説明

レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、レリーフ印刷版及びレリーフ印刷版の製造方法

【課題】レーザー露光により高感度で彫刻され、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れた、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を提供する。
【解決手段】(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物、及び、(B)該(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応性基を有するバインダーポリマーを含有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、熱により架橋させてなるレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版、レリーフ印刷版及びレリーフ印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体表面に積層された感光性樹脂層に凹凸を形成して印刷版を形成する方法としては、感光性組成物を用いて形成したレリーフ形成層に、原画フィルムを介して紫外光により露光し、画像部分を選択的に硬化させて、未硬化部を現像液により除去する方法、いわゆる「アナログ製版」がよく知られている。
【0003】
レリーフ印刷版は、凹凸を有するレリーフ層を有する凸版印刷版であり、このような凹凸を有するレリーフ層は、主成分として、例えば、合成ゴムのようなエラストマー性ポリマー、熱可塑性樹脂などの樹脂、或いは、樹脂と可塑剤との混合物を含有する感光性組成物を含有するレリーフ形成層をパターニングし、凹凸を形成することにより得られる。このようなレリーフ印刷版うち、軟質なレリーフ層を有するものをフレキソ版と称することがある。
【0004】
近年は、アナログ製版の如く原画フィルムを必要とせず、走査露光によりレリーフ形成層の製版を行う方法が検討されている。
原画フィルムを必要としない手法として、レリーフ形成層上に画像マスクを形成可能なレーザー感応式のマスク層要素を設けたレリーフ印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの原版の製版方法によれば、画像データに基づいたレーザー照射によりマスク層要素から原画フィルムと同様の機能を有する画像マスクが形成されるため、「マスクCTP方式」と称されており、原画フィルムは必要ではないが、その後の製版処理は、画像マスクを介して紫外光で露光し、未硬化部を現像除去する工程であり、現像処理を必要とする点でなお改良の余地がある。
【0005】
現像工程を必要としない製版方法として、レリーフ形成層をレーザーにより直接彫刻し製版する、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。直彫りCTP方式は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。このため、抜き文字の如き画像を形成する場合、その領域を他の領域よりも深く彫刻する、或いは、微細網点画像では、印圧に対する抵抗を考慮し、ショルダーをつけた彫刻をする、なども可能である。
これまで直彫りCTP方式で用いられた版材は、版材の特性を決定するバインダーとして、疎水性のエラストマー(ゴム)を用いたもの(例えば、特許文献1〜5参照。)、親水性のポリビニルアルコールを用いたもの(例えば、特許文献6参照。)、架橋構造を有するエラストマーを用いたもの(例えば、特許文献7参照。)などが多数提案されている。
【0006】
レリーフ形成層を構成するバインダーポリマーとして疎水性のポリマーやエラストマー(ゴム)を用いると、耐水性が良好であるため、印刷時の水性インキに対する耐性は高いが、疎水性バインダーポリマーを含有するレリーフ形成層をレーザー彫刻すると、彫刻で生じたカスは粘着性のある液状であり、水道水による簡便なリンス作業を困難にすることが多い。
彫刻後のカスのリンス性を向上させる技術として、レリーフ形成層に多孔質無機微粒子を含有させ、該粒子に液状カスを吸着させ、除去性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5798202号明細書
【特許文献2】特開2002−3665公報
【特許文献3】特許第3438404号公報
【特許文献4】特開2004−262135公報
【特許文献5】特開2001−121833公報
【特許文献6】特開2006−2061公報
【特許文献7】特許第2846954号公報
【特許文献8】特開2004−174758公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れた、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、レーザー露光により彫刻される際に発生する彫刻カスのリンス性に優れたレリーフ印刷版の生産性の高い製造方法、及び、それにより得られたレリーフ印刷版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> (A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物、及び、(B)該(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応性基を有するバインダーポリマーを含有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、熱により架橋させてなるレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
<2> 前記(B)(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応基を有するバインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)が20℃以上200℃未満である<1>記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【0010】
<3> 前記(B)(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応基を有するバインダーポリマーにおける反応性基がヒドロキシル基である<1>又は<2>記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
<4> 前記(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が、四塩基酸二無水物である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
<5> 前記(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が、分子内に硫黄原子を有する化合物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【0011】
<6> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(C)前記(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物とは構造の異なる架橋剤を含有する<1>〜<5>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
<7> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(D)重合開始剤を含有する<1>〜<6>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
<8> 前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(E)700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を含有する<1>〜<7>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【0012】
<9> (1)<1>〜<8>のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層を熱により架橋する工程、及び、(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程、を含むレリーフ印刷版の製造方法。
<10> <9>に記載のレリーフ印刷版の製造方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版。
<11> 前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である<10>に記載のレリーフ印刷版。
<12> 前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である<10>又は<11>に記載のレリーフ印刷版。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーザー彫刻により発生した彫刻カスのリンス性に優れたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に好適なレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を提供することができる。
また、本発明によれば、前記レーザー露光により彫刻される際に発生した彫刻カスのリンス性に優れたレリーフ印刷版の生産性の高い製造方法、及び、それにより得られたレリーフ印刷版を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物、及び、(B)該(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応性基を有するバインダーポリマーを含有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、熱により架橋させてなるレリーフ形成層を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の印刷版原版の形成に用いるレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻に供した際の彫刻感度が高く、彫刻カスのリンス性に優れることから、レリーフ層を形成し製版する時間を短縮することができる。このような特徴を有する本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、以下に詳述する凸状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層のみならず、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により画像形成される各種印刷版の形成に適用することができる。
本発明のレリーフ印刷版原版は、特に支持体を必要とせず、印刷装置上にレリーフ層を直接配置する使用態様にも適用しうるが、適切な支持体上にレリーフ形成層を備えるレリーフ印刷版原版とすることが好ましい態様である。
【0016】
なお、本明細書では、レリーフ印刷版原版の説明に関し、バインダーポリマーを含有し、レーザー彫刻に供する画像形成層としての、表面が平坦な層をレリーフ形成層と称し、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層をレリーフ層と称する。
【0017】
以下、本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物の構成成分について説明する。
<(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物>
本発明に係るレリーフ形成層の原料として(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物〔以下、適宜、(A)特定化合物と称する〕を含有する。
(A)特定化合物における二塩基酸無水物とは、同一分子内に存在する二つのカルボン酸の脱水縮合にて生成する無水物のことを指し、「二塩基酸無水物部位」とは、同一分子内に存在する二つのカルボン酸の脱水縮合にて生成したカルボン酸無水物構造のことを言う。
(A)特定化合物は分子内にカルボン酸無水物構造を2以上有する化合物であれば、いずれも用いることができる。即ち、分子内に当該構造を2つ以上有するものであれば、後述する(B)バインダーポリマーが有する反応性の官能基と良好な架橋構造を形成することができる。
分子内に存在するカルボン酸無水物構造の数は、リンス性の観点から2つ以上4つ以下であることが好ましく、2つ以上3つ以下であることがより好ましく、2つ有するものが最も好ましい。
本発明に好適に用いられるカルボン酸無水物構造を2つ有する化合物としては、四塩基酸二無水物が挙げられる。四塩基酸二無水物の具体例としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族あるいは芳香族四カルボン酸二無水物等が挙げられる。また、カルボン酸無水物構造を3つ有する化合物としては、メリット酸三無水物等が挙げられる。
(A)特定化合物の分子量としては、80以上500未満であることが好ましい。
以下に、本発明に好適に用いられる(A)特定化合物の具体例〔特定化合物 A−1〜A−7〕を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0018】
【化1】

【0019】
本発明においては(A)特定化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に係るレリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物における(A)特定化合物の含有量は、固形分換算で、1質量%〜30質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは3質量%〜20質量%の範囲であり、最も好ましくは5質量%〜20質量%である。
【0020】
<(B)(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と反応して架橋構造を形成しうる反応性基を有するバインダーポリマー>
本発明で用いられる(B)バインダーポリマーは、前記(A)特定化合物が有する二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物との反応により架橋構造を形成することができる反応性の官能基を有する。以下、このバインダーポリマーを、適宜、(B)特定ポリマーと称する。(B)特定ポリマーが有する反応性基としては、ヒドロキシル基、アミノ基などが挙げられ、特にヒドロキシル基が好ましい。
以下、(B)特定ポリマーとして、ヒドロキシル基を有するバインダーポリマーを例に挙げて詳述する。
((B−1)ヒドロキシル基を有するバインダーポリマー)
(B−1)ヒドロキシル基を有するバインダーポリマーは、水不溶、且つ、炭素数1〜4のアルコールに可溶のバインダーポリマーであることが好ましい。
【0021】
本発明における(B)特定ポリマーとして、水性インキ適性とUVインキ適性を両立しつつ、かつ彫刻感度が高く、(A)特定化合物との反応性も良好であるという観点で、ポリビニルブチラール(PVB)に代表されるポリビニルアセタール、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂及び側鎖にヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いうる(B)特定ポリマーは、本発明においてレリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物の好ましい併用成分である、後述する(E)700nm〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤と組み合わせた場合に、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上のものを用いることで、彫刻感度が向上するため、Tgが20℃以上のものを用いることが特に好ましい。このようなガラス転移温度を有するバインダーポリマーを以下、非エラストマーと称する。即ち、エラストマーとは、一般的に、ガラス転移温度が常温以下のポリマーであるとして学術的に定義されている(科学大辞典 第2版、編者 国際科学振興財団、発行 丸善株式会社、P154参照)。従って、非エラストマーとはガラス転移温度が常温を超える温度であるポリマーを指す。バインダーポリマーのガラス転移温度の上限には制限はないが、200℃以下であることが取り扱い性の観点から好ましく、25℃以上120℃以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、本明細書におけるガラス転移温度は、以下の手段により測定した値を用いている。
<ガラス転移温度の測定方法>
1.モデル膜の作製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、(B)特定バインダーポリマー50g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50gを入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。これをPET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られた塗布液をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、70℃のオーブン中で3時間乾燥させた。これを80℃で3時間、さらに100℃で3時間加熱して乾燥させることで、厚さがおよそ1mmのガラス転移温度測定用の膜を作成した。
【0024】
2.モデル膜を用いたガラス転移温度(Tg)の測定
前記ガラス転移温度測定用の膜5mm×30mmを、25℃、60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン、DVA−225(アイティー計測制御株式会社製))で、つかみ(把持点)間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃から200℃、周波数1Hzで粘弾性を測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)を取ってプロットした。その時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点が、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、これをバインダーポリマーのガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
【0025】
ガラス転移温度が室温(20℃)以上のポリマーを用いる場合、(B)特定ポリマーは常温ではガラス状態をとるが、このためゴム状態をとる場合に比較して、熱的な分子運動はかなり抑制された状態にある。レーザー彫刻においては、レーザー照射時に、赤外線レーザが付与する熱に加え、所望により併用される(E)光熱変換剤の機能により発生した熱が、周囲に存在する(B)特定ポリマーに伝達され、これが熱分解、消散して、結果的に彫刻されて凹部が形成される。
本発明の好ましい態様では、(B)特定ポリマーの熱的な分子運動が抑制された状態の中に(E)光熱変換剤が存在すると(B)特定ポリマーへの熱伝達と熱分解が効果的に起こるものと考えられ、このような効果によって彫刻感度がさらに増大したものと推定される。
【0026】
本発明において好ましく用いられる(B)特定ポリマーの特に好ましい態様である非エラストマーであるポリマーの具体例を以下に挙げる。
【0027】
(1)ポリビニルアセタール
ポリビニルアセタールは、は、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られる)を環状アセタール化することにより得られる化合物である。
ポリビニルアセタール中のアセタール含量(原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数を100%とし、アセタール化されるビニルアルコール単位のモル%)は、30モル%〜90モル%が好ましく、50モル%〜85モル%がより好ましく、55モル%〜78モル%が特に好ましい。
ポリビニルアセタール中のビニルアルコール単位としては、原料の酢酸ビニルモノマーの総モル数に対して、10モル%〜70モル%が好ましく、15モル%〜50モル%がより好ましく、22モル%〜45モル%が特に好ましい。
また、ポリビニルアセタールは、その他の成分として、酢酸ビニル単位を有していてもよく、その含量としては0.01モル%〜20モル%が好ましく、0.1モル%〜10モル%がさらに好ましい。ポリビニルアセタールは、さらに、その他の共重合単位を有していてもよい。
ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルエチラール、ポリビニルメチラールなどが挙げられ、なかでもポリビニルブチラール(以下、PVBと称する)が好ましい。
ポリビニルアセタールの分子量としては、彫刻感度と皮膜性のバランスを保つ観点で、重量平均分子量として5000〜800000であることが好ましく、より好ましくは8000〜500000である。さらに、彫刻カスのリンス性向上の観点からは、50000〜300000であることが特に好ましい。
【0028】
以下、ポリビニルアセタールの特に好ましい例として、ポリビニルブチラールを挙げて説明するが、これに限定されない。
PVBの誘導体としては、市販品としても入手可能であり、その好ましい具体例としては、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で、積水化学製の「エスレックB」シリーズ、「エスレックK(KS)」シリーズ、デンカ製の「デンカブチラール」が好ましい。さらに好ましくは、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で積水化学製の「エスレックB」シリーズとデンカ製の「デンカブチラール」であり、特に好ましくは「エスレックB」シリーズでは、「BL−1」、「BL−1H」、「BL−2」、「BL−5」、「BL−S」、「BX−L」、「BM−S」、「BH−S」、デンカ製の「デンカブチラール」では「#3000−1」、「#3000−2」、「#3000−4」、「#4000−2」、「#6000−C」、「#6000−EP」、「#6000−CS」、「#6000−AS」である。
PVBを(B)特定バインダーポリマーとして用いてレリーフ形成層を製膜する際には、溶媒に溶かした溶液をキャストし乾燥させる方法が、膜の表面の平滑性の観点で好ましい。
【0029】
(2)アクリル樹脂
本発明における(B)特定ポリマーとして用いうるアクリル樹脂としては、公知のアクリル単量体を用いて得るアクリル樹脂であって、分子内にヒドロキシル基を有するものであれば用いることができる。
ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂の合成に用いられるアクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類(メタ)アクリルアミド類であって分子内にヒドロキシル基を有するものが好ましい。この様な単量体の具体例としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
また、アクリル樹脂としては、上記ヒドロキシル基を有するアクリル単量体以外のアクリル単量体を共重合成分として含むこともできる。このようなアクリル単量体としては、 (メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、ウレタン基やウレア基を有するアクリル単量体を含んで構成される変性アクリル樹脂も好ましく使用することができる。
これらのなかでも、水性インキ耐性の観点で、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなど脂肪族環状構造を有する(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0031】
また、(B)特定バインダーポリマーとして、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂であるノボラック樹脂を用いることができる。
好ましいノボラック樹脂としては、例えばフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−またはm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂などが挙げられる。
これらのノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
(B)特定バインダーポリマーとして、ヒドロキシル基を側鎖に有するエポキシ樹脂を用いることも可能である。好ましい具体例としては、ビスフェノールAとエピクロヒドリンの付加物を原料モノマーとして重合して得られるエポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
【0032】
(B)特定バインダーポリマーのなかでも、レリーフ形成層としたときのリンス性および耐刷性の観点でポリビニルブチラールが特に好ましい。
本発明における(B)特定ポリマーに含まれるヒドロキシル基の含有量は、前記いずれの態様のポリマーにおいても、0.1mmol/g〜15mmol/gであることが好ましく、0.5mmol/g〜7mmol/gであることがより好ましい。
【0033】
((B−2)アミノ基を有するバインダーポリマー)
(B)特定バインダーポリマーとして、アミノ基を側鎖に有するポリマーを用いることも可能である。
好ましい具体例としては、ポリエチレンイミン,ポリアリルアミン,アミノアルキル基を側鎖に有するアクリル樹脂,が好ましい。
これらの(B−2)アミノ基含有バインダーポリマーは、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜100,000のものが好ましい。
【0034】
本発明における樹脂組成物には(B)特定バインダーポリマーを1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いうる樹脂組成物における(B)特定ポリマーの好ましい含有量は、塗膜の形態保持性と耐水性と彫刻感度をバランスよく満足する観点で、全固形分中、2〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜80質量%、特に好ましくは10〜60質量%である。
【0035】
本発明に係る樹脂組成物において、前記(A)特定化合物と(B)特定バインダーポリマーとを併用することにおける作用機構は定かではないが以下のように推定される。
樹脂組成物中で、(A)特定化合物の二塩基酸無水物部位が、共存する(B)特定バインダーポリマー中のヒドロキシル基(−OH)と結合し、結果的に(B)特定バインダーポリマーの分子同士が(A)特定化合物により3次元的に架橋される。その結果、(I)レーザー彫刻により発生する彫刻カスが液状から粉末状になり、水道水で流すだけで除去可能となるというリンス性向上効果、及び、(II)樹脂組成物を製膜したときの膜の弾性が向上し、塑性変形しにくくなるという効果が得られる。(II)膜弾性の向上は、本発明に係る樹脂組成物をレリーフ形成層に適用した場合、形成された印刷版のインキ転移性及び耐刷性が向上するという効果をもたらす。また、本発明の好ましい態様において、(A)特定化合物の二塩基酸無水物部位同士を連結する連結基にヘテロ原子を有する場合は、このヘテロ原子に起因して(III)彫刻感度が向上するという効果も得られ、感度向上効果は、特にヘテロ原子としてS原子を含む場合に著しい。
【0036】
本発明においては、上述のように、レリーフ形成層中に、架橋構造を形成しうる反応性の官能基を有する多官能の低分子量化合物〔(A)成分〕と特定のバインダーポリマー〔(B)成分〕とを原料とし、これらを組成物中に併存させて加熱することで(A)成分と(B)成分の有する反応性の官能基同士が3次元架橋構造を形成し、形成された架橋物がレリーフ形成層中に含まれることが必要である。なお、加熱条件を制御することで(A)成分と成分が架橋構造を形成し、レリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物中に、(A)成分と(B)成分との3次元架橋物が存在することになり、この架橋物が存在することで、レリーフ形成層をレーザー彫刻した際に発生する彫刻カスが、液状成分や低分子量成分に起因するベトツキのない固体状となり、良好なリンス性を発現するものと考えられる。
本発明においては、(A)成分と(B)成分とが架橋構造を形成し、その架橋物がレリーフ形成層中に存在することで上記効果を奏するものである。
レリーフ形成層中に低分子量の化合物や溶剤が残存すると、レリーフ形成層を彫刻する際に発生する彫刻カスの粘着性が強くなる懸念がある。本発明に係るレリーフ形成層は、その構造内に3次元架橋構造を有するため、低分子成分の残存が少なく、また、微量の低分子量成分が残存している場合でも、形成された3次元架橋構造の内部に保持されて固体表面に浸出し難くなり、発生する彫刻カスの粘着性が少なくなる傾向がある。
この架橋構造の形成は、好ましい併用成分である(C)架橋剤、(D)重合開始剤を含むレーザー彫刻用樹脂組成物を調製した後に行ってもよく、その場合には、硬質なレリーフ形成層が得られ、レリーフ形成層中には、(A)成分と(B)成分との間で形成された架橋物、(C)成分及び(D)成分に起因するラジカル重合性の架橋構造、さらには、反応性基を有する(B)成分と(C)成分との間で形成される架橋構造なども存在することになる。
【0037】
このように、(A)特定化合物と(B)特定バインダーポリマーとを含有する本発明に係る樹脂組成物は、組成物の調整及び製膜時に、(A)特定化合物と(B)特定バインダーポリマー中のヒドロキシル基或いはアミノ基などの反応性基が結合して架橋構造を形成することで種々の優れた物性を発現する。
本発明に係るレリーフ形成層において、(A)特定化合物と(B)特定バインダーポリマーとの反応が進行し、架橋構造が形成されたことの確認方法としては、架橋前後の膜を溶剤に浸漬して膜の外観の変化を目視観察する方法が挙げられ、この方法により架橋の進行を知ることが可能である。
具体的には、樹脂組成物を製膜して、該膜をアセトン中に室温(20℃)で24時間浸漬し外観を目視観察すると、架橋構造が形成されてない場合や、架橋構造が形成されてもわずかな場合は膜がアセトンに溶解し、外観を留めない程度に変形するか、又は、溶解して目視で固形物が確認できない状態になるが、架橋構造を有する場合には、膜が不溶化して膜の外観がアセトン浸漬前の状態を留めたままとなる。
【0038】
<溶剤>
本発明に係る樹脂組成物を調製する際に用いる溶媒は、(A)特定化合物と(B)特定ポリマーとの反応を速やかに進行させる観点で、主として非プロトン性の有機溶媒を用いることが好ましい。より具体的には、非プロトン性の有機溶媒/プロトン性有機溶媒=100/0〜50/50(重量比)で用いることが好ましい。より好ましくは100/0〜70/30、特に好ましくは100/0〜90/10である。
非プロトン性の有機溶媒の好ましい具体例は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドである。
プロトン性有機溶媒の好ましい具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールである。
【0039】
本発明に係る樹脂組成物は、上記必須成分である(A)成分、(B)成分、及び、溶媒に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて目的に応じて種々の化合物を併用することができる。
<(B−2)併用バインダーポリマー>
本発明に係るレリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物には、上記(B)特定ポリマーに加え、ヒドロキシル基、アミド基などの(A)特定化合物との反応性官能基を有しないバインダーポリマーなど(B)特定ポリマーに包含されない公知のバインダーポリマーを併用することができる。以下、このようなバインダーポリマーを(B−2)併用バインダーポリマーと称する。
(B−2)併用バインダーポリマーは、前記(B)特定バインダーポリマーとともに、レーザー彫刻用樹脂組成物に含有される主成分を構成するものであり、(B)特定バインダーポリマーに包含されない一般的な高分子化合物を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して用いることができる。特に、レリーフ形成版原版を印刷版原版に用いる際は、レーザー彫刻性、インキ受与性、彫刻カス分散性などの種々の性能を考慮して選択することが必要である。
【0040】
バインダーポリマーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレアポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択して用いることができる。
【0041】
例えば、レーザー彫刻感度の観点からは、露光或いは加熱により熱分解する部分構造を含むポリマーが好ましい。このようなポリマーは、特開2008−163081号公報〔0038〕に記載されているものが好ましく挙げられる。また、例えば、柔軟で可撓性を有する膜形成が目的とされる場合には、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーが選択される。特開2008−163081号公報〔0039〕〜〔0040〕に詳述されている。更に、レリーフ形成層用組成物の調製の容易性、得られたレリーフ印刷版における油性インクに対する耐性向上の観点から、親水性又は親アルコール性ポリマーを使用することが好ましい。親水性ポリマーとしては、特開2008−163081号公報〔0041〕に詳述されているものを使用することができる。
【0042】
また、ポリ乳酸などのヒドロキシカルボン酸ユニットからなるポリエステルを好ましく用いることができる。このようなポリエステルとしては、具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、乳酸系ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンコハク酸)、これらの誘導体又は混合物から成る群から選択されるものが好ましい。
【0043】
加えて、加熱により硬化させ、強度を向上させる目的に使用する場合には、分子内に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーが好ましく用いられる。
このようなポリマーとして、主鎖に炭素−炭素不飽和結合を含むポリマーとしては、例えば、SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
【0044】
側鎖に炭素−炭素不飽和結合をもつポリマーとしては、前記の本発明で適用可能なバインダーポリマーの骨格に、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基のような炭素−炭素不飽和結合を側鎖に導入することで得られる。バインダーポリマー側鎖に炭素−炭素不飽和結合を導入する方法は、重合性基に保護基を結合させてなる重合性基前駆体を有する構造単位をポリマーに共重合させ、保護基を脱離させて重合性基とする方法、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基などの反応性基を複数有する高分子化合物を作製し、これらの反応性基と反応する基及び炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を高分子反応させて導入する方法など、公知の方法をとることができる。これらの方法によれば、高分子化合物中への不飽和結合、重合性基の導入量を制御することができる。
このように、レリーフ印刷版の適用用途に応じた物性を考慮し、目的に応じたバインダーポリマーを選択し、当該バインダーポリマーの1種を、或いは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明におけるバインダーポリマーの重量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は、0.5万〜50万が好ましい。重量平均分子量が0.5万以上であれば、単体樹脂としての形態保持性に優れ、50万以下であれば、水など溶媒に溶解しやすくレリーフ形成層を調製するのに好都合である。バインダーポリマーの重量平均分子量は、より好ましくは1万〜40万、特に好ましくは1.5万〜30万である。
【0046】
バインダーポリマーの総含有量〔(B)特定バインダーポリマーと(B−2)併用バインダーポリマーとの合計含有量〕は、レーザー彫刻用樹脂組成物の固形分全質量に対し、5質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜75質量%が好ましく、20質量%〜65質量%がより好ましい。
前記レーザー彫刻用樹脂組成物はレリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用されるが、バインダーポリマーの含有量を5質量%以上とすることで、得られたレリーフ印刷版を印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、また、80質量%以下とすることで、他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版をフレキソ印刷版とした際においても印刷版として使用するに足る柔軟性を得ることができる。
【0047】
本発明に係るレリーフ形成層には、本発明に係る樹脂組成物において必須成分として上述した(A)特定化合物、(B)特定ポリマー、溶剤、及び所望により併用される(B−2)併用バインダーポリマーと共に、架橋剤、光熱変換剤、重合開始剤、可塑剤等の任意成分を含むことが好ましい。以下、これらの各成分について詳述する。
【0048】
<(C)前記(A)特定化合物とは構造の異なる架橋剤>
本発明においては、レリーフ形成層中に架橋構造を形成する観点から、これを形成するために、レリーフ形成層に使用するレーザー彫刻用樹脂組成物には、前記(A)特定化合物とは構造の異なる架橋剤(以下、(C)他の架橋剤と称する)を含有させ、(C)他の架橋剤によるさらなる架橋構造を形成させることが好ましい。
ここで用いうる(C)他の架橋剤としては、熱に起因する化学反応により高分子化してレリーフ形成層を硬化可能なものであれば特に限定されず用いることができる。
なかでも、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(以下、「重合性化合物」ともいう)、シランカップリング剤等が好ましく用いられる。これらの化合物は、前記(B)特定バインダーポリマーや所望により用いられる(B−2)併用バインダーと反応することによりレリーフ形成層中に架橋構造を形成しうる化合物、またはこれら架橋剤同士で反応することにより架橋構造を形成しうる化合物、これら両方の反応により架橋構造を形成する化合物のいずれであってもよい。
【0049】
((C−1)重合性化合物)
本発明において(C)他の架橋剤として用いうる重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。
【0050】
以下、重合性化合物として用いられる、エチレン性不飽和二重結合を分子内に1つ有する単官能モノマー、及び、同結合を分子内に2個以上有する多官能モノマーについて説明する。
本発明に係るレリーフ形成層は、膜中に架橋構造を有することが必要であることから、多官能モノマーが好ましく使用される。これらの多官能モノマーの分子量は、200〜2,000であることが好ましい。
単官能モノマー及び多官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0051】
本発明においては、重合性化合物として、彫刻感度向上の観点から、分子内に硫黄原子を有する化合物を用いることが好ましい。
このように分子内に硫黄原子を有する重合性化合物としては、彫刻感度向上の観点から、特に、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、そのうち2つのエチレン性不飽和結合間を連結する部位に炭素−硫黄結合を有する重合性化合物(以下、適宜、「含硫黄多官能モノマー」と称する。)を用いることが好ましい。
【0052】
本発明における含硫黄多官能モノマー中の炭素−硫黄結合を含んだ官能基としては、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホニル、スルホンアミド、チオカルボニル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、スルファミン酸、チオアミド、チオカルバメート、ジチオカルバメート、又はチオ尿素を含む官能基が挙げられる。
また、含硫黄多官能モノマーにおける2つのエチレン性不飽和結合間を連結する炭素−硫黄結合を含有する連結基としては、−C−S−、−C−SS−、−NH(C=S)O−、−NH(C=O)S−、−NH(C=S)S−、及び−C−SO−から選択される少なくとも1つのユニットであることが好ましい。
【0053】
また、含硫黄多官能モノマーの分子内に含まれる硫黄原子の数は1つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、彫刻感度と塗布溶剤に対する溶解性のバランスの観点から、1個〜10個が好ましく、1個〜5個がより好ましく、1個〜2個が更に好ましい。
一方、分子内に含まれるエチレン性不飽和部位の数は2つ以上であれば特に制限は無く、目的に応じて、適宜選択することができるが、架橋膜の柔軟性の観点で、2個〜10個が好ましく、2個〜6個がより好ましく、2個〜4個が更に好ましい。
【0054】
本発明における含硫黄多官能モノマーの分子量としては、形成される膜の柔軟性の観点から、好ましくは120〜3000であり、より好ましくは120〜1500である。
また、本発明における含硫黄多官能モノマーは単独で用いてもよいが、分子内に硫黄原子を持たない多官能重合性化合物や単官能重合性化合物との混合物として用いてもよい。
彫刻感度の観点からは、含硫黄多官能モノマー単独で用いる、若しくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様が好ましく、より好ましくは、含硫黄多官能モノマーと単官能エチレン性モノマーとの混合物として用いる態様である。
【0055】
本発明に係るレリーフ形成層においては、含硫黄多官能モノマーをはじめとする重合性化合物を用いることにより、膜物性、例えば、脆性、柔軟性などを調整することもできる。
また、レリーフ形成層中の含硫黄多官能モノマーをはじめとする(C−1)重合性化合物の総含有量は、架橋膜の柔軟性や脆性の観点から、不揮発性成分に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜45質量%の範囲がより好ましい。
なお、含硫黄多官能モノマーと他の重合性化合物とを併用する場合、全重合性化合物中の含硫黄多官能モノマーの量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
なお、架橋剤として重合性化合物を用いて、レリーフ形成層内に架橋構造を形成する場合には、後述する(D)重合開始剤を併用することが。重合開始剤は、光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれであってもよいは、なかでも、熱重合開始剤と組合せて用いることが、架橋度向上の観点から好ましい。レリーフ形成層中の架橋度を向上させることにより、彫刻画質を向上させることができる。
【0056】
((C−2)シランカップリング剤)
また、本発明においては(C)他の架橋剤としてシランカップリング剤を用いることも好ましい。
本発明においては、Si原子に、アルコキシ基またはハロゲン基が少なくとも1つ直接結合した官能基をシランカップリング基と呼び、このシランカップリング基を分子中に1つ以上有している化合物をシランカップリング剤と称する。シランカップリング基は、Si原子にアルコキシ基またはハロゲン原子が2つ以上直接結合したものが好ましく、3つ以上直接結合したものが特に好ましい。
【0057】
本発明におけるシランカップリング剤においては、Si原子に直接結合している官能基として、アルコキシ基及びハロゲン原子の少なくとも1つ以上の官能基を有することが必須であり、化合物の取り扱いやすさの観点からは、アルコキシ基を有するものが好ましい。
ここで、アルコキシ基としては、リンス性と耐刷性の観点から炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基である。
また、ハロゲン原子として、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が挙げられ、合成のしやすさ及び安定性の観点で、好ましくはCl原子及びBr原子が挙げられ、より好ましくはCl原子である。
【0058】
本発明におけるシランカップリング剤は、膜の架橋度と柔軟性のバランスを良好に保つ観点で、上記シランカップリング基を分子内に1個以上10個以下含むことが好ましく、より好ましくは1個以上5個以下であり、特に好ましくは2個以上4個以下である。
シランカップリング基が2つ以上ある場合には、シランカップリング基同士が連結基で連結されていることが好ましい。連結基としては、ヘテロ原子や炭化水素などの置換基を有してもよい2価以上の有機基が挙げられ、彫刻感度が高い点ではヘテロ原子(N、S、O)を含む態様が好ましく、特に好ましくはS原子を含む連結基である。
このような観点からは、本発明におけるシランカップリング剤として、アルコキシ基としてメトキシ基またはエトキシ基、なかでも、メトキシ基がSi原子に結合したシランカップリング基を分子内に2個有し、且つ、これらシランカップリング基が、ヘテロ原子、特に好ましくはS原子を含む、アルキレン基を介して結合している化合物が好適である。
【0059】
以下、本発明に適用しうるシランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。本発明に係る樹脂組成物における(C−2)シランカップリング剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る樹脂組成物中に含まれる(C−1)シランカップリング剤の含有量は、固形分換算で、0.1質量%〜80質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1質量%〜40質量%の範囲であり、最も好ましくは5質量%〜30質量%である。
【0060】
本発明にかかる樹脂組成物は、前述のように(B)特定ポリマーとして、好ましくは、水酸基を有するバインダーポリマーを用いるが、その場合、シランカップリング剤のシランカップリング基が、バインダーポリマー中の水酸基(−OH)とアルコール交換反応を起こし、架橋構造を形成することも可能である。その結果、(B)水酸基を有する特定ポリマーの分子同士は、(A)特定化合物のみならず(C−2)シランカップリング剤を介して3次元的な架橋構造を形成する。このような副次的な3次元架橋構造の形成により、レリーフ形成層における架橋密度が向上することで、本発明の効果であるリンス性の向上効果がより改良される。
【0061】
<(C−3)アルコール交換反応触媒>
本発明に係るレーザー彫刻用樹脂組成物において(C)他の架橋剤として(C−2)シランカップリング剤を含有する場合には、(B)特定ポリマーとの架橋構造形成を促進するため、アルコール交換反応触媒を含有することが好ましい。
アルコール交換反応触媒は、シランカップリング反応において一般に用いられる反応触媒であれば、限定なく適用できる。
以下、代表的なアルコール交換反応触媒である(1)酸あるいは塩基性触媒、及び、(2)金属錯体触媒について順次説明する。
【0062】
(1)酸あるいは塩基性触媒
触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水または有機溶剤などの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、リン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。膜中でのアルコール交換反応を速やかに進行させる観点で、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウム p−トルエンスルホネート、リン酸、ホスホン酸、酢酸が好ましく、特に好ましくは、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸である。
【0063】
(2)金属錯体触媒
本発明においてアルコール交換反応触媒として用いられる(2)金属錯体触媒は、好ましくは、周期律表の2A、3B、4Aおよび5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソまたはヒドロキシ酸素化合物から構成されるものである。
更に、構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素およびV,NbおよびTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、AlおよびTiから得られる錯体が優れており、好ましい(オルトチタン酸エチルなど)。
これらは水系塗布液での安定性および、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0064】
本発明に係る樹脂組成物にアルコール交換反応触媒を用いる場合には、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
樹脂組成物におけるアルコール交換反応触媒の含有量は、(B)特定ポリマーに対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
【0065】
<(D)重合開始剤>
本発明に係るレリーフ形成層を構成するレーザー彫刻用樹脂組成物が、前述の(C−1)重合性化合物を含有する場合には、さらに(D)重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤は光または熱重合開始剤として当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下、好ましい重合開始剤であるラジカル重合開始剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
【0066】
本発明において、好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(l)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
前記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、及び(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、特開2008−63554号公報の段落〔0074〕〜〔0118〕に記載される化合物を好ましく用いることができる。
【0068】
重合開始剤としては、光重合開始剤と熱重合開始剤に大別することができる。本発明においては、架橋度の向上効果、彫刻感度と、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった観点から、熱重合開始剤が好ましく、熱重合開始剤のなかでも、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物がより好ましく、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、具体的には、以下に示す化合物が好ましい。
【0069】
(c)有機過酸化物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーアミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(ターシャリーオクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−ターシャリーブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0070】
(l)アゾ系化合物
本発明に用いうるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
【0071】
本発明における(D)重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
レリーフ形成層中の(D)重合開始剤の含有量は、レリーフ形成層の固形分全質量に対し0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。重合開始剤の含有量を0.01質量%以上とすることで、これを添加した効果が得られ、架橋性レリーフ形成層の架橋が速やかに行われる。また、含有量を10質量%以下とすることで他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られるためである。
【0072】
<(E)光熱変換剤>
本発明に係るレリーフ形成層は、さらに、光熱変換剤を含有することが好ましい。即ち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
【0073】
本発明に係るレーザー彫刻用レリーフ形成層を、700から1300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、光熱変換剤としては、700〜1300nmに極大吸収波長を有する化合物が用いることが好ましい。
本発明における光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
【0074】
光熱変換剤のうち、染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、具体的には、700nm〜1300nmに極大吸収波長を有するものが挙げられ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0075】
本発明において好ましく用いられる染料としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、フタロシアニン系色素及び特開2008−63554号公報の段落〔0124〕〜〔0137〕に記載の染料を挙げることができる。
【0076】
本発明において使用される光熱変換剤のうち、顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0077】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0078】
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。
【0079】
本発明においては、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A、又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
【0080】
本発明に適用しうるカーボンブラックとしては、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも150m/g及びDBP数が少なくとも150ml/100gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
【0081】
この比表面積は好ましくは、少なくとも250、特に好ましくは少なくとも500m/gである。DBP数は好ましくは少なくとも200、特に好ましくは少なくとも250ml/100gである。上述したカーボンブラックは酸性の又は塩基性のカーボンブラックであってよい。カーボンブラックは、好ましくは塩基性のカーボンブラックである。異なるバインダーの混合物も当然に、使用され得る。
【0082】
約1500m/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP数を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjenblack(登録商標)EC300J、Ketjenblack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Prinrex(登録商標)XE(Degussaより)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabotより)、ケッチェンブラック(ライオン(株)製)の名称で、商業的に入手可能である。
【0083】
レーザー彫刻用樹脂組成物中おける光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、該樹脂組成物の固形分全質量の0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05質量%〜10質量%、特に好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲である。
【0084】
<その他添加剤>
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物により形成された膜を柔軟化する作用を有するものであり、バインダーポリマーに対して相溶性のよいものである必要がある。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート等や、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)好ましく用いられる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、彫刻感度向上のための添加剤として、ニトロセルロースや高熱伝導性物質、を加えることがより好ましい。ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマー等のバインダーポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。
高熱伝導性物質は、熱伝達を補助する目的で添加され、熱伝導性物質としては、金属粒子等の無機化合物、導電性ポリマー等の有機化合物が挙げられる。金属粒子としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましい導電性ポリマーとしては、特に共役ポリマーが好ましく、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。
更に、組成物の製造中或いは保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。
レーザー彫刻用樹脂組成物の着色を目的として染料若しくは顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
更に、レーザー彫刻用樹脂組成物の硬化皮膜の物性を改良するために充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0085】
本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、前記のような成分を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。レリーフ形成層は、支持体上に設けられることが好ましい。
【0086】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版は、必要により更に、支持体とレリーフ形成層との間に接着層を、また、レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
【0087】
<レリーフ形成層>
レリーフ形成層は、前記レーザー彫刻用樹脂組成物を加熱することで形成される、(A)特定化合物と(B)特定ポリマーとの架橋物を含有する層である。レーザー彫刻用樹脂組成物として架橋性樹脂組成物を用いると、架橋性のレリーフ形成層が得られる。本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版としては、(A)特定化合物と(B)特定バインダーポリマーとによる架橋構造に加えて、さらに(C−1)重合性化合物及び(D)重合開始剤、(C−2)シランカップリング剤と(B)特定ポリマーとによる架橋構造を含有することで、さらなる高密度の架橋構造を有する硬質のレリーフ形成層を有するものが好ましい。
【0088】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版によるレリーフ印刷版の作製態様としては、レリーフ形成層を架橋させて硬化されたレリーフ形成層を有するレリーフ印刷版原版とした後、該硬化されたレリーフ形成層(硬質のレリーフ形成層)をレーザー彫刻することによりレリーフ層を形成してレリーフ印刷版を作製する態様であることが好ましい。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ層の摩耗を防ぐことができ、また、レーザー彫刻後にシャープな形状のレリーフ層を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
【0089】
レリーフ形成層は、レリーフ形成層用の前記の如き成分を有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、シート状あるいはスリーブ状に成形することで形成することができる。レリーフ形成層は、通常、後述する支持体状に設けられるが、製版、印刷用の装置に備えられたシリンダーなどの部材表面に直接、形成したり、そこに配置して固定化したりすることもできる。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
【0090】
<支持体>
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版に使用しうる支持体について説明する。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版に支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET、PBT、PAN)やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
また、架橋性のレーザー彫刻用樹脂組成物を塗布し、裏面(レーザー彫刻を行う面と反対面であり、円筒状のものも含む)から熱で硬化させて作製されたレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版においては、硬化したレーザー彫刻用樹脂組成物の裏面側が支持体として機能する為、必ずしも支持体は必須ではない。
【0091】
<接着層>
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に使用しうる材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0092】
<保護フィルム、スリップコート層>
レリーフ形成層表面の保護、特に、架橋前のレリーフ形成層表面への傷・凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。
保護フィルムの厚さは25μm〜500μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。
保護フィルムは、印刷版の保護フィルムとして公知の材質、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)のようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はプレーンでもよいし、マット化されていてもよい。
レリーフ形成層上に保護フィルムを設ける場合、保護フィルムは剥離可能でなければならない。
【0093】
保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。
スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0094】
−レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製方法−
次に、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製方法について説明する。
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、レリーフ形成層用塗布液組成物(レーザー彫刻用樹脂組成物)を調製し、このレリーフ形成層用塗布液組成物から溶剤を除去した後に、支持体表面や版胴上に、溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、支持体上に形成する場合には、レリーフ形成層用塗布液組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して塗布液組成物から溶媒を除去する方法でもよい。
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしてもよい。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることよって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
【0095】
レリーフ形成層をスリーブ状に形成する場合も、同様に、公知の樹脂成型方法を適用することができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機などの機械で樹脂をノゾルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などを例示できる。
レリーフ形成層をスリーブ状とする場合、当初からレリーフ形成層自体を円筒状に成形してもよく、また、まずシート状に成型したのち、円筒状支持体や版胴上に固定することで円筒状とすることもできる。円筒状支持体への固定方法には特に制限はなく、例えば、両面に接着層、粘着層などが形成された粘着テープによる固定、或いは、接着剤層を介する固定などを行うことができる。
【0096】
レリーフ形成層を形成するための塗布液組成物は、例えば、(B)特定ポリマー、及び、任意成分として、(E)光熱変換剤、可塑剤を適当な溶媒に溶解させ、次いで、(D)重合開始剤及び(C)他の架橋剤を溶解させ、最後に(A)特定化合物を添加することによって製造できる。
溶媒成分のほとんどは、レリーフ印刷版原版を製造する段階で除去する必要があるので、溶媒としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶媒の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
【0097】
ここで、本発明において、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版といった場合、前述のように、レリーフ形成層が架橋された状態までを指す。レリーフ形成層を架橋する方法には、レリーフ形成層を加熱により架橋する工程を行うことが好ましい。
また、ここでいう「架橋」とは、(A)特定化合物及び(B)特定ポリマーにより形成される架橋のみならず、(B)特定ポリマー同士を連結する架橋反応をも含む概念であり、また、(C−1)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物同士の重合反応や(B)特定ポリマーと(C−1)重合性化合物の反応によるレリーフ形成層の硬化反応をも含む概念である。
【0098】
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層の厚さは、架橋の前後において、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0099】
[レリーフ印刷版及びその製造]
本発明のレリーフ印刷版原版を用いたレリーフ印刷版の製造方法は、(1)本発明のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層を加熱により架橋する工程、及び(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明のレリーフ印刷版原版を用いて、このような製造方法により、レリーフ層を有するレリーフ印刷版を製造することができる。本発明のレリーフ印刷版原版が、支持体を備える場合、このようなレリーフ層は、支持体表面に形成され、これを印刷装置に適用して印刷を行う。
【0100】
本発明におけるレリーフ印刷版の好ましい製造方法では、前記レーザー彫刻工程に次いで、さらに、必要に応じて下記工程(3)〜工程(5)を含んでもよい。
工程(3): 彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程(リンス工程)。
工程(4): 彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程(乾燥工程)。
工程(5): 彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層をさらに架橋する工程(後架橋工程)。
【0101】
レリーフ形成層における架橋構造の形成(架橋物の生成)は、熱により行われる。
レリーフ形成層における架橋構造の形成において、熱により架橋する工程に加えて、所望により光により架橋する工程を併用してよく、その場合には、これらの工程は、互いに同時工程でも別時工程としてもよい。
【0102】
本発明の製造方法では、レーザー彫刻工程に先立って、レリーフ印刷版原版のレリーフ形成層に熱により架橋構造を形成するが、本発明に係るレリーフ形成層は、(A)特定化合物、(B)特定ポリマーに加え、さらに、他のバインダーポリマー、光熱変換剤、重合開始剤、及び重合性化合物に代表される(C)他の架橋剤を含む場合には、(A)成分と(B)成分との架橋構造の形成に加え、併用成分である(D)重合開始剤の作用で(C−1)重合性化合物がポリマー化され、高密度に架橋を形成することで、高密度の架橋構造を有する硬化されたレリーフ形成層となる。架橋構造の形成は熱により行われるが、所望によりさらに露光処理を行い、光による架橋構造の形成を併用することもできる。
重合開始剤はラジカル発生剤であることが好ましく、該ラジカル発生剤は、ラジカルを発生するきっかけが光か熱かによって、光重合開始剤と熱重合開始剤に大別されるが、本発明では加熱による架橋構造を形成するため、熱重合開始剤を用いる。
【0103】
本発明では、レリーフ形成層の架橋に熱重合開始剤を含有することが熱架橋効率向上のためには好ましく、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱により架橋する工程)。加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
レリーフ形成層における架橋構造の形成方法としては、レリーフ形成層を表面から内部まで均一に硬化(架橋)可能という観点で、本発明の如き熱による架橋を用いるものである。
工程(1)は、既述のように熱により架橋する工程であるため、特別高価な装置を必要としない利点があるが、印刷版原版が高温になるので、高温で柔軟になる熱可塑性ポリマーは加熱中に変形する可能性がある等、使用する原材料は慎重に選択する必要がある。
熱架橋の際には、前述のように、樹脂組成物中に熱重合開始剤を加えてもよい。熱重合開始剤としては、ラジカル重合に使用する市販の熱重合開始剤を使用してもよい。このような熱重合開始剤としては、例えば、適当な過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ基を含む化合物が挙げられる。代表的な加硫剤も架橋構造を形成するために使用しうる。熱架橋性(heat−curable)の樹脂、例えばエポキシ樹脂を架橋成分として組成物中に加えることにより熱架橋がより効率よく実施される。
【0104】
なお、本発明の製造方法においは、所望により光架橋手段を併用してもよい。その場合には、さらに、レリーフ形成層に光重合開始剤を含有させてもよい。光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層の架橋をさらに促進することができる。
活性光線の照射は、レリーフ形成層全面に行うのが一般的である。活性光線としては可視光、紫外光あるいは電子線が挙げられるが、紫外光が最も一般的である。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に活性光線を照射するだけでもよいが、用いられる支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、さらに裏面からも活性光線を照射することも好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、架橋性レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
【0105】
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
【0106】
本発明の製造方法における第2の工程は、架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程(工程(2))である。工程(2)においては、後述する特定のレーザーにより、形成したい画像に対応したレーザー光を照射してレリーフを形成し、印刷用のレリーフ層を形成することが好ましい。
具体的には、架橋されたレリーフ形成層に対して形成したい画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成する。好ましくは、形成したい画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、レリーフ形成層に対して走査照射する工程が挙げられる。
この工程(2)には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。
赤外レーザーが照射されると、レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、感光層中の分子は分子切断あるいはイオン化されて選択的な除去、すなわち彫刻がなされる。このとき、レリーフ形成層中の光熱変換剤によっても露光領域が発熱するため、この光熱変換剤により発生した熱もまた、この除去性を促進する。
【0107】
レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は浅くあるいはショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
なかでも光熱変換剤の極大吸収波長に対応した赤外レーザーで彫刻する場合に、前述の光熱変換剤からの発熱が効率よく行われるために、より高感度かつシャープなレリーフ層が得られる。
彫刻に用いられる赤外レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー又は半導体レーザーが好ましく用いられ、なかでも、ファイバー付き半導体赤外線レーザーが特に好ましく用いられる。
【0108】
一般に、半導体レーザーは、COレーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。さらに、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
レーザー彫刻に用いる半導体レーザーとしては、波長が700nm〜1300nmのものであれば利用可能であるが、800nm〜1200nmのものが好ましく、860nm〜1200nmのものがより好ましく、900nm〜1100nmであるものが特に好ましい。
【0109】
前記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程(2)を行ってもよい。リンスの手段として、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式あるいは搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられる。本発明によれば、発生する彫刻カスはヌメリなどがなく、粉末状であるために、水によるリンス工程により、カスが効果的に除去されるため、例えば、石鹸を添加したリンス液などを用いる必要がない。
彫刻表面にリンス工程(2)を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる工程(3)を追加してもよい。
さらに、必要に応じてレリーフ形成層をさらに架橋させる工程(4)を追加してもよい。追加の架橋工程(4)(後架橋処理)を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0110】
以上のようにして、支持体等の任意の基材表面にレリーフ層を有するレリーフ印刷版が得られる。
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
【0111】
また、レリーフ印刷版が有するレリーフ層のショアA硬度は、50°以上90°以下であることが好ましい。
レリーフ層のショアA硬度が50°以上であると、彫刻により形成された微細な網点が凸版印刷機の強い印圧を受けても倒れてつぶれることがなく、正常な印刷ができる。また、レリーフ層のショアA硬度が90°以下であると、印圧がキスタッチのフレキソ印刷でもベタ部での印刷かすれを防止することができる。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
【0112】
本発明のレリーフ印刷版原版を用いて製造されたレリーフ印刷版は、凸版用印刷機による水性インキ、油性インキ、及び、UVインキ、いずれのインキを用いた場合でも、印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。本発明のレリーフ印刷版原版より得られるレリーフ印刷版は、リンス性に優れており彫刻カスの残存がなく、且つ、得られたレリーフ層が弾性に優れるため、インク転移性及び耐刷性に優れ、長期間にわたりレリーフ層の塑性変形や耐刷性低下の懸念がなく、印刷が実施できる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例におけるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特にことわらない限りにおいて、GPC法で測定した値を表示している。
【0114】
[実施例1]
1.レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、(B)特定ポリマーとして「デンカブチラール#3000−2」(電気化学工業製、ポリビニルブチラール Mw=9万、下記表1及び表2中に「PVB」と記載)50g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート47gを入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。その後、溶液を40℃にし、さらに(C−1)重合性化合物(多官能体)としてモノマー(M−1)(下記構造)を15g、重合性化合物(単官能体)としてブレンマーLMA(日油製)8質量部、(D)重合開始剤としてパーブチルZ(日油製)を1.6g、(E)光熱変換剤としてケッチェンブラックEC600JD(カーボンブラック、ライオン(株)製)を1g、を添加して30分間撹拌した。その後、(A)特定化合物(A−1)〔前記例示化合物〕を15g添加し、40℃で10分間攪拌した。この操作により、流動性のある架橋性レリーフ形成層用塗布液1(レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物)を得た。
【0115】
【化2】

【0116】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
PET基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、上記より得られた架橋性レリーフ形成層用塗布液1をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、70℃のオーブン中で3時間乾燥させて、厚さが凡そ1mmのレリーフ形成層を設け、レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1を作製した。
【0117】
3.レリーフ印刷版の作製
得られた原版のレリーフ形成層を80℃で3時間、さらに100℃で3時間加熱してレリーフ形成層を熱架橋した。
架橋後のレリーフ形成層に対し、以下の2種のレーザーにより彫刻した。
実施例1〜8及び比較例1〜4では、半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長 915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
また、実施例9〜16及び比較例5〜8では、炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位COレーザーマーカML−9100シリーズ(KEYENCE(株)製)を用いた。レーザー彫刻用印刷版原版1から保護フィルムを剥離後、炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2400DPIの条件で、1cm四方のベタ部分をラスター彫刻した。
【0118】
レリーフ印刷版が有するレリーフ層の厚さは凡そ1.25mmであった。
また、レリーフ層のショアA硬度を、前述の測定方法により測定したところ、75°であった。なお、ショア硬度Aの測定は、後述する各実施例及び比較例においても同様に行った。
【0119】
[実施例2〜26、比較例1〜8]
1.レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物の調製
実施例1で用いた(A)特定化合物、(B)特定ポリマーを、下記表1及び表2に記載の(A)特定化合物、(B)特定ポリマー又は比較バインダーポリマーを表1及び表2に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして、架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用架橋性樹脂組成物)を調製した。ここで、各実施例及び比較例で使用した(C)他の重合性化合物(下記表1及び表2中に「モノマー」と記載)(M−1)及び(M−2)は前記構造の化合物である。
【0120】
各実施例及び比較例で使用した(A)特定ポリマー及び比較バインダーポリマーの詳細は以下の通りである。
特定ポリマー(HEMAコポリマー1):(下記構造、重量平均分子量(Mw:40,000)
特定ポリマー(HEMAコポリマー2):(下記構造、重量平均分子量(Mw:30,000)
特定ポリマー(HEMAコポリマー3):(下記構造、重量平均分子量(Mw:50,000)
特定ポリマー(ポリエチレンイミン):エポミンSP−200(日本触媒製、Tg:100℃)
特定ポリマー(アミノ化アクリル樹脂):ポリメント NK−380(日本触媒製、Tgは室温(20℃)未満)
比較ポリマー1:SBR TR2000(JSR製、スチレン−ブタジエン共重合体、下記表には、「SBR」と記載)
なお、これら特定ポリマー、比較ポリマーのTgを記述の方法により測定した。その結果、Tgが20℃以上のものを表中に「○」と記載し、20℃未満のものを「×」と記載した。
【0121】
各実施例及び比較例で使用した(A)特定化合物は、前記例示化合物(A−1)〜(A−7)である。これらはいずれも、東京化成工業より市販品として入手可能である。
【0122】
【化3】

【0123】
2.レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版の作製
実施例1における架橋性レリーフ形成層用塗布液1を、架橋性レリーフ形成層用塗布液2〜8、比較架橋性レリーフ形成層用塗布液C1〜C4に各々変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版2〜8及び比較例のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版C1〜C4を得た。
【0124】
3.レリーフ印刷版の作製
レーザー彫刻用レリーフ印刷版原版1〜13、C1〜C4のレリーフ形成層を、実施例1と同様にして、熱架橋した後、表1及び表2に示すように、半導体レーザー又は炭酸ガスレーザーで彫刻して実施例1〜26のレリーフ印刷版1〜26、比較例1〜8のレリーフ印刷版C1〜C8を得た。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
4.レリーフ印刷版の評価
以下の項目でレリーフ印刷版の性能評価を行い、結果を表1〜表2に併記する。
(4−1)彫刻深さ
レリーフ印刷版原版1〜13、C1〜C4が有するレリーフ形成層をレーザー彫刻して得られたレリーフ層の「彫刻深さ」を、以下のように測定した。ここで、「彫刻深さ」とは、レリーフ層の断面を観察した場合の、彫刻された位置(高さ)と彫刻されていない位置(高さ)との差をいう。本実施例における「彫刻深さ」は、レリーフ層の断面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK9510((株)キーエンス製)にて観察することにより測定した。彫刻深さが大きいことは、彫刻感度が高いことを意味する。結果は、彫刻に用いたレーサーの種類毎に表1〜表2に示す。
【0128】
(4−2)リンス性
レーザー彫刻した版を水に浸漬し、彫刻部を歯ブラシ(ライオン社製、クリニカハブラシ フラット)で10回こすった。その後、光学顕微鏡でレリーフ層の表面におけるカスの有無を確認した。カスがないものを◎、殆どないものを○、少し残存しているものを△、カスが除去できていないものを×とした。
【0129】
表1〜表2に示されるように、(A)特定化合物と(B)特定ポリマーとを含有するレーザー彫刻用樹脂組成物を用いて作製された実施例のレリーフ印刷版は、比較例のレリーフ印刷版よりも、リンス性に優れ、製版時の生産性が高いことがわかる。また、レリーフ層の彫刻深さが大きいことから、彫刻感度が良好であることが判る。他方、比較例のレリーフ層では、実施例に比べてリンス性に劣るものであった。
なお、実施例1と実施例11、実施例14と実施例24、の対比により、(A)特定化合物として分子内にS原子を含有するものは、特にリンス性に優れ、且つ、彫刻深さがさらに深くなり、感度が向上していることがわかる。
また、実施例1〜実施例13と実施例14〜実施例26との対比により、同じレリーフ印刷版原版を用いた場合、ファイバー付き半導体レーザーを備え、光源としてFC−LDを用いた製版装置を用いることで、彫刻深さをさらに改良しうることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物、及び、(B)該(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応性基を有するバインダーポリマーを含有するレーザー彫刻用樹脂組成物を、熱により架橋させてなるレリーフ形成層を備えるレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項2】
前記(B)(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応基を有するバインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)が20℃以上200℃未満である請求項1記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項3】
前記(B)該(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が含む二塩基酸無水物部位と結合しうる反応基を有するバインダーポリマーにおける反応性基がヒドロキシル基である請求項1又は請求項2記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項4】
前記(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が、四塩基酸二無水物である請求項1から請求項2のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項5】
前記(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物が、分子内に硫黄原子を有する化合物である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項6】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(C)前記(A)分子内に二塩基酸無水物部位を二つ以上含有する化合物とは構造の異なる架橋剤を含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項7】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(D)重合開始剤を含有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項8】
前記レーザー彫刻用樹脂組成物に、さらに(E)700nm〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤を含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版。
【請求項9】
(1)請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用レリーフ印刷版原版におけるレリーフ形成層を熱により架橋する工程、及び、(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程、を含むレリーフ印刷版の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のレリーフ印刷版の製造方法により製造されたレリーフ層を有するレリーフ印刷版。
【請求項11】
前記レリーフ層の厚みが、0.05mm以上10mm以下である請求項10に記載のレリーフ印刷版。
【請求項12】
前記レリーフ層のショアA硬度が、50°以上90°以下である請求項10又は請求項11に記載のレリーフ印刷版。

【公開番号】特開2010−234746(P2010−234746A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87655(P2009−87655)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】