説明

レーザ加工機のビームモード自動選択装置

【課題】 レーザ加工機のレーザ共振装置において、レーザビームの外径寸法を規制してビームモードを自動的に選択する装置を提供する。
【解決手段】 レーザ発振装置100は、筐体110内でレーザビームLBを発振させて、出力レンズ130を介して加工トーチ10へ供給する。レーザビームLBの軸心に直交する方向に設けられるビームモード自動選択装置200は、リニアガイドで案内される絞り部材220を有する。ハウジング210の外部に設けるシリンダ240により駆動されるピストンロッド244は一方の極性を有する永久磁石250を駆動する。絞り部材220にとりつけた他方の極性を有する永久磁石230は、非接触で駆動され、絞り部材220の開口部222,224を自動的に選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機におけるレーザビームの径を自動的に変更してビームモードを選択するビームモード自動選択装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、レーザ共振器から出力されるレーザビーム径とビームモードの関係及び加工効率に与える影響を示す説明図である。
全体を符号1で示すレーザ共振器内で発生したレーザビームLBは、折り返しミラー5により折り返されてレーザ加工用のトーチ10へ投入される。トーチ10内には、集光レンズ20が配設されており、ほぼ平行光線状のビームとして投入されるレーザビームを集光し、ノズル30からワーク(加工物)W,W上に焦点を合わせてワークW,Wに対してレーザ加工を施す。
【0003】
図5(a)に示すように、ワークWの厚さ寸法が大であるとき、例えば鋼板で板厚が25mm〜6mm程度のときは、共振器1から出力されるレーザビームLBの径寸法Dを大きくする。レーザビームLBの径寸法を大きくとると、レーザビームのエネルギーを示すビームモードは、いわゆるマルチモードMMを形成する。
このマルチモードMMにあっては、ワークW上に集光される集光スポットが大きくなる。この径寸法が大きな集光スポットにより大量のエネルギーがワークW上に投入され、厚板のワークWを高速でかつ高品質に加工することができる。
【0004】
一方、図5の(b)に示すように、ワークWの厚さ寸法が小であるとき、例えば、鋼板で板厚が6mm〜0.2mm程度のときは、共振器1から出力されるレーザビームLBの径寸法Dを小さくする。レーザビームLBの径寸法Dを小さくすると、レーザビームのエネルギーを示すレーザモードは、いわゆるシングルモードSMを形成する。
このシングルモードSMにあっては、ワークW上に集光される集光スポットが小さくなる。この径寸法が小さな集光スポットにより、ワークW上の一点にエネルギー集中し、薄のワークWを高速でかつ高品質に加工することができる。
なお、下記の特許文献は、出力モードの切替装置を開示している。
【特許文献1】特開平8−19888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この大きなレーザビーム径Dを得るには、共振器1内に内径寸法が大きなアパーチャーと称する絞り部材Aを装備することにより達成できる。同様に、小さなレーザビーム径Dを得るには、共振器1内に内径寸法が小さなアパーチャーAを装備することにより達成できる。
本発明の目的は、レーザ加工機において加工すべきワークの板厚や材質等に応じて自動的にアパーチャーの径寸法を選択する装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工機のビームモード自動選択装置は、基本的な手段として、レーザ加工機のレーザ共振装置の筐体内に配置されてレーザビームの外径寸法を絞るための複数の異なる内径寸法を有する絞り部材と、絞り部材を案内する装置と、絞り部材にとりつけられる一方の磁極性を有する永久磁石と、レーザ共振装置の筐体の外側に設けられる駆動装置と、駆動装置にとりつけられて絞り部材の永久磁石に対向する他方の極性有する永久磁石を備える。
そして、絞り部材を案内する装置はリニアガイドが使用され、駆動装置はピストン・シリンダである。
また、ロータリーアーム状の絞り部材を案内する装置は回転軸受が使用され、駆動装置はパルスモータであることもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレーザ加工機のビームモード自動選択装置は、以上の手段を備えることにより、真空状態であってレーザガスが封入されるレーザ発振装置の筐体内に絞り部材を配設し、筐体の外部から非接触で絞り部材を操作し、安全かつ確実にレーザビームのモードを選択することができる。そこで、加工条件に最適なビームモードを自動的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明のレーザ加工機のビームモード自動選択装置の概要を示す説明図、図2は、絞り部材の正面図である。
全体を符号100で示すレーザ発振装置は、筐体110を有し、筐体内は真空状態に保たれてレーザガスが封入される。筐体110内には、反射ミラー等の光学系120が配設され、レーザビームLBが発振させる。
レーザビームLBは、発振装置の出力レンズ130から図示しない光路側へ出力され、光路内の折り返しミラー5によりトーチ10側へ送られる。
トーチ10へ入力されたレーザビームは、集光レンズ20で集光され、ノズル30からワークW上へ照射される。
【0009】
全体を符号200で示すビームモード自動選択装置は、反射ミラー等で構成されるレーザ発振機の筐体110に対して垂直方向に延びるケーシング210を有し、ケーシング210内にガイドレール212が設けられる。
このガイドレール212に対してリニアガイド214が摺動自在に支持され、リニアガイド214に対して板状の絞り部材220がとりつけられる。
【0010】
図2にも示すように、絞り部材220は、第1の開口部222と第2の開口部224を有する。第1の開口部222は、マルチモードの出力モードに対応する大口径Dに形成され、第2の開口部224は、シングルモードの出力に対応する小口径Dに形成される。
絞り部材220は、リニアガイド214の反対側の面に一方の極性(S)をもつ永久磁石230がとりつけられる。
ケーシング210を挟んで、絞り部材220に平行にシリンダ240が設けられる。シリンダ240内のピストン242は、例えばエアで駆動される。
ピストンロッド244の先端には、他方の極性(N)をもつ永久磁石250がとりつけられる。
【0011】
ピストンロッド244とともに永久磁石250が移動すると、ケーシング210内の永久磁石230が追従し、絞り部材220もガイドレール212上を摺動する。
この作動により絞り部材の第1の開口部222と第2の開口部224を選択的にレーザビームの発振光路系に挿入することができる。したがって、レーザビームLBの口径をマルチモードを発生させる口径とシングルモードを発生させる口径に任意に切り替えることができる。
【0012】
そこで、レーザ加工機のNCプログラム内にワークの板厚,材質,加工条件等に対応して、ビームモードを自動選択する機能を付加することにより、最適なビームモードを自動的に選択することができる。
そこで、最適な加工条件により、高速かつ高品質なレーザ加工を施すことができる。
【0013】
本発明のビームモード自動選択装置は、レーザビーム発振光学系のケーシングの内部に絞り部材を装備し、ケーシングの外部に配設したアクチュエータにより、非接触で絞り部材を操作することができる。そこで、ビームモードの変更もスムーズであり、また安定したビームモードを得ることができる。
【0014】
図3,図4は、本発明の他の実施例を示す説明図である。
レーザビーム発振装置300は、レーザ発振器のエンドプレート310を有し、エンドプレート310の一端側にレーザ発振光路系の光路管320がとりつけられる。
エンドプレート310の他端側には、レーザミラー330が設けられる。そして、このエンドプレート310に設けられる空間350の開口部にビームモード自動選択装置400がとりつけられる。
【0015】
レーザモード自動選択装置400は、エンドプレート310の開口部350に対向してとりつけられるハウジング410を有する。ハウジング410には、軸受442を介して回転軸440が回転自在にとりつけられる。回転軸440には、ロータリーアーム430が旋回動自在にとりつけられる。
【0016】
図4に示すように、ロータリーアーム430は、径寸法が異なるアパーチャーを形成する複数の開口部432,434,436が形成される。
本実施例にあっては、3個の開口部を備えるが、開口部の個数は任意に設定することができる。
回転軸の端部には円筒状の一方の極性(S)を有する永久磁石450がとりつけられる。永久磁石450の外側にはケーシング420がとりつけられ、ケーシングの内部は、エンドプレート310の空間350に連通される。
ハウジング412にとりつけられるパルスモータ460の出力軸462には、他方の極性(N)を有する永久磁石470がとりつけられる。この永久磁石470は、ケーシング420を挟んで非接触に永久磁石450に対向する。
パルスモータ460の回転は、永久磁石470を介してロータリーアーム430側の永久磁石450に伝達され、任意のアパーチャーを選択することができる。
【0017】
本発明は以上のように、高真空度に維持され、必要なガスが封入されるレーザ共振器の筐体内部に配設される絞り部材を、筐体外部に装備される駆動手段により非接触で操作する。
従って、レーザ共振器内の雰囲気に影響を与えることなく、レーザ加工機のビームモードを自動的に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例を示す説明図。
【図2】絞り部材の正面図。
【図3】本発明の他の実施例を示す説明図。
【図4】絞り部材の正面図。
【図5】ビームモードの説明図。
【符号の説明】
【0019】
10 レーザ加工トーチ
20 集光レンズ
30 ノズル
100 レーザ発振装置
110 筐体
120 反射ミラー
130 出力レンズ
200 ビーム自動選択装置
212 レール
214 リニアガイド
220 絞り部材
222,224 開口部(アパーチャー)
230 永久磁石
240 シリンダ
242 ピストン
244 ピストンロッド
250 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工機のレーザ共振装置の筐体内に配置されてレーザビームの外径寸法を絞るための複数の異なる内径寸法を有する絞り部材と、絞り部材を案内する装置と、絞り部材にとりつけられる一方の磁極性を有する永久磁石と、レーザ共振装置の筐体の外側に設けられる駆動装置と、駆動装置にとりつけられて絞り部材の永久磁石に対向する他方の極性有する永久磁石を備えるレーザ加工機のビームモード自動選択装置。
【請求項2】
絞り部材を案内する装置はリニアガイドであって、駆動装置はピストン・シリンダである請求項1記載のレーザ加工機のビームモード自動選択装置。
【請求項3】
ロータリーアーム状の絞り部材を案内する装置は回転軸受であって、駆動装置はパルスモータである請求項1記載のレーザ加工機のビームモード自動選択装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−159272(P2006−159272A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357935(P2004−357935)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】