説明

レーザビームの形状制御装置

【課題】短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御できる光学系を有するレーザビームの形状制御装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源3と、該レーザ光源からのレーザビームを、その進行方向と垂直な断面が横長形状となるレーザビームにする光学系5と、を備える。該光学系は、上記横長形状の縦方向ビーム形状を制御する短軸光学系5aと、上記横長形状の横方向ビーム形状を制御する長軸光学系5bと、を有する。短軸光学系は、レーザビームを短軸方向において複数のビームに分割する短軸用レンズアレイ11a,11bと、該短軸用レンズアレイの下流に設けられ、複数のビームを重ね合わせる短軸用コンデンサレンズ13と、を有する。短軸用レンズアレイは光学系5に対し着脱可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に形成された半導体膜へ照射するレーザビームの形状制御装置に関する。このようなレーザビームの形状制御装置は、半導体膜に対してレーザアニールを行うためレーザアニール装置に適用できる。
【背景技術】
【0002】
レーザアニールは、基板表面に形成された半導体膜にレーザビームを照射することで、この半導体膜を溶融、結晶化させる処理である。なお、基板は、通常、低融点ガラスである無アルカリガラスである。また、この基板の表面に形成される半導体膜は、例えば、アモルファスシリコンである。
レーザアニールにより結晶化されたシリコンは、結晶化される前のアモルファスシリコンに比べ、電気特性に優れているため、携帯電話やデジタルスチルカメラなどの高精度な表示が必要とされる液晶ディスプレイを駆動するトランジスタに採用されている。
【0003】
レーザアニール装置には、エキシマレーザアニール装置と、固体グリーンレーザアニール装置とがある。
【0004】
エキシマレーザアニール装置は、レーザ光源としてエキシマレーザ装置を用いたものである。このようなエキシマレーザアニール装置は、例えば、下記特許文献1に記載されている。図6は、特許文献1に記載されたエキシマレーザアニール装置の光学系を示している。
図6の光学系は、レーザビームをその進行方向と垂直な断面が横長形状となるようにして、半導体膜に照射するものである。図6(A)は、上記横長形状の縦方向(以下、長軸方向と言う)の長軸光学系を示し、図6(B)は、上記横長形状の横方向(以下、短軸方向と言う)の短軸光学系を示している。
【0005】
長軸光学系は、図6(A)に示すように、レンズアレイ43a,43bと、コンデンサレンズ45、と投影シリンドリカルレンズ46とを有する。
レンズアレイ43a,43bは、入射レーザビームを長軸方向において複数のビームに分割する。
コンデンサレンズ45は、レーザビームを収束させ、レンズアレイ43a,43bにより分割された複数のビームをホモジナイズ面47上で重ね合わせる。これにより、長軸方向のビーム強度を均一化させる。
投影シリンドリカルレンズ46は、入射レーザビームを収束させ、この収束位置の下流側にある照射領域49において長軸方向にビームを長尺化させる。
【0006】
一方、短軸光学系は、図6(B)に示すように、レンズアレイ51a,51bと、コンデンサレンズ45、と投影シリンドリカルレンズ55とを有する。
レンズアレイ51a,51bは、入射レーザビームを短軸方向において複数のビームに分割するものである。
コンデンサレンズ45は、レーザビームを収束させ、レンズアレイ51a,51bにより分割された複数のビームをホモジナイズ面47上で重ね合わせる。これにより、短軸方向のビーム強度を均一化させる。
投影シリンドリカルレンズ55は、入射レーザビームを収束させ、照射領域49において短軸方向のビーム寸法を縮小させる。
【0007】
このような構成を持つ図6のエキシマレーザアニール装置では、長軸方向および短軸方向のビーム強度が均一化される。言い換えると、エキシマレーザ装置は、ビームの進行方向と垂直な面においてビーム強度がガウス分布となるレーザビームを射出するが、上述の光学系により、長軸方向および短軸方向のビーム強度が均一化される。
【0008】
一方、固体グリーンレーザアニール装置は、レーザ光源として固体グリーンレーザ装置を用いたものである。固体グリーンレーザアニール装置は、例えば、図7に示す光学系を有する。図7(A)は、長軸光学系を示し、図7(B)は、短軸光学系を示している。
【0009】
長軸光学系は、図7(A)に示すように、ビームエキスパンダ57と、第1の集光レンズ59と、長軸用導波路61と、第2の集光レンズ63と、を有する。
ビームエキスパンダ57は、長軸方向のビーム寸法を拡大させる。
第1の集光レンズ59は、長軸方向のビーム寸法を収束させて、レーザビームを長軸用導波路61の入口へ案内する。
長軸用導波路61は、光軸から長軸方向に同じ距離だけ離れた位置に互いに対向する光反射面を有する。これら2つの光反射面は、光軸および短軸方向に平行な光反射面である。長軸用導波路61の入口からその内部に、長軸方向において収束していくレーザビームが入射すると、入射したレーザビームはこの2つの光反射面で反射を繰り返す。反射が繰り返されたビームは長軸用導波路61の出口で重ね合わされ、これにより、この出口において長軸方向のビーム強度が均一化される。
第2のレンズ63は、入射レーザビームを収束させ、この収束位置の下流側にある基板65表面において長軸方向に長尺化させる。
【0010】
短軸光学系は、図7(B)に示すように、ビームエキスパンダ67と、集光レンズ69と、を有する。
ビームエキスパンダ67は、長軸方向のビーム寸法を拡大させる。
集光レンズ69は、入射レーザビームを収束させ、基板65表面において短軸方向のビーム寸法を縮小させる。
【0011】
このような構成を持つ図7の固体グリーンレーザアニール装置では、長軸方向のビーム強度が均一化され、短軸方向のビーム強度はガウス分布になる。言い換えると、固体グリーンレーザ装置は、ビームの進行方向と垂直な面においてビーム強度がガウス分布となるレーザビームを射出するが、上述の光学系により、長軸方向のビーム強度は均一化され、短軸方向のビーム強度はガウス分布形状に維持される。
【0012】
なお、短軸方向のビーム強度を均一化させる光学素子として回折光学素子を用いた光学系がある。この回折光学素子は、石英ガラスなどの表面に微細加工で凹凸をつけたものであり、レーザの位相を制御する。このような回折光学素子により、短軸方向および長軸方向のビーム強度均一化や、長軸方向のみのビーム強度均一化を行うことができる。
【特許文献1】特開平10−153746(特許第3191702号)「ビームホモジナイザ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、1つのレーザアニール装置で、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御できるようにすることが望まれる。
上述した図6や図7に示すレーザアニール装置では、1つのレーザアニール装置で、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御することはできない。
【0014】
例えば、図6のエキシマレーザアニール装置の光学系では、短軸方向のビーム強度はガウス分布形状に固定されているので、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御することはできない。
【0015】
一方、図7の固体グリーンレーザアニール装置の光学系でも、短軸方向のビーム強度は均一化された形状に固定されているので、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御することはできない。
【0016】
また、上述の回折光学素子を用いた光学系でも、1つのビーム形状にしか制御することができない。例えば、長軸方向のビーム強度を均一化させ、短軸方向のビーム強度をガウス形状とするように制御した回折光学素子で、短軸方向および長軸方向のビーム強度を均一化させることができない。従って、このような光学系でも、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御することはできない。なお、回折光学素子は、回折光学素子に入射されるビーム形状に敏感である。そのため、回折光学素子への入射ビーム形状が変動すると均一化が悪化してしまう問題がある。
【0017】
そこで、本発明の目的は、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御できる光学系を有するレーザビームの形状制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明によると、基板の表面に形成された半導体膜へ照射するレーザビームの形状制御装置であって、レーザ光源と、該レーザ光源からのレーザビームを、その進行方向と垂直な断面が横長形状となるレーザビームにする光学系と、を備え、該光学系は、前記横長形状の縦方向ビーム形状を制御する短軸光学系と、前記横長形状の横方向ビーム形状を制御する長軸光学系と、を有し、前記短軸光学系は、レーザビームを短軸方向において複数のビームに分割する短軸用レンズアレイと、該短軸用レンズアレイの下流に設けられ、前記複数のビームを重ね合わせる短軸用コンデンサレンズと、を有し、前記短軸用レンズアレイは該光学系に対し着脱可能になっている、ことを特徴とするレーザビームの形状制御装置が提供される。
【0019】
上記構成では、短軸方向において、短軸用レンズアレイにより分割されたビームがコンデンサレンズにより重ね合わされることで、ビーム強度が均一化される。
また、短軸用レンズアレイは着脱可能になっており、短軸用レンズアレイを光学系から取り外すと又は光軸外へ移動させると、短軸方向のビーム強度は均一化されない。すなわち、短軸用レンズアレイを光学系から取り外すと又は光軸外へ移動させると、基板表面における短軸方向のビーム強度形状は、レーザ光源から出射されたビーム強度形状と同じガウス分布となる。
従って、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御できる。
【0020】
ところで、エキシマレーザアニール装置において、短軸方向におけるビーム強度をガウス分布形状にすると、望ましくない結果となる。なぜなら、エキシマレーザアニール装置により結晶化されたシリコンは、固体レーザ装置の場合と比較して、レーザビームのエネルギ密度変動量に対するシリコンの結晶粒平均寸法の変動が大きい。その結果、半導体特性のマージンが小さくなってしまう。そのため、エキシマレーザアニール装置の場合には、短軸方向のビーム強度を平坦・均一にして、ビーム強度の変動を抑制することが望まれる。
【0021】
これに関し、本発明の好ましい実施形態によると、前記レーザ光源は、固体レーザ装置である。
固体レーザにより結晶化された半導体膜は、エキシマレーザの場合と比較して、レーザビームのエネルギ密度変動量に対する半導体膜の結晶粒平均寸法の変動を小さく抑えることができる。
従って、レーザ光源を固体レーザ装置とすることで、半導体基板表面における、短軸方向のビーム強度形状を、ガウス分布としても、半導体特性のマージンを大きい値に維持できる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によると、前記短軸光学系は、前記短軸用レンズアレイの上流側に設けられた短軸用ビームエキスパンダを有し、該短軸用ビームエキスパンダは光軸方向に位置調整可能になっている。
【0023】
このように、短軸用ビームエキスパンダの位置を光軸方向に調節することで短軸用ビームエキスパンダを通過したビームの発散角を調節できる。これにより、レーザビームの短軸方向の長さを調節することができる。
【0024】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記短軸用レンズアレイは、光軸方向に間隔を置いた複数の箇所に設けられており、これら複数の短軸用レンズアレイの少なくとも1つは、光軸方向に位置調整可能になっている。
【0025】
このように、複数の短軸用レンズアレイの少なくとも1つを位置調整することで、複数のレンズアレイの間隔を調節することができる。これにより、レーザビームの短軸方向の長さを調節することができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によると、前記長軸光学系は、レーザビームを長軸方向において複数のビームに分割する長軸用レンズアレイと、該長軸用レンズアレイの下流に設けられた長軸用コンデンサレンズと、を有する。
【0027】
これにより、長軸方向において、長軸用レンズアレイにより分割されたビームが長軸用コンデンサレンズにより重ね合わされることで、ビーム強度が均一化される。
【0028】
また、本発明の他の実施形態によると、前記長軸光学系は、レーザビームを長軸方向におけるビーム強度を均一化させる長軸用導波路と、該長軸用導波路の上流側に設けられ、長軸用導波路の入口へ向かって長軸方向のビーム寸法を収束させる導波路導入用シリンドリカルレンズと、を有する。
この構成でも、長軸方向におけるビーム強度を均一化できる。
【0029】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記短軸光学系は、前記短軸用レンズアレイの上流側に設けられた短軸用ビームエキスパンダを有し、前記長軸光学系は、長軸用ビームエキスパンダを有し、前記短軸用ビームエキスパンダと、前記長軸用ビームエキスパンダは、それぞれ、光軸方向に位置調整可能な別個のシリンドリカルレンズを有する。
【0030】
このように、短軸光学系のビームエキスパンダと、長軸光学系のビームエキスパンダは、それぞれ、光軸方向に位置調整可能な別個のシリンドリカルレンズであるので、短軸および長軸方向のビーム幅を独立して調節することができる。
【発明の効果】
【0031】
上述した本発明によると、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0033】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態によるレーザビームの形状制御装置10の概略構成図である。
本発明の第1実施形態によるレーザビームの形状制御装置10は、レーザアニール装置として機能し、レーザ光源3と、該レーザ光源3からのレーザビームを、その進行方向と垂直な断面が横長形状(矩形又は楕円)となるレーザビームにする光学系5と、を備える。
レーザ光源3は、固体レーザ装置であり、短軸方向および長軸方向における強度分布がガウス分布形状となるレーザビームを射出する。
上記光学系5を通過した上記横長形状のレーザビームが基板7表面の半導体膜に照射される。この時、基板7を短軸方向に移動させながら、基板7表面に横長形状のレーザビームを照射することで、基板7表面全体に対してレーザアニールを行う。
【0034】
上記横長形状のレーザビームを形成するために、レーザビームの形状制御装置10の光学系5は、上記横長形状の縦方向ビーム形状を制御する短軸光学系と、上記横長形状の横方向ビーム形状を制御する長軸光学系と、を有している。図2(A)は、短軸光学系5aを示している。図2(B)は、長軸光学系5bを示しており、図2(A)のB−B線矢視図である。
【0035】
短軸光学系5aの構成について説明する。
【0036】
図2(A)に示すように、短軸光学系5aは、短軸用ビームエキスパンダ9と、短軸用レンズアレイ11a,11bと、短軸用コンデンサレンズ13と、投影レンズ15とを有する。なお、符号17a,17b,17cは、反射ミラーを示し、符号19はレーザビームの形状制御装置10の基盤を示している。
【0037】
短軸用ビームエキスパンダ9は、短軸用レンズアレイ11a,11bの上流側に設けられる。この短軸用ビームエキスパンダ9には、レーザ光源3から射出され反射ミラー17a,17bにより反射された平行レーザビームが入射される。平行レーザビームが短軸用ビームエキスパンダ9を通過することで、その短軸方向寸法が拡大される。
短軸用ビームエキスパンダ9は、凹レンズ21と、シリンドリカルレンズ23と、を有する。
また、凹レンズ21およびシリンドリカルレンズ23の一方又は両方は、それぞれ、基盤19上で光軸方向に位置調整可能な移動ステージ25に取り付けられる。この移動ステージ25の軸方向の位置調節は、操作者が手動で、又は、図示しない駆動装置により、移動ステージ25を光軸方向に移動させて行うことができる。
このように、凹レンズ21およびシリンドリカルレンズ23の一方又は両方の位置を調節することで、短軸用ビームエキスパンダ9を通過したレーザビームの、短軸方向寸法の発散角を、調節することができる。
【0038】
短軸用レンズアレイ11a,11bの各々は、軸が長軸方向を向いた複数のシリンドリカルレンズを短軸方向に配列して構成されたものである。このような短軸用レンズアレイ11a,11bは、入射されたレーザビームを短軸方向において複数のビームに分割する機能を持つ。
図2(A)の例では、2つの短軸用レンズアレイ11a,11bが、光軸方向に間隔をおいて設けられている。
また、これら短軸用レンズアレイ11a,11bの一方又は両方は、それぞれ、基盤19上で光軸方向に位置調整可能な移動ステージ27a,27bに取り付けられる。移動ステージ27a,27bの軸方向の位置調節は、操作者が手動で、又は、図示しない駆動装置により、移動ステージ27a,27bを光軸方向に移動させて行うことができる。
このように、短軸用レンズアレイ11a,11bの一方又は両方の位置を調節することで、レーザビームの短軸方向寸法を、調節することができる。
【0039】
短軸用コンデンサレンズ13は、短軸用レンズアレイ11a,11bを通過して分割された複数のビームを、収束させ、ホモジナイズ面29上で重ね合わせる。この重ね合わせにより、短軸方向のビーム強度を均一化させる。
【0040】
投影レンズ15は、短軸用レンズアレイ11a,11bと短軸用コンデンサレンズ13により短軸方向強度が均一化されたレーザビームを,短軸方向において、収束させ基板7表面上に縮小投影する。図2(A)の例では、投影レンズ15はシリンドリカルレンズである。
【0041】
さらに、第1実施形態によると、上述した短軸用レンズアレイ11a,11bは短軸光学系5aから着脱可能になっている。短軸用レンズアレイ11a,11bを例えば操作者が手動で短軸光学系5aから取り外すと又は自動で光軸外へ移動させると、短軸方向のビーム強度は均一化されない。すなわち、基板7表面における短軸方向のビーム強度形状は、レーザ光源3から出射されたビーム強度形状と同じガウス分布となる。好ましくは、再取付時の光軸再調整を不要とするため、短軸用レンズアレイ11a,11bを取り外すのではなく、図示しない駆動装置により移動ステージ27a,27bを光軸外(即ち、短軸用レンズアレイ11a,11bがレーザビームに影響を与えない位置)に移動させる。このような各移動ステージ27a,27bは、2つのモータにより互いに垂直な2方向に移動させられる適切な電動ステージであってよい。これにより、各移動ステージ27a,27bは、第1のモータ(光軸方向に対応)と第2のモータ(光軸と垂直な方向に対応)により、光軸方向だけでなく光軸と垂直な方向にも移動可能になる。
このようにガウス分布形状とした場合、レーザ光源3がエキシマレーザ装置であると、レーザビームのエネルギ密度変動量に対するシリコンの結晶粒の平均寸法の変動が大きくなってしまう。従って、半導体特性のマージンが小さくなってしまう。
ところが、本実施形態では、レーザ光源3が固体レーザ装置であるので、ビームがガウス分布形状であっても、レーザビームのエネルギ密度変動量に対するシリコンの結晶粒の平均寸法の変動を小さくできる。これにより、半導体特性のマージンを大きい値に維持できる。
【0042】
次に、長軸光学系5bの構成について説明する。
【0043】
図2(B)に示すように、長軸光学系5bは、長軸用ビームエキスパンダ31と、長軸用レンズアレイ33a,33bと、長軸用コンデンサレンズ35と、を有する。
【0044】
長軸用ビームエキスパンダ31は、長軸用レンズアレイ33a,33bの上流側に設けられる。この長軸用ビームエキスパンダ31には、レーザ光源3から射出され反射ミラー17a,17bにより反射された平行レーザビームが入射される。平行レーザビームが長軸用ビームエキスパンダ31を通過することで、その長軸方向寸法が拡大される。長軸用ビームエキスパンダ31は、上述の凹レンズ21と、シリンドリカルレンズ37と、を有する。
【0045】
長軸用レンズアレイ33a,33bは、軸が短軸方向を向いた複数のシリンドリカルレンズを長軸方向に配列して構成されたものである。このような長軸用のレンズアレイは、入射されたレーザビームを長軸方向において複数のビームに分割する機能を持つ。
図2(B)の例では、2つの長軸用レンズアレイ33a,33bが、光軸方向に間隔をおいて設けられている。
【0046】
長軸用コンデンサレンズ35は、長軸用レンズアレイ33a,33bを通過して分割された複数のビームを、収束させ、図示しないホモジナイズ面上で重ね合わせる。この重ね合わせにより、長軸方向のビーム強度を均一化させる。このように、強度が均一化されたレーザビームが、長軸方向に長尺化された寸法でもって、当該ホモジナイズ面の下流側に位置する基板7表面へ入射される。
【0047】
次に、第1実施形態によるレーザビームの形状制御装置10の作用について説明する。
【0048】
上述した構成によると、短軸方向において、短軸用レンズアレイ11a,11bにより分割されたビームが短軸用コンデンサレンズ13により重ね合わされることで、ビーム強度が均一化される。
第1実施形態によると、上述した短軸用レンズアレイ11a,11bは短軸光学系5aから着脱可能になっている。短軸用レンズアレイ11a,11bを短軸光学系5aから取り外すと又は光軸外へ移動させると、短軸方向のビーム強度は均一化されない。すなわち、基板7表面における短軸方向のビーム強度形状は、レーザ光源3から出射されたビーム強度形状と同じガウス分布となる。
従って、短軸用レンズアレイ11a,11bを光学系5に対し着脱することにより、短軸方向のビーム強度を、均一化された形状とガウス分布形状のいずれにも制御できる。
【0049】
図3は、短軸方向のビーム強度を均一化する場合におけるビームプロファイルを示している。
具体的には、図3における3つのグラフは、それぞれ、短軸用ビームエキスパンダ9によるビーム発散角を0.0001度として、短軸用レンズアレイ11a,11bの光軸方向間隔をミリオーダーで変化させて得られた基板7表面における短軸方向のビーム寸法を示している。なお、図3において、横軸は短軸方向のビーム幅(mm)を表わし、縦軸はビーム強度(任意単位)を表わしている。
このように、短軸用レンズアレイ11a,11bの間隔を調節することで、短軸方向のビーム強度の均一性を高く維持したまま、短軸方向のビーム寸法を調節することができる。
【0050】
図4は、短軸用レンズアレイ11a,11bを短軸光学系5aから取り外した場合又は光軸外へ移動させた場合におけるビームプロファイルを示している。
具体的には、図4における3つのグラフは、それぞれ、シリンドリカルレンズ23の光軸方向位置を変化させることで、短軸用ビームエキスパンダによるビーム発散角を0.03度、0.04度、0.05度に変化させて得られた基板7表面における短軸方向のビーム寸法を示している。図4において、横軸は短軸方向のビーム幅(mm)を表わし、縦軸はビーム強度(任意単位)を表わしている。図4において、太い方の曲線が実際に得られたガウス形状を示し、細い方の曲線が理想ガウス形状を示している。このように、シリンドリカルレンズ23の光軸方向位置を調節することで、ガウス形状を調節することができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態によるレーザビームの形状制御装置について説明する。
図5は、第2実施形態によるレーザビームの形状制御装置20の構成図である。第2実施形態では、第1実施形態の長軸レンズアレイの代わりに、長軸用導波路39を設けている。これに加え、第2実施形態では、長軸用導波路39の上流側に導波路導入用シリンドリカルレンズ41を設けている。第2実施形態の他の構成は、第1実施形態の場合と同じである。
【0052】
長軸用導波路39は、光軸から長軸方向に同じ距離だけ離れた位置に互いに対向する光反射面を有する。これら2つの光反射面は、光軸および短軸方向に平行な光反射面である。
長軸用導波路39の入口からその内部に、長軸方向において収束していくレーザビームが入射すると、入射したレーザビームはこの2つの光反射面で反射を繰り返す。反射が繰り返されたビームは長軸用導波路39の出口で重ね合わされ、これにより、この出口において長軸方向のビーム強度が均一化される。
【0053】
導波路導入用シリンドリカルレンズ41は、長軸方向において収束していくレーザビームを長軸用導波路39へ入射させるためのものである。
【0054】
上述の構成を有する第2実施形態でも、第1実施形態と同様の作用が得られる。
【0055】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、2つの短軸用レンズアレイ11a,11bを用いたが、1つの短軸用レンズアレイを用いてもよい。
【0057】
また、本発明によるレーザビームの形状制御装置は、アモルファス半導体(例えば、アモルファスシリコン)に対しレーザアニールを行うことで結晶化させる場合や、結晶性半導体(例えば、結晶性シリコン)に対しレーザアニールを行い半導体の質を向上させる場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態によるレーザビームの形状制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるレーザビームの形状制御装置の構成図である。
【図3】短軸方向において均一化されたビーム強度分布のグラフである。
【図4】短軸方向におけるビーム強度分布をガウス分布にした場合のグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態によるレーザビームの形状制御装置の構成図である。
【図6】特許文献1のエキシマレーザアニール装置の光学系を示す図である。
【図7】固体グリーンレーザアニール装置の光学系を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
3 レーザ光源
5 光学系
5a 短軸光学系
5b 長軸光学系
7 基板
9 短軸用ビームエキスパンダ
10 レーザビームの形状制御装置
11a,11b 短軸用レンズアレイ
13 短軸用コンデンサレンズ
15 投影レンズ
17a,17b,17c 反射ミラー
19 基盤
20 レーザビームの形状制御装置
21 凹レンズ
23 シリンドリカルレンズ
25 移動ステージ
27a,27b 移動ステージ
29 ホモジナイズ面
31 長軸用ビームエキスパンダ
33a,33b 長軸用レンズアレイ
35 長軸用コンデンサレンズ
37 シリンドリカルレンズ
39 長軸用導波路
41 導波路導入用シリンドリカルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成された半導体膜へ照射するレーザビームの形状制御装置であって、
レーザ光源と、
該レーザ光源からのレーザビームを、その進行方向と垂直な断面が横長形状となるレーザビームにする光学系と、を備え、
該光学系は、前記横長形状の縦方向ビーム形状を制御する短軸光学系と、前記横長形状の横方向ビーム形状を制御する長軸光学系と、を有し、
前記短軸光学系は、
レーザビームを短軸方向において複数のビームに分割する短軸用レンズアレイと、
該短軸用レンズアレイの下流に設けられ、前記複数のビームを重ね合わせる短軸用コンデンサレンズと、を有し、
前記短軸用レンズアレイは該光学系に対し着脱可能になっている、ことを特徴とするレーザビームの形状制御装置。
【請求項2】
前記レーザ光源は、固体レーザ装置である、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザビームの形状制御装置。
【請求項3】
前記短軸光学系は、前記短軸用レンズアレイの上流側に設けられた短軸用ビームエキスパンダを有し、該短軸用ビームエキスパンダは光軸方向に位置調整可能になっている、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザビームの形状制御装置。
【請求項4】
前記短軸用レンズアレイは、光軸方向に間隔を置いた複数の箇所に設けられており、これら複数の短軸用レンズアレイの少なくとも1つは、光軸方向に位置調整可能になっている、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザビームの形状制御装置。
【請求項5】
前記長軸光学系は、レーザビームを長軸方向において複数のビームに分割する長軸用レンズアレイと、該長軸用レンズアレイの下流に設けられた長軸用コンデンサレンズと、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザビームの形状制御装置。
【請求項6】
前記長軸光学系は、レーザビームを長軸方向におけるビーム強度を均一化させる長軸用導波路と、該長軸用導波路の上流側に設けられ、長軸用導波路の入口へ向かって長軸方向のビーム寸法を収束させる導波路導入用シリンドリカルレンズと、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザビームの形状制御装置。
【請求項7】
前記短軸光学系は、前記短軸用レンズアレイの上流側に設けられた短軸用ビームエキスパンダを有し、前記長軸光学系は、長軸用ビームエキスパンダを有し、
前記短軸用ビームエキスパンダと、前記長軸用ビームエキスパンダは、それぞれ、光軸方向に位置調整可能な別個のシリンドリカルレンズを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザビームの形状制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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