説明

レーザービーム特性管理方法

【課題】レーザービームによる加工によって、加工に不具合が発生した場合や、ダイシング後のデバイスの特性に問題が発生した場合に、それらの原因究明を従来よりも迅速に行えるようにする。
【解決手段】レーザービームをレーザービームの断面強度分布を測定する断面強度分布測定部36へ導いて断面強度分布測定部の受光部360で受光し、受光部360で取得したレーザービームの断面強度分布に関する情報を記憶手段37に記憶する。記憶した断面強度分布に関する情報を用いることで、加工によって不具合が発生した場合やダイシング後のデバイスの特性に問題が発生した場合にそれらの原因究明を従来よりも迅速に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置において使用されるレーザービームの断面強度分布に関する情報を取得してレーザービームの特性を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、表面に格子状に配列されたストリート(切断ライン)によって区画された複数の領域にIC、LSI等の回路が形成されて構成される略円板形状の半導体ワークを、ストリートに沿って切断することによって回路ごとに分割して個々の半導体チップを製造している。半導体ワークのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われている。また、レーザー光線を照射して切断する加工方法も試みられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザー光を使用して工場で量産加工を行う場合には、実験を繰り返して所望の加工ができるように加工条件を設定しても、加工に不具合が起こる場合がある。また、レーザー光によるダイシング加工を行った直後のデバイスは、外観上は特に問題なくダイシングできているように見えても、後のデバイス特性のチェックの際に問題が発生する場合もあり、これらの原因究明には非常に多大な労力が必要であった。
【0005】
本発明は、これらの事実に鑑みて成されたものであって、その主な技術的課題は、レーザービームによる加工によって、加工に不具合が発生した場合や、ダイシング後のデバイスの特性に問題が発生した場合に、それらの原因究明を従来よりも迅速に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワークを保持する保持手段と、レーザービームを発振する発振器とレーザービームを保持手段に保持されたワークへ向けて集光する集光器とを含むレーザー加工手段と、情報を記憶する記憶手段とを有するレーザー加工装置におけるレーザービーム特性管理方法に関するもので、レーザービームをレーザービームの断面強度分布を測定する断面強度分布測定部へ導く工程と、断面強度分布測定部の受光部でレーザービームを受光する工程と、受光部で取得したレーザービームの断面強度分布に関する情報を記憶手段に記憶する工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、レーザービームをレーザービームの断面強度分布を測定する断面強度分布測定部へ導いて断面強度分布測定部の受光部で受光し、受光部で取得したレーザービームの断面強度分布に関する情報を記憶手段に記憶するため、記憶した断面強度分布に関する情報を用いて、加工によって不具合が発生した場合やダイシング後のデバイスの特性に問題が発生した場合にそれらの原因究明を従来よりも迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】レーザー加工装置の一例を示す斜視図である。
【図2】レーザー加工手段の構造の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)レーザー加工装置の構成
図1に示すレーザー加工装置1は、保持手段2に保持されたワークWに対してレーザー加工手段3からレーザー光を照射してワークWを加工する装置である。
【0010】
保持手段2は、ワークWを吸引保持する保持面20と、図示のようにワークWを支持するフレームFを固定する固定部21とから構成されている。
【0011】
保持手段2は、X方向送り部4によってX軸方向に移動可能に支持されているとともに、Y方向送り部5によってX軸方向に対して水平方向に直交するY軸方向に移動可能に支持されている。
【0012】
X方向送り部4は、平板状の基台53上に配設され、X軸方向の軸心を有するボールネジ40と、ボールネジ40と平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の一端に連結されたモータ42と、図示しない内部のナットがボールネジ40に螺合すると共に下部がガイドレール41に摺接するスライド部43と、ボールネジ40と平行に配設されたリニアスケール44とから構成されている。このX方向送り部4は、モータ42に駆動されてボールネジ40が回動するのに伴い、スライド部43がガイドレール41上をX軸方向に摺動して保持手段2をX軸方向に移動させ、保持手段2のX軸方向の位置情報がリニアスケール44の読み取り値として図示しない制御部によって認識される構成となっている。
【0013】
保持手段2及びX方向送り部4は、Y方向送り部5によってY軸方向に移動可能に支持されている。Y方向送り部5は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50に平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の一端に連結されたモータ52と、図示しない内部のナットがボールネジ50に螺合すると共に下部がガイドレール51に摺接する基台53と、ボールネジ50と平行に配設されたリニアスケール54とから構成されている。このX方向送り部5は、モータ52に駆動されてボールネジ50が回動するのに伴い、基台53がガイドレール51上をY軸方向に摺動して保持手段2及びX方向送り部4をX軸方向に移動させ、保持手段2のY軸方向の位置情報がリニアスケール54の読み取り値として図示しない制御部によって認識される構成となっている。
【0014】
レーザー加工手段3は、壁部6に固定された基台30と、基台30の先端部に固定された加工ヘッド31とを備えている。加工ヘッド31は、鉛直方向の光軸を有するレーザー光を照射する機能を有している。
【0015】
図2に示すように、レーザー加工手段3は、レーザービームを発振する発振器32と、発振器32において発振されたレーザービームを保持手段2に保持されたワークWへ向けて集光する集光器33とを備えている。発振器32から発信されたレーザービームは、反射板34において反射して鉛直方向に直進し、集光器33において集光されて保持手段2に保持されたワークWに照射される。集光器33の上方には、レーザービームの光路と当該光路を外れた位置との間を移動可能な可動ミラー35が配設されている。
【0016】
図2に示すように、レーザー加工手段3には、レーザービームの断面強度分布を測定する断面強度分布測定部36と、メモリ等の記憶素子を備え情報を記憶する記憶手段37とを備えている。断面強度分布測定部36は、可動ミラー35がレーザービームの光路上に位置している状態において可動ミラー35において反射したレーザービームを受光する受光部360と、受光部360において受光したレーザービームの断面強度に関する情報を記憶手段37に送信する送信部361とを備えている。
【0017】
(2)レーザー加工装置の動作
図1を参照してレーザー加工装置1を用いてワークWをレーザー加工する際の装置の動作について説明する。図1に示すように、ワークWは、表面に形成されたストリートSによって区画された領域にデバイスDが形成されて構成されており、裏面側がテープTに貼着される。テープTにはリング状に形成されたフレームFが貼着されており、ワークWは、テープTを介してフレームFと一体化されて支持された状態となっている。ワークWは、保持手段2の保持面20においてテープTを介して吸引保持され、フレームFは、固定部21において固定される。なお、ワークWは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ、ガリウム砒素、シリコンカーバイド等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミックス、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。
【0018】
保持手段2にワークWが保持されると、X方向送り部4及びY方向送り部5によって保持手段2がX方向及びY方向に駆動され、加工ヘッド31からワークWのストリートSに沿ってレーザービームが照射される。こうしてワークWを移動させながらレーザービームを照射することにより、ワークWの内部にレーザービームを集光して内部に改質層を形成したり、ワークWの表面にレーザービームを集光して溝を形成したりすることができる。このようにして行う加工中は、図2に示した可動ミラー35を、光路からはずれた退避位置に位置させておく。なお、改質層とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域であり、例えば、溶融処理領域、クラック領域や絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。
【0019】
(3)レーザービームの断面強度分布解析
図2において2点鎖線で示すように、可動ミラー35をレーザービームの光路上に位置させると、レーザービームが可動ミラー35によって断面強度分布測定部36の受光部360を経て送信部361に導かれる。そして、送信部361は、レーザービームの断面強度分布に関する画像情報を記憶手段37に転送し、記憶手段37では、その画像情報を記憶することができる。
【0020】
例えば、レーザー加工装置1において複数のワークにレーザー加工を施す場合には、加工の効率を低下させないために、保持手段2に対するワークの載せ替えを行うタイミングで、可動ミラー35を光路上に移動させる。そして、断面強度分布測定部36の送信部361からレーザービームの断面画像が記憶手段37に送信され記憶されると、例えばその画像を図示しないモニターに表示させて画像を解析することにより、レーザービームの断面強度分布を把握することができる。モニターにおいては、例えばレーザービームの強度に応じて画像中の色が変化する構成となっている場合は、断面画像中の色の分布に基づき、レーザービームの強度分布を把握することができる。なお、モニターに表示させるだけでなく、画像情報を記録媒体に記録し、その記録媒体に記録された画像情報をパソコン等に取り込むことにより、詳細に解析することもできる。
【0021】
レーザー加工によりワークWが分割された後の工程においてデバイスの品質等の問題が発生した場合は、記憶手段37に記憶された断面画像情報を分析することにより、その原因を解明することが可能となる。
【0022】
また、ワークWの加工に不具合が発生した場合は、加工を中断してすぐに可動ミラー35を光路上に移動させ、レーザービームの断面画像情報を断面強度分布測定部36が取得して記憶手段37に記憶させることで、直ちに不具合の原因を調べることができる。例えば、反射板34などのレーザービームの光路に配設された部品に埃が付着していた場合は、その埃がレーザービームの強度分布に悪影響を与えるため、その悪影響が断面画像情報に現れる。したがって、記憶手段37に記憶された断面画像情報中、埃の影響が現れている部分を発見することで、不具合の原因を早急に特定し、解決を図ることができる。
【0023】
以上のように、レーザービームの断面分布強度情報を記憶手段37に記憶させることにより、レーザービームの特性を管理することができ、これによって、加工によって不具合が発生した場合やダイシング後のデバイスの特性に問題が発生した場合にそれらの原因究明を従来よりも迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0024】
1:レーザー加工装置
2:保持手段 20:保持面 21:固定部
3:レーザー加工手段
30:基台 31:加工ヘッド 32:発振器 33:集光器 34:反射板
35:可動ミラー
36:断面強度分布測定部 360:受光部 361:送信部
37:記憶手段
4:X方向送り部
40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:モータ 43:スライド部
44:リニアスケール
5:Y方向送り部
50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:モータ 53:基台
54:リニアスケール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
レーザービームを発振する発振器と、該レーザービームを該保持手段に保持されたワークへ向けて集光する集光器と、を含むレーザー加工手段と、
情報を記憶する記憶手段と、
を有するレーザー加工装置におけるレーザービーム特性管理方法であって、
該レーザービームを該レーザービームの断面強度分布を測定する断面強度分布測定部へ導く工程と、
該断面強度分布測定部の受光部で該レーザービームを受光する工程と、
該受光部で取得したレーザービームの断面強度分布に関する情報を該記憶手段に記憶する工程と、
を含むレーザービーム特性管理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35276(P2012−35276A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175289(P2010−175289)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】