説明

レーザパルスアブレーションを使った物理化学的分析のための方法とシステム

本発明は、パルスレーザによるアブレーションの際の材料の物理化学的分析の方法に関する。前記方法は、プラズマ励起温度を特徴付けるためのレーザビームによって生成されたプラズマに由来する追跡成分の2つのラインの強度レベルの比を使う。本発明は、測定される成分の濃度と発光ラインの強度の変化との間の対応を示し、また、追跡成分の2つの発光ラインの強度レベル間の種々の比R(T)(該比はプラズマ温度を表現する)を示す、標準測定を用いて、前記プラズマ中で成分の濃度が測定されるよう決定することにある、ということを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザパルスによってアブレーション(切除または除去)を施される時に、材料の物理化学的分析をするための方法および装置に関わる。これは、レーザによって生成されたプラズマの原子発光分光法、またはLIBSすなわち「レーザ誘起破壊分光法(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy)」とも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
LIBS方法は多数の利点、つまり固体、液体、または気体の材料のリアルタイムでの基本的な分析を可能にするというような利点を持っているが、レーザビームと分析されるための材料との間の相互作用のパラメータを制御する困難性に関連した不利点を持っている。
【0003】
実際にLIBS方法は、分析される材料上へのレーザビームの衝撃の時点で形成されるプラズマによって発光するラインと、既知の組成のキャリブレーション材料で得られるキャリブレーションラインとの間での比較を利用する。
【0004】
このように、波長と、それぞれ形成されたプラズマのラインの強度により、材料中の成分の存在を決定し、それぞれの材料中のその成分の濃度を求めることが可能になる。
【0005】
しかしながら、分析される成分のラインの強度Iと材料中のその成分の濃度Cとの間の比例係数は、例えば、レーザの波長および/または焦点合わせ、プラズマ発光収集手段の幾何学的配置、光学系の透過率、さらに分析されるサンプルとプラズマの物理化学的特性のような、測定に特有の多数のパラメータに依存する。
【0006】
特に材料上へのレーザの放射照度および該材料の物理化学的特性(マトリックス効果)に関して、キャリブレーション曲線が構築される実験条件が分析で常に再現されるというわけではないので、この依存性は問題である。特に、上記の2つのパラメータの変化は、アブレーションされる材料の量とプラズマの温度を変更する。
【0007】
そのために、材料を分析するためのキャリブレーション曲線と実験的な測定値との間でされる比較は、実験条件に特有な温度とアブレーションされた質量におけるこのような相違の可能性に依存する。
【0008】
[従来の技術]
キャリブレーション曲線と実験的な測定の間の、プラズマの温度の変化を克服するために、プラズマの温度を見積もることが知られている。
【0009】
このような方法は、例えば、非特許文献1に記載されており、同じ成分の2つの発光ラインの強度の比を使ってプラズマ温度の見積りを行なった後に、ラインの強度を正規化することを述べている。あるいは、特許文献1および特許文献2では、プラズマの温度を見積った後に、アブレーションされた質量の正規化を開示している。
【非特許文献1】C. Chaleard、P. Mauchien、N. Andre、J. Uebbing、J.L. Lacour、C.J. Geertsen著、「レーザアブレーション光学発光分光法を用いた質量成分分析におけるマトリックス効果の較正」、the journal "J. Anal. At. Spectrom." 第12巻、1997年、183頁」
【特許文献1】国際公開 第99/49301号パンフレット
【特許文献2】特許協力条約に基づく国際出願 PCT/EP99 01842号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
[本発明に特有な観点]
本発明は、発明に特有な多くの観点からもたらされる。すなわち:
i) プラズマ温度決定と関係する誤差は、分光データに関わる不確定性と、以下で記載するような結果の不正確さを増やす温度計算における指数関数の存在とに起因して、材料の濃度測定に関して少なくとも20%の強い不確定性をもたらす。
ii)レーザパルスによって行なわれた材料アブレーションの後に、プラズマの温度が図1に示すように長い時間にわたって低下する。図1は、アブレーションから経過した時間(x軸、μsによる)の関数としてのプラズマの温度(y軸、ケルビン温度による)を示す。
【0011】
そのために、取得遅れtd、すなわちレーザパルスとプラズマによって発光したフォトンの測定との間の遅れは、望ましい温度におけるプラズマのパラメータの測定を可能にするように選択することができる。
【0012】
[本発明の説明]
この理由により、本発明は、レーザパルスによってアブレーションを施される時に、レーザビームによって生成されたプラズマに存在する追跡成分からの2つの発光ラインの強度の比を用いて材料の物理化学的分析をするための方法であって、
このプラズマ中で分析される成分の濃度が、一方では、分析されるこの成分の濃度と発光ラインの強度との間の対応を示し、また、他方では、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比であってプラズマ温度を表現する比を示す、キャリブレーション測定の手段によって決定されることを特徴とする方法に関連している。
【0013】
本発明の望ましい実施の態様においては、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比が、取得遅れを変えることによって選択される。
【0014】
本発明のおかげにより、トレーサ(追跡手段)として選択された成分の2つのラインの比R(T)によってプラズマ温度が特徴付けられる。換言すれば、プラズマ温度は、容易に決定、および/または修正できるパラメータによって特徴付けられる。
【0015】
このように、キャリブレーション材料を用いて、LIBSで見いだすことのできる、特にレーザの焦点ぼけまたはマトリックス効果に因ったプラズマの種々の温度を決定することが可能となる。それぞれの温度は、追跡成分の2つのラインの強度の間の比R(T)によって特徴付けられるが、一方でそれぞれの測定値を種々の時間で得ることができる。
【0016】
これにより、実験的な測定値を同じ比R(T)を持ったキャリブレーション測定と比較する場合に、キャリブレーション測定を構築するための温度条件に近い実験的な温度状態の下に我々を置くことができる。そして、プラズマ温度の変化の際の材料の濃度とそのラインの強度との間の上記で言及した不確定性を克服することが可能になる。
【0017】
一実施の態様において、取得遅れ(td)、すなわちレーザアブレーションパルスとプラズマのライン強度の測定値との間の遅れは、プラズマ温度を表現する比R(T)を修正するように修正される。
【0018】
一実施の態様によれば、分析される成分と異なった追跡成分が使われる。
【0019】
一実施の態様において、分析される成分の濃度の変化は、温度を表現する同じ比R(T)のために分析される成分の少なくとも1つのラインの強度の測定が、キャリブレーション材料に存在する分析されるこの成分の種々の濃度に依存するようなテーブルで示される。
【0020】
一実施の態様によれば、テーブルに基づいて、分析される成分の少なくとも1つのラインの強度の測定を結びつけて、分析されるこの成分の種々の濃度の関数、例えば線形回帰または二次回帰を用いた関数として、曲線が構築される。
【0021】
一実施の態様においては、アブレーションされた質量の正規化のための方法、および/または、主要な成分あるいは既知の濃度の成分についての正規化のための方法が使われる。
【0022】
一実施の態様によれば、分析される成分の濃度は、種々のレーザビーム発射によって得られた測定値の平均を得ることによって決定される。
【0023】
一実施の態様によれば、分析される成分自体が追跡成分として使用される。
【0024】
本発明は、レーザパルスによってアブレーションを施される時に、レーザビームによって生成されたプラズマからの追跡成分の2つの発光ラインの強度の比を用いて材料の物理化学的分析をするためのシステムであって、
このプラズマ中で分析される成分の濃度を、分析されるこの成分の濃度と発光ラインの強度の変化との間の対応を示し、また、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比R(T)であってプラズマ温度を表現する比を示す、キャリブレーション測定を用いて決定するための手段を含むことを特徴とするシステムにも関連している。
【0025】
最終的に、本発明は、レーザパルスによってアブレーションを施される時に、レーザビームによって生成されたプラズマからの追跡成分の2つの発光ラインの強度の比を用いて材料の物理化学的分析をすることを対象とする画像素子であって、
このプラズマ中で分析される成分の濃度を、発光ラインの様々な強度に対する分析されるこの成分の濃度間の対応を示し、また、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比R(T)であってプラズマ温度を表現する比を示す、キャリブレーション測定を用いて表示することを特徴とする画像素子にも関連している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、添付された図を参照する例示的で非限定的な目的で提供された以下の説明によって、明らかとなるであろう。
【0027】
本発明による、システム20(図2)によって実行されるレーザアブレーションによる物理化学的分析のための方法は、この成分の濃度の変化を表現する予備的な測定値を用いて、少なくとも1つの発光ラインの強度の変化と、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比R(T)(プラズマ温度を表現する比を示す)との関数として、材料中の分析される成分の濃度を決定するための手段、例えばコンピュータ21を含んでいる。
【0028】
このようにして、レーザビーム22が分析される材料24に集光される。この材料24の表面の加熱は、様々な波長のラインを有する光を放出するプラズマの生成をもたらし、それぞれの発光波長は正確な原子遷移、従って成分の特性を示す。
【0029】
放射26は、この例では光ファイバー28によって集められ、そして分光計30によって分析される。カメラ32は、使用者によって選択された時間間隔(タイムスロット)での発光ラインの強度を測定することを可能にし、その発光ラインの強度が、キャリブレーション曲線を基にして、材料の組成に関する情報を得ることを可能にする。
【0030】
このように、プラズマは局所熱力学平衡(LTE)にあると考えられ、それは、原子とイオンの電子レベルの数(集団)の進化を説明するボルツマン(Boltzmann)の法則を使うことを可能にする。この条件は一般に、プラズマによって発光したフォトンの測定がレーザ発射後に十分に長い時間(通常250nsから1μs)行なわれる時に満たされ、レーザアブレーションに関するこの遅れは、取得遅れtと呼ばれる。
【0031】
さらに、フォトン計数が行なわれる期間は、取得継続期間t(通常250nsから10μs)と呼ばれる。
【0032】
この取得継続期間での、成分iの波長λにおけるラインの測定強度は次の形式で書くことができる:
【0033】
【数1】

【0034】
ここに、hはプランク定数、cは、真空中の光速度、λはこの遷移に対して発光するフォトンの波長、Cはプラズマ中の成分iの原子濃度またはイオン濃度、Nはプラズマ中の原子とイオンの合計数、Z(T)は温度Tにおける成分iの分配関数、gAは考慮された遷移の確率、Eは遷移の上側レベルのエネルギー、kはボルツマン定数、Tはプラズマ温度、そしてK(λ)はプラズマ発光の検出効率を考慮に入れた係数である。
【0035】
従って、1つの発光ラインの強度が分光器パラメータ(λ、Z(T)、gA、E)、K(λ)、そしてプラズマの特性(C、N、T)に依存するように表され、その強度が実験的に測定できる。
【0036】
分光器パラメータは一般に知られており、あるいはキャリブレーションに対する比較測定では無視することができる。
【0037】
分光器パラメータに類似した方法で、比例係数K(λ)は、キャリブレーション曲線を使う比較測定では無視することができる。
【0038】
従って、分析される成分の濃度Cの決定のために依然未知である2つのパラメータが存在し、それはプラズマ温度Tとプラズマに含まれる原子とイオンの合計数Nである。
【0039】
本発明によれば、ボルツマン方程式(1)の適用によって、同じ成分に対して、2つの発光ラインの強度の比は以下のように書くことができる:
【0040】
【数2】

【0041】
ここに、添え字「」および「」は追跡成分の遷移1および2に適用されたパラメータをそれぞれ指し、IおよびIは考慮される追跡成分の2つのラインの強度であるが、一方、温度Tが既に図1に示したように長い時間で低下するために、比R(T)が変化する。
【0042】
以下では、R(T)を、取得時点でのプラズマ温度を表現するパラメータとして使用することにする。そして、これは、通常のキャリブレーション曲線に基づいたアバクス(abacus)の作成(または算定、導出)を可能にするが、それに対して追加の量が加えられ、その追加の量がプラズマ温度を特徴付ける比R(T)である。
【0043】
通常、レーザアブレーション後250nsから1μsの間に取得を開始し、カメラ露光ウインドウは250nsから10μsまで変動する。
【0044】
他の代案によれば、システム中で次の要素の少なくとも1を使うことが可能である。すなわち、ポリクロメーターまたはスケール(目盛)を持った分光計、直接的なレンズによる、または直接的なファイバーによる信号の収集、あるいは、従来のレンズによる代わりに顕微鏡対象物を用いたレーザビームの焦点合わせ、である。
【0045】
ライン取得は、発射に次ぐ発射により連続的に行なうことができ、あるいは、それらは、類似の分析条件下の複数の取得の平均または加算からもたらされるようにできる。
【0046】
R(T)を計算するのに使われる追跡成分が分析される成分自体である、ということに注目すべきである。
【0047】
従って、図3に示され、また以下に詳細に説明するような本発明によるアバクスは、分析される成分の濃度と追跡成分の2つのライン比の両方の関数として、ラインの強度を示す。
【0048】
【数3】

【0049】
このようなアバクスの作成は、いくらかの濃度の追跡成分をそれぞれ含んだキャリブレーション材料と既知の種々の濃度の分析される成分とを用いて行なわれる。
【0050】
それぞれのキャリブレーション材料に対し、分析される成分の濃度および比R(T)の関数としての、分析される成分の発光ラインの強度を測定することによって、その結果は以下のタイプのテーブルの形式で示すことができる:
I=f([C]、R(T))
【0051】
【表1】

【0052】
上記テーブル(A)の例においては、3つの発光ライン(分析される成分の1つのラインと追跡成分の2つのライン)が、最初の濃度Cのキャリブレーションを用いて取得遅れtd1のために測定される。
【0053】
次に、R(T)の値(R(T))が決定され、そして分析される成分のラインの強度の値がテーブルに記録される。
【0054】
他の遅れtd2を用いたこの測定を繰り返すことによって、新しい強度値と、さらにRの新しい値(R(T))が得られ、その新しい値がテーブル中に同様に記録される。
【0055】
この操作が、要求されるだけの多くの測定を用いて、要求される他のすべてのキャリブレーションに対して続けられ、そして測定値(R(T))は、不確定性の程度範囲内における最初のキャリブレーションで得られた値と等しいはずである。
【0056】
R(T)の値が、同じ遅れtdiに対する最初のキャリブレーションの値(R(T))に正確に等しくないならば、最初のキャリブレーションによって得られた値を用いた(R(T))の値を合体(併合、またはマージ)するように、遅れtdiを少し調整することが可能である。
【0057】
そのテーブルが構築されると、例えば、測定された各点間の線形回帰または二次の次数回帰を行なうことにより、キャリブレーション曲線を得ることが可能になる。このようにしてパラメータ化された曲線は、
I(R)=a(R)・C+a(R)・C+a(R)
の形式に書くことができる。キャリブレーション曲線が直線であるならば、この式はさらに簡単に、
I(R)=a(R)・C+a(R)
の形式に書くことができる。パラメータa(R),a(R),a(R)は、測定点をに基づいて決定されるべきものである。
【0058】
そして、それぞれの曲線は比(R(T))によって特徴付けられるプラズマ温度に対応する。図3は、上述の方法によって得られた3つの曲線(R(T))を示す。
【0059】
アバクスを作成する時、アブレーションされた材料の量が様々なキャリブレーションに対して異なっているならば、アブレーションされた質量の正規化のための方法、および/または、主要な成分または既知の濃度の成分についての正規化のための既知の方法を追加的に使うことが可能である。
【0060】
最後のこのケースでは、測定される成分のラインの強度は、主要な成分のラインの強度で除算される。
【0061】
【数4】

【0062】
他の既知の方法は、濃度の合計を正規化することによって、アブレーションされた材料の量を考慮に入れることを可能にする。
【0063】
このように、分析された成分の濃度は、αΣ(C)=1となるように同じ係数αを掛けられるが、この方法は、分析される材料に存在するすべての成分の測定を必要とする、という不利点を持っている。
【0064】
大気圧において分析される場合、上述のM.Chaleardらの非特許文献1に記載されたように、プラズマの生成によって発せられる音波の強度にアブレーションされた質量を直線的にリンクさせることが可能である。
【0065】
そして、未知のサンプルの分析のためのアバクスの使用は、分析される成分の関係するラインの強度といくらかの遅れtに対する追跡成分の2つのラインとを同時に測定することのみを必要とする。
【0066】
この場合、信号対雑音比が最も良好な条件を使うことが適切である、ということは明らかである。
【0067】
既に示したように、2つのラインの比((I/I=Rmeasured)は、その曲線上において読みが行なわれるべきであるとの認識を可能にし、従って、曲線Rmeasured上の測定された強度の値を記録することによってそこから成分の濃度を推論することを可能にする。
【0068】
例えば図3において、分析される成分の強度の測定値が、Rmeasured=R2となるような実験条件に対して2250a.u(任意の単位)の強度を示したと仮定する。
【0069】
値Rmeasuredがアバクスの2つのキャリブレーション値の間にある時、Rmeasured=RまたはRまたはRの場合に正確になるように、一次補間を使うか、あるいは遅れtを調整するかの、いずれかが可能である。
【0070】
図3でRmeasured=Rならば、曲線Rの一次補間により、曲線R上に強度の値を投影することによって、分析される成分の濃度が分析された材料の約65%であるということを決定することが可能になる。
【0071】
この方法は、コンピュータまたはマイクロプロセッサーによって好都合に実行することができ、図3のシステム、特に分光器と統合化されうるか、あるいは、リモート制御および/または測定の帰納的解析を可能とするよう分離されうる。
【0072】
要約すると、本発明によれば、プロセスまたは方法についての多くの利点が存在することが明らかである:
・この方法は、多種多様な物理化学的特性を備えた材料の分析に対する、物理化学的意味でのキャリブレーションの低い多様性を必要とする。
【0073】
同じキャリブレーションに対するアバクスを作成する場合、アブレーションされた材料の量は、Rの値にかかわらず常に同じである。さらに、
・この方法は、物理化学的組成が全く未知であるような材料に適用される;
・この方法は、表面上に堆積されたレーザのエネルギーがアバクスを作成する際に使われるものとは異なる場合に適用される;
・追跡成分は、それ自体が分析される成分の1つでありうる;
・この方法は、従来のキャリブレーション技術のように相対的な操作であるので、正確である。パラメータK(λ)の計算が存在せず、あるいは、そのデータの決定が誤差の源となるような分光器データgAおよびZ(T)の決定も存在しない;
・この方法により、測定における時間を節約することを可能にする(分析されるそれぞれのタイプの材料に対する組織的なキャリブレーションはもはや必要ない);
・この方法は、代表的なキャリブレーション(しばしば実在しない)を持つ必要性を排除することを可能にする;
この方法は、異種のサンプルまたは未知のマトリックスのサンプルの分析を可能にすることによって、適用技術範囲の拡大を可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、プラズマの光学的発光を使うすべての分析法、および特にLIBS技術に関連している。例として、本発明は、溶融状態または固体の合金をオンラインで検査するための冶金産業、プラスチックの品質の検査または分類のためのプラスチック産業、チェーンアウトプット(chain output)におけるプロダクトの組成を検査するための製薬産業、プラスチックまたは金属のような廃棄物分類の分野、環境の測定(大気、土壌、水分のモニタリング)、迅速な岩石分析での地質学、原子力産業、特に固体または液体の遠隔または非接触分析、文化的物品の維持管理または保管、例えば絵画の起源の時代特定および/または分析を行なう場合、および、LIBS技術を使った地図製作品などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】すでに説明した、レーザアブレーションの後の、時間の関数としてのプラズマの温度の変化を示す。
【図2】本発明によるシステムを示す。
【図3】本発明により決定されるキャリブレーション曲線を示す。
【符号の説明】
【0076】
20 システム
21 コンピュータ
22 レーザビーム
24 材料
26 放射
28 光ファイバー
30 分光計
32 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザパルス(22)によってアブレーションを施される時に、レーザパルス(22)によって生成されたプラズマからの追跡成分の2つのラインの強度の比を用いて材料(24)の物理化学的分析をするための方法であって、
このプラズマ中で分析される成分の濃度が、一方では、分析されるこの成分の濃度と発光ラインの強度との間の対応を示し、また、他方では、追跡成分の少なくとも2つのラインの強度間の種々の比R(T)であってプラズマ温度を表現する比を示す、キャリブレーション測定を用いて決定される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
取得遅れ(td)、すなわちレーザアブレーションパルスとプラズマのライン強度の測定との間の遅れは、プラズマ温度を表現する比R(T)を修正するように修正されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分析される成分と異なる追跡成分が使われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
分析される成分自体が追跡成分として使用されることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分析されるための成分の濃度の変化は、温度を表現する同じ比R(T)に対して、分析される成分の少なくとも1つのラインの強度の測定が、キャリブレーション材料に存在する分析されるこの成分の種々の濃度に依存するようなテーブルで示されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
テーブルに基づいて、分析される成分の少なくとも1つのラインの強度の測定を結びつけて、分析されるこの成分の種々の濃度の関数、例えば線形回帰または二次回帰を用いた関数として、曲線が構築されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アブレーションされた質量の正規化のための方法、および/または、主要な成分あるいは既知の濃度の成分についての正規化のための方法が使われることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
分析される成分の濃度は、種々のレーザビーム発射によって得られた測定値の平均を得ることによって決定されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
レーザパルスによってアブレーションを施される時に、レーザビームによって生成されたプラズマからの追跡成分の2つの発光ラインの強度の比を用いて材料の物理化学的分析をするためのシステムであって、
このプラズマ中で分析される成分の濃度を、一方では、分析されるこの成分の濃度と発光ラインの強度の変化との間の対応を示し、また、他方では、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比R(T)であってプラズマ温度を表現する比を示す、キャリブレーション測定を用いて決定するための手段
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
レーザパルスによってアブレーションを施される時に、レーザビームによって生成されたプラズマからの追跡成分の2つの発光ラインの強度の比を用いて材料の物理化学的分析をすることを対象とする画像素子であって、
このプラズマ中で分析される成分の濃度を、一方では、分析されるこの成分の濃度と発光ラインの強度との間の対応を示し、また、他方では、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比R(T)であってプラズマ温度を表現する比を示す、キャリブレーション測定を用いて表示する
ことを特徴とする画像素子。
【請求項11】
レーザパルスによってアブレーションを施される時に、レーザビームによって生成されたプラズマからの追跡成分の2つの発光ラインの強度の比を用いて材料の物理化学的分析をすることを対象とするソフトウェア手段であって、
このプラズマ中で分析される成分の濃度を、一方では、分析されるこの成分の濃度と発光ラインの種々の強度との間の対応を示し、また、他方では、追跡成分の2つのラインの強度間の種々の比R(T)であってプラズマ温度を表現する比を示す、キャリブレーション測定を用いて決定する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法に従ったソフトウェア手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−532030(P2008−532030A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557549(P2007−557549)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050158
【国際公開番号】WO2006/092520
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】