説明

レーザ加工装置、レーザ加工方法、加工用紙

【課題】加工面とは反対側の面の膨らみを防止し、また、作業性がよいレーザ加工装置、レーザ加工方法、加工用紙を提供する。
【解決手段】インライン加工システム1は、レーザ光Lを照射するレーザ照射部31と、加工用紙Wに対するレーザ光Lのレーザ照射位置Pを移動する前ローラ10、後ローラ20、照射位置変更部32と、レーザ照射部31、照射位置変更部32等を制御する管理制御部53とを備え、管理制御部53は、レーザ光Lの出力を変えること、及び加工用紙Wに対するレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、加工用紙Wのレーザ照射位置Pの移動軌跡上に、浅穴61及び深穴62の穴部加工を行い、穴部加工を繰り返し行い、浅穴61及び深穴62を連接して設けて、連続加工することにより連続した凹凸形状を形成する連続穴部加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用紙に穴明け加工を行うレーザ加工装置、レーザ加工方法、加工用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシン刃を利用して、加工用紙に穴開け加工を行う加工装置があった(例えば特許文献1)。
しかし、従来の加工装置は、以下の問題があった。
・加工面とは反対側の面に膨らみができてしまうので、ロール状にして保管すると、膨らみ部分が重なって、加工用紙にしわが発生してしまっていた。また、見栄えも悪かった。
・ミシン刃の高さの微調整をしなければならないので、例えば、前回と同じ条件設定にすることが困難であり、作業性が悪かった。
・加工を進めると、ミシン刃が磨耗してしまうので、交換する必要があり、この点でも作業性が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−61888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、加工面とは反対側の面の膨らみを防止し、また、作業性がよいレーザ加工装置、レーザ加工方法、加工用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0006】
・第1の発明は、レーザ光を照射するレーザ照射部(31)と、加工用紙(W,300W)に対する前記レーザ光のレーザ照射位置(P)を移動するレーザ照射位置移動部(10,20,32)と、レーザ照射部、レーザ照射位置移動部を制御する制御部(53,53a,53b)とを備え、前記制御部は、前記レーザ光の出力を変えること、及び前記加工用紙に対するレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、前記加工用紙のレーザ照射位置の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部(61,62、361、362)の穴部加工を行い、前記穴部加工を繰り返し行い、前記深さが異なる少なくとも2つの穴部を連接して設けて、連続加工することにより連続した凹凸形状を形成する連続穴部加工を行うこと、を特徴とするレーザ加工装置である。
・第2の発明は、上層及び前記上層(200W−1,400W−1)よりも下層(200W−2,400W−2)の少なくとも2層により形成される加工用紙(200W,400W)に対して、レーザ光を照射するレーザ照射部(31)と、前記加工用紙に対する前記レーザ光のレーザ照射位置を移動するレーザ照射位置移動部(10,20,32)と、レーザ照射部、レーザ照射位置移動部を制御する制御部(53,53a,53b)とを備え、前記制御部は、前記加工用紙をレーザ加工して、前記上層をハーフカット加工(261,460)又はミシン目加工すること、を特徴とするレーザ加工装置である。
・第3の発明は、第2の発明のレーザ加工装置において、前記制御部(53,53a,53b)は、前記レーザ光の出力を変えること、及び前記加工用紙に対するレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、前記加工用紙(200W)のレーザ照射位置の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部(261,262)の穴部加工を行い、前記少なくとも2つの穴部のうち浅いもの(261)を前記上層(200W−1)に形成し、前記少なくとも2つの穴部のうち深いもの(262)を前記下層(200W−2)に形成すること、を特徴とするレーザ加工装置である。
・第4の発明は、第3の発明のレーザ加工装置において、前記制御部(53,53a,53b)は、前記上層(200W−1)にハーフカット加工(261)を行い、前記下層(200W−2)にミシン目加工(262)をすること、を特徴とするレーザ加工装置である。
・第5の発明は、第1から第4までのいずれかの発明のレーザ加工装置において、前記制御部(53,53a,53b)は、前記加工用紙の端部の穴部の深さを、前記端部よりも内側の穴部の深さよりも深くすること、を特徴とするレーザ加工装置である。
【0007】
・第6の発明は、レーザ光を照射するレーザ照射工程と、加工用紙(W,300W)に対する前記レーザ光のレーザ照射位置を移動するレーザ照射位置移動工程と、前記レーザ光の出力を変えること、及び前記加工用紙に対するレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、前記加工用紙のレーザ照射位置(P)の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部(61,62、361、362)の穴部加工工程と、前記穴部加工工程を繰り返し行い、前記深さが異なる少なくとも2つの穴部を連接して設けて、連続加工することにより連続した凹凸形状を形成する連続穴部加工工程と、を備えるレーザ加工方法である。
・第7の発明は、上層(200W−1,400W−1)及び前記上層よりも下層(200W−2,400W−2)の少なくとも2層により形成される加工用紙(200W,400W)に対して、レーザ光を照射するレーザ照射工程と、前記加工用紙に対する前記レーザ光のレーザ照射位置(P)を移動するレーザ照射位置移動工程と、前記加工用紙をレーザ加工して、前記上層のみをハーフカット加工(261,460)又はミシン目加工するレーザ加工工程と、を備えるレーザ加工方法である。
【0008】
・第8の発明は、レーザ光の出力を変えること、及びレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、レーザ照射位置の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部が連接して設けられ、連続した凹凸形状が形成された加工用紙(W,300W)である。
・第9の発明は、少なくとも上層及び前記上層よりも下層の2層により形成された加工用紙であって、レーザ加工によって、前記上層のみがハーフカット加工又はミシン目加工されたことを特徴とする加工用紙(200W,400W)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
第1、第6、第8の発明は、レーザ光の出力、照射時間を変更すればよいので、調整作業が容易である。また、加工精度を向上できる。また、深さが異なる少なくとも2つの穴部を連続加工することにより連続した凹凸形状を形成するので、ハーフカットによるミシン目加工をすることができる。さらに、加工側とは反対側の面に膨らみが生じることがないので、保管時にかさばることがなく、また、しわの発生を抑制できる。
【0010】
第2、第7、第9の発明は、2層以上の層のうち上層を、レーザ光の出力、照射時間を変更して、ハーフカット加工又はミシン目加工するので、上記第1、第6、第8の発明と同様に、調整作業が容易であり、加工精度を向上でき、また、しわの発生を抑制できる。
【0011】
第3の発明は、少なくとも2つの穴部のうち浅いものを上層に形成し、深いものを下層に形成するので、上層、下層に異なる加工を行うことができる。
第4の発明は、上層にハーフカット加工を行い、下層にミシン目加工をするので、例えば、層間を剥離可能な接着材で接着することにより、上層の一部分を、下層から簡単に剥離でき、またこのときに、下層が分離してしまうことを抑制できる。
【0012】
第5の発明は、加工用紙の端部の深さを浅く加工するので、加工用紙の端部の加工部分の強度が、内側よりも強くなるため、加工用紙が不用意に切れてしまうことを抑えることができ、取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態のインライン加工システム1の構成を説明する図である。
【図2】第1実施形態のレーザ照射位置Pが加工用紙W上を移動する状態を説明する上面図である。
【図3】第1実施形態のミシン目加工の工程を説明する加工用紙Wの断面図、加工用紙Wの使用方法を説明する上面図である。
【図4】第1実施形態のレーザ出力の設定工程のフローチャートである。
【図5】第2実施形態のレーザ加工の工程を説明する加工用紙200Wの断面図、加工用紙200Wの使用方法を説明する上面図である。
【図6】第3実施形態のレーザ加工の工程を説明する加工用紙300Wの断面図及び上面図、加工用紙300Wの使用方法を説明する斜視図である。
【図7】第4実施形態のレーザ加工の工程を説明する加工用紙400Wの断面図、加工用紙400Wの使用方法を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態のインライン加工システム1の構成を説明する図である。
なお、実施形態において、加工用紙Wを流す方向を送り方向X、加工用紙Wの面方向のうち送り方向Xに直交する方向を奥行方向Y、加工用紙Wの表面の法線方向を鉛直方向Zとする。
インライン加工システム1は、インラインで、レーザ加工部30及びプリンタ40を接続することにより、加工用紙Wに対して、一連の工程でレーザ加工及び印刷行い、連続帳票等を作製できる加工システムである。
インライン加工システム1は、送出ローラ2、巻き取りローラ3、前ローラ10、後ローラ20、レーザ加工部30、プリンタ40、管理装置50を備える。
【0015】
送出ローラ2は、加工前の加工用紙W(ワーク)が巻かれたローラであり、送り方向Xの上流側X1に設けられている。
巻き取りローラ3は、加工後の加工用紙Wを巻き取るローラであり、送り方向Xの下流側X2に設けられている。
【0016】
前ローラ10、後ローラ20は、加工用紙Wを下流側X2に送るローラである。前ローラ10、後ローラ20は、送り方向Xにおいて、レーザ加工部30を挟み込むように配置されている。
前ローラ10、後ローラ20は、サーボモータ(図示せず)機械的に接続され、このサーボモータによって駆動される。
【0017】
レーザ加工部30は、加工用紙Wに対してレーザ加工を行う装置である。レーザ加工部30は、例えば、穴開加工、ミシン目加工、マーキング処理、ハーフカット加工、マージナル加工等を行うことができる。レーザ加工部30は、加工用紙Wにレーザ光Lを、送り方向X及び奥行方向Yにスキャンする、いわゆるXYスキャナである。
レーザ加工部30は、レーザ照射部31、照射位置変更部32を備える。
【0018】
レーザ照射部31は、レーザ光Lを照射する光源であり、レーザ発振素子等である。
照射位置変更部32は、レーザ照射部31からのレーザ光Lの照射方向を変更する装置である。照射位置変更部32は、ミラー32a、パルスモータ32X,32Yを備える。
ミラー32aは、レーザ照射部31からのレーザ光Lを反射する部材である。ミラー32aは、いわゆるガルバノミラーであり、送り方向Xの軸回り及び奥行方向Yの軸回りに回転可能に支持される。ミラー32aは、回転駆動することによって、レーザ照射部31の加工用紙W上へのレーザ照射位置Pを、送り方向X及び奥行方向Yに移動する。
【0019】
パルスモータ32Xは、ミラー32aを、送り方向Xの軸回りに回転駆動するモータである。パルスモータ32Yは、ミラー32aを、奥行方向Yの軸回りに回転駆動するモータである。
なお、前述した送出ローラ2と、巻き取りローラ3と、照射位置変更部32とは、加工用紙W上のレーザ照射位置Pを移動するレーザ照射位置移動部を構成する。
【0020】
プリンタ40は、加工用紙Wに印刷する汎用のインクジェットプリンタである。プリンタ40は、レーザ加工部30の下流側X2に配置されている。
プリンタ40は、プリンタローラ41、ヘッド42、プリンタ記憶部43、プリンタ制御部44を備える。
【0021】
プリンタローラ41は、プリンタ40内部において、加工用紙Wを下流側X2に送る装置である。プリンタローラ41は、プリンタ40内の上流側X1、下流側X2にそれぞれ配置されている。
ヘッド42は、加工用紙Wに対して実際にインクを射出して印刷する装置である。
プリンタ記憶部43は、プリンタ40の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。プリンタ記憶部43は、印刷情報を記憶する印刷情報記憶部43aを有する。
【0022】
プリンタ制御部44は、プリンタ40を統括的に制御する制御部である。プリンタ制御部44は、例えばCPU(中央処理装置)等から構成される。プリンタ制御部44は、プリンタ記憶部43の印刷情報に基づいて、プリンタローラ41、ヘッド42を制御して、加工用紙Wに印刷する。
【0023】
管理装置50は、インライン加工システム1の前後のローラ10,20、レーザ加工部30等の各ハードウェアを統括的に制御するコンピュータである。
管理装置50は、操作部51、管理記憶部52、管理制御部53を備える。
操作部51は、管理装置50を操作するためのキーボート等の入力装置である。
管理記憶部52は、管理装置50の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。管理記憶部52は、加工情報記憶部52aを備える。
加工情報記憶部52aは、レーザ加工部30での加工形状を記憶する記憶領域である。
【0024】
管理制御部53は、管理装置50を統括的に制御する制御部である。管理制御部53は、例えばCPU等から構成される。管理制御部53は、管理記憶部52に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。管理制御部53は、用紙送り制御部53a、レーザ制御部53bを備える。
用紙送り制御部53aは、前後のローラ10,20、巻き取りローラ3等を回転制御することにより、加工用紙Wの送り制御を行う制御部である。
レーザ制御部53bは、加工情報記憶部52aの加工情報に基づいて、レーザ加工を行う制御部である。
各制御部の処理は、後述する。
【0025】
インライン加工システム1のミシン目工程について説明する。
図2は、第1実施形態のレーザ照射位置Pが加工用紙W上を移動する状態を説明する上面図である。
図2(a)は、ミシン目加工開始直後の状態である。
図2(b)は、図2(a)よりもミシン目加工が進んだ状態である。
図3は、第1実施形態のミシン目加工の工程を説明する加工用紙Wの断面図、加工用紙Wの使用方法を説明する上面図である。
図3(a)〜図3(d)は、下流側X2から見た断面図、図3(e)は、上面図である。図3(d)は、図3(e)のd−d部矢視断面図である。
【0026】
(レーザ加工工程)
図2(a)に示すように、レーザ制御部53bは、送出ローラ2から送られた加工用紙Wの上面(加工面)の奥側端部からレーザ照射を開始する(レーザ照射工程)。
用紙送り制御部53aの制御によって前ローラ10及び後ローラ20が加工用紙Wを下流側X2に移動速度Vwで移動するので、奥行方向Yに平行にミシン目加工する場合でも(図2(b)参照)、レーザ制御部53bは、レーザ照射位置Pが下流側X2及び手前側Y1の両方に移動するように(矢印A参照)、照射位置変更部32を制御する。
【0027】
なお、インライン加工システム1は、ダンサローラ等を備えるバッファ機構を設けることにより、レーザ加工する領域では、加工用紙Wを停止させてもよい。この場合には、レーザ制御部53bは、レーザ照射位置Pが手前側Y1のみに移動するように、照射位置変更部32を制御すればよい。
【0028】
図3(a)、図3(b)に示すように、インライン加工システム1は、深さが異なる有底の浅穴61、深穴62を、レーザ加工によりハーフカット状に形成するようになっている(穴部加工工程)。浅穴61、深穴62のいずれを加工するかは、レーザ照射部31のレーザ出力及びレーザ照射時間のうち少なくとも1つを変更すればよい。実施形態では、レーザ照射部31のレーザ出力を変更する例を説明する。レーザ照射部31のレーザ出力の制御は、レーザ制御部53bが行う。レーザ制御部53bは、レーザ照射部31のレーザ出力を2段階に変更しながら、加工用紙W上のレーザ照射位置Pを移動する。
図3(c)、図3(d)に示すように、用紙送り制御部53aが前後のローラ10,20を制御し、レーザ制御部53bがレーザ加工部30を制御することにより、浅穴61、深穴62を、隣接するようにして連続して加工する(連続穴部加工工程)。
図3(e)に示すように、これにより、加工用紙Wのレーザ照射位置Pの移動軌跡上に、深さが異なる浅穴61及び深穴62が連続加工され、凹凸状のミシン目60が形成される(実施形態では、貫通孔を有さない有底の穴であっても、ミシン目という)。
【0029】
図3(d)に示すように、利用者は、ミシン目60が形成された加工用紙Wを、ミシン目60から簡単に分離することができる。
なお、図3(c)、図3(d)に示すように、レーザ制御部53bは、加工用紙Wの両端部に浅穴61を形成し、その端部よりも内側に深穴62を形成している。このため、加工用紙Wは、端部の強度が、その内側よりも強くなるため、不用意に切れてしまうことを抑えることができ、取り扱いが容易になる。
【0030】
このように、インライン加工システム1は、レーザ加工によって加工用紙Wにミシン目加工するので、ミシン刃によるミシン目加工のような膨らみが下面に生じることがなく、下面が平滑の状態である。また、ミシン刃によるミシン目加工は、加工用紙の厚みや硬さのばらつきがあると、加工用紙にミシン刃が入り込む程度が安定しない場合がある。これに対して、レーザ加工によるシン目加工は、加工用紙Wの表面から一定の深さだけ取り除くことができるので、ミシン刃によるミシン目加工よりも、加工精度を向上できる。
【0031】
(印刷工程)
レーザ加工が終了した加工用紙Wは、プリンタ40に搬送され、印刷される。
実施形態のミシン目加工は、加工用紙Wに貫通孔を形成しない。このため、プリンタ40のヘッド42から射出したインクが飛沫しても、加工用紙Wの下面に付着することがないので、加工用紙Wがインクで汚れることがない。
つまり、実施形態とは異なり貫通孔を有するミシン目の場合は、飛沫したインクが貫通孔を通って加工用紙Wの下面側に到達してしまう。この場合には、インクが加工用紙Wの下面に付着して汚れてしまい、また、加工用紙Wを巻き取るときに、加工用紙Wの上面にもインクが付着して汚れてしまうという問題がある。実施形態では、このような問題は、生じない。
【0032】
(巻き取り工程)
印刷が終了した加工用紙Wは、巻き取りローラ3に搬送され、ロール状に巻き取られる。加工用紙Wは、下面が平滑なので、保管時にかさばることがなく、また、しわが発生することを抑制できる。つまり、実施形態とは異なりミシン刃によるミシン目加工の場合には、下面に膨らみが形成されてしまうので、ロール状に巻き取られると、膨らみが重畳して、かさばり、しわが発生するという問題がある。実施形態では、このような問題は、生じない。
また、前述したように、実施形態の加工用紙Wは、巻き取り時に、加工用紙Wがインクで汚れることがない。
【0033】
次に、前述した加工を開始する前に行うレーザ出力の設定工程について説明する。
図4は、第1実施形態のレーザ出力の設定工程のフローチャートである。
最初にステップS(以下「S」という)1において、作業者は、管理装置の操作部51を操作して、深穴62、浅穴61毎にレーザ出力値を設定して加工を行う。作業者は、例えば、以前に加工を行ったときのレーザ出力値を参照して、レーザ出力値を設定できる。
【0034】
S10において、作業者は、加工後の加工用紙Wの浅穴61の深さが適正か否かを判定する。深さの判断手法は、例えば、肉眼によって確認する方法、ルーペ等で拡大して確認する方法、実際に加工用紙Wをミシン目から切断する方法等を用いることができる。作業者は、浅穴61の深さが適正と判断した場合には(S10:YES)、S20に進み、一方、適正ではないと判定した場合には(S10:NO)、S11に進む。
【0035】
S11において、作業者は、浅穴61の深さが深いか否かを判定する。作業者は、浅穴61が深いと判定した場合には(S11:YES)、S12に進み、一方、浅穴61が浅いと判定した場合には(S11:NO)、S13に進む。、
S12において、作業者は、操作部51を操作してレーザ出力を下げる設定をして、S1からの工程を繰り返す。
S13において、作業者は、操作部51を操作してレーザ出力を上げる設定をして、S1からの工程を繰り返す。
【0036】
S20〜S23において、作業者は、深穴62について浅穴61と同様な工程を行って、深穴62のレーザ出力を設定する。
作業者は、深穴62の深さが適正であると判定した場合には(S20:YES)、一連の設定処理を終了する(S30)。その後、作業者は、インライン加工システム1を操作して、実際の加工を開始する。
【0037】
作業者は、このように、浅穴61、深穴62の深さを調整するために、加工用紙Wの状態を確認して、操作部51を操作すればよい。このため、設定作業が容易である。
実施形態とは異なりミシン刃によるミシン目加工を行う場合には、ミシン刃の高さ等を調整するために、ミシン刃を取り付けているネジを何度も着脱したり、また、適切な条件にならない場合には、ミシン刃を新たに作製しなくてはならないという問題がある。実施形態では、このような問題は、生じない。
【0038】
なお、レーザの照射時間を変更することにより、浅穴61、深穴62を加工する場合には、レーザ加工部30の照射位置変更部32を設定して、レーザの走査速度を2段階にすればよい。つまり、インライン加工システム1は、走査速度が速ければ、浅穴61を形成し、一方、走査速度が遅ければ、深穴62を形成できる。この場合でも、作業者は、照射位置変更部32の設定を、操作部51を用いて行えるので、設定作業が容易である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のインライン加工システム1は、下面の膨らみを生成することなく、ミシン目加工をすることができる。
また、インライン加工システム1は、レーザ加工を行うので、ミシン刃のような磨耗の問題がなく、また、ミシン刃がずれてしまうような問題もない。このため、インライン加工システム1は、作業性がよく、また、保守が簡単である。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。また、インライン加工システムの構成は、第1実施形態の図1の構成とほぼ同一であるので、適宜、第1実施形態の同様な名称及び符号を用いる。
図5は、第2実施形態のレーザ加工の工程を説明する加工用紙200Wの断面図、加工用紙200Wの使用方法を説明する上面図である。
図5(a)、図5(b)は、断面図、図5(c)、図5(d)は、上面図である。図5(b)は、図5(c)のb−b部矢視断面図である。
【0041】
図5(a)に示すように、加工用紙200Wは、上層200W−1、下層200W−2、剥離紙200W−3からなるタック紙である。
各層間200Wa,200Wbには、剥離可能な接着材が塗布され、上層200W−1及び下層200W−2が剥離可能に接着され、また、下層200W−2及び剥離紙200W−3が剥離可能に接着される。
【0042】
図5(b)に示すように、本実施形態のレーザ加工部30は、浅穴261の底部が層間200Waに一致し、深穴262の底部が層間200Wbに一致するようにレーザ加工を行う。レーザ加工は、第1実施形態と同様に、レーザ光Lの出力やレーザ照射時間を2段階に変更することにより行うことができる(図2、図3参照)。これにより、本実施形態のレーザ加工部30は、上層200W−1、下層200W−2に異なる加工を行うことができる。
また、浅穴261、深穴262の深さの設定は、第1実施形態のレーザ出力の設定工程と同様に行うことができる(図4参照)。
【0043】
加工用紙200Wは、このようにレーザ加工されると、図5(b)、図5(c)に示すように、ハーフカット加工されて、上層200W−1のうち加工ライン260上の部分がレーザ照射によって焼かれて除去される。また、下層200W−2には、深穴262が所定間隔で形成されて、ミシン目加工される。
【0044】
加工用紙200Wの使用方法は、以下の通りである。
(1)図5(c)に示すように、上層200W−1を下層200W−2から剥離する。なお、上層200W−1は、ハーフカットにより分断された状態である。このため、上層200W−1は、下層200W−2から簡単に剥離できる。また、下層200W−2は、完全には分離されていない状態であるで、上層200W−1を剥離するときに、剥離紙200W−3から剥離してしまうことを抑制できる。
(2)図5(d)に示すように、下層200W−2を剥離紙200W−3から剥離する。この場合、利用者は、例えば、下層200W−2の一方側(図5(d)示す上側)を指で押さえて他方側(図5(d)示す下側)を剥離すれば、加工ライン260を境にして、一方側及び他方側を分断でき、他方側を簡単に剥離できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のインライン加工システムは、加工用紙200Wの上層200W−1、下層200W−2に異なる加工を行うことができる。また、上層200W−1を分断して簡単に剥離し、また、下層200W−2を分断して簡単に剥離できる帳票等を製造できる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態のレーザ加工の工程を説明する加工用紙300Wの断面図及び上面図、加工用紙300Wの使用方法を説明する斜視図である。
図6(a)は、断面図、図6(b)は、上面図、図6(c)は、斜視図である。図6(a)は、図6(c)のa−a部矢視断面図である。
【0047】
図6(a)、図6(b)に示すように、レーザ制御部53b(図1参照)は、第1実施形態と同様に、加工ライン360上に加工用紙300Wの両端部に、ハーフカットによって、浅穴361を形成する。また、レーザ制御部53bは、加工ライン360上の両端部の浅穴361間には、ハーフカットによって、1つの細長い深穴362を形成する。このため、加工用紙300Wは、第1実施形態と同様に、端部の強度が内側よりも強くなるため、不用意に切れてしまうことを抑えることができ、取り扱いが容易になる。
【0048】
図6(c)に示すように、利用者は、加工ライン360を折り目にして、加工用紙300Wを2つ折りに折り曲げることができる。この場合、加工ライン360の大部分が深穴362により形成されているので、加工ライン360部分は、屈曲しやすい。このため、利用者は、加工用紙300Wを簡単に折り曲げることができる。また、この場合にも、加工用紙300Wは、加工ライン360の端部の強度が強いため、折り目の端部から切れてしまうことを抑制できる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のインライン加工システムは、加工用紙300Wを折り曲げやすく、また、端部が切れにくく加工することができる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図7は、第4実施形態のレーザ加工の工程を説明する加工用紙400Wの断面図、加工用紙400Wの使用方法を説明する上面図である。
図7(a)は、断面図、図7(b)は、上面図である。図7(b)は、図7(a)のa−a部矢視断面図である。
【0051】
図7(a)に示すように、加工用紙400Wは、上層400W−1、下層400W−2からなるタック紙である。
層間400Waには、剥離可能な接着材が塗布され、上層400W−1及び下層400W−2が剥離可能に接着される。
【0052】
本実施形態のレーザ加工部30は、穴461の底部が層間400Waに一致するようにレーザ加工を行う。
また、穴461の深さの設定は、第1実施形態のレーザ出力の設定工程と同様に行うことができる(図4参照)。
加工用紙400Wは、このようにレーザ加工されると、ハーフカット加工されて、上層400W−1のうち加工ライン460上の部分がレーザ照射によって除去される。
【0053】
加工用紙400Wの使用方法は、以下の通りである。
図7(b)に示すように、上層400W−1を下層400W−2から剥離する。なお、上層400W−1は、ハーフカットにより分断された状態である。このため、上層400W−1は、下層400W−2から簡単に剥離できる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のインライン加工システムは、加工用紙400Wの上層400W−1にのみハーフカット加工を行うことができる。この場合でも、第1実施形態と同様に、下面の膨らみを生成することなく加工でき、加工精度を向上でき、また、加工前の設定作業が容易である。
なお、レーザ加工は、ハーフカット加工ではなく、上層400W−1にのみミシン目加工を行うものでもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0056】
(変形形態)
(1)実施形態において、レーザ加工装置は、有底の穴を形成する例を示したが、これに限定されない。例えば、レーザ加工装置は、貫通孔を形成してもよい。
【0057】
(2)実施形態において、レーザ加工部は、管理制御部のレーザ制御部が制御する例を示したが、これに限定されない。例えば、レーザ加工部自体に用紙送り制御部、レーザ制御部等を設けて、レーザ加工してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 インライン加工システム
10 前ローラ
20 後ローラ
30 レーザ加工部
31 レーザ照射部
32 照射位置変更部
40 プリンタ
50 管理装置
51 操作部
52 管理記憶部
53 管理制御部
53a 用紙送り制御部
53b レーザ制御部
61,261,361 浅穴
62,262,362 深穴
60 ミシン目
200W−1,400W−1 上層
200W−2,400W−2 下層
200W−3 剥離紙
260,360,460 加工ライン
W,200W,300W,400W 加工用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射するレーザ照射部と、
加工用紙に対する前記レーザ光のレーザ照射位置を移動するレーザ照射位置移動部と、
レーザ照射部、レーザ照射位置移動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記レーザ光の出力を変えること、及び前記加工用紙に対するレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、前記加工用紙のレーザ照射位置の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部の穴部加工を行い、
前記穴部加工を繰り返し行い、前記深さが異なる少なくとも2つの穴部を連接して設けて、連続加工することにより連続した凹凸形状を形成する連続穴部加工を行うこと、
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
上層及び前記上層よりも下層の少なくとも2層により形成される加工用紙に対して、レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記加工用紙に対する前記レーザ光のレーザ照射位置を移動するレーザ照射位置移動部と、
レーザ照射部、レーザ照射位置移動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記加工用紙をレーザ加工して、前記上層をハーフカット加工又はミシン目加工すること、
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工装置において、
前記制御部は、
前記レーザ光の出力を変えること、及び前記加工用紙に対するレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、前記加工用紙のレーザ照射位置の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部の穴部加工を行い、
前記少なくとも2つの穴部のうち浅いものを前記上層に形成し、前記少なくとも2つの穴部のうち深いものを前記下層に形成すること、
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工装置において、
前記制御部は、前記上層にハーフカット加工を行い、前記下層にミシン目加工をすること、
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記制御部は、前記加工用紙の端部の穴部の深さを、前記端部よりも内側の穴部の深さよりも深くすること、
を特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
レーザ光を照射するレーザ照射工程と、
加工用紙に対する前記レーザ光のレーザ照射位置を移動するレーザ照射位置移動工程と、
前記レーザ光の出力を変えること、及び前記加工用紙に対するレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、前記加工用紙のレーザ照射位置の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部の穴部加工工程と、
前記穴部加工工程を繰り返し行い、前記深さが異なる少なくとも2つの穴部を連接して設けて、連続加工することにより連続した凹凸形状を形成する連続穴部加工工程と、
を備えるレーザ加工方法。
【請求項7】
上層及び前記上層よりも下層の少なくとも2層により形成される加工用紙に対して、レーザ光を照射するレーザ照射工程と、
前記加工用紙に対する前記レーザ光のレーザ照射位置を移動するレーザ照射位置移動工程と、
前記加工用紙をレーザ加工して、前記上層のみをハーフカット加工又はミシン目加工するレーザ加工工程と、
を備えるレーザ加工方法。
【請求項8】
レーザ光の出力を変えること、及びレーザ照射時間を変えること、の少なくとも1つを行うことにより、レーザ照射位置の移動軌跡上に、深さが異なる少なくとも2つの穴部が連接して設けられ、連続した凹凸形状が形成された加工用紙。
【請求項9】
少なくとも上層及び前記上層よりも下層の2層により形成された加工用紙であって、
レーザ加工によって、前記上層のみがハーフカット加工又はミシン目加工されたことを特徴とする加工用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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