説明

レーザ光源装置、及び、レーザ光源装置における波長変換素子の温度制御方法

【課題】レーザ光源装置において、フォトダイオード等の光検知装置を用いることなく、波長変換素子の波長変換効率の最適化を図り、安定した光出力を可能にすること。
【解決手段】半導体レーザ2から出射した基本波光は、波長変換素子5で波長変換され出射する。点灯回路20は上記半導体レーザ2に電力を供給し半導体レーザ2を点灯させる。制御部21は、装置の動作を制御するとともに、加熱手段7の給電量を制御して、波長変換素子5が最適な波長変換効率となる温度になるように制御する。制御部21には温度検出手段Th1により検出された温度が入力され、制御部21は、加熱手段7への給電量が極大となるときの波長変換素子5の温度を、最適な波長変換効率となる設定温度とし、加熱手段7による加熱量を制御して波長変換素子5の温度が上記設定温度になるように、波長変換素子5の温度をフィードバック制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非線形光学結晶を用いた波長変換型のレーザ光源装置に関する。更に詳しくは、非線形光学結晶を用いた波長変換型のレーザ光源装置、および、該レーザ光源装置において該非線形光学結晶の変換効率が最大となるように温度制御するレーザ光源装置における波長変換素子の温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映画やホームシアター用等に利用される投射型プロジェクタの光源としてレーザ光を用いた装置の開発が進められている。これらの光源となるレーザ光源には、半導体レーザ素子から直接放射される光を用いる場合と、該半導体レーザ素子から放射された光を非線形光学結晶により他の波長に変換して用いる場合とが知られている。
最近では、青色や緑色のレーザ光源として該非線形光学結晶に、周期的分極反転型ニオブ酸リチウム(PPLN:Periodically Poled Lithium Niobate)や周期的分極反転型タンタル酸リチウム(PPLT:Periodically Poled Lithium Tantalate)等を用いたレーザ光源が開発されている。
このような技術としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。該特許文献1によれば、半導体レーザからなる光源と、該光源から放射されたレーザ光を入射し第2高調波に変換する波長変換素子(非線形光学結晶であり例えばPPLN)と、該波長変換素子から放出された所定の波長の光を選択して前記光源に向かって反射させる外部共振器(例えば体積ブラッググレーティング:VBG:Volume Bragg Grating)とを具備したレーザ光源装置が記載されている。また、該波長変換素子を取り付けるサブベースとの間には温度調節ユニットが設けられていることが記載されている。更に、該温度調節ユニットを用いて該波長変換素子の温度を調節することにより、波長変換素子の分極反転周期のピッチを調整することができるため、光の変換効率を向上させることが可能となることが記載されている。
【0003】
図16は従来のレーザ光源装置の一形態を示すブロック図であり、同図により、波長変換素子の温度を最適温度に設定する従来例について説明する。
レーザ光源ユニットLH上に実装された波長変換素子(例えばPPLN)5は、レーザ光源素子(例えば半導体レーザ、以下半導体レーザとして説明する)2から放出される光の波長を入射光よりも短波長化する波長変換を行う機能を有しており、例えば、赤外線を緑色の光に変換することができる。
なお、波長変換素子5(例えばPPLN)は、光変換効率を最大とすることができる最適な温度が存在する。またこの最適な温度は各個体によりばらつきが存在しており、その最適点より0.5°Cもずれると、変換効率が数10%以上も悪化する。変換されない光はそのまま、熱となって消費される。
そこで、波長変換素子の最適な温度条件を求め、最適な温度条件が見つかれば、温度検出手段Th1により波長変換素子5の温度を検出し、温度調節ユニットにより、波長変換素子5を外部より暖める加熱手段、例えばヒータ7を制御して、波長変換素子5の温度が、上記最適な温度になるように制御することが一般的である。
【0004】
上記波長変換素子5の最適な制御温度を見つけるために、従来においては、例えば以下の方法が用いられていた。
前記レーザ光源ユニットLHをレーザ光源点灯装置100で駆動し、波長変換素子5の制御温度を、その想定する温度範囲内で掃引しながら、例えば図16に示すように、フォトセルやオプティカルパワーメータ等の光出力測定装置110を用いて、レーザ光源ユニットから射出される光出力を測定する。そして、掃引測定が完了した時点で光出力が最大であった制御温度を記憶し、この値を最適な制御温度として採用して、上記最適な制御温度になるように波長変換素子の温度を制御する。
しかしながら、この方法では、光出力を測定する手段が必要となり不要なコストが掛かるといった問題があった。
【0005】
図17に、従来のレーザ光源装置の他の構成例のブロック図を示す。この例は、レーザを直列接続した場合の構成例である。
図17に示すように、レーザ光源装置のコストダウンを目的として、1つのレーザ光源点灯装置100において複数の半導体レーザ2を直列に接続する方法が広く知られている。
この形態では、レーザ光源点灯装置100内のスイッチ素子や制御回路などを共通化することができ、安価に点灯電源を供給できるからである。また、各レーザ光源ユニットLH1〜LH3から出力される光はプリズム等の光素子PZを用いて3つの光を集光し、光を射出する構造としている。
上記のように複数のレーザ素子を用いた場合、個々に波長変換素子5の最適温度の調整が必要となり、調整に多大な時間を要する、といった問題があった。
すなわち、前記図16に示したフォトセルを用いての測定は、一つのレーザ光源ユニットLHだけの測定を行い、その対象となるレーザ光源ユニットの最適温度を調整することになるが、同図に示すようにレーザ光源ユニットLH1〜LH3が直列に接続した場合は、3つのレーザに同一電流が流れるために、一つだけのレーザを停止することができず、波長変換素子5の最適温度の調整が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−54446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、温度調整ユニットによって、該波長変換素子の温度を調整する場合、図16に示したように、光出力をモニターするためにフォトダイオード等の光検知装置を用いる必要があり、光検出装置自身の寿命や劣化に伴う校正や交換が必要といった問題があった。更には、該光検知装置を該レーザ光源装置に組み込めば装置全体として複雑で大型化してしまう、といった問題があった。
また、複数のレーザ素子を用いた場合、個々に波長変換素子の最適温度の調整が必要となり、調整に多大な時間を要する、といった問題もあった。更には、図17に示したように、複数のレーザ素子を直列に配列し、それらを同時に点灯した場合に、隣接するレーザ素子からの光が外乱光となって、正確に光量を測定できず波長変換素子の光の変換効率が最適となる温度を検出できない、といった問題もあった。
また、該波長変換素子は、周囲環境により動作温度が変化するため、該波長変換素子の変換効率が変わり、更には、周囲環境の変化により該波長変換素子で波長変換される半導体レーザ光源の波長が変化するため、該波長変換素子の変換効率が変わり、安定した光出力が得られない、といった問題があった。
本発明は上記問題点を解決するものであって、本発明の課題は、フォトダイオード等の光検知装置を用いることなく、波長変換素子の波長変換効率の最適化を図り、安定した光出力を可能にしたレーザ光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明においては、半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記点灯回路と該加熱手段を制御する制御部とを備え、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御する温度制御手段を備えたレーザ光源装置において、上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、制御する目標温度を含む範囲で上記設定温度を掃引して、上記加熱手段に対して投入する給電量を計測し、該給電量が極大となる温度を求めて、この温度を最適設定温度とする。
そして、前記波長変換手段が、この最適設定温度になるように、上記加熱手段への給電量を制御する。
また、上記所定の条件(周囲温度や半導体レーザの近傍の温度、半導体レーザに給電する電力条件等)をパラメータとして、前記最適設定温度を定期的に更新するようにしてもよい。例えば、半導体レーザのレーザ電流に依存したレーザ接合部の温度や、基本波光反射素子(VBG)の温度を反映するレーザ近傍の温度の変化、上記電力条件等に合わせて、予め設定した数式(あるいはテーブル)にしたがって、上記最適設定温度を更新するようにしてもよい。
以上に基づき、本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記点灯回路と該加熱手段を制御する制御部とを備えたレーザ光源装置において、上記制御部に、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御する温度制御手段と、上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させながら各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となる温度を求め、該温度を最適設定温度として、上記設定温度を該最適設定温度に設定する最適温度設定手段とを設ける。
(2)半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記半導体レーザもしくはその近傍の温度を検出する装置温度検出手段と、上記点灯回路と該加熱手段を制御する制御部とを備えたレーザ光源装置において、上記制御部に、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への出力を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御する温度制御手段と、ある装置温度において、上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させ、各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となるときの温度を求め、該温度を上記装置温度における最初の最適設定温度として設定し、該最適設定温度に対して、装置温度及び/またはレーザに加える電力条件をパラメータとして設定温度補正量を算出し、上記設定温度を該最適設定温度に順次定期的に補正する最適温度順次設定手段とを設ける。
(3)半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御するレーザ光源装置における上記波長変換手段の温度を制御する方法において、上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させながら各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となる温度を求めて、該温度を最適設定温度として決定する第1の工程と、上記設定温度を、上記最適設定温度に設定する第2の工程と、上記波長変換素子の温度が上記最適設定温度になるように上記ヒータへの給電量を制御する第3の工程を備える。
(4)半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御するレーザ光源装置における上記波長変換手段の温度を制御する方法において、上記半導体レーザもしくはその近傍の温度である装置温度を検出し、上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させ、各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となるときの温度を求め、該温度を上記装置温度における最初の最適設定温度として設定し、異なった装置温度において装置温度あるいはレーザに加える電力条件をパラメータとして設定温度補正量を算出する第1の工程と、上記設定温度を該最適設定温度に順次定期的に補正する第2の工程と、上記波長変換素子の温度が上記最適設定温度になるように上記ヒータへの給電量を制御する第3の工程を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)フォトダイオード等の光検知装置を使用しなくても、波長変換素子の温度を制御する加熱手段への給電量を検出することで、波長変換素子の温度を、最適な波長変換効率となる温度に制御することが可能となり、安定した光出力を得ることができる。
また、フォトダイオード等の光検知装置を用いる必要が無いので、校正等の作業が必要ない、といった効果も得ることができる。
また、複数のレーザ光源ユニットに対しても、最適な波長変換効率となる波長変換素子の最適温度の設定を同時に行うことが可能であり、作業時間の大幅な低減ができる。
(2)装置温度や、半導体レーザへの電力条件に対する、波長変換素子の最適温度を求め、これら装置温度及び/またはレーザに加える電力条件をパラメータとして設定温度補正量を算出し、上記設定温度を該最適設定温度に順次定期的に更新し、波長変換素子の温度が、この設定温度になるようにフィードバック制御することにより、装置の稼働中等においても、常時、且つ簡単に波長変換素子の温度を最適な温度に維持することができる。このため、安定的に高い光変換作用を得ることができ、全体として低コストで効率の高い装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例のレーザ光源装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例のレーザ光源装置における制御部および点灯回路の構成を示すブロック図である。
【図3】給電回路の具体化された構成例を示す図である。
【図4】パルス回路の簡略化された構成例を示す図である。
【図5】ドライブ回路の構成及び制御ユニット、ヒータ等の接続関係を示す図である。
【図6】ドライブ回路よりヒータに給電される電流波形の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】制御ユニットの温度制御手段における制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】波長変換素子の設定温度に対するレーザ光源ユニットからの光出力、ヒータへの給電量を示す図である。
【図9】図8等の特性を得るために使用した実験装置の構成例を示す図である。
【図10】制御ユニットの最適温度設定手段における制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】制御ユニットの最適温度設定手段における制御処理の他の実施例を示すフローチャートである
【図12】波長変換素子の温度に対するレーザ光源ユニットからの光出力の関係を表した特性図である。
【図13】装置温度と波長変換素子の最適な設定温度との相関関係を表した特性図である。
【図14】本発明の第2の実施例のレーザ光源装置における制御部および点灯回路の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第2の実施例において、制御ユニットの最適温度順次設定手段における制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】従来のレーザ光源装置において、波長変換素子の最適温度を検出する方法を示すブロック図である。
【図17】レーザを直列接続した従来のレーザ光源装置の他の構成例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施例のレーザ光源装置の構成を示す図である。
図1に示すようにレーザ光源装置は、レーザ光源ユニットLHと、半導体レーザを点灯させるための点灯回路20と制御部21とを有する。
レーザ光源ユニットLHにおいて、熱伝導性の高い材質、例えば銅(Cu)で形成されるベースプレート(ヒートシンク)となる基板1には、レーザ光の漏れを防ぎ、また内部に収納された部材を外気や埃から遮断するとともに断熱する遮断容器(例えばアルミニウム製)3が取り付けられている。
遮断容器3内の上記基板1上には、基本波光として赤外光を放射する半導体レーザ2が設けられている。半導体レーザ2は例えば、1064nmを放射する外部共振器型面発光レーザアレイである。
該半導体レーザ2の近傍の基板1上には、半導体レーザの温度を検出する装置温度検出手段(例えばサーミスタ)Th2が設けられる。
【0012】
該半導体レーザ2に対向する位置には、上記基本波光の特定の狭帯波長域の光を高い反射率(例えば99.5%)で反射する基本波光反射素子4(例えば、前記VBG)が配置され、上記半導体レーザ2に対し外部共振器を構成する。なお、基本波光反射素子4は、変換光は透過させる。
また、半導体レーザ2と基本波光反射素子4との間には、基本波光の波長の内の一部の光(位相整合した波長の光、位相整合温度は例えば80C°〜100C°)を変換して波長変換光(第二次高調波:SHG)とする波長変換素子(例えば前記PPLN)5が配置される。
波長変換素子5には、伝熱板6が熱的に接触して配置され、伝熱板6上には、波長変換素子5を加熱する手段である加熱手段(例えばヒータ)7と、波長変換素子5の温度を検出する温度検出手段Th1(例えばサーミスタ)とが設けられる。
【0013】
上記遮断容器3の基板1に対向する面には、ダイクロイック出力ミラー10が設けられ、前記基本波光反射素子4を透過して出力される波長変換光は、該ダイクロイック出力ミラー10から出射する。
ダイクロイック出力ミラー10は、前記基本波光反射素子4で反射されずに透過した基本波光を透過させずに反射する。ダイクロイック出力ミラー10で反射した基本波光は、ビームダンプ11(例えば黒アルマイト処理アルミプレート)に入射し吸収される。ビームダンプ11は上記遮断容器3と熱的に接触している。
また、半導体レーザ2と上記波長変換素子5との間には、基本波光を透過し、波長変換光を反射させて、横方向に取り出すダイクロイックミラー8が設けられ、該ダイクロイックミラー8により反射された波長変換光は、反射ミラー9で、前記基本波光反射素子4を透過した波長変換光と同じ方向に反射され、上記ダイクロイック出力ミラー10を透過して出射する。
すなわち、本発明が対象とするレーザ光源装置は、半導体レーザ2から放射された基本波光を波長変換する波長変換素子5と、該波長変換素子5の出射側に配置され、該波長変換素子5から出射した光の内、基本波光の特定の狭帯波長域の光を高い反射率で反射する上記半導体レーザ2に対し外部共振器を構成する基本波光反射素子4(例えば、VBG)を備えている。
なお、その他、各部材を保持する保持部材等が設けられているが、同図には図示していない。
【0014】
図1において、半導体レーザ2から出射した基本波光は、同図の矢印に示すように、ダイクロイックミラー8を介して波長変換素子5に入射する。
波長変換素子5に入射した光の内の一部の光は波長変換され、この波長変換された光は基本波光反射素子4を透過し、ダイクロイック出力ミラー10を介して出射する。また、波長変換素子5で波長変換されなかった基本波光は、基本波光反射素子4で反射されて波長変換素子5に入射して、波長変換素子5で波長変換される。この波長変換された光はダイクロイックミラー8で反射して、反射ミラー9、ダイクロイック出力ミラー10を介して出射する。
また、波長変換素子5で波長変換されずにダイクロイックミラー8に入射する基本波光は、ダイクロイックミラー8を透過し半導体レーザ2に入射する。
一方、基本波光反射素子4で反射せずに該素子を透過した基本波光、及び、上記ダイクロイックミラー8を透過せずに反射し、反射ミラー9で反射した基本波光は、同図の矢印に示すようにダイクロイック出力ミラー10で反射して、ビームダンプ11に入射して吸収される。
【0015】
上記波長変換素子5としては、周期的分極反転構造を持つニオブ酸リチウム(LiNbO3)、マグネシウムがドープされたニオブ酸リチウム(MgO:LiNbO3)、タンタルニオブ酸リチウム(LiTaNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、あるいはチタン酸リン酸カリウム(KTiOPO4)等を用いることができ、一般的には、周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)、周期分極反転Mgドープニオブ酸リチウム(PPMgLN)、周期的分極反転タンタル酸リチウム(PPLT)、周期的分極反転チタン酸リン酸カリウム(PPKTP)と呼ばれる擬似位相整合型波長変換素子を用いることができる。
【0016】
本実施例の光源装置には図1に示すように、制御部21、点灯回路20が設けられる。
上記点灯回路20は上記半導体レーザ2にパルス状の電力を供給し、半導体レーザ2を点灯させる。上記制御部21は、上記点灯回路20を制御するなど、レーザ光源装置の動作を制御するとともに、波長変換素子5の温度を制御して、波長変換素子5が最適な波長変換効率となる温度になるように制御する。
すなわち、制御部21には温度検出手段Th1により検出された波長変換素子5の温度が入力され、制御部21は、後述するように上記加熱手段7への給電量が極大となるときの波長変換素子の温度を、波長変換素子の最適設定温度とし、加熱手段7による加熱量を制御して波長変換素子5の温度が上記最適設定温度になるように、波長変換素子5の温度をフィードバック制御する(後述する第1の実施例)。
また、後述するように制御部21が、半導体レーザ2の温度を検出する装置温度検出手段Th2により検出された装置温度や、半導体レーザ2に加えられる電力条件等に基づき、波長変換素子5の最適な設定温度を求めて、波長変換素子5の温度を制御するようにしてもよい(後述する第2の実施例)。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施例のレーザ光源装置における制御部および点灯回路の構成を示すブロック図である。
点灯回路20は、同図に示すよう、例えば降圧チョッパや昇圧チョッパに代表されるあるいはその他の方式のスイッチング回路などから構成される給電回路U1と、パルス状の電力を供給するパルス回路U2から構成され、半導体レーザ2の状態あるいは点灯シーケンスに応じて、適合する電圧・電流を半導体レーザ2に出力する。
レーザ種によっては、略数百kHzの矩形波状のパルス電圧をレーザに印加する方式がよく知られている。本実施例では、パルス回路U2が給電回路U1の出力段に配置され、所望の周波数にてパルスを生成して、前記半導体レーザ2に出力する。
なお、前記と異なるレーザ種によっては、その限りでなく、パルス回路U2を省き、前記給電回路U1からの出力電圧を直接的に上記半導体レーザ2に相当するレーザ光源に印加してもかまわない。
【0018】
本実施例で示される半導体レーザ2は赤外線を発光するものであり、可視光に変換するために波長を変換する素子である波長変換素子5(例えばPPLN)を有している。
この波長変換素子5は、所定の温度まで上昇させることで、擬似位相整合され光変換の効率を上昇させる特徴を持ち、非常に精度の良い温度制御が必要となる。そのため、レーザ光源ユニットLHにおいても、波長変換素子5とそれを昇温するための加熱手段7(以下、ヒータ7として説明する)を備え、ヒータ7の温度を検出する温度検出手段Th1、例えばサーミスタを配置している。
【0019】
また、制御部21は、制御ユニットF1とヒータ7を駆動するドライブ回路U3から構成される。
上記給電回路U1は、演算処理装置(CPUあるいはマイクロプロセッサ)で構成される制御ユニットF1によって、半導体レーザ2に印加する電圧や流す電流が、予め設定された値、あるいは外部から設定された値になるように制御される。また、その給電の開始、停止などの制御がなされる。
また、パルス回路U2は制御ユニットF1によって制御される。制御ユニットF1は、高い光出力効率を得るための最適なパルス周波数とデューティサイクル比を決定し、その値に従って、パルス回路U2のスイッチング素子をオン・オフし、半導体レーザ2を駆動するパルス出力を発生する。
制御ユニットF1は、最適温度設定手段21aと、温度制御手段21bを備える。
温度制御手段21bは温度検出手段Th1により検出された温度と、最適温度設定手段21aにより設定される設定温度との差に基づき上記ヒータ7への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御する。
最適温度設定手段21aは、上記波長変換素子5に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させながら各設定温度における上記ヒータ7への給電量を計測し、該給電量が極大となる温度を求め、該温度を最適設定温度として、上記設定温度を該最適設定温度に設定する。
すなわち、制御ユニットF1の温度制御手段21bは、ドライブ回路U3を駆動してヒータ7への給電量を制御し、温度検出手段Th1により検出された波長変換素子5の温度が上記最適設定温度になるようにフィードバック制御する。
具体的には、制御ユニットF1は、ヒータ7への給電量を制御するための給電量を示す信号をドライブ回路U3へ送出し、ドライブ回路U3がヒータ7を駆動して、波長変換素子5の温度が上記最適設定温度になるようにフィードバック制御する。
ドライブ回路U3の出力形態は、電圧レベルを出力するものでもよく、PWM方式を用いて給電量を制御するものでも良い。
【0020】
図3は、本発明のレーザ光源装置における点灯回路20で使用することのできる前記給電回路U1の具体化された一構成例を示す図である。
降圧チョッパ回路を基本とした前記給電回路U1は、DC電源M1より電圧の供給を受けて動作し、前記半導体レーザ2への給電量調整を行う。
給電回路U1においては、前記制御ユニットF1により、FET等のスイッチング素子Q1を駆動して、前記DC電源M1からの電流をオン・オフし、チョークコイルL1を介して平滑コンデンサC1を充電し、前記半導体レーザ2に電流を供給するように構成されている。なお、前記スイッチング素子Q1がオン状態の期間は、前記スイッチング素子Q1を通じた電流により、直接的に前記平滑コンデンサC1への充電と負荷である前記半導体レーザ2への電流供給が行われるとともに、チョークコイルL1に磁束の形でエネルギーを蓄え、前記スイッチング素子Q1がオフ状態の期間には、前記チョークコイルL1に磁束の形で蓄えられたエネルギーによってフライホイールダイオードD1を介して前記平滑コンデンサC1への充電と前記半導体レーザ2への電流供給が行われる。
なお、先に図2に関連して説明した、前記給電回路U1の停止状態とは、前記スイッチング素子Q1がオフ状態で停止している状態を指す。
【0021】
前記降圧チョッパ型の前記給電回路U1においては、前記スイッチング素子Q1の動作周期に対する、前記スイッチング素子Q1がオン状態の期間、すなわちデューティサイクル比により、前記半導体レーザ2への給電量を調整することができる。ここでは、あるデューティサイクルを有するゲート駆動信号が前記制御ユニットF1によって生成され、ゲート駆動回路G1を介して、前記スイッチング素子Q1のゲート端子を制御することにより、前記DC電源からの電流のオン・オフが制御される。
前記半導体レーザ2への電流と電圧とは、給電電流検出手段I1と給電電圧検出手段V1とによって、検出できるように構成されている。なお、前記給電電流検出手段I1については、シャント抵抗を用いて、また、前記給電電圧検出手段V1については、分圧抵抗を用いて簡単に実現することができる。
【0022】
前記給電電流検出手段I1からの給電電流検出信号、および、前記給電電圧検出手段V1からの給電電圧検出信号は、前記制御ユニットF1に入力され、制御ユニットF1は、前記ゲート駆動信号を出力して、スイッチング素子Q1をオン・オフ制御し、目標電流が出力されるようにフィードバック制御する。これにより適切な電力あるいは電流をレーザへ供給することが可能となる。
【0023】
図4は、本発明のレーザ光源装置における点灯回路20で使用することのできるパルス回路U2の簡略化された一構成例を示す図である。
パルス回路U2は、FET等のスイッチング素子Q2を用いた回路により構成されている。
スイッチング素子Q2は、ゲート駆動回路G2を介して制御ユニットF1より生成される信号に従って駆動される。スイッチング素子Q2は、オン・オフの動作を高速に繰り返し、オンとなる度に、前記給電回路U1の出力により充電されるコンデンサ群C2から該スイッチング素子Q2を介して、半導体レーザ2に給電が行われる。
【0024】
例えば、略数百kHzの矩形波状のパルス電圧をレーザに印加する方式においては、パルス駆動方式のほうが、単純なDC駆動よりも、半導体素子、例えばレーザダイオード内の接合部温度(ジャンクション温度)を低減することができ、その結果、光出力の効率を上昇させる効果がある。一般的に言って、レーザダイオードをDC駆動すると順方向電圧がパルス駆動に比して低下するため、同程度の電力をレーザダイオードに給電することになると、供給電流を増加させる必要があり、結果として電流増大による損失が増加し、ジャンクションの温度が増加するからである。
いずれにしても、制御ユニットF1は、より高い光出力効率を得るための最適なパルス周波数とデューティサイクル比を決定し、その値に従って、半導体レーザ2を駆動することができる。ただし、コスト上の兼ね合いから、多少の光出力効率の悪化を前提としてパルス回路U2を削除して、半導体レーザ2等を直接的にDCで駆動する形態としても構わない。
【0025】
図5は、本発明のレーザ光源装置におけるドライブ回路U3と前記制御ユニットF1、波長変換素子等の接続関係を示す簡略化された一構成例を示す図である。
前記レーザ光源ユニットLHは、波長変換素子5を搭載し、光出力を最大とする、即ち光波長変換の効率が最大となる条件が存在する。その条件とは、前記波長変換素子5の温度であり、適切な温度条件を与えることにより高い変換効率を得ることができる。したがって、波長変換素子5温度を外部から昇温することにより、波長変換素子5を最適な温度に調整する機構が必要となる。そのために、該波長変換素子5近傍にヒータ7を設け、波長変換素子5の温度が最適な温度となるようにヒータ7を制御することが肝要となる。
【0026】
ここでの波長変換素子5の適切な温度条件について補足すると、製造上の要因あるいは波長変換素子5の構成や製造上の理由により、個体ごとにその最適値は異なり、例えば、略80°C〜100°C程度の温度であって、同範囲程度の「ばらつき」が存在する。
制御ユニットF1を構成する演算処理装置(CPUあるいはマイクロプロセッサ)は、前述したように波長変換素子5の最適な温度条件になるように、制御を行う必要がある。
波長変換素子5の温度を所望の温度に一定に保つために、間接的にはヒータ7の温度を制御することで、これを実現する。したがって、温度検出手段Th1をヒータ7の近傍の伝熱板6(図1参照)に配置している。
【0027】
制御ユニットF1は前記したように最適温度設定手段21aと、温度制御手段21bを有し、制御ユニットF1の温度制御手段21bは、温度検出手段Th1により波長変換素子5の温度情報を取得する。そして、上記最適温度設定手段21aにより設定される設定温度と、上記温度検出手段Th1により検出された温度とを比較して、ヒータ7への給電量をフィードバック制御する。
ここでのヒータ7への給電方法の形態としては、制御ユニットF1からのPWM信号のパルス信号を、ドライブ回路U3のゲート駆動回路G3を介して前記スイッチング素子Q3のゲート端子に送出し、該スイッチング素子Q3をオン・オフ制御する。
その結果、前記ヒータ7には、例えばDC24VのDC電源から所定の周期で、所定のパルス電圧が給電される。このように、制御ユニットF1は、ヒータ7の給電量を制御し、その結果、前記波長変換素子5が最適な温度になるよう安定的に制御する。
尚、点灯回路は、予め、波長変換素子5の最適な設定温度を求めておく必要がある。そのため、ヒータ7を制御する目標温度をシリアル通信などで外部信号Scから点灯電源装置に設定する方法もあるが、本実施例では、後述するように、波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、制御する目標温度を含む範囲で上記設定温度を掃引して、上記加熱手段に対して投入する給電量を計測し、該給電量が極大となる温度を求めて、この温度を最適設定温度とする。この目標温度情報は制御ユニットF1内に配置された記憶素子、例えばEEPロムやFLASHロムに書き込み保存される。
【0028】
図6は、本発明の実施例のレーザ光源装置の点灯回路における、ドライブ回路U3より前記ヒータ7に給電される電流波形を簡略化したタイミングチャートである。
ヒータ7への給電量をフィードバック制御するために、制御ユニットF1の温度制御手段21bは、同図に示すPWM1周期とPWMオン幅を決定して、PWM信号を生成する。
なお、上記PWM信号の代わりに、周波数変調信号等のPWM信号と同様のアナログ量を表す信号を生成するようにしてもよい。
このオン幅の増減によりヒータ7への給電量が調整され、波長変換素子5の温度が制御される。
上記フィードバック制御方式としては、一般的に「オン・オフ−PID制御」として知られている制御方式を用いることができる。PID制御は、比例要素と積分要素と微分要素を組み合わせて、目標の温度となるように制御する方式である。なお、本実施例で使用したPWM出力の周波数は例えば、略数kHz程度の値が適用される。
【0029】
図7は、上記制御ユニットF1の温度制御手段21bにおける制御処理の一例を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、前述した制御ユニットF1内に実装されたマイクロコンピュータにおけるソフトウエア処理により実現することができ、制御ユニットF1の温度制御手段21bは、例えば以下のフローチャートに示される処理を実行し、波長変換素子5の温度を最適温度設定手段21aにより設定される最適の目標温度に制御する。
制御ユニットF1の温度制御手段21bは、波長変換素子5の温度を目標温度に制御するために、波長変換素子5の温度(図1においてはヒータ7により加熱される伝熱板6の温度)を温度検出手段Th1で検出し、検出した温度と目標温度となる上記最適設定温度とを比較することで、ヒータ7への出力操作量を周期的に実行し制御する。
これについて、その代表的手法である比例要素と積分要素とを組み合わせたPI制御を例として説明する。
【0030】
図7において、ステップ(B01)でヒータ制御を開始し、まず、ステップ(B02)において波長変換素子5の温度と相関があるヒータ7により加熱される伝熱板6の現在の温度、即ち波長変換素子5の温度実測値(PPLN温度実測値)を温度検出手段Th1により測定し、温度実測値(Tm_PPLN)を得る。
次に、ステップ(B03)にて波長変換素子5の目標温度、即ち、前記制御ユニットF1の最適温度設定手段21aにより設定される波長変換素子5の最適温度設定値(PPLN温度設定値)を読み込み、最適温度設定値(Ts_PPLN)を得る。
そして、ステップ(B04)にて上記最適温度設定値(Ts_PPLN)と、温度検出手段Th1より測定された温度実測値(Tm_PPLN)とを比較して、その差分(en)を求める。この差分(en)を用いて、ステップ(B05)において、PI演算を行う。このPI演算において、ヒータ7への給電量、即ち、ヒータ7への操作量を数式(1)より求める。
MVn=MVn−1+Kp×en+Ki×en‐1・・・(1)
ここで、MVnは今回の操作量、MVn−1は前周期の操作量、enは今回算出した温度の差分値、en−1は前周期での温度差分値、Kp、Kiは定数である。
【0031】
PI演算により算出された操作量(MVn)は制御ユニットF1より送出するPWM信号のオン幅として更新することになるが、ステップ(B06)、ステップ(B07)にて、操作量(MVn)が最大値(MVn上限値)を上回っている場合にはその最大値を、最小値(MVn下限値)を下回っている場合には最小値を操作量(MVn)として上下限制限を行う(ステップ(B08)、ステップ(B09))。
そしてステップ(B06〜B9)にて、最終的に決定した操作量を、制御ユニットF1より送出するPWM信号のオン幅(Duty(n))として更新し、その周期のヒータ制御を終了する(ステップ(B10))。
このステップ(B01)からステップ(B11)までの一連の動作を所定の周期で繰り返す。本フローチャートを周期的に実行しフィードバック制御を行うことで、前記波長変換素子5が最適な温度になるよう安定的に制御される。
ここで説明している制御アルゴリズムは、比例制御と積分要素からなるPI制御方式を用いているが、例えばPID制御のようにDifferential(微分)要素を加えた制御を含め他のフィードバック制御方式を用いても構わない。
【0032】
次に、本発明において、波長変換素子の波長変換効率が最大となる最適な目標温度を得る方法について説明する。
図8は、波長変換素子の設定温度に対するレーザ光源からの光出力、及び、該ヒータへの給電量を示す図である。
図8の(a)は、ヒータ制御温度Tppln(すなわち、波長変換素子の温度)に対する光出力Woptを示し、図8の(b)は、波長変換素子の温度をフィードバック制御している場合の波長変換素子の温度(Tppln)に対する制御ユニットF1より出力されるPWM出力のオン幅を示す図である。
図8の横軸方向は温度を示し、縦軸方向に関しては、図8の(a)はレーザ光源からの光出力(Wopt)を示し、同図の(b)は前述したヒータ7給電量を代表するPWM信号(Spwm)のPWMオン幅を示している。尚、PWM信号(Spwm)は、Duty比率と理解しても構わない。
【0033】
図8の特性データは、図9に示す実験装置を用いて測定したものである。
図9において、LHは前記したレーザ光源ユニット、20は点灯回路、21は制御部であり、前記したように、点灯回路20から半導体レーザ2に給電して半導体レーザ2を点灯させる。また、制御部21は温度検出手段Th1により検出された波長変換素子5(ここではPPLN)の温度が、設定温度更新手段31から与えられる波長変換素子5の設定温度となるように、加熱手段であるヒータ7による加熱量を制御して波長変換素子5の温度をフィードバック制御する。
また、32はレーザ光源ユニットの光出力を測定するオプティカルパワーメータ、33はヒータ7に出力されるPWM出力の波形を取得するためのオシロスコープであり、オプティカルパワーメータ32で測定される光出力、オシロスコープ33で測定されるPWM出力のオン幅は、例えば、記憶手段34等に記録される。
【0034】
図9において、まず、波長変換素子5の設定温度を80.0°C、半導体レーザ2への出力電圧を2.70Vとして、DC出力をレーザ(LD)に投入する。本実験ではDC出力としているが、レーザ点灯装置内のパルス回路U2により、所定のオン幅、および周波数を持ったパルスに変換して半導体レーザ2に投入してもかまわない。
前記条件により半導体レーザ2を点灯させて波長変換素子5にレーザ光を照射し、レーザ光源ユニットLHから出力される光出力を、オプティカルパワーメータ32を使用してその出力値を測定する。さらに、ドライブ回路U3から出力されるヒータ7への出力電圧をオシロスコープ33により観測し、そのときのPWM出力のオン幅を測定する。なお、このとき、制御部21は温度検出手段Th1により検出された波長変換素子5の温度が、上記設定温度(例えば80.0°C)となるように、フィードバック制御している。
光出力とPWM出力のオン幅の測定が終わった後、設定温度更新手段31により、波長変換素子5の設定温度を0.1°C上昇させる。つまりは80.1°Cに更新して、出力電圧を2.70Vのまま、再度半導体レーザ(LD)を点灯させる。このときの光出力をオプティカルパワーメータ32より、また、ドライブ回路U3から出力されたPWM出力のオン幅をオシロスコープ33により測定する。
【0035】
以下、同様に波長変換素子5の設定温度を0.1°Cずつ上昇させていき、その際の光出力と、ドライブ回路U3から出力されたPWM信号のオン幅を測定していく。この一連の作業は、所定の波長変換素子の設定温度最大値、例えば120.0°Cまで続ける。これを繰り返すことにより80°C〜120°Cの範囲において、PWM信号のオン幅とオプティカルパワーの測定データを集めることができる。
そして、波長変換素子の設定温度と得られたレーザ光源素子LHからの光出力、さらにはドライブ回路U3より出力されるPWM出力のオン幅の関係性をプロットすることで図8の特性図を求めることができる。
【0036】
以下、図8に示す波長変換素子の設定温度(Tppln)に対するレーザ光源ユニットLHからの光出力(Wopt)の特性図について説明する。前述したように本レーザ光源ユニットLHにおいてはその性質から、波長変換素子5を特定の温度(Tc)に設定することで半導体レーザ2から出力される波長の光を最大の変換効率で可視光に変換することができる。図8の(a)はその様子を示している。
次に、波長変換素子の設定温度(Tppln)に対するPWM信号(Spwm)の特性を示す図8の(b)について説明する。
一般的にヒータを昇温して、波長変換素子5の温度を上昇させる場合は、単純にヒータへの給電量が増加すれば良く、その傾向は右上がりになる図8の特性(c)となるはずである。しかしながら、図8では、ヒータ7への給電量は図8の(b)のように、レーザ光源の光出力(Wopt)が最大となるヒータの温度(Tc)と、PWM信号(Spwm)が極大となるヒータの温度(Tc)が一致している。本現象は今回新しく発明者らによって得られた知見であり、この実験結果は前記(c)における理論とは全く異なる傾向を示す。
【0037】
この現象は、以下のように説明することができる。
温度(Tc)周辺では、半導体レーザ2から出力される赤外線の大半が可視光に変換されているが、赤外線が可視光に変換される割合が低い温度領域では、そのほとんどが赤外線のまま閉じ込められ波長変換素子5及びヒータ7を暖める、いわゆる、輻射熱による加熱に使われる。
前述したように、本発明のレーザ光源装置の点灯回路では設定した目標温度に制御するためにPWM信号(Spwm)をフィードバック制御しているから、この赤外線の外乱の増減に依存してPWM信号出力も増減制御される。したがってヒータ7が輻射熱を多く受ける領域ではヒータ7への給電量は少なくても充分設定した温度となり、逆に可視光への変換効率が高いポイント(温度Tc付近)では、上記輻射熱が低減しているので、ヒータ7への給電量を増加するように点灯回路が制御する。このため、給電量の最も高い点が波長変換素子の変換効率が最も高い温度領域となるものと考えられる。
【0038】
この最適な波長変換素子の設定温度(Tppln)を検出するために、最適な温度(Tc)を含むことを予想できる、下限温度(Tl)から上限温度(Th)までの間の温度の範囲において、設定温度(Tppln)の設定を少しずつ更新しつつ、その時々のPWM信号(Spwm)を監視、記憶することにより最適な温度(Tc)を検出することができる。
本発明によれば、別に光を測定する手段を用いることなく、つまり、不要なコストを発生させることなく、最適な温度(Tc)を求めることができ、本発明の利点を享受できる。
さらに、複数あるいは大量の前記レーザ光源ユニットLHを使って製品を構成する、例えば大型のプロジェクションシステムの場合は1個体ずつ測定すると非常に長い調整時間を要するが、本発明によれば、複数のレーザ光源ユニットであっても、最適温度の検索を同時に行うことが可能であり、作業時間の大幅な低減が可能となり、本発明の利点を享受できる。
さらに、本発明によれば、半導体レーザ2のレーザダイオードを直列に接続した回路構成(例えば前記図17の構成)であったとしても、射出する光出力を測定する必要がないので、簡単に最適温度を見つけることが可能となり、本発明の利点を享受できる。
【0039】
図10は、上記制御ユニットF1の最適温度設定手段21aにおける制御処理の一例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、前述した制御ユニットF1内に実装されたマイクロコンピュータにおけるソフトウエア処理により実現することができ、制御ユニットF1の最適温度設定手段21aは、例えば以下のフローチャートに示される処理を実行することにより、波長変換素子5の最適設定温度を設定する。
図10のフローチャートは、ヒータ7への給電量の極大値を決めるため、波長変換素子のある温度に対するヒータの給電量となるデューティー比(duty比)をその直前の設定温度に対するデューティー比(duty比)と比較して大小関係をとり、給電量の極大となる点を求めて、波長変換素子の最適な温度を求める手順を示すものである。
【0040】
図10により、波長変換素子の最適温度を検出する処理について説明する。
最初にステップB21において、波長変換素子5の温度自動設定作業を開始する信号が入力される。
次に、ステップB22で前回測定している波長変換素子5の温度測定値(PPLN温度設定値)に対して、“1”加算する。すなわち、1段階次のステップの温度(Ts(n))に設定する(例えば、前回の温度測定値が90°Cで温度上昇の各ステップの幅が0.1°Cであれば、90.1°Cに設定値を定める)。ステップB23では波長変換素子5の温度を実測し安定するか否かを判定する。
波長変換素子5の温度(PPLN温度実測値)が安定すればステップB24で設定温度に安定した状態でのヒータ7へ注入する供給電力量としてオン・オフ制御しているヒータ7のデューティー比(Duty(n))を一時保存する。ステップB25では今回の設定温度での該デューティー比(Duty(n))を1段階前の設定温度で安定した時のデューティー比(Duty(n−1))と大きさを比較する。前回よりも今回のデューティー比(Duty(n))が大きい場合は、ステップB28へジャンプする。
逆に、前回よりも今回のデューティー比が小さい場合は、前回のデューティー比(Duty(n−1))がデューティー比の最大値(Duty最大値)よりも大きいか否かを判断する(ステップB26)。
最大値ではない場合は、ステップB28へジャンプする。最大値よりも大きい場合は、この前回のデューティー比(Duty(n−1))を最大値(Duty最大値)として新しく登録する(ステップB27)。
【0041】
次にステップB28では、予め設定していた波長変換素子5の温度掃引範囲(例えば80°C〜100°C)の上限値(PPLN温度上限値)と、今回設定した波長変換素子5の温度測定値に対する1段階次のステップの温度Ts(n)とその大きさを比較する。
設定する温度Ts(n)が掃引する温度の上限値に満たない場合は、ステップB22にもどり同じステップを繰り返す。
もし、Ts(n)が掃引する温度の上限値に達した場合は、その時点でのデューティーの最大値(Dutyの最大値)を記録し、同最大値の場合の波長変換素子5の温度(PPLN温度)を波長変換の最適温度として設定する(ステップB29)。波長変換素子5の最適温度が決定すれば、ステップB30で波長変換素子5の温度の自動設定を終了する。
このようにフローチャートに従って操作することにより、図8に示した曲線(b)が極大値となりうる、つまり温度Tc時における光出力をモニターすることなく、波長変換素子5の最適温度を検出し設定することができる。
【0042】
図11は、上記制御ユニットF1の最適温度設定手段21aにおける制御処理の他の実施例を示すフローチャートである。
図11は、波長変換素子5の温度を、ある範囲で変化させ(例えば図8の温度T1〜Thの範囲で変化させ)、各ステップでの温度とその時に加えるヒータの給電量(本実施例ではDuty比)をメモリに記憶させ、全ての温度(例えば温度T1〜Th)までのデータの中で最大の給電量のときの温度を波長変換素子の最適温度として設定する手順を示すものである。
【0043】
図11において、波長変換素子5の温度を実測し安定するか否かを判定するまでのステップ(ステップB31~B33)は図8の場合(ステップB21~B23)と同様である。
温度が安定した場合、ステップB34にてヒータに給電する電力のデューティー比(PWM出力のオン幅:Duty(n))と波長変換素子5の設定温度(Ts(n))とをマイコンなどのメモリ領域に一時的に記憶させる。次に、設定温度(Ts(n))が予め設定していた波長変換素子5の温度掃引範囲(例えば80°C〜100°C)の上限値(PPLN温度掃引上限値)になるまで、設定温度を1stepずつ加算していき、前記動作を繰り返し(ステップB35→ステップB32~B34)、データを前記メモリ領域に蓄積していく。
全てのデータをメモリ領域に記憶させた後、ステップB36でPWM出力のオン幅の最大値をメモリ領域に記憶させた全てのデータから読み出し、そのときの波長変換素子5の温度を、最適な波長変換素子5の温度(PPLN温度)として設定する(ステップB37)。
【0044】
上記図7に示した温度制御手段21bによる制御処理と、図10または図11に示した最適温度設定手段21aによる波長変換素子の最適設定温度の検出は、以下のようなタイミングで実行される。
例えば、レーザ光源装置を出荷する前に、図10、もしくは、図11のフローチャートに示される手順で波長変換素子5の温度の最適な設定値を求めて記憶しておく。そして、装置の稼働時には、環境状態に変化がない状態では、この設定値により、図7のフローチャートに示す制御処理を実行して、波長変換素子5の温度を制御する。また、次に述べるように半導体レーザ2等の周囲温度が変わる等、環境状態が変化すると、波長変換素子の最適温度は変化するので、環境状態の変化応じて、適宜、上記図10、図11の処理を実行して、最適な設定値を更新する。
なお、上記最適設定温度を求める処理は、その日の最初の作業の開始時に、季節の変り目に、あるいは、月に一度、あるいは週に一度などに実施し、いわゆる定期校正や定期保守を行うようにしてもよい。また、半導体レーザを交換する際に実施しても構わない。
【0045】
ところで、前述したようにレーザ光源装置における光出力は、その性質から、波長変換素子5の温度に大きく依存する。この波長変換素子から高い変換作率を得るためには、その温度の極めて高い精度での制御が要求される。
しかしながら、この高い変換効率を得る最適な温度は、半導体レーザ2の周囲の温度や外部共振器を持つ場合には外部共振器の温度、更には、その他の点灯状態等の使用環境によって、レーザ光源装置の点灯中にも次第に変化する場合がある。
例えば、レーザ光源装置の設置場所を移動した場合や季節的な周囲温度の変化等にともなって、最適温度は変化し、その都度、波長変換素子の最適温度を設定するため最適なヒータ設定温度を求める必要が発生する。
【0046】
図12は、波長変換素子5の温度に対する、レーザ光源ユニットLHの光出力(Wopt)の関係を表した特性図である。
図12は、縦軸にレーザ光源ユニットLHからの光出力(Wopt)、横軸に波長変換素子5(図12はPPLNを使用した場合を示す)の温度(Tppln)を示している。
最初に一定の環境下、例えば冬期始動時の周囲温度が5°Cでの波長変換素子の温度特性は同図(a)に示すようにTp1で光出力が最大(Popt)となる特性を示す。このとき、最適な波長変換素子5の温度としては、Tp1であり、この温度を維持するように制御される。
ところが、周辺環境の変化、例えば周囲温度が25°Cとなった場合、波長変換素子の光変換特性は(b)のようにシフトする。この場合、最初に調整したヒータ温度Tp1のまま保持すると、波長変換された光出力は、PoptからWopt’にまで減少することとなる。ここで、ヒータ温度をTp2にまで上昇させると、(b)の環境化での最適な波長変換特性を得ることができる。
【0047】
図12に示すように、ある環境下で固定された条件での、最適な波長変換特性を得るために最適なヒータ温度を検出することはできるが、環境の変化等により、この最適な温度がシフトする場合は、そのような現象に自動的に追従する手段が必要となる。
図13は、半導体レーザ2の周辺温度である装置温度(Tlsr)に対する、波長変換素子5の最適な設定温度(Tppln)との相関関係を表した特性図である。
【0048】
図13に示す特性図は、前記図9に示す実験装置を用いて測定することができる。
すなわち、図9において、前記したように、点灯回路20から半導体レーザ2に給電して半導体レーザ2を点灯させる。また、制御部21により、波長変換素子5(ここではPPLN)の温度が、設定温度更新手段31から与えられる波長変換素子5の設定温度となるように、加熱手段であるヒータ7による加熱量を制御して波長変換素子5の温度をフィードバック制御しながら行う。
そして、まず、温度検出手段Th2により測定される半導体レーザ2の温度が35.0°Cのときの、光出力が最大となる波長変換素子5の温度の最適値を求める。
波長変換素子5の温度の最適値の求め方としては、前述のとおり、波長変換素子の設定温度を更新し、その都度、光出力を測定することで、光出力が最大となるPPLN設定温度を求めることができる。
【0049】
次に、半導体レーザ2の温度を1.0°C上昇させる、つまりは36.0°Cとして再度波長変換素子5の温度の最適値を測定する。なお、このときの、半導体レーザ2の温度の温度調整手段としては、例えばチラーを使用した水冷による温度制御、もしくは、冷却FANを使用することによる温度制御手段を用いるものとする。
このように、温度検出手段Th2により測定される半導体レーザ2の温度を順次更新していき、その都度、波長変換素子5の温度の最適値を求める。これを繰り返すことにより、例えば半導体レーザ2点灯装置温度を20.0°C〜40.0°Cの間で測定データを集めることができる。
最終的に、温度検出手段Th2により測定される半導体レーザ2の温度を横軸、光出力が最大となるPPLN温度の最適値となる設定温度を縦軸にとることで、図13の特性を求めることができる。
【0050】
以上のように、周辺環境の変化に応じて、波長変換素子の光変換特性はシフトするが、本発明においては、以下のようにして、このような問題に対処している。
図13に示した例に従って説明する。
ある環境下、例えば周囲温度が5°Cの場合、半導体レーザ2を安定点灯させた場合の温度がTL1であるとすれば、波長変換素子5の変換効率が最大となる点は該波長変換素子5の温度がTP1のときである。
次に、周囲温度が25°Cに上昇した場合、つまり、該半導体レーザ2を安定点灯させたときの温度がTL2となった場合、波長変換素子の変換効率が最大となる点は該波長変換素子5の温度がTP2のときである。これらのデータから、関係式を求め、半導体レーザの周囲環境の温度を変数とした関数F(Tslr)により、波長変換素子5の設定温度を制御することで、動作時に周辺環境が変化しても波長変換効率の高い状態を維持することができるレーザ光源装置を提供できる。
また、図13の関係の関数として都度計算する以外に、各データをメモリに記憶させ、データ表から対応したヒータ設定温度を制御しても良い。
【0051】
図14は、上記のように周囲環境の変化に応じて波長変換素子の設定温度を制御するようにした本発明の第2の実施例のレーザ光源装置における制御部および点灯回路の構成を示すブロック図である。
前記図2に示した構成との相違点は、半導体レーザ2の近傍の温度を検出する装置温度検出手段Th2が設けられるとともに、制御ユニットF1に、前記最適温度設定手段21aに代えて最適温度順次設定手段21cが設けられ、最適設定温度を検出する手順が前記第1の実施例で説明したものと相違する点であり、その他の構成及び動作は前記第1の実施例で説明したものと同じである。
【0052】
すなわち、点灯回路20は、前記したように給電回路U1と、パルス状の電力を供給するパルス回路U2から構成され、半導体レーザ2の状態あるいは点灯シーケンスに応じて、適合する電圧・電流を半導体レーザ2に出力する。
また、半導体レーザ2が発光する赤外線を可視光に変換するために波長を変換する波長変換素子5(例えばPPLN)が設けられ、それを昇温するためのヒータ7、温度検出手段Th1が設けられる。
制御部21は、制御ユニットF1とヒータ7を駆動するドライブ回路U3から構成され、給電回路U1、パルス回路U2は、制御ユニットF1によって制御される。
制御ユニットF1は、最適温度順次設定手段21cと、温度制御手段21bを備える。
温度制御手段21bは前記図7のフローチャートに示したように、温度検出手段Th1により検出された温度と、最適温度設定手段21cにより設定される設定温度との差に基づき上記ヒータ7への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるようにフィードバック制御をする。
【0053】
最適温度順次設定手段21cは、半導体レーザの周辺温度である装置温度が検出されると、この温度に対応した波長変換素子の設定温度(もしくはその補正値)を、関数あるいは表等を用いて定期的に求めて最適な設定温度を設定し、この最適な設定温度を前記温度制御手段21bに送る。温度制御手段21bは、波長変換素子5の温度が上記設定温度になるように、波長変換素子5の温度を制御する。
すなわち、最適温度順次設定手段21cは、ある装置温度(半導体レーザ周辺の温度等)において、波長変換素子5に上記レーザ光が照射されているとき、波長変換素子5の設定温度を変化させ、各設定温度におけるヒータ7への給電量を計測し、該給電量が極大となるときの温度を求め、該温度を上記装置温度における最初の最適設定温度として設定する。そして、該最適設定温度に対して、上記温度検出手段Th2により測定される半導体レーザ2の周辺の温度等の装置温度をパラメータとして上記設定温度の補正量を算出し、上記設定温度を該最適設定温度に順次定期的に更新する。
なお、上記、装置温度をパラメータとする代わりに半導体レーザ2に加える電力条件をパラメータとして、関数、表等を用いて上記設定温度補正量等を算出するようにしてもよい。あるいは、上記装置温度及び上記電力条件の二つをパラメータとして、関数、表等を用いて上記設定温度補正量等を算出するようにしてもよい。
【0054】
図15は、本発明の第2の実施例において、制御ユニットF1の最適温度順次設定手段における制御処理の一例を示すフローチャートである。図15は、装置温度の変化に応じて、レーザ光源ユニットLHからの光出力が最大となる波長変換素子の温度を更新する手順を示している。
図15において、まず、装置温度検出手段Th2により得られた半導体レーザの周辺の温度(Tlsr)を測定する(ステップB41)。
ステップB41において、測定した温度(Tlsr)を、制御ユニットF1内の記憶装置にあらかじめ記憶させておいた関数F(Tlsr)に代入し演算を行う。この関数F(Tlsr)は、装置温度検出手段により測定された温度と、レーザ光源ユニットLHからの光出力が最大とすることができる最適な波長変換素子の温度の関係を関数化したものである。
すなわち、関数F(Tlsr)は、例えば前記図13に示した、装置温度と波長変換素子の最適温度との関係を関数化したものであり、具体的には、ある装置温度(半導体レーザ周辺の温度)において、前記図10、図11に示したように波長変換素子5に上記レーザ光が照射されているとき、波長変換素子5の設定温度を変化させ、各設定温度におけるヒータ7への給電量を計測し、該給電量が極大となるときの温度を求め、該温度を上記装置温度における最初の最適設定温度として設定し、この操作を、各装置温度において実施して、各装置温度に対する上記最適設定温度の関係を求め、これを関数化したものである。
【0055】
ステップB42での演算により得られた結果(Y)が半導体レーザからの光出力を最大とすることができる最適な温度(PPLN温度)であり、これを波長変換素子の温度の設定値とする(ステップB43)。
このように図15に示すフローチャートに従い操作することで、装置温度の変化に対して、波長変換素子の温度を、レーザ光源ユニットLHからの光出力が最大となる最適な値に設定することができる。
本実施例は、点灯をはじめてから、次第に周囲の温度等が変化していく場合等、周囲環境が比較的早く変化する場合等に適用するのが望ましく、この一連の処理は、レーザを点灯している最中において、定期的に行われ、好ましくは1秒から1分に一度の頻度で行う。
【0056】
本実施例のレーザ光源装置は、例えば映像装置に組み込まれるが、映像装置において、レーザ光源装置を、実際に運転している最中においては、以下のようにして、波長変換素子の設定温度が更新される。
前記所定の装置温度(例えば図13の温度TL1)と、測定された現在の装置温度の実測値とを比較し、例えば、装置温度の実測値が前記温度(TL1)より、1°C高い値であれば、先に記憶させた関係性を示す関数に当てはめ、波長変換素子5の設定温度を、前記メモリに記憶させた最適値より例えば所定の値(例えば0.1°C)だけ高くした値として更新する。
【0057】
なお、上述した関係式を用いてマイコン等の処理装置により、設定温度の更新をリアルタイムに計算で行っても良いが、処理装置の演算処理速度の都合上、半導体レーザの点灯が開始される前に、前述した関係式等を用いて予め演算を行って、以下の表1を作成して、記憶装置に記憶させておいてもよい。そして、装置の稼働中は、この表を参照して最適な設定温度を更新する。
【0058】
【表1】

【0059】
本実施例では、上述したように画像の投射中であっても、定期的に設定温度を更新するようにリアルタイムに関数の演算処理を行うことができるので、常に波長変換素子5の設定温度を最適温度へ補正することができる。
半導体レーザ点灯装置温度は運転中の条件により少しずつ変化しているが、本実施例によれば、装置稼働中であっても、このような条件の変化に応じて波長変換素子の最適設定温度を更新することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 基板
2 半導体レーザ
3 遮断容器
4 基本波光反射素子(VBG)
5 波長変換素子(PPLN)
6 伝熱板
7 加熱手段(ヒータ)
8 ダイクロイックミラー
9 反射ミラー
10 ダイクロイック出力ミラー
11 ビームダンプ
20 点灯回路
21 制御部
21a 最適温度設定手段
21b 温度制御手段
21c 最適温度順次設定手段
31 設定温度更新手段
33 オシロスコープ
32 オプティカルパワーメータ
Th1 温度検出手段
Th2 装置温度検出手段
LH レーザ光源ユニット
U1 給電回路
U2 パルス回路
U3 ドライブ回路
F1 制御ユニット
M1 DC電源
Q1,Q2,Q3 スイッチング素子
L1 チョークコイル
C1 平滑コンデンサ
C2 コンデンサ群
D1 フライホイールダイオード
G1,G2,G3 ゲート駆動回路
I1 給電電流検出手段
V1 給電電圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記点灯回路と該加熱手段を制御する制御部とを備えたレーザ光源装置であって、
上記制御部は、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御する温度制御手段と、
上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させながら各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となる温度を求め、該温度を最適設定温度として、上記設定温度を該最適設定温度に設定する最適温度設定手段とを備える
ことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記半導体レーザもしくはその近傍の温度を検出する装置温度検出手段と、上記点灯回路と該加熱手段を制御する制御部とを備えたレーザ光源装置であって、
上記制御部は、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への出力を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御する温度制御手段と、
ある装置温度において、上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させ、各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となるときの温度を求め、該温度を上記装置温度における最初の最適設定温度として設定し、該最適設定温度に対して、装置温度及び/またはレーザに加える電力条件をパラメータとして設定温度補正量を算出し、上記設定温度を該最適設定温度に順次定期的に補正する最適温度順次設定手段とを備えている
ことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項3】
半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御するレーザ光源装置における上記波長変換手段の温度を制御する方法であって、
上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させながら各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となる温度を求めて、該温度を最適設定温度として決定する第1の工程と、
上記設定温度を、上記最適設定温度に設定する第2の工程と、
上記波長変換素子の温度が上記最適設定温度になるように上記ヒータへの給電量を制御する第3の工程を備える
ことを特徴とするレーザ光源装置における波長変換素子の温度制御方法。
【請求項4】
半導体レーザと、該半導体レーザを点灯させる点灯回路と、該半導体レーザから放射されたレーザ光を波長変換する波長変換素子と、該波長変換素子の温度を検出する検出手段と、該波長変換素子を加熱する加熱手段と、上記検出手段により検出された温度と、設定温度との差に基づき上記加熱手段への給電量を制御し、波長変換素子の温度が上記設定温度になるように制御するレーザ光源装置における上記波長変換手段の温度を制御する方法であって、
上記半導体レーザもしくはその近傍の温度である装置温度を検出し、上記波長変換素子に上記レーザ光が照射されているとき、上記設定温度を変化させ、各設定温度における上記加熱手段への給電量を計測し、該給電量が極大となるときの温度を求め、該温度を上記装置温度における最初の最適設定温度として設定し、
異なった装置温度において装置温度あるいはレーザに加える電力条件をパラメータとして設定温度補正量を算出する第1の工程と、
上記設定温度を該最適設定温度に順次定期的に補正する第2の工程と、
上記波長変換素子の温度が上記最適設定温度になるように上記ヒータへの給電量を制御する第3の工程
を備えることを特徴とするレーザ光源装置における波長変換素子の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−45054(P2013−45054A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184644(P2011−184644)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】