、感光体除電部17とを備える。帯電部12、現像部14、転写部2、ドラムクリーナ16および感光体除電部17は、この順に、感光体ドラム11の周囲に感光体ドラム11の回転方向上流側から下流側に向かって配置される。
なお、この発明に係る光照射部は、帯電部12と光走査部13とで構成され、この発明に係る透明トナー像形成転写部10は、透明トナー像形成部1、転写部2、レジストローラ34および定着部4からなる。
【0047】
≪レンチキュラーシート作製装置の動作の概要≫
レンチキュラーシート作製装置100は、帯電部12および光走査部13により感光体ドラム11に静電潜像を形成し、現像部14により透明トナーを用いて静電潜像を現像して透明トナー像を形成する。続いて、現像剤補給容器15により透明トナーを現像部14に補給し、ドラムクリーナ16により感光体ドラム11上に残留する透明トナーを除去し、感光体除電部17により感光体ドラム11の除電を行う。次に、透明基材供給部3により透明基材を転写部2に供給し、転写部2により、感光体ドラム11に形成された透明トナー像を透明基材表面に転写する。続いて、定着部4により、透明トナー像が転写された透明基材を加熱加圧して透明トナー像を透明基材に定着させる。次に、レンズ形成部5により、透明基材に定着した透明トナー像を凹凸形状に成型してレンズ層を形成する。レンズ層を形成した透明基材を透明基材排出部6より排出する。
【0048】
≪レンチキュラーシート作製装置の各部の構成≫
次に、レンチキュラーシート作製装置100の各部の構成について詳述する。
【0049】
感光体ドラム11は、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動可能に支持されるローラ状部材である。感光体ドラム11は、感光層を含み、該感光層の表面において、静電潜像ひいては透明トナー像TIを担持する感光体である。感光体ドラム11には、例えば、アルミニウムなどからなる導電性基体と、該導電性基体表面に形成される感光層とからなるものを使用できる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性基体を使用でき、その中でも円筒状の導電性基体を好ましく使用できる。感光層としては、有機感光層、無機感光層などが挙げられる。
【0050】
有機感光層としては、電荷発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と、電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層との積層体、または1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む樹脂層などが挙げられる。無機感光層としては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどから選ばれる1種または2種以上を含む樹脂層が挙げられる。なお、導電性基体と感光層との間には、下地層が介在してもよい。また、感光層の表面には感光層を保護するための表面層(保護層)が設けられてもよい。
【0051】
帯電部12は、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる部材である。帯電部12は、感光体ドラム11に対向する位置に、感光体ドラム11の軸線方向に沿って設置される。帯電部12は、接触帯電方式および非接触帯電方式のいずれの方式の帯電装置でもよい。帯電部12は、接触帯電方式の帯電装置の場合、感光体ドラム11表面に接するように設置され、非接触帯電方式の帯電装置の場合、感光体ドラム11表面から離隔するように設置される。
【0052】
帯電部12としては、ブラシ型帯電装置、ローラ型帯電装置、コロナ放電装置、イオン発生装置などを使用できる。ブラシ型帯電装置およびローラ型帯電装置は、接触帯電方式の帯電装置である。ブラシ型帯電装置には、帯電ブラシを用いるもの、磁気ブラシを用いるものなどがある。コロナ放電装置およびイオン発生装置は、非接触帯電方式の帯電装置である。コロナ放電装置には、ワイヤ状の放電電極を用いるもの、鋸歯状の放電電極を用いるもの、針状の放電電極を用いるものなどがある。
【0053】
光走査部13は、帯電状態にある感光体ドラム11表面に、デジタル信号からなる画像情報に対応するレーザ光を照射して、感光体ドラム11表面に該画像情報に対応する静電潜像を形成する。光走査部13には、半導体レーザ装置などを使用できる。
【0054】
現像部14は、現像槽141と、現像ローラ142と、攪拌ローラ143とを含む。現像槽141は、透明トナーとキャリアとを含む2成分現像剤を収容する容器状部材である。現像ローラ142は、軸線回りに回転可能に支持されるローラ状部材である。現像ローラ142は、感光体ドラム11に対向する面に形成される開口部から、その一部が外方に向けて突出して感光体ドラム11表面に近接するように設けられる。
【0055】
現像ローラ142は、図示しない固定磁極を内包しており、該固定磁極によって、現像ローラ142表面に現像剤を担持する。現像ローラ142は、現像ローラ142と感光体ドラム11との近接部(現像ニップ部)において、担持した現像剤を感光体ドラム11表面の静電潜像に供給し、感光体ドラム11表面に透明トナー像TIを形成する。現像ローラ142は、感光体ドラム11と逆方向に回転駆動する。したがって、現像ニップ部においては、現像ローラ142表面と感光体ドラム11表面とが同じ方向に移動する。現像ローラ142は、図示しない電源と接続され、該電源から直流電圧(現像電圧)が印加される。これによって、現像ローラ142表面の現像剤は、静電潜像に円滑に供給される。
【0056】
現像部14は、感光体ドラム11に対向する面に開口部が形成され、内部空間を有する容器状部材である。現像部14は、その内部空間に攪拌ローラ143を備え、現像剤を貯留する。現像剤14としては、電子写真方式の画像形成装置の分野において通常用いられる現像剤を使用できる。なお、現像剤14は、透明トナーとキャリアとを含む2成分現像剤を用いて感光体ドラム11の表面に形成される静電潜像を現像する方式に限定されるものではなく、透明トナーのみからなる1成分現像剤を用いて現像する方式としてもよい。前記のような固定磁石を内蔵した現像ローラ142を用いる場合は、通常、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤を使用する。一方、キャリアを用いない1成分現像剤においては、ゴムローラや内部に固定磁石を有さない金属ローラ等のローラを用いる。
【0057】
攪拌ローラ143は、現像部14の内部において軸線回りに回転駆動可能に支持されるスクリュー状部材である。攪拌ローラ143は、回転駆動によって、現像部14内の現像剤を現像ローラ142の表面周辺に送給する。
【0058】
現像剤補給容器15は、その内部に現像剤を貯留する容器状部材である。現像剤補給容器15は、現像部14における現像剤の消費状況に応じて、現像部14に現像剤を補給する。
【0059】
ドラムクリーナ16は、現像部14により感光体ドラム11表面の現像剤が、転写部2により透明基材に転写された後に、感光体ドラム11表面に残存する現像剤を除去、回収する。
感光体除電部17は、ドラムクリーナ16によって現像剤が回収された後の感光体ドラム11を除電する。感光体除電部17にはランプなどの照明部材を用いることができる。
【0060】
転写部2は、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる転写ローラ21を有する。転写ローラ21は、感光体ドラム11に圧接して設けられる。転写ローラ21と感光体ドラム11との圧接部を転写ニップ部と呼ぶ。転写ローラ21は、後述する透明基材供給部3によって供給される透明基材表面に、感光体ドラム11の表面に形成された透明トナー像を転写ニップ部において転写する。転写ローラ21は、未定着の透明トナー像を担持した透明基材を、レンズ形成部5へ搬送する。
【0061】
転写ローラ21には、例えば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面を被覆する導電性層とを含むローラ状部材が用いられる。金属製軸体は、例えばステンレス鋼などの金属合金によって形成される。導電性層は、導電性の弾性体などによって形成される。導電性の弾性体としては、電子写真方式の画像形成装置の分野において通常用いられる弾性体を使用でき、例えばカーボンブラックなどの導電剤を含む、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。さらに、その表面をPFA等のチューブ材で被覆してもよい。
【0062】
転写ローラ21は、図示しない高圧電源と接続される。転写ローラ21には、高圧電源から、感光体ドラム11の表面に形成される透明トナー像の帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、感光体ドラム11表面に形成される透明トナー像は、透明基材の表面に円滑に転写される。
【0063】
透明基材供給部3は、透明基材搬送経路30と、透明基材を収納する複数の透明基材カセット311,312,313と、ピックアップローラ321,322,323と、搬送ローラ33と、レジストローラ34とを含む。ここで、透明基材は、PET(ポリエチレンテレフタラート)などの樹脂製の、厚みが100〜600μm程度のシートである。そのサイズには、A4,B5,B4,葉書サイズなどがあり、そのサイズに応じた透明基材カセットに収納される。
【0064】
透明基材搬送経路30は、透明基材カセット311,312,313に収納される透明基材を、転写部2、定着部4およびレンズ形成部5を経由して、透明基材排出部6に1枚ずつ送給するための経路である。ピックアップローラ321,322,323は、それぞれ透明基材カセット311,312,313内の透明基材を1枚ずつ透明基材搬送経路30内に繰り出すローラ状部材である。搬送ローラ33は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、ピックアップローラ321,322,323により繰り出された透明基材をレジストローラ34に向けて搬送する。レジストローラ34は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材である。このレジストローラ34は、感光体ドラム11の表面に形成された透明トナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、該転写ニップ部に透明基材を送給する。
【0065】
透明基材排出部6は、図1に示すように、レンズ形成部5の下流に設けられており、レンズ形成部5において透明基材の一面にレンズ層が形成されたレンチキュラーシートが、透明基材排出部6に搬送される。この透明基材排出部6は、互いに圧接する一対の排出ローラ60,61を含む。レンチキュラーシートは、一対の排出ローラ60,61の圧接部を通過して、レンチキュラーシート作製装置100の外部に排出される。
【0066】
≪定着部の構成≫
次に、図2に基づき、レンチキュラーシート作製装置100に係る定着部4の構成について説明する。
【0067】
図2に示すように、定着部4は、定着ローラ40と、加圧ローラ41と、定着クリーニング部42とを含む。定着ローラ40は、図示しない支持手段によって軸線まわりに回転可能に設けられるローラ状部材であり、図示しない駆動手段により所定の周速度で回転駆動される。定着ローラ40および加圧ローラ41はそれぞれ矢符DFRおよびDPRの方向に回転駆動され、透明トナー像TIを担持した透明基材TSが矢符DTSの方向から定着ニップ部FNに搬送される。定着ニップ部FNにおいて、定着ローラ40は、加圧ローラ41とともに、透明基材TSの一面に転写された透明トナー像TIを加熱溶融して定着させる。
【0068】
定着ローラ40としては、芯金401、弾性層402および表面層403を含むローラ状部材が使用できる。芯金401を形成する金属には熱伝導率の高い金属を使用でき、例えば、アルミニウム、鉄などを使用することができる。芯金401の形状としては、円筒状または円柱状などが挙げられる。
【0069】
弾性層402を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はなく、耐熱性にも優れるものが好ましい。このような材料の具体例としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、またはフルオロシリコンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコンゴムが好ましい。
【0070】
表面層403を構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、透明トナーとの付着力が弱いものであれば、特に制限はない。このような材料の具体例としては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料、またはフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0071】
定着ローラ40は、ローラ内部に内部ヒータランプ43を備える。また、内部ヒータランプ43は、定着ローラ40の中心軸(ここでは回転軸と同じ)に沿って配置されている。なお、第1実施形態においては、内部ヒータランプ43にハロゲンランプを用いているが、これに限らず、定着ローラ40を加熱する任意の加熱手段を用いてもよい。
【0072】
加圧ローラ41は、図示しない加圧機構により定着ローラ40に圧接された状態で回転自在に設けられる。定着ローラ40と加圧ローラ41との圧接部は定着ニップ部FNとなっている。加圧ローラ41は、定着ローラ40の回転に伴って従動回転する。加圧ローラ41は、定着ローラ40による透明トナー像TIの透明基材TSへの加熱定着に際し、溶融状態にある透明トナーを透明基材TSに対して押圧することによって、透明トナー像TIの透明基材TSへの定着を促進する。
【0073】
加圧ローラ41としては、芯金411、弾性層412および表面層413を含むローラ状部材を使用できる。芯金411、弾性層412および表面層413を構成する材料としては、それぞれ、定着ローラ40の芯金401、弾性層402および表面層403を構成する材料と同じものを使用できる。また、芯金411の形状も定着ローラ40の芯金401と同様である。
【0074】
加圧ローラ41は、内部に内部ヒータランプ44を備える。この内部ヒータランプ44は、レンチキュラーシート作製装置100の電源ONから透明トナー像TI形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮のため、透明トナー像TI定着時に透明基材TSに熱が移行することに起因する加圧ローラ41の表面温度の急激な低下などを防止するためのものである。第1実施形態においては、内部ヒータランプ44にはハロゲンランプが用いられる。
【0075】
≪定着クリーニング部の構成≫
次に、図1に示すレンチキュラーシート作製装置100に係る定着クリーニング部42の構成について、同様に図2に基づいて説明する。
【0076】
図2に示すように、定着クリーニング部42は、ウェブ421と、送出ローラ422と、ウェブ圧接ローラ423と、巻取りローラ424とを含み、ウェブ421と定着ローラ40の表面との圧接部であるクリーニングニップ部CNにおけるウェブ421との摩擦により、定着ローラ40の表面に付着したオフセットトナーなどを除去する。
【0077】
ウェブ421は、送出ローラ422からウェブ圧接ローラ423に向けて送り出され、ウェブ圧接ローラ423に巻回されて定着ローラ40の表面に圧接した後、巻取りローラ424によって巻き取られるように設けられる。
【0078】
ウェブ421としては、例えば、耐熱性不織布を使用できる。耐熱性不織布としては、特に制限はないが、例えば、芳香族ポリアミド繊維と、高温で軟化するポリエステル繊維とを含み、適度の柔軟性と機械的強度とを併せ持つ不織布などが挙げられる。このような耐熱性不織布は市販されており、例えば、ノーメックス(登録商標)、ヒメロン(登録商標)などが挙げられる。また、ウェブ421の厚みも特に制限はないが、好ましくは30〜100μmである。第1実施形態においては、ウェブ421として厚み40μmのものを使用する。また、ウェブ421には離型効果などを有するオイルを含浸させ得る。オイルとしては、電子写真方式の画像形成装置の分野で常用されるものを使用でき、例えば、ジメチルシリコンオイル、アミノ変性シリコンオイル、メルカプト変性シリコンオイル、フッ素変性シリコンオイルなどのシリコンオイルが挙げられる。第1実施形態においては、ウェブ421として、0.01m2/s(10000センチストークス、25℃)程度の粘度を持つシリコンオイルを含浸させた。
【0079】
送出ローラ422は、軸線まわりに従動回転可能に支持され、その表面にウェブ421を巻回して保持する。図2に示すように、第1実施形態においては、送出ローラ422は、矢符DWの方向に従動回転してウェブ421を送り出すように構成される。
【0080】
ウェブ圧接ローラ423は、軸線方向の両端が図示しない軸受けによって従動回転可能に軸支されるローラ状部材である。ウェブ圧接ローラ423は、図示しないばね押圧手段によってウェブ421を介して定着ローラ40の表面に圧接するように設けられる。ウェブ圧接ローラ423は、巻取りローラ424によるウェブ421の巻取り動作時に従動回転する。ウェブ圧接ローラ423としては、例えば、金属製芯金と、金属製芯金の表面に形成される弾性層とを含むローラ状部材が用いられる。弾性層を構成する弾性材料としては、例えば、シリコンゴムなどの耐熱性ゴム、その発泡体などが挙げられる。
【0081】
弾性層の表面硬度は、特に制限はないが、好ましくは20°〜30°(Asker−c、アスカーC硬さ)である。押圧手段には、例えば、ばね部材などが用いられる。また、定着ローラ40への押圧力は、好ましくは3793.6Pa(0.039kgf/cm2)〜18967.9Pa(0.19kgf/cm2)である。3793.6Pa未満では、オフセットトナーがレンチキュラーシート作製装置100の内部40の表面層が損傷しやすくなり、透明トナー像TIの定着不良などが発生するおそれがある。
【0082】
ウェブ圧接ローラ423の軸線方向の長さは、レンチキュラーシート作製装置100において形成しようとする透明トナー像TIの最大幅よりも大きくすればよい。また、クリーニングニップ部CNの幅(クリーニングニップ幅)は定着クリーニング部42のクリーニング性能に大きな影響を及ぼすので、適切な範囲に設計するのが好ましい。クリーニングニップ幅CNは、主に、ウェブ圧接ローラ423の定着ローラ40に対する押圧力、ウェブ圧接ローラ423のローラ径などによって決定される。第1実施形態においては、ウェブ圧接ローラ423の軸線方向の幅を透明トナー像TIの最大幅よりも長い310mm、ローラ径を20mmとする。
【0083】
巻取りローラ424は、図示しない駆動手段によって軸線まわりに回転可能に設けられ、定着ローラ40と接触した後のウェブ421を巻き取る。巻取りローラ424の回転駆動によって、ウェブ421が送出ローラ422から送り出され、クリーニング動作が開始される。
【0084】
定着クリーニング部42の動作は、図示しない制御手段によって制御される。制御手段は、定着ニップ部FNを通過した透明基材TSの枚数、または、定着ローラ40の回転数が所定の閾値を超えた場合に、巻取りローラ424を回転駆動させる図示しない駆動手段(ここではレンチキュラーシート作製装置100の本体内部に設けられるモータ)に、クリーニング動作を開始させる制御信号を送る。制御信号を受けた駆動手段は、巻取りローラ424を回転駆動させてウェブ421を一定量巻き取る。この巻取りによってウェブ421が送出ローラ422から矢符DWの方向に送り出される。送り出されたウェブ421は、定着ローラ40の表面のオフセットトナーなどを取り込んで清浄化する。なお、巻取りローラ424によって間欠的にウェブ421の巻取りを行う動作例を示したが、それに限定されず、透明基材TSが定着ニップ部FNを通過するタイミングに合わせて連続的に巻取りを行ってもよい。
【0085】
≪定着ローラおよび加圧ローラの温度制御≫
次に、レンチキュラーシート作製装置100に係る定着ローラ40および加圧ローラ41の温度制御について説明する。
【0086】
第1実施形態においては、定着ローラ40に近接するように、定着ローラ側サーミスタ47が設けられる。定着ローラ側サーミスタ47は、定着ローラ40の表面温度を検知する。定着ローラ側サーミスタ47による検知結果は、制御手段に入力される。制御手段は、定着ローラ側サーミスタ47の検知結果に基づいて、定着ローラ40の表面温度が、所定の設定温度(定着温度)の範囲内であるか否かを判定する。制御手段は、定着ローラ40の表面温度が、所定の定着温度の設定範囲よりも低い場合には、内部ヒータランプ43に接続される電源に制御信号を送り、内部ヒータランプ43に電力を供給して発熱を促す。また制御手段は、定着ローラ40の表面温度が、所定の定着温度の設定範囲よりも高い場合には、内部ヒータランプ43に接続される電源に制御信号を送り、内部ヒータランプ43に対する電力の供給を停止させる。
【0087】
また、第1実施形態においては、加圧ローラ41に近接するように、加圧ローラ側サーミスタ48が設けられる。加圧ローラ側サーミスタ48は、加圧ローラ41の表面温度を検知する。加圧ローラ側サーミスタ48による検知結果は、制御手段に入力される。制御手段は、加圧ローラ側サーミスタ48の検知結果に基づいて、加圧ローラ41の表面温度が、所定の設定温度(定着温度)の範囲内であるか否かを判定する。制御手段は、加圧ローラ41の表面温度が、所定の定着温度の設定範囲よりも低い場合には、内部ヒータランプ44に接続される電源に制御信号を送り、内部ヒータランプ44に電力を供給して発熱を促す。また制御手段は、加圧ローラ41の表面温度が、所定の定着温度の設定範囲よりも高い場合には、内部ヒータランプ44に接続される電源に制御信号を送り、内部ヒータランプ44に対する電力の供給を停止させる。
【0088】
定着部4では、定着ローラ40および加圧ローラ41はそれぞれの設定温度になるように加熱され、定着ローラ40および加圧ローラ41の近傍に設けられた各サーミスタ47,48が設定温度に到達したことを検知し、その検知結果が制御手段に入力される。検知結果が入力されると、制御手段は、定着ローラ40を回転駆動させる駆動手段に制御信号を送り、定着ローラ40を回転駆動させる。それに伴って加圧ローラ41が従動回転する。この状態で、透明トナー像TIが形成された透明基材TSが転写部2から定着ニップ部FNに搬送される。定着ニップ部FNを通過する際に、透明トナー像TIが加熱加圧されて透明基材TSの一面上に定着される。第1実施形態においては、透明基材TSの一面に形成される透明トナー像TIの厚みは、20〜40μmであることが好ましい。
【0089】
ここで、定着ローラ40および加圧ローラ41の表面温度は、透明トナーを構成する結着樹脂の軟化温度よりも10〜80℃高い温度範囲、好ましくは180〜200℃に設定される。
【0090】
≪レンズ形成部の構成≫
次に、図3に基づき、レンチキュラーシート作製装置100におけるレンズ形成部5の構成を説明する。
【0091】
図3に示すように、レンズ形成部5は、透明基材TSの一面に形成された透明トナー像TIを加熱下で加圧して凹凸形状に成型し、透明基材TSの一面に凹凸形状のレンズ層を形成する。このレンズ形成部5は、レンズ形成ローラ50およびレンズ形成用加圧ローラ51の一対のローラを含む。
【0092】
レンズ形成ローラ50は、軸線方向両端を支持され、軸線まわりに回転可能に設けられるローラ状部材であり、図示しない駆動手段により所定の周速度で回転駆動される。レンズ形成ローラ50は、所定のレンズ形成温度になるように加熱され、レンズ形成ローラ50の近傍に設けられたレンズ形成ローラ側サーミスタ57が所定のレンズ形成温度に到達したことを検知し、その検知結果が制御手段に入力される。そして、制御手段は、レンズ形成ローラ50を回転駆動させる駆動手段に制御信号を送り、レンズ形成ローラ50を矢符DLRの方向に回転駆動させる。それに伴ってレンズ形成用加圧ローラ51が矢符DLPRの方向に従動回転する。
【0093】
レンズ形成ローラ50およびレンズ形成用加圧ローラ51によって形成されるレンズ形成ニップ部LNを、透明トナー像TIを担持した透明基材TSがレンズ形成ローラ50に当接するように通過する。透明基材TS上に層形成された透明トナー像TIは、このレンズ形成ニップ部LNにおいて、レンズ形成ローラ50内部の加熱源(内部ヒータランプ53)からの熱およびレンズ形成ローラ50外周面の圧力により加熱成形されて、凸凹形状のレンチキュラーレンズを形成する。
【0094】
レンズ形成ローラ50は、芯金511と表面層513とを含む。芯金511を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などを使用することができる。芯金511の形状は直円筒状であり、芯金511の軸線方向両端部には、絞り構造があってもよいし無くてもよい。
【0095】
表面層513は、芯金511の表面に被覆される層であり、透明トナーの離型性を確保する。表面層513を構成する材料としては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料が挙げられる。あるいは、これらフッ素樹脂を含んだDLC(ダイヤモンドライクカーボン)材料などを用いてもよい。なお、表面層513の厚みは、50nm〜30μm程度が好ましい。表面層513の厚みが極端に薄い場合、耐久性が問題となり、厚くなり過ぎると、芯金511の溝部が埋まってしまうなど、溝形状が大きく変化する結果、レンズ形成が上手くできなくなるおそれがあるためである。
【0096】
なお、レンズ形成ローラ50の表面に表面層513を形成する代わりに、透明トナーの離型性を確保するためにシリコンオイル等の離型剤を塗布する構成としてもよい。また、表面層上にシリコンオイル等の離型剤を塗布する構成としてもよい。シリコンオイルとしては、粘度が1,000CSから10,000CS程度のオイルを使用することができる。
【0097】
レンズ形成ローラ50は、ローラ内部に内部ヒータランプ53を備える。内部ヒータランプ53は、レンズ形成ローラ50の中心軸(ここでは回転軸と同じ)に沿って配置されている。なお、第1実施形態においては、内部ヒータランプ53にハロゲンランプを用いているが、これに限らず、レンズ形成ローラ50を加熱する任意の加熱手段を用いてもよい。
【0098】
レンズ形成用加圧ローラ51は、レンズ形成部5に搬送される透明基材TSの透明トナー像TIが形成されている面とは反対側の面に当接する。レンズ形成用加圧ローラ51は、軸線方向両端を支持され、図示しない加圧機構によりレンズ形成用レンズ形成ローラ50を押圧した状態で回転自在に設けられる。レンズ形成ローラ50とレンズ形成用加圧ローラ51との圧接部は、レンズ形成ニップ部LNを形成する。レンズ形成用加圧ローラ51の軸線方向両端部には、ボールベアリングが挿着されており、レンズ形成用加圧ローラ51は、レンズ形成ローラ50の回転に伴って従動回転する。レンズ形成用加圧ローラ51は、レンズ形成ローラ50による透明トナー像TIの凹凸形状への加熱成型に際し、透明トナー像TIを透明基材TSに対して押圧することによって、透明トナー像TIの凹凸形状への成型を促進する。レンズ形成用加圧ローラ51は、加圧機構によって、軸線方向において一様な押圧力であって総荷重が400Nである押圧力で、レンズ形成ローラ50を押圧している。なお、レンズ形成用加圧ローラ51としては、電子写真方式の画像形成装置の定着部で用いられる通常の加圧ローラを使用することができる。
【0099】
レンズ形成用加圧ローラ51は、芯金521、弾性層522および表面層523を含む。芯金521を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などを使用することができる。芯金521の形状は直円筒状であり、芯金521の軸線方向両端部には、絞り構造があってもよいし無くてもよい。
【0100】
弾性層522は、レンズ形成ローラ50と加圧ローラ52とで形成されるレンズ形成ニップ部LNの領域を大きくするために設けられるもので、芯金521の外周面上に設けられる。弾性層522を構成する材料としては、ゴム弾性を有するもの、より好ましくはゴム弾性を有し、耐熱性に優れたものを用いることができる。このような材料の具体例としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、またはフルオロシリコンゴムなどが挙げられる。また、これら材料の発泡体としてもよいが、特にゴム弾性に優れるシリコンゴムが好ましい。レンズ形成ニップ幅WLN(レンズ形成ニップ部LNの透明基材TSの搬送方向DTSの長さ)は、例えば7mmであることが好ましい。
【0101】
表面層523は、弾性層522の外周面上に設けられる。レンズ形成用加圧ローラ51の表面上に形成される表面層523を構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、透明トナーとの付着力が弱いものを用いることができる。表面層523を構成する材料の具体例としては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料、フッ素ゴムなどが挙げられる。表面層523として、PFAやPTFEを用いる場合は、これらの材料からなるチューブを被覆するようにしてもよいし、あるいはコートするようにしてもよい。なお、表面層523の厚みは10μm〜50μmであることが好ましい。
【0102】
≪レンズ形成ローラの温度制御≫
レンチキュラーシート作製装置100に係るレンズ形成ローラ50の温度制御は、定着ローラ40および加圧ローラ41の場合と同様にサーミスタ57を用いる。ここで、レンズ形成ローラ50の表面温度は、透明トナーを構成する結着樹脂の軟化温度に対して0〜80℃高い温度範囲、好ましくは140〜200℃に設定される。
【0103】
≪透明トナーの成分≫
次に、この発明の第1実施形態に係る透明トナーの成分について説明する。透明トナーは、透光性を有するトナーであり、着色剤を含まないこと以外は、電子写真方式の画像形成装置において通常用いられるトナーと同様の構成成分からなる。なお、透明トナーは、結着樹脂を含み、必要に応じて離型剤が添加される。また、結着樹脂、離型剤の他に、帯電制御剤等の一般的なトナー用添加剤、外添剤を含有してもよい。
【0104】
結着樹脂として、ポリスチレン樹脂、スチレンの置換体の単独重合体からなる樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、環状オレフィン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
これらの結着樹脂の中でも、透明トナー用結着樹脂としては、保存性、耐久性等を考慮すると、軟化点が100〜150℃、ガラス転移点が50〜80℃である結着樹脂が好ましく、前記の軟化点およびガラス転移点を有するポリエステル樹脂も好ましい。また、透明性という観点では環状オレフィン樹脂も良好である。
【0106】
離型剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ワックスを用いることができる。ワックスとしては電子写真方式の画像形成装置の分野において通常用いられるワックスを用いることができる。例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス等が挙げられる。なお、離型剤の含有量は、通常用いられる範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0107】
帯電制御剤としては、透明トナーを帯電させる、またはその帯電性をコントロールできるものであれば、特に限定されるものではない。しかし、透明トナーの透明性に影響を及ぼさないものであることが好ましい。このような帯電制御剤としては、一般的には、例えば、ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン誘導体、サリチル酸亜鉛錯体、ナフトール酸亜鉛錯体、ベンジル酸誘導体の金属酸化物等が挙げられる。これらの帯電制御剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上の帯電制御剤を併用してもよい。なお、帯電制御剤の含有量は、通常用いられる範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0108】
透明トナーは、公知のトナー母粒子の方法に従って製造することができる。その製造方法としては、例えば、粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法等を挙げることができる。透明トナーの体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、2μm〜10μmであることが好ましい。レンチキュラーレンズの形成に際して、領域のエッジ部も含め、できる限り均一な厚みの透明トナー像TIを形成するためである。体積平均粒径が2μmより小さい場合は、透明トナーの流動性が低下する。そのため、現像部14における現像動作の際に、透明トナーの供給、撹拌および帯電が不十分になり、透明トナー量の不足、逆帯電トナーの増加等の問題が発生する。その結果、良好な透明トナーの層形成ができない等の問題が発生するおそれがある。一方、透明トナーの体積平均粒径が10μmを超える場合は、透明基材TS表面に形成される透明トナー像TIの表面平滑性、ひいては透明トナー像TIの成型により生じるレンズ層の表面平滑性が低下するおそれがある。また、後述するように線画像を印字する際にシャープな画像が得られにくくなるおそれもある。
【0109】
外添剤は、透明トナーに対して、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性向上、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面の磨耗特性制御等の機能を付与する目的で添加される。外添剤としては、電子写真方式の画像形成装置の分野において通常用いられる外添剤を用いることができ、例えば、外添剤、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、アクリル微粉末または金属石鹸微粒子等が挙げられる。なお、外添剤の添加量は、通常用いられる範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0110】
以上のようにして製造された透明トナーは、そのまま1成分現像剤として用いることも可能であり、キャリアと混合攪拌することによって、2成分現像剤として用いることも可能である。2成分現像剤として透明トナーとともに用いられるキャリアは、特に限定されるものではなく、電子写真方式の画像形成装置の分野において通常用いられるキャリアを用いることができる。キャリアとしては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性材料やフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等からなるキャリアを用いることが好ましい。また、これらのキャリアをコア粒子として樹脂材料で被覆し、コア粒子の表面に被覆層を形成した樹脂被覆キャリアを用いてもよい。被覆層が形成されていないキャリアを用いるか、樹脂被覆キャリアのいずれを用いるかは、透明トナー成分に応じて適宜選択することが好ましく、1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。キャリアの体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、表面平滑性の良好な透明トナー像TIを形成するためには、キャリアの体積平均粒子径が30μm〜100μmであることが好ましい。
【0111】
2成分現像剤の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができる。本発明の透明トナーは、2成分現像剤全量に対して、3重量%〜20重量%の濃度となるように含まれていることが好ましい。
【0112】
なお、この発明の第1実施形態に係るレンチキュラーシート作製装置100は、図1に示すように、透明基材TSの一面に透明トナー像TIを形成する定着部4と、その透明トナー像TIを凹凸形状に成形してレンズ層を形成するレンズ形成部5とが、それぞれ別々に設けられている。そのため、定着部4およびレンズ形成部5における加熱条件の設定の自由度を向上することができ、耐ホットオフセット性に優れ、かつ、透明基材TSに対するレンズ層の接着強度が十分に確保されたレンチキュラーシートを1つの装置で作製することができる。
【0113】
一例として、直径30mmの有機感光体ドラム11を用いて、帯電部12により均一帯電を行った。このように帯電させた感光体ドラム11を光走査部13で露光を行い、透明トナー像TIを形成するための潜像形成を行った。光走査部13は半導体レーザ装置で縞状の像の書き込みを行った。縞状の像は、副走査方向(感光体ドラム11の周方向、すなわち透明基材TSの搬送方向)に沿って形成され、主走査方向の縞状間のピッチは254μmとした。このようにして形成された潜像を、透明トナーが入った現像部14で現像して感光体ドラム11上に厚み約30μmの縞状の透明トナー像TIを形成した。
【0114】
なお、約30μmの透明トナー像TIの厚みを得るためにオフセット等の問題が生じる場合、図10に示すように、透明トナー像形成転写部10を直列に2つ以上配置して、転写ベルト上に搬送した透明基材TS上に順次転写する方式としてもよい。これについては後に詳述する。
【0115】
第1実施形態に用いた2成分現像剤および透明基材TSの具体的な仕様は以下の通りである。
[2成分現像剤]
(透明トナー)
結着樹脂:環状オレフィン樹脂94.5重量部
帯電制御剤:ベンジル酸誘導体の金属酸化物0.5重量部
ワックス:ポリエチレンワックス5.0重量部
(外添剤)
小粒径シリカ 透明トナー100重量部に対して1.0重量部
酸化チタン 透明トナー100重量部に対して1.5重量部
これらの材料をもとに混練粉砕法により体積平均粒径6.5μmの透明トナーを得た。
(キャリア)
体積平均粒径50μmのキャリアを用いて2成分現像剤に対する透明トナーの濃度比率が8%となるようにフェライトキャリアを添加した。
[透明基材]
厚み550μmのA4サイズのPET(ポリエチレンテレフタレート)シートを用いた。
【0116】
前記現像剤を用いて、感光体ドラム11上に形成された透明トナー像TIを、それぞれ転写部21,21aと感光体ドラム11,11aで形成された転写ニップ部で透明基材TS上に転写した。このようにして縞状の透明トナー像TIが形成された透明基材TSは、引き続きレンズ形成部5に搬送される。
【0117】
この発明の第1実施形態に係る定着部4の詳細は、以下の通りである。
[定着部]
(定着ローラ)
定着ローラ40は、外径36mm、肉厚2mmの鉄製の芯金401の外周面上に、弾性層402として厚み2mmのシリコンゴム層を形成し、さらに弾性層402の外周面上に、表面層403として厚み40μmのPFAチューブ層を設けた外径が約40mmのローラである。なお、定着ローラ40の温度は200℃に設定した。
(加圧ローラ)
加圧ローラ41は、外径38mm、肉厚1mmの鉄製の芯金411上に、弾性層412として厚み1mmのシリコンゴム層を形成し、さらに表面層413として厚み40μmのPFAチューブ層を設けた外径がほぼ40mmのローラである。なお、加圧ローラ41の定着ローラ40に対する圧接荷重は、600Nとした。なお、ニップ幅は約6mmであった。透明基材TSが定着ニップ部FNを通過する速度は、30mm/secとした。
【0118】
レンズ形成部5の仕様は、以下の通りである。
[レンズ形成部]
(レンズ形成ローラ)
外径39.6mm、肉厚2mmで両端を絞ったアルミニウム製の芯金を用いた。この芯金表面を機械的に加工して、レンズ形成ローラ50の回転方向DLRに対して同じ向きにピッチ254μm、深さ約30μmの溝を約300mmの幅で形成した。
表面は、透明トナーの離型性を確保するために、フッ素コートした。フッ素コートの厚みは2μmとした。
(レンズ形成用加圧ローラ)
外径36.9mm、内径32.9mm、肉厚2mmの絞り構造の無い鉄製の鉄製芯金の外周面上に、弾性体として厚み1.5mmのシリコンゴム層を設けた。シリコンゴムは、JIS−A硬度が30°品とした。表面層は厚みが50μmのPFAチューブ層を用いた。製品外径は40.0mmのローラである。また、芯金の軸線方向長さは313mmであり、弾性層の軸線方向長さは312mmである。加重は400Nとした。両ローラで形成されるニップの幅は約2mmであった。また、両ローラの線速は28mm/secであった。
(ランプ)
レンズ形成ローラ50の内部にはハロゲンランプ53を設けてサーミスタ57により150℃になるように温度制御した。
【0119】
このような構成にすると、定着条件およびレンズ形成条件が個別に調整可能となるため、それぞれ最適条件下で定着工程およびレンズ形成工程を行うことが可能になり、良好なレンチキュラーシートが作製できる。
【0120】
≪レンズ形成部の詳細な形状≫
以下、第1実施形態に係るレンズ形成部5の詳細な形状について説明する。
【0121】
図4(A)に示すように、レンズ形成ローラ50の表面には、透明基材TSの一面に形成された透明トナー像TIを凹凸形状のレンズ層に成型できるように所定ピッチで複数本の溝が形成されている。図4(B)は、図4(A)のA部の拡大図である。これらの図に示すように、第1実施形態において、溝の形成方向は、レンズ形成ローラ50の回転方向DLRに沿って形成されている。このような溝の加工方法としては、金属製のバイト等による機械加工や、レーザによる加工等が挙げられる。
【0122】
なお、第1実施形態において、溝をレンズ形成ローラ50の軸方向に形成する場合、レンズ形成ローラ50表面の隣接する溝間の間隔を、ローラの周全体において終始一定に保つため、レンズ形成ローラ50の外周長をレンチキュラーレンズのピッチ幅のちょうど整数倍に設定する必要がある。整数倍に設定しない場合、ローラ表面の一部で溝の間隔が他の部分よりも短く(あるいは長く)なって不整合が生じ、レンズピッチ幅の不均一の原因となるためである。
【0123】
≪良好なレンズ形成のための条件≫
第1実施形態において、溝がレンチキュラーローラの回転方向に形成されたレンズ形成ローラ50でレンズ成形を行う場合、副走査方向に感光体ドラム11上に、縞状の像を光走査部13および13aにより形成する。このとき、透明基材TS上に形成された透明トナー像TIの位置とレンズ形成ローラ50表面に形成された溝の位置を合致させる必要がある。調整方法としては、主走査方向の感光体ドラム11への書き込み位置を調整することで可能となる。書き込み光学系が1200dpiの解像度の場合、約21μmピッチでの制御が可能であり、21μmピッチで±6段階の調整機構を設けることで、たとえ『ずれ』が生じたとしても調整可能となる。調整機構はオペレーションパネルに表示して、ユーザーが調整可能とすることも可能である。
【0124】
図5(A)に示すように、レンズ形成ローラ50の表面層513に形成された溝部GPの各溝の形状と、透明基材TS上に形成された透明トナー像TIの各縞状とが整合するように、透明基材TSがレンズ形成ニップ部LNに搬送される。図5(B)は、図5(A)のB部の拡大図である。
ここで、HTSは、透明基材TSの厚み、WTSは、透明基材TSの幅、WGPは、レンズ形成部5の溝部GPの幅,PLRは、レンズ形成ローラ50の溝のピッチ間隔、HLGは、レンズ形成ローラ50の溝の深さ、PTIは、透明トナー像TI間のピッチ間隔、HTIは、透明トナー像TIの厚み、WTIは、透明トナー像TIの幅、STIは、透明トナー像TI間の間隔をそれぞれ示す。
【0125】
良好なレンズ形成のための溝と透明トナー像TIとの条件は、以下の通りである。
(i)溝のピッチ間隔PLRが、透明トナー像TI間のピッチ間隔PTIに等しい。
(PLR=PTI)
(ii)透明トナー像TIの厚みHTIが、溝の深さHLGよりも大きい。
(HTI>HLG)
(iii)溝の横断面積SGが、透明トナーの横断面積STIと同等かそれ以上であることが望ましい。
(SG≧STI)
ここで、(i)は、透明トナー像TI全体と溝の全体が整合するための条件である。(ii)は、レンズ形成時に表面層513から透明トナー像TIへの最低限の押圧力を確保する条件である。(iii)は、押圧後の良好なレンズ形成のための条件である。これらの条件は、前記理由を実現するためのものであり、条件のもとになる理由が満たされているならば、当該条件と異なるものであってもよい。
【0126】
なお、図5(A)(B)は、溝とレンズ形成前の透明トナー像TIとの位置関係を示すため、透明基材TSと表面層513との間を離して示している。実際には、図5(C)に示すように、レンズ形成ニップ部LNにおいて、透明トナー像TIは、表面層513に押圧されてレンズ形状の透明トナーレンズTLに変形されている。
【0127】
本条件にてレンズ形成を行った結果、良好なレンズが形成できた。またトナー消費量においてもトナー量を削減することができた。
【0128】
≪レンズ形成部の変形例≫
以下、図6および図7に基づき、この発明の第1実施形態に係るレンズ形成部5の変形例について説明する。
【0129】
前記第1実施形態において、透明トナーによる縞状の像を副走査方向に形成した場合を説明したが、主走査方向に形成してもよい。
その場合、図6(A)に示すように、レンズ形成ローラ50a表面に形成される溝はレンズ形成ローラ50aの軸方向に形成される。図6(B)は、図6(A)のC部の拡大図である。透明基材上に主走査方向に254μmピッチの縞状の透明トナー像TIを同じく形成した。なお、用いたトナーおよび現像剤は、第1実施形態と同じである。
【0130】
レンズ形成ローラ50aおよびレンズ形成用加圧ローラ51については、レンズ形成ローラ50aへの溝形成がレンズ形成ローラ50aの回転方向DLRから軸方向に変わった以外は、第1実施形態の場合と全て同じである。このようにしてレンズ形成を行った結果、良好なレンズを形成できた。なお、主走査方向に縞状の透明トナー像TIを形成し、溝がレンチキュラーローラの軸方向に形成されたローラでレンズ成形を行う場合にも、透明基材TS上に形成された透明トナー像TIの位置とレンズ形成ローラ50a表面に形成された溝の位置を合致させる必要がある。
【0131】
具体的な調整方法としては、副走査方向の書き込みタイミングの調整で対応可能である。書き込み光学系が1200dpiの解像度の場合、約21μmピッチでの制御が可能である。例えば、レンズ形成ローラ50a上にその溝の凹凸を示すマーキングを行っておく。マークの位置は、凸部を示す位置でも凹部を示す位置でも問題ない。反射型のフォトセンサーをレンズ形成ローラ50aの対向面に設置して、レンズ形成ローラ50aを回転させながら反射光を読み取り、当該反射光情報に基づいてレンズ形成ローラ50aの表面の凹凸を検知し、その検知情報に基づいて書き込み位置を制御することで、副走査方向の『ずれ』を補正することが可能となる。
【0132】
図7(A)に示すように、レンズ形成ローラ50aの表面層513aに形成された溝部GPの各溝の形状と、透明基材TS上に形成された透明トナー像TIの各縞状とが整合するように、透明基材TSがレンズ形成ニップ部LNに搬送される。図7(B)は、図6(A)のD部の拡大図である。搬送方向DTSに進むにつれ、レンズ形成ニップ部LNにおける加熱・加圧により、透明基材TS上の透明トナー像TIが順次透明トナーレンズTLに変形される。
良好なレンズ形成のための溝と透明トナー像TIとの条件および各符号の意味は、図5の説明と同様である。
【0133】
≪その他の変形例≫
なお、上に述べた変形例の他、レンズ形成用としてレンズ形成ローラ50,50aを用いる代わりに、図12,図15に示すような非溝部NGPを備えたレンズ形成ローラ50b,50d、または図16,図18に示すようなレンズ形成ベルト56,56aを用いてもよい。これらのレンズ形成ローラ50b,50dおよびレンズ形成ベルト56,56aについては、後に詳述する。いずれの変形例においても、レンズ形成部5の溝の位置・形状に整合するように透明トナー像TIの位置・形状を形成するという点では同じである。
【0134】
≪レンチキュラーシート作製装置の変形例≫
以下、図8および図9に基づき、この発明の第1実施形態に係るレンチキュラーシート作製装置の第1および第2変形例についてそれぞれ説明する。
なお、図1に示すレンチキュラーシート作製装置100に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。第2変形例に係るレンズ形成部5については、第1実施形態と同じ構成で問題ない。
【0135】
図8に示すように、第1変形例に係るレンチキュラーシート作製装置100aは、レンチキュラーシート作製装置100のような定着部4を備えておらず、透明トナー像TIの透明基材TSへの定着とレンズ形成とをそれぞれ別のプロセスで行わず、レンズ形成部5によって同時に行う構成となっている。
【0136】
一方、図9に示すように、第2変形例に係るレンチキュラーシート作製装置100bは、前述した定着部4の代わりに非接触の定着部4bを備えること以外は、レンチキュラーシート作製装置100と同様に構成される。厚みのある透明トナー定着層を形成する際において、透明基材TSおよび透明トナーTI間の定着強度を確保するためには、定着ローラの温度を高くする必要があるが、その場合、ホットオフセットが発生しやすくなる。非接触の定着部4bの場合、非接触状態で透明トナーTIを加熱定着するため、このような問題が発生しない。
【0137】
図9に示すように、レンチキュラーシート作製装置100bが備える定着部4bは、所定の間隔をあけて互いに対向する2枚の板状の加熱ヒータ40b,41bを備える。加熱ヒータ40b,41bとしては、たとえば、セラミックヒータ等を用いることができる。転写部2において透明トナー像TIが転写された透明基材TSは、2枚の加熱ヒータ40b,41bの間を通過する。これによって、透明基材TSの一面に形成された透明トナー像TIが非接触で加熱溶融されて定着され、透明基材TSの一面に透明トナー像TIが形成される。
【0138】
このように、レンチキュラーシート作製装置100bでは、定着部4bにおいて透明基材TSの一面に転写された透明トナー像TIに対して非接触で加熱して、透明基材TSの一面に透明トナー像TIを形成するので、定着部4bにおけるホットオフセットの発生を防止することができる。そのため、定着部4bにおける加熱温度を高い値に設定することができ、定着部4bは、厚みの大きな透明トナー像TIを高品質で形成することができる。したがって、レンチキュラーシート作製装置100bは、厚みの大きなレンズ層が形成されたレンチキュラーシートを高品質で作製することができる。
【0139】
≪第2実施形態≫
次に、図10および図11に基づき、第2実施形態の詳細を説明する。
【0140】
図10に示すレンチキュラーシート作製装置100cは、透明トナー像形成転写部10cをさらに1つ備えること以外は、図1に示すレンチキュラーシート作製装置100と同様に構成される。なお、透明トナー像形成転写部10および10cは基本的に同じ構成を有する。第2実施形態では、2つの透明トナー像形成転写部10および10cが、透明基材TSの搬送方向DTSに沿って直列に設けられる。レンチキュラーシート作製装置100cは、透明トナー像形成転写部10および10cを備え、透明トナー像形成転写部10および10cにおいて透明トナーを順次形成して、透明基材TSの一面に2層の透明トナー像TIを積層して形成する。なお、図10においては、透明トナー像形成転写部10および10cを直列に並べた構成としているが、必要に応じて、透明トナー像形成転写部をさらに追加してもよい。
【0141】
図11(A)に示すように、縞状の透明トナー像TIの横断面積を、溝の横断面積の凹形状に整合するように、層全体にわたって凸形状に形成してもよい。このように形成することにより、レンズの凹部に不必要な透明トナー像TIを形成することなく、溝形状の全体にわたるスムーズな押圧が確保され、良好なレンズ形成が可能となる。図11(B)は、図11(A)のE部の拡大図であり、縞状の透明トナー像TIを2層積層した例を、図11(C)は、3層積層した例を示す。
【0142】
≪第3実施形態≫
次に、図12および図13に基づき、レンズ形成部5bの溝部GPと透明基材TSとの関係に着目した良質なレンズ形成の例を第3実施形態において説明する。なお、いずれの実施形態も、レンズ形成部5,5aおよび5bの溝部GPとの幾何学的な整合による良好なレンチキュラーレンズの実現という点で共通している。
【0143】
第3実施形態において、以下のようなトナー、現像剤、定着ローラを用いて透明基材TSの一面に厚み20μmの透明トナー像TIを形成した。なお、図12(A)に示すように、透明トナーを形成する領域は透明基材TSに対して前後、左右とも3mmずつトナーをのせない部分(ボイド部分)を設けることとした。例えば、A4サイズ(297mm×210mm)の場合は、291mm×204mmとなる。また、通紙方向は横通紙(透明基材TSの長手方向が通紙方向と直交する向き)とした。図12(B)は、図12(A)のF部の拡大図である。また、第3実施形態に用いる2成分現像剤、透明基材TSおよび定着部の具体的な仕様は、第1実施形態と同じである。
【0144】
第3実施形態において、レンズ形成ローラ50bの形状と透明基材TSの形状との相対的な関係に応じて、実施例1、実施例2および比較実施例を以下に示す。
【0145】
≪実施例1≫
実施例1において、以下のような条件でレンズ形成を行った。
前述した透明基材TSの一面に形成された厚み約20μmの透明トナー像TIを用いて、その透明トナー像TIに対してレンズ形成ローラ50bにより厚みがほぼ30μmのレンズ形成を行った。
【0146】
[レンズ形成部]
(レンズ形成ローラ)
実施例1に係るレンズ形成ローラ50bは、外径40.00mm、肉厚2mm、胴部長さ(軸線方向長さ)315mmのアルミニウム製の芯金511bの表面を機械加工して、ローラ周方向にピッチ254μm、深さ30μmの溝を305mmの幅で形成した。
実施例1において、レンズ形成ニップ部LNに通紙される透明基材TSの幅WTSの最大幅は、A4(297mm)である。なお、溝部GPの凸部におけるローラの外径(レンズ形成ローラ50bの中心軸から溝部GPまでの長さの最大値LGPの2倍)は39.97mmとなった。このローラ表面に表面層513bとして厚み50nmのフッ素樹脂コート層を設けた。
【0147】
(レンズ形成用加圧ローラ)
レンズ形成用加圧ローラ51として、外径29.76mm、内径23.76mm、肉厚3mmの絞り構造のない鉄製の芯金521上に、弾性層522として厚み5mmのシリコンゴム(JIS−A硬さ:30度)層を形成し、さらに表面層523として厚み50μmのPFAチューブ層を設けた外径がほぼ40mmのローラを用いた。また、レンズ形成用加圧ローラ51の芯金521の軸線方向長さは313mmであり、弾性層522の軸線方向長さは312mmである。なお、レンズ形成用加圧ローラ51のレンズ形成ローラ50bに対する圧接荷重は、400Nとした。このときのニップ幅WLNは約2mmであった。
(レンズ形成ローラの温度)
定着ローラ40の温度は180℃に設定した。
(搬送速度)
レンズ形成ニップ部LNを通過する速度は、30mm/secとした。
【0148】
≪実施例2≫
(レンズ形成ローラ)
実施例2に係るレンズ形成ローラ50bは、外径40.00mm、肉厚2mm、胴部長さ(軸線方向長さ)315mmのアルミニウム製の芯金511bの表面を機械加工して、ローラ周方向にピッチ254μm、深さ30μmの溝を294mmの幅で形成した。この構成において、レンズ形成ニップ部LNに通紙される透明基材TSの幅は、実施例1と同じく、A4(297mm)である。
図13(A)に示すように、溝部GPの凸部におけるローラの外径(レンズ形成ローラ50bの中心軸から溝部GPまでの長さの最大値LGPの2倍)は39.97mmであり、さらに、研磨加工により、溝部GPの外側の非溝部NGPの外径を39.95mmとした。このローラ表面に表面層513bとして厚み50nmのフッ素樹脂コート層を設けた。なお、レンズ形成用加圧ローラ50bおよび各ローラの温度設定、速度は実施例1と同じである。なお、図13(B)は、図13(A)のG部の拡大図である。
【0149】
≪比較実施例≫
(レンズ形成ローラ)
比較実施例として、レンズ形成ローラ50cを、外径40.00mm、肉厚2mm、胴部長さ(軸線方向長さ)315mmのアルミニウム製の芯金511cの表面を機械加工して、ローラ周方向にピッチ254μm、深さ30μmの溝を294mmの幅で形成した。この構成において、レンズ形成ニップ部LNに通紙される透明基材TSの幅はA4(297mm)である。
図13(C)に示すように、溝部GPの凸部におけるローラの外径は39.97mmとなった。このローラ表面に表面層513cとして厚み50nmのフッ素樹脂コート層を設けた。なお、レンズ形成用加圧ローラや各ローラの温度設定、速度は実施例1と同じである。
【0150】
≪レンズ形成の評価結果≫
以下、表1,表2および図14に基づき、実施例1,実施例2および比較実施例によるレンズ形成の評価結果について説明する。
【0151】
実施例1,実施例2および比較実施例におけるレンチキュラーレンズの形成状態を評価した。評価には、株式会社小坂研究所のSurfcorder SE3500を用いた。
以下の表1に各実施例の特徴を、表2に各実施例のレンズ形成の評価結果を示す。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
上の表において、透明基材TSのサイズがB5サイズの場合、いずれの実施例においても良好なレンズ形状の形成が確認された。一方、A4サイズの場合、実施例1および実施例2においては良好なレンズ形状が形成されたが、比較実施例においては、満足な形状のレンズ形状が得られなかった。
【0155】
図14(A)および(B)はそれぞれ、A4サイズの透明基材面を用いたときの実施例1および比較実施例に係るレンチキュラーシート作製装置によるレンズ形成後のレンチキュラーシート表面を表面粗さ計で測定した結果である。横軸は、レンチキュラーシート表面のレンズ形成ローラ50bの周方向の測定位置(単位はμm)を、縦軸はレンチキュラーシート表面の厚み(単位はμm)を表す。
【0156】
比較実施例のように、レンズ形成ニップ部LNにおける溝部GPの幅より透明基材TSの幅が広く、かつ溝部GPのローラ直径の最大値よりも非溝部NGPのローラ直径が大きい場合、レンズ形成ローラ50cがレンズ形成ニップ部LNにおいて透明基材TSに対して十分に接触できない。それゆえ、図14(B)に示すような凸部が歪んだレンズ形状になり、良好なレンズが形成できない。
【0157】
一方、実施例1のように溝部GPの幅を透明基材TSの幅より広く形成する、もしくは実施例2のように溝部GPのローラ直径の最大値を非溝部NGPのローラ直径より大きくすることで、いかなるサイズの透明基材TSに対してもレンズ形成ニップ部LNにおいて十分な接触が保たれる。それゆえ、図14(A)に示すような良好なレンズ形成が容易に実現できる。
【0158】
≪レンズ形成部の第1変形例≫
次に、第3実施形態に係るレンズ形成部5bの第1変形例は、図15(A)に示すように、レンズ形成部5d表面の溝の方向が主走査方向に形成されていることを除けば、前記第3実施形態と同様である。図15(B)は、図15(A)のH部の拡大図である。
【0159】
≪レンズ形成部の第2変形例≫
次に、図16〜図18に基づき、第3実施形態に係るレンズ形成部5bの第2変形例を説明する。なお、第2変形例は、レンズ形成部がローラ状かベルト状の違いがある以外は、前記第1変形例と基本的に同じ構成を有する。
【0160】
図16に示すように、第2変形例に係るレンズ形成部5bは、ベルト支持ローラ55と、無端状のレンズ形成ベルト56と、レンズ形成ベルト56を懸架し加熱するためのヒータを備えるベルト支持部材58と、レンズ形成用加圧ローラ51と、レンズ形成ベルト56の温度を調節する温度調節部材であるレンズ形成ベルトサーミスタ57a、ベルト支持ローラ55およびレンズ形成用加圧ローラ51が互いに圧接されるように加圧するための図示しない加圧スプリングと、当該圧接を解除するための図示しない加圧解除機構とを備えている。
【0161】
ベルト支持ローラ55およびレンズ形成用加圧ローラ51は、加圧スプリングにより、所定の荷重(例えば、400N)で互いに圧接され、両ローラ間にレンズ形成ニップ部LN(ベルト支持ローラ55とレンズ形成用加圧ローラ51とが互いに当接する部分)を形成している。
【0162】
ヒータを備えるベルト支持部材58は、レンズ形成ベルト56を支持するとともに、レンズ形成ベルト56に接触してレンズ形成ベルト56を所定の温度に素早く加熱するためのものである。
【0163】
第2変形例に係るベルト支持ローラ55は、レンズ形成ベルト56を介して、レンズ形成用加圧ローラ51に圧接することでレンズ形成ニップ部LNを形成すると同時に、回転駆動することによりレンズ形成ベルト56を駆動する目的のものである。
ベルト支持ローラ55としては、例えば、内側から順にレンズ形成ベルト基材561と、レンズ形成ベルト表面層562とが形成された2層構造のものを用いることができる。レンズ形成ベルト基材561には、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、レンズ形成ベルト表面層562にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適している。
ベルト支持ローラ55としては、例えば、外径が30mm、内径24mm、肉厚3mmの鉄製芯金551の外周面上に、弾性層552として厚み5mmのシリコンゴム層などを用いる。
なお、その他の構成部分については、基本的に前記第1変形例と同じである。
【0164】
≪レンズ形成ベルトの構成の詳細≫
次に、第2変形例に係るレンズ形成ベルト56の構成の詳細を説明する。
【0165】
レンズ形成ベルト56は、無端状のベルトであり、ヒータを備えるベルト支持部材58およびベルト支持ローラ55によって懸架され、ベルト支持ローラ55の回転時には、ベルト支持ローラ55に従動してレンズ形成ベルト56の送り方向DLBに回転するようになっている。レンズ形成ベルト56は弾性があり、ベルト支持ローラ55およびベルト支持ローラ55に懸架しない状態で円筒状にしたとき、例えば直径50mmの中空の円筒状をなす。
【0166】
図16に示すように、レンズ形成ベルト56は内周側より順に、レンズ形成ベルト基材561およびレンズ形成ベルト表面層562の2層から構成される。
また、図17に示すように、レンズ形成ベルト56の表面は、所定ピッチで複数本の溝が形成されている。溝加工方法としては、金属製のバイト等による機械加工や、レーザによる加工等が挙げられる。レンズ形成ベルト56のレンズ形成ベルト基材561としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などの金属材料を使用することができる。レンズ形成ベルト基材561の外周面に、透明トナーの離型性を確保するためにレンズ形成ベルト表面層562が形成されている。レンズ形成ベルト表面層562の材料は、レンズ形成ローラ50に係る表面層513と同じく、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料が挙げられる。あるいは、これらフッ素樹脂を含んだDLC(ダイヤモンドライクカーボン)材料などを用いてもよい。なお、これらの厚みは、50nm〜30μm程度が好ましい。前記第1実施形態と同様、極端に薄い場合、耐久性が問題となり、厚くなり過ぎると、溝部GPが埋まってしまう等、溝形状が大きく変化する結果、レンズ形成が上手くできなくなる可能性があるためである。
【0167】
なお、透明トナーの離型性を確保するために、シリコンオイル等の離型剤を塗布する構成としてもよい。シリコンオイルとしては粘度が1,000CSから10,000CS程度のオイルを使用することができる。
【0168】
レンズ形成ニップ部LNに搬送方向DTSに搬送されてきた透明トナー像TIが表面に形成された透明基材TSを通過させることで、レンズ形成ベルト56外周面の熱と圧力により透明トナー像TIが加熱成形され、透明基材TSにレンチキュラーレンズが形成される。透明トナー像TIを担持した透明基材TSがレンズ形成ニップ部LNを通過する時には、レンズ形成ベルト56は透明基材TSの透明トナー像TI形成面に当接する一方、レンズ形成用加圧ローラ51は透明基材TSにおける透明トナー像TI形成面とは反対側の面に当接するようになっている。レンズ形成ニップ幅WLN(レンズ形成ニップ部LNの透明基材TSの搬送方向DTSの長さ)は、例えば7mmである。
【0169】
図17(A)に示すように、レンズ形成ベルト56の透明トナー像TIに当接する面には、透明基材TS上の透明トナーをレンズ形状に形成できるように凹面形状の溝が多数形成されている。第2変形例においては、溝は透明基材TSの搬送方向DTSと平行な方向、すなわちレンズ形成ベルト56の送り方向DLBに形成されている。図17(B)は、図17(A)のJ部の拡大図である。
【0170】
図18(A)に示すように、レンズ形成ベルト56は、内周側より順に、レンズ形成ベルト基材561およびレンズ形成ベルト表面層562の2層から構成され、レンズ形成ベルト56の表面は、所定ピッチで複数本の溝が形成されている。溝加工方法としては、金属製のバイト等による機械加工や、レーザによる加工等が挙げられる。図18(B)は、図18(A)のK部の拡大図である。
【0171】
図12の場合と同様に、溝部GPの幅を透明基材TSの幅より広く形成し、溝部GPのローラ直径の最大値を非溝部NGPのローラ直径より大きくすることで、いかなるサイズの透明基材TSに対してもレンズ形成ニップ部LNにおいて十分な接触が保たれるようにすると、良好なレンズ形成が容易に実現できる。
【0172】
≪レンズ形成部の第3変形例≫
次に、図19および図20に基づき、第3実施形態に係るレンズ形成部5bの第3変形例を説明する。なお、第3変形例は、レンズ形成ベルトの溝の形成方向が異なる以外は、前記第2変形例と同じ構成を有する。
【0173】
図19(A)に示すように、レンズ形成ベルト56aの透明トナー像TIに当接する面には、透明基材TS上の透明トナーをレンズ形状に形成できるように凹面形状の溝が多数形成されている。第3変形例においては、溝は透明基材TSの搬送方向DTSと直交する方向、すなわちベルト支持ローラ55の長軸方向に形成されている。図19(B)は、図19(A)に示すレンズ形成部5fのL部拡大図である。
【0174】
図20に示すように、第3変形例に係るレンズ形成ベルト56aは、内周側より順に、レンズ形成ベルト基材561aおよびレンズ形成ベルト表面層562aの2層から構成され、レンズ形成ベルト56aの表面は、所定ピッチで複数本の溝が形成されている。溝加工方法としては、金属製のバイト等による機械加工や、レーザによる加工等が挙げられる。なお、レンズ形成ベルト56aの材料および構成は、前記第2実施例に係るレンズ形成ベルト56と同じである。その他の関係は、基本的に図16の場合と同じである。
【0175】
ところで、レンズ形成ローラ50aおよび50dの場合は、溝をレンズ形成ローラ50aおよび50dの軸方向に形成する場合、レンズ形成ローラ50aおよび50d表面の隣接する溝の間隔をローラの周全体において終始一定に保つため、レンズ形成ローラ50aおよび50dの外周長をレンチキュラーレンズのピッチ幅のちょうど整数倍に設定する必要がある。整数倍に設定しない場合、レンズ形成ローラ50aおよび50d表面の一部で溝の間隔が、レンチキュラーレンズのピッチ幅より短く(あるいは長く)なって不均一が生じてしまう。
【0176】
しかしながら、第3変形例に係るレンズ形成ベルト56aを用いることにより、レンズ形成ベルト56aの外周長はベルト支持ローラ55の直径に依存することなく自由に設定できるため調節が容易になり、レンズ形成ベルト56a表面の溝の間隔の均一性を確保しやすい。また、レンズ形成ベルトの製造過程において、レンズ形成ベルト56a表面の溝の間隔に一部不均一が生じたとしても、レンズ形成ベルトの表面において、溝の間隔が均一な部分の長さが透明基材TSの搬送方向DTSの長さより長い場合は、不均一な部分を避け、均一性が保たれている部分のみをレンズ形成に利用できる。その際、レンズ形成ベルト56aの送り方向DLBの位置検出を行い、レンズ形成ベルト56aの溝の間隔が均一になる部分から、透明基材TSの搬送を開始して、レンズ形成ベルト56aの溝の均一な部分が透明基材TSに当たるようにする。レンズ形成ベルト56aの送り方向DLBの位置検出には、例えば、レンズ形成ベルト56a上にマーキングを行い、光学センサ等で検知する方法等がある。
このようにすれば、ベルト支持ローラ55の直径がレンチキュラーレンズのピッチ幅のちょうど整数倍でなくとも、レンズピッチの均一性を良好に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0177】
1,1c:透明トナー像形成部
2,2c:転写部
3:透明基材供給部
4,4b,4c:定着部
5,5a,5b,5c,5d,5e,5f:レンズ形成部
6:透明基材排出部
10,10c:透明トナー像形成転写部
11,11c:感光体ドラム
12,12c:帯電部
13,13c:光走査部
14,14c:現像部
15,15c:現像剤補給容器
16,16c:ドラムクリーナ
17,17c:感光体除電部
21,21c:転写ローラ
30:透明基材搬送経路
33:搬送ローラ
34,34c:レジストローラ
40,40b,40c:定着ローラ
41,41b,41c:加圧ローラ
42,42c:定着クリーニング部
43,44,53:内部ヒータランプ
47:定着ローラ側サーミスタ
48:加圧ローラ側サーミスタ
50,50a,50b,50c,50d:レンズ形成ローラ
51:レンズ形成用加圧ローラ
55:ベルト支持ローラ
56,56a:レンズ形成ベルト
57:レンズ形成ローラ側サーミスタ
57a:レンズ形成ベルトサーミスタ
58:ベルト支持部材
60,61:排出ローラ
100,100a,100b,100c:レンチキュラーシート作製装置
141,141c:現像槽
142,142c:現像ローラ
143,143c:攪拌ローラ
311,312,313:透明基材カセット
321,322,323:ピックアップローラ
401,411,421,511,511a,511b,511c,521,551:芯金
402,412,522,552:弾性層
403,413,513,513a,513b,513c,513d,523:表面層
421:ウェブ
422:ウェブ送出ローラ
423:ウェブ圧接ローラ
424:ウェブ巻取りローラ
561,561a:レンズ形成ベルト基材
562,562a:レンズ形成ベルト表面層
TI:透明トナー像
TS:透明基材
DTS:透明基材の搬送方向
DFR:定着ローラの回転方向
DPR:加圧ローラの回転方向
DW:ウェブ送り方向
CN:クリーニングニップ部
FN:定着ニップ部
WFN:定着ニップ幅
LN:レンズ形成ニップ部
WLN:レンズ形成ニップ幅
DLR:レンズ形成ローラの回転方向
DLRA:レンズ形成ローラの軸方向
DLPR:レンズ形成加圧ローラの回転方向
DLB:レンズ形成ベルトの回転方向
DBR:ベルト支持ローラの回転方向
DBRA:ベルト支持ローラの軸方向
HTS:透明基材の厚み
WTS:透明基材の幅
GP:溝部
NGP:非溝部
LGP:レンズ形成ローラまたはベルト支持ローラの軸から溝部表面までの長さの最大値
LNGP:レンズ形成ローラまたはベルト支持ローラの軸から非溝部表面までの長さの最大値
WGP:レンズ形成部の溝部の幅
WLR:レンズ形成ローラの幅
WLB:レンズ形成ベルトの幅
PLR:レンズ形成ローラの溝のピッチ間隔
HLG:レンズ形成ローラの溝の深さ
PTI:透明トナー像間のピッチ間隔
HTI:透明トナー像の厚み
WTI:透明トナー像の幅
STI:透明トナー像間の間隔
TL:透明トナーレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、前記感光体上に所定ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射部と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像部と、前記縞状の透明トナー像を透明基材上に転写するための転写部とを有し、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に形成するための透明トナー像形成転写部と、
前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成部とを備えるレンチキュラーシート作製装置。
【請求項2】
透明基材上に縞状の透明トナー像を重ねて形成する複数の透明トナー像形成転写部と、
積層された前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して所定ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成部とを備え、
各透明トナー形成部は、感光体と、前記感光体上に前記ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射部と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像部と、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に転写するための転写部とを有するレンチキュラーシート作製装置。
【請求項3】
前記透明トナー像形成転写部は、前記縞状の透明トナー像を構成する各透明トナー像の横断面積の幅を前記透明基材から遠い層ほど小さく前記透明基材上に重ねて形成する請求項2に記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項4】
前記透明トナー像形成転写部は、前記縞状の透明トナー像を構成する各透明トナー像の厚みを、対応する前記溝の深さよりも厚く、かつ各透明トナー像の横断面積を、対応する前記溝の横断面積以上の大きさに形成する請求項1ないし3のいずれか1つに記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項5】
前記レンズ形成部は、ヒータにより加熱され軸周りに回転するレンズ形成ローラと、前記レンズ形成ローラに対向して配設され、前記レンズ形成ローラを加圧する加圧ローラとからなり、
前記レンズ形成ローラは、前記レンズ形成ローラの回転方向に形成された前記溝を有する型を外周面上に備え、
前記加圧ローラは、前記レンズ形成ローラを加圧し前記レンズ形成ローラとの間にレンズ形成ニップ部を形成し、
前記透明基材は、前記レンズ形成ニップ部に搬送され、
前記レンズ形成ローラは、前記レンズ形成ニップ部において、前記縞状の透明トナー像を前記型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項6】
前記レンズ形成部は、ヒータを備えるベルト支持部材と、軸周りに回転するベルト支持ローラと、前記ベルト支持部材およびベルト支持ローラ間に回転可能に張架され前記ヒータにより加熱される無端状のレンズ形成ベルトと、前記レンズ形成ベルトを介して前記ベルト支持ローラに対向して配設される加圧ローラとからなり、
前記レンズ形成ベルトは、前記ベルト支持ローラの回転方向に形成された前記溝を有する型を外周面上に備え、
前記加圧ローラは、前記レンズ形成ベルトを加圧し前記レンズ形成ベルトとの間にレンズ形成ニップ部を形成し、
前記透明基材は、前記レンズ形成ニップ部に搬送され、
前記レンズ形成ベルトは、前記レンズ形成ニップ部において、前記縞状の透明トナー像を前記型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項7】
前記型は、前記軸方向に形成された前記溝を有する請求項5または6に記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項8】
前記透明トナー像形成転写部は、前記透明基材上への前記縞状の透明トナー像の形成位置を調整する調整機構をさらに備え、
前記調整機構は、前記透明基材面に平行かつ前記搬送方向に直交する方向に前記形成位置を調整することにより、前記レンズ形成ニップ部における前記縞状の透明トナー像を前記型に整合させる請求項5または6に記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項9】
前記調整機構は、前記搬送方向に前記形成位置を調整することにより、前記レンズ形成ニップ部における前記縞状の透明トナー像を前記型に整合させる請求項7に記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項10】
前記溝部の前記軸方向の長さは、前記レンズ形成ニップ部における前記透明基材の前記軸方向の長さよりも長い請求項5ないし9のいずれか1つに記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項11】
前記軸から前記レンズ形成ニップ部における前記溝部表面までの長さの最大値は、前記軸から前記レンズ形成ニップ部における前記溝部以外の前記レンズ形成部表面までの長さの最大値以上である請求項5ないし10のいずれか1つに記載のレンチキュラーシート作製装置。
【請求項12】
感光体上に所定ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射工程と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像工程と、前記縞状の透明トナー像を透明基材上に転写するための転写工程とを有し、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に形成するための透明トナー像形成工程と、
前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して前記ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成工程とを有するレンチキュラーシート作製方法。
【請求項13】
透明基材上に縞状の透明トナー像を重ねて形成する複数の透明トナー像形成工程と、
積層された前記縞状の透明トナー像を、溝を有する型で加圧成形して所定ピッチで配列した凸レンズを形成するためのレンズ形成工程とを有し、
透明トナー形成工程が、感光体上に前記ピッチの縞状の静電潜像を形成するための光照射工程と、前記感光体上に透明トナーを塗布して前記静電潜像を縞状の透明トナー像に現像するための現像工程と、前記縞状の透明トナー像を前記透明基材上に転写するための転写工程とを有するレンチキュラーシート作製方法。
【請求項14】
前記透明トナー像形成工程は、前記縞状の透明トナー像を構成する各透明トナー像の横断面積の幅を前記透明基材から遠い層ほど小さく前記透明基材上に重ねて形成する請求項13に記載のレンチキュラーシート作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−194368(P2012−194368A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58192(P2011−58192)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】