レーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法及びそのためのレーザー照射装置
本発明によるレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法は、エッチングの対象になるガラスクリシェをエッチング液に浸漬する浸漬段階、前記エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するパターン形成段階、及び前記パターンの形成が完了したガラスクリシェを洗浄する洗浄段階を含む。本発明によれば、感光性素材を用いてエッチングする一般的な基板の製造方法に比べ、線幅が精密で縦横比の高いクリシェを製造でき、単独レーザーによるエッチング方法よりエネルギー消費効率及びエッチング効率が高いガラスクリシェの製造方法を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーを用いたガラスクリシェ(glass cliche)の製造方法及びそのためのレーザー照射装置に関し、より具体的には、ガラスのエッチング速度がレーザーの照射された部分で相対的に増加する現象を用いてガラスクリシェを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(liquid crystal display;LCD)やプラズマディスプレイ(plasma display panel;PDP)のような平面パネルディスプレイ(flat panel display;FPD)の製造には、電極、ブラックマトリクス、カラーフィルタ、隔壁、薄膜トランジスタなど多種のパターニング工程が求められる。
【0003】
一般に、フォトマスクを使用し露光と現像をすることでフォトレジストを選択的に除去してフォトレジストパターンが得られ、このようなフォトレジストパターンがパターニング工程に多く用いられている。しかし、フォトマスクを使用するパターニング工程は、フォトレジストや現像液のような材料の使用が多く、高価のフォトマスクを使用しなければならない。さらに、工程段階が多くなるかまたは工程時間が長くなる問題点がある。
【0004】
このような問題点を解決するため、フォトレジストを使用せず、インクジェットプリンティングやレーザー転写のようにパターンを形成する物質を直接印刷する方法が提示されている。このような方法の1つとして、クリシェ(cliche)を用いてブランケットにパターニングされた材料を転写し、このブランケットのパターンを基板上に転写するオフセット印刷法がある。
【0005】
クリシェを使用するオフセット印刷法は、従来のフォトレジストを使用する工程に比べて材料の消費が少なく、工程が簡単であり、さらにインクジェットプリンティングやレーザー転写に比べて工程の速度が速い長所を持つ。しかし、異なるパターンの基板に対するそれぞれのクリシェが必要であり、一般にガラスで製造されるクリシェの製造工程が複雑且つ高価である短所がある。
【0006】
前記ガラスクリシェを製造する一般的な方法を、図1を参照しながら説明する。ガラスクリシェ101上にフォトレジスト102をスピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、バーコーティングなどの方法を用いて図1の(a)のように塗布する。
【0007】
その後、フォトマスク103を用いて図1の(b)のように露光及び現像過程を経て所望のパターンを形成する。露光過程で、フォトレジスト102は既に所望のパターンが形成されたフォトマスク103を通過した紫外線104によって選択的に感光され、感光された部分と感光されていない部分との現像液に対する溶解度の差により、図1の(c)のようにガラスクリシェ上にパターン105が形成される。
【0008】
図1の(c)の場合には、ポジ型フォトレジストの場合を示しているが、実施形態によっては紫外線104が照射された部分が残って紫外線に感光されない部分が除去されるネガ型フォトレジストも利用することができる。
【0009】
このようにフォトレジスト102のパターンが形成されたガラスクリシェを図1の(d)のようにガラスエッチング液(図示せず)に浸漬すれば、ガラス表面が露出した部分106でのみガラスのエッチング反応が部分的に起きる。一般に、ガラスのような非晶質物質では方向性のない等方性エッチングが起きるため、ガラスの深さ方向と幅方向とのエッチング速度が同じである。
【0010】
したがって、エッチング反応が起きると、図1の(d)に示されたように、ガラスエッチング部分106がフォトレジスト102のパターンの幅より広くなり、エッチング部の底部分が丸い模様になる。エッチングが進むと、図1の(e)に示したように、深さ方向と幅方向でエッチングされ続け、エッチングされたガラスクリシェの幅107もフォトレジスト102のパターンよりますます広くなる。
【0011】
所望の深さまでエッチングが完了すれば、エッチング液からガラスクリシェを取り出して蒸留水で洗浄した後、フォトレジストを除去すれば、図1の(f)のようにエッチングが完了したガラスクリシェ108が得られる。
【0012】
このようなウェットエッチングを用いてガラスクリシェを製造する方法では、図1に示されたように、等方性エッチングが起きるため、エッチングされた深さと同じ厚さほどパターンの側面も食い込まれる。
【0013】
それで、エッチングに使用されるフォトレジストのパターンは所望のエッチング深さの2倍以上の余裕を持って形成されなければならず、そのために形成されるパターンの精度に限界が生じる。さらに、エッチング液が浸透する余裕を考慮すれば、実際にエッチングの可能なパターンは最小エッチング深さの3倍から4倍でなければならないため、精密な線幅を持つパターンの形成がさらに困難になる。
【0014】
また、等方性エッチングの特性上、エッチングされる壁面と底面との間は丸くエッチングが行われるため、エッチング深さが次第に変わり、結果的に印刷品質の低下につながる。さらに、エッチング工程前に予めフォトレジストパターンを形成しなければならないため、フォトマスクを使用した露光工程及び現像液を使用したフォトレジスト現像工程などエッチングの前に要する工程が多く、エッチング終了後にも残ったフォトレジストをさらに除去する工程が付け加えられるという短所がある。
【0015】
前記ウェットエッチングの外にも、真空状態でエッチング気体のプラズマを用いてガラスをエッチングするドライエッチングがある。CF4やCF3Hなどのフッ素を含む気体を用いたガラスクリシェのドライエッチングは、ウェットエッチングと違って異方性エッチングが可能であるため、エッチングの進行中に線幅が広くなるか又は壁面と底面との間が丸くなる問題は生じない。
【0016】
しかし、ドライエッチングを行う真空チャンバ及び高価のエッチング気体などを備えなければならないため、エッチングコストが嵩み、大型化及び量産化が難しいという問題点がある。
【0017】
また、ドライエッチングの場合には、エッチングマスクとエッチング物質共にエッチングされるため、なるべくエッチング速度が相対的に遅いエッチングマスクを使用しなければならない。一般に、ガラスエッチングにはクロムのような金属がマスク層としてよく使用されるが、そのマスク層も厚さを無限に厚くすることはできないため、ガラスエッチングの深さに限界がある。
【0018】
また、前記ウェットエッチングと同様にエッチングの前に予めマスクパターンを形成しなければならないため、金属マスク層を真空蒸着してフォトレジスト層を形成した後、フォトマスクで露光して現像液で現像してパターンを形成し、マスクとして使用される金属層をエッチングする前工程、及びエッチング後、金属マスクを除去する後工程など多い工程がさらに必要となる短所がある。
【0019】
このようなウェットエッチング及びドライエッチングを用いたガラスクリシェ製造工程の問題点を改善しようと、レーザーエッチングを用いた新たな方法が特許文献1などで提示されている。
【0020】
特許文献1は、絶縁基板をレーザーで直接エッチングして所望のパターンを持つクリシェを製造する方法に関する。レーザーでガラスクリシェを直接エッチングしてクリシェを製造する場合、エッチング液を使用しないので工程上の利点がある。しかし、レーザーを照射した部分の光熱分解によってガラスを除去する方法であるため、高いパワーを持つレーザーを使用しなければエッチングすることができず、エッチング速度が相対的に遅い。また、パターン劣化の原因になる熱影響部(HAZ、Heat Affected Zone)の発生を防止し難く、強いエネルギーを持つレーザーの持続的な照射による熱衝撃でガラスクリシェに微細クラックが発生する問題がある。
【0021】
さらに、ガラスクリシェに転写された材料を移動させる役割をするロール手段が前記ガラスクリシェに持続的に伝達する荷重などにより、ガラスクリシェの耐久性が弱くなるか又はガラスクリシェに微細クラックが生じ得る。また、ロール手段に移動できなかったパターン材料の残存物がブランケットに残る問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】韓国特許公開10−2007−0000100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ウェットエッチングとレーザーエッチングとを調和させて用いることで、高縦横比且つ高作業効率のガラスクリシェのエッチング方法を提供することを目的とする。
【0024】
また、本発明は、ガラスクリシェに伝達されるロール手段の物理的荷重を効果的に分散させ、ブランケットへの残存物が最小となるパターンをガラスクリシェに形成するように、レーザー照射面積を照射時間の経過に応じて差等的に制御できるガラスクリシェのエッチング方法及びそのためのレーザー照射装置を提供することを他の目的とする。
【0025】
本発明の他の目的及び長所は後述される本発明の実施例を通じて理解できるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に記載される構成を組み合わせることによっても実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するため、本発明によるレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法は、エッチングの対象になるガラスクリシェをエッチング液に浸漬する浸漬段階、前記エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するパターン形成段階、及びパターン形成が完了したガラスクリシェを洗浄する洗浄段階を含む。
【0027】
また、前記パターン形成段階は、前記ガラスクリシェに照射される複数のレーザー照射面によってパターンが形成されるように構成することができる。前記複数の照射面によるパターンの形成は、前記ガラスクリシェに形成されるパターンと同じレーザー透過パターンが形成されたマスクを用いて行われるように構成することが望ましい。
【0028】
本発明において、前記パターン形成段階は、形成されるパターンの形象情報が入力される入力段階、前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算段階、及び演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射してパターンを形成する照射段階を含むことができる。
【0029】
また、前記照射段階は、照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーを照射してパターンを形成することが望ましい。
【0030】
本発明の他の態様によるレーザーエッチングのためのレーザー照射装置は、エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するレーザーエッチングのためのレーザー照射装置であって、レーザーが照射されるレーザー光源部、形成されるパターンの形象情報が入力される入力部と、前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算部、及び演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射するように前記レーザー光源部を制御する制御部を含む。
【0031】
前記レーザー照射装置において、前記制御部は、照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーが照射されるように前記レーザー光源部を制御することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図1】従来の一般的なガラスクリシェの製造方法を示したフロー図である。
【図2】本発明の望ましい一実施例によるガラスクリシェの製造方法を示したフロー図である。
【図3】本発明の望ましい一実施例によるレーザーエッチングのためのレーザー照射装置の構成を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施例によるレーザーエッチングの過程を示したフロー図である。
【図5】本発明の他の実施例によるレーザーエッチングの過程を示した概路図である。
【図6】有機基板を用いた印刷過程を示した概路図である。
【図7】本発明の望ましい実施例によるレーザーの照射面積の差等的照射方法を示した図である。
【図8】本発明の他の実施例によるレーザーの照射面積の差等的照射方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0034】
図2は、本発明の望ましい一実施例によるガラスクリシェの製造方法を示したフロー図である。図2を参照すれば、本発明によるガラスクリシェの製造方法は、エッチングの対象になるガラスクリシェをエッチング液に浸漬する浸漬段階(S200)、前記エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するパターン形成段階(S210)、及びパターン形成が完了したガラスクリシェを洗浄する洗浄段階(S220)を含む。
【0035】
まず、エッチングの対象になるガラスクリシェをウェットエッチングに用いられるエッチング液に浸漬する(S200)。前記ガラスクリシェが浸漬されるエッチング液としては、フッ酸、フッ化アンモニウム、BOE(Buffered oxide etch)溶液などを含む化合物より選択された1つ以上の溶液を使用することができる。
【0036】
エッチング液に前記ガラスクリシェが浸漬される場合、レーザーの照射の直進性を保障し、パターン形成の精度を保持するため、前記ガラスクリシェは所定の位置固定手段で固定して上下左右の平衡を保持することが望ましい。
【0037】
上記のようにエッチング液に浸漬されたガラスクリシェを照射の対象にして所望のパターンを形成する(S210)。所望のパターンに対応するレーザー移動動線を予め入力してレーザー光源手段を駆動することで、所望のパターンを自動的に形成することができる。
【0038】
このようにしてレーザーが照射された部分は、部分的に熱化学的または光化学的にエッチング速度が向上し、局地的にエッチング速度が速くなる。また、エッチングはレーザーが照射される方向のみで行われるので、縦横比の大きいエッチングパターンの形成を実現することができる。
【0039】
エッチングはレーザーが照射された部分で行われるため、ガラス表面に焦点が形成されるように、レーザー照射装置からクリシェの表面までの距離が調節されるように構成することが望ましい。また、エッチングしようとする深さがレーザーの焦点深度より深い場合には、エッチングの進行に伴ってエッチングされた深さほどレンズの位置を調節することが望ましい。
【0040】
また、レーザーによる光化学的あるいは熱化学的エッチング反応速度を十分向上させるためには、エッチングされるガラスが吸収する波長を用いなければならないが、一般的なガラスの場合、可視光及び赤外線領域における吸収がないので、Nd:YAGレーザーの第4高調波を使用するか又はKrFレーザーやArFレーザーのような紫外線領域の波長を持つレーザーを使用してエッチングすることが有利である。また、レーザーの焦点部分における光量が十分であれば、多光子吸収が発生して光化学的あるいは熱化学的エッチングが発生するので、必ずしも紫外線領域の波長を持つレーザーを使用する必要はない。
【0041】
具体例として、Nd:YAGレーザーの第3高調波である355nm波長の紫外線はガラスクリシェに吸収されないが、高いパルスエネルギーを持つQスイッチング方式のパルスレーザーを使用すれば、ガラス表面で多光子吸収が生じてガラスクリシェをドライエッチング及びウェットエッチングすることができる。
【0042】
レーザー照射段階の後、水や蒸留水などを用いてガラスクリシェを洗浄する(S220)。
【0043】
前述したレーザーエッチングの過程を図4を参照して具体的に説明すれば、次のようである。
【0044】
図4(a)のように、ガラスクリシェ401上にレーザー402を照射する。図示されていないが、図4(a)に示されたガラスクリシェはエッチング液に浸漬された状態であることを前提とする。
【0045】
レーザー402が照射されれば、照射された部位では照射された方向(垂直方向)に沿ってエッチングが始まり、図4(b)のようにブランケット403を形成する。このような図4(a)及び図4(b)の過程をガラスクリシェの他の箇所にも繰り返して他のパターンを形成し(図4(c)及び(d))、結果的に図4(e)のようにブランケット403が形成されたガラスクリシェ401が製造される。
【0046】
また、本発明において、前記パターン形成段階(S210)では前記ガラスクリシェに照射する複数のレーザー照射面によってパターンを形成することが望ましい。すなわち、多数のパターンを形成する場合、1つのレーザーのみを使用すれば、作業に長時間がかかる。また、先に形成されたパターンと後で形成されたパターンとの間でエッチング液に対するエッチング反応の速度または進行程度の差が生じ得る。したがって、精密な多数のパターンを形成するためには、レーザーの照射面は複数であることがより望ましい。
【0047】
複数のレーザー照射面を形成する方法として、複数のレーザー光源を使用する方法、数枚の半透過鏡を使用して一つあるいは複数のレーザーから出射された光を分ける方法、回折光学素子を用いて一つあるいは複数のレーザー光をさらに複数の光に分ける方法、高速で回転する多面鏡を用いて光を分ける方法、及びデジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device)を用いて一定の面積を露光する方法などを実施形態と作業環境などに応じて適用することができる。
【0048】
また、複数の照射面の形成方法として、図5に示されたように、シャドーマスク(shadow mask)を用いる方法(図5(a))またはスキャン法(図5(b))などを適用することができる。
【0049】
図5に示されたように、一度で広い面積を照射するレーザーをガラスクリシェに形成されるパターンと同じレーザー透過パターンが形成されたマスクに照射することで、所望のパターンを同時に形成できるように構成することが望ましい。レーザーが前記マスクに形成されたパターンを透過することで、前記ガラスクリシェに所望のパターンで複数の照射面を持つレーザーを照射することができる。
【0050】
シャドーマスクを用いる場合は、一度に広い面積を照射するため、エキシマレーザーなど高いエネルギーを持つレーザーを使用することが、短時間で広い面積をエッチングでき、多様な線幅のパターンの加工が容易であって、有利である。レーザーとしてはKrFレーザー、ArFレーザーなどのエキシマレーザーを使用することができる。
【0051】
また、図5(b)に示したように、スキャナーは焦点に集まったレーザービーム402を2つの独立的に動く鏡405を用いて所望の位置に移動させる。このようなスキャナーを用いてレーザービーム402を必要な形状に移動させ、ガラスクリシェ401の所望の位置に加速されたエッチング速度でブランケット403を形成することができる。
【0052】
スキャン法で焦点に集まったレーザーを用いてエッチングする場合は、多様な形態のパターンに直接適用することが可能であり、特に、線状のパターンを形成するのに効果的である。スキャン法を用いるレーザー加工には、CO2レーザー、Nd:YAGレーザー、He‐Cdレーザーなどを使用することができる。
【0053】
以下、本発明の他の目的を達成するための時間関数的レーザー照射面積または照射幅を持つ構成について詳しく説明する。
【0054】
本発明の他の目的を達成するため、本発明のパターン形成段階(S210)は、形成されるパターンの形象情報が入力される入力段階(S212)、前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算段階(S214)、及び演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射してパターンを形成する照射段階(S216)を含むことが望ましい。また、上記の方法を実現するためのレーザー照射装置300は、入力部302、演算部304、制御部306、及びレーザー光源部308を含む。
【0055】
図6に示されたように、オフセット印刷法では、回転動する所定のロール手段500が回転しながら、ガラスクリシェ401のブランケット403に転写されたパターン材料404がガラスクリシェのパターンと同一パターンで前記ロール手段500に移動する。後続作業では、前記ロール手段のパターンが転写の求められる所定の基板に再び転写される。
【0056】
上記の過程で、前記ロール手段500がガラスクリシェ401に物理的荷重を加え続けるため、前記ガラスクリシェにクラックなどが生じ得る。また、ガラスクリシェ401のブランケット403に転写されたパターン材料404がロール手段500に移動する場合、ロール手段がブランケットに当接した瞬間は、物理的にロール手段の接線方向とブランケットの水平方向とが一致すると考えられる。しかし、ロール手段は回転するため、当接瞬間の前後では方向が一致しない。
【0057】
このような物理的な運動により、ブランケットにはロール手段に移動されなかった印刷材料が下部側面などに残存する。
【0058】
このような問題点を効果的に解決するため、前記ガラスクリシェに形成されるパターンは、力の分散及びパターン材料の移動の容易性を向上させるために、その下方が上方より広いことが望ましい。下面が広い台形状を含めて、前記パターンの具体的な形状は、作業環境、パターン材料、ロール手段の特徴、ガラスクリシェの物理的特性などに応じて多様に変形することができる。
【0059】
本発明によるレーザー照射装置300の入力部302には、ガラスクリシェにレーザーが照射される場合、まず、形成されるパターンの形象情報が入力される(S212)。パターンの形状的特徴、縦横比、パターン深さの上端と下端との比、終端の線形的特性などについての多様な情報が入力される。
【0060】
その後、演算部304は、入力された形象情報、レーザー光源の強度と波長、供給電力環境などを変数にして、照射されるレーザーが前記パターンの形象と対応するように、実際の照射面積または照射されるレーザービームの幅を時間の関数に従って演算する(S214)。
【0061】
すなわち、時間(t)をx軸、照射面積(s)をy軸にしたレーザー照射面積の関数を示している図7(a)及び図8(a)のように、前記演算部304はレーザーが照射される時間に応じた照射面積の結果値を演算する。
【0062】
このようにして、本発明の制御部306は、演算された結果に該当するレーザーを照射するようにレーザー光源部308を制御することで、演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射して所望のパターンを形成する(S216)。
【0063】
前述したように、照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーを照射してパターンを形成するように構成することで、ロール手段500がガラスクリシェに伝達する物理的な力を効果的に分散させることで、ガラスクリシェのクラックを効果的に防止できるとともにガラスクリシェの耐久性を向上させることができる。また、パターン材料をより容易にロール手段に移動させるだけでなく、ガラスクリシェにパターン材料の残存物を残さない。
【0064】
前述したレーザー照射装置300の各構成要素は、物理的に区分される構成要素でなく論理的な構成要素として理解されなければならない。すなわち、前述した各構成は本発明の技術思想を実現するために構成できる電気、電子的回路によって具現される論理的区分要素であるため、それぞれの構成要素が統合または分離して実行されても本発明の論理構成が果たす機能を実現できれば、本発明の範囲内にあると解釈されなければならない。
【0065】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれによって限定されるものでなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、ガラスクリシェ上に予めフォトレジストやフォトマスクなどを使用する必要がないため、単純な工程且つ低コストでガラスクリシェを製造することができる。
【0067】
また、レーザー照射面に対するウェットエッチングの向上した作用を用いることで、縦横比が高く、線幅が精密なパターンを容易に形成できるだけでなく、小さいエネルギーを持つレーザー光源でも効果的にエッチングすることができ、一層経済的なガラスクリシェの製造方法を提供することができる。
【0068】
さらに、照射時間に応じて差等的にエッチングしてガラスクリシェのパターンを形成することで、ガラスクリシェに伝達されるロール手段の物理的な力を効果的に分散させるパターン構造を形成できるとともに、パターン材料の残存物を最小化することができる。
【符号の説明】
【0069】
300 レーザー照射装置
302 入力部
304 演算部
306 制御部
308 レーザー光源部
401 ガラスクリシェ
402 レーザー
403 ブランケット
405 鏡
410 シャドーマスク
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図1(e)】
【図1(f)】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーを用いたガラスクリシェ(glass cliche)の製造方法及びそのためのレーザー照射装置に関し、より具体的には、ガラスのエッチング速度がレーザーの照射された部分で相対的に増加する現象を用いてガラスクリシェを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(liquid crystal display;LCD)やプラズマディスプレイ(plasma display panel;PDP)のような平面パネルディスプレイ(flat panel display;FPD)の製造には、電極、ブラックマトリクス、カラーフィルタ、隔壁、薄膜トランジスタなど多種のパターニング工程が求められる。
【0003】
一般に、フォトマスクを使用し露光と現像をすることでフォトレジストを選択的に除去してフォトレジストパターンが得られ、このようなフォトレジストパターンがパターニング工程に多く用いられている。しかし、フォトマスクを使用するパターニング工程は、フォトレジストや現像液のような材料の使用が多く、高価のフォトマスクを使用しなければならない。さらに、工程段階が多くなるかまたは工程時間が長くなる問題点がある。
【0004】
このような問題点を解決するため、フォトレジストを使用せず、インクジェットプリンティングやレーザー転写のようにパターンを形成する物質を直接印刷する方法が提示されている。このような方法の1つとして、クリシェ(cliche)を用いてブランケットにパターニングされた材料を転写し、このブランケットのパターンを基板上に転写するオフセット印刷法がある。
【0005】
クリシェを使用するオフセット印刷法は、従来のフォトレジストを使用する工程に比べて材料の消費が少なく、工程が簡単であり、さらにインクジェットプリンティングやレーザー転写に比べて工程の速度が速い長所を持つ。しかし、異なるパターンの基板に対するそれぞれのクリシェが必要であり、一般にガラスで製造されるクリシェの製造工程が複雑且つ高価である短所がある。
【0006】
前記ガラスクリシェを製造する一般的な方法を、図1を参照しながら説明する。ガラスクリシェ101上にフォトレジスト102をスピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、バーコーティングなどの方法を用いて図1の(a)のように塗布する。
【0007】
その後、フォトマスク103を用いて図1の(b)のように露光及び現像過程を経て所望のパターンを形成する。露光過程で、フォトレジスト102は既に所望のパターンが形成されたフォトマスク103を通過した紫外線104によって選択的に感光され、感光された部分と感光されていない部分との現像液に対する溶解度の差により、図1の(c)のようにガラスクリシェ上にパターン105が形成される。
【0008】
図1の(c)の場合には、ポジ型フォトレジストの場合を示しているが、実施形態によっては紫外線104が照射された部分が残って紫外線に感光されない部分が除去されるネガ型フォトレジストも利用することができる。
【0009】
このようにフォトレジスト102のパターンが形成されたガラスクリシェを図1の(d)のようにガラスエッチング液(図示せず)に浸漬すれば、ガラス表面が露出した部分106でのみガラスのエッチング反応が部分的に起きる。一般に、ガラスのような非晶質物質では方向性のない等方性エッチングが起きるため、ガラスの深さ方向と幅方向とのエッチング速度が同じである。
【0010】
したがって、エッチング反応が起きると、図1の(d)に示されたように、ガラスエッチング部分106がフォトレジスト102のパターンの幅より広くなり、エッチング部の底部分が丸い模様になる。エッチングが進むと、図1の(e)に示したように、深さ方向と幅方向でエッチングされ続け、エッチングされたガラスクリシェの幅107もフォトレジスト102のパターンよりますます広くなる。
【0011】
所望の深さまでエッチングが完了すれば、エッチング液からガラスクリシェを取り出して蒸留水で洗浄した後、フォトレジストを除去すれば、図1の(f)のようにエッチングが完了したガラスクリシェ108が得られる。
【0012】
このようなウェットエッチングを用いてガラスクリシェを製造する方法では、図1に示されたように、等方性エッチングが起きるため、エッチングされた深さと同じ厚さほどパターンの側面も食い込まれる。
【0013】
それで、エッチングに使用されるフォトレジストのパターンは所望のエッチング深さの2倍以上の余裕を持って形成されなければならず、そのために形成されるパターンの精度に限界が生じる。さらに、エッチング液が浸透する余裕を考慮すれば、実際にエッチングの可能なパターンは最小エッチング深さの3倍から4倍でなければならないため、精密な線幅を持つパターンの形成がさらに困難になる。
【0014】
また、等方性エッチングの特性上、エッチングされる壁面と底面との間は丸くエッチングが行われるため、エッチング深さが次第に変わり、結果的に印刷品質の低下につながる。さらに、エッチング工程前に予めフォトレジストパターンを形成しなければならないため、フォトマスクを使用した露光工程及び現像液を使用したフォトレジスト現像工程などエッチングの前に要する工程が多く、エッチング終了後にも残ったフォトレジストをさらに除去する工程が付け加えられるという短所がある。
【0015】
前記ウェットエッチングの外にも、真空状態でエッチング気体のプラズマを用いてガラスをエッチングするドライエッチングがある。CF4やCF3Hなどのフッ素を含む気体を用いたガラスクリシェのドライエッチングは、ウェットエッチングと違って異方性エッチングが可能であるため、エッチングの進行中に線幅が広くなるか又は壁面と底面との間が丸くなる問題は生じない。
【0016】
しかし、ドライエッチングを行う真空チャンバ及び高価のエッチング気体などを備えなければならないため、エッチングコストが嵩み、大型化及び量産化が難しいという問題点がある。
【0017】
また、ドライエッチングの場合には、エッチングマスクとエッチング物質共にエッチングされるため、なるべくエッチング速度が相対的に遅いエッチングマスクを使用しなければならない。一般に、ガラスエッチングにはクロムのような金属がマスク層としてよく使用されるが、そのマスク層も厚さを無限に厚くすることはできないため、ガラスエッチングの深さに限界がある。
【0018】
また、前記ウェットエッチングと同様にエッチングの前に予めマスクパターンを形成しなければならないため、金属マスク層を真空蒸着してフォトレジスト層を形成した後、フォトマスクで露光して現像液で現像してパターンを形成し、マスクとして使用される金属層をエッチングする前工程、及びエッチング後、金属マスクを除去する後工程など多い工程がさらに必要となる短所がある。
【0019】
このようなウェットエッチング及びドライエッチングを用いたガラスクリシェ製造工程の問題点を改善しようと、レーザーエッチングを用いた新たな方法が特許文献1などで提示されている。
【0020】
特許文献1は、絶縁基板をレーザーで直接エッチングして所望のパターンを持つクリシェを製造する方法に関する。レーザーでガラスクリシェを直接エッチングしてクリシェを製造する場合、エッチング液を使用しないので工程上の利点がある。しかし、レーザーを照射した部分の光熱分解によってガラスを除去する方法であるため、高いパワーを持つレーザーを使用しなければエッチングすることができず、エッチング速度が相対的に遅い。また、パターン劣化の原因になる熱影響部(HAZ、Heat Affected Zone)の発生を防止し難く、強いエネルギーを持つレーザーの持続的な照射による熱衝撃でガラスクリシェに微細クラックが発生する問題がある。
【0021】
さらに、ガラスクリシェに転写された材料を移動させる役割をするロール手段が前記ガラスクリシェに持続的に伝達する荷重などにより、ガラスクリシェの耐久性が弱くなるか又はガラスクリシェに微細クラックが生じ得る。また、ロール手段に移動できなかったパターン材料の残存物がブランケットに残る問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】韓国特許公開10−2007−0000100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ウェットエッチングとレーザーエッチングとを調和させて用いることで、高縦横比且つ高作業効率のガラスクリシェのエッチング方法を提供することを目的とする。
【0024】
また、本発明は、ガラスクリシェに伝達されるロール手段の物理的荷重を効果的に分散させ、ブランケットへの残存物が最小となるパターンをガラスクリシェに形成するように、レーザー照射面積を照射時間の経過に応じて差等的に制御できるガラスクリシェのエッチング方法及びそのためのレーザー照射装置を提供することを他の目的とする。
【0025】
本発明の他の目的及び長所は後述される本発明の実施例を通じて理解できるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に記載される構成を組み合わせることによっても実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するため、本発明によるレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法は、エッチングの対象になるガラスクリシェをエッチング液に浸漬する浸漬段階、前記エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するパターン形成段階、及びパターン形成が完了したガラスクリシェを洗浄する洗浄段階を含む。
【0027】
また、前記パターン形成段階は、前記ガラスクリシェに照射される複数のレーザー照射面によってパターンが形成されるように構成することができる。前記複数の照射面によるパターンの形成は、前記ガラスクリシェに形成されるパターンと同じレーザー透過パターンが形成されたマスクを用いて行われるように構成することが望ましい。
【0028】
本発明において、前記パターン形成段階は、形成されるパターンの形象情報が入力される入力段階、前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算段階、及び演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射してパターンを形成する照射段階を含むことができる。
【0029】
また、前記照射段階は、照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーを照射してパターンを形成することが望ましい。
【0030】
本発明の他の態様によるレーザーエッチングのためのレーザー照射装置は、エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するレーザーエッチングのためのレーザー照射装置であって、レーザーが照射されるレーザー光源部、形成されるパターンの形象情報が入力される入力部と、前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算部、及び演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射するように前記レーザー光源部を制御する制御部を含む。
【0031】
前記レーザー照射装置において、前記制御部は、照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーが照射されるように前記レーザー光源部を制御することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図1】従来の一般的なガラスクリシェの製造方法を示したフロー図である。
【図2】本発明の望ましい一実施例によるガラスクリシェの製造方法を示したフロー図である。
【図3】本発明の望ましい一実施例によるレーザーエッチングのためのレーザー照射装置の構成を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施例によるレーザーエッチングの過程を示したフロー図である。
【図5】本発明の他の実施例によるレーザーエッチングの過程を示した概路図である。
【図6】有機基板を用いた印刷過程を示した概路図である。
【図7】本発明の望ましい実施例によるレーザーの照射面積の差等的照射方法を示した図である。
【図8】本発明の他の実施例によるレーザーの照射面積の差等的照射方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0034】
図2は、本発明の望ましい一実施例によるガラスクリシェの製造方法を示したフロー図である。図2を参照すれば、本発明によるガラスクリシェの製造方法は、エッチングの対象になるガラスクリシェをエッチング液に浸漬する浸漬段階(S200)、前記エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するパターン形成段階(S210)、及びパターン形成が完了したガラスクリシェを洗浄する洗浄段階(S220)を含む。
【0035】
まず、エッチングの対象になるガラスクリシェをウェットエッチングに用いられるエッチング液に浸漬する(S200)。前記ガラスクリシェが浸漬されるエッチング液としては、フッ酸、フッ化アンモニウム、BOE(Buffered oxide etch)溶液などを含む化合物より選択された1つ以上の溶液を使用することができる。
【0036】
エッチング液に前記ガラスクリシェが浸漬される場合、レーザーの照射の直進性を保障し、パターン形成の精度を保持するため、前記ガラスクリシェは所定の位置固定手段で固定して上下左右の平衡を保持することが望ましい。
【0037】
上記のようにエッチング液に浸漬されたガラスクリシェを照射の対象にして所望のパターンを形成する(S210)。所望のパターンに対応するレーザー移動動線を予め入力してレーザー光源手段を駆動することで、所望のパターンを自動的に形成することができる。
【0038】
このようにしてレーザーが照射された部分は、部分的に熱化学的または光化学的にエッチング速度が向上し、局地的にエッチング速度が速くなる。また、エッチングはレーザーが照射される方向のみで行われるので、縦横比の大きいエッチングパターンの形成を実現することができる。
【0039】
エッチングはレーザーが照射された部分で行われるため、ガラス表面に焦点が形成されるように、レーザー照射装置からクリシェの表面までの距離が調節されるように構成することが望ましい。また、エッチングしようとする深さがレーザーの焦点深度より深い場合には、エッチングの進行に伴ってエッチングされた深さほどレンズの位置を調節することが望ましい。
【0040】
また、レーザーによる光化学的あるいは熱化学的エッチング反応速度を十分向上させるためには、エッチングされるガラスが吸収する波長を用いなければならないが、一般的なガラスの場合、可視光及び赤外線領域における吸収がないので、Nd:YAGレーザーの第4高調波を使用するか又はKrFレーザーやArFレーザーのような紫外線領域の波長を持つレーザーを使用してエッチングすることが有利である。また、レーザーの焦点部分における光量が十分であれば、多光子吸収が発生して光化学的あるいは熱化学的エッチングが発生するので、必ずしも紫外線領域の波長を持つレーザーを使用する必要はない。
【0041】
具体例として、Nd:YAGレーザーの第3高調波である355nm波長の紫外線はガラスクリシェに吸収されないが、高いパルスエネルギーを持つQスイッチング方式のパルスレーザーを使用すれば、ガラス表面で多光子吸収が生じてガラスクリシェをドライエッチング及びウェットエッチングすることができる。
【0042】
レーザー照射段階の後、水や蒸留水などを用いてガラスクリシェを洗浄する(S220)。
【0043】
前述したレーザーエッチングの過程を図4を参照して具体的に説明すれば、次のようである。
【0044】
図4(a)のように、ガラスクリシェ401上にレーザー402を照射する。図示されていないが、図4(a)に示されたガラスクリシェはエッチング液に浸漬された状態であることを前提とする。
【0045】
レーザー402が照射されれば、照射された部位では照射された方向(垂直方向)に沿ってエッチングが始まり、図4(b)のようにブランケット403を形成する。このような図4(a)及び図4(b)の過程をガラスクリシェの他の箇所にも繰り返して他のパターンを形成し(図4(c)及び(d))、結果的に図4(e)のようにブランケット403が形成されたガラスクリシェ401が製造される。
【0046】
また、本発明において、前記パターン形成段階(S210)では前記ガラスクリシェに照射する複数のレーザー照射面によってパターンを形成することが望ましい。すなわち、多数のパターンを形成する場合、1つのレーザーのみを使用すれば、作業に長時間がかかる。また、先に形成されたパターンと後で形成されたパターンとの間でエッチング液に対するエッチング反応の速度または進行程度の差が生じ得る。したがって、精密な多数のパターンを形成するためには、レーザーの照射面は複数であることがより望ましい。
【0047】
複数のレーザー照射面を形成する方法として、複数のレーザー光源を使用する方法、数枚の半透過鏡を使用して一つあるいは複数のレーザーから出射された光を分ける方法、回折光学素子を用いて一つあるいは複数のレーザー光をさらに複数の光に分ける方法、高速で回転する多面鏡を用いて光を分ける方法、及びデジタルミラーデバイス(Digital Mirror Device)を用いて一定の面積を露光する方法などを実施形態と作業環境などに応じて適用することができる。
【0048】
また、複数の照射面の形成方法として、図5に示されたように、シャドーマスク(shadow mask)を用いる方法(図5(a))またはスキャン法(図5(b))などを適用することができる。
【0049】
図5に示されたように、一度で広い面積を照射するレーザーをガラスクリシェに形成されるパターンと同じレーザー透過パターンが形成されたマスクに照射することで、所望のパターンを同時に形成できるように構成することが望ましい。レーザーが前記マスクに形成されたパターンを透過することで、前記ガラスクリシェに所望のパターンで複数の照射面を持つレーザーを照射することができる。
【0050】
シャドーマスクを用いる場合は、一度に広い面積を照射するため、エキシマレーザーなど高いエネルギーを持つレーザーを使用することが、短時間で広い面積をエッチングでき、多様な線幅のパターンの加工が容易であって、有利である。レーザーとしてはKrFレーザー、ArFレーザーなどのエキシマレーザーを使用することができる。
【0051】
また、図5(b)に示したように、スキャナーは焦点に集まったレーザービーム402を2つの独立的に動く鏡405を用いて所望の位置に移動させる。このようなスキャナーを用いてレーザービーム402を必要な形状に移動させ、ガラスクリシェ401の所望の位置に加速されたエッチング速度でブランケット403を形成することができる。
【0052】
スキャン法で焦点に集まったレーザーを用いてエッチングする場合は、多様な形態のパターンに直接適用することが可能であり、特に、線状のパターンを形成するのに効果的である。スキャン法を用いるレーザー加工には、CO2レーザー、Nd:YAGレーザー、He‐Cdレーザーなどを使用することができる。
【0053】
以下、本発明の他の目的を達成するための時間関数的レーザー照射面積または照射幅を持つ構成について詳しく説明する。
【0054】
本発明の他の目的を達成するため、本発明のパターン形成段階(S210)は、形成されるパターンの形象情報が入力される入力段階(S212)、前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算段階(S214)、及び演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射してパターンを形成する照射段階(S216)を含むことが望ましい。また、上記の方法を実現するためのレーザー照射装置300は、入力部302、演算部304、制御部306、及びレーザー光源部308を含む。
【0055】
図6に示されたように、オフセット印刷法では、回転動する所定のロール手段500が回転しながら、ガラスクリシェ401のブランケット403に転写されたパターン材料404がガラスクリシェのパターンと同一パターンで前記ロール手段500に移動する。後続作業では、前記ロール手段のパターンが転写の求められる所定の基板に再び転写される。
【0056】
上記の過程で、前記ロール手段500がガラスクリシェ401に物理的荷重を加え続けるため、前記ガラスクリシェにクラックなどが生じ得る。また、ガラスクリシェ401のブランケット403に転写されたパターン材料404がロール手段500に移動する場合、ロール手段がブランケットに当接した瞬間は、物理的にロール手段の接線方向とブランケットの水平方向とが一致すると考えられる。しかし、ロール手段は回転するため、当接瞬間の前後では方向が一致しない。
【0057】
このような物理的な運動により、ブランケットにはロール手段に移動されなかった印刷材料が下部側面などに残存する。
【0058】
このような問題点を効果的に解決するため、前記ガラスクリシェに形成されるパターンは、力の分散及びパターン材料の移動の容易性を向上させるために、その下方が上方より広いことが望ましい。下面が広い台形状を含めて、前記パターンの具体的な形状は、作業環境、パターン材料、ロール手段の特徴、ガラスクリシェの物理的特性などに応じて多様に変形することができる。
【0059】
本発明によるレーザー照射装置300の入力部302には、ガラスクリシェにレーザーが照射される場合、まず、形成されるパターンの形象情報が入力される(S212)。パターンの形状的特徴、縦横比、パターン深さの上端と下端との比、終端の線形的特性などについての多様な情報が入力される。
【0060】
その後、演算部304は、入力された形象情報、レーザー光源の強度と波長、供給電力環境などを変数にして、照射されるレーザーが前記パターンの形象と対応するように、実際の照射面積または照射されるレーザービームの幅を時間の関数に従って演算する(S214)。
【0061】
すなわち、時間(t)をx軸、照射面積(s)をy軸にしたレーザー照射面積の関数を示している図7(a)及び図8(a)のように、前記演算部304はレーザーが照射される時間に応じた照射面積の結果値を演算する。
【0062】
このようにして、本発明の制御部306は、演算された結果に該当するレーザーを照射するようにレーザー光源部308を制御することで、演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて差等的な照射面積を持つレーザーを照射して所望のパターンを形成する(S216)。
【0063】
前述したように、照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーを照射してパターンを形成するように構成することで、ロール手段500がガラスクリシェに伝達する物理的な力を効果的に分散させることで、ガラスクリシェのクラックを効果的に防止できるとともにガラスクリシェの耐久性を向上させることができる。また、パターン材料をより容易にロール手段に移動させるだけでなく、ガラスクリシェにパターン材料の残存物を残さない。
【0064】
前述したレーザー照射装置300の各構成要素は、物理的に区分される構成要素でなく論理的な構成要素として理解されなければならない。すなわち、前述した各構成は本発明の技術思想を実現するために構成できる電気、電子的回路によって具現される論理的区分要素であるため、それぞれの構成要素が統合または分離して実行されても本発明の論理構成が果たす機能を実現できれば、本発明の範囲内にあると解釈されなければならない。
【0065】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれによって限定されるものでなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、ガラスクリシェ上に予めフォトレジストやフォトマスクなどを使用する必要がないため、単純な工程且つ低コストでガラスクリシェを製造することができる。
【0067】
また、レーザー照射面に対するウェットエッチングの向上した作用を用いることで、縦横比が高く、線幅が精密なパターンを容易に形成できるだけでなく、小さいエネルギーを持つレーザー光源でも効果的にエッチングすることができ、一層経済的なガラスクリシェの製造方法を提供することができる。
【0068】
さらに、照射時間に応じて差等的にエッチングしてガラスクリシェのパターンを形成することで、ガラスクリシェに伝達されるロール手段の物理的な力を効果的に分散させるパターン構造を形成できるとともに、パターン材料の残存物を最小化することができる。
【符号の説明】
【0069】
300 レーザー照射装置
302 入力部
304 演算部
306 制御部
308 レーザー光源部
401 ガラスクリシェ
402 レーザー
403 ブランケット
405 鏡
410 シャドーマスク
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図1(e)】
【図1(f)】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングの対象になるガラスクリシェをエッチング液に浸漬する浸漬段階と、
前記エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するパターン形成段階と、
前記パターンの形成が完了したガラスクリシェを洗浄する洗浄段階と、を含むことを特徴とするレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項2】
前記パターン形成段階は、
前記ガラスクリシェに照射される複数のレーザー照射面によってパターンが形成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項3】
前記複数の照射面によるパターンの形成は、
前記ガラスクリシェに形成されるパターンと同じレーザー透過パターンが形成されたマスクを用いて行われることを特徴とする請求項2に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項4】
前記パターン形成段階は、
形成されるパターンの形象情報が入力される入力段階と、
前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算段階と、
演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて異なる照射面積を持つレーザーを照射してパターンを形成する照射段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項5】
前記照射段階は、
照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーを照射してパターンを形成することを特徴とする請求項4に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項6】
エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するレーザーエッチングのためのレーザー照射装置であって、
レーザーが照射されるレーザー光源部と、
形成されるパターンの形象情報が入力される入力部と、
前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算部と、
演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて異なる照射面積を持つレーザーが照射されるように前記レーザー光源部を制御する制御部と、
を含むことを特徴とするレーザーエッチングのためのレーザー照射装置。
【請求項7】
前記制御部は、
照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーが照射されるように前記レーザー光源部を制御することを特徴とする請求項6に記載のレーザーエッチングのためのレーザー照射装置。
【請求項1】
エッチングの対象になるガラスクリシェをエッチング液に浸漬する浸漬段階と、
前記エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するパターン形成段階と、
前記パターンの形成が完了したガラスクリシェを洗浄する洗浄段階と、を含むことを特徴とするレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項2】
前記パターン形成段階は、
前記ガラスクリシェに照射される複数のレーザー照射面によってパターンが形成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項3】
前記複数の照射面によるパターンの形成は、
前記ガラスクリシェに形成されるパターンと同じレーザー透過パターンが形成されたマスクを用いて行われることを特徴とする請求項2に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項4】
前記パターン形成段階は、
形成されるパターンの形象情報が入力される入力段階と、
前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算段階と、
演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて異なる照射面積を持つレーザーを照射してパターンを形成する照射段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項5】
前記照射段階は、
照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーを照射してパターンを形成することを特徴とする請求項4に記載のレーザーエッチングを用いたガラスクリシェの製造方法。
【請求項6】
エッチング液に浸漬されたガラスクリシェにレーザーを照射してパターンを形成するレーザーエッチングのためのレーザー照射装置であって、
レーザーが照射されるレーザー光源部と、
形成されるパターンの形象情報が入力される入力部と、
前記形象情報に該当するレーザー照射面の面積情報を演算する演算部と、
演算された面積情報に基づき、照射時間の経過に応じて異なる照射面積を持つレーザーが照射されるように前記レーザー光源部を制御する制御部と、
を含むことを特徴とするレーザーエッチングのためのレーザー照射装置。
【請求項7】
前記制御部は、
照射時間が経過するにつれて照射面積が減少するレーザーが照射されるように前記レーザー光源部を制御することを特徴とする請求項6に記載のレーザーエッチングのためのレーザー照射装置。
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図4(e)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【図8】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図4(e)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2010−540386(P2010−540386A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526830(P2010−526830)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005719
【国際公開番号】WO2009/045028
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005719
【国際公開番号】WO2009/045028
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】
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