説明

レーザ光による欠陥修正方法

【課題】 基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層を配設した複合基材において、下地層を損傷することなく、簡単に、且つ、確実に、樹脂部の突起欠陥の修正を行える、レーザ光による欠陥修正方法を提供する。
【解決手段】 レーザ光が複合基材上に照射される際の光強度(W/面積)である照射強度を制御し、樹脂部を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度として、突起欠陥を含む領域に対して、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥を除去し、突起欠陥領域の下地層を露出させる、突起欠陥除去を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層を配設した複合基材における、該樹脂部の突起欠陥を、レーザ光を照射することにより除去する、突起欠陥の修正方法に関し、特に、カラーフィルタ形成基板、もしくは、該カラーフィルタ形成基板を作製するための中間工程の基板における突起欠陥を修正する、レーザ欠陥修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、通常、電極を有する2枚の基板を対向させて、両基板間に液晶が狭持された構造とされているが、この両基板間の間隔を一定に保つために、粒径の均一なプラスチックビーズなどを間隔制御用のスペーサーとして両基板間に散在させている。
近年、液晶表示素子の大型化、高品質化にともない、散在させたビーズスペーサーに代えて、感光性樹脂のフォトリソグラフィーによって基板上の所定の位置に形成する、スペーサー用柱状構造物(以下、柱状スペーサー」とも言う)が提案されている。
この柱状スペーサーを形成方法としては、カラーフィルタ上に感光性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィーにより形成する方法が挙げられている。
柱状スペーサーに代えることによって、ビーズスペーサーの欠点であった均一分布性、セル内でのビーズ移動、ビーズ周辺の配向の乱れで光が漏れることによるコントラスト低下などを、大幅に改善することができる。
このため、カラーフィルタ形成基板においても、柱状スペーサーを付けたカラーフィルタ形成基板の要求が高まってきている。
【0003】
更に、より高品位表示の液晶表示素子として、上記柱状スペーサを用いたセル構造とし、且つ、配向制御用突起を設け、配向分割垂直配向型(以下、MVAモードあるいは複数配向分割型とも言う)とするものが提案されている。
MVAモードは、広視野角、高速応答を実行するために極めて有望で、カラーフィルタ形成基板において、カラーフィルタ表面に配向制御用突起を設けることによって、配向の乱れによる光が漏れることをほぼ完全に防ぐことができる。
【0004】
これに伴い、MVAモードの液晶表示素子作製のために、上記柱状スペーサーと配向制御用突起とを配したカラーフィルタ形成基板の作製が求められている。
そして、例えば、図5(a)にその一部断面を示し、図5(b)にその平面図を示す、透明基板111上に透明基板上にブラックマトリクス112、着色層113a〜113c、透明導電膜115、液晶間隔制御用の柱スペーサ117、液晶の配向を制御するための配向制御用突起116を、この順に、配設する、カラーフィルタ形成基板110が作製されている。
尚、図5(b)は図5(a)のE1側からみた図で、図5(a)は図5(b)のE2−E3側における断面を示した図である。
図5中、114はオーバコート層で、113A、113B、113Cはそれぞれ、第1の着色層113aの領域、第2の着色層113bの領域、第3の着色層113cの領域を示すもので、太点線はこれらの領域の境界を示している。
そして、このようなカラーフィルタ形成基板を用いて、図6に示すような、MVAモードの液晶表示パネルが作製される。
また、図6中、250はカラーフィルタ形成基板、251は透明基板、252はブラックマトリクス、253a〜253cは着色層、254はオーバコート層、255は透明導電膜(ITO)、258は柱状スペーサ、259は配向制御用突起、262は液晶、262a、262bは配向材、270は対向基板、271は透明基板、272は透明電極、280は拡散板、281はバックライトである。
【0005】
このような、MVAモードの液晶表示素子作製のための、柱状スペーサーと配向制御用突起とを配したカラーフィルタ形成基板においては、柱状スペーサーと配向制御用突起の形成過程において突起欠陥(黒欠陥とも言う)が発生した場合、これを修正することが必要である。
これに対し、このようなカラーフィルタ形成基板におけるレーザ修正方法が、特開2005−17486号公報(特許文献1)等に提案されている。
特開2005−17486号公報に記載の方法は、透明導電膜を損傷することなく柱状スペーサや配向制御用突起の黒欠陥(以下、突起欠陥とも言う)を修正できる修正方法を提供しようとするもので、修正に用いるレーザ光の波長を吸収する吸収層が薄膜状に積層された転写フィルムを用いて、黒欠陥上に、吸収層を形成して、レーザ照射を行うものであるが、転写フィルムを用いて吸収層の配設が必要で欠陥修正の作業が煩雑となる問題がある。
【特許文献1】特開2005−17486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、最近では、より高品位表示の液晶表示素子として、上記柱状スペーサを用いたセル構造とし、且つ、配向制御用突起を設け、配向分割垂直配向型(以下、MVAモードとも言う)とするものが提案され、特に、この型の液晶表示パネルに用いられる、透明基板上にブラックマトリクス、着色層、ITOからなる透明導電膜、液晶間隔制御用の樹脂からなる柱スペーサ、液晶の配向を制御するための樹脂からなる配向制御用突起を、この順に、配設するカラーフィルタ形成基板の作製においては、透明導電膜を損傷することなく、樹脂からなる柱状スペーサや配向制御用突起の黒欠陥(突起欠陥)を修正できる修正方法で、簡単に、且つ、確実に行えるレーザ光による修正方法が求められている。 本発明はこれに対応するもので、基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層を配設した複合基材において、下地層を損傷することなく、簡単に、且つ、確実に、樹脂部の突起欠陥の修正を行える、レーザ光による欠陥修正方法を提供しようとするものである。
特に、透明基板上にブラックマトリクス、着色層、ITOからなる透明導電膜、液晶間隔制御用の樹脂からなる柱スペーサ、液晶の配向を制御するための樹脂からなる配向制御用突起を、この順に、配設するカラーフィルタ形成基板等の、表示パネル用のカラーフィルタ形成基板もしくは該カラーフィルタ形成基板を作製するための中間工程の基板の作製において、透明導電膜を損傷することなく、樹脂からなる柱状スペーサや配向制御用突起の黒欠陥(突起欠陥)を修正できる修正方法で、簡単に、且つ、確実に行えるレーザ光による修正方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザ光による欠陥修正方法は、基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層を配設した複合基材における、該樹脂部の突起欠陥を、レーザ光を照射することにより除去する、突起欠陥の修正方法であって、前記レーザ光が前記複合基材上に照射される際の光強度(W/面積)である照射強度を制御し、前記樹脂部を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度として、突起欠陥を含む領域に対して、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥を除去し、突起欠陥領域の下地層を露出させる、突起欠陥除去を行うことを特徴とするものである。
そして、上記のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記照射強度の制御は、レーザ光源からの光の出力を減衰調整する透過率可変フィルタ(アッテネータあるいは減衰器とも言う)による透過率制御により、およびまたは、レーザ光を縮小投影して前記複合基材上に照射するレンズ系の縮小倍率制御により、行うものであることを特徴とするものである。
また、上記いずれかのレーザ光による欠陥修正方法であって、前記複合基材が表示パネル用のカラーフィルタ形成基板もしくは該カラーフィルタ形成基板を作製するための中間工程の基板であることを特徴とするものであり、前記樹脂部が柱スペーサ、配向制御用突起のいずれかであることを特徴とするものである。
また、請求項3ないし4のいずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、レーザ光の波長が355nm以下であることを特徴とするものである。
また、上記いずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記繰り返しのショット(パルス)照射の中において、途中、アパーチャのサイズを変更して、照射領域を変えることを特徴とするものである。
また、上記いずれかのレーザ光による欠陥修正方法であって、前記繰り返しのショット(パルス)照射の中において、途中、光強度(W/面積)を変更することを特徴とするものである。
また、上記いずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記突起欠陥除去の後に、レーザー照射によって新たに生成した、前記突起欠陥領域エリア近傍に残留した塵などの残留物を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度で、1回以上、ショット(パルス)照射を行い、該残留物を除去することを特徴とするものである。
通常は、ショット照射のサイクルは1(ショット/秒)〜30(ショット/秒)程度の範囲であるため、実用レベル以上の回数のショット照射、例えば、10000回以上のショット照射による損傷の有無で判断する。
尚、ここで、「下地層に損傷を与えない照射強度」とは、ショット照射を実用レベルで何回行っても、下地層に損傷を与えない照射強度で、照射による除去が起こらなく、且つ、照射に吸収熱による損傷が起こらないものである。
また、ここで、突起欠陥とは、前記樹脂部の樹脂により、正常な形成領域以外の箇所に余分に形成している欠陥部分で、黒欠陥ともよばれ、正常な形成領域に連続しているものや、形成領域から分離しているものも含む。
また、ここで、AおよびまたはBとは、Aの場合、AとBの場合、Bの場合の、いずれの場合も含むことを意味する。
【0008】
(作用)
本発明のレーザ光による欠陥修正方法は、このように、基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層を配設した複合基材において、下地層を損傷することなく、簡単に、且つ、確実に、樹脂部の突起欠陥の修正を行える、レーザ光による欠陥修正方法の提供を可能としている。
具体的には、レーザ光が複合基材上に照射される際の光強度(W/面積)である照射強度を制御し、樹脂部を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度として、突起欠陥を含む領域に対して、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥を除去し、突起欠陥領域の下地層を露出させる、突起欠陥除去を行うことにより、これを達成している。
レーザ光の強度の制御としては、レーザ光源からの光の出力を減衰調整する透過率可変フィルタ(アッテネータあるいは減衰器とも言う)による透過率制御により、およびまたは、レーザ光を縮小投影して前記複合基材上に照射するレンズ系の縮小倍率制御により、行うものである、請求項2の発明の形態とすることにより、容易に、照射するレーザ光の強度を所望の範囲内に制御することを可能としている。
例えば、レーザ光源からの出力を透過可変フィルタにて、その透過率ランクを変更しながら、下地層を照射して、下地層にダメージを与える最低の透過率のランクから、1ランク透過率の小さいランクでの照射における照射強度を第1の照射強度として求め、また、該第1の照射強度以下の出力で樹脂部(突起欠陥も同じ材質)を照射して、樹脂部(突起欠陥)が除去できる最低の透過率のランクでの照射における照射強度を第2の照射強度として求め、レーザ光の出力を透過可変フィルタにて制御して、第1の照射強度と第2の照射強度の間の照射強度に設定して、欠陥修正を行う。
前記複合基材としては、表示パネル用のカラーフィルタ形成基板もしくは該カラーフィルタ形成基板を作製するための中間工程の基板が挙げられる。
特に、前記樹脂部が柱スペーサ、配向制御用突起のいずれかである場合には、有効である。
このような複合基材としては、透明基板上にブラックマトリクス、着色層、ITOからなる透明導電膜、液晶間隔制御用の樹脂からなる柱スペーサ、液晶の配向を制御するための樹脂からなる配向制御用突起を、この順に、配設するMVAモードカラーフィルタ形成基板や、それを作製するための中間工程の基板が挙げられる。
また、レーザ光の波長が355nm以下である、請求項5の発明の形態とすることにより、表示パネル用のカラーフィルタ形成基板もしくは該カラーフィルタ形成基板を作製するための中間工程の基板において、ITOからなる下地の下層のカラーフィルタやブラックマトリクスからなる着色層への吸収を少なくし、吸収による熱の影響もないものとできる。
また、繰り返しのショット(パルス)照射の中において、途中、アパーチャのサイズを変更して、照射領域を変える、請求項6の発明の形態とすることにより、できるだけ下地にレーザを多く当てないように、できるだけ樹脂が取り除けた部分への照射を避けるよう、加工の途中において照射領域の面積サイズを変形させることができる。
また、繰り返しのショット(パルス)照射の中において、途中、光強度(W/面積)を変更する、請求項7の発明の形態とすることにより、突起欠陥除去の作業時間の調整を可能とするとともに、下地(ITO)の下部への影響を配慮した照射を行うことができる。 例えば、はじめは、高めの光強度で照射し、部分的に下地が露出してからは光強度を低めにして最後まで照射を行うことにより、突起欠陥除去の作業時間をできるだけ短かくするとともに、下地(ITO)の下部への影響を少なくできる。
また、突起欠陥除去の後に、レーザ光照射によって新たに生成した、突起欠陥領域エリア近傍に残留した塵などの残留物を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度で、1回以上、ショット(パルス)照射を行い、該残留物を除去する、請求項8の発明の形態とすることにより、突起欠陥除去後に、レーザ光照射にて新たに生成した樹脂などの残留を除くことを可能としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように、基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層を配設した複合基材において、下地層を損傷することなく、簡単に、且つ、確実に、樹脂部の突起欠陥の修正を行える、レーザ光による欠陥修正方法の提供を可能とした。
特に、透明基板上にブラックマトリクス、着色層、ITOからなる透明導電膜、液晶間隔制御用の樹脂からなる柱スペーサ、液晶の配向を制御するための樹脂からなる配向制御用突起を、この順に、配設するカラーフィルタ形成基板等の、表示パネル用のカラーフィルタ形成基板もしくは該カラーフィルタ形成基板を作製するための中間工程の基板の作製において、透明導電膜を損傷することなく、樹脂からなる柱状スペーサや配向制御用突起の黒欠陥(突起欠陥)を修正できる修正方法で、簡単に、且つ、確実に行えるレーザ光による修正方法の提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1(a)は本発明のレーザ光による欠陥修正方法の実施の形態の1例を示したの概略図で、図1(b)は図1(a)に示す突起欠陥とレーザ光の照射領域を示した図で、図1(c)は別の形状の突起欠陥とレーザ光の照射領域を示した図で、図2は欠陥修正装置の一例を示した概略構成図で、図3は図2に示す欠陥修正装置のレーザ光の光学系を簡略化して示した図で、図4(a)はITOからなる下地層に対しての照射強度の範囲の決め方の1例を示したフロー図で、図4(b)は樹脂部に対しての照射強度の範囲の決め方の1例を示したフロー図である。
尚、図4におけるS1〜S8、S11〜S18は処理ステップを表す。
図1〜図4中、10はカラーフィルタ形成基板(複合基材とも言う)、11は透明基板(ここでは石英基板)、12はブラックマトリクス、13aは第1の着色層、13bは第2の着色層、13cは第3の着色層、14はオーバコート層(平坦化層とも言う)、15は下地層(ここではITO膜)、16は配向制御用突起(樹脂部とも言う)、18、18aは突起欠陥(配向制御用突起と同じ材質)、20は基板ホルダー、30はXYステージ、40はレーザ光(ここでは355nm波長のYAGレーザ)、41、41aは照射領域(ショット領域とも言う)、50はレーザ照射手段、51はレーザ発生部、52は透過率可変フィルタ(アッテネータあるいは減衰器とも言う)、53はレンズ、54はアパーチャ、55はレンズ、56は対物レンズ、60はZ方向移動用ガイドレール、70は制御部、80は照射強度制御用データベース、90は表示モニターである。
【0011】
はじめに、本発明のレーザ光による欠陥修正方法の実施の形態の1例を、図1に基づいて説明する。
本例のレーザ光による欠陥修正方法は、基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層15を配設した複合基材における、該樹脂部の突起欠陥を、レーザ光を照射することにより除去する、突起欠陥の修正方法で、図2に示すようにして、XYステージ30上にカラーフィルタ形成基板10を載置し、図1に示すように、突起欠陥18をレーザ40にて照射して除去する。
そして、特に、前記レーザ光が前記カラーフィルタ形成基板(複合基材)10上に照射される際の光強度(W/面積)である照射強度を制御し、前記樹脂部を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度として、突起欠陥18を含む領域に対して、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥18を除去し、突起欠陥領域の下地層15を露出させる、突起欠陥除去を行うものである。
本例では、また、突起欠陥除去の後に、レーザー照射によって新たに生成した、前記突起欠陥領域エリア近傍に残留した塵などの残留物を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度で、1回以上、ショット(パルス)照射を行い、該残留物を除去する。
ここでは、複合基材を、図5に示すような、透明基板上にブラックマトリクス、着色層、透明導電膜、液晶間隔制御用の柱スペーサ、液晶の配向を制御するための配向制御用突起を、この順に、配設する、MVAモードの液晶表示パネル形成用のカラーフィルタ形成基板10(図1に示す10で、図5の110に相当)とし、修正対象の樹脂部の突起欠陥を配向制御用突起16の突起欠陥18とするものであり、カラーフィルタ形成基板(複合基材)10は、ITOからなる下地層15の下部にブラックマトリクス12、着色層13a〜13cを配するため、レーザ光吸収による熱による影響を考慮し、レーザ光として、YAGレーザの第3高調波(355nm)を用いている。
尚、レーザ光波長としては、355nm以下であれば、これに限定はされない。
また、ここでは、透明基板11として二酸化ケイ素100%の石英ガラスを用いているが、プラスチック基板、無アルカリガラスが透明基板として適宜用いられる。
また、ブラックマトリクス12、着色層13a〜13cとしては、顔料分散法によりフォトリソ形成された着色層を用いているが、これに限定されない。
下地層15としては、スパッタ形成されたITO膜が用いられている。
ここでは、液晶間隔制御用の柱スペーサ(図5の117参照)、配向制御用突起16は、それぞれ、ネガ型の感光剤を製版して形成したものである。
【0012】
図2に示す欠陥修正装置には、駆動系(XYステージ30、Z方向移動用ガイドレール60)、レーザ照射手段50の他に、欠陥部の状態を確認する確認手段として表示用のモニター90と、照射強度の制御を容易とするための照射強度制御用のデータベース80が備えられているが、各部は、制御部70により制御されて、所定の照射動作を行う。
レーザ照射手段50は、図3に示すように、簡単には、レーザ光発生部51、透過率可変化フィルタ52、レンズ53、レーザ光を成形するアパーチャ54、レンズ55、対物レンズ56等を備えて、光学系を形成しており、成形されたレーザ光は対物レンズ56により集光され照射されるが、レーザ光の照射ショットを制御するシャッタ、フィルタ、ハーフミラー、全反射ミラー等も、明示していないが、必要に応じて、備えている。
ここでは、レーザ照射手段50の光学系中のハーフミラーを介して、観察あるいは表示モニター90にて画像を得ることができるように、そのための光源、撮像装置が組み込まれている。
また、照射強度制御用のデータベース80は、予め、樹脂部を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度をデータベース化しておいたもので、各種の樹脂部材質、各種の照射領域サイズについても、所定の制御された照射強度に調整できる指針を与えるものである。
例えば、図3に示す光学系において、所定のアパーチャ開口において、透過率可変化フィルタ52の透過率のレベルと対物レンズの縮小倍率によってのみ、照射強度を調整するとした場合、透過率可変化フィルタ52の透過率のレベル、対物レンズの縮小倍率をパラメータとして、各種の樹脂部材質について照射強度が所望の範囲内である条件を与えることができる。
また、図2に示す欠陥修正装置には、明示していないがアパーチャの開口を制御し、対物レンズ56によらずに、即ち、縮小倍率を変えないで、面積サイズを変えることができる機構を備えている。
これにより、同じ照射強度で照射面積を容易に変えることができ、できるだけ下地にレーザを多く当てないように、できるだけ樹脂が取り除けた部分への照射を避けて、欠陥の除去を可能としている。
【0013】
本例のレーザ光による欠陥修正方法においては、先にも述べたように、制御して、樹脂部16を除去できる照射強度で、且つ、下地層15に損傷を与えない照射強度として、突起欠陥18を含む領域に対して、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥18を除去し、突起欠陥領域の下地層15を露出させる、突起欠陥除去を行うものである。
図1(b)に示すように、突起欠陥が照射領域(ショット領域とも言う)より小サイズで、配向制御用突起16から十分離れたものであれば、その照射領域41を配向制御用突起16から離れた状態で、且つ、突起欠陥18全体を含む領域とし、照射領域をずらさないで、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥18を除去し、突起欠陥領域の下地層15を露出させる。
また、図1(c)に示すように、突起欠陥が照射領域(ショット領域とも言う)より小サイズであるが、配向制御用突起16と繋がった状態のものであれば、配向制御用突起16の外形に沿い、突起欠陥18全体を含む領域とし、照射領域をずらさないで、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥18を除去し、突起欠陥領域の下地層15を露出させる。
尚、明記していないが、図2に示す欠陥修正装置においては、その光学系により照射領域の回転もできる。
上記の欠陥修正方法を基本として、突起欠陥が大サイズの場合は、必要に応じて、ショット領域を分けて、上記と同様に修正を行う。
【0014】
次に、照射強度の決め方の1例を、図4に基づいて簡単に説明しておく。
先ず、ITOからなる下地層15に対する照射照度の範囲を、図4(a)に基づいて、以下のようにして決める。
説明を簡単化するため、ここでは、照射強度は、透過率可変フィルタ52の透過率レベル(ステップとも言う)、対物レンズの縮小倍率で決まるとして、対物レンズの縮小倍率を固定とした場合について説明する。
先ず、透過率可変フィルタ52の透過率レベル(ステップとも言う)を最低の出力となるL1nにセットする。(S1〜S2)
ここでは、予め、最低の出力となるL11において下地層が損傷しないように、透過率 レベルL11を選択しておく。
尚、ここでは、L11、L12、L13・・・の順に、1ランクづつ透過率が大きくるとする。
次いで、透過率レベルL11にて、ITOからなる下地層15に対して、所定の回数N1だけショット照射を行う。(S3)
ここでは、N1は通常の修正において実施しない程度の(実用レベルでない)大きい数、例えば、10000回以上とする。
そして、照射後、下地層15に損傷があるか、否かを調べ(S4)、損傷がない場合には、透過率可変フィルタ52の透過率レベル(ステップとも言う)を、透過率が大きくなる方向に1ランク上げた透過率レベルL12にセットする。(S5〜S6)
更に、透過率レベルL12にて、ITOからなる下地層15に対して、所定の回数Nだけショット照射を行い(S3)、損傷がある場合には、このときの透過率レベルL12から透過レベルL11を第1の照射強度設定用の透過率レベルとする。(S7)
一方、照射後、下地層15に損傷があるか、否かを調べ(S4)、損傷がない場合には、透過率可変フィルタ52の透過率レベル(ステップとも言う)を、透過率が大きくなる方向に1ランク上げた透過率レベルにセットしながら(S5〜S6)、ステップS3〜ステップS6の処理ステップを、ステップS4で損傷が見られるまで、繰り返し行い、このときの透過率レベルL1nから、透過レベルL1(n-1)を第1の照射強度設定用の透過率レベルとする。(S7)
このようにして、第1の照射強度設定用の透過率レベルLAを求める。
ITOからなる下地層15に対する照射照度の範囲は、透過レベルLA以下の透過レベルとなる。
本例では、突起欠陥除去の後の新たに生成する残留物の除去を、突起欠陥の除去と同じ照射強度で行う。
尚、通常、突起欠陥除去の後の新たに生成した、前記突起欠陥領域エリア近傍に残留した塵などの残留物は、上記の樹脂部と同じで、該残留物の除去は、突起欠陥の除去と同じ照射強度で行える。
【0015】
次に、樹脂部(配向制御用突起16、突起欠陥18)に対する照射照度の範囲を、図4(b)に基づいて、以下のようにして決める。
ここでも、照射強度は、透過率可変フィルタ52の透過率レベル(ステップとも言う)、対物レンズの縮小倍率で決まるとして、対物レンズの縮小倍率を固定とした場合について説明する。
先ず、透過率可変フィルタ52の透過率レベル(ステップとも言う)を最低の出力となるL21にセットする。(S11〜S12)
ここでは、予め、最低の出力となるL21において下地層が損傷しないように、透過率レベルL21を選択しておく。
尚、ここでは、L21、L22、L23・・・の順に、1ランクづつ透過率が大きくなるとする。
次いで、透過率レベルL21にて、ITOからなる樹脂部16、18に対して、所定の回数N2だけショット照射を行う。(S13)
ここでは、N2は通常の修正において実施しない程度の大きい数(例えば、10000回以上)とする。
そして、照射後、樹脂部16、18に損傷があるか、否かを調べ(S14)、損傷がない場合には、透過率可変フィルタ52の透過率レベルを、透過率が大きくなる方向に1ランク上げた透過率レベルL22にセットする。(S15〜S16)
更に、透過率レベルL22にて、樹脂部16、18に対して、所定の回数N2だけショット照射を行い(S13)、損傷がある場合には、このときの透過率レベルL2 を第2の照射強度設定用の透過率レベルとする。(S17)
一方、照射後、樹脂部16、18に損傷があるか、否かを調べ(S14)、損傷がない場合には、透過率可変フィルタ52の透過率レベル(ステップとも言う)を、透過率が大きくなる方向に1ランク上げた透過率レベルにセットしながら(S15〜S16)、ステップS3〜ステップS6の処理ステップを、ステップS14で損傷が見られるまで、繰り返し行い、このときの透過率レベルL2nを第2の照射強度設定用の透過率レベルとする 。(S17)
このようにして、第2の照射強度設定用の透過率レベルLBを求める。
これから、樹脂部に対する照射照度の範囲は、透過レベルLB以上の透過レベルとなる。
一般に、透過レベルLAの方が透過レベルLBよりも透過率が高いレベルで、結局、樹脂部を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度とする、透過率可変フィルタ52の透過レベルの範囲は、透過レベルBよりも透過率が高いレベルで、且つ、透過レベルLAよりも透過率が低いレベルである。
この範囲に、透過率可変フィルタ52の透過レベルを制御する。
本例では、この範囲の所定の透過レベルで、所定のアパーチャサイズで、対物レンズの56の縮小倍率を一定にして、即ち、照射強度を固定して、繰り返しショット照射を行い、突起欠陥除去を行うものであるが、これに限定されない。
繰り返しのショット(パルス)照射の中において、対物レンズ56の縮小倍率を変えないで照射強度を固定したまま、アパーチャの開口の面積サイズを変化させて照射して、突起欠陥除去を行っても良い。
この場合は、本例に比べ、アパーチャの開口の面積サイズ変更という手間はかかるが、できるだけ下地にレーザを多く当てないように、できるだけ樹脂が取り除けた部分への照射を避けて、欠陥の除去を可能としている。
また、本例あるいは、上記の方法において、更に繰り返しのショット(パルス)照射の中において、途中、光強度(W/面積)を変更する形態も挙げられる。
この場合は、例えば、はじめは、高めの光強度で照射し、部分的に下地が露出してからは光強度を低めにして最後まで照射を行うことにより、突起欠陥除去の作業時間をできるだけ短かくするとともに、下地(ITO)の下部への影響を少なくできる。
【0016】
本発明は、上記に限定されるものではない。
例えば、本例では、照射強度制御用のデータベース(図2の80)を備えた装置で行うものであるが、必ずしもこのようなデータベースを備えた装置を必要としない。
また、図4に示す、照射強度の制御のための透過率可変フィルタ52のレベルの決め方は、透過率可変フィルタ52の透過レベルの制御のみで行う場合について述べたものであるが、対物レンズの縮小倍率を変えて行う場合には、縮小倍率に合わせて、透過率可変フィルタ52の透過レベルを変える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)は本発明のレーザ光による欠陥修正方法の実施の形態の1例を示したの概略図で、図1(b)は図1(a)に示す突起欠陥とレーザ光の照射領域を示した図で、図1(c)は別の形状の突起欠陥とレーザ光の照射領域を示した図である。
【図2】欠陥修正装置の一例を示した概略構成図である。
【図3】図2に示す欠陥修正装置のレーザ光の光学系を簡略化して示した図である。
【図4】図4(a)はITOからなる下地層に対しての照射強度の範囲の決め方の1例を示したフロー図で、図4(b)は樹脂部に対しての照射強度の範囲の決め方の1例を示したフロー図である。
【図5】図5(a)はカラーフイルタ形成基板の1例の一部断面を示し、図5(b)は図5(a)のE1側からみた図である。
【図6】図5に示すカラーフイルタ形成基板を用いたMVAモードの液晶表示パネルの断面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 カラーフィルタ形成基板(複合基材とも言う)
11 透明基板(ここでは石英基板)
12 ブラックマトリクス
13a 第1の着色層
13b 第2の着色層
13c 第3の着色層
14 オーバコート層(平坦化層とも言う)
15 下地層(ここではITO膜)
16 配向制御用突起(樹脂部とも言う)
18、18a 突起欠陥(配向制御用突起と同じ材質)
20 基板ホルダー
30 XYステージ
40 レーザ光(ここでは355nm波長のYAGレーザ)
41、41a 照射領域(ショット領域とも言う)
50 レーザ照射手段
51 レーザ発生部
52 透過率可変フィルタ(アッテネータあるいは減衰器とも言う)
53 レンズ
54 アパーチャ
55 レンズ
56 対物レンズ
60 Z方向移動用ガイドレール
70 制御部
80 照射強度制御用データベース
90 表示モニタ
110 カラーフィルタ形成基板
111 透明基板
112 ブラックマトリクス
113a〜113c 着色層
113A 第1の着色層の領域
113B 第2の着色層の領域
113C 第3の着色層の領域
114 オーバコート層
115 透明導電膜
116 配向制御用突起
117 液晶間隔制御用の柱スペーサ
250 カラーフィルタ形成基板
251 透明基板
252 ブラックマトリクス
253a〜253c 着色層
254 オーバコート層
255 透明導電膜(ITO)
258 柱状スペーサ
259 配向制御用突起
262 液晶
262a、262b 配向材
270 対向基板
271 透明基板
272 透明電極
280 拡散板
281 バックライト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、その表面側から順に、修正対象の樹脂部とその下地であるITOからなる下地層を配設した複合基材における、該樹脂部の突起欠陥を、レーザ光を照射することにより除去する、突起欠陥の修正方法であって、前記レーザ光が前記複合基材上に照射される際の光強度(W/面積)である照射強度を制御し、前記樹脂部を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度として、突起欠陥を含む領域に対して、繰り返し、ショット(パルス)照射を行い、該突起欠陥を除去し、突起欠陥領域の下地層を露出させる、突起欠陥除去を行うことを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記照射強度の制御は、レーザ光源からの光の出力を減衰調整する透過率可変フィルタ(アッテネータあるいは減衰器とも言う)による透過率制御により、およびまたは、レーザ光を縮小投影して前記複合基材上に照射するレンズ系の縮小倍率制御により、行うものであることを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記複合基材が表示パネル用のカラーフィルタ形成基板もしくは該カラーフィルタ形成基板を作製するための中間工程の基板であることを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記樹脂部が柱スペーサ、配向制御用突起のいずれかであることを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。
【請求項5】
請求項3ないし4のいずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、レーザ光の波長が355nm以下であることを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記繰り返しのショット(パルス)照射の中において、途中、アパーチャのサイズを変更して、照射領域を変えることを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記繰り返しのショット(パルス)照射の中において、途中、光強度(W/面積)を変更することを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のレーザ光による欠陥修正方法であって、前記突起欠陥除去の後に、レーザー照射によって新たに生成した、前記突起欠陥領域エリア近傍に残留した塵などの残留物を除去できる照射強度で、且つ、下地層に損傷を与えない照射強度で、1回以上、ショット(パルス)照射を行い、該残留物を除去することを特徴とするレーザ光による欠陥修正方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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