説明

レーザー溶着用樹脂組成物、レーザー溶着方法および樹脂成形品

【課題】レーザー透過性および成形性の双方に優れるレーザー溶着用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂成分として、実質的にポリトリメチレンテレフタレートのみを含むレーザー溶着用樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本分割出願は、以下の原出願の明細書の記載事項のうち、実施例2〜7の記載事項を発明として特許請求するものである。
【0002】
本発明は、レーザー溶着用樹脂組成物に関する。より詳しくは、本発明のレーザー用樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリトリメチレンテレフタレートを含む組成物に関する。本発明は、前記組成物のレーザー溶着方法に関する。本発明は、前記レーザー溶着方法により得られる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
樹脂部材を接合する方法として、レーザー溶着を用いる方法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法においては、レーザー透過性の樹脂部材およびレーザー吸収性の樹脂部材を積層し、レーザー透過性の樹脂部材側からレーザーを照射して、レーザーを両樹脂部材の界面に照射する。そして、両樹脂部材を、レーザー照射により発生した熱により溶着させる。
【0004】
レーザー透過性の樹脂部材を構成する樹脂としては、ポリエステルが注目されている。ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリエチレンテレフタレート(PET)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
PBTは成形性に優れる。しかしながら、PBTは結晶化しやすいためレーザー透過性が低い。また、レーザー透過性の樹脂部材には、一般に、レーザー透過性を向上させること以外の目的でレーザー吸収性の添加物を使用する。このような場合には、PBT樹脂部材のレーザー透過性がさらに低くなるので、PBT樹脂部材に対して前記添加物の使用は制限される。このような理由により、PBTはレーザー透過側の樹脂部材として使用しにくい。
【0006】
一方、PETは、レーザー透過性が高い。しかしながら、成形性が悪いという欠点がある。成形性を高めるために核剤を使用する手法があるが、核剤を使用すると結晶化が進行し、レーザー透過性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5893959号明細書
【特許文献2】特開2003−136601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、種々のレーザー透過性の樹脂部材が開示されているが、レーザー透過性および成形性の双方に優れるレーザー溶着用樹脂組成物に対する要求が存在する。
【0009】
従って、本発明の目的は、レーザー透過性および成形性の双方に優れるレーザー溶着用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、樹脂成分として、実質的にポリトリメチレンテレフタレートのみを含む、レーザー溶着用樹脂組成物に関する。本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、レーザー溶着により樹脂成形品を得る際に用いられる。
【0011】
また本発明は、樹脂成分として、実質的にポリトリメチレンテレフタレートのみを含むレーザー透過性の第1樹脂部材を準備する段階と、熱可塑性樹脂を含むレーザー吸収性の第2樹脂部材を準備する段階と、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを重ね合わせる段階と、前記第1樹脂部材を透過して、前記第2樹脂部材にレーザーを照射し、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを溶着する段階とを含む、レーザー溶着方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、樹脂成分として、実質的にポリトリメチレンテレフタレートのみを含むレーザー透過性の第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材にレーザー溶着されたレーザー吸収性の第2樹脂部材とを有する、樹脂成形品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、樹脂成分として所定量のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)を含む。PTTは、レーザー透過性が高く、その上、成形性も概ね良い。このため、本発明の組成物を他の組成物と溶着して成形品を得る場合には、レーザーを効率的に透過することができる上、成形品の優れた寸法精度を実現することができる。
【0014】
また、樹脂成分として、実質的にPTTのみを含むため、樹脂を混合する場合に比較して、機械物性や熱特性などの想定外の低下を防ぐことができ、製造コストを低下させることが可能である。実際の製品化の際には、このような製造コストの低下への寄与は大きな利点といえる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】レーザー溶着方法を説明する模式図である。
【図2】PTTの含有量と引張り強度および破断伸びとの関係を示すグラフである。
【図3】PTTの含有量と曲げ強度および曲げ弾性率との関係を示すグラフである。
【図4】PTTの含有量と透過率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(レーザー溶着用樹脂組成物)
本発明は、レーザー透過性および成形性の双方において優れる、ポリトリメチレンテレフタレートを使用したレーザー溶着用樹脂組成物に関する。特に本発明の組成物は、PTTの優れたレーザー透過性および優れた成形性を利用して、他の組成物とのレーザー溶着において、製造効率を向上させる組成物である。
【0017】
本発明者は、レーザー溶着に使用する樹脂部材について検討したところ、PTTが、PETおよびPBTと構造的にはわずかな違いであるにも関わらず、レーザー透過性および成形性に優れる樹脂であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものである。
【0018】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、樹脂成分として、実質的にポリトリメチレンテレフタレート(PTT)のみを含む。本発明において樹脂成分とは、組成物中に含まれるポリマーを意味する。なお、本発明でいう「実質的にポリトリメチレンテレフタレート(PTT)のみを含む」とは、製造工程で不可避的に微量生成する他成分や、不可避的に微量混入してしまう他成分は含んでいてもよいことを意味する。ただし、製品への影響を考慮すると、PTT以外の樹脂成分の混入量は極力少ないことが望ましい。具体的には、樹脂成分の総量を100とした場合に、1wt%以下が好ましく、0.5wt%以下がより好ましく、0.1wt%以下がさらに好ましく、0.05wt%以下が特に好ましく、検出限界以下であることが最も好ましい。
【0019】
PTTは、1,3−トリメチレングリコールおよびテレフタル酸を原料として合成されうる樹脂である。レーザー透過性樹脂およびレーザー吸収性樹脂を積層してこれらの界面を溶融して溶着する際に、レーザー透過側の樹脂部材としてPTTを用いることにより、優れたレーザー透過性が実現され、且つ樹脂成形品の成形性を向上させることができる。
【0020】
PTTの含有量が高いと、PTTが本来有する優れた特性が、より大きく発現される。具体的には、成形品の、引張り強度、破断時伸び、曲げ強度や曲げ弾性率などの特性が向上する。さらに、レーザー溶着に強く求められる特性である透過率が向上する。
【0021】
また、実質的に単一成分(PTT)からなる樹脂を用いる場合には、複数の成分からなる樹脂を用いる場合と比較して、製造工程を少なくすることができ、生産性を向上させることができる。さらに、複数成分の樹脂を使用する製造工程に要する装置を少なくすることができ、製造コストの削減にも寄与する。
【0022】
添加剤としては、ミネラル系強化材、難燃剤、タフナーなどが挙げられる。
【0023】
ミネラル系強化材とは、樹脂部材の機械的強度を向上させるために添加される、ミネラル成分を含む化合物を意味する。レーザー透過性を考慮すると、ミネラルの含有量が少ないミネラル系強化材を添加することが好ましい。ミネラル系強化材としては、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の各種繊維状強化材、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト等の繊維状および/または粉末状強化材などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。このようなミネラル分を含むミネラル系強化材を配合することによって、樹脂部材の成形性、機械的強度および耐熱性等を向上させるなどの効果が得られる。他成分配合の自由度が高まった効果を最大限に利用する観点からは、配合されるミネラル系強化材はガラス繊維が好ましい。ミネラル系強化材の配合量は特に限定されないが、樹脂組成物の総量に対して、好ましくは0.1〜60wt%である。
【0024】
難燃剤は、樹脂部材の難燃性を高めるために配合される。難燃剤の配合量は特に限定されないが、難燃剤の配合による効果およびレーザー透過性に与える影響を考慮すると、0.1〜30wt%の難燃剤を含むことが好ましい。
【0025】
タフナーは、樹脂部材の各種環境下での耐衝撃性等を向上させるために添加される化合物である。タフナーの配合量は特に限定されないが、タフナーの配合による効果およびレーザー透過性に与える影響を考慮すると、0.1〜30wt%のタフナーを含むことが好ましい。
【0026】
以上に述べたミネラル系強化材、難燃剤、およびタフナーの添加剤の全添加量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは、0.1〜50重量%である。
【0027】
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、任意の割合で他の成分を添加することができる。例えば、難燃助剤、抗酸化剤、充填剤、粘性改質剤、離型剤、核剤、可塑剤、離型剤、着色剤および紫外線安定剤などの他の添加剤を配合してもよい。例えば、離型剤として、LICOWAX OPなどの市販の滑剤が配合される。離型剤を配合することによって、成形時に金型から成形品を容易に取り出すことができる。これらの添加剤(ミネラル系強化材、難燃剤、およびタフナーを除く)の全添加量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、0.01〜15重量%、好ましくは、0.01〜10重量%である。
【0028】
着色剤は可視光域(400nmから700nm)を吸収し、ダイオードレーザーからYAGレーザー域(800nmから1200nm)では透過特性を有するものが好ましい。特に、一般に良く使用される黒色の着色剤において、このような特性を有するものが好ましい。
【0029】
レーザー透過用としての黒色着色剤としては、モノアゾ金属系、アントラキノン系、ペリノン系、或いはキノフタロン系等の染料や顔料が好ましい。それらは単一又は他の着色剤との併用で使うことができる。
【0030】
本発明の組成物は、原材料を任意の配合方法で配合することにより得られる。これらの配合成分は、通常、できるだけ均質化させることが好ましい。具体的には、樹脂組成物は、例えば、全ての原材料をブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは二軸押出機等の混合機で混合して均質化させて得ることができる。または、樹脂組成物は、一部の原材料を混合機で混合した後、残りの成分を加えてさらに混合して均質させて得ることもできる。または、樹脂組成物は、予めドライブレンドされた原材料を、加熱した押出機で溶融混練して均質化した後、針金状に押出し、次いで所望の長さに切断してペレットとして得ることもできる。
【0031】
なお、本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、レーザー溶着部材として成形する場合、レーザー透過側の部材の材料として使用することは勿論、レーザー吸収材を適宜添加するなどして、レーザー吸収側の部材の材料として用いることもできる。
【0032】
(レーザー溶着方法)
次に、本発明のレーザー溶着方法について説明する。
【0033】
本発明のレーザー溶着方法は、樹脂成分として、実質的にポリトリメチレンテレフタレートのみを含むレーザー透過性の第1樹脂部材を準備する段階と、熱可塑性樹脂を含むレーザー吸収性の第2樹脂部材を準備する段階と、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを重ね合わせる段階と、前記第1樹脂部材を透過して、前記第2樹脂部材にレーザーを照射し、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを溶着する段階とを含む。
【0034】
レーザー透過性の第1樹脂部材は、前記説明した本発明の樹脂組成物から構成される。この樹脂組成物についての説明は、既に説明したとおりであるため、ここでは省略する。これに対し、レーザー吸収性の第2樹脂部材に含まれる熱可塑性樹脂としては、レーザー溶着用組成物に使用可能な樹脂を使用することができる。好ましくは、比較的高い熱伝導率を有する樹脂が使用される。
【0035】
本発明では、特に、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。これらの熱可塑性樹脂は、レーザー溶着に利用可能なものであれば特に限定されない。
【0036】
これらの熱可塑性樹脂のより具体的な例には、例えば、ポリオレフィンではポリプロピレン、ポリエチレン等を例に挙げることができる。ポリエステルとしては、脂肪族ポリエステルおよび芳香族ポリエステルが含まれる。例えば、脂肪族ポリエステルの例は、ポリε−カプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートであり、芳香族ポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである。また、ポリアセタールとしては、例えばポリオキシメチレンなどを挙げることができる。第2樹脂部材にもPTTを用いても、もちろんよい。
【0037】
熱可塑性樹脂は、融点の低いものを用いることができる。融点が低いと少ないレーザーエネルギーで融解するため、サイクルの短縮、低出力レーザー装置によるコスト減といった効果を得ることができる。
【0038】
これらの熱可塑性樹脂は、本発明のレーザー吸収性の第2樹脂部材の全重量に基づいて、40〜100重量%、好ましくは、60〜100重量%で含まれる。
【0039】
レーザー吸収性の第2樹脂部材の他の成分としては、レーザー透過性の第1樹脂部材用の組成物と同様に、各種の添加剤を含むことができる。これら添加剤の添加量は、第2樹脂部材の全重量に基づいて、0.01〜15重量%、好ましくは、0.01〜10重量%である。
【0040】
本発明のレーザー溶着方法は、上述したように、レーザー透過性の第1樹脂部材を準備する段階と、レーザー吸収性の第2樹脂部材を準備する段階と、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを重ね合わせる段階と、前記第1樹脂部材を透過して、前記第2樹脂部材にレーザーを照射して、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを溶着する段階とを含む。
【0041】
本発明のレーザー溶着方法を実施するにあたり、その前段階となる第1、2樹脂部材の準備段階は、それぞれの組成物を成形することにより行われる。この成形は、通常行われる種々の手段により行い得る。例えば、レーザー透過性の第1樹脂部材とレーザー吸収性の第2樹脂部材に使用する各組成物のペレットを用いて、射出成形機により成形することができる。本発明では、射出成形が好ましいが、押出成形、圧縮成形、発泡成形、ブロー成形、真空成形、インジェクションブロー成形、回転成形、カレンダー成形、溶液流延等、一般に行われるいずれの成形方法を採用することもできる。このような成形により、種々の形状のレーザー溶着用樹脂部材を得ることができる。
【0042】
次に、このように成形された第1、2樹脂組成物を重ね合わせて、第1樹脂部材を透過して、第2樹脂部材にレーザーを照射して、第1樹脂部材と第2樹脂部材とを溶着する段階を説明する。
【0043】
図1は、本発明のレーザー溶接法の一般例を示す模式図である。図1を参照すると、表面4を含む第1樹脂部材2および第2樹脂部材3が提供されている。典型的なレーザー溶接法では、第1樹脂部材2はレーザービーム1を「透過させる」、つまり第1樹脂部材2はレーザービーム1に関して高い透過率を有し、第2樹脂部材3はレーザービーム1を「透過させない」、つまり第2樹脂部材3はレーザービーム1に関して高い吸収率を有する。従って、レーザービーム1を表面4において接合されている第1樹脂部材2および第2樹脂部材3に向けると、レーザービーム1は第1樹脂部材2を透過して第2樹脂部材3に達する。第2樹脂部材3およびその表面4はレーザービーム1のエネルギーを吸収し、それによって表面4を溶融し、表面4が第1樹脂部材2に接して押されるとき、第1樹脂部材2と第2樹脂部材3が1つに溶接される結果となる。
【0044】
図1において、レーザー1を表面4に向けて照射する場合には、照射の速度は、溶着される材料によって変化するが、例えば、レーザー透過性樹脂部材にPTTを用いる場合には、0.1〜100cm/秒の範囲の走査速度を使用することができる。また、レーザーの出力は、溶着する材料により変化するが、例えば、レーザー吸収性樹脂部材としてクラスティン(登録商標)SK605 BK851を使用した場合には、10〜250Wの範囲の出力を使用することができる。
【0045】
なお、図1では、直線状の溶着を説明したが、本方法はこれに限定されず、種々の形状の溶着が可能である。また、溶着される部材(第1樹脂部材および第2樹脂部材)は、図1に示されるような形状である必要はなく、用途に応じて円形、円筒形、半球形などの種々の形態をとり得る。また、これらの部材は同じまたは異なる厚みを有していてもよく、それぞれ段差を設け、段差部分を互いに接触させて接触させた部分にレーザーを照射することもできる。
【0046】
また、レーザーの照射態様としては、レーザー照射部(図示せず)を移動することにより走査を行ってもよく、樹脂部材が固定されている台座(図示せず)を走査に合わせて稼動するようにしてもよい。
【0047】
本発明のレーザー溶着で使用できるレーザー光源は、YAGレーザー(1064nm)、半導体レーザー(例えば、808nm、940nm、980nmなどの近赤外領域の波長を有するもの)などである。
【0048】
(樹脂成形品)
さらに、本発明の樹脂成形品について説明する。本発明の樹脂成形品は、樹脂成分として、実質的にポリトリメチレンテレフタレートのみを含むレーザー透過性の第1樹脂部材の第1樹脂部材と、前記第1樹脂部材にレーザー溶着されたレーザー吸収性の第2樹脂部材とを有する。
【0049】
本発明の樹脂成形品は、実質的な製品となり得る。例えば、電気・電子用途、自動車用途、一般雑貨用途、建築部材等に有用である。特に、本発明では、自動車部品、例えばエンジンルーム内のモジュール部品、インテークマニホールト、アンダーフード部品、ラジエータ部品、インパネなどに用いるコクピットモジュール部品に用いることができる。その他の用途としては、例えば、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話等の電子部品等に有用である。
【実施例】
【0050】
実施例においては、PBT、PTT、滑剤およびガラス繊維として、以下の材料を用いた。
PBT:CRASTIN 6134
PTT:Sorona(登録商標) Bright
離型滑剤:LICOWAX OP
ガラス繊維:CS 03 JA FT 689S
【0051】
(参考例1)
滑剤が均一分散されるように、PTT、及び滑剤は、ガラス繊維を添加する前に事前に混合された。2軸スクリュー押出し機(Z&P社製ZSK−40)にてそれらの混合物を溶融及び練り込みし、その混合物が溶融したところでガラス繊維を添加し、最終的にペレットを得た。この組成を表1に示す。
【0052】
得られたペレットを用い、射出成形機(JSW社製J100EII−P)にて、(a)ISOに基づく4mm厚みの試験片、(b)1mm厚みの平板、及び(c)2mm厚みの平板を成形した。この時の樹脂溶融温度は260から270℃、また金型温度は80℃であった。
【0053】
ISOによる測定方法に基づき、ISO試験片で引張り強度、破断時曲げ、曲げ強度、及び曲げ弾性率を測定した。1mm及び2mm厚みの成形平板の透過率は、分光計(島津製作所(株)製UV−3100)により400nmから1200nmの近赤外線域で測定した。表1に通常ダイオードレーザーで使われる940nmの波長での透過率を示す。また、表1に、全ての結果をまとめて示す。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施例2〜7、比較例1)
成分の配合量を表1に示す量とした以外は、参考例1と同様の手順により、樹脂成形品を得た。
【0056】
参考例1、実施例2〜7および比較例1によって得られた結果を図2〜図4に示す。図2は、PTTの含有量と引張り強度および破断伸びとの関係を示すグラフである。図3は、PTTの含有量と曲げ強度および曲げ弾性率との関係を示すグラフである。図4は、PTTの含有量と透過率との関係を示すグラフである。
【0057】
図示されるように、樹脂成分中のPTTの含有量を増大させると、破断伸びについては殆ど変化しないが、引張り強度、曲げ強度、曲げ弾性率、透過率については、軒並み向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、レーザー溶着による樹脂成形品の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 レーザービーム
2 第1樹脂部材
3 第2樹脂部材
4 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートで構成される樹脂成分を含み、ポリトリメチレンテレフタレートの含有量は前記樹脂成分の総重量を基準として14.33〜85.96重量%であることを特徴とするレーザー溶着用樹脂組成物。
【請求項2】
ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートで構成される樹脂成分を含み、ポリトリメチレンテレフタレートの含有量は前記樹脂成分の総重量を基準として14.33〜85.96重量%であるレーザー透過性の第1樹脂部材を準備する段階と、
熱可塑性樹脂を含むレーザー吸収性の第2樹脂部材を準備する段階と、
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを重ね合わせる段階と、
前記第1樹脂部材を透過して、前記第2樹脂部材にレーザーを照射し、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを溶着する段階と、
を含む、レーザー溶着方法。
【請求項3】
ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートで構成される樹脂成分を含み、ポリトリメチレンテレフタレートの含有量は前記樹脂成分の総重量を基準として14.33〜85.96重量%であるレーザー透過性の第1樹脂部材と、
前記第1樹脂部材にレーザー溶着されたレーザー吸収性の第2樹脂部材と、
を有する、樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74394(P2011−74394A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282177(P2010−282177)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【分割の表示】特願2006−153711(P2006−153711)の分割
【原出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】