説明

レーザーマーキングまたはレーザー溶着化剤としての球体金属粒子の使用、ならびにレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック

本発明は、プラスチック中のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての、アンチモンおよび/またはアンチモン含有化合物を含まない球体金属粒子の使用に関するが、ここで、その球体金属粒子の粒子サイズ分布は、レーザー粒度測定法によって求めて、体積平均累積篩下粒子サイズ分布の形で、D99値が<110μm、D90値が<75μm、そしてD50が<45μmである。
本発明は、さらに、レーザーマーキング剤が、アンチモンおよび/またはアンチモン含有化合物を含まない、球体金属粒子からなる、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックにも関するが、ここで、その球体金属粒子の粒子サイズ分布は、レーザー粒度測定法によって求めて、体積平均累積篩下粒子サイズ分布の形で、D99値が<110μm、D90値が<75μm、そしてD50が<45μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックをレーザーマーキングおよび/またはレーザー溶着するための添加剤としての、球体金属粒子の使用に関する。本発明は、さらに、本発明によるレーザーマーキング剤を含むレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーによるプラスチックのマーキングおよびレーザーエネルギーによるプラスチック部品の溶着は、自体公知である。いずれも、直接的にポリマーとの相互作用によるか、あるいは、間接的にプラスチック材料に添加されているレーザー感受性剤による、プラスチック材料中へのレーザーエネルギーの吸収の結果としてもたらされる。レーザー感受性剤は、有機染料または顔料であってよく、それらはレーザーエネルギーを吸収することによって、プラスチックの中で、目に見える局所的な色の変化をもたらす。それは、レーザー光を用いて照射されたときに、目に見えない無色の形態から目に見える形態に変換される化合物であってもよい。レーザー溶着の場合においては、接合部分におけるレーザーエネルギーの吸収の結果としてプラスチック材料が十分に高く加熱されるために、その材料が溶融して、二つの部品が互いに溶着する。
【0003】
一般的な合理化対策の一部として、実質的にすべての産業分野において、製造された商品のマーキングの重要性が増してきている。したがって、たとえば、製造データ、ロット番号、有効期限、製品ID、バーコード、会社のロゴなどを記入する必要がある。印刷法、エンボス法、スタンプ法、およびラベル法などの従来からのマーキング方法と比較すると、レーザーマーキングは、非接触操作であるために顕著に高速であり、また、より正確であり、かつ非平面である表面に適用するのにも問題がない。レーザーマーキングは材料の表面よりも下に生成するので、耐久性があり、堅牢であり、除去、変更、さらには偽造に関しても実質的により安全性が高い。この理由から、他の媒体との接触、たとえば容器の場合であれば液体との接触、および密封に関しても同様に大きな問題はないが、ただし言うまでもないことではあるが、そのプラスチックマトリックスが安定していなければならない。製品IDが保護されて耐久性があること、さらには汚染を全く受けないことは、たとえば、医薬品、食料品、および飲料の包装においては極めて重要である。
【0004】
レーザーマーキング技術が、特にプラスチックのマーキングに関連して、極めて好適であることが判ってきた。効率的なプラスチックのマーキングの実施を可能とするためには、マークされるプラスチックとレーザー光の間に十分な相互作用を起こさせる必要がある。この場合、第一に心に留めておかなければならないことは、プラスチックに導入するエネルギーは、プラスチック物品またはその組織を破壊してしまう可能性があるので、高すぎてはならないということである。第二には、レーザービームが、顕著な相互作用を与えることなくプラスチック中を通過してしまってはならないということであるが、その理由は、その場合にはプラスチックにマークすることができないからである。
【0005】
レーザービームとプラスチックの相互作用を高めるためには、吸収剤、アブソーバーとも呼ばれるが、を組み入れたプラスチックを使用する。これらの吸収剤は、たとえば、レーザーマーク可能なポリマー、そうでなければ真珠光沢顔料および金属効果顔料であってよい。
【0006】
真珠光沢顔料および金属効果顔料の場合においては、レーザー光を照射すると、これらの顔料を加熱することになる。そうすると、真珠光沢顔料または金属効果顔料の直近において、プラスチック内での熱的変化、たとえばプラスチックの炭化または発泡が起こり、それによって、そのプラスチック物品のマーキングまたは識別が可能となる。
【0007】
DE 197 26 136 A1には、0.1〜100μmのサイズを有するミクロ粉砕した粒子の形態で、レーザーマーク可能なポリマーを使用することが開示されている。これらのレーザーマーク可能なポリマーの欠点は、そのレーザーマーク可能なポリマーをドープさせたプラスチックを加工する際に、それらが溶融する可能性がある点である。したがって、組み入れるレーザーマーク可能なポリマーと、使用するプラスチック系の溶融範囲を、相互に調和させてやる必要がある。
【0008】
DE 198 10 952 A1には、プラスチック中の吸収剤としての真珠光沢顔料または金属光沢顔料の使用が開示されている。真珠光沢顔料または金属光沢顔料または金属効果顔料を使用すると不利な点は、レーザーマーキングをした後に満足のいくコントラストを得るためには、いずれの場合においても、濃度レベルを十分に高くしなければならないが、その結果として、プラスチックが必然的に真珠光沢または金属的着色といった着色を伴うことである。
【0009】
したがって、真珠光沢顔料および/または金属効果顔料を使用すると、真珠光沢顔料の場合には明らかな着色(真珠光沢効果)を与えることなく、あるいは金属光沢もしくは金属効果顔料の場合には明らかな金属着色を与えることなく、満足のいく高コントラストのレーザーマーキングを達成することは不可能である。さらに、金属効果顔料および真珠光沢顔料は比較的高価である。
【0010】
さらに、真珠光沢顔料の、または金属光沢もしくは金属効果顔料の微小板状構造は有害作用を有していて、顔料が微小板構造を有しているために、プラスチックのかたまりの射出成形操作には避けることができない当然の結果である層流中でそれらが配向してしまい、そのために、製造されるプラスチック物品の中に流れ筋または縞模様を生じる。
【0011】
プラスチックのレーザーマーキングにおいて所望のコントラストを得る目的で、EP 1 145 864 A1には、金属粉体および/または半金属粉体と、フィロケイ酸塩を基とする1種の効果顔料または2種以上の効果顔料の混合物を使用することについての教示がある。この場合もまた、そのプラスチックには目に見える着色または金属的着色が存在し、これは、濁りがなく透明なプラスチックにとっては望ましくない。さらに、真珠光沢顔料も同様に、製造されるプラスチック物品に縞模様または流れ筋を生じさせるので、有害である。
【0012】
DE 10 2004 053 376 A1には、プラスチック上への着色レーザーマーキングおよびレーザー書込みが開示されているが、これは、プラスチックの表面へのポリマー性書込み媒体の溶着に基づくものである。この明細書に言及されているマーキングのために適したエネルギー吸収剤には、他の吸収剤と合わせて、球体金属粉体が含まれている。しかしながら、金属粉体のサイズに関しては、詳述されていない。
【0013】
DE 10 2004 045 305 A1の教示に従えば、書込みされるプラスチックを持続的に着色する吸収剤の従来技術に存在していた問題点を、プラスチック材料の中にホウ化化合物、好ましくは六ホウ化物ランタンを組み入れることによって、解消することができる。一つの欠点は、これらのホウ化物化合物、特に六ホウ化ランタンが顕著なコスト要因となることである。そのために、これらのホウ化物化合物は、汎用のためのレーザーマーキング剤としては適していない。
【0014】
透明なプラスチック材料に着色なしでマーキングすることを可能とするために、US 6,693,657 B2、さらにはWO 2005/047009の教示に従えば、酸化アンチモンと酸化スズの混合物を含むレーザーマーキング剤を使用する。WO 2005/084956には、ナノスケールの酸化インジウムスズまたは酸化アンチモンスズ粒子によってレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能である、高透明性プラスチック材料が記載されている。一つの欠点は、その他すべてのアンチモン化合物と同様に、酸化アンチモンの毒性が高いことである。したがって、このレーザーマーキング剤は、一方では、製造および加工においてならびに廃棄において、環境および人間に無視できない危険性を有しているが、その理由は、最初に、アンチモンまたはアンチモンを含む化合物を使用しなければならず、最後には、アンチモンおよび/またはアンチモンを含む化合物を含むプラスチック物品を、また廃棄しなければならないからである。
【0015】
WO 2002/055287 A1には、レーザー溶着された複合成形物を製造するためのプロセスが記載されている。そこでは、充填剤としての金属フレークおよび金属粉体が言及されている。しかしながら、これらの充填剤は、プラスチック成形物を基準にして、1%〜60重量%の比較的高い濃度で使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一つの目的は、効果的なコントラストを与え、縞模様を与えない組み入れで、透明なプラスチック材料にマーキングすることを可能とする、レーザーマーキング剤を提供することである。プラスチック材料を自動的に着色させてしまうことなく、効果的なコントラストが得られることが好ましい。
【0017】
本発明のさらなる目的は、安価で大量に入手可能であって、毒物学的に問題のないレーザーマーキング剤を提供することである。
【0018】
さらなる目的は、レーザーマーキング剤によるかるみや着色を事実上示さないレーザーマーキング剤を用いた、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
その上に本発明が基礎を置く目的は、プラスチック中のレーザーマーキング剤として、アンチモンおよび/またはアンチモン含有化合物を含まない、球体金属粒子を使用することによって達成されるが、ここで、その球体金属粒子の粒子サイズ分布は、レーザー粒度測定法によって求めて、体積平均累積篩下粒子サイズ分布の形で、D99値が<110μm、D90値が<75μm、およびD50値が<45μmを有している。
【0020】
好ましい実施態様は、従属請求項に特定されている。
【0021】
レーザー粒度測定法は、粒子のサイズをレーザー光の回折から求めるレーザー回折法である。Sympatec、Clausthal−Zellerfeld、Germanyから供給されるHelos装置を用い、メーカーの説明書に従って、レーザー回折法を実施するのが好ましい。
【0022】
その目的は、さらに、レーザーマーキング剤として、アンチモンおよび/またはアンチモン含有化合物を含まない球体金属粒子を含むプラスチックを提供することによっても達成される。
【0023】
好ましい実施態様は、従属請求項に特定されている。
【0024】
金属粉体は、周知である。それらの使用には、金属フレークを製造するための出発物質が含まれる。したがって、たとえば、亜鉛粉体は、腐食顔料として使用される。
【0025】
まったく驚くべきことには、この用途において球体金属粒子と呼ばれている金属粉体が、レーザーマーキング剤としてとりわけ適していることが判った。この文脈においては、金属粉体を使用したときに、流れ筋および/または縞模様がプラスチック材料中にできないか、または目には見えないということは、驚くべきことである。
【0026】
まったく驚くべきことには、この文脈においては、球体金属粒子が、透明なプラスチック材料に必然的にかすみや着色を与えるといったことなしに、高コントラストなマーキングを可能とする。この理由は、恐らくは、平板状の真珠光沢顔料または平板状の金属効果顔料と対比して、その金属粒子が球体の形態であるために、入射光が直線的に反射されることがなく、そのため、観察者には、強い反射性顔料であるとは認識されないためであろう。その代わりに、球体の金属粒子は、照射されたレーザー光を高い程度に吸収し、したがって、それを熱に転換させる性能を有している。
【0027】
球体金属粒子という用語は、本発明の目的のためには、完全に同心的な三次元構造である必要はないことを意味している。
【0028】
本発明の目的のためには、球体金属粒子は、真珠光沢顔料または金属効果顔料のような、効果顔料の微小板状の形態を有していない。本発明の目的のためには、「球体の形態」という用語は、たとえば、ほぼ球体の形態、楕円体の形態のみを有する形態か、または多種多様である形態も指している。多種多様の形態とは、特に、非平板状の本体の上で、表面上に、たとえば、樹枝状の突起が存在していてもよいことを特徴としている。さらに、その表面が不規則な形状をしていてもよい。この種の球体金属粒子は、たとえば、溶融金属をノズルスプレーまたはアトマイゼーションすることによって得ることができる。それらは商業的に大量に製造されており、たとえばEcka Granules独国(D−91235、Velden、Germany)から、安価に入手することができる。
【0029】
原理的には、広い粒子サイズ範囲の球体金属粒子をレーザーマーキングに使用することができる。しかしながら、比較的小さな金属粒子を使用するのが好ましい。驚くべきことには、比較的小さな金属粒子を使用した場合に、レーザーマーキングの画像鮮鋭性、および特にドット精度が改良されることが判った。過度に大きな金属粒子が少量でも存在すると、ドット精度が損なわれる。
【0030】
球体金属粒子は、一般的にほぼ対数正規分布の形を有する粒子サイズ分布を有している。サイズ分布は、通常、レーザー粒度測定法によって求める。
【0031】
この方法の場合においては、粉体の形態にある金属粒子を測定することが可能である。照射されたレーザー光の散乱を、Windox software、version 5、release 5.1を、メーカーの説明書に従って、Sympatec、Germanyから供給されるHelos装置と組み合わせて使用することにより、複数の空間方向で検出し、フラウンホーファー回折理論に従って評価する。計算上は、粒子は球体として処理する。したがって、求められた直径は、常に、空間的に全ての方向で平均した相当する球の直径に関連し、金属粒子の実際の形状からは独立している。求められたサイズ分布は(相当する球の直径に関連して)体積平均の形で計算されたものである。この体積平均サイズ分布は、なかんずく、累積篩下曲線として表現することができる。累積篩下曲線は、さらに、通常は、所定の特性値、たとえばD50値またはD90値によって単純化して、特徴付けられる。D90値は、全粒子の90%が、表記された数値より下に位置していることを意味している。言い方を変えれば、全粒子の10%が、表記された数値より上に位置している。D50値の場合には、全粒子の50%が、表記された数値より上に、そして全粒子の50%が、表記された数値より下に位置している。
【0032】
本発明による球体金属粒子は、D99値が<110μm、D90値が<75μm、そしてD50値が<45μmの粒子サイズ分布を有している。D50値が0.5から<45μmまでの範囲にある本発明による球体金属粒子が、特に好ましい。
【0033】
99値が>110μm、かつD90値が>75μmであるような粒子サイズ分布を有する過度に粗い球体金属粒子の場合においては、レーザーマーキングの所望のコントラストおよび特にドット精度が不満足なものとなる。たとえば、D99値が<110μm、かつD90値が<75μm、けれどもD50値が>45μmである球体金属粒子の粒子サイズ分布であれば、同じ事があてはまる。そのような種類の金属粒子は、微細な画分が比較的少なく、本発明に記載の利点を有さない。
【0034】
99値が<70μm、かつD90値が<40μmであるのが好ましい。これに関連して、D50値が<25μmである粒子サイズ分布が好ましい。D50値が0.5から<25μmまでの範囲にある本発明による球体金属粒子が、特に好ましい。これらの比較的微細な金属粒子を使用すると、レーザーマーキングのドット精度がさらに改良される。
【0035】
ドット精度は、レーザーマーキングが良好な解像度を有し、分断された、個別化された、特に大きなドットが存在しないことを意味している。この種の分断されたドットは、粗い金属粒子を使用したときに、特に起こりやすい。
【0036】
球体金属粒子をプラスチックに添加し、押出すことによって加工する。この操作の過程で、押出機の中で生じる剪断力によって、個別化された粒子を、微小板(フレークまたはかけらに変形させることができる。この変形は、プラスチックの中の、青白く金属的な輝きのあるドットまたはかけらにより、明らかに示される。この効果が起こらない場合には、次いで、さらなる好ましい実施態様において、D99値が<65μmでD90値が<36μmである粒子サイズ分布を有する球体金属粒子を使用する。この場合においては、その粒子サイズ分布のD50値は、<20μmであるのが好ましい。D50値が0.55から<20μmまでの範囲にある本発明の球体金属粒子が、特に好ましい。
【0037】
99値が<55μmでD90値が<30μmである粒子サイズ分布を有する球体金属粒子を使用するのが特に好ましい。これらの球体金属粒子の場合、その粒子サイズ分布のD50値は、<18μmであるのが好ましい。D50値が0.6から<18μmまでの範囲にある本発明による球体金属粒子が、より好ましい。微細さが増すほど、すなわち、球体金属粒子の粒子サイズが小さくなるほど、レーザーマーキングによって得られる画像または認識性の画像鮮鋭性およびドット精度が、さらに一層向上するであろう。
【0038】
特に微細な等級では、レーザーマーキングに、決定的に高い画像鮮鋭性、ドット精度、およびコントラストを与える。
【0039】
微細な金属粒子を使用する結果として、それらの比表面積が高いために、レーザー光の吸収、およびそれに続く、金属粒子の周囲環境へのエネルギーの伝達が、特に画定され、局部的に狭く限定されて起きるのだと考えられる。したがって、相当する顔料処理されたプラスチック上へのレーザーマーキングが、上述の利点を示す。
【0040】
一つの特に好ましい実施態様においては、D99値が<40μm、かつD90値が<20μmの粒子サイズ分布を有する、本発明による金属粒子を使用する。これらの球体金属粒子の場合、その粒子サイズ分布のD50値は、<11μmであるのが好ましい。D50値が0.65から<11μmまでの範囲にある本発明による球体金属粒子が、特に好ましい。
【0041】
これらの極めて微細な金属粒子を用いることによって、驚くべきことには、極めて高いレーザー書込み速度でも、高いコントラストとドット精度のレーザーマーキングを得ることができることが見出された。レーザーの書込み速度は、120〜約10000mm/s、好ましくは150〜8000mm/s、より好ましくは200〜2000mm/s、極めて好ましくは230〜1000mm/sの範囲である。この場合、それぞれの具体的なケースにおいて達成可能な書込み速度は、多くのパラメーターに依存するが、とりわけレーザー出力およびパルス周波数に依存する。このことから、対象物のレーザーマーキングにおける処理速度の面では、かなりの時間的な利点が得られる。
【0042】
本発明のさらなる好ましい実施態様に従えば、本発明による金属粒子は、金属粒子の全重量を基準にして、15重量%以下の金属酸化物含量を有する。金属粒子の金属酸化物含量が、10重量%以下であればさらに好ましく、5重量%以下であればより好ましい。約0.3%〜6重量%、より好ましくは0.4%〜1.5重量%の金属酸化物含量であれば、極めて好適であることが判った。
【0043】
金属酸化物含量が低いと、金属粒子による照射されたレーザービームからのエネルギーの吸収が素早く起きるので有利である。0.3重量%という金属酸化物含量の下限は、金属上に自然に形成される酸化物層によって決まる。
【0044】
金属粒子の金属酸化物含量には、表面に形成される金属酸化物層が含まれていてよい。例を挙げれば、アルミニウム粒子はその表面上に酸化アルミニウムの薄層を有している。
【0045】
したがって、金属粒子は、好ましくは約80重量%の量、より好ましくは約85重量%の量、さらに好ましくは約90重量%の量、さらにより好ましくは約95重量%の量の金属で構成されている。金属粒子が、98.5%〜99.6重量%の量の金属で構成されているのが好ましい。
【0046】
金属粒子は、好ましくは、アルミニウム、銅、銀、金、亜鉛、スズ、鉄、チタン、バナジウム、マグネシウム、およびそれらの合金からなる群より選択される金属を含むか、またはそれらからなる。合金は、必ずしも、上述の金属から排他的に構成されている必要はない。そこに、上述の金属またはそれらの合金と合金化したさらなる金属、たとえば不純物の形態の金属を存在させることもまた可能である。アルミニウム、銀、銅、および鉄が極めて好適な金属であることが判った。これらの金属は、極めて低い濃度であってさえも、特に良好なレーザーマーク性を与える。たとえば、好適な合金の一つは黄銅である。
【0047】
金属粒子のマイクロスケールの粒子サイズ分布から見て、本発明のレーザーマーキング剤は、極端に高いドット精度を示す。
【0048】
本発明によるレーザーマーキング剤を含むプラスチックの中にレーザービームを照射した後、レーザービームの照射に続けて、マイクロスケールの金属粒子の選択的な加熱、その熱の周辺のプラスチックへの移行、そしてそれに伴う熱的に誘起されたポリマーの分解の結果として、プラスチックマトリックス中の金属粒子を取り囲んでいるポリマーの炭化および/または発泡が起きる。炭化および/または発泡は、使用したポリマーの性質に依存するか、および/またはレーザービームのエネルギー入力に依存して起きる。
【0049】
炭化によって黒化が起こり、発泡によって淡色化が起こるが、それを一種の白化にまで進めることもできる。大部分の場合においては、マークしていないプラスチックに対して明瞭なコントラストができるのが望ましい。
【0050】
しかしながら、さらなる実施態様においては、熱的に誘起されたポリマーの分解によってもたらされたプラスチック中の変化が極めて小さく、そのために人間の目で感知したりまたは顕著に認めたりすることができないようなものであってもよい。しかしながら、この種のマークは、特別な読取り装置によって検出することが可能である。したがって、そのような実質的に目に見えないレーザーマーキングは、たとえばセキュリティーマーキングのため、またはCD上などの用途を見出すことができる。
【0051】
さらなる実施態様としては、照射されたレーザー光を用いて目標とする分解を起こす着色剤を混合することによって、プラスチックに穏やかな変色を起こさせることも考えられる。たとえば、この着色剤が、レーザー光の作用によって分解し、黒化または淡色化に加えてそのプラスチックの着色度を下げてもよいし、または、プラスチックに、レーザー光によっては分解されないさらなる着色剤が添加されている場合には、そのプラスチックが着色剤の固有の色をとってもよい。
【0052】
炭化および/または発泡は、マイクロスケールの金属粒子の周辺で局所的にのみ起きるので、高いドット精度でマーキングを実施することができる。高い画像鮮鋭性は、ラインが、個々のドットの集合としてではなく、人間の目では解像不能な複数の小さなドットから構成されている連続した直線として認識されるという事実を含めた、事実から証明される。
【0053】
したがって、極端に驚くべきことには、球体金属粒子と可視光線の相互作用が、プラスチック材料の灰色化(曇り)を起こす程には強くなくても、照射されたレーザー光との相互作用が、それにも関わらず、金属粒子を取り囲むポリマーマトリックスに所望の炭化および/または発泡を起こさせるのに十分であって、そのため、プラスチック物品に高コントラストの認識性またはマーキングを与えるということが判った。
【0054】
それらがUVからIRまでの範囲の電磁波照射に対して極めて高い吸収能を有しているため、およびそれらが優れた熱伝導性を有しているため、そのマイクロスケールの球体金属粒子は、レーザーマーキング剤および/またはレーザー溶着化剤として特に適している。これらの点におけるそれらの作用において、それらは、従来からの金属酸化物粒子より優れている。
【0055】
球体金属粒子は、粉体の形態でプラスチックに添加することができる。しかしながら、濃縮物またはマスターバッチの形態で、球体金属粒子を添加する方が、より有利である。濃縮物またはマスターバッチにすることで、球体金属粒子のプラスチックの中への組み入れがかなり容易となることが判った。
【0056】
本発明の目的のためには、マスターバッチには、球体金属粒子および少なくとも1種の分散担体が含まれる。
【0057】
マスターバッチにおいては、球体金属粒子の量は、マスターバッチの全重量を基準にして、0.001%〜99.9重量%である。球体金属粒子の量は、それぞれの場合においてマスターバッチの全重量を基準にして、好ましくは0.5%〜95.0重量%、より好ましくは1.0%〜95重量%、さらにより好ましくは5%〜80重量%である。
【0058】
分散担体には、少なくとも1種のプラスチック成分、ワックス、樹脂、添加剤、溶媒および/または可塑剤が含まれていてよい。
【0059】
室温(18〜25℃)で固体であるマスターバッチの場合においては、分散担体は、プラスチック成分、ワックス、樹脂および/または添加剤を含むのが好ましい。
【0060】
この文脈において使用されるプラスチック成分は、その中にそれが組み入れられるプラスチック材料と相溶性があるポリマーであるのが好ましい。一つの好ましい態様の場合においては、本発明のマスターバッチの中で使用されるプラスチック成分は、その中にレーザーマーキング剤が組み入れられるプラスチック材料と同一である。
【0061】
好適なワックスは、好ましくは、ポリオレフィン分解ワックス、またはポリアルキレンワックス、たとえば、プロピレンワックスである。極めて好適であることが判明したポリプロピレンワックスは、Clariant、Switzerland製のLicocene(登録商標)である。
【0062】
本発明のマスターバッチにおいて使用可能な好適な樹脂は、フェノール樹脂、またはケトン系樹脂、たとえば、BASF製のLaropal A81である。
【0063】
レーザーマーキング剤に添加することが可能な添加剤としては、安定剤、界面活性剤、消泡剤、分散剤、腐食抑制剤、たとえば、有機リン酸もしくはホスホン酸、および/または表面活性物質などが挙げられる。
【0064】
添加剤が、たとえば、マスターバッチのプラスチックの中への組み入れの容易性の改良をもたらしてもよい。添加剤が、マスターバッチ中における金属粒子の集塊または沈降を防止する。添加剤を球体金属粒子と共に単に混合するだけでもよいし、あるいは、添加剤を用いて球体金属粒子をコーティングしてもよい。
【0065】
本発明の一つのさらなる好ましい展開においては、マスターバッチが、マスターバッチの全重量を基準にして、好ましくは0.001%〜20重量%の範囲の添加剤含量を含む。さらなる好ましい実施態様においては、添加剤含量は、それぞれの場合においてマスターバッチの全重量を基準にして、0.01%〜10重量%、より好ましくは0.1%〜4重量%である。
【0066】
室温(18〜25℃)で液体であるマスターバッチの場合においては、分散担体は、溶媒および/または可塑剤を含むのが好ましい。使用するのに特に好ましい溶媒はホワイト油である。使用する可塑剤は、慣用されている、フタレート、アジペート、トリメリテート、セバケート、酒石酸誘導体、クエン酸エステル、ポリエステル、ホスフェートまたは脂肪酸エステルである。
【0067】
これらの好適な例は、ビス−2−エチルオクチルフタレート、ビス−2−エチルヘキシルアジペート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテートまたはエポキシ化大豆油である。
【0068】
マスターバッチには、さらなる成分、たとえば、着色顔料および/または染料が含まれていてもよい。
【0069】
マスターバッチ中の球体金属粒子の濃度に関しては、区別される2つの異なった好ましい範囲が存在する。
【0070】
一つのケースにおいては、マスターバッチ中の球体金属粒子の量が、それぞれの場合においてマスターバッチの全重量を基準にして、好ましくは80%〜99重量%、より好ましくは85%〜95重量%である。このケースにおいては、マスターバッチに対して、ポリマーと相溶性のある溶媒、たとえば、ホワイト油および/またはプラスチック成分ならびにさらには分散剤を添加するのが好ましい。
【0071】
このケースにおいては、マスターバッチ中のプラスチック成分の量は、それぞれの場合においてマスターバッチの全重量を基準にして、好ましくは0.5%〜20重量%、より好ましくは1%〜15重量%、特に好ましくは2%〜10重量%の範囲である。
【0072】
もう一つのケースにおいては、マスターバッチの組成は、レーザーマーク可能なプラスチックの組成とすでに極めて類似しているが、ただし、それらの成分がより濃縮された形で存在している。
【0073】
この場合の、マスターバッチ中の球体金属粒子の量は、それぞれの場合においてマスターバッチの全重量を基準にして、好ましくは0.001%〜5重量%、より好ましくは0.5%〜2重量%である。
【0074】
ここでは、そのマスターバッチには、圧倒的に大量のプラスチック成分が含まれている。
【0075】
このケースにおいては、マスターバッチ中のプラスチック成分の量は、それぞれの場合においてマスターバッチの全重量を基準にして、好ましくは50%〜99重量%、より好ましくは60%〜98重量%、極めて好ましくは70%〜95重量%の範囲である。
【0076】
このケースにおいては、マスターバッチは、好ましくは、押出しより前にプラスチックに混合するか、あるいは、押出しプロセスの過程においてプラスチックに計量仕込みするか、のいずれかである。
【0077】
さらに、この種のマスターバッチは、一般的に、添加剤、ならびに場合によってはワックス、着色顔料および/または染料を含む。
【0078】
マスターバッチは、たとえば好適なミキサー、たとえばタンブラーミキサー中で製造する。このケースにおいては、球体金属粉体と、さらには適切であるならば、さらなる成分を、プラスチックペレットまたはプラスチック粉体および/または各種の提供形態のプラスチック出発物質と混ぜ合わせ、次いでその混ぜ合わせた配合物を、たとえば押出す。マスターバッチは、球体粉体金属と、さらには適切であるならば、さらなる成分を、押出しプロセスの過程でプラスチック溶融物の中に直接計量仕込みすることによっても製造することができる。
【0079】
本発明によるレーザーマーキング剤は、本質的に球体金属粒子からなっているので、その混合操作は、激しい条件下で実施してもよい。金属粒子の微小板への変形は、金属効果顔料を使用する場合にあるように、比較的粗い粒子の場合にのみ観察される。次いで、そうして得られた混合物を、たとえば押出機中または射出成形機中で、さらなる加工に直接かけてもよい。所望のプラスチック成形物が得られた後に、レーザービームによってマーキングを実施することができる。
【0080】
金属粒子がマイクロスケールのサイズであることから、単に取扱い面での理由からだけではなく、健康面および安全面での理由からも、レーザーマーキング剤またはそのマスターバッチを、粉立ちの少ない、または、好ましくは、粉立ちのない調製物の形態で存在させるのが好ましい。
【0081】
したがって、さらに好ましい形態においては、少なくともレーザーマーキング剤とプラスチック成分を含むマスターバッチを、圧縮化させた形態とする。この圧縮化させた形態には、顆粒、タブレット、ブリケット、ソーセージ状物、またはペレットが含まれる。そのように圧縮化させた形態の溶媒含量は、それぞれの場合において圧縮化させた形態の全重量を基準にして、0.0%〜15重量%、好ましくは0.001%〜5重量%、および同様に好ましくは0.0%から<0.1重量%まで(食品包装の場合)である。このケースにおける圧縮化させた形態物のサイズは、50μm〜80mm、好ましくは200μm〜50mm、より好ましくは500μm〜25mmの範囲である。本発明によるレーザーマーキング剤、またはマスターバッチの圧縮化させた形態物の一つの極めて好適なサイズは、750μm〜10mmの範囲にある。
【0082】
この場合、圧縮化は、球体金属粒子とプラスチック成分と、場合によっては、さらなるバインダーを混ぜ合わせ、次いで、顆粒化、ペレット化、タブレット化、押出し加工、圧縮などを実施することで行ってもよい。ここで、相当する温度で、プラスチック成分が溶融し、かくして強制された形状を保持しながらも、球体金属顔料と一体になる。
【0083】
さらなる実施態様においては、バインダーを適切な溶媒中に溶解させ、レーザーマーキング剤および、適切であるならば、他の添加剤と混合する。一つの実施態様においては、次いで、撹拌しながら、真空および/または高温によって溶媒を再度除去する。これによって、不規則な形状の三次元顆粒物が得られる。また別な実施態様においては、ペーストをペレット化またはタブレット化させてから、乾燥させる。
【0084】
上述の供給形態によって、金属末の爆発や健康への有害作用の危険なく、安全な取扱いおよびプラスチックへの組み入れが可能となる。
【0085】
本発明のケースにおいて極端に有利なのは、着色剤を添加することによって、プラスチックの曇りや灰色化を容易に覆い隠してしまうことが可能であるという事実である。従来技術においては、時によって生じる褐色や緑色がかった着色は、わずかな曇りや灰色化とは対照的に、それらが着色を構成しているため、覆い隠すことはほとんど不可能である。
【0086】
本発明の一つのさらなる好ましい実施態様においては、金属粒子が少なくとも1層の無機金属酸化物層を備える。
【0087】
その少なくとも1層の無機金属酸化物層は、別途に金属粒子に適用してもよい。金属酸化物層としては、たとえばSiO層、Al層またはTiO層を適用することができる。金属酸化物層を組み合わせて、たとえば、最初にSiO、続けてTiO、あるいは最初にTiO、続けてSiOのように適用することもまた可能である。
【0088】
金属酸化物層としては、SiO層を適用するのが好ましい。そのSiO層は、ゾルゲル法を用いて適用するのが好ましい。
【0089】
SiO層のために使用する出発化合物は、テトラアルコキシシランが好ましい。これらの例としては下記のものが挙げられる;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシランもしくはテトラブトキシシラン、またはそれらの混合物。
【0090】
テトラアルコキシシランは、まず、好ましくは塩基性の環境下で、水を加えて加水分解させ、次いでSiO層を金属粒子の上に析出させる。
【0091】
SiO析出に触媒作用を与えるために、窒素含有塩基、たとえばアンモニア、アルキルアミンまたはジアルキルアミンを添加するのが好ましい。適切な化合物は、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、ピペラジンなどである。
【0092】
さらなる好ましい実施態様においては、有機化学的表面変性物を金属粒子に対して適用しておくことも可能である。金属粒子と有機化学的表面変性物の間に、金属酸化物層、たとえばSiO層を配置してもよい。
【0093】
一つのさらなる変法においては、その有機化学的表面変性物が、金属粒子を包み込む有機化学的ポリマーマトリックスであってもよい。そのようなマトリックスは、金属粒子に対して、モノマーから目的とする重合を行うことによって適用するのが好ましい。
【0094】
その上に本発明が基礎を置く目的は、さらに、特に請求項1〜8に記載のレーザーマーキング剤を含む、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックによって達成される。さらに、そのレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックには、請求項9〜12のいずれかに記載の本発明のマスターバッチが含まれていてもよい。
【0095】
そのレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックは、熱可塑性、熱硬化性またはエラストマー性プラスチックを含んでいるのが好ましい。ここで特に好ましいのは熱可塑性プラスチックである。
【0096】
好適な熱可塑性ポリマーとしては、当業者に公知のあらゆる熱可塑性プラスチックが挙げられる。好適な熱可塑性ポリマーは、たとえば、Kunststoff−Taschenbuch、Saechtling(Ed.)、25th edition、Hanser−Verlag、Munich、1992、特に第4章およびそこに引用された参考文献、ならびに、Kunststoff−Handbuch、G.Becker and D.Braun(Eds.)、volumes 1 to 11、Hanser−Verlag、Munich、1966〜1996に記載されている。
【0097】
好適な熱可塑性プラスチックの例としては以下のものを挙げることができる:ポリオキシアルキレン、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT)もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、たとえばポリエチレンもしくはポリプロピレン(PP)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ビニル芳香族(コ)ポリマー、たとえばポリスチレン、耐衝撃変性ポリスチレン、たとえばHI−PS、またはASA、ABSもしくはAESポリマー、ポリアリーレンエーテル、たとえばポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリラクチド、ハロゲン含有ポリマー、イミド基を含むポリマー、セルロースエステル、シリコーンポリマー、および熱可塑性エラストマー。異なった熱可塑性プラスチックの混合物もまた、プラスチック成形のための材料として使用することができる。これらの混合物は、単一相あるいは多相のポリマーブレンド物であってよい。
【0098】
書込みをしたり、相互に結合させたりするプラスチックは、同種または異種の熱可塑性プラスチックおよび/または熱可塑性ブレンド物からなっていてよい。
【0099】
ポリオキシアルキレンホモポリマーまたはコポリマー、特に(コ)ポリオキシメチレン(POM)、ならびにそれらの調製プロセスは、当業者には自体公知であり、文献にも記載されている。好適な材料は、商標名Ultraform(登録商標)(BASF AG、Germany)として市販されている。これらのポリマーは、極めて一般的には、その主ポリマー鎖中に、少なくとも50モル%の−CHO−繰返し単位を含んでいる。そのホモポリマーは、通常、好ましくは適切な触媒の存在下で、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンを重合させることによって調製される。ポリオキシメチレンコポリマーおよびポリオキシメチレンターポリマーが好ましい。好適なポリオキシメチレン(コ)ポリマーは、少なくとも150℃の融点と、5000〜200000、好ましくは7000〜150000g/molの範囲の分子量(重量平均)Mとを有する。鎖の末端にC−C結合を有する、末端基が安定化されたポリオキシメチレンポリマーが特に好ましい。
【0100】
好適なポリカーボネートは、自体公知であって、たとえば、DE−B−1 300 266に従って界面重縮合によるか、あるいはDE−A−14 95 730に従ってビフェニルカーボネートとビスフェノールの反応によって得ることができる。好ましいビスフェノールは、一般にビスフェノールAと呼ばれている、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。これらのポリカーボネートの相対粘度は、一般的には1.1〜1.5、特には1.28〜1.4の範囲である(ジクロロメタン中0.5重量強度%溶液において25℃で測定)。好適なポリカーボネートが、商標名Lexan(登録商標)(GE Plastics、B.V.、The Netherlands)として市販されている。
【0101】
好適なポリエステルも同様に自体公知であって、文献に記載されている。それらは、それらの主鎖の中に、芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族環を含んでいる。その芳香族環は、たとえば、塩素および臭素などのハロゲンによるか、またはC〜Cアルキル基、たとえばメチル、エチル、イソプロピルおよびn−プロピル、ならびにn−ブチル、イソブチルおよび/またはtert−ブチル基によって置換されていてもよい。ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、そのエステルまたはその他のエステル形成性誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物を自体公知の方法で反応させることによって調製することができる。好ましいジカルボン酸としては、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸またはそれらの混合物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の10モル%までを、脂肪族または脂環族ジカルボン酸、たとえばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸と置き換えてもよい。脂肪族ジヒドロキシ化合物の中でも好ましいのは、2〜6個の炭素原子を有するジオール、特に1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、およびネオペンチルグリコールまたはそれらの混合物である。特に好ましいポリエステルとしては、2〜6個のC原子を有するアルカンジオールから誘導されたポリアルキレンテレフタレートが挙げられる。これらの中でも特に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)である。これらの製品は、たとえば、商標名Rynite(登録商標)(PET;DuPont、USA)およびUltradur(登録商標)(PBT;BASF AG)として市販されている。それらのポリエステルの粘度数は、一般的には60〜200mL/gの範囲である(フェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(重量比1:1)中0.5重量強度%溶液において25℃で測定)。
【0102】
極めて一般的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ならびにさらにはエチレンまたはプロピレンを基とするコポリマー、ここでより高分子量のα−オレフィンも適しているが、好適なポリオレフィンを代表している。それに相当する製品は、たとえば、商品名Lupolen(登録商標)およびNovolen(登録商標)として市販されている。「ポリオレフィン」という用語には、さらに、エチレン−プロピレンエラストマーおよびエチレン−プロピレンターポリマーも含まれていると受け取られるべきである。
【0103】
ポリ(メタ)アクリレートの中では、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ならびにメタクリル酸メチルと最高40重量%までのさらなる共重合性モノマー、たとえばアクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシルを基とするコポリマーを挙げることができるが、そのようなポリマーは、たとえば、名称Lucryl(登録商標)(BASF AG)またはPlexiglas(登録商標)(Roehm GmbH、Germany)として得ることができる。本発明の目的のためには、これらにはさらに、耐衝撃変性ポリ(メタ)アクリレート、ならびに、ポリ(メタ)アクリレートと、ポリアクリレートゴムを用いて耐衝撃変性としたSANポリマー(その一例は、市販製品のBASF AG製のTerlux(登録商標)である)の混合物が含まれる。
【0104】
好適なポリアミドは、各種の脂肪族、部分的に結晶質または部分的に芳香族または非晶質の構成を有するポリアミドならびにそれらのブレンド物であるが、それには、ポリエーテルアミド、たとえばポリエーテル−ブロック−アミドも含まれる。ポリアミドは、公知のすべてのポリアミドを意味している。好適なポリアミドは、一般的に、90〜350、好ましくは110〜240mL/gの粘度数を有している(ISO 307に従って96重量強度%硫酸中0.5重量強度%溶液において25℃で測定)。少なくとも5000g/molの分子量(重量平均)を有する各種の半晶質または非晶質の樹脂、たとえば米国特許2 071 250、2 071 251、2 130 523、2 130 948、2 241 322、2 312 966、2 512 606、および3 393 210に記載されているようなものが好ましい。それらの例は、7〜13の員環数を有するラクタムから誘導されたポリアミド、たとえばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタム、およびポリラウリルラクタム、さらにはジカルボン酸をジアミンと反応させることにより得られるポリアミドである。
【0105】
使用することが可能なジカルボン酸は、6〜12個、より好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸である。ここでは、酸として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸(すなわち、デカンジカルボン酸)および/またはイソフタル酸を挙げることができる。
【0106】
特に好適なジアミンは、6〜12個、より好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、およびさらにはm−キシリレンジアミン、ジ(4−アミノフェニル)メタン、ジ(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、または2,2−ジ(4−アミノシクロヘキシル)プロパンである。
【0107】
好適なポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、たとえば、市販製品のUltramid(登録商標)A(BASF AG)、およびポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、たとえば、市販製品のNylon(登録商標)610(DuPont)、ポリカプロラクタム(PA6)、たとえば、市販製品のUltramid(登録商標)B(BASF AG)、ならびにコポリアミド6/66、特にカプロラクタム単位の割合が5%〜95重量%のもの、たとえば、市販製品のUltramid(登録商標)C(BASF AG)などである。PA6、PA66、およびコポリアミド6/66が特に好ましい。
【0108】
さらに、たとえば1,4−ジアミノブタンをアジピン酸と高温で縮合させることで得ることが可能なポリアミド(ポリアミド−4,6)も挙げられる。この構造のポリアミドの調製プロセスについては、たとえば、EP−A 38 094、EPA 38 582、およびEP−A 39 524に記載がある。さらなる例としては、前述のモノマーの2種以上を共重合させて得られるポリアミド、または2種以上のポリアミドの混合物が挙げられるが、それらの混合比は任意である。
【0109】
さらに、この種の部分的に芳香族のコポリアミド、たとえば、重量で0.5%未満、好ましくは0.3%未満のトリアミン含量を有するPA6/6TおよびPA66/6T(EP−A 299 444参照)が特に有利であることが見出された。低トリアミン含量の部分的に芳香族のコポリアミドの調製は、EP−A 129 195および129 196に記載されたプロセスに従って実施すればよい。
【0110】
好適なさらなる熱可塑性物質は、ビニル芳香族(コ)ポリマーである。自体公知であり、市場で入手可能なこれらのポリマーの分子量は、一般的には、1500〜2000000の範囲、好ましくは70000〜1000000g/molの範囲にある。
【0111】
単なる代表例として、ここでは、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、およびp−メチルスチレンのビニル芳香族(コ)ポリマーを挙げることができるが、その構成の中に、重量で好ましくは20%以下、特に8%以下の少ない割合で、コモノマー、たとえば(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸エステルが含まれていてもよい。特に好ましいビニル芳香族(コ)モノマーは、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル−コポリマー(SAN)、および耐衝撃変性ポリスチレン(HIPS=耐衝撃性ポリスチレン)である。これらのポリマーの混合物もまた同様に使用できることは理解されるであろう。EP−A−302 485に記載されているプロセスによって調製を実施するのが好ましい。
【0112】
さらに、ASA、ABS、およびAESポリマー(ASA=アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル、ABS=アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、AES=アクリロニトリル−EPDMゴム−スチレン)が特に好ましい。これらの耐衝撃性のビニル芳香族ポリマーには、少なくとも1種のゴム弾性グラフトポリマーおよび熱可塑性ポリマー(マトリックスポリマー)が含まれる。一般的に使用されるマトリックス材料は、スチレン/アクリロニトリル(SAN)ポリマーである。それらのゴムとして以下のものを含むグラフトポリマーを使用するのが好ましい:
−たとえばブタジエンまたはイソプレンのようなジエンを基とするジエンゴム(ABS);
−アクリル酸のアルキルエステル、たとえば、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルを基とするアクリル酸アルキルゴム(ASA);
−エチレン、プロピレンおよびジエンを基とするEPDMゴム(AES);
または、これらのゴムおよび/またはゴムモノマーの混合物。
【0113】
好適なABSポリマーの調製法については、たとえばDE−A 19728629に詳しく記載されている。ASAポリマーの調製法については、たとえばEP−A 99 532を参考とすることができる。AESポリマーの調製法についての詳細は、たとえばUS 3,055,859またはUS 4,224,419に開示がある。この段落に引用された特許明細書を、これによって明示的に参照する。
【0114】
ポリアリーレンエーテルは、好ましくは本質的にポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンエーテルスルフィド、ポリアリーレンエーテルスルホン、またはポリアリーレンエーテルケトンである。それらのアリーレン基は、類似していても異なっていてもよく、相互に独立して、6〜18個のC原子を有する芳香族ラジカルを意味していてよい。好適なアリーレンラジカルの例は、フェニレン、ビスフェニレン、ターフェニレン、1,5−ナフチレン、1,6−ナフチレン、1,5−アントリレン、9,10−アントリレンまたは2,6−アントリレンである。これらの中でも、1,4−フェニレンおよび4,4’−ビフェニレンが好ましい。これらの芳香族ラジカルは置換されていないのが好ましい。しかしながら、それらが1個または複数の置換基を担持していてもよい。好適なポリフェニレンエーテルは、Noryl(登録商標)の名称で市販されている(GE Plastics B.V.、The Netherlands)。
【0115】
一般的には、ポリアリーレンエーテルは、10000〜60000g/molの範囲の平均分子量M(数平均)と30〜150mL/gの粘度数を有している。ポリアリーレンエーテルの溶解性に依存して、その粘度数は、1重量強度%のN−メチルピロリドン溶液において、フェノールおよびo−ジクロロベンゼンの混合物中、または96%強度の硫酸中のいずれかで、それぞれ20℃または25℃で測定される。
【0116】
ポリアリーレンエーテルは自体公知であるか、または自体公知の方法により調製することができる。
【0117】
ポリアリーレンエーテルスルホンまたはポリアリーレンエーテルケトンを合成するための好適なプロセス条件は、たとえばEP−A 113 112およびEP−A 135 130に記載されている。ポリアリーレンエーテルスルホンは、一般的に、少なくとも320℃の融点を有し、ポリアリーレンエーテルケトンは、少なくとも370℃の融点を有する。好適なポリフェニレンエーテルスルホンは、たとえばUltrason(登録商標)Eの名称で市販されており(BASF AG)、好適なポリフェニレンエーテルケトンは、Victrex(登録商標)の名称で市販されている。
【0118】
さらに、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、およびポリウレアも、プラスチック成形物を製造するのに好適な材料である。軟質、半硬質または硬質の、熱可塑性または架橋ポリイソシアネート重付加生成物、たとえば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレートおよび/またはポリウレア、特にポリウレタンは一般的に知られており、Elastolan(登録商標)(Elastogran GmbH、Germany)などの名称で市販されている。それらの調製法については種々の記述が存在するが、典型的には、イソシアネートをイソシアネート反応性化合物と公知の条件で反応させることにより実施される。その反応は、好ましくは触媒および/または助剤の存在下で実施される。その生成物が、発泡ポリイソシアネート重付加生成物である場合には、それらは、慣用される発泡剤の存在下で製造される。
【0119】
好適なイソシアネートとしては、自体公知の芳香族、アリール脂肪族、脂肪族および/または脂環族有機イソシアネートが挙げられるが、好ましくはジイソシアネートである。
【0120】
使用することが可能なイソシアネート反応性化合物としては、たとえば、60〜10000g/molの分子量と、イソシアネートに対して1〜8、好ましくは2〜6の官能性(熱可塑性ポリウレタン、TPUの場合には約2の官能性)を有する一般的に知られている化合物が挙げられるが、それらの例としては、500〜10000g/molの分子量を有するポリオール、たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、および/または、ジオール、トリオールおよび/または500g/mol未満の分子量を有するポリオールが挙げられる。
【0121】
ポリラクチド、別の言い方をすれば乳酸のポリマーも自体公知であるか、または自体公知であるプロセスによって調製することができる。ポリラクチドに加えて、乳酸およびさらなるモノマーを基とするコポリマーまたはブロックコポリマーを使用することもまた可能である。通常は直鎖状のポリラクチドが使用される。しかしながら、分岐状の乳酸ポリマーも同様に使用することができる。分岐化剤として役立つのは、たとえば、多官能性の酸またはアルコールである。
【0122】
好適なハロゲン含有ポリマーとしては、特に塩化ビニルのポリマー、とりわけポリ塩化ビニル(PVC)、たとえば非可塑化PVCおよび可塑化PVC、ならびに塩化ビニルのコポリマー、たとえばPVC−U成形化合物が挙げられる。
【0123】
適しているのはさらに、フッ素含有ポリマー、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルのコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、およびエチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)である。
【0124】
イミド基を含むポリマーとしては、特にポリイミド、ポリエーテルイミド、およびポリアミドイミドが挙げられる。
【0125】
好適なセルロースエステルは、たとえばセルロースアセテート、セルロースアセトブチレート、およびセルロースプロピオネートである。
【0126】
熱可塑性プラスチックとして加えてさらに好適なものとしては、シリコーンポリマーがある。シリコーンゴムが特に好適である。これらは、通常、架橋反応をすることが可能な基を有するポリオルガノシロキサンである。この種のポリマーは、たとえば、Roempp Chemie Lexikon、CD−ROM version 1.0、Thieme Verlag Stuttgart 1995に記載されている。
【0127】
最後に、熱可塑性エラストマー(TPE)の種類の化合物を採用することもまた可能である。TPEは、熱可塑性プラスチックと同様の加工が可能であるが、ゴム弾性を有している。TPEブロックポリマー、TPEグラフトポリマー、および2種以上のモノマー単位を含むセグメント化TPEコポリマーが好適である。特に好適なTPEは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPE−UまたはTPU)、スチレンオリゴブロックコポリマー(TPE−S)、たとえばSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン−オキシブロックコポリマー)およびSEES(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、SBSを水素化することにより得られる)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE−O)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE−E)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPE−A)、ならびに、特に熱可塑性加硫物(TPE−V)である。当業者ならば、TPEについての詳細は、G.Holden et al.、Thermoplastic Elastomers、2nd edition、Hanser Verlag、Munich 1996に見出すであろう。
【0128】
本発明のレーザーマーキング剤は、上述の熱可塑性プラスチックの中に、うまく組み入れることができる。そうして得られるプラスチック/レーザーマーキング剤混合物からは、次いで加熱成形することによって、所望の成形物品、たとえば、ビン、コップ、トレイなどを製造することが可能である。
【0129】
本発明のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックは、上述の球体金属粒子をプラスチック材料の中に導入するプロセスによって製造することができる。導入される金属粒子の量は、プラスチックおよび/または目的とする用途の関数として設定すればよい。プラスチック材料の中への粒子の導入は、慣用されるミキサー中か、そうでなければ、従来の方法により押出機中で実施すればよい。プラスチック材料の中に球体金属粒子を導入する、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックを製造する方法も、また同様に、本発明によって提供される。
【0130】
一つの好ましい実施態様においては、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック中における金属粒子の割合は、0.0005%〜0.8重量%、好ましくは0.001%〜0.5重量%であるが、それらの量は、いずれの場合も、プラスチックの全重量を基準にしたものである。
【0131】
驚くべきことには、本発明のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックの有利な性質は、レーザーマーキング剤が極めて低いレベルであっても得ることが可能である。レーザーマーキング剤が0.0005重量%未満になると、本発明による利点はもはや認められないか、または極めて限定された形となる。
【0132】
さらに、プラスチック中における金属粒子の割合は、いずれの場合もレーザーマーク可能なプラスチックの全重量を基準にして、好ましくは0.005%〜0.5重量%、さらにより好ましくは0.01%〜0.2重量%である。
【0133】
使用する金属に関しては、低濃度のところでは、特にアルミニウム、銀、銅または鉄からなる金属粒子が最善の結果を与えることが判明した。したがって、さらなる好ましい実施態様は、それらの金属またはそれらの金属の合金を、全プラスチックを基準にして、好ましくは0.0005%〜0.015重量%の濃度で含む、球体金属粒子を含むプラスチックからなる。
【0134】
本発明によって、レーザービームを用いて高コントラストのマークまたは書込みを与えることが可能なプラスチックを製造することができるようになる。
【0135】
プラスチックの全重量を基準にして、0.2重量%を超える量になると、その材料が不透明となる可能性がある。0.05重量%〜0.2重量%の間の範囲の量では、まず曇りが起きる可能性があり、濃度の上昇と共にそれが強くなり、材料に灰色がかった着色を与える可能性がある。0.8重量%を超えると、一般的にはそのプラスチックがあまりにも不透明となる。さらに、レーザーマーク性の品質におけるさらなる利点が認められなくなる。したがって、それ以上のレーザーマーキング剤を使用しても、レーザーマーク可能なプラスチックの製造コストが無駄に上昇するだけとなるであろう。
【0136】
個々の場合において、マークを与える材料の層の厚みに応じて、プラスチック中の球体金属粒子の量を調節してもよく、この文脈においては、プラスチックの層の厚みが下がるにつれて球体金属粒子の量を増やすのが好ましい。
【0137】
したがって、フィルムの層の厚みは、通常20μm〜約5mmの範囲である。射出成形したプラスチックの厚みは、最大で約6cmにもなりうる。
【0138】
フィルムの場合においては、プラスチック成形物の場合に比較して、球体金属粒子の量を増やすことが可能である。プラスチック成形物の場合においては、たとえば、球体金属粒子を0.005重量%の量で使用することが可能であるが、それに対して、フィルムの場合においては、0.02重量%の量の球体金属粒子が適している場合もある。当業者であれば、実験に基づいて、球体金属粒子の適切な量を容易に決めることができる。
【0139】
実施例でも見られるように、0.005重量%の濃度の金属粒子を用いた場合でさえも、プラスチックの高コントラストのマーキングが可能である。これらの重量%での濃度の数字は、いずれの場合も、その材料と金属粒子の合計重量を基準としたものである。
【0140】
層の厚みが20μm〜500μmの範囲であるプラスチックの場合には、金属粒子の割合は、いずれの場合も、プラスチックと金属粒子の合計重量を基準として、好ましくは0.005%〜0.2重量%、より好ましくは0.02〜0.05の範囲にある。
【0141】
層の厚みが500μm〜2mmの範囲であるプラスチックの場合には、金属粒子の割合は、いずれの場合も、プラスチックと金属粒子の合計重量を基準として、好ましくは0.001%〜0.1重量%、より好ましくは0.005〜0.05の範囲である。
【0142】
極めて驚くべきことには、実施例でも見られるように、0.005%から最大で0.05重量%までの範囲の量で金属粒子を含むプラスチックは、完全に透明であると同時に、レーザービームを用いて、高コントラストを有する顕著なマーキングが可能であることが見出された。0.01%〜0.04重量%の濃度範囲の金属粒子を使用する操作が好ましい。
【0143】
使用されるレーザーマーキング剤の量が少ないことで、複数の利点を一度に得ることができる。したがって、本発明のレーザーマーキング剤を添加しても、プラスチック材料の材料特性は影響を受けないか、または実質的に影響を受けない。
【0144】
したがって、透明または濁りのないプラスチック材料の中で、0.001%〜0.05重量%の範囲で金属粒子を使用した場合には、本発明のレーザーマーキング剤をドープさせた材料の透明性および/または色特性においては、劣化がまったく無いか、または実質的に無く、その上、驚くべきことには、レーザービームを用いて、高コントラストのマーキングまたは認識性を与えることが可能となる。
【0145】
さらに、本発明によって、プラスチック材料を極端に安価に提供することが可能となるが、その理由は、レーザーマーキング剤が安価な材料から製造され、マークを与える材料に少量しか添加する必要がないからである。このことが、本発明においてキーとなる経済的な利点である。
【0146】
ある種の用途においては、本発明のプラスチックが実質的に真珠光沢顔料を含んでいない場合に有利となる。レーザーマーク可能なプラスチックの中に真珠光沢顔料があることの不利な点については、すでに先に述べたが、真珠光沢顔料は、プラスチックにおいてほとんどの場合に存在する、望ましくない流れ筋を強調して、色の変化、すなわち真珠光沢効果をもたらす。いくつかのケースでは、装飾的な理由からこれが望ましいが、多くの場合においては、レーザーマーキング剤は、プラスチックの色彩的な性質に影響を与えることは意図としていない、すなわち別の言い方をすれば、レーザーマーキング剤は透明でなければならない。プラスチック自体も同様に、無色透明であるか、そうでなければ、単色の着色(たとえば、青、赤、黄など)が与えられているべきである。これらの場合においては、真珠光沢による装飾的な着色は望まれない。
【0147】
したがって、本発明のプラスチックでは、真珠光沢顔料を、せいぜい、プラスチックの効果においてそれがなお透明であり、かつ流れ筋を生じさせない量で含むようにするべきである。したがって、本発明のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックには、真珠光沢顔料を、全プラスチックを基準にして、0%〜0.1重量%、好ましくは0.0%〜0.05重量%の濃度で含むことができる。それより下回ると真珠光沢顔料の有害な性質がもはや観察されない正確な濃度は、言うまでもないことであるが、さらなるパラメーター、たとえば、特にプラスチックの層の厚みに依存するが、それは当業者ならば容易に決めることができる。
【0148】
この種の本発明のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックが真珠光沢顔料を含んでいないのが、特に好ましい。
【0149】
本発明のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックは、慣用される補助剤をさらに含んでいてもよい。これらの補助剤は、たとえば、以下のものからなる群より選択することができる:充填剤、添加剤、可塑剤、潤滑剤もしくは離型剤、耐衝撃性向上剤、着色顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、抗酸化剤、抗菌活性生物学的安定剤、化学発泡剤もしくは有機架橋剤、さらにはその他の補助剤またはそれらの混合物。
【0150】
使用可能な充填剤の例としては、以下のものが挙げられる:CaCO(たとえば、Omya、Cologne;Ulmer Fuellstoff Vertrieb)、ドロマイト(たとえば、Ziegler、Wunsiedel;Blancs Mineraux de Paris)、CaSO(US Gypsum、Chicago)、シリケート(Degussa、Frankfurt;Quarzwerke、Frechen)、ガラスビーズ(Potter、GB;Owens Corning、Wiesbaden)、タルク(Norwegian Talc;Nordbayrische Farben− und Mineralwerke、Hof)、カオリン(AKW、Hirschau;Luh、Walluf)、マイカ(Norwegian Talc;Dorfner、Hirschau)、長石(Omya、Paris)、シリケートビーズ(Langer、Ritterhude)、シリカ(シリケートを参照)、BaSO(Sachtleben、Duisburg、Scheruhn、Hof)、AlまたはAl(OH)(いずれも:Martinswerk、Bergheim)。
【0151】
添加剤には、たとえば、分散添加剤、抗酸化剤、金属不活性化剤および/または光安定剤およびUV安定剤が含まれていてもよい。
【0152】
好適な抗酸化剤(熱安定剤)は、たとえば、立体障害フェノール、ヒドロキノン、アリールアミン、ホスファイト、この群の各種の置換されたもの、ならびにそれらの混合物などである。それらは、市場で入手することが可能であり、たとえば、Topanol(登録商標)(ICI、London)、Irgafos(登録商標)、Irganox(登録商標)(いずれもCiba−Geigy、Basel)、Hostanox(登録商標)(Clariant、Frankfurt)またはNaugard(登録商標)(Uniroyal、GB)などがある。
【0153】
使用可能な金属不活性化剤の例としては以下のものがある:カルボキサミド、ヒドラゾン、ヒドラジン、メラミン誘導体、ベンゾトリアゾール、ホスホン酸エステルおよび/またはチアゾール誘導体。
例:Hostanox(Clariant、Frankfurt)、Irganox(Ciba Geigy、Basel)、Naugard(Uniroyal、GB)。
【0154】
使用可能な光安定剤およびUV安定剤の例としては以下のものがある:ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、有機Ni化合物、サリチル酸エステル、シアノケイ皮酸エステル、ベンジリデンマロネート、安息香酸エステル、オキサルアニリドおよび/または立体障害アミン、これらはモノマー性であってもポリマー性であってもよい。
例:Chimasorb、Tinuvin(いずれもCiba−Geigy、Basel)、Cyasorb(American Cyanamid)、Hostavin(Clariant、Frankfurt)、Uvinul(BASF、Ludwigshafen)。
【0155】
使用可能な可塑剤の例としては以下のものがある:フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、グルタル酸エステル、セバシン酸エステル、脂肪酸エステル、好ましくはペンタエリスリトール、グリコール、グリセロールなどとのオレエート、ステアレート、リジノレート、ラウレートおよび/またはオクトエート、エポキシ化脂肪酸エステル、クエン酸エステル、ポリエステル、安息香酸エステル、トリメリット酸エステル、スルホン酸エステル、スルファミド、アニリド、付加ポリマー、重縮合物、ポリエチレングリコール、アビエチン酸エステルおよび/または誘導体、酢酸、プロピオン酸、酪酸、エチル酪酸および/またはエチルヘキサン酸のエステル。
例:Carbowax(DOW、Belgium)、Cetamoll(BASF、Ludwigshafen)、Edenol(Henkel、Dusseldorf)、Elvaloy(DuPont de Nemours、USA)、Lankroflex(Lankro、GB)、Palamoll、Palatinol(いずれもBASF、Ludwigshafen)。
【0156】
使用可能な潤滑剤の例としては以下のものがある:脂肪族アルコール、ジカルボン酸エステル、グリセロールおよびその他の短鎖アルコールの脂肪酸、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸の金属塩、オリゴマー性脂肪酸エステル、脂肪族アルコール−脂肪酸エステル、ワックス酸およびそのエステルおよびセッケン、極性ポリエチレンワックスおよび誘導体、無極性ポリオレフィンワックス、天然および合成パラフィン、シリコーンオイルおよび/またはフルオロポリマー。
例:Licowax、Ceridust、Licolub、Licomont(すべてClariant、Frankfurt)、Irgawax(Ciba−Geigy、Basel)、Loxiol(Henkel、Dusseldorf)、Baerolub(Baerlocher、Munich)。
【0157】
使用可能な耐衝撃性向上剤の例としては以下のものがある:エラストマー(EPMおよびEPDM)、ポリアクリレート、ポリブタジエン、織物ガラス繊維、アラミド繊維および/または炭素繊維。
【0158】
着色剤は、無機顔料および/または有機顔料および/または有機染料であってよい。しかしながら、実質的には効果顔料は使用しない。
【0159】
使用可能な難燃剤の例としては以下のものがある:適切な難燃剤は、たとえば、当業者には公知のハロゲン含有化合物(単独または三酸化アンチモンとの併用)、またはリン化合物、水酸化マグネシウム、赤リン、およびその他の一般的な化合物またはそれらの混合物である。公知の難燃剤としては、たとえば、DE−A 196 326 75に開示されているリン化合物、またはEncyclopedia of Chemical Technology、R.Kirk and D.Othemr(Eds.)、vol.10、3rd edn.、Wiley、New York、1980、pages 340 to 420に開示されているもの、たとえばホスフェート、たとえばトリアリールホスフェート、たとえばトリスクレジルホスフェート、ホスファイト、たとえばトリアリールホスファイト、またはホスホナイトが挙げられる。使用されるホスホナイトは、一般的には、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フェニルホスホナイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)4,4’−ビフェニリレンジスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニリレンジスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジメチルフェニル)1,4−フェニリレンジスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)1,6−ヘキシリレンジスホスホナイト、および/またはテトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)4,4’−ビフェニリレンジスホスホナイト、テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)4,4’−ビフェニリレン−ジスホスホナイトである。
例:Fire Fighters(Great Lakes Chemicals)、Fyrol(Dead Sea Bromine、Israel)、Martinal(Martinswerk、Bergheim)、Reofos(Ciba−Geigy、Basel)、Phosflex(Akzo Chemicals、USA)。
【0160】
使用可能な帯電防止剤の例としては以下のものがある:エトキシル化脂肪族アミン、脂肪族スルホネート、四級アンモニウム化合物および/または極性脂肪酸エステル。
例:Baerostat(Baerlocher、Munich)、Dehydat(Henkel、Dusseldorf)、Hostastat(Clariant、Frankfurt)、Irgastat(Ciba−Geigy、Basel)。
【0161】
使用可能な蛍光増白剤の例としては以下のものがある:ビスベンゾトリアゾール、フェニルクマリン誘導体、ビススチリルビフェニルおよび/またはピレントリアジン。
例:Hostalux(Clariant、Frankfurt)、Uvitex(Ciba−Geigy、Basel)。
【0162】
使用可能な抗菌活性生物学的安定剤の例としては以下のものが挙げられる:10,10’−オキシ−ビスフェノキシアルシン、N−(トリハロメチルチオ)フタルイミド、ジフェニルアンチモン2−エチルヘキサノエート、Cu−8−ヒドロキシキノリン、トリブチルスズオキシドおよび/またはその誘導体。
例:Cunilate(Ventron、B)、Preventol(Bayer、Leverkusen)、Fungitrol(Tenneco、USA)。
【0163】
使用可能な化学発泡剤の例としては以下のものがある:アゾジカーボンアミドおよび誘導体、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド、テトラゾール、ベンズオキサジンおよび/またはクエン酸+NaHCO
例:Hydrocerol 8(Boehringer、Ingelheim)、Porofor(Bayer、Leverkusen)、Genitron(Schering、GB)。
【0164】
使用可能な有機架橋剤の例としては以下のものがある:ジアラルキルペルオキシド、アルキルアラルキルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジアシルペルオキシドおよび/またはペルオキシケタール。
例:Interox(Peroxidchemie、Hoellriegelskreuth)、Luperco、Luperox(Luperox、Guenzburg)。
【0165】
本発明の一つの好適な態様においては、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックが、ポリマーフィルムまたはラベル、好ましくは粘着ラベルである。
【0166】
食品を含む製品は、通常、透明なポリマーフィルムを用いて包装される。
【0167】
したがって、本発明を使用して製造したポリマーフィルムは、非接触で、かつ変更不能な書込みまたは認識性の付与を可能とする。ポリマーフィルムへの書込みまたは認識性の付与は、製品を包装する前および後のいずれでも実施することができる。
【0168】
本発明の一つの態様においては、プラスチックが、ラベル、好ましくは粘着ラベルの形態をとる。ポリマーフィルムを使用せずに、その代わりに粘着ラベルのみを使用して提供される製品の場合においては、粘着ラベルの形態にあるプラスチックの構成が、同様に、レーザービームを使用してそのラベルへの書込みおよび/または認識性の付与の機会を与える。
【0169】
本発明のさらなる実施態様においては、プラスチックが、三次元プラスチック体の形態、好ましくはプラスチック容器の形態にある。プラスチック容器の上に、たとえば、食品、化学品、医薬品などの最大保存期間を示すことが可能である。
【0170】
三次元プラスチック体が、たとえばCD、DVD、CD−ROMなどのようなデータ媒体の形態をとってもよい。耐摩耗性で変更不能な認識性を基にすれば、本物を偽物から区別することが可能である。三次元プラスチック体が、たとえば、その中に医薬品が錠剤またはカプセルの形態で通常販売される、ブリスターストリップであってもよい。たとえば、レーザービームによるバーコードを有する、ラベルまたはプラスチック、特にプラスチック容器を提供することができる。
【0171】
本発明によるさらなる実施態様においては、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックが、それ自体はレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能である必要がない物品の構成要素であってもよい。
【0172】
標準的な市販のレーザーを用いた書込みは、サンプル体をレーザーの光路の中に導くことによって実施される。得られるマーキングは、照射時間(またはパルスレーザーの場合であればパルス数)、およびレーザーの照射出力、さらにはプラスチック系によって決まってくる。使用するレーザーの出力は、個々の用途に依存するが、これは当業者ならばそれぞれ個別のケースで容易に決めることができる。
【0173】
基本的には、慣用されるすべてのレーザー、例を挙げれば、気体レーザーおよび固体レーザーが適している。気体レーザーは、たとえば以下のものが挙げられる(かっこの中に示しているのは、放出される放射線の典型的な波長である):COレーザー(10.6μm)、アルゴンガスレーザー(488nmおよび514.5nm)、ヘリウム−ネオンガスレーザー(543nm、632.8nm、1150nm)、クリプトンガスレーザー(330〜360nm、420〜800nm)、水素ガスレーザー(2600〜3000nm)、および窒素ガスレーザー(337nm)。
【0174】
固体レーザーは、たとえば以下のものが挙げられる(かっこの中に示しているのは、放出される放射線の典型的な波長である):Nd:YAGレーザー(Nd3+Al12)(1064nm)、高性能ダイオードレーザー(800〜1000nm)、ルビーレーザー(694nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、XeFエキシマレーザー(351nm)、ならびに532nm(2倍周波数)、355nm(3倍周波数)または266nm(4倍周波数)の波長を有する、周波数多重化Nd:YAGレーザー。
【0175】
レーザー書込みのために好ましいレーザーは、Nd:YAGレーザー(Nd3+Al12)(1064nm)である。レーザー溶着のために好ましいのは、Nd:YAGレーザー(Nd3+Al12)(1064nm)および高性能ダイオードレーザー(800〜1000nm)であるが、これらはいずれも短波長の赤外線を放出する。
【0176】
使用するレーザーは典型的には、1〜400、好ましくは5〜100、より好ましくは10〜50ワットの出力で運転する。
【0177】
使用するレーザーのエネルギー密度は、一般的には0.3mJ/cm〜50J/cm、好ましくは0.3mJ/cm〜10J/cmの範囲にある。パルスレーザーを使用する場合には、そのパルス周波数は、一般的には、1〜30kHzの範囲である。それに相応する、本発明の文脈において使用することが可能なレーザーは、市販されている。
【0178】
本発明のレーザーマーキング剤の一つの極めて優れた利点は、レーザービームの波長を、球体金属粒子に特別に合わせて設定する必要がないことである。金属酸化物の場合とは対照的に、金属は広い吸収能を有しており、このことが、本発明のレーザーマーキング材料をドープさせたプラスチックをレーザーマーキングするために、極めて広く各種の、異なった波長を有するレーザーを使用することが可能となる理由である。
【0179】
従来技術においては、場合によっては、アンチモンをドープさせた酸化スズのような金属酸化物を吸収剤物質として使用している。毒物学的な危険性は別としても、これらの酸化物は、効果的なマーキングをするためには所定のレーザー光波長を使用する必要があり、したがって、その扱いが複雑となる。
【0180】
本発明のレーザーマーキング剤をドープさせたプラスチックの使用は、通常の印刷プロセスがプラスチックに書込みをするのに今日まで使用されてきたすべての分野で可能である。たとえば、本発明のレーザーマーキング剤をドープさせたプラスチックから製造された成形物品は、電気、電子、および自動車産業において用途を見出すことができる。本発明のレーザーマーキング剤をドープさせたプラスチックから製造された、たとえば、ケーブル、リード、トリムストリップ、ならびに、加熱、換気、および冷却部分における機能部品、またはスイッチ、プラグ、レバー、およびハンドルへの認識性の付与および書込みは、たとえアクセスすることが困難な位置であっても、レーザー光を用いてマークすることが可能である。
【0181】
さらに、本発明のレーザーマーキング剤をドープさせたプラスチック系は、食品分野や玩具分野における包装材としても採用することができる。包装材の上でのマークの具体的な特徴は、それが拭取りや引掻きに対する抵抗性があり、その後に滅菌操作を行う場合でも安定であり、そしてマーキング操作において衛生的に清潔な方法で適用できる点である。
【0182】
レーザー書込みの応用分野でさらに重要なのは、畜牛タグまたは耳タグとして知られている、動物を個別に認識するためのプラスチックタグの分野である。バーコードシステムを用いて、その動物に特有の情報を記憶させる。この情報は、スキャナーを用いることによって、必要なときに再度呼び出すことができる。その書込みの耐久性は極めて長くなくてはならないが、それは、場合によっては耳タグが動物に数年も取付けられるからである。
【0183】
レーザーマーク可能なプラスチックには、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、エラストマーまたはゴムが含まれる。
【0184】
レーザー溶着可能なプラスチックは、当然のことながら、常に熱可塑性プラスチックを含む。
【0185】
さらなる実施態様においては、レーザーマーキング剤を、二次元または三次元のイメージ構造を作り出すための表面下レーザー彫刻用のプラスチックに使用する。表面下レーザー彫刻プロセスについては、たとえば、DE 10 2005 011 180 A1に記載がある。これらの目的に特に好適な球体金属粉体は、D99値が<40μmおよびD90値が<20μmの粒子サイズ分布を有している。これらの球体金属粒子の場合、その粒子サイズ分布のD50値は、<11μmであるのが好ましい。
【0186】
以下において、実施例を参照しながら本発明を説明するが、本発明がそれらに限定される訳ではない。
【0187】
本発明実施例1:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(Sympatec、Germanyから供給されるHelos装置を使用したレーザー粒度測定法により決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART GmbH & Co.KG、Fuerth、Germany)を、熱可塑性ポリプロピレン(PP)(R771−10;DOW、Germany、Wesseling)との混合物の形で、射出成形により加工して、板(面積42×60mm、厚み2mm)を形成させた。
【0188】
1重量%混合物を調製するために使用した手順は次のとおりであった:
【0189】
495gのポリプロピレンペレットおよび5gのアルミニウム粉体を、タンブラーミキサーの中で混合し、次いで、さらなる添加剤を加えることなく、2軸スクリュー押出機(Bersdorff、Germany、直径25mm、28L/D)中、加工温度約230℃で加工してペレットとした。次いでこれらのペレットを、射出成形機(Arburg Allrounder 221−55−250)を使用し、その材料に特定の加工温度(たとえば、PP:260℃)で加工して、先に定義した寸法の試験小片を得た。
【0190】
球体アルミニウム粒子の添加量を1.0%、0.5%、0.2%、0.1%、0.05%、0.02%、0.01%、0.005%、および0重量%としたポリプロピレンの濃度シリーズを調製し、得られた小片それぞれについて、Nd:YAGレーザー(波長:1064nm、出力:8W、パルス周波数:5KHz、書込み速度:50〜250mm/s)を用いて書込みを行った。それぞれの場合において、重量%で表した数字は、アルミニウム粒子とPPの合計重量を基準にしたものである。
【0191】
球体アルミニウム粒子を含まないPP板は、Nd:YAGレーザーを用いてマークすることはできなかった。
【0192】
球体アルミニウム粒子を使用した場合には、PPに対して0.005重量%の量を超えれば、高コントラストで、黒く耐摩耗性のあるマークを得ることが可能であり、それらは、優れたエッジ解像力およびドット精度を示した。それらのPP板は、透明性と無彩色性を維持していた。
【0193】
球体アルミニウム粒子の量が0.05〜0.5重量%の範囲においては、徐々に灰色がかった着色が強くなり、それに伴って透明性が失われていった。球体アルミニウム粒子の含量が0.5重量%を超えるPP板は、灰色で不透明であった。
【0194】
崩壊をもたらす粗い粒子またはかけらはまったく観察されなかった。さらに、低い濃度範囲(0.005〜0.02重量%)であって、比較的高いレーザー書込み速度(150〜200mm/s、8W、パルス周波数:5KHz)であっても、優れたドット精度と高コントラストが確保された。
【0195】
球体アルミニウム粒子を含むPP板においては、いかなる流れ筋や縞模様も観察することはできなかった。
【0196】
本発明実施例2:
50値が2.50μm、D90値が5.46μm、D99値が11.6μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子(ECKART)を、実施例1にならって、PPと共に加工した。
【0197】
得られた結果は、実施例1に記載したものに一致していた。
【0198】
本発明実施例3:
50値が2.27μm、D90値が3.83μm、D99値が5.28μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子(ECKART)を、実施例1にならって、PPと共に加工した。
【0199】
得られた結果は、実施例1に記載したものに一致していた。
【0200】
本発明実施例4:
50値が17.5μm、D90値が34.5μm、D99値が62.0μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子(ECKART)を、実施例1にならって、PPと共に加工した。
【0201】
PP中への球体アルミニウム粒子の添加量が0.005重量%を超えるレベルで、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークを得ることができ、それらは極めて良好なエッジ解像力およびドット精度を示した。このケースにおいては、それらのPP板は、透明性と無彩色性を維持していた。球体アルミニウム粒子の量が0.1〜1.0重量%の範囲では、次第に灰色がかった着色が強くなっていき、それに伴って透明性が失われていった。球体アルミニウム粒子の含量が1.0重量%を超えるPP板は、灰色で不透明であった。
【0202】
この場合、きらきら輝くかけらの形成は、極めてわずかしか観察されなかった。球体アルミニウム粒子を含むPP板においては、いかなる流れ筋や縞模様も観察することはできなかった。
【0203】
本発明実施例5:
50値が39.3μm、D90値が69.1μm、D99値が104μm(実施例1の同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子(ECKART)を、実施例1にならって、PPと共に加工した。
【0204】
PP中の球体アルミニウム粒子の量が0.005〜0.1重量%の範囲であると、良好なエッジ解像力およびドット精度を示す、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークを得ることが可能であった。このケースにおいては、それらのPP板は、透明性と無彩色性を維持していた。球体アルミニウム粒子の量が0.1〜1.0重量%の範囲では、次第に灰色がかった着色が強くなっていき、それに伴って透明性が失われていった。球体アルミニウム粒子の含量が1.0重量%を超えるPP板は、灰色で不透明であった。
【0205】
すべての濃度範囲にわたって、部分的に粒子と、きらきら輝くかけらの形成を観察することができた。
【0206】
球体アルミニウム粒子を含むPP板においては、いかなる流れ筋や縞模様も観察することはできなかった。
【0207】
比較例6:
50値が140μm、D90値が230μm(D99値:決定不能)(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子(ECKART)を、実施例1にならって、PPと共に加工した。
【0208】
PP中の球体アルミニウム粒子が0.05重量%の領域を超えた量になると、高コントラストで、黒く耐摩耗性のあるマークを得ることが可能であったが、それらは、極めて低いエッジ解像力およびドット精度を示し、そのため十分なものではなかった。このケースにおいては、それらのPP板は、透明性と無彩色性を維持していた。球体アルミニウム粒子の量が0.2〜2.0重量%の範囲では、次第に灰色がかった着色が強くなっていき、それに伴って透明性が失われていった。球体アルミニウム粒子の含量が2.0重量%を超えるPP板は、灰色で不透明であった。すべての濃度範囲にわたって、顕著な割合の粗い粒子と、きらきら輝くかけらの顕著な生成が観察された。
【0209】
球体アルミニウム粒子を含むPP板においては、いかなる流れ線や筋も観察することはできなかった。
【0210】
比較例7:
10値が1.51μm、D50値が4.02μm、D90値が10.0μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、微細な、微小板形状のアルミニウム効果顔料(PC200、Eckart GmbH & Co.KG、Fuerth、Germany)を、実施例1にならって、PPと共に加工した。
【0211】
球体アルミニウム粒子の量が≧0.005重量%であると、マーキングを得ることが可能であった。この場合、このレベルのアルミニウム効果顔料であっても、PP板は灰色の曇りを見せた。アルミニウム効果顔料が0.01重量%の量になると、その灰色の曇りは、実施例1で球体アルミニウム粒子のレベルを≧0.1重量%としたときに見られる灰色の曇りと同程度となった。アルミニウム効果顔料の顔料含量が0.02重量%であってさえも、その板は灰色で不透明であった。
【0212】
マーキングは高コントラストで、黒く耐摩耗性であったが、実施例1に比較して劣ったドット精度を示した。微小板形状の顔料を使用したときに射出成形の結果として見られるプラスチック材料生成物において起きる、典型的な流れ筋および縞模様を観察することができた。
【0213】
比較例8:
アンチモンをドープさせた酸化スズ粒子(Mark−it(商標)顔料、Engelhard Corporation、USA)を、実施例1に従って、PPと共に加工した。
【0214】
得られたPP板は、実施例1および2で製造したPP板と同等の性質を示したが、ドット精度がわずかに劣っていた。実施例1、2および3においては灰色の着色が見られたのに対して、ここでは、顔料含量が≧0.1重量%での着色は、褐色がかったものであった。流れ筋または縞模様の形成は観察することができなかった。しかしながら、使用したMark−it(商標)顔料には、高毒性のアンチモンが含まれている。
【0215】
比較例9:
アンチモンをドープさせた酸化スズのコーティングを含むマイカフレーク(Lazerflair(登録商標)825、E.Merck KGaA、Germany)を、実施例1に従って、PPと共に加工した。
【0216】
PP板は、実施例1および2で得られたPP板と同等の性質を示した。しかしながら、この場合には、全濃度範囲にわたって観察されたドット精度が、良好ではあるものの、実施例1、2、3および8のそれに比較して劣っていた;最初の曇りは、≧0.1重量%の濃度で起こり、その媒体は、≧2.0重量%の濃度では不透明となった。
【0217】
実施例1および2において、アルミニウム粒子含量が≧0.1重量%の場合に灰色の着色が見られたのに対して、Lazerflair(登録商標)825顔料の場合には、同じようにして、緑色がかった着色が起きた。射出成形された板の中には、微小板形状の効果顔料含有プラスチック材料を射出成形するときに典型的な、流れ筋および縞模様を観察することができる。このLazerflair(登録商標)825顔料も、また同様に、毒性のアンチモンを含んでいる。
【0218】
本発明実施例10:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART)を、熱可塑性ポリスチレン(PS)(Styron 678−E、DOW、USA)との混合物の形で、実施例1にならって射出成形により加工して、板(面積42×60mm、厚み2mm)を形成させた。
【0219】
その中に球体アルミニウム粒子を含まないPS板は、マークすることが困難であった。球体アルミニウム粒子を使用したときには、球体アルミニウム粒子が0.005重量%のレベルで、レーザーによるマーキングが得られた。球体アルミニウム粒子のレベルが0.02重量%以上になると、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークを得ることが可能となり、それらは、満足のいくエッジ解像力およびドット精度を示した。このケースにおいては、それらのPS板は、透明性と無彩色性を維持していた。球体アルミニウム粒子の量が0.05〜0.5重量%の範囲では、PS板の灰色がかった着色が次第に強くなっていき、それに伴って透明性が失われていった。球体アルミニウム粒子の量が0.5重量%以上のPS板は、灰色で不透明であった。流れ筋または縞模様はまったく観察されなかった。
【0220】
本発明実施例11:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART)を、熱可塑性ポリカーボネート(PC)(Calibre 201 TNT、DOW、USA)との混合物の形で、実施例1にならって射出成形により加工して、板(面積42×60mm、厚み2mm)を形成させた。
【0221】
その中に球体アルミニウム粒子を含まないPC板は、マークすることが困難であった。球体アルミニウム粒子の量が0.005重量%以上で、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークが得られた。その他の量的範囲においての結果は、実施例1で得られたものに相当していた。
【0222】
本発明実施例12:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART)を、熱可塑性ポリエチレンテレフタレート(PET)(Suka 5141、Du Pont、USA)との混合物の形で、実施例1にならって射出成形により加工して、板(面積42×60mm、厚み2mm)を形成させた。
【0223】
その中に球体アルミニウム粒子を含まないPET板は、マークすることが困難であった。球体アルミニウム粒子の量が0.005重量%で、PET板はマーク可能となった。0.005重量%以上の量では、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークが得られた。さらなる量的範囲においての結果は、実施例1で得られたものに相当していた。ドット精度が低下したが、良好であった。
【0224】
本発明実施例13:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART)を、熱可塑性スチレン−アクリロニトリル(SAN)(Tyril 867、DOW、USA)との混合物の形で、実施例1にならって射出成形により加工して、板(面積42×60mm、厚み2mm)を形成させた。
【0225】
その中に球体アルミニウム粒子を含まないSAN板は、マークすることが困難であった。球体アルミニウム粒子のレベルが0.01重量%で、SAN板はマーク可能となった。球体アルミニウム粒子のレベルが0.02重量%以上では、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークが得られた。さらなる量的範囲においての結果は、実施例1で得られたものに相当していた。ドット精度がわずかに低下したが、良好であった。
【0226】
本発明実施例14:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART)を、熱可塑性アクリル−ブタジエン−スチレン・コポリマー(ABS)(Magnum 8433、DOW、USA)との混合物の形で、実施例1と同様にして射出成形により加工して、板(面積42×60mm、厚み2mm)を形成させた。
【0227】
その中に球体アルミニウム粒子を含まないABS板は、マークすることが困難であった。球体アルミニウム粒子のレベルが0.005重量%で、淡色のABS中に、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークが得られ、それらは優れたエッジ解像力およびドット精度を示した。このケースにおいては、材料としてのABSそのものが透明ではないために、その板は無彩色を維持していた。
【0228】
球体アルミニウム粒子のレベルが0.05〜0.1重量%の範囲では、次第に灰色がかった着色が強くなっていくのが観察された。0.2重量%のレベルの球体アルミニウム粒子を含むABS板は、灰色であった。流れ筋または縞模様はまったく観察されなかった。
【0229】
本発明実施例15:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART)を、低密度ポリエチレン(LDPE)(LDPE 410−E、DOW、USA)との混合物の形で、サイエンティフィックフィルム押し出し機(LabTech、Thiland)を使用して加工して、100μmの厚みを有するインフレートフィルムを得た。
【0230】
2.0%、1.0%、0.5%、0.2%、0.1%、0.05%、および0.02重量%を添加することで、一連の濃度のものを調製した。
【0231】
その中に球体アルミニウム粒子を含まないLDPEフィルムは、マークすることができなかった。球体アルミニウム粒子が0.02〜0.5重量%の範囲では、レーザー処理によって、単色の透明なフィルムの上に、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークが得られた。優れたドット精度と画像鮮鋭性が観察された。球体アルミニウム粒子のレベルが≧0.5重量%では、フィルムの灰色の着色が次第に強くなっていくのが観察された。
【0232】
本発明実施例16:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体(ECKART)を、熱可塑性ポリアミドPA6(Gerstamid R 200 S、Resin Express、Germany)との混合物の形で、実施例1と同様にして射出成形により加工して、板(面積42×60mm、厚み2mm)を形成させた。
【0233】
その中に球体アルミニウム粒子を含まないPA6板は、マークすることができなかった。さらなる量的範囲においての結果は、実施例14で得られたものに相当していた。
【0234】
以下の表においては、例およびそれらの結果を再編集した。
【0235】
【表1】

【0236】
結果をまとめた表1から明らかなように、本発明によって、レーザーを用いて、透明で、同時に極めて高いコントラストと高い画像鮮鋭性を有するマークが可能な、レーザーマーク可能なプラスチックを提供することが可能となる。
【0237】
極めて高コントラストのマークは、一般的には、プラスチック組成物の全重量を基準にして、0.005重量%以上の球体アルミニウム粒子のレベルで得ることができる。一般的には、球体アルミニウム粒子のレベルが0.05重量%を超えると、灰色の着色または曇りが起きる。
【0238】
比較例7から、相当する粒子サイズのアルミニウム効果顔料を使用したときには、プラスチックがレーザーマーク可能であるときでも、曇りまたは灰色の着色が起きることが明らかである。この場合の限界値は、いずれの場合においても0.005重量%である。
【0239】
比較例5および6の比較から、毒性の高いアンチモン含有化合物または粒子を使用することなく、本発明によって、レーザーマーク可能なプラスチックの提供が可能となることが明らかである。
【0240】
以下の比較例17および18、さらには本発明実施例19から、レーザーマーキング剤として真珠光沢顔料を使用すると、流れ筋が目に見えるようになるかまたは現れる。
【0241】
比較例17:(EP 1 145 864 A1に準拠)
実施例1と同様にして、銀色の真珠光沢顔料(PX1001、ECKART)を、ポリプロピレン(PP)中、濃度0.49重量%で加工した。この場合、満足ないしは十分なエッジ解像力およびドット精度を示す、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークを得ることが可能であった。しかしながら、この場合においては、そのPP板が真珠光的な光沢を有していて、また不透明であった。PP板の中に流れ筋が形成されたことが、極めて明瞭に観察できた。
【0242】
比較例18:(EP 1 145 864 A1に準拠)
実施例1と同様にして、銀色の真珠光沢顔料(PX1001、ECKART)を、ポリプロピレン(PP)中、濃度0.49重量%で、さらに、D10=1.9μm、D50=3.4μm、D90=6μmの粒子サイズ分布を有する亜鉛粉体(亜鉛末17640、製造業者:Norzinko GmbH、Gosslar、Germany)を0.0098重量%で、PPと共に加工した。
【0243】
その結果は、比較例8で得られた結果とぴったり一致した。
【0244】
実施例19:
実施例1と同様にして、亜鉛粉体(亜鉛末17640、Norzinko GmbH、Gosslar、Germany)を、ポリプロピレン(PP)と共に加工した。
【0245】
PPに対して亜鉛粉体を0.005%を超える量で使用すると、高コントラストで、黒く耐摩耗性のマークを得ることが可能であり、それは満足のいくエッジ解像力およびドット精度を示した。0.05重量%以上の添加レベルでは、極めて良好なドット精度とエッジ解像力が得られた。それらのPP板は、透明性と無彩色性を維持していた。
【0246】
亜鉛粉体のレベルが0.05重量%以上では、灰色がかった着色が次第に強くなっていくのが観察され、それは、透明性の損失と連携していた。亜鉛粉体含量が1.0重量%を超えるPP板は、灰色で不透明であった。しかしながら、Nd:YAGレーザー(50mm/s、8W、パルス周波数:5KHz)の比較的に低い書込み速度においてのみ良好なマーキングが可能であったが、それは極めて良好なドット精度と高いコントラストを有していた。
【0247】
球体アルミニウム粒子を含むPP板においては、いかなる流れ筋や縞模様も観察することはできなかった。
【0248】
実施例20:
実施例1と同様にして、銀色の真珠光沢顔料(PX1001、ECKART)を濃度0.05重量%で、さらに、亜鉛粉体(亜鉛末17640、Norzinko GmbH、Gosslar、Germany)を0.25重量%および0.05重量%の濃度で、PPと共に加工した。
【0249】
その結果は、実施例19で述べたものと同等ではあったが、この場合においては、いくぶん劣ったドット精度が観察された。上述の濃度では、板は透明性を維持していたが、すでに流れ筋の生成が観察できた。
【0250】
実施例19および20の結果を、比較例17および18の結果と比較すると、真珠光沢顔料がまったく無いか、またはほんの少量の真珠光沢顔料と共に金属粒子を使用することに伴う利点が明瞭に判る。二つの比較例17および亜鉛粉体を使用した18の結果からは、何の利点も引き出せない。
【0251】
実施例19と20の二つを比較すると、少量の真珠光沢顔料が存在するだけで流れ筋が生じうることが判る。
【0252】
以下の実施例21〜24では、金属粒子がレーザー溶着化剤として特に適していることを強調する。
【0253】
実施例21:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて決定)である、球体アルミニウム粒子の粉体を、0.05重量%で、熱可塑性ポリプロピレン(R 771−10;DOW、USA)との混合物の形で、射出成形プロセスにおいて加工して、板とした(実施例1と同様、面積42×60mm、厚み1mm)。
【0254】
そのようにして得られた板を、相当する熱可塑性ポリプロピレン(R 771−10;DOW、USA)製の顔料無添加の板を用いて覆い、10×10mmの範囲に、Nd:YAGレーザー(1064nm;8W、パルス周波数5KHz;書込み速度50mm/s)を使用して照射した。結果として、照射した領域において、板と板の接触範囲でそれらの溶融を誘導することが可能であった。その溶着は、力を加えたときにだけ、再分離させることが可能であった。
【0255】
比較例22:
実施例20と同様にして、その手順を、熱可塑性ポリプロピレン(R 771−10;DOW、USA)製の2枚の顔料無添加の板を用いて実施した。この結果としては、プラスチック板の溶融を誘導することはできなかった。
【0256】
実施例23:
50値が1.57μm、D90値が3.37μm、D99値が7.55μm(実施例1と同様にしてHelos装置を用いて測定)である、球体アルミニウム粒子の粉体を、0.5重量%で、低密度ポリエチレン(LDPE)(LDPE 410−E、DOW、USA)との混合物の形で、フィルム押し出し機(タイプ:Scientific、LabTech、Thiland)により加工して、100μmの厚みを有するインフレートフィルムとした。フィルムの一部(110×70mm)を、相当する顔料無添加のLDPEフィルムを用いて覆い、実施例20と同様にして処理した。この結果として、照射した領域において、フィルムとフィルムの接触範囲でそれらの溶融を誘導することが可能であった。その溶着は、力を加えたときにだけ、再分離させることが可能であり、その溶着の部分ではフィルムの破損を伴った。
【0257】
比較例24:
低密度ポリエチレン(LDPE)(LDPE 410−E、DOW、USA)の2枚の顔料無添加のフィルムを使用して、実施例22の手順を繰り返した。この結果として、ポリマーフィルムの溶着を誘導することはできなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック中のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての、アンチモンおよび/またはアンチモン含有化合物を含まない球体金属粒子の使用であって、前記球体金属粒子の粒子サイズ分布が、レーザー粒度測定法によって求めて、体積平均累積篩下粒子サイズ分布の形で、D99値が<110μm、D90値が<75μm、そしてD50が<45μmである、球体金属粒子の使用。
【請求項2】
前記球体金属粒子の累積篩下粒子サイズ分布が、D99値が<70μmであり、そしてD90値が<40μmであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての球体金属粒子の使用。
【請求項3】
前記球体金属粒子の累積篩下粒子サイズ分布が、D99値が<65μmであり、そしてD90値が<36μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての球体金属粒子の使用。
【請求項4】
前記金属粒子が、アルミニウム、銅、銀、金、亜鉛、スズ、鉄、チタン、バナジウム、マグネシウム、およびそれらの合金からなる群より選択される金属を含むか、またはそれらからなることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての球体金属粒子の使用。
【請求項5】
前記金属粒子が、前記金属粒子の全重量を基準にして、10重量%以下の金属酸化物含量を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての球体金属粒子の使用。
【請求項6】
前記金属粒子が、少なくとも1層の無機金属酸化物層を備えていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての球体金属粒子の使用。
【請求項7】
前記金属酸化物層が、SiOを含むか、またはSiOからなることを特徴とする、請求項6に記載のレーザーマーキング剤またはレーザー溶着化剤としての球体金属粒子の使用。
【請求項8】
マスターバッチであって、
前記マスターバッチが、請求項1〜7に記載の使用のための前記球体金属顔料と、さらに少なくとも1種の分散担体を含むことを特徴とする、マスターバッチ。
【請求項9】
前記分散担体が、プラスチック成分、ワックス、樹脂、添加剤、またはそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項8に記載のマスターバッチ。
【請求項10】
前記マスターバッチ中の球体金属粒子の量が、前記マスターバッチの全重量を基準にして、80%〜99重量%であることを特徴とする、請求項8または9に記載のマスターバッチ。
【請求項11】
前記マスターバッチ中の球体金属粒子の量が、前記マスターバッチの全重量を基準にして、0.001%〜5重量%であることを特徴とする、請求項8に記載のマスターバッチ。
【請求項12】
レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックを製造するための、請求項8〜11のいずれかに記載のマスターバッチの使用。
【請求項13】
レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックであって、
前記プラスチックが、請求項1〜7のいずれかに記載のレーザーマーキング剤、または請求項8〜11のいずれかに記載のマスターバッチを含むことを特徴とする、レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック。
【請求項14】
前記プラスチック中の前記金属粒子の割合が、それぞれの場合において、前記プラスチックの全重量を基準にして、0.0005%〜0.8重量%、好ましくは0.001%〜0.5重量%であることを特徴とする、請求項13に記載のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック。
【請求項15】
前記プラスチック中の前記金属粒子の割合が、それぞれの場合において、前記レーザーマーク可能なプラスチックの全重量を基準にして、0.005%〜0.5重量%、好ましくは0.01%〜0.1重量%であることを特徴とする、請求項13および14のいずれかに記載のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック。
【請求項16】
前記プラスチックが、プラスチックフィルムまたはラベルであることを特徴とする、請求項13に記載のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック。
【請求項17】
前記プラスチックが、それぞれの場合において、前記レーザーマーク可能なプラスチックフィルムの全重量を基準にして、0.01%〜1.0重量%、好ましくは0.02%〜0.5重量%の金属粒子の割合を有するプラスチックフィルムであることを特徴とする、請求項16に記載のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック。
【請求項18】
前記プラスチックが、三次元プラスチック体であることを特徴とする、請求項13〜15のいずれかに記載のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック。
【請求項19】
前記レーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチックが、それ自体はレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能である必要がない物品の構成要素であることを特徴とする、請求項13〜18のいずれかに記載のレーザーマーク可能および/またはレーザー溶着可能なプラスチック。
【請求項20】
前記プラスチックが、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、エラストマー、またはゴムを含むことを特徴とする、請求項13〜19のいずれかに記載のレーザーマーク可能なプラスチック。
【請求項21】
前記プラスチックが、熱可塑性プラスチックを含むことを特徴とする、請求項13〜19のいずれかに記載のレーザー溶着可能なプラスチック。



【公表番号】特表2010−513609(P2010−513609A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541784(P2009−541784)
【出願日】平成19年8月18日(2007.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007321
【国際公開番号】WO2008/083726
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】