説明

レーザ加工システム

【課題】 製品板材の搬出開始時における製品板材の引っ掛かりによる素材板材の持上がりを防止することができるレーザ加工システムを提供する。
【解決手段】 テーブル7上で素材板材W1に移動させながら製品板材W2を切り抜くレーザ加工機と、レーザ加工機から製品板材W2を搬出するローダと、ローダを制御するローダ制御装置とを備える。ローダ制御装置の制御過程は、切り抜かれた製品板材W2をテーブル7上で、ローダの板材吸着体20により吸着する吸着過程と、この製品板材W2を吸着した板材吸着体20を定められた高さまで上昇させる上昇過程と、この上昇過程による板材吸着体20の上昇動作の初期段階で、製品板材W2の外周における素材板材W1と接触している箇所が素材板材W2から離れる方向に、板材吸着体20を定められた距離だけ水平移動させる初期水平移動過程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工機による素材板材の加工、およびレーザ加工機からの製品板材の搬出を行うレーザ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザヘッドと、素材板材を載せるテーブルと、このテーブル上で素材板材を前後左右に送る板材送り機構とを備え、前記板材送り機構により素材板材を送りながら前記レーザヘッドにより素材板材に加工を行うレーザ加工機がある。この種のレーザ加工機において、図7に示すように、位置固定のレーザビームLで、素材板材W1から製品板材W2を切り抜く場合、板材送り機構8により、素材板材W1の縁部を把持するワークホルダ14と共に素材板材W1をテーブル7上で移動させながら切り抜く。この場合に、図8(A)に示すように、切り抜かれた製品板材W2が切抜き穴40の中央に位置せずに、一方に偏ることがある(なお、同図は製品板材W2の周囲の切断代41を誇張して図示してある)。
【0003】
上記現象は次の理由で生じる。長方形である製品板材W2の切り抜きは、図7に矢印で示すように、切断開始点Aから製品板材W2の外周の各切抜き辺a,b,c,dに沿ってレーザビームLを相対的に移動させながら行うが、図8(B)に示すように、略全周が切り抜かれて最終切抜き辺dの終端部分42を切断するときは、製品板材W2はその終端部分42のみで製品板材W2と繋がった状態にある。この状態で、素材板材W1を終端部分42の加工のために板材送り機構8により移動させると(板材送り方向は破線矢印で示すように切抜き方向(実線矢印)とは逆方向)、製品板材W2の外周の素材板材W1が移動しても、製品板材W2は終端部分42のみで移動が伝えられることになるため、テーブル7との摩擦により製品板材W2が元の位置に留まろうとする力の方が大きく、終端部分42で撓みが生じる。その結果、製品板材W2が切抜き穴40の一方に偏ると考えられる。
【0004】
図8(A)のように製品板材W2が切抜き穴40の一方に偏っていると、製品板材W2をローダにより上方に持ち上げるときに、製品板材W2に引っ掛かって素材板材W1も持ち上がることがある。ある程度の高さまで持ち上がられた後、素材板材W1が落下すると、素材板材W1が変形してしまい素材として使用できなくなる。また、素材板材W1が落下する際、製品板材W2にも変形が生じる。
【0005】
上記のような素材板材W1の持上がりを防止するために、レーザヘッドを水平方向に移動可能とし、製品板材W2の切抜きの最終段階では、素材板材W1を動かさずにレーザヘッドを動かして加工して、素材板材W1から製品板材W2を切り抜く技術が提案されている(特許文献1)。この技術によると、製品板材W2の切抜きの最終段階における素材板材W1と製品板材W2の相対移動がないので、製品板材W2が切抜き穴40の一方に偏らない。それにより、素材板材W1の持上がりを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2743836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のように、レーザ加工機にレーザヘッドを水平方向に移動させる機構を設けるのは、レーザ加工機が複雑で高価になる。そのため、素材板材の持上がりによる変形を、他の方法で防止することが求められている。
【0008】
この発明の目的は、ローダの動作を制御するだけで、製品板材の搬出開始時における製品板材の引っ掛かりにより素材板材が高く持上がることを防止できるレーザ加工システムを提供することである。
この発明の他の目的は、素材板材の持上がりの原因となる素材板材と製品板材の引っ掛かりを、より効果的に外せるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、様々な状況によって生じる素材板材と製品板材の引っ掛かりについても対応可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のレーザ加工システムは、テーブル上で素材板材に移動させながらレーザヘッドで前記素材板材から製品板材を切り抜くレーザ加工機と、このレーザ加工機から前記製品板材を搬出するローダと、このローダを制御するローダ制御装置とを備える。前記ローダは、前記製品板材を上面から吸着する板材吸着体と、この板材吸着体を昇降させる昇降機構と、前記板材吸着体を前記テーブルの上面に沿って前後左右に移動させる水平移動機構とを備える。前記ローダ制御装置の制御過程は、前記レーザ加工機により素材板材から製品板材が切り抜かれた後、この切り抜かれた製品板材を前記テーブル上で前記板材吸着体により吸着する吸着過程と、この製品板材を吸着した前記板材吸着体を前記昇降機構により定められた高さまで上昇させる上昇過程と、この上昇過程による前記板材吸着体の上昇動作の初期段階で、製品板材の外周における素材板材と接触している箇所が素材板材から離れる方向に、前記水平移動機構により前記板材吸着体を定められた距離だけ水平移動させる初期水平移動過程とを有する。上記定められた高さ、および定められた距離は、任意に定めればよい。
【0010】
この構成によると、レーザ加工機により素材板材から製品板材が切り抜かれると、ローダが以下の動作を行う。すなわち、切り抜かれた製品板材を、テーブル上で板材吸着体により吸着し、この製品板材を吸着した板材吸着体を昇降機構により定められた高さまで上昇させる。この上昇過程による板材吸着体の上昇動作の初期段階で、製品板材の外周における素材板材と接触している箇所が素材板材から離れる方向に、水平移動機構により板材吸着体を定められた距離だけ水平移動させる。板材吸着体を距離だけ水平移動させることにより、素材板材と製品板材の引っ掛かりが外される。そのため、板材吸着体により、素材板材を高く持ち上げることを生じさせずに、製品板材だけを持ち上げて搬出することができる。
【0011】
この発明において、前記上昇過程は、前記テーブル上の製品板材を吸着した前記板材吸着体を少なくとも素材板材の板厚以上上昇させる第1段階と、この第1段階の上昇高さからさらに上昇させる第2段階とを含み、これら上昇過程の第1段階と第2段階との間に前記初期水平移動過程が実行されるようにしてもよい。
【0012】
このように、上昇過程の第1段階で製品板材を板厚以上持上げてから、初期水平移動過程を実行すると、初期水平移動過程で板材吸着体を距離だけ水平移動させる際に、板材吸着体に吸着された製品板材が素材板材に当ることを回避できる。すなわち、製品板材を持上げずに初期水平移動過程を実行すると、製品板材の引っ掛かりを生じる辺と反対側の辺が切抜き穴内で素材板材に当ることがあるが、このような事象が回避できる。
【0013】
この発明において、前記製品板材が矩形状であって、製品板材の角部を切断開始点として製品板材の外周をレーザ切断加工し、切断開始点まで戻ることにより切り抜かれるものである場合、前記初期水平移動過程における前記水平移動の方向が、製品板材の最終切抜き辺における前記切断開始点から離れ、かつ製品板材の最初切抜き辺における前記切断開始点に近づく斜め方向とするのが良い。
【0014】
製品板材が矩形状であって、製品板材を連続して切り抜く加工の切断開始点が製品板材の角部である場合、一般的には、製品板材の外周における最初切抜き辺が素材板材と引っ掛かることが多い。また、製品板材の外周部となる桟状の素材板材の部分の剛性によっては、製品板材の外周における最初切抜き辺と最終切抜き辺に対する反対側の辺との交点付近が素材板材と引っ掛かることもある。そのため、初期水平移動過程における板材吸着体の水平移動の方向を上記のように定めれば、上記2種類の引っ掛かりの両方を外すことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のレーザ加工システムは、テーブル上で素材板材に移動させながらレーザヘッドで前記素材板材から製品板材を切り抜くレーザ加工機と、このレーザ加工機から前記製品板材を搬出するローダと、このローダを制御するローダ制御装置とを備え、前記ローダは、前記製品板材を上面から吸着する板材吸着体と、この板材吸着体を昇降させる昇降機構と、前記板材吸着体を前記テーブルの上面に沿って前後左右に移動させる水平移動機構とを備え、前記ローダ制御装置の制御過程は、前記レーザ加工機により素材板材から製品板材が切り抜かれた後、この切り抜かれた製品板材を前記テーブル上で前記板材吸着体により吸着する吸着過程と、この製品板材を吸着した前記板材吸着体を前記昇降機構により定められた高さまで上昇させる上昇過程と、この上昇過程による前記板材吸着体の上昇動作の初期段階で、製品板材の外周における素材板材と接触している箇所が素材板材から離れる方向に、前記水平移動機構により前記板材吸着体を定められた距離だけ水平移動させる初期水平移動過程とを有するため、ローダの動作を制御するだけで、製品板材の搬出開始時における製品板材の引っ掛かりにより素材板材が高く持上がることを防止できる。
【0016】
前記上昇過程は、前記テーブル上の製品板材を吸着した前記板材吸着体を少なくとも素材板材の板厚以上上昇させる第1段階と、この第1段階の上昇高さからさらに上昇させる第2段階とを含み、これら上昇過程の第1段階と第2段階との間に前記初期水平移動過程が実行される場合は、素材板材の持上がりの原因となる素材板材と製品板材の引っ掛かりを、より効果的に外すことができる。
【0017】
前記製品板材が矩形状であって、製品板材の角部を切断開始点として製品板材の外周をレーザ切断加工し、切断開始点まで戻ることにより切り抜かれるものであり、前記初期水平移動過程における前記水平移動の方向が、製品板材の最終切抜き辺における前記切断開始点から離れ、かつ製品板材の最初切抜き辺における前記切断開始点に近づく斜め方向である場合は、様々な状況によって生じる素材板材と製品板材の引っ掛かりについても対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態にかかるレーザ加工システムの機構部分の平面図に制御系のブロック図を加えた図である。
【図2】同レーザ加工システムの機構部分の側面図である。
【図3】同レーザ加工システムにおけるローダの動作のフローチャートである。
【図4】製品板材の切抜き加工の順序を示す説明図である。
【図5】製品板材の切抜き加工終了時の素材板材および製品板材の一状態を示す説明図である。
【図6】製品板材の切抜き加工における板材吸着体の動作を示す説明図である。
【図7】従来の素材板材から製品板材を切り抜く1例を示す図である。
【図8】(A)は切抜き加工終了時の状態を示す図、(B)は切抜き加工終了直前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1および図2に示すように、このレーザ加工システムは、素材板材W1に対して切断等の加工を行うレーザ加工機1と、この板材加工機1から製品板材W2を搬出するローダ2と、これらレーザ加工機1およびローダ2を制御するシステム制御装置3とを備える。
【0020】
レーザ加工機1は、レーザ発振器5と、このレーザ発振器5で発生させたレーザ光を下向きに照射するレーザヘッド6と、このレーザヘッド6の下方にあって素材板材W1を載せるテーブル7と、このテーブル7上で素材板材W1をレーザヘッド6に対して相対的に移動させる板材送り機構8とを備える。この実施形態では、レーザヘッド6はフレーム9に固定して設置され、板材送り機構8により素材板材W1を前後方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)に移動させる。
【0021】
前記板材送り機構8は、例えば、フレーム9に対して前後方向に移動自在に設けられたキャリッジ12と、このキャリッジ12に左右方向に移動自在に設けられたクロススライド13と、このクロススライド13に取付けられ、素材板材W1の前端部を把持可能な複数のワークホルダ14とを備える。
【0022】
ローダ2は、製品板材W2を上面から吸着して保持する板材吸着体20を有する。板材吸着体20は、例えば、真空吸着パッドからなる複数の吸着パッド21が前後左右方向に並べて配置され、これら吸着パッド21により板材を吸着する構成である。吸着パッド21はブロア等の負圧源(図示せず)に配管で接続されている。吸着パッド21は、電磁石からなり磁力でワークを吸着する構成であってもよい。
【0023】
板材吸着体20は、移動機構22により、左右方向(X軸方向)、前後方向(Y軸方向)、および上下方向(Z軸方向)にそれぞれ移動自在である。移動機構22は、以下の構成である。すなわち、前後移動レール23に沿って前後移動可能に、左右方向に延びる軌道24が平行に設けられ、この軌道24に沿って走行体25が左右に走行可能に設けられている。走行体25は昇降可能な昇降ロッド26を備え、この昇降ロッド26の下端に板材吸着体20が取付けられている。
【0024】
板材吸着体20は、前後移動駆動源(図示せず)により軌道24が前後移動用レール23に沿って移動することで前後移動し、走行駆動源(図示せず)により走行体25が軌道24に沿って走行することで左右移動する。これらの動作を行わせる移動機構22の部分が水平移動機構22aである。また、板材吸着体20は、昇降駆動源(図示せず)により昇降ロッド26が走行体25に対し昇降することで上下移動する。この動作を行わせる移動機構22の部分が昇降機構22bである。
【0025】
システム制御装置3は、レーザ加工機1を制御するレーザ加工機制御装置31と、ローダ2を制御するローダ制御装置32とを備える。
レーザ加工機制御装置31は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマブルコントローラ等からなり、加工プログラム33を演算制御部34で解読して実行することにより、レーザ加工機1を制御する。
【0026】
ローダ制御装置32は、コンピュータ式のプログラマブルコントローラ等からなり、搬出プログラム35を演算制御部36で解読して実行し、ローダ2の各駆動源に制御指令を与えることにより、ローダ2を制御する。搬出プログラム35には、レーザ加工機1から搬出する製品板材ごとに、板材吸着体20の吸着作動の命令、板材吸着体20をXYZ3軸方向に移動させる命令等が記述されている。
【0027】
上記搬出プログラム35を実行することで、ローダ2は、図3のフローチャートに示すように、吸着過程S2、昇降過程S3,S5、および初期水平移動過程S4を含む各過程の動作を行う。吸着過程S2では、テーブル7上の切り抜かれた製品板材W2を板材吸着体20により吸着する。上昇過程S3,S5では、製品板材W2を吸着した板材吸着体20を昇降機構21bにより定められた高さまで上昇させる。定められた高さは、任意に定めればよい。初期水平移動過程S4では、上昇過程S3,S5による板材吸着体20の上昇動作の初期段階で、水平移動機構21aにより板材吸着体20を定められた距離だけ水平移動させる。この水平移動の方向は、製品板材W2の外周における素材板材W1と接触している箇所が素材板材から離れる方向である。定められた距離は、任意に定めればよい。図3のフローチャートは、上昇過程が第1段階S3と第2段階S5とに分れており、両段階の間に初期水平移動過程S4が実行される例を示している。上記吸着過程S2、昇降過程S3,S5、および初期水平移動過程S4の各動作を行うことで、素材板材W1から製品板材W2が取り上げられる。
【0028】
このレーザ加工システムの具体的な動作を、素材板材W1から長方形の製品板材W2を切り抜く場合を例にとって説明する。
まず、レーザ加工機1の動作について説明する。長方形の角部である切断開始点Aがレーザヘッド6(図1、図2)の直下に位置するように、板材送り機構8によりテーブル7上の素材板材W1の位置を定める。そして、レーザヘッド6からレーザビームLを照射しながら、素材板材W1を一方向(例えば左方向)に送って、図4(A)のように、製品板材W2の最初切抜き辺aを切断する。なお、同図では切断代41を誇張して図示してある。以下、図4(B)〜(D)のように、素材板材W1の送り方向を90°ずつ変えて加工を行い、2番目の切抜き辺b、3番目の切抜き辺c、および最終切抜き辺dを順に切断する。これにより、素材板材W1から、長方形の製品板材W2が切り抜かれる。
【0029】
このようにして製品板材W2を切り抜くと、背景技術の欄で説明した理由により、加工終了時、図4(D)に示すように、製品板材W2が切抜き穴40の一方に偏る。実際には、加工時の熱の影響もあるが、ここでは熱の影響については考えないものとする。
【0030】
また、素材板材W1のコーナー付近で製品板材W2を切り抜く場合や、先に別の製品板材が切り抜かれてできた切抜き穴に隣接して製品板材W2を切り抜く場合、図5のように、素材板材W1における幅の狭い桟状部分43が熱等の影響で変形することにより、加工終了時に、製品板材W2の外周における最初切抜き辺aと最終切抜き辺dに対する反対側の辺bとの交点B付近で、製品板材W2と素材板材W1とが接触した状態となる。
【0031】
次に、ローダ2の動作について説明する(図3参照)。レーザ加工機1により素材板材W1から製品板材W2が切り抜かれると、板材吸着体20がテーブル7上まで移動する(S1)。その後、吸着過程(S2)において、図6(A)のように、テーブル7上の切り抜かれた製品板材W2を板材吸着体20により吸着する。
【0032】
次に、上昇過程の第1段階(S3)において、図6(B)のように、製品板材W2を吸着した板材吸着体20を定められた高さまで上昇させる。この例では、定められた高さは、テーブル7の上面から素材板材W1の板厚t以上の高さであって、素材板材W1の引っ掛かりによる持上がりが生じても素材板材W1の塑性変形が生じない高さであり、例えば30mm程度である。製品板材W2の外周の一部が素材板材W1に引っ掛かっている場合、素材板材W1が持ち上げられることとなる。
【0033】
次に、初期水平移動過程(S4)において、図6(C)のように、板材吸着体20を定められた方向に定められた任意距離だけ水平移動させる。板材吸着体20の水平移動の方向は、図4および図5において矢印44で示す方向である。すなわち、製品板材W2の最終切抜き辺dにおける切断開始点Aから離れ、かつ製品板材W2の最初切抜き辺aにおける切断開始点Aに近づく斜め方向である。この方向であると、図4のように、製品板材W2の最終切抜き辺aが素材板材W1と接触している場合も、図5のように、製品板材W2の交点B付近が素材板材W1と接触している場合も、製品板材W2を水平移動させることで、素材板材W1と製品板材W2の引っ掛かりを外すことができる。なお、上昇過程の第1段階(S3)において、板材吸着体20を素材板材W1の板厚t以上上昇させてあるため、初期水平移動過程(S4)で板材吸着体20を水平移動させる際に、板材吸着体20に吸着された製品板材W2が素材板材W1に当ることを回避できる。
【0034】
次に、上昇過程の第2段階(S5)において、図6(D)のように、板材吸着体20を定められた最終上昇高さまで上昇させる。前記初期水平移動過程(S4)において、素材板材W1と製品板材W2の引っ掛かりが外されているため、素材板材W1を持ち上げずに、製品板材W2だけを持ち上げることができる。その後、取り上げた製品板材W2を吸着した板材吸着体20を所定の搬出先まで移動させる(S6)。
【0035】
この実施形態では、上昇過程が第1段階(S3)と第2段階(S5)とに分れており、両段階の間に初期水平移動過程(S4)が実行されるが、初期水平移動過程が終了してから上昇過程を実行するようにしてもよく、あるいは上昇過程における板材吸着体20の上昇動作の初期段階で、板材吸着体20の水平移動が同時に行われるようにしてもよい。これらの場合、初期水平移動過程において、製品板材W2の引っ掛かりを生じる辺aと反対側の辺cが切抜き穴41内で素材板材W1に当ることを回避するために、初期水平移動過程での板材吸着体20の水平移動量を、少なくとも切断代41の幅の2倍以下に制限する必要がある。
【0036】
また、この実施形態では、レーザヘッド6は位置固定で、素材板材W1を前後方向(Y軸方向)および左右方向(X軸方向)に移動させて加工を行うが、レーザヘッド6を前後方向および左右方向のいずれかに移動可能に設置してもよい。例えばレーザヘッド6が前後方向に移動可能である場合、レーザ加工機1は、レーザヘッド6の前後方向の移動と素材板材W1の左右方向の移動との組み合わせにより、素材板材W1を加工する。ローダ2は、初期水平移動過程において板材吸着体20を左右方向に水平移動させて、素材板材W1を移動させることにより生じた素材板材W1と製品板材W2の引っ掛かりを外す。
【0037】
さらに、この実施形態のローダ2は、レーザ加工機1から製品板材W2の搬出のみを行うものとしたが、ローダ2によりレーザ加工機1に素材板材W1を搬入も行なうようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…板材加工機
2…ローダ
5…テーブル
20…板材吸着体
22a…水平移動機構
22b…昇降機構
32…ローダ制御装置
A…切断開始点
B…交点
W1…素材板材
W2…製品板材
a…最終切抜き辺
d…最終切抜き辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上で素材板材に移動させながらレーザヘッドで前記素材板材から製品板材を切り抜くレーザ加工機と、このレーザ加工機から前記製品板材を搬出するローダと、このローダを制御するローダ制御装置とを備え、
前記ローダは、前記製品板材を上面から吸着する板材吸着体と、この板材吸着体を昇降させる昇降機構と、前記板材吸着体を前記テーブルの上面に沿って前後左右に移動させる水平移動機構とを備え、
前記ローダ制御装置の制御過程は、前記レーザ加工機により素材板材から製品板材が切り抜かれた後、この切り抜かれた製品板材を前記テーブル上で前記板材吸着体により吸着する吸着過程と、この製品板材を吸着した前記板材吸着体を前記昇降機構により定められた高さまで上昇させる上昇過程と、この上昇過程による前記板材吸着体の上昇動作の初期段階で、製品板材の外周における素材板材と接触している箇所が素材板材から離れる方向に、前記水平移動機構により前記板材吸着体を定められた距離だけ水平移動させる初期水平移動過程とを有する、
レーザ加工システム。
【請求項2】
前記上昇過程は、前記テーブル上の製品板材を吸着した前記板材吸着体を少なくとも素材板材の板厚以上上昇させる第1段階と、この第1段階の上昇高さからさらに上昇させる第2段階とを含み、これら上昇過程の第1段階と第2段階との間に前記初期水平移動過程が実行される請求項1記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
前記製品板材が矩形状であって、製品板材の角部を切断開始点として製品板材の外周をレーザ切断加工し、切断開始点まで戻ることにより切り抜かれるものであり、前記初期水平移動過程における前記水平移動の方向が、製品板材の最終切抜き辺における前記切断開始点から離れ、かつ製品板材の最初切抜き辺における前記切断開始点に近づく斜め方向である請求項1または請求項2記載のレーザ加工システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−35056(P2013−35056A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175589(P2011−175589)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】