説明

レーザポインタ装置及びそのシステム並びにキャリブレーション方法

【目的】 レーザ投光ユニットの照準を自動的に定位置に高精度で合わせ込むことの可能なことを課題とする。
【構成】 放射線医療装置を収容する室内のある面に設けられてクロスラインレーザを射出するレーザ投光ユニット61と、 前記ある面の対向面に設けられてレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザを受光する光センサユニット62と、光センサユニットの検出出力に基づきレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザが該光センサユニット上の所定位置に照射されるようにレーザ投光ユニットのフィードバック制御を行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザポインタ装置及びそのシステム並びにキャリブレーション方法に関し、更に詳しくは、放射線治療装置を備える医療システムにおいて被検体の位置決めを行うためのレーザポインタ装置及びそのシステム並びにキャリブレーション方法に関する。
【0002】
ガンマナイフやリニアックを用いた定位放射線治療(STI:stereotactic irradiation)では、CT撮影により位置を特定された病巣(脳腫瘍,動静脈奇形等)に対して多方面から放射線を集中させる方法により周囲の正常組織に対する線量を極力減少させている。このため、X線CT装置と放射線治療装置とが管理する基準位置(座標)がmm単位以下で正確に一致している必要がある。
【背景技術】
【0003】
CT撮影により患者の病巣位置を正確に特定するためには、予め患者をシステムの基準位置に固定してCT撮影を行う必要がる。従来は、ベッド上の患者に対して通常2m以上離れた上方及び左右の3つの投光器からレーザによる十字マークを投光すると共に、患者の体表面につけたマークを前記レーザの十字マークが照射される位置(システムの基準位置)に位置合わせることで、病巣の正確な位置情報を特定する患者位置決め装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
しかし、レーザ投光器のビーム射出方向は温湿度の変化や経時変化によって微妙に変化(数ミクロン程度)すると共に、この変化による振れの影響は2m以上離れた患者の位置では数mm以上にも及ぶため、この位置誤差を無視できない。このため、ユーザはレーザポインタの位置ずれの確認や調整(校正)と言う煩わしい作業を装置の使用前又は少なくとも1日に1回は行う必要があった。
【0005】
この調整作業を具体的に言うと、まず、位置合わせ用の専用ファントムをCT撮影しつつ、その再構成画像に基づき専用ファントムをCT撮影の基準位置(ISOセンタ及び体軸方向の所定位置)に位置合わせして後、該位置合わせ後の専用ファントムにレーザ投光器の照準を合わせ込むものであった。
【特許文献1】特開2000−287966(段落「0003」,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザ投光器と専用ファントム間の距離は通常2m以上離れているため、一人で照準を合わせるのは極めて困難であった。また、単一光源によりクロスラインレーザ(十字マーク)を照射するようなレーザ投光器では、水平ラインレーザに対する微小な調整の影響が垂直ラインレーザにも及ぶため、全体のアライメント調整を完結させるのが極めて困難であった。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とする所は、レーザ投光ユニットの照準を自動的に定位置に高精度で合わせ込むことの可能なレーザポインタ装置及びそのシステム並びにキャリブレーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は例えば図1の構成により解決される。即ち、本発明(1)のレーザポインタ装置は、放射線治療装置を備える医療システムにおいて被検体の位置決めを行うための
レーザポインタ装置であって、放射線医療装置を収容する室内のある面に設けられてクロスラインレーザを射出するレーザ投光ユニット61と、前記ある面の対向面に設けられて前記レーザ投光ユニットからのクロスラインレーザを受光する光センサユニット62と、前記光センサユニットの検出出力に基づきレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザが該光センサユニット上の所定位置に照射されるようにレーザ投光ユニットのフィードバック制御を行う制御手段とを備えるものである。
【0009】
本発明(1)においては、レーザ投光ユニット61のビーム射出方向が光源部における温度、湿度、歪み等の影響により微妙に変化した結果、対面に照射されるクロスラインレーザに大きな振れ(位置ずれ)が生じたとしても、対面の光センサユニット62の受光位置には殆ど変位(オフセット)が生じないから、制御手段はクロスラインレーザの照射位置を極めて高精度にキャリブレーションできる。
【0010】
また、従来のような専用ファントムを使用した煩わしい調整作業を日々行う必要が無いため、高精度なレーザポインタ機能を容易に維持できる。
【0011】
本発明(2)では、上記本発明(1)において、前記レーザ投光ユニットは、クロスラインレーザを構成する垂直ラインレーザ及び水平ラインレーザの投光姿勢を互いに独立に制御可能に構成されている。シングルラインレーザ毎の高精度なアライメント調整は比較的容易であると共に、水平及び垂直の各ラインレーザをそれぞれアライメント調整することにより、極めて高精度なクロスラインレーザが容易に得られる。
【0012】
本発明(3)では、上記本発明(2)において、前記光センサユニットは、各検出素子の配列方向がクロスラインレーザを構成する垂直ラインレーザ及び水平ラインレーザの各端部ラインとそれぞれ直交するように設けた4つの光センサアレイを備えるものである。従って、少ない数量及びサイズの光センサアレイを使用して高精度なアライメント制御を効率よく行える。
【0013】
本発明(4)では、上記本発明(3)において、前記制御手段は、予め所定方向に向けられたレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザを受光した検出信号に基づいて各光センサアレイ上の受光位置を求め、該求めた受光位置を基準位置としてメモリに記憶する初期設定手段を備える。従って、各光センサアレイの取り付け位置が厳密でなくても、正確に基準位置を特定して該位置を記憶でき、その後はクロスラインレーザの高精度なアライメント調整を容易に行える。
【0014】
本発明(5)では、上記本発明(4)において、前記制御手段は、ラインレーザの一端部が光センサアレイ上の基準位置に照射されていないことにより、該ラインレーザの一端部が前記基準位置の方向に一定量だけ変位するようにレーザ投光ユニットをフィードバック制御すると共に、該フィードバック制御をラインレーザの両端部につき交互に行う照射位置校正手段を備える。従って、2点制御の簡単な調整アルゴリズムによってシングルラインレーザを正確な照射位置に追い込める。
【0015】
本発明(6)のレーザポインタシステムは、放射線治療装置を備える医療システムの室内に請求項1記載のレーザポインタ装置を複数備えたレーザポインタシステムであって、天井のレーザ投光ユニットと床面の光センサユニットとを含む第1のレーザポインタ装置と、相対する壁面において、それぞれのレーザ投光ユニットとその対面の光センサユニットとから成る対が互いに対向するように設けた第2,第3のレーザポインタ装置とを備え、前記第1乃至第3のレーザポインタ装置からの各クロスラインレーザが室内の一点で交差交するように設けたものである。従って、患者の病巣の位置などを正確に室内の一点に合わせ込むことが可能となる。
【0016】
なお、好ましくは、第1乃至第3のレーザポインタ装置からの各クロスラインレーザが室内の一点で直交するように設けるが、必ずしも直交させなくても良い。また、このようなレーザポインタ装置は医療システムの目的に応じて4つ以上設けても良い。
【0017】
また、本発明(7)のレーザポインタ装置のキャリブレーション方法は、X線CT装置と請求項3記載のレーザポインタ装置を備える医療システムにおける前記レーザポインタ装置のキャリブレーション方法であって、針線を3次元座標軸方向に配置した専用ファントムをX線CT装置により撮像しつつ、その再構成画像に基づき該専用ファントムの各針線が直交する基準位置をX線CT装置の管理する基準位置に合わせ込むステップと、前記位置合わせ後の専用ファントムの基準位置に向けてクロスラインレーザを照射するようにレーザ投光ユニットの投光姿勢を調整するステップと、前記調整後のレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザを対面の光センサアレイにより受光して、その検出信号に基づき求めた各光センサアレイ上の受光位置を基準位置としてメモリに記憶するステップとを備えるものである。
【0018】
このような初期設定作業は、少なくとも医療システムの導入時等に1回行えばよいと共に、その後はメモリに記憶した基準位置(xy平面上のISOセンタ及び体軸方向の所定位置)の情報によって、システムの基準位置を容易に保持(維持)できる。
【0019】
本発明(8)のレーザポインタ装置のキャリブレーション方法は、前記キャリブレーション後のレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザが対面の光センサユニット上の基準位置に照射されるようにレーザ投光ユニットの投光姿勢をフィードバック制御するステップを更に備えるものである。従って、医療システムの基準位置をいつでも正確かつ容易に再現できる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べた如く本発明によれば、レーザポインタ装置の校正作業を自動化したことにより、オペレータ作業の負担低減と、人為的校正ミスによる事故の防止効果が得られ、医療システムの安全かつ効率よい運用に寄与するところが極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明に好適なる実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通して同一符号は同一又は相当部分を示すものとする。
【0022】
図1〜図4は実施の形態による放射線治療システムの構成を示す図(1)〜(4)で、図1は放射線治療システムを収容する治療室を一方向から見た場合を示している。このシステムは、不図示の放射線治療装置とX線CT装置100を組み合わせたシステムとなっており、ここで、10はX線ファンビームにより被検体のアキシャル/ヘリカルスキャンの投影データ収集を行う走査ガントリ、30は走査ガントリ10及び不図示の寝台テーブル20の遠隔制御を行うと共に、CT断層像の再構成並びに操作者が各種の設定操作を行う操作コンソールである。また、床面にはレール41が埋設されており、走査ガントリ10は該レール41の上を移動可能に設けられている。
【0023】
天井にはクロスラインレーザ(レーザ光線による十字マーク)を射出するレーザ投光ユニット61Tが埋設され、これに対向する床面にはレーザ投光ユニット61Tからのクロスラインレーザを受光する光センサユニット62Bがその受光面を天井に向けて埋設されている。更に、左右の壁面にはレーザ投光ユニット61Lと光センサユニット62Rの組及びレーザ投光ユニット61Rと光センサユニット62Lの組がそれぞれ相対向する態様で埋設されており、これら3つのレーザポインタ装置からの各クロスラインレーザが室内
の一点で直交するように設けられている。
【0024】
なお、図示しないが、医療システムの治療目的に応じて4つ以上のレーザポインタ装置を設けても良いし、各クロスラインレーザが室内の複数の点で交差(非直交)するように設けても良い。
【0025】
図2は図1の治療室を右壁に向かって見た場合の側面図を示している。走査ガントリ10は被検体(不図示)を挟んで相対向するX線管11と、被検体からの透過X線を検出するX線検出器12とを備え、これらを被検体体軸の回りに回転させることで被検体の透過データを収集する。
【0026】
走査ガントリ10の手前には被検体を搭載する寝台テーブル20がレール41の上を移動可能に設けられている。ここで、21は被検体を搭載して体軸方向に移動させる天板(クレードル)、22は天板21を体軸方向に移動させる中間支持部(IMS:Inter Midiate Support)、23はIMS22を体軸方向に移動させる上部構造体、24は床面の上で上部構造体23を昇降可能かつ回転軸ATの回りに回動可能に支持する支持構造体である。なお、図示の天板21はクロスラインレーザの障害とならないように、回転軸ATの回りに90°回転させられた状態を示している。
【0027】
更に、この寝台テ−ブル20を挟んだ反対側には、放射線治療装置200がレール41の上を移動可能に設けられている。一例の放射線治療装置200はリニアック治療装置であり、51は被検体に照射する放射線(X線)を集光するコリメータ、52はコリメータ51を先端部で支持するヘッド、53はヘッド52を回転軸AHの回りに回動可能に支持するガントリである。
【0028】
本実施の形態によるレーザポインタシステムはX線CT装置100と放射線治療装置200との中間ぶに設けられており、本医療システムにおける3次元空間の基準点に対していつでも3つクロスラインレーザを正確に交差(直交)させることが可能となっている。以下、これを説明する。
【0029】
図5は実施の形態によるレーザポインタ装置を説明する図で、左壁面のレーザ投光ユニット61Lから右壁面の光センサユニット62Rに対してクロスラリンレーザ(十字マーク)が照射される場合を示している。レーザ投光ユニット61Lは、クロスラインレーザを構成する垂直ラインレーザと水平ラインレーザの光源部を別々に備えており、これらの投光姿勢(射出位置,方向等)を独立に制御可能となっている。このようなレーザ投光ユニット61は公知の2つのシングルラインレーザの発生源を互いの光路に干渉しないように水平と垂直とに組み合わせることで実現できる。
【0030】
挿入図(b)にレーザ発生源の構成を水平ラインレーザ及び垂直ラインレーザに射出方向に変位(力)を加えるイメージで模式的に示す。今、水平ラインレーザに着目すると、その両端部は不図示のアクチュエータが発生する微小な経に(力)FL,FRによってラインレーザの射出姿勢(位置,方向等)を上下に微調整可能に構成されている。レーザ光源部における射出方向の微小な変化は、4m〜5m先の対面の壁では数mm以上にも及ぶ大きなオフセット量となるため、射出方向を微調整するアクチュエータには変位を高精度に制御可能なギヤードモータ又は圧電素子(ピエゾ素子等)が用いられる。垂直ラインレーザの光源部についても同様である。
【0031】
一方、対面の壁にはクロスラインレーザの各端部照射位置に対応して、各検出素子の配列方向が垂直及び水平ラインレーザの各端部ラインとそれぞれ直交するように設けられた4つの光センサアレイ63T,63B,63L,63Rが設けられている。壁表面に照射
されるクロスラインレーザの寸法は、例えば垂直ラインレーザが2m、水平ラインレーザが4m、レーザ幅が1mm程度である。従って、中間部の被検体に対しては垂直1m,水平2m及び幅0.5mのクロスラインレーザを照射できる。
【0032】
各光センサアレイ63にはフォトダイオード等による光検出素子(セル)が数十〜数百マイクロピッチで1列に配列されている。各セルには仮想の番号0〜m(又は0〜n)が付けられており、これによってラインレーザがどのセルに照射されたかを容易に識別できる。なお、図示の各光センサアレイは各セルがクロスラインセンタを中心とした円弧上に配列されているが、これに限らない。光センサアレイは直線状に配列されていても良い。
【0033】
各セルでは、挿入図(a)に示す如く、検出面の受光出力と所定閾値THとを比較することにより、レーザ光が照射されていないセルでは検出信号=0を出力し、また照射されているセルでは検出信号=1を出力する。一例の検出信号はセル番号p〜qの位置で「1」となっている。このような光センサアレイ63Rの各セルからの検出信号はポインタ制御部65のデータマルチプレクサ(DMX)654にパラレル入力している。光センサアレイ63Lについても同様である。
【0034】
ポインタ制御部65は各光センサアレイ63L,63Rの検出出力に基づき水平ラインレーザが該光センサアレイ63L,63R上の所定位置(後述の基準位置)に照射されるように、水平ラインレーザの光源部に対するフィードバック制御を行う。以下、これを説明する。
【0035】
ポインタ制御部65において、カウンタ(CTR)651は0〜mを繰り返しカウントしている。DMX654は入力の各光検出信号をCTR651のカウント入力によりスキャンし、これにより入力の検出信号=1のタイミングに出力信号=1を出力する。LP補正処理部652は出力信号=1のタイミングにCTR651のカウント出力を読み取り、これにより当該セルの番号(アドレス)を識別できる。LP補正処理部652は、1回分のスキャンが終了すると、光検出信号=1であった各セルのアドレスに基づき光センサアレイ63Rとしての実質的な検出位置を求める。挿入図(a)に示すように、今、セルアドレスpからqで検出信号=1であったとすると、光センサアレイ63Rの実質的な検出位置HRr=(p+q)/2により求められる。光センサアレイ63Lの検出位置HLlについても同様である。
【0036】
LP補正処理部652は、前記求めた検出位置HLl,HRrに基づき、水平ラインレーザに基準位置からの位置ずれや傾きがあることを検出した場合には、該位置ずれや傾きを無くする方向にアクチュエータ駆動部653を介して水平ラインレーザの光源部に対するフィードバック制御を行う。水平ラインレーザが基準位置からずれている一例の状態を図の波線で示している。垂直ラインレーザの光源部に対するフィードバック制御も同様である。なお、フィードバック制御の詳細は図7に従って後述する。
【0037】
図6,図7は実施の形態によるレーザポインタ制御処理のフローチャート(1),(2)で、図6は各光センサアレイ上のどの位置にラインレーザが照射されるべきかの基準位置を決定するレーザポインタ初期化処理を示している。この処理はシステムの導入時及び必要ならその後一定期間毎に1回行えば良い。この処理はマニュアル操作部656からの指示に従って開始される。ステップS11ではX線CT装置により専用ファントムをスキャンしつつ、その再構成画像に基づいて該専用ファントムをX線CT装置の基準位置(xy平面上のISOセンタ及びz軸方向の所定位置)に位置合わせする。図2の挿入図(a)に専用ファントムの斜視図を示す。一例の専用ファントムは、xyz軸方向に直交させた3本の針線をアクリルケースに収納したものである。
【0038】
図6に戻り、ステップS12では走査ガントリ10を退避させると共に、位置合わせ後の専用ファントムの基準位置(各針線の交点)に対して、マニュアル操作により、各クロスラインレーザの照準を合わせ込む。これによって、各レーザ投光ユニット61T,61L,61Rは本医療システムの基準となる3次元空間の1点に向けて照射されるように初期化(キャリブレーション)される。ステップS13では、初期化後の専用ファントムを取り外し、各クロスラインレーザが対応する光センサユニットに入射した状態で各光センサアレイの検出出力を読み取る。ステップS14では各光センサアレイの検出出力に基づきクロスラインレーザの初期照射位置(基準位置)を求め、メモリに記憶する。
【0039】
図7は上記初期化後のレーザポインタ装置を正しい照準状態に維持するためのレーザポインタ校正処理を示している。カウンタ651が光センサアレイを1スキャン(読取)する度にこの処理に割込入力する。ステップS21では光センサアレイ63Lの検出信号に基づき実質的な検出位置HLを求める。ステップS22ではHL>HLl(初期化処理で記憶した基準位置)か否かを判別し、HL>HLlの場合はステップS23でレーザ投光ユニット61Lに加える変位(力)FLに−1(微小1単位)する。またHL>HLlでない場合はステップS23の処理をスキップする。ステップS24ではHL<HLlか否かを判別し、HL<HLlの場合はステップS25でレーザ投光ユニット61Lに加える変位FLに+1(単位)する。またHL<HLlでない場合はステップS25の処理をスキップする。
【0040】
ステップS26では光センサアレイ63Rの検出信号に基づき検出位置HRを求める。ステップS27ではHR>HRr(初期化処理で記憶した基準位置)か否かを判別し、HR>HRrの場合はステップS28でレーザ投光ユニット61Lに加える変位FRに−1(単位)する。またHR>HRrでない場合はステップS28の処理をスキップする。ステップS29ではHR<HRrか否かを判別し、HR<HRrの場合はステップS30でレーザ投光ユニット61Lに加える変位(力)FRに+1(単位)する。またHR<HRrでない場合はステップS30の処理をスキップする。
【0041】
ステップS31ではHL=HLlか否かを判別し、HL=HLlでない場合はそのままこの処理を抜ける。また、HL=HLlの場合は更にステップS32でHR=HRrか否かを判別し、HR=HRrでない場合もそのままこの処理を抜ける。また、HR=HRrの場合は、水平ラインレーザが予め記憶された基準位置(HL=HLl,HR=HRr)の上にあるので、校正終了である。ステップS33では校正処理をロックし、この処理を抜ける。校正処理がロックされると、それ以上の割込は発生せず、これによってレーザ投光ユニット61Lの水平ラインレーザ光源部の投光姿勢は固定される。なお、光センサアレイのセルピッチがラインレーザ幅よりも十分に小さい場合は、検出位置HL,HRと基準位置HLl,HRrの間に多少の誤差を許容しても良い。垂直ラインレーザの校正処理についても同様である。
【0042】
図3は、患者の病巣位置を正確に把握するために、上記初期化(又は校正)後の医療システムで被検体(病巣)のCT撮影を行う場合を示している。寝台テーブル20に搭載された患者1は、その頭を走査ガントリ10の側に向けられると共に、患者表面の動かない位置に付けたマークがクロスラインレーザの照射位置と一致するように天板21を昇降及び搬送する。挿入図(a)は患者にクロスラインレーザが照射されている状態の斜視図を示している。この状態で、走査ガントリ10をレール41上で移動させると共に、患者の病巣をマークと共に撮像する。これによって、患者マームの写っているシステムぼ基準位置からの病巣の位置が正確に把握される。
【0043】
図4は上記CT撮影後の患者の病巣にリニアックによる放射線治療を行う場合を示している。なお、図示しないが、放射線治療装置200によるX線の照射位置も、予めシステ
ムの基準位置に基づいて校正されているものとする。この放射線治療に際しては、上記撮像したCT断層像に基づき、制御卓60のコンピュータ処理により、治療X線の照射位置、照射線量などの治療計画を作成する。
【0044】
一方、走査ガントリ10が後退した後の寝台テーブル20をその回転軸ATの回りに180°回転させることで、患者の頭部を放射線治療装置200の側に向ける。更に、患者の体表面に付けたマークがクロスラインレーザの照射位置と一致するように天板21が昇降及び搬送される。この状態で、放射線治療装置のガントリ53を患者の側に移動すると共に、上記作成した治療計画に基づいて病巣の放射線治療を行う。放射線の照射はヘッド52を回転させながら多方面から定位置(病巣)に集中させる方法で行われる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、ラインレーザが光センサアレイ上を横切る基準位置の情報を求めてメモリに記憶したが、これに限らない。光センサアレイの検出信号=1となった各位置情報の発生パターンをそのままメモリに記憶し、後に検出した各位置信号の発生パターンとマッチング検査をすると共に、所要の割合(例えば80〜90%)以上一致したことにより一致と判定しても良い。
【0046】
また、上記実施の形態では、レーザポインタシステムが一つの場合を述べたが、これに限らない。一医療システムに複数のレーザポインタシステムを設けても良い。
【0047】
また、上記本発明に好適なる実施の形態を述べたが、本発明思想を逸脱しない範囲内で各部の構成、制御、処理及びこれらの組み合わせの様々な変更が行えることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態による放射線治療システムの構成を示す図(1)である。
【図2】実施の形態による放射線治療システムの構成を示す図(2)である。
【図3】実施の形態による放射線治療システムの構成を示す図(3)である。
【図4】実施の形態による放射線治療システムの構成を示す図(4)である。
【図5】実施の形態によるレーザポインタ装置を説明する図である。
【図6】実施の形態によるレーザポインタ制御処理のフローチャート(1)である。
【図7】実施の形態によるレーザポインタ制御処理のフローチャート(2)である。
【符号の説明】
【0049】
10 走査ガントリ
20 寝台テーブル
21 天板(クレードル)
30 操作コンソール
41 レール
51 コリメータ
52 ヘッド
53 ガントリ
60 制御卓
61 レーザ投光ユニット
62 光センサユニット
65 ポインタ制御部
100 X線CT装置
200 放射線治療装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療装置を備える医療システムにおいて被検体の位置決めを行うためのレーザポインタ装置であって、
放射線医療装置を収容する室内のある面に設けられてクロスラインレーザを射出するレーザ投光ユニットと、
前記ある面の対向面に設けられて前記レーザ投光ユニットからのクロスラインレーザを受光する光センサユニットと、
前記光センサユニットの検出出力に基づきレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザが該光センサユニット上の所定位置に照射されるようにレーザ投光ユニットのフィードバック制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするレーザポインタ装置。
【請求項2】
前記レーザ投光ユニットは、クロスラインレーザを構成する垂直ラインレーザ及び水平ラインレーザの投光姿勢を互いに独立に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザポインタ装置。
【請求項3】
前記光センサユニットは、各検出素子の配列方向がクロスラインレーザを構成する垂直ラインレーザ及び水平ラインレーザの各端部ラインとそれぞれ直交するように設けた4つの光センサアレイを備えることを特徴とする請求項2記載のレーザポインタ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、予め所定方向に向けられたレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザを受光した検出信号に基づいて各光センサアレイ上の受光位置を求め、該求めた受光位置を基準位置としてメモリに記憶する初期設定手段を備えることを特徴とする請求項3記載のレーザポインタ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、ラインレーザの一端部が光センサアレイ上の基準位置に照射されていないことにより、該ラインレーザの一端部が前記基準位置の方向に一定量だけ変位するようにレーザ投光ユニットをフィードバック制御すると共に、該フィードバック制御をラインレーザの両端部につき交互に行う照射位置校正手段を備えることを特徴とする請求項4記載のレーザポインタ装置。
【請求項6】
放射線治療装置を備える医療システムの室内に請求項1記載のレーザポインタ装置を複数備えたレーザポインタシステムであって、
天井のレーザ投光ユニットと床面の光センサユニットとを含む第1のレーザポインタ装置と、相対する壁面において、それぞれのレーザ投光ユニットとその対面の光センサユニットとから成る対が互いに対向するように設けた第2,第3のレーザポインタ装置とを備え、前記第1乃至第3のレーザポインタ装置からの各クロスラインレーザが室内の一点で交差交するように設けたことを特徴とするレーザポインタシステム。
【請求項7】
X線CT装置と請求項3記載のレーザポインタ装置を備える医療システムにおける前記レーザポインタ装置のキャリブレーション方法であって、
針線を3次元座標軸方向に配置した専用ファントムをX線CT装置により撮像しつつ、その再構成画像に基づき該専用ファントムの各針線が直交する基準位置をX線CT装置の管理する基準位置に合わせ込むステップと、
前記位置合わせ後の専用ファントムの基準位置に向けてクロスラインレーザを照射するようにレーザ投光ユニットの投光姿勢を調整するステップと、
前記調整後のレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザを対面の光センサアレイにより受光して、その検出信号に基づき求めた各光センサアレイ上の受光位置を基準位置としてメモリに記憶するステップとを備えることを特徴とするレーザポインタ装置のキャリブレーション方法。
【請求項8】
前記キャリブレーション後のレーザ投光ユニットからのクロスラインレーザが対面の光センサユニット上の基準位置に照射されるようにレーザ投光ユニットの投光姿勢をフィードバック制御するステップを更に備えることを特徴とする請求項7記載のキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−29647(P2008−29647A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207248(P2006−207248)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】