説明

レーザ光照射反応装置および該装置を備えた同位体分離システム

【課題】レーザ光発生装置の出力パルスエネルギを高めることなく反応容器の容積に占める反応領域の割合を大きくすることができるレーザ光照射反応装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るレーザ光照射反応装置10は、レーザ光Lを発するためのレーザ光発生装置11と、レーザ光Lを入射および必要に応じて出射するための入射部14および出射部16を備えた反応容器13と、当該反応容器13内に配され、入射部14を介して入射されるレーザ光Lを繰り返し反射させるとともに反射させたレーザ光を集光させる複数の凹面鏡15a〜15lとを有し、反応容器13内で同位体元素を含む反応性媒体にレーザ光Lを照射するためのものであって、複数の凹面鏡15a〜15lは、凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lにより反射されるレーザ光が集光して所定のフルエンスとなる集光領域において重なるように配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同位体元素を含む反応性媒体にレーザ光を照射することにより、目的とする同位体元素を含む物質を選択的に分離するのに適したレーザ光照射反応装置および当該装置を備えた同位体分離システムに関し、具体的には、飽和鎖式エーテル化合物に炭酸ガスパルスレーザ光を照射することにより、酸素18を含む化合物を選択的に分離するのに適したレーザ光照射反応装置および当該装置を備えた同位体分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
同位体元素である酸素は、自然界において、99.76%の酸素16と、0.04%の酸素17と、0.20%の酸素18とが存在する。酸素の同位体のうち、酸素18は、幅広い分野でトレーサとして使用されるほか、近年においては濃縮した酸素18をサイクロトロンにより放射性のフッ素18に変換することによりPET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影法)診断に用いられる診断薬FDG(2-Deoxy-2-[18F]Fluoro-D-Glucose)の原料としても使用されるなど、需要の多い同位体である。
【0003】
同位体元素を含む反応性媒体から濃縮分離対象となる同位体(以下、「目的同位体」と称する)を選択的に分離する技術として、レーザ光を用いた同位体分離技術がある。この技術は、同位体元素を含む化合物のうち、目的同位体を含む化合物と非目的同位体を含む化合物との間の光吸収波長のズレ(いわゆる、同位体シフト)を利用したものである。具体的には、酸素を含む化合物に対してレーザ光強度およびレーザ光波長を適切に調整したパルスレーザ光を照射し、酸素18を含む化合物を選択的に振動励起させ、さらに赤外光子を吸収させることにより最終的に解離(赤外多光子解離)に至らしめることによって、他の物質に変換し、酸素16や酸素17を含む化合物と分離するものである。
【0004】
酸素18を含む化合物に選択的に赤外多光子解離を引き起こすには、照射するレーザ光のフルエンス(エネルギー密度)として、物質によって決まる所定の高フルエンスが必要となる。そこで、レーザ光発生装置から発せられるレーザ光を凸レンズや凹面鏡などの光学集光系を利用して集光することにより赤外多光子解離を引き起こすことが可能な領域(反応領域)を形成するレーザ光照射反応装置が提案されている。
【0005】
光学集光系を利用したレーザ光照射反応装置としては、例えば、下記の特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載されているレーザ光照射反応装置は、レーザ光を発するレーザ光発生装置と、上記レーザ光の入射部および出射部を有する反応容器と、上記入射部を介して入射されるレーザ光を繰り返し反射させるとともに反射させたレーザ光を集光させるための複数の凹面鏡とを備える。上記複数の凹面鏡は、当該各凹面鏡により反射されるレーザ光の光路がジグザグとなるように配されている。このような構成によれば、上記入射部を介して上記反応容器内にレーザ光が入射すると、当該レーザ光は凹面鏡にて反射されてその反射の度に集光されることになり、凹面鏡の数に対応する複数の反応領域が形成される。かかる構成においては、凹面鏡の数を増やすことにより反応領域の数を増やすことができ、ひいては反応領域の体積を増やすことができる。また、凹面鏡の配置の工夫により、反応容器内の空間において上記複数の反応領域を密に形成することができ、反応容器の容積に占める反応領域の割合を大きくすることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているレーザ光照射反応装置では、凹面鏡の数を増やすことにより反応領域の数を増やすことができるが、その一方、反射による集光が繰り返されると、反射によるエネルギーロスにより反応領域の体積が順次減少していく。また、レーザ光の照射対象となる物質によっては、反応領域となりうるエネルギ密度として比較的に高いフルエンスが必要となる場合がある。かかる場合には、1つの凹面鏡にて反射されることにより所定の高フルエンスとして形成される反応領域は、その体積が小さくならざるを得ない。したがって、特許文献1に記載の構成では、高フルエンスが必要な場合には、レーザ光発生装置から発せられるレーザ光のパルスエネルギを増大させる必要がある。このことは、レーザ光発生装置の初期導入コストおよびランニングコストを高める要因となり、好ましくない。このように、特許文献1に記載の構成では、出力パルスエネルギが比較的小さい汎用のレーザ光発生装置を用いつつ比較的に高フルエンスな反応領域を効率よく確保することは困難であり、改善の余地があった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−28333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、反応領域として比較的に高いフルエンスが要求される場合であっても、レーザ光発生装置の出力パルスエネルギを高めることなく反応容器の容積に占める反応領域の割合を大きくすることができるレーザ光照射反応装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面によって提供されるレーザ光照射反応装置は、レーザ光を発するためのレーザ光発生装置と、上記レーザ光を入射するための入射部を備えた反応容器と、当該反応容器内に配され、上記入射部を介して入射されるレーザ光を繰り返し反射させるとともに反射させたレーザ光を集光させる複数の凹面鏡とを有し、上記反応容器内で反応性媒体に上記レーザ光を照射するためのレーザ光照射反応装置であって、上記複数の凹面鏡は、当該凹面鏡により反射されるレーザ光が集光して所定のフルエンスとなる集光領域において重なるように配されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の構成によれば、複数の凹面鏡は、当該凹面鏡により反射されるレーザ光が集光して所定のフルエンスとなる集光領域において重なるように配されている。そのため、集光領域が重なる部分では、凹面鏡による集光効果によってレーザ光の高エネルギ密度化が図られることに加えて、レーザ光の重畳効果によって1つの集光領域におけるエネルギ密度よりも高いエネルギ密度が得られる。したがって、反応領域として比較的に高いフルエンスが要求される場合であっても、上記レーザ光の重畳効果により、レーザ光発生装置の出力パルスエネルギを高めることなく高フルエンス領域を大きな体積で確保することができ、その結果、反応容器の容積に占める反応領域の割合を大きくすることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の凹面鏡は、対向関係にある複数ずつの第1および第2の群から構成されており、かつ、上記反応容器内に入射されるレーザ光が第1の群の凹面鏡と第2の群の凹面鏡とにおいて交互に反射するように配置されている。
【0012】
このような構成によれば、反応容器内に入射されるレーザ光は、対向関係にある第1の群の凹面鏡と第2の群の凹面鏡との間を繰り返し反射することになる。このため、反応容器内を進行するレーザ光については、対向する凹面鏡間の光路の軸線どうしがなす角度が比較的に小さいものとすることができる。このように反応容器内でのレーザ光の集光領域を形成する光路の軸線どうしがなす角度が小さいと、集光領域が重なり合う領域の体積を大きくすることができ、結果として、所定の高フルエンスの反応領域を大きく形成することができる。
【0013】
さらに本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の凹面鏡は、上記第1の群の凹面鏡により反射されるレーザ光の焦点が一致するように配置されている。
【0014】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の凹面鏡は、上記第1の群の凹面鏡により反射したレーザ光が所定の焦点を形成してから上記第2の群の凹面鏡に到達し、上記第2の群の凹面鏡により反射したレーザ光が所定の焦点を形成せずに上記第1の群の凹面鏡に到達するように配置されている。
【0015】
さらに本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の群の凹面鏡の曲率半径がすべて同一とされるとともに、上記第1の群の凹面鏡と上記第2の群の凹面鏡の間の距離が上記第1および第2の群の凹面鏡の曲率半径と等しくなるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、上記第1の群の凹面鏡と上記第2の群の凹面鏡の間の距離が上記第1の群および第2の群の凹面鏡の曲率半径に等しいことにより、繰返し重畳する焦点の形状が光学理論的に等しくなり、大きな重畳の効果が得られる。さらに、集光領域の重なり合う領域をより大きくすることができ、所定の高フルエンスの反応領域を大きな体積として形成するうえで好適である。
【0017】
本発明の好ましい別の実施の形態においては、上記反応容器は上記レーザ光を出射するための出射部を備え、上記レーザ光発生装置と上記反応容器の間の光路において、偏光分離鏡と、フェーズリターダーミラーまたは1/4波長板とが挿入され、上記出射部から出射されるレーザ光を逆方向に反射するための反射器が配置されている。
【0018】
本発明の好ましいさらに別の実施の形態においては、上記反応容器は、上記レーザ光を出射するための出射部を備え、かつ、上記反応容器が複数設けられており、上記出射部から出射されるレーザ光を次の反応容器に導くための転送ミラーが配置されている。すなわち、上記反応容器の出射部から出るレーザ光を反射して上記反応容器と同様な構成の次の反応容器にレーザ光を導く転送ミラーを配置した構成で、必要ならその次の反応容器、さらにその次の反応容器などと必要回数にわたり、転送ミラーにより光を導くように構成されている。
【0019】
本発明の第2の側面によれば同位体分離システムが提供される。本システムは、本発明の第1の側面によって提供されるレーザ光照射反応装置を備え、上記反応容器内にある同位体元素を含む上記反応性媒体に上記レーザ光を照射して、目的とする同位体元素を含む物質を選択的に分離することを特徴としている。このような同位体分離システムは、上記第1の側面において説明したのと同様の利点を享受することができる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る同位体分離システムX1について、図1〜図4を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明に係るレーザ光照射反応装置が適用される同位体分離システムX1において、特にジメチルエーテルを原料に用いて酸素18を含む物質を分離するシステムを示す概略構成図である。図2は、本発明に係るレーザ光照射反応装置10の模式的斜視図である。
【0022】
同位体分離システムX1は、図1に示すように、反応対象物に対して、レーザ光L(図2参照)を照射することにより赤外多光子解離を引き起こすためのレーザ光照射反応装置10と、原料ガスMを蓄えるための原料ガスタンク20と、スカベンジャガスSを蓄えるためのスカベンジャガスタンク30と、分離装置40と、脱水反応器50と、コンデンサ60と、回収タンク70,80,90とを備える。原料ガスMは、レーザ光照射反応装置10において反応対象物となる同位体元素を含む化合物であり、具体的には酸素、炭素、窒素、硫黄あるいはケイ素などの化合物である。当然のことながら、それぞれの同位体化合物により、レーザ照射後の反応生成物からの目的物の分離回収方法が異なるため、図1におけるレーザ光照射反応装置10以降の分離回収システムも異なってくる。図1は原料ガスにジメチルエーテルを用い、レーザ光Lの照射により酸素18を含むメタノールを分離回収した後、酸素18水として取り出すシステムである。PET診断の診断薬FDGの原料である放射性のフッ素18を得るために用いられる酸素18を濃縮分離するのに好ましい原料ガスMとしては、ガス状のエーテル化合物、特にジメチルエーテルが挙げられる。スカベンジャガスSは、原料ガスMがレーザ光照射反応装置10において照射されるレーザ光Lにより赤外多光子解離されることによって生じるラジカルを、より確実に所望する化合物に変化させるためのものである。例えば、原料ガスMとしてジメチルエーテルを用いる場合、スカベンジャガスSとしては、ジメチルエーテルをレーザ光照射反応装置10において赤外多光子解離することにより生じる酸素18含有メトキシラジカル(以下、「メトキシラジカル(18O)」と称する)を、より確実に酸素18含有メタノール(以下、「メタノール(18O)」と称する)にするための水素やイソブタンなどが挙げられる。以下、本実施形態においては、原料ガスMとしてジメチルエーテル、スカベンジャガスSとして水素を用いた場合について説明する。
【0023】
レーザ光照射反応装置10は、図2に示すように、レーザ光発生装置11と、凸レンズ12と、反応容器13とを備える。
【0024】
レーザ光発生装置11は、赤外域の波長を有するレーザ光Lを放射することが可能な構成を有している。レーザ光Lとしては、断続的に光を発するパルスレーザ、特に炭酸ガスパルスレーザが挙げられる。レーザ光Lの波長としては、炭酸ガスパルスレーザを用いた場合、良好な選択性を確保する観点から9.2〜9.7μmの範囲とするのが好ましい。
【0025】
凸レンズ12は、レーザ光発生装置11から放射されたレーザ光Lを集光させつつ反応容器13に導くためのものであり、レーザ光発生装置11と反応容器13の間に設けられている。凸レンズ12は、当該凸レンズ12を介して反応容器13内に入射するレーザ光を集光させて集光領域を形成する。ここで、集光領域とは、所定のフルエンス(エネルギ密度)となる領域であり、後述する重畳効果により反応領域を形成するのに寄与する領域である。また、凸レンズ12は、当該凸レンズ12を介して集光されるレーザ光Lの焦点Fが反応容器13の中央部に位置するように配置されている。
【0026】
反応容器13は、入射窓14と、12枚の凹面鏡15a〜15lと、出射窓16と、取込口(図示略)と、排出口(図示略)とを備える。なお、図2においては、反応容器13を二点鎖線で表すとともに、反応容器13の内部構造を概略的に示している。図2および図3において、凹面鏡15a〜15lについては入射窓14および出射窓16と明確に区別するためにハッチングを施した。
【0027】
入射窓14は、凸レンズ12を通過したレーザ光Lを反応容器13の内部に入射させるためのものであり、反応容器13の一端部に設置されている。入射窓14は、レーザ光Lを透過可能な材料により構成されており、例えばZnSe(セレン化亜鉛)などにより構成される。
【0028】
凹面鏡15a〜15lは、反応容器13内に入射されたレーザ光Lを繰り返し反射させるとともに、反射させたレーザ光を適宜集光させるためのものである。より具体的には、凹面鏡15a〜15lは、第1の群としての6枚の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lと、第2の群としての6枚の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kとから構成されている。図2または図3に表れているように、第1の群を構成する凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lは、反応容器13の一端部において、それぞれ、その中心が入射窓14を中心とする所定の正六角形の頂点に位置するように配置されている。第2の群を構成する凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kは、反応容器13の他端部において、それぞれ、その中心が所定の正六角形の頂点または中心に位置するように配置されている。出射窓16は、レーザ光Lを反応容器13の外部に出射するためのものであり、入射窓14と同様にレーザ光を透過可能な材料により構成されている。出射窓16は、反応容器13の他端部に設置されており、出射窓16および第2の群の凹面鏡15c,15e,15g,15i,15kは、その中心が正六角形の頂点に位置し、凹面鏡15aは当該正六角形の中心に位置するように設けられている。そして、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lおよび入射窓14と、第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kおよび出射窓16とは、図3に表れているように、反応容器13の他端部側から見た正面視において重なるように対向して配されている。
【0029】
第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lは、反射されるレーザ光Lを集光させて集光領域を形成しつつ第2の群の凹面鏡15c,15e,15g,15i,15kまたは出射窓16のいずれかに向かわせるためのものであり、これら凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lの焦点Fが反応容器13の中央部において一致するとともに、その光軸が第2の群の凹面鏡15c,15e,15g,15i,15kまたは出射窓16のうち向かわせるものの中心を通るように調整されている。第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kは、反射されるレーザ光を第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lのいずれかに向かわせるためのものであり、その光軸が第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lのうち向かわせるものの中心を通るように調整されている。本実施形態では、凹面鏡15a〜15lは、凸レンズ12ないし入射窓14を介して反応容器13の内部に入射するレーザ光Lが凹面鏡15a,15b,15c,…,15k,15lの順に反射されて出射窓16から反応容器13の外部に出射されるとともに、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lにて反射されるレーザ光Lの光路において集光領域を形成するように構成されている。なお、図2および図3においては、入射光および第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lにて反射されるレーザ光Lの光路(便宜上、光路の軸線のみを表示)を実線で表し、第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kにて反射されるレーザ光Lの光路を破線で表している。
【0030】
本実施形態においては、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lおよび第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kについて、その曲率半径rがすべて同一とされている。また、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lと第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kの間の距離dが、各凹面鏡の曲率半径rと等しくなるように構成されている。この構成により各凹面鏡が構成する光学系が共焦点光学系(コンフォーカル光学系)となり、光学理論によって繰り返し重畳する焦点の形状が等しくなる。このため重なり合が最も良く、大きな重畳の効果が得られる。なお、上記と異なり、距離dが曲率半径rと一致しない条件では、レーザ光のビームの性質に依存する特別な場合以外は一般には焦点形状が等しくはならない。
【0031】
上記取込口は、原料ガスMであるジメチルエーテルとスカベンジャガスSである水素との未反応混合ガスMS(図1参照)を反応容器13の内部に連続的に取り込むために、反応容器13に設けられた開口部である。
【0032】
上記排出口は、レーザ光Lが照射された後の反応済混合ガスMS’を反応容器13から連続的に排出するために、上記取込口に対して反応容器13の中央部を挟んで対向する位置に設けられた開口部である。反応済混合ガスMS’は、原料ガスMであるジメチルエーテルと、スカベンジャガスSである水素と、ジメチルエーテルを所定の条件で赤外多光子解離することにより生じるメトキシラジカル(18O)が水素と反応して生じるメタノール(18O)とを含んでいる。
【0033】
分離装置40は、上記排出口より排出された反応済混合ガスMS’からメタノール(18O)を選択的に分離するための装置である。分離装置40としては、ゼオライト系の吸着剤が充填された吸着分離塔を有する圧力変動吸着(PSA)装置などが挙げられる。
【0034】
脱水反応器50は、分離装置40により反応済混合ガスMS’から分離されたメタノール(18O)を脱水反応させて、ジメチルエーテル(18O)と酸素18を含有する水(以下、「水(18O)」と称する)とを得るための反応装置である。脱水反応器50としては、触媒としてのアルミナが充填された脱水反応塔などが挙げられる。
【0035】
コンデンサ60は、脱水反応器50によりメタノール(18O)から得られたジメチルエーテル(18O)および水(18O)の混合物から、それぞれの沸点の差を利用して、水(18O)を選択的に分離するための装置である。
【0036】
回収タンク70,80は、コンデンサ60により分離されたジメチルエーテル(18O)および水(18O)をそれぞれ別個に回収するための容器である。回収タンク90は、分離装置40により反応済混合ガスMS’からメタノール(18O)が選択的に分離された残りのガス(レーザ光照射反応装置10において未反応のジメチルエーテルおよび水素を含む混合ガス)を回収するための容器である。
【0037】
以上の構成を有する同位体分離システムX1におけるレーザ光照射反応装置10の作用について、以下に説明する。
【0038】
まず、レーザ光Lの観点から説明する。レーザ光発生装置11から放射されたレーザ光Lは、凸レンズ12および入射窓14を介して集光されつつ反応容器13の内部に入射される。反応容器13の内部に入射されたレーザ光Lは、第1の集光領域を形成する。この集光領域を形成した後のレーザ光Lは、第2の群の凹面鏡15aにより反射されて第1の群の凹面鏡15bに向かう。凹面鏡15bに到達したレーザ光Lは、反射されるとともに集光されて第2の集光領域を形成する。同様に第2の集光領域を形成した後のレーザ光Lは、凹面鏡15c〜15lにより順次反射され、このうち凹面鏡15d,15f,15h,15j,15lにて反射されたレーザ光Lは、第3ないし第7の集光領域を形成する。そして、第7の集光領域を形成した後のレーザ光Lは、出射窓16を介して反応容器13の外部へ出射される。第1ないし第7の集光領域は、図2に表れているように、それぞれ、同一の焦点Fを有する光路において形成される。このため、第1ないし第7の集光領域は、重なり合っており、当該重なり合う領域により反応領域Rが形成される。ここで、反応領域とは、レーザ光の光エネルギがジメチルエーテルのうち分離対象となる目的同位体(酸素18)を含むジメチルエーテル(以下、「ジメチルエーテル(18O)」と称する)を選択的に赤外多光子解離を引き起こすのに効果的な所定のフルエンスに達した領域である。具体的には、フルエンスが5〜50J/cm2、好ましくはフルエンスが10〜20J/cm2となる領域である。フルエンスが5J/cm2より低いと多光子解離反応に至らず、50J/cm2より高いとジメチルエーテル(18O)のみならずジメチルエーテル(16O)も多光子解離が生じて選択性が失われてしまう事になる。
【0039】
図4は、第1の群の凹面鏡15b,15dにより反射されたレーザ光の光路L2,L3における第2および第3の集光領域C2,C3(ハッチングで示された領域)の位置関係を模式的に示す図である。凹面鏡15b,15dは、所定の正六角形の隣接する頂点に配置されているので、光路L2,L3の軸線S2,S3がなす角度θを小さくすることができる。このように軸線S2,S3がなす角度θを小さくすると、集光領域C2,C3が重なり合う領域の体積を大きくすることができる。
【0040】
次に、未反応混合ガスMSの観点から説明する。上述のようにして形成された反応領域Rを通過するように、上記取込口を介してジメチルエーテルを含む未反応混合ガスMSを反応容器13の内部に取り込む。取り込まれたジメチルエーテルのうちジメチルエーテル(18O)は、反応領域Rにおいて赤外光子を吸収することにより選択的に励起し、その吸収量が所定量に達した後、解離(赤外多光子解離)を起こす。この解離により生じるメトキシラジカル(18O)は、スカベンジャガスSである水素と反応してメタノール(18O)となる。未反応のジメチルエーテルおよび水素と、メタノール(18O)とを含む反応済混合ガスMS’は、上記排出口から排出される。
【0041】
本実施形態に係る同位体分離システムX1のレーザ光照射反応装置10では、凹面鏡15a〜15lは、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lにより反射されるレーザ光Lが集光領域において重なるように配されている。そのため、集光領域が重なる部分(反応領域R)は、凹面鏡による集光効果によって高エネルギ密度化が図られることに加えて、レーザ光の重畳効果により、1つの集光領域におけるエネルギ密度よりも高いエネルギ密度となる。したがって、反応領域として比較的に高いフルエンスが要求される場合であっても、上記レーザ光の重畳効果により、レーザ光発生装置11の出力パルスエネルギを高めることなく高フルエンスな反応領域Rを大きな体積として形成することができ、その結果、反応容器13の容積に占める反応領域Rの割合をより大きくすることが可能となる。
【0042】
また、レーザ光照射反応装置10では、凹面鏡15a〜15lは、反応容器13に入射するレーザ光Lが対向関係にある第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lと第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kとにおいて交互に反射するように配置されている。このため、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lおよび第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kのそれぞれを密に配置することにより、反応容器13の内部を進行するレーザ光Lについては、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lにより反射される光路の軸線どうしがなす角度(例えば図4に示す角度θ)が比較的に小さいものとすることができる。このように反応容器13内におけるレーザ光Lの集光領域を形成する光路の軸線どうしがなす角度が小さいと、集光領域が重なり合う領域の体積が大きくなり、結果として、所定の高フルエンスである反応領域Rは、比較的に大きな体積を有することになる。本実施形態のように第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lおよび第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kのそれぞれを正六角形の頂点または中心に配置する構成は、第1および第2の群の凹面鏡をそれぞれ密に配置するうえで好適である。
【0043】
また、レーザ光照射反応装置10では、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lにより反射されるレーザ光Lの焦点Fが一致するように配置されている。このような構成によれば、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lにより反射されて形成される集光領域が重なり合う領域をより大きくすることができ、所定の高フルエンスである反応領域Rを大きな体積として形成するうえで好適である。
【0044】
また、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lと第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kの間の距離dを第1および第2の群の凹面鏡15a〜15lの曲率半径rと等しくすることで、繰返し重畳する焦点の形状が等しくなり、より大きな重畳の効果が得られる。
【0045】
本発明による以上の効果を確認するために、図2および図3に示したものと同様の構成を有するレーザ光照射反応装置10を使用した場合において、レーザ光学的な観点からのシミュレーション計算により、所定の高フルエンスの反応領域の体積を求めた。また、比較例として、重畳の無い単一の焦点より反応領域を形成する場合についての反応領域の体積も求めた。レーザ光発生装置11に関する条件としては、TEA型CO2パルスレーザを使用し、当該装置からのレーザ光については、波長が9.57μm、パルス幅が半値全幅にして60ns、パルスエネルギが2.9J、レーザビームのM2定数を30.9とした。本発明に係る確認例については、第1の群の凹面鏡15b,15d,15f,15h,15j,15lと第2の群の凹面鏡15a,15c,15e,15g,15i,15kとの間の距離dを0.79mとした。また、第1および第2の群の凹面鏡の15a〜15lはすべて同じ曲率半径rをもち、上記距離dと同じ0.79mである。反応容器13の内部におけるレーザ光Lに関しては、第1の群の各凹面鏡部分のビーム径が13.11mm、焦点ビーム径が11.92mm、第1の群の隣接する凹面鏡どうしの中心間距離が上記凹面鏡部分のビーム径の3倍である39.33mmとした。この場合、反応容器13の内部におけるレーザ光の通過時間は、31.7nsである。この条件にて、エネルギ密度が12.8〜16J/cm2である反応領域の体積を算出すると、62.53cm3であった。一方、重畳の無い単一焦点の比較例の場合には、エネルギ密度が12.8〜16J/cm2である反応領域の体積を算出すると、2.777cm3であった。本発明に係る確認例と、比較例とを対比すると理解できるように、凹面鏡により7つの分離した反応領域を形成する場合には、当該反応領域の体積は上記重畳の無い単一焦点の比較例の場合の反応領域の体積の7倍である19.44cm3であるのに対し、本確認例のように凹面鏡により反射された集光領域を重ね合わせて反応領域を形成する場合には、反応領域の体積は62.53cm3であり、高フルエンスの反応領域として、分離した場合の3倍以上の体積を確保することができる。
【0046】
なお、上記の実施例では凹面鏡を15aから15lまでの12枚使用したが、この枚数に限定されないことは当然である。例えば枚数をさらに増やして焦点の重畳数を増やすことも可能であるが、増加した凹面鏡は6角形配置のさらに外側に配置することになり、上記光路の軸線がなす角度θがさらに増すことになり、集光領域の重なり合う領域が全体としては減少するためにおのずから効果に限界がある。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態に係る同位体分離システムX2について、図面を参照しつつ具体的に説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係るレーザ光照射反応装置10’の概略構成図である。なお、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同一または類似の部材および部分には、同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0048】
本実施形態におけるレーザ光照射反応装置10’は、レーザ光発生装置11’と、凸レンズ12と、反応容器13と、偏光ビームスプリッター171と、フェーズリターダーミラー172と、凸レンズ173と、反射器としての折返し平面鏡174とを備える。レーザ光照射反応装置10’における凸レンズ12および反応容器13は、第1の実施形態におけるものと同一の構成を有する。尚、上記した第1の実施形態におけるレーザ光発生装置11は直線偏光、ランダム偏光いずれの放射でも良いが、本実施形態におけるレーザ光発生装置11’は、直線偏光としてのレーザ光を放射するレーザ光発生装置に限定される。凸レンズ173および反射器としての折返し平面鏡174は、反応容器13内を通過した後に出射されるレーザ光を折り返して、再び反応容器13内に逆方向に入射させるためのものである。偏光ビームスプリッター171およびフェーズリターダーミラー172は、反応容器13内を逆方向に通過した後、入射窓14から逆方向に出射される円偏光ビームのレーザ光を再度レーザ光発生装置11’に戻らないようにP偏光ビームとして外部に取り出すものである。これは一般にレーザ光発生装置は自ら出射したレーザ光が再び逆に入り込むとレーザ光の発生が不安定になる性質があり、これを防止するためである。
【0049】
この部分をさらに詳細に説明すると、レーザ光発生装置11’より発生したレーザ光は直線偏光のS偏光ビームであり、偏光ビームスプリッター171で反射しフェーズリターダーミラー172で円偏光ビームに変換されて凸レンズ12を通過し、入射窓14より反応容器13内に入る。反応容器13を通過し上記の説明のように反射器としての折返し平面鏡174で折り返して逆方向に進むレーザ光は、再び反応容器13を通過し入射窓14より出射してレンズ12を通過し、フェーズリターダーミラー172で反射されると今度はP偏光ビームの直線偏光に変換される。フェーズリターダーミラー172は1/4波長の位相変化を反射で生じ円偏光と直線偏光を相互に変換する。P偏光ビームのレーザ光は偏光ビームスプリッター171を通過して外部に取り出される。
【0050】
レーザ光照射反応装置10’では、レーザ光発生装置11’から放射されたレーザ光Lは、偏光ビームスプリッター171およびフェーズリターダーミラー172により反射されて凸レンズ12に向けて進行し、凸レンズ12および反応容器13の入射窓14を介して集光されつつ反応容器13の内部に入射される。反応容器13に入射されたレーザ光Lは、第1および第2の群の凹面鏡(図示略)により順次反射されて反応容器13の出射窓16から反応容器13の外部に出射される。ここで、レーザ光が入射窓14から入射されて出射窓16から出射されるまでの光路(第1の光路)においては、第1の実施形態における場合と同様にして7個の集光領域が形成される。出射窓16から出射されたレーザ光Lは、凸レンズ173を通過した後に反射器としての折返し平面鏡174に到達し、ここで反射されて再び凸レンズ173に向けて進行し、凸レンズ173および反応容器13の出射窓16を介して集光されつつ反応容器13の内部に入射される。ここで、出射窓16から入射されるレーザ光Lは、第1の光路に対して、進行方向が逆向きで経路が同一である光路(第2の光路)を辿り、その後入射窓14から出射される。したがって、第2の光路においては、第1の光路における集光領域と重なるようにして、7個の集光領域が形成される。
【0051】
本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成を有する反応容器13を使用しつつ、光学系部材を工夫して配置することにより、レーザ光を反応容器13内において往復して通過させることができる。したがって、反応容器13内を往復進行するレーザ光(上記第1および第2の光路)によって形成される集光領域の数は、第1の実施形態の場合の2倍である14個となる。このような構成は、レーザ光の重畳効果によって反応領域の体積を効率よく拡大するうえで好適である。また、原料ガスである同位体化合物の種類に応じて赤外多光子解離するのにより高いフルエンスが要求される場合においても、本実施形態の構成によれば、レーザ光発生装置11’の出力パルスエネルギを高めることなく、より高フルエンスな反応領域を比較的に大きな体積として形成することができる。
【0052】
なお、本実施形態ではフェーズリターダーミラーを使用したが、機能的には1/4波長板と同一であり、フェーズリターダーミラーに替えて1/4波長板を使用することも可能である。また、凸レンズの集光機能と平面鏡の反射機能を併せ持つ凹面鏡を反射器として使用することも可能である。
【0053】
次に、本発明の第3の実施形態に係る同位体分離システムX3について、図面を参照しつつ具体的に説明する。図6は、本発明の第3の実施形態に係るレーザ光照射反応装置10”の概略構成図である。なお、第3の実施形態においては、第1の実施形態と同一または類似の部材および部分には、同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0054】
本実施形態におけるレーザ光照射反応装置10”は、レーザ光発生装置11と、凸レンズ12と、直列的に配置された複数の反応容器13と、複数の転送ミラー181と、複数の転送レンズ182とを備え、レーザ光を複数の反応容器13に順次通過させることができるように構成されたものである。レーザ光照射反応装置10”におけるレーザ光発生装置11、凸レンズ12、および各反応容器13は、第1の実施形態におけるものと同一の構成を有する。転送ミラー181は、反応容器13から出射されたレーザ光を反射させて次の反応容器13に向かわせるためのものであり、例えば平面鏡である。転送レンズ182は、反応容器13に入射されるレーザ光の焦点(焦点ビーム)の位置と大きさを調整するためのものであり、例えば凸レンズである。なお、凸レンズの集光機能と平面鏡の反射機能を併せ持つ凹面鏡を転送ミラーとして使用することも可能である。
【0055】
レーザ光照射反応装置10”では、レーザ光発生装置11から放射されたレーザ光Lは、複数の反応容器13を順次通過する。各反応容器13内では、レーザ光Lの光路において形成される集光領域の重畳効果により、高フルエンスの反応領域が形成される。このような構成によれば、レーザ光発生装置11から発せられるレーザ光Lの光エネルギを効率よく利用することが可能であり、反応領域をより大きく形成することが可能である。なお、レーザ光発生装置11から放射されたレーザ光Lは、原料ガスの反応によるエネルギ損失や凹面鏡での反射によるエネルギ損失により、進行するにつれて光エネルギが減衰することになるので、反応容器13の設置数を増やすにも限界がある。本実施形態では図6に表れているように、4個の反応容器13が直列的に配置されている。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るレーザ光照射反応装置および同位体分離システムの各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々に変更が可能である。
【0057】
また、上記実施形態に係るレーザ光照射反応装置においては赤外光線の赤外多光子解離による光反応の例を説明したが、照射光としては赤外光に限定されるものでなく、光反応としては多光子解離光反応だけに限定されるものではない。すなわち高強度のレーザ光照射による光反応が要求される光反応装置においては有効に本発明が機能することは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るレーザ光照射反応装置が適用される同位体分離システムの第1実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明に係るレーザ光照射反応装置の模式的斜視図である。
【図3】図2に示すレーザ光照射反応装置における凹面鏡の配置を説明するための図であり、反応容器の他端部側から見た正面視を表す。
【図4】反応容器内におけるレーザ光の光路を説明するための模式図である。
【図5】本発明に係るレーザ光照射反応装置の第2実施形態の概略構成図である。
【図6】本発明に係るレーザ光照射反応装置の第3実施形態に概略構成図である。
【符号の説明】
【0059】
X1,X2,X3 同位体分離システム
C2,C3 集光領域
F 焦点
L レーザ光
MS 未反応混合ガス(反応性媒体)
MS’ 反応済混合ガス
R 反応領域
d 第1の群の凹面鏡と第2の群の凹面鏡の間の距離
10,10’,10” レーザ光照射反応装置
11,11’ レーザ光発生装置
12 凸レンズ
13 反応容器
14 入射窓(入射部)
15a〜15l 凹面鏡
16 出射窓(出射部)
20 原料ガスタンク
30 スカベンジャガスタンク
40 分離装置
50 脱水反応器
60 コンデンサ
70,80,90 回収タンク
171 偏光ビームスプリッター
172 フェーズリターダーミラー
173 凸レンズ
174 折返し平面鏡
181 転送ミラー
182 転送レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発するためのレーザ光発生装置と、上記レーザ光を入射するための入射部を備えた反応容器と、当該反応容器内に配され、上記入射部を介して入射されるレーザ光を繰り返し反射させるとともに反射させたレーザ光を集光させる複数の凹面鏡とを有し、上記反応容器内で反応性媒体に上記レーザ光を照射するためのレーザ光照射反応装置であって、
上記複数の凹面鏡は、当該凹面鏡により反射されるレーザ光が集光して所定のフルエンスとなる集光領域において重なるように配されていることを特徴とする、レーザ光照射反応装置。
【請求項2】
上記複数の凹面鏡は、対向関係にある複数ずつの第1および第2の群から構成されており、かつ、上記反応容器内に入射されるレーザ光が第1の群の凹面鏡と第2の群の凹面鏡とにおいて交互に反射するように配置されている、請求項1に記載のレーザ光照射反応装置。
【請求項3】
上記複数の凹面鏡は、上記第1の群の凹面鏡により反射されるレーザ光の焦点が一致するように配置されている、請求項2に記載のレーザ光照射反応装置。
【請求項4】
上記複数の凹面鏡は、上記第1の群の凹面鏡により反射したレーザ光が所定の焦点を形成してから上記第2の群の凹面鏡に到達し、上記第2の群の凹面鏡により反射したレーザ光が所定の焦点を形成せずに上記第1の群の凹面鏡に到達するように配置されている、請求項3に記載のレーザ光照射反応装置。
【請求項5】
上記第1および第2の群の凹面鏡の曲率半径がすべて同一とされるとともに、
上記第1の群の凹面鏡と上記第2の群の凹面鏡の間の距離が上記第1および第2の群の凹面鏡の曲率半径と等しくなるように構成されている、請求項2から4のいずれか1つに記載のレーザ光照射反応装置。
【請求項6】
上記反応容器は上記レーザ光を出射するための出射部を備え、
上記レーザ光発生装置と上記反応容器の間の光路において、偏光分離鏡と、フェーズリターダーミラーまたは1/4波長板とが挿入され、
上記出射部から出射されるレーザ光を逆方向に反射するための反射器が配置されている、請求項1から5のいずれか1つに記載のレーザ光照射反応装置。
【請求項7】
上記反応容器は、上記レーザ光を出射するための出射部を備え、かつ、上記反応容器が複数設けられており、
上記出射部から出射されるレーザ光を次の反応容器に導くための転送ミラーが配置されている、請求項1から5のいずれか1つに記載のレーザ光照射反応装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のレーザ光照射反応装置を備え、上記反応容器内にある同位体元素を含む上記反応性媒体に上記レーザ光を照射して、目的とする同位体元素を含む物質を選択的に分離することを特徴とする、同位体分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−18389(P2008−18389A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194331(P2006−194331)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【出願人】(000134637)株式会社ナード研究所 (31)
【Fターム(参考)】