説明

レーザ加工機

【課題】上集塵器の吸引力によってワーク中央部が浮上がり、レーザ集束光の焦点ずれによる加工不良が発生したりすることのないレーザ加工機を得ること。
【解決手段】内部に下集塵室が形成され、ワーク載置面に前記下集塵室に連通する下集塵口が設けられ、前記ワーク載置面にワーク30を保持可能な加工テーブル10と、内部に上集塵室が形成され、下面に前記上集塵室に連通する上集塵口が設けられ、前記加工テーブル10の上方に配置される上集塵器40と、前記上集塵室及び前記下集塵室に接続された集塵機50と、前記上集塵口の吸引力又は前記下集塵口の吸引力を調整する吸引力調整装置53と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置を備えたレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも4辺以上の板状の被加工物の加工領域にレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、前記被加工物を対向する2辺のチャックによって引張力を与えつつ保持する引張装置と、前記引張装置により前記被加工物が引っ張られた状態で前記被加工物に複数の加工領域を形成するために前記被加工物を移動させる移動装置を備え、前記被加工物のレーザ光が照射される面の裏面側に前記複数の加工領域の全域に亘る大きさの集塵装置を配置し、前記引張力と直角方向の前記被加工物の辺をそれぞれ保持する2つの保持装置と、前記保持装置の一方を前記引張力と直角方向に移動させる調整装置を設けたレーザ加工装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このレーザ加工装置は、非貫通穴加工を行なう際には、被加工物を対向する2辺のチャックによって引張力を与えつつ保持する引張装置と、前記引張装置により前記被加工物が引っ張られた状態で前記被加工物に複数の加工領域を形成するために前記被加工物を移動させる移動装置と、前記被加工物のレーザ光が照射される面の裏面側に前記複数の加工領域の全域に亘る大きさの集塵装置と、前記引張力と直角方向の前記被加工物の辺をそれぞれ保持する2つの保持装置と、前記保持装置の一方を前記引張力と直角方向に移動させる調整装置で被加工物を保持する。
【0004】
また、貫通穴加工を行う際には、被加工物を吸着する吸着穴を複数設けた吸着装置を前記集塵装置の間に配置し、集塵装置内部のガス流れを停止装置にて停止させて被加工物を前記吸着装置で保持し、あわせて前記引張装置および前記保持装置で前記被加工物の保持を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−6356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術によれば、被加工物を保持するための装置の数が多く、レーザ加工装置の構成が複雑である、という問題があった。また、被加工物(ワーク)の上方に集塵器がないため、被加工物上に加工粉塵が付着する、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ワークの上方に上集塵器を設けることにより、ワーク上への加工粉塵の付着を低減することができ、かつ、構造が簡素なレーザ加工機を得ることを目的とする。また、上集塵器の吸引力によってワーク中央部が浮上がり、レーザ集束光の焦点ずれによる加工不良が発生したり、最悪、ワークが上集塵器に吸付けられるというような問題が発生することのないレーザ加工機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、内部に下集塵室が形成され、ワーク載置面に前記下集塵室に連通する下集塵口が設けられ、前記ワーク載置面にワークを保持可能な加工テーブルと、内部に上集塵室が形成され、下面に前記上集塵室に連通する上集塵口が設けられ、前記加工テーブルの上方に配置される上集塵器と、前記上集塵室及び前記下集塵室に接続された集塵機と、前記上集塵口の吸引力又は前記下集塵口の吸引力を調整する吸引力調整装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワーク上への加工粉塵の付着を低減することができ、かつ、上集塵器の吸引力によってワーク中央部が浮上がるようなことのないレーザ加工機が得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のレーザ加工機の実施の形態の集塵装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態の加工テーブルを示す上面図である。
【図3】図3は、実施の形態の加工テーブルを示す縦断面図である。
【図4】図4は、実施の形態の上集塵器を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるレーザ加工機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明にかかるレーザ加工機の実施の形態の集塵装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、実施の形態のレーザ加工機90は、4台の加工テーブル10と、内部にfθレンズを有する2台の加工ヘッド20と、を備えるマルチテーブル形式のレーザ加工機である。実施の形態のレーザ加工機90は、マルチテーブル形式のレーザ加工機であるが、本発明のレーザ加工機としては、1台の加工テーブル10と1台の加工ヘッド20とを備えるものであってもよいし、その他、複数の加工テーブル20を備えるものであってもよい。
【0013】
図2は、実施の形態の加工テーブルを示す上面図であり、図3は、実施の形態の加工テーブルを示す縦断面図である。図2及び図3に示すように、実施の形態の加工テーブル10は、外形が直方体状に形成され、内部に下集塵室11が形成されている。加工テーブル10のワーク載置面12には、下集塵室11に連通する多数の下集塵口13が設けられている。下集塵室11は、下集塵管51及び合流管54を介して集塵機50(図1参照)に接続されている。
【0014】
加工テーブル10のワーク載置面12の外周部には、多数の吸着孔14が設けられている。吸着孔14は、加工テーブル10の内部外周部に形成された環状の吸引室15に連通している。吸引室15には、吸引管16を介して図示しない真空吸引機が接続されている。真空吸引機の吸引(すなわち、吸着孔14による吸引)により、ワーク載置面12上に載置されたワーク(例えば、貫通孔加工される電子機器の回路基板等)30が、吸着保持される。なお、図1に示すように、吸引管16の中間部には、電磁開閉弁17が設けられ、個々の加工テーブル10の吸引を個別にON/OFFすることができるようになっている。ワーク30の外周部を加工テーブルにクランプするようにしてもよいが、実施の形態のレーザ加工装置90では、真空吸着方式を採用して装置の簡素化を図っている。
【0015】
図4は、実施の形態の上集塵器を示す縦断面図である。図1及び図4に示すように、実施の形態の上集塵器40は、fθレンズにより集束レーザビーム21をワーク30に照射する加工ヘッド20の下側に取付けられ、加工テーブル10の上方に配置される。上集塵器40は、略八角形の箱状に形成され、内部は上集塵室41となっていて、下面中央に上集塵口42が設けられている。上集塵口42は、集束レーザビーム21の射出口を兼ねている。
【0016】
上集塵室41は、上集塵管52、可変絞り弁53及び合流管54を介して単一の集塵機50に接続されている。下集塵口13からの集塵と上集塵口42からの集塵を別々の集塵機で行なうこともできるが、その場合、集塵機の設置スペースが余分に必要となり、メンテナンスの手間が増え、装置導入コストも高くなる。下集塵口13からの集塵と上集塵口42からの集塵を1台の集塵機50で行なうことにより、上述の不具合を解消することができる。
【0017】
可変絞り弁53は、図示しない制御装置からの指令により、上集塵管52の風路断面積を絞り、上集塵口42の吸引力(負圧力)を調整する。これにより、下集塵口13の吸引力と上集塵口42の吸引力の比を調整することができる。なお、可変絞り弁53を下集塵管51に設け、下集塵口13の吸引力を調整することにより、下集塵口13の吸引力と上集塵口42の吸引力の比を調整してもよい。
【0018】
下集塵管51には、圧力センサ55が接続されている。圧力センサ55で検出した下集塵管51の圧力検出値(負圧)を制御装置に送り、圧力検出値に基づいて可変絞り弁53を調整することができる。可変絞り弁53は、吸引力調整装置を構成している。
【0019】
また、図示はしないが、実施の形態のレーザ加工機90は、4台の加工テーブル10にワーク30を載置(ローディング)するローダーを備えている。このローダーは、ローディングするワーク30の数を検出し、制御装置に送信するようになっている。
【0020】
また、制御装置は、加工プログラムからワーク30の加工条件(例えば、貫通加工孔数、貫通加工孔の総面積、ワーク30の曲げ剛性、重量、厚さ、大きさ、表面粗さ、加工位置等)を算出する機能を有している。
【0021】
次に、実施の形態のレーザ加工機90の作用について説明する。ワーク30の貫通孔等のレーザ加工に先立ち、ローダーにより、4台の加工テーブル10上にワーク30をローディングするとき、ローダーは、ローディングするワーク30の数を検出し、制御装置に検出結果を送信する。
【0022】
加工テーブル10の下集塵口13の吸引力(負圧力)は、吸着孔14の吸引力とともにワーク30の加工テーブル10への吸着に寄与しているので、ローディングされるワーク30の数が3つ以下であると、ワーク30が載置されていない加工テーブル10の下集塵口13及び吸着孔14から空気が流入して(ワーク30が載置されていない加工テーブル10の電磁開閉弁17を閉じるようにすれば、吸着孔14からは空気が流入しない。)、ワーク30が載置された加工テーブル10の吸着力が低下し、ワーク30の中央部が浮上がり傾向になるので、制御装置から指令して、可変絞り弁53により上集塵管52の風路断面積を絞り、上集塵口42の吸引力を下げる(可変絞り弁53が下集塵管51に設けられている場合は、可変絞り弁53を開き、下集塵口13の吸引力を上げる。以下、同じ。)。
【0023】
ワーク30の貫通加工孔数又は貫通加工孔の総面積が多い場合は、貫通加工孔から下集塵口13へ空気が流入して、ワーク30が載置された加工テーブル10の吸着力が低下し、ワーク30の中央部が浮上がり傾向になるので、制御装置から指令して、可変絞り弁53により上集塵管52の風路断面積を絞り、上集塵口42の吸引力を下げる。
【0024】
この場合、貫通加工孔数又は貫通加工孔の総面積に反比例するように、上集塵口42の吸引力を連続的に下げてもよいし、貫通加工孔数又は貫通加工孔の総面積の閾値を設定し、閾値を超えたとき、上集塵口42の吸引力を段階的に下げてもよい(以下、同じ。)。
【0025】
ワーク30の曲げ剛性が低いとき、重量が軽いとき、厚さが薄いとき等は、ワーク30の中央部が浮上がり傾向になるので、制御装置から指令して、可変絞り弁53により上集塵管52の風路断面積を絞り、上集塵口42の吸引力を下げる。
【0026】
ワーク30が小さく、加工テーブル10の吸着孔14や下集塵口13の一部が露出する場合は、吸着孔14(吸着孔14の一部が露出する加工テーブル10の電磁開閉弁17を閉じるようにすれば、吸着孔14からは空気が流入しない。)及び下集塵口13の一部から空気が流入して、加工テーブル10の吸着力が低下し、ワーク30が浮上がり傾向になるので、制御装置から指令して、可変絞り弁53により上集塵管52の風路断面積を絞り、上集塵口42の吸引力を下げる。
【0027】
ワーク30の表面粗さが粗い場合は、ワーク30とワーク載置面12との間の隙間から吸着孔14及び下集塵口13に空気が流入して、加工テーブル10の吸着力が低下し、ワーク30が浮上がり傾向になるので、制御装置から指令して、可変絞り弁53により上集塵管52の風路断面積を絞り、上集塵口42の吸引力を下げる。
【0028】
ワーク30の下集塵口13の領域に貫通孔加工を行なうときは、下集塵口13から空気が流入して、ワーク30の吸着力が低下し、ワーク30が浮上がり傾向になるので、制御装置から指令して、可変絞り弁53により上集塵管52の風路断面積を絞り、上集塵口42の吸引力を下げる。
【0029】
上述の種々の原因による加工テーブル10のワーク30吸着力の低下は、下集塵管51内(下集塵管51に可変絞り弁53を設置したときは、可変絞り弁53の上流側)の吸引負圧力の上昇として圧力センサ55により検出することができ、圧力センサ55で検出した下集塵管51の圧力検出値(負圧)を制御装置に送り、圧力検出値に基づいて可変絞り弁53の絞り量を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかるレーザ加工機は、上集塵器を備えるレーザ加工機に有用である。
【符号の説明】
【0031】
10 加工テーブル
11 下集塵室
12 ワーク載置面
13 下集塵口
14 吸着孔
15 吸引室
16 吸引管
17 電磁開閉弁
20 加工ヘッド
21 集束レーザビーム
30 ワーク
40 上集塵器
41 上集塵室
42 上集塵口
50 集塵機
51 下集塵管
52 上集塵管
53 可変絞り弁(吸引力調整装置)
54 合流管
55 圧力センサ
90 レーザ加工機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に下集塵室が形成され、ワーク載置面に前記下集塵室に連通する下集塵口が設けられ、前記ワーク載置面にワークを保持可能な加工テーブルと、
内部に上集塵室が形成され、下面に前記上集塵室に連通する上集塵口が設けられ、前記加工テーブルの上方に配置される上集塵器と、
前記上集塵室及び前記下集塵室に接続された集塵機と、
前記上集塵口の吸引力又は前記下集塵口の吸引力を調整する吸引力調整装置と、
を備えることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記上集塵室及び前記下集塵室に接続された集塵機は、単一の集塵機であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記加工テーブルのワーク載置面の外周部には、真空吸引される吸着孔が設けられ、前記ワークを前記ワーク載置面上に吸着保持することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記加工テーブルを複数備え、レーザ加工時に前記ワークが載置されない加工テーブルがあるとき、前記吸引力調整装置は、前記上集塵口の吸引力又は前記下集塵口の吸引力を調整することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記吸引力調整装置は、前記ワークの加工条件に応じて前記上集塵口の吸引力又は前記下集塵口の吸引力を調整することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項6】
前記加工条件は、前記ワークの貫通加工孔数、貫通加工孔の総面積、前記ワークの曲げ剛性、重量、厚さ、大きさ、表面粗さ、加工位置のうちのいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工機。
【請求項7】
前記吸引力調整装置は、前記上集塵室と前記集塵機とを接続する上集塵管に設置された可変絞り弁であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項8】
前記可変絞り弁は、前記下集塵室と前記集塵機とを接続する下集塵管の圧力に応じて絞り量を調整されることを特徴とする請求項7に記載のレーザ加工機。
【請求項9】
前記吸引力調整装置は、前記下集塵室と前記集塵機とを接続する下集塵管に設置された可変絞り弁であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項10】
前記可変絞り弁は、前記下集塵室と前記集塵機とを接続する下集塵管の前記可変絞り弁より上流側の圧力に応じて絞り量を調整されることを特徴とする請求項9に記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156563(P2011−156563A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20652(P2010−20652)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】