説明

レーザ加工装置およびレーザ加工方法

【課題】 加工対象物OBに形成する加工跡の半径位置がテーブル21回転中心から離れても、加工精度が低下しないようにする。
【解決手段】 周波数変更回路55は、テーブル21が所定角度回転するたびにパルス信号を出力するエンコーダ22aの回転検出用パルス信号を入力し、この回転検出用パルス信号における周波数をコントローラ90から指令された倍数kで増加させた周波数のパルス信号を生成する。この倍数kは、半径値に関わらずテーブル21の回転角度を検出する回転方向ピッチΔPtが一定となる値に設定される。回転角度検出回路56は、周波数変更パルス信号のパルス数をカウントし、カウント数が予め設定した所定値Cだけ増加するごとにカウント数(回転角度に相当する値)を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物をテーブルにセットして回転させた状態で、加工対象物にパルス状のレーザ光を照射し、このレーザ光の照射位置をテーブルの径方向に移動させることにより、加工対象物の表面に加工跡を形成するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工対象物をテーブルにセットして回転させた状態で、加工対象物にパルス状のレーザ光を照射し、このレーザ光の照射位置をテーブルの径方向に移動させることにより、加工対象物の表面に複数のピットあるいはピットを形成するための反応跡(以下、これらを加工跡と総称する)を形成するレーザ加工装置が知られている。こうしたレーザ加工装置においては、例えば、特許文献1などに提案されているように、レーザ光を照射する位置をテーブルの回転角度と半径位置と(テーブルの基準位置からの回転角度と、テーブルの回転中心からの半径)により設定する。そして、設定されたテーブルの回転角度と半径位置とが検出されるたびにレーザ光を加工用の強度にすることで、加工対象物の表面に複数の加工跡からなる加工パターンを作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−133987号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、図17に示すように、レーザ光を照射する半径位置がテーブルの回転中心から離れるほど、検出する回転角度と半径位置とで定めることができる位置の間隔が大きくなるため、特に加工対象物の表面にナノオーダーの微細な加工跡を形成する場合には、設定された回転角度と半径位置で加工用強度のレーザ光を出射させても良好な加工精度が得られないという問題が生じる。
【0005】
また、加工精度の向上を阻害する要因として、レーザ光を発光すべき設定位置を検出してから実際にレーザ光が出射されるまでの時間遅れがある。この時間遅れにより加工跡が設定位置からずれてしまう。以下、この理由について説明する。レーザ加工装置においては、テーブルが所定角度回転するたびにその回転角度を表すデジタル信号がコントローラ(マイクロコンピュータ)に入力される。コントローラは、入力した回転角度信号に基づいてテーブルの回転角度が設定角度(加工設定位置)になったと判定したときに、加工用強度のレーザ光を出射させるための指令をパルス信号供給装置に出力する。パルス信号供給装置は、コントローラから出力された指令によりレーザ駆動回路を介してレーザ光源に加工用強度の発光信号を出力する。これによりレーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射される。図15は、回転角度信号の入力からレーザ光が出射されるまでの遅れを表すタイミングチャートである。図中において、(a)はコントローラへ入力する回転角度信号、(b)はコントローラがパルス信号供給装置に対して加工用強度のレーザ光出力を指令する信号、(c)はレーザ光源へ入力する発光信号、(d)は出射されたレーザ光出力を表す波形である。
【0006】
この図から分かるようにテーブルの回転角度が設定角度になってから(時刻t1)、実際にレーザ光が出射されるまでに(時刻t2)僅かではあるが時間遅れDevが生じる。この時間遅れDevは、1)回転角度信号がコントローラに入力してから、コントローラが加工位置になったことを判定して加工用強度のレーザ光の出力指令を出力するまでの時間遅れ、2)パルス信号供給装置がコントローラの出力指令を受けてからレーザ光源に発光信号を出力するまでの時間遅れ、3)レーザ光源が発光信号を入力してからレーザ光強度が加工用強度になるまでの時間遅れによるものである。このため、図16に示すように、加工対象物に形成される加工跡Pitが破線にて示す設定位置からずれてしまう。この場合、ずれの方向がテーブルの回転方向となるため、加工跡Pitの位置ごとにずれの方向が異なる。このため、テーブルを回転させながらレーザ光の照射位置をテーブルの径方向に移動させて、即ち、レーザ光を加工対象物に対して螺旋状に移動させてレーザ加工を行う装置においては、加工跡Pitを例えば正方形状(方眼紙の交点位置)に配置するように加工設定位置を決めても、実際の加工跡Pitの配置は正方形状からずれてしまう。このずれは、半径位置がテーブルの回転中心に近づくほど大きくなる。
【0007】
LEDの基板や液晶の基板の製造においては、レーザ光の照射により基板表面にナノオーダーの加工跡を正方形状あるいは六方細密状に配置して形成することが要求される。そして、上述したように加工跡の配置が正方形状あるいは六方細密状からずれてしまうと、そのずれが大きいほど素子の品質が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、微細な加工跡を設定された配置で形成するレーザ加工において加工精度を向上させることを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、加工対象物をセットするためのテーブルと、前記テーブルを回転させる回転手段と、レーザ光源を有し前記テーブルにセットされて回転する加工対象物に前記レーザ光源から出射されたレーザ光を対物レンズにより集光して照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッドと前記テーブルとの相対位置を変化させることにより、前記加工対象物に形成されるレーザスポットを前記テーブルの径方向に移動させる径方向移動手段と、前記回転手段により回転するテーブルの回転位置を表す回転角度を検出する回転角度検出手段と、前記径方向移動手段により変化する前記加工ヘッドと前記テーブルとの相対的な径方向位置を検出する径方向位置検出手段と、前記レーザ光源に対して加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号を供給する発光信号供給手段と、前記加工対象物に加工跡を形成する目標位置を加工設定位置として記憶する加工設定位置記憶手段と、前記加工設定位置に前記加工用強度のレーザ光が照射されるように、前記回転角度検出手段により検出される回転角度と前記径方向位置検出手段により検出される径方向位置とに基づいて、前記発光信号供給手段に対して前記発光信号の供給指令を出力するレーザ光照射制御手段とを備えたレーザ加工装置において、
前記回転角度検出手段は、前記テーブルが所定角度回転するたびにパルス信号を出力する回転パルス信号出力手段と、前記径方向位置検出手段により検出された径方向位置に基づいて、前記テーブルの回転により前記レーザスポットが前記加工対象物上で周方向移動する距離に対する前記パルス信号のパルス数が前記径方向位置に関わらず一定となるように、前記回転パルス信号出力手段が出力するパルス信号の周波数を変更したパルス信号を出力する周波数変更手段と、前記周波数変更手段が出力するパルス信号のパルス数をカウントして、そのカウント値から前記テーブルの回転角度に相当する情報を取得するカウント手段とを備えたことにある。
【0010】
本発明のレーザ加工装置は、レーザ光源を有する加工ヘッドを備えており、加工対象物をテーブルにセット(固定)した状態で回転手段によりテーブルを回転させ、かつ、加工ヘッドとテーブルとの相対位置を径方向移動手段によりテーブルの径方向に移動させながら、加工対象物の表面にレーザ光を集光して照射することにより加工対象物をレーザ加工する。この場合、例えば、加工対象物上を移動するレーザスポットの線速度およびテーブル1回転における径方向への移動量(径方向ピッチ)が一定となるように回転手段と径方向移動手段を制御する速度制御手段を設けるとよい。レーザ加工中においては、回転角度検出手段が、テーブルの回転位置を表す回転角度を検出する。つまり、テーブルの基準回転位置に対する回転角度を検出する。これにより、加工対象物の表面に形成されるレーザスポットの基準回転位置からの回転角度を検出することができる。また、径方向位置検出手段が、加工ヘッドとテーブルとの相対的な径方向位置を検出する。これにより、加工対象物の表面に形成されるレーザスポットの径方向位置、例えば、テーブルの回転中心からレーザスポットまでの距離を検出することができる。
【0011】
レーザ光照射制御手段は、加工設定位置記憶手段に記憶した加工設定位置に加工用強度のレーザ光が照射されるように、回転角度検出手段により検出される回転角度と径方向位置検出手段により検出される径方向位置とに基づいて、発光信号供給手段に対して発光信号の供給指令を出力する。発光信号供給手段は、レーザ光照射制御手段から出力された発光信号の供給指令を入力すると、レーザ光源に対して発光信号を供給する。レーザ光源は、発光信号供給手段から供給された発光信号により加工用強度のレーザ光を出射する。これにより、発光信号が供給された期間だけ加工用強度のレーザ光が加工対象物に照射される。従って、レーザ光源への発光信号の供給を制御することにより、加工対象物に任意の配置で加工跡を形成することができる。
【0012】
テーブルが一定角度回転するたびにその回転角度が検出される構成を採用した場合には、レーザスポットの径方向位置がテーブルの回転中心から離れるほど、回転角度と径方向位置とで定めることができる単位領域の周方向間隔が大きくなるため細かな加工位置を設定することができず、特に加工対象物の表面にナノオーダーの微細な加工跡を形成する場合には加工精度が低下する。そこで、本発明においては、回転角度検出手段は、回転パルス信号出力手段と周波数変更手段とカウント手段とを備えている。
【0013】
回転パルス信号出力手段は、テーブルが所定角度回転するたびにパルス信号を出力する。そして、周波数変更手段が、径方向位置検出手段により検出された径方向位置に基づいて、テーブルの回転によりレーザスポットが加工対象物上で周方向移動する距離に対するパルス信号のパルス数が径方向位置に関わらず一定となるように、回転パルス信号出力手段が出力するパルス信号の周波数を変更したパルス信号を出力する。つまり、レーザスポットが加工対象物の表面を周方向に単位距離だけ移動する間に発生するパルス信号のパルス数が、レーザスポットが加工対象物を照射している径方向位置に関わりなく一定となるように、回転パルス信号出力手段が出力するパルス信号の周波数を増加させたパルス信号を出力する。この場合、レーザスポットが加工対象物を照射している径方向位置がテーブルの回転中心から離れるほど、回転パルス信号出力手段が出力するパルス信号の周波数を増加させる倍数が大きくなる。そして、カウント手段が、周波数変更手段が出力するパルス信号のパルス数をカウントして、そのカウント値からテーブルの回転角度に相当する情報を取得する。
【0014】
従って、本発明によれば、レーザスポットが加工対象物を照射している径方向位置に関わりなく回転角度(回転位置)を高い分解能で検出することができる。これにより、加工対象物を回転させながらレーザ光照射により微細な加工跡を形成する場合でも、径方向位置によって加工精度が変化しなくなる。この結果、加工対象物の加工精度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記回転角度検出手段が予め設定された回転角度を検出したタイミングで前記加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号の供給指令を前記発光信号供給手段に出力した場合における、前記回転角度を検出したタイミングから前記レーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるタイミングまでのタイミングずれを検出するタイミングずれ検出手段と、前記検出したタイミングずれに基づいて、前記発光信号供給手段が前記発光信号の供給指令を入力してから前記レーザ光源に対して前記加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号を供給するまでの時間を調整する発光信号供給タイミング調整手段とを備え、前記レーザ光照射制御手段は、前記回転角度検出手段により検出された回転角度が前記加工設定位置よりも所定角度手前となる回転角度に達したときに、前記発光信号供給手段に対して前記発光信号の供給指令を出力することにある。
【0016】
レーザ加工装置においては、レーザ光を照射すべき回転角度が検出されてから発光信号供給手段に発光信号の供給指令を出力すると、実際にレーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるまでに僅かに時間遅れが生じる。この時間遅れは、ナノオーダーの加工跡を形成するようなレーザ加工においては、加工精度の低下につながる。そこで、本発明においては、タイミングずれ検出手段により、この時間遅れを検出する。タイミングずれ検出手段は、回転角度検出手段が予め設定された回転角度を検出したタイミングで加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号の供給指令を発光信号供給手段に出力した場合における、設定された回転角度を検出したタイミングからレーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるタイミングまでのタイミングずれを検出する。レーザ光照射制御手段は、この時間遅れを見越して、発光信号供給手段に対して早めに発光信号の供給指令を出力する。つまり、回転角度検出手段により検出された回転角度が加工設定位置よりも所定角度手前となる回転角度に達したときに発光信号の供給指令を出力する。ここで、所定角度とは、タイミングずれに相当する角度よりも大きな角度に設定すればよい。そして、発光信号供給タイミング調整手段がタイミングずれに基づいて、発光信号供給手段が発光信号の供給指令を入力してからレーザ光源に対して加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号を供給するまでの時間を調整する。
【0017】
これにより、加工用強度のレーザ光がレーザ光源から出射されるタイミングを適切にすることができ、加工設定位置に加工用強度のレーザ光を精度良く照射することができる。また、上述したように回転角度検出手段により回転角度を径方向位置に関わらず高精度に検出することができるため、タイミングずれ検出精度、および、発光信号供給タイミングの調整精度も高くなる。これらの結果、レーザ加工精度を一層向上させることができる。これにより、例えば、加工対象物に微細な加工跡(ピット等)を正方形状あるいは六方細密状に精度良く配置して形成することが可能となる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記発光信号供給手段から前記レーザ光源に供給される発光信号は、前記加工用強度のレーザ光を出射させる期間を設定するハイレベル期間に加えて、非加工用強度のレーザ光を出射させる期間を設定するローレベル期間を前記ハイレベル期間の前に設けたパルス信号であって、前記発光信号供給タイミング調整手段は、前記検出したタイミングずれに基づいて、前記発光信号におけるローレベル期間を設定することにある。
【0019】
本発明においては、レーザ光源に供給される発光信号は、レーザ光源から加工用強度のレーザ光を出射させるための信号に加えて、レーザ光源から非加工用強度のレーザ光を出射させる信号を組み合わせて構成されている。加工用強度のレーザ光とは、加工対象物に加工跡を形成することができる強度のレーザ光であり、非加工用強度のレーザ光とは、加工対象物を変化させない強度(加工用強度よりも弱い)のレーザ光である。発光信号は、ハイレベル期間とローレベル期間との2つのレベルを設けたパルス信号であり、発光信号がハイレベルとなっているときにはレーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射し、ローレベルとなっているときにはレーザ光源から非加工用強度のレーザ光が出射する。この場合、発光信号は、ハイレベル期間の前にローレベル期間が設けられている。従って、このローレベル期間(時間)を調整することにより、レーザ光源に対して加工用強度のレーザ光を出射させる発光信号(ハイレベル信号)を供給するまでの時間を調整することができる。つまり、ローレベル期間を長くすれば、レーザ光照射制御手段が発光信号供給手段に対して発光信号の供給指令を出力したタイミングに対して、実際にレーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるまでの時間が長くなり、逆に、ローレベル期間を短くすれば、実際にレーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるまでの時間が短くなる。
【0020】
こうしたことを利用して、発光信号供給タイミング調整手段は、タイミングずれ検出手段により検出したタイミングずれに基づいて、発光信号におけるローレベル期間を設定する。従って、レーザ光源へ発光信号を供給するタイミングを簡単に調整することができる。尚、発光信号供給手段は、レーザ光源に発光信号(パルス信号)を供給していない間は、非加工用強度のレーザ光を出射させるための直流信号をレーザ光源に供給するとよい。
【0021】
また、本発明の他の特徴は、前記発光信号供給タイミング調整手段は、前記レーザ光照射制御手段が前記加工設定位置よりも手前で前記発光信号の供給指令を出力する回転角度と前記加工設定位置の回転角度との角度差分の距離をレーザスポットが通過するのに要する時間と前記タイミングずれの時間とに基づいてローレベル期間を設定することにある。
【0022】
本発明によれば、発光信号の供給指令を出力する回転角度と加工設定位置の回転角度との角度差分の距離をレーザスポットが通過するのに要する時間とタイミングずれの時間とに基づいてローレベル期間を設定するため、加工設定位置の回転角度を回転角度検出手段により検出できる回転角度と一致させる必要がなくなる。この場合、角度差分の距離をレーザスポットが通過するのに要する時間からタイミングずれの時間を差し引いた時間をローレベル期間として設定すればよい。これにより、加工設定位置の制限が緩くなり、加工跡を一層適正な配置(例えば、正方形状あるいは六方細密状)にて形成することができる。
【0023】
また、本発明の他の特徴は、前記タイミングずれ検出手段は、前記ローレベル期間の設定が行われた後において、更に、前記加工設定位置の回転角度を検出したタイミングから前記レーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるタイミングまでのタイミングずれの検出を行い、前記発光信号供給タイミング調整手段は、前記ローレベル期間設定後のタイミングずれの検出が行われたときに、そのタイミングずれに基づいて前記ローレベル期間を再設定することにある。
【0024】
本発明によれば、1回のレーザ加工中にタイミングずれの検出を複数回行ってローレベル期間を再設定(補正)するため、加工用強度のレーザ光を加工設定位置に一層精度良く照射することができる。この結果、レーザ加工精度を一層向上させることができる。
【0025】
更に、本発明の実施にあたっては、レーザ加工装置の発明に限定されることなく、レーザ加工方法の発明としても実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係るレーザ加工装置のシステム構成図である。
【図2】エンコーダの出力する回転検出用パルス信号と周波数変更パルス信号とを表す説明図である。
【図3】発光信号(パルス信号)を表す波形図である。
【図4】円座標における加工設定位置を設定する方法を表す説明図である。
【図5】加工跡の配置を表す説明図である。
【図6】加工設定位置等のデータを記憶するデータテーブルである。
【図7A】レーザ加工制御ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図7B】レーザ加工制御ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図8A】ローレベル期間設定ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図8B】ローレベル期間設定ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図9】タイミングずれの調整を説明する信号波形図である。
【図10A】第1変形例に係るローレベル期間設定ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図10B】第1変形例に係るローレベル期間設定ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図11】第1変形例に係るタイミングずれの調整を説明する信号波形図である。
【図12】第2変形例に係る円座標における加工設定位置を設定する方法を表す説明図である。
【図13A】第2変形例に係るローレベル期間設定ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図13B】第2変形例に係るローレベル期間設定ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図13C】第2変形例に係るローレベル期間設定ルーチンの一部を表すフローチャートである。
【図14】第2変形例に係るタイミングずれの調整を説明する信号波形図である。
【図15】従来のタイミングずれを説明する信号波形図である。
【図16】従来の加工跡のずれを表す説明図である。
【図17】従来のレーザ加工における位置検出単位を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、実施形態に係るレーザ加工装置1の概略システム構成図である。このレーザ加工装置1は、平板状の加工対象物OBをセット(固定支持)するテーブル21と、レーザ光を照射して加工対象物OBの表面をレーザ加工する加工ヘッド30とを備えている。加工対象物OBは、加工ヘッド30から照射されたレーザ光により、表面にナノオーダーの超微細ピットが正方形状の配置で無数に形成されてLED等の基板として使用される。テーブル21は、円盤状に形成されていて、スピンドルモータ22およびフィードモータ23によって駆動される。加工ヘッド30は、装置本体に固定されたヘッド支持フレーム(図示略)により固定されている。
【0028】
スピンドルモータ22は、本発明の回転手段に相当するもので、回転軸22bを介してテーブル21を回転駆動する。スピンドルモータ22内には、同モータ22すなわちテーブル21の回転を検出して、その回転を表す回転信号を出力するエンコーダ22aが組み込まれている。この回転信号は、テーブル21の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号と、テーブル21が所定の微少角度だけ回転するたびにハイレベルとローレベルとを交互に切り替えるパルス信号とからなる。インデックス信号は、テーブル21が1回転する間に一度だけ出力される信号であり、テーブル21の基準回転位置の検出に使用される。パルス信号は、テーブル21の回転した角度を検出するために使用され、回転方向を識別するために互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号とB相信号とで構成される。このパルス信号を出力するエンコーダ22aが本発明の回転パルス信号出力手段に相当する。
【0029】
回転検出用パルス信号は、スピンドルモータ制御回路53と周波数変更回路55に供給され、インデックス信号は、回転角度検出回路56とコントローラ90に供給される。スピンドルモータ制御回路53は、コントローラ90からの回転速度指示により作動開始し、エンコーダ22aから出力される回転検出用パルス信号の単位時間あたりのパルス数によりスピンドルモータ22の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ90によって指示された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ22の回転を制御する。
【0030】
フィードモータ23は、本発明の径方向移動手段に相当するもので、スクリューロッド24を回転させて、テーブル21をその径方向に駆動する。以下、本明細書における径方向とは、テーブル21の径方向を意味する。スクリューロッド24は、その一端がフィードモータ23の回転軸に一体回転するように連結され、他端が支持部材25に固着されたナット(図示しない)に螺合している。支持部材25は、スピンドルモータ22を固定支持するとともに、径方向への移動のみが許容されている。従って、フィードモータ23が回転すると、スピンドルモータ22、テーブル21および支持部材25は、スクリューロッド24およびナットからなる送りネジ機構20により径方向に変位する。テーブル21の移動方向は、テーブル21の回転中心の移動軌跡を表す直線が、加工ヘッド30の照射位置を通るように設定されている。
【0031】
フィードモータ23内にも、フィードモータ23の回転を検出して、前記エンコーダ22aと同様な回転検出用パルス信号を出力するエンコーダ23aが組み込まれている。エンコーダ23aから出力される回転検出用パルス信号は、フィードモータ制御回路54と半径位置検出回路52とに出力される。半径位置検出回路52は、エンコーダ23aからの回転検出用パルス信号のパルス数をフィードモータ23の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値からテーブル21の径方向への送り位置(以下、半径位置と呼ぶ)を検出し、半径位置を半径値で表した信号を用いてコントローラ90に出力する。半径値は、テーブル21の回転中心から加工対象物OB上に形成されるレーザスポットまでの距離を表す。従って、半径位置あるいは半径値は、加工対象物OB上に形成されるレーザスポットの径方向の位置を特定するものとなる。
【0032】
半径位置検出回路52におけるカウント値の初期設定は、電源投入時にコントローラ90の指示によって行われる。すなわち、コントローラ90は、電源投入時に、フィードモータ制御回路54に支持部材25の原点位置への移動、および、半径位置検出回路52に初期設定を指示する。この指示により、フィードモータ制御回路54は、フィードモータ23を回転させて支持部材25を原点位置に移動させる。この原点位置は、フィードモータ23によって駆動される支持部材25の駆動限界位置である。半径位置検出回路52は、この支持部材25の移動中、エンコーダ23aからの回転検出用パルス信号を入力し続けている。そして、支持部材25が原点位置まで達してフィードモータ23の回転が停止すると、半径位置検出回路52はエンコーダ23aからの回転検出用パルス信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットする。このとき、半径位置検出回路52は、フィードモータ制御回路54に出力停止のための信号を出力し、これにより、フィードモータ制御回路54はフィードモータ23への駆動信号の出力を停止する。その後に、フィードモータ23が駆動された際には、半径位置検出回路52は、回転検出用パルス信号のパルス数をフィードモータ23の回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンし、そのカウント値に基づいてテーブル21の径方向への送り位置である半径位置を計算し、その半径位置を半径値で表した信号をフィードモータ制御回路54およびコントローラ90に出力し続ける。
【0033】
フィードモータ制御回路54は、コントローラ90の指示により、フィードモータ23を駆動制御して、テーブル21を指定半径位置へ移動させたり、指定速度で移動させたりする。具体的には、フィードモータ制御回路54は、コントローラ90によって指定される半径値への移動が指示されたときには、半径位置検出回路52によって検出される半径値を用いてフィードモータ23の回転を制御し、検出される半径値がコントローラ90から指定された半径値に等しくなるまでフィードモータ23を回転させる。例えば、レーザ加工の開始に先立ってコントローラから初期半径値rstへの移動が指示されたときには、半径位置検出回路52の出力する半径値が初期半径値rstと等しくなるまでフィードモータ23を回転させる。またフィードモータ制御回路54は、コントローラ90によって指定される移動速度でテーブル21を移動させることが指示されたときには、エンコーダ23aの出力する回転検出用パルス信号からテーブル21の径方向の移動速度を計算して、計算された移動速度がコントローラ90によって指定された移動速度と等しくなるようにフィードモータ23の回転を制御する。レーザ加工中においては、テーブル21が1回転する間にレーザスポットの形成位置が予め設定された量(送りピッチΔPr)だけ径方向に移動するように移動速度が指定される。
【0034】
周波数変更回路55は、スピンドルモータ22に組み込まれたエンコーダ22aから出力される回転検出用パルス信号を入力し、この回転検出用パルス信号における周波数をコントローラ90から指令された倍数kで増加させた周波数のパルス信号を生成して出力する。周波数変更回路55は、例えば、エンコーダ22aから出力される回転検出用パルス信号の周波数を計算し、その周波数に倍数k(>1)を乗じた周波数のパルス信号を生成する。あるいは、回転検出用パルス信号の周期を計算し、その周期を倍数kで除算した周期のパルス信号を生成する。
【0035】
この倍数kは、半径値に応じて設定される。コントローラ90は、エンコーダ22aからインデックス信号を入力すると、その都度、テーブル21が1回転する間の半径値の増加量(送りピッチΔPr)を初期半径値rstに加算することにより半径値を取得し、この半径値に対応する倍数kを設定する。そのために、コントローラ90は、半径値と倍数kとの対応関係を内部のメモリ90aに記憶しており、半径値を指定することにより、指定された半径値に対応する倍数kを設定できるようになっている。以下、周波数変更回路55により出力されるパルス信号を周波数変更パルス信号と呼ぶ。
【0036】
周波数変更回路55により出力された周波数変更パルス信号は、回転角度検出回路56に出力される。回転角度検出回路56は、周波数変更パルス信号のパルス数をカウントし、カウント数が予め設定した所定値Cだけ増加するごとにカウント数(回転角度に相当する値)を出力する。また、エンコーダ22aから出力されるインデックス信号が入力すると、カウント値をゼロにリセットする。従って、回転角度検出回路56は、インデックス信号が入力するテーブル21の回転角度をゼロとし、カウント値が所定値Cだけ増加するごとに、そのカウント数を回転角検出信号として出力する。
【0037】
ここで、倍数kの設定について説明する。周波数変更回路55は、テーブル21の回転によりレーザスポットが加工対象物OB上で周方向に移動する距離に対する周波数変更パルス信号のパルス数が、径方向位置に関わらず一定となるように、半径値に対応した倍数kを設定する。図2に示すように、任意の半径値r0のとき回転角度検出回路56がカウント数(回転角度)を出力する角度の間隔Δθに対応する回転方向(周方向)のピッチΔPtは、(1)式にて表すことができる。
ΔPt=2πr0・Δθ/360° ・・・(1)
ピッチΔPtを希望する長さに定めれば、回転角度検出回路56がカウント数(回転角度)を出力する角度の間隔Δθが定まる。以下、この間隔Δθを検出単位角度Δθと呼ぶ。任意の半径値r0のときの倍数kをk0とし、エンコーダ22aの出力する回転検出用パルス信号の1周期分の回転角度をθpとすると、θpをk0で除算したθp/k0は、周波数変更回路55の出力する周波数変更パルス信号の1周期分の回転角度となる。回転角度検出回路56は、周波数変更パルス信号のカウント数が所定値Cだけ増加するたびに回転角度を検出する(検出した回転角度を出力する)ため、検出単位角度Δθは、(2)式にて表すことができる。
Δθ=(θp/k0)・C ・・・(2)
従って、倍数k0は、(3)式のようになる。
k0=(θp/Δθ)・C ・・・(3)
【0038】
レーザスポットが周方向に移動する距離に対する周波数変更パルス信号のパルス数を径方向位置に関わらず一定にするためには、ピッチΔPtを全ての半径位置において一定にすればよく、
2πr・Δθ/360°=2πr0・Δθ0/360° ・・・(4)
とすればよい。このΔθ0は任意の半径値r0のときの検出単位角度Δθである。
この(4)式に、Δθ=(θp/k)・C、および、Δθ0=(θp/k0)・Cを代入して変形することにより、倍数kを(5)式のように求めることができる。
k=(r/r0)・k0 ・・・(5)
この場合、半径値rごとの倍数kは、(5)式で計算された整数部分となる。
【0039】
このように半径値rごとに倍数kを変更することにより、ピッチΔPtは、半径値に関わらず常にほぼ希望する長さとなる。これにより、半径値によって加工精度が変化しないようにすることができる。尚、倍数kは整数値であるため、半径値rごとにピッチΔPt、および、検出単位角度Δθは僅かに異なる。
【0040】
コントローラ90が入力する半径値rは、(6)式のように表すことができる。
r=rst+n・ΔPr(n=0,1,2……) ・・・(6)
ここで、ΔPrはテーブル21の1回転当たりの径方向の送りピッチである。従って、送りピッチΔPrが定まれば、nごとに倍数kも定められる。送りピッチΔPrは、加工条件として設定されているため、コントローラ90は、nごとに倍数kをメモリ90aに記憶している。また、nごとにピッチΔPtおよび検出単位角度Δθもメモリ90aに記憶している。
【0041】
次に、加工ヘッド30について説明する。加工ヘッド30は、レーザ光源31を備え、レーザ光源31から出射されたレーザ光を加工対象物OBに向けて照射するとともに、その反射光を受光する構成となっている。加工ヘッド30は、レーザ光源31、コリメートレンズ32、偏光ビームスプリッタ33、1/4波長板34、対物レンズ35、集光レンズ36、シリンドリカルレンズ37、フォトディテクタ38、フォーカスアクチュエータ39を備えている。レーザ光源31から出射したレーザ光は、コリメートレンズ32により平行光となって偏光ビームスプリッタ33に入射する。レーザ光は、その大半(例えば、95%)が偏光ビームスプリッタ33をそのまま透過し、一部が偏光ビームスプリッタ33で反射する。
【0042】
偏光ビームスプリッタ33を透過したレーザ光は、1/4波長板34、対物レンズ35を通過して加工対象物OBの表面で集光する。加工対象物OBの表面に集光したレーザ光は、加工対象物OBの表面で反射する。加工対象物OBの表面で反射した反射光は、対物レンズ35、1/4波長板34を通過し、偏光ビームスプリッタ33に入射し、偏光ビームスプリッタ33によって反射されて集光レンズ36に入射する。集光レンズ36は、偏光ビームスプリッタ33による反射光をシリンドリカルレンズ37を介してフォトディテクタ38に集光する。フォトディテクタ38の出力する受光信号は、後述するフォーカスサーボに使用される。
【0043】
更に、加工ヘッド30は、レーザ光源31から出射されたレーザ光の一部(例えば、5%)を偏光ビームスプリッタ33で反射させ、その反射光を集光レンズ40によりフォトディテクタ41の受光面に集光させる構成を備えている。フォトディテクタ41は、レーザ光源が出射したレーザ光の強度に対応した受光信号を出力する。その受光信号は、信号増幅回路71により増幅された後、レーザ駆動回路70にフィードバックされてレーザ光の強度調整に使用されるとともに、後述する遅れ信号生成回路81に供給されて遅れ時間の検出に使用される。
【0044】
次に、レーザ光のフォーカスサーボについて説明する。レーザ光の加工対象物OBの表面からの反射光を受光するフォトディテクタ38は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子にて構成され、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として出力する。フォトディテクタ38は、4つの受光素子が配置された中央に反射光が集光するように固定されている。
【0045】
フォトディテクタ38から出力される受光信号(a,b,c,d)は、HF信号増幅回路61に入力される。HF信号増幅回路61は、受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ増幅してフォーカスエラー信号生成回路62に出力する。フォーカスエラー信号生成回路62は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を使って演算によりフォーカスエラー信号を生成する。本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いているため、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路63に出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置の加工対象物OBの表面からのずれ量を表している。
【0046】
フォーカスサーボ回路63は、コントローラ90により作動制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路64に出力する。ドライブ回路64は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ39を駆動制御して、対物レンズ35をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、加工対象物OBの表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
【0047】
レーザ光源31は、レーザ駆動回路70によって駆動される。レーザ駆動回路70は、コントローラ90からの指令により作動を開始し、パルス信号供給装置50から供給される発光信号と同じ波形のレーザ駆動信号をレーザ光源31に出力する。パルス信号供給装置50は、コントローラ90からパルス信号の出力指令を受けるたびに、レーザ駆動回路70に対して発光信号を出力する。発光信号は、パルス信号であって、このパルス信号の信号レベルによりレーザ駆動回路70から出力されるレーザ駆動信号の強度、つまり、レーザ光の強度が設定される。本実施形態においては、レーザ光の強度は、加工用強度と非加工用強度との二段階となっている。加工用強度とは、レーザ光源31から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物OBの表面が加工され(フォトレジストに反応跡を形成するものも含む)、かつ、フォーカスサーボ制御を可能とする強度を意味する。また、非加工用強度とは、レーザ光源31から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物OBの表面が加工されず、かつ、フォーカスサーボ制御を可能とする強度を意味する。
【0048】
パルス信号供給装置50は、コントローラ90からの指令により非加工用強度のレーザ照射開始指令が出力されるとローレベルの直流信号の出力を開始し、コントローラ90からパルス信号の出力指令を受けたときのみ、その都度、内部に設けたメモリ50aに記憶されている波形のパルス信号を出力する。パルス信号は、単なるハイレベルの矩形波ではなく、ローレベルとなる期間が含まれる。このローレベルとなる期間(ローレベル期間Lと呼ぶ)は、パルス信号の先頭に設けられる。つまり、パルス信号は、図3に示すように、先に出力されるローレベル信号とその後に出力されるハイレベル信号とで1つのパルス信号を構成している。ローレベル期間Lにおけるパルス信号の強度は、パルス信号を出力していないときの直流のローレベル信号と同じ強度である。従って、パルス信号供給装置50は、コントローラ90からの指令によりパルス信号を出力するものの、その直後、つまり、パルス信号を出力した時点からローレベル期間Lが経過するまでの間は、その出力状態が変化しない。このため、ローレベル期間Lだけ遅れてハイレベルの信号がレーザ駆動回路70に出力されることになる。
【0049】
レーザ駆動回路70は、パルス信号供給装置50からローレベルの信号を入力している間は、レーザ光源31に対して非加工用レーザ駆動信号を出力し、パルス信号供給装置50からハイレベルの信号を入力したときには、その信号がハイレベルとなっている間だけ、レーザ光源31に対して加工用レーザ駆動信号を出力する。尚、本実施形態においては、パルス信号供給装置50から出力される発光信号をレーザ駆動回路70によりレーザ駆動信号に変換してレーザ光源31に出力しているが、パルス信号供給装置50にレーザ駆動回路70の機能をもたせてもよい。従って、パルス信号供給装置50からレーザ駆動回路70を介してレーザ光源31に供給されるレーザ光照射用の信号が、本発明の発光信号に相当する。
【0050】
レーザ光源31は、非加工用レーザ駆動信号が入力している間、加工対象物OBが加工されない弱い強度のレーザ光、つまり、非加工用強度のレーザ光を出力する。また、加工用レーザ駆動信号が入力している間、加工対象物OBが適切に加工される強度のレーザ光、つまり、加工用強度のレーザ光を出力する。非加工用強度のレーザ光を加工対象物OBに照射するのは、レーザ加工を行っていないときにもフォーカスサーボを継続できるようにするためである。また、パルス信号供給装置50は、コントローラ90から、レーザ照射停止指令を入力した後は、信号出力を停止する。このため、レーザ駆動回路70に入力される信号はゼロレベルとなり、レーザ駆動回路70はレーザ駆動信号の出力を停止する。従って、レーザ光源31からレーザ光が出射されなくなる。尚、レーザ駆動回路70は、レーザ光源31から出射されたレーザ光の強度を表す信号を信号増幅回路71から入力し、加工用レーザ光の強度、および、非加工用レーザ光の強度がそれぞれの目標強度と相違する場合には、それらが目標強度と一致するようにレーザ駆動信号の強さを調整する。
【0051】
パルス信号供給装置50は、発光信号(パルス信号)の情報として、ハイレベル期間Hにおける信号強度と、ハイレベル期間Hの長さと、ローレベル期間Lにおける信号強度とを表すデジタルデータを予めコントローラ90から入力してメモリ50aに記憶している。そして、レーザ加工中に、コントローラ90からローレベル期間Lの長さ(この長さを単にローレベル期間Lと呼ぶ)を表す情報が入力すると、ローレベルとハイレベルとからなる1パルス分のパルス波形のデジタルデータを作成してメモリ50aに記憶する。尚、コントローラ90からローレベル期間Lを表す情報が入力しない場合には、ローレベル期間Lをゼロ(L=0)としたパルス波形のデジタルデータを作成してメモリ90aに記憶する。
【0052】
次に、遅れ時間を検出する構成について説明する。遅れ時間とは、回転角度検出回路56が設定回転角度を検出したタイミングでコントローラ90が加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号をパルス信号供給装置50に出力した場合における、設定回転角度を検出したタイミングから実際にレーザ光源31から加工用強度のレーザ光が出射されるまで(レーザ光源31から出射されるレーザ光の強度が非加工用強度から加工用強度に切り替わるまで)の時間をいう。レーザ加工装置1は、遅れ時間を検出する構成として、信号入力検出回路80と、遅れ信号生成回路81と、A/D変換器82とを備えている。信号入力検出回路80は、コントローラ90から作動開始指令が入力し、かつ、回転角度検出回路56から回転検出信号(デジタル信号)が入力すると、信号が入力したことを表すハイレベルの信号入力検出信号(1パルス信号)を遅れ信号生成回路81に出力する。信号入力検出回路80は、一旦、信号入力検出信号を出力した後は、コントローラ90から作動開始指令が再度入力しないかぎり、信号入力検出信号を出力しない。
【0053】
遅れ信号生成回路81は、信号入力検出回路80から出力される信号がハイレベルになると自身の出力をハイレベルにし、レーザ光の強度を表す信号増幅回路71から出力される信号がハイレベル(加工用強度に相当するレベル)になると、自身の出力をハイレベルからローレベルに切り換えるように回路構成されている。従って、遅れ信号生成回路81の出力信号のパルス幅(ハイレベルとなる期間)は、回転角度検出回路56が設定角度を検出したタイミングからレーザ光の強度が加工用強度に切り替わるタイミングまでの遅れ時間を表すものとなる。
【0054】
A/D変換器82は、遅れ信号生成回路81の出力信号を入力し、入力した信号の瞬時値をデジタルデータに変換してコントローラ90に出力する。コントローラ90は、A/D変換器82から出力された信号をデータ処理することにより遅れ時間を検出する。
【0055】
コントローラ90は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、各種の加工データを記憶するメモリ90aを備えている。また、コントローラ90には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置91と、作業者に対して各種の設定状況や作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置92とが接続されている。
【0056】
コントローラ90は、レーザ加工を行う前に、加工跡を形成する目標位置、つまり、加工設定位置を以下のように計算してメモリ90aに記憶する。コントローラ90は、作業者が、入力装置91を使って正方形状に配置したい加工跡の加工ピッチを入力すると、まず、1つ1つの加工跡のx,y座標を計算する。例えば、1辺がaの正方形状配置にて加工跡を形成する場合には、
(0,0),(a,0),(2a,0)(3a,0)・・・
(0,a,),(a,a),(2a,a),(3a,a)・・・
(0,2a,),(a,2a),(2a,2a),(3a,2a)・・・
(0,3a,),(a,3a),(2a,3a),(3a,3a)・・・
というようにx,y座標を計算する。
【0057】
次に、以下の計算式で円座標(r,θ)を計算する。
x=r・cosθ
y=r・sinθ
【0058】
次に、計算された円座標(r,θ)に最も近い回転角度検出回路56がカウントするカウント数(回転角度)を出力する円座標(r’,θ’)を以下のように計算する。このとき径方向の送りピッチΔPrは設定されている。回転角度検出回路56がカウント数(回転角度)を出力する円座標(r’,θ’)は、図4に示すように、
((rst+n・ΔPr+(ΔPr×θ/360°)),m・Δθ)
となる。(n=0,1,2,3・・・,m=0,1,2,3・・・)
ここで、(r−rst)をΔPrで除算した値の整数部分でnを求める。続いて、求めたnを使って、(rst+n・ΔPr+(ΔPr×θ/360°))と(rst+(n+1)・ΔPr+(ΔPr×θ/360°))とを計算し、rに近い方の計算値をr’として選択する。
【0059】
次に、θを検出単位角度Δθで除算した値の整数部分でmを求める。続いて、求めたmを使って、(m・Δθ)と((m+1)・Δθ)とを計算し、θに近い方の計算値をθ’として選択する。ここで、検出単位角度Δθは、エンコーダ22aの出力する回転検出用パルス信号の1周期分の回転角度θpをk/Cで除算した値である。これにより、図4に示すように、円座標(r’,θ’)を定めることができる。この場合、円座標(r’,θ’)は本来の円座標(r,θ)から僅かに異なるが、図5に示すように、加工跡Pitの配置は、ほぼ希望する正方形状となる。例えば、加工跡Pitを形成する間隔aを約100nm、加工跡Pitの直径を約80nm、径方向の送りピッチΔPrを約10nm、周方向の回転角検出ピッチΔPtを約10nmに設定して加工跡Pitを正方形状に配置する。
【0060】
円座標(r’,θ’)は、n,m,Δθ,ΔPrで定まる。また、ΔPrに関しては、固定値である。そこで、コントローラ90は、円座標(r’,θ’)で表される加工跡の加工設定位置を、図6に示すデータテーブルを使ってメモリ90aに記憶する。このデータテーブルには、nごとに、加工跡の回転設定角度θ(n,m)と、回転方向のピッチΔPt(n)と、ピッチΔPt(n)に対応する検出単位角度Δθ(n)と、倍数k(n)が記憶される。例えば、回転設定角度θ(0,1)は、n=0、つまり、初期半径値rstにおいて基準回転角度から最初に到来する加工跡の回転設定角度を表す。回転設定角度θ(n,m)は、カウント値(=m・C)で記憶される。尚、θ(n,1)≦Δθ(n)となる場合は、θ(n−1,最後のm)に360°+θ(n,1)を記憶して、θ(n,1)を消去する。これは、後述するレーザ加工制御ルーチンにおいて、コントローラ90がθ(n,m)−Δθ(n)となる回転角度を検出したタイミングで加工指令(発光信号の出力指令)を出力することから、θ(n,m)−Δθ(n)を0以下の値にしないようにするためである。
【0061】
これにより、エンコーダ22aからインデックス信号が入力した時の半径値r(=rst+n・ΔPr)ごとに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が定まるので、コントローラ90は、インデックス信号が入力した回数nと回転角度検出回路56から入力した回転角度データ(カウント値)に基づいて、加工用強度のレーザ光を出射させるためのパルス信号出力指令をパルス信号供給装置50に出力することができる。
【0062】
次に、レーザ加工制御処理について説明する。図7A,図7Bは、コントローラ90により実行されるレーザ加工制御ルーチンを表す。レーザ加工制御ルーチンは、コントローラ90のROM内に制御プログラムとして記憶されており、作業者がテーブル21に加工対象物OBをセットした後、入力装置91からレーザ加工の開始指令を入力すると起動する。レーザ加工制御ルーチンは、後述するローレベル期間設定ルーチン(図8)と並行して行われる。
【0063】
ステップS100にてレーザ加工制御ルーチンが開始されると、コントローラ90は、まず、ステップS102において、変数nの値を「0」に、変数mの値を「1」に設定する。続いて、ステップS104において、スピンドルモータ制御回路53に対して、回転開始指令を出力する。コントローラ90は、回転指令を出力するにあたって、半径位置検出回路52により検出される半径位置を表す信号を入力し、レーザスポットの半径位置における線速度が指定された線速度SPとなるようなスピンドルモータ22の回転速度を計算し、その計算した回転速度をスピンドルモータ制御回路53に対して出力する。スピンドルモータ制御回路53は、エンコーダ22aからの回転検出用パルス信号を用いてスピンドルモータ22の回転速度を計算し、この計算した回転速度がコントローラ90から入力した回転速度と等しくなるようにスピンドルモータ22の回転制御を開始する。尚、コントローラ90は、回転開始指示を出力した後は、本ルーチンとは別の割り込みルーチンにより、半径位置に応じたスピンドルモータ22の回転速度の計算を繰り返し、その都度、計算した回転速度をスピンドルモータ制御回路53に出力する。
【0064】
続いて、コントローラ90は、ステップS106において、フィードモータ制御回路54に対して初期半径位置への移動指令を出力する。初期半径位置は、初期半径値rstにより特定される。フィードモータ制御回路54は、この移動指令により、半径位置検出回路52によって検出された半径値rを入力しながら、半径値rが初期半径値rstに一致するまで、フィードモータ23の回転を制御してテーブル21を移動する。半径位置検出回路52によって検出された半径値rが初期半径値rstに等しくなると、フィードモータ制御回路54はフィードモータ23の回転を停止する。これにより、加工対象物OBの表面におけるレーザスポットの位置がテーブル21の回転中心から初期半径値rst離れた位置にセットされる(この時点では、まだレーザ光は照射されていない)。
【0065】
コントローラ90は、ステップS106において初期半径位置への移動指令を出力すると、ステップS108において、半径位置検出回路52から半径値rを入力し、ステップS110において、半径値rが初期半径値rstと等しくなるまで待つ。そして、テーブル21が初期半径位置にまで移動して半径値rが初期半径値rstと等しくなったことを確認すると(S110:Yes)、ステップS112において、レーザ駆動回路70に対して駆動開始指令を出力するとともにパルス信号供給装置50にローレベルの直流信号出力の開始指令を出力する。これにより、パルス信号供給装置50は、ローレベルに設定された直流信号の出力を開始する。レーザ駆動回路70は、パルス信号供給装置50から出力された直流信号を入力して、非加工用レーザ駆動信号をレーザ光源31に出力する。レーザ光源31は、レーザ駆動回路70から出力された非加工用レーザ駆動信号により駆動されて、非加工用強度のレーザ光を出射する。これにより加工対象物OBの表面に非加工用強度のレーザ光が照射され、その反射光がフォトディテクタ38によって検出される。この場合、加工対象物OBは、非加工用強度のレーザ光の照射によって加工されない。
【0066】
続いて、コントローラ90は、ステップS114において、フォーカスサーボ回路63と図示していないフォーカスアクチュエータ39を駆動する回路とS字検出回路とに対して、フォーカスサーボの開始指令を出力する。これにより、レーザ光の焦点位置がレーザ光の光軸方向に移動し、レーザ光の焦点位置が加工対象物OBの表面に一致したタイミングでフォーカスサーボが開始される。そして、レーザ光の焦点位置が加工対象物OBの表面に一致するように、対物レンズ35がレーザ光の光軸方向に駆動制御される。
【0067】
続いて、コントローラ90は、ステップS116において、エンコーダ22aからインデックス信号が入力されるまで待機する。そして、インデックス信号が入力されたことを検出すると、続くステップS118において、フィードモータ制御回路54に対して径方向の移動開始の指令を出力する。これにより、フィードモータ23がフィードモータ制御回路54により駆動されテーブル21が径方向に移動する。コントローラ90は、径方向の移動指令を出力するにあたって、半径位置検出回路52により検出される半径位置を表す信号を入力し、その半径位置と線速度SPとに基づいて、テーブル21が1回転したときのテーブル21の径方向の移動距離が送りピッチΔPrとなる移動速度を計算し、その計算した移動速度に相当する回転速度をフィードモータ制御回路54に出力する。フィードモータ制御回路54は、エンコーダ23aから出力される回転検出用パルス列信号を用いてフィードモータ23の回転速度を計算し、この計算した回転速度がコントローラ90から入力した回転速度と等しくなるようにフィードモータ23の回転制御を開始する。尚、コントローラ90は、ステップS118において径方向への移動指示を出力した後は、本ルーチンとは別の割り込みルーチンにより、フィードモータ23の回転速度の計算を繰り返し、その都度、計算した回転速度をフィードモータ制御回路54に出力する。
【0068】
続いて、コントローラ90は、ステップS120において、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が存在するか否かを判断する。本ルーチンが開始された直後であれば、θ(0,1)が存在するか否かを判断する。θ(0,1)が存在しない場合には、ステップS122において、変数nの値を「1」だけインクリメントし、ステップS124において、エンコーダ22aからインデックス信号が入力するまで待機する。テーブル21が1回転してインデックス信号が入力されると、再びステップS120において、メモリ90aに記憶されているデータデーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が存在するか否かを判断する。回転設定角度θ(n,m)が存在しない間は、上述したステップS120〜S124の処理を繰り返す。そして、回転設定角度θ(n,m)が存在すると判断した場合には、その処理をステップS126に進める。
【0069】
コントローラ90は、ステップS126において、回転角度検出回路56により検出された回転角度θを入力する。続いて、ステップS128において、回転角度θが回転設定角度θ(n,m)以上になったか否かを判断する。回転角度θが、回転設定角度θ(n,m)に到達していない間は、ステップS126,S128の処理を繰り返す。こうした処理が繰り返され、回転角度θが回転設定角度θ(n,m)以上になると、コントローラ90は、ステップS130において、パルス信号供給装置50に対して、パルス信号の出力指令(発光信号の供給指令)を出力する。これにより、パルス信号供給装置50は、メモリ50aに記憶されている波形のパルス信号を出力する。パルス信号供給装置50が出力するパルス信号は、ローレベル信号とその後に出力されるハイレベル信号とで構成されている。ローレベル期間Lにおけるパルス信号の強度は、パルス信号を出力していないときのローレベルの信号(直流信号)と同じ強度である。このため、パルス信号供給装置50が出力するパルス信号のローレベル期間L中においては、引き続きレーザ駆動回路70から非加工用レーザ駆動信号がレーザ光源31に出力される。そして、ローレベル期間Lが終了してハイレベルに切り替わると、レーザ駆動回路70は、加工用レーザ駆動信号をレーザ光源31に出力する。こうして、パルス信号供給装置50から出力される1つのパルス信号により、加工対象物OBの表面に1つの加工跡が形成される。尚、ステップS130が最初に実行される場合は、後述するローレベル期間設定ルーチンにより、ローレベル期間Lはゼロとなっている。
【0070】
続いて、コントローラ90は、ステップS132において、変数mを値「1」だけインクリメントし、ステップS134において、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が存在するか否かを判断する。θ(n,m)が存在しない場合には、ステップS136において、変数nの値を「1」だけインクリメントする。続いて、コントローラ90は、ステップS138において、半径位置検出回路52から半径値rを入力し、ステップS140において、半径値rが終了半径値rend以上になったか否かを判断する。半径値rが終了半径値rendに到達していない場合は、ステップS142において、変数mを値「1」だけインクリメントし、ステップS144において、エンコーダ22aからインデックス信号が入力するまで待機する。テーブル21が1回転してインデックス信号が入力されると、その処理をステップS134に戻して、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が存在するか否かを判断する。回転設定角度θ(n,m)が存在しない間は、上述したステップS134〜S144の処理を繰り返す。そして、回転設定角度θ(n,m)が存在すると判断した場合には、その処理をステップS146に進める。
【0071】
コントローラ90は、ステップS146において、回転角度検出回路56により検出された回転角度θを入力し、ステップS148において、回転角度θが、回転設定角度θ(n,m)から検出単位角度Δθ(n)を減算した角度以上であるか否かを判断する。この検出単位角度Δθ(n)は、コントローラ90のメモリ90aに記憶されている回転角度検出回路56がカウント数(回転角度)を出力する間隔(最小検出回転角度)である。回転角度θが(θ(n,m)−Δθ(n))に到達していない間は、ステップS146,S148の処理を繰り返す。こうした処理が繰り返され、回転角度θが(θ(n,m)−Δθ(n))に到達すると、コントローラ90は、その処理をステップS130に戻し、パルス信号供給装置50に対して、パルス信号の出力指令(発光信号の供給指令)を出力する。ここでは、2回目以降のパルス信号の出力指令となる。2回目以降のパルス信号の出力指令は、ステップS148で分かるように、レーザ加工を行う回転設定角度θ(n,m)の1つ手前となる回転角度(カウント数)データが入力したタイミングで出力される。
【0072】
こうした処理は、半径値rが終了半径値rendに達するまで繰り返される。従って、コントローラ90は、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が存在している間は、その回転設定角度θ(n,m)の1つ手前となる回転角度データが回転角度検出回路56から入力するたびに、パルス信号供給装置50にパルス信号の出力指令を出力する。
【0073】
半径値rが終了半径値rendに達すると、コントローラ90は、ステップS150において、フォーカスサーボ回路63に作動停止指令を出力して、フォーカスサーボ回路63によるフォーカスサーボ制御を停止させる。続いて、コントローラ90は、ステップS152において、レーザ駆動回路70に対してレーザ光の照射停止指令を出力し、パルス信号供給装置50にローレベルの直流信号出力の停止指令を出力する。これによりレーザ光(非加工用強度のレーザ光)の照射が停止される。続いて、ステップS154において、フィードモータ制御回路54に径方向移動停止指令を出力してフィードモータ23の回転を停止させ、ステップS156において、スピンドルモータ制御回路53に回転停止指令を出力してスピンドルモータ22の回転を停止させ、ステップS158にてレーザ加工制御ルーチンを終了する。
【0074】
次に、レーザ加工制御ルーチンと並行して実施されるローレベル期間設定ルーチンについて説明する。このローレベル期間設定ルーチンは、パルス信号供給装置50がレーザ駆動回路70に出力するパルス信号(発光信号)におけるローレベル期間Lをコントローラ90により設定するものである。図8A,図8Bは、コントローラ90により実行されるローレベル期間設定ルーチンを表す。ローレベル期間設定ルーチンは、コントローラ90のROM内に制御プログラムとして記憶されており、レーザ加工制御ルーチンと並行して行われる。
【0075】
ステップS200にてローレベル期間設定ルーチンが開始されると、コントローラ90は、まず、ステップS202において、変数nの値を「0」に設定する。続いて、ステップS204において、上述したレーザ加工制御ルーチンでフィードモータ制御回路54に対して径方向の移動開始指令が出力される(S118)まで待機する。続いて、ステップS206において、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,1)が存在するか否かを判断する。本ルーチンが開始された直後であれば、θ(0,1)が存在するか否かを判断する。つまり、図6に示す加工跡の回転設定角度データのうち、n=0となる回転角度データが1つでも存在するか否か、換言すれば、初期半径位置からテーブルが1周回転する間に形成すべき加工跡が1つ以上存在するか否かを判断する。回転設定角度θ(0,1)が存在しない場合には、ステップS208において、変数nの値を「1」だけインクリメントし、ステップS210において、エンコーダ22aからインデックス信号が入力するまで待機する。テーブル21が1回転してインデックス信号が入力されると、再びステップS206において、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,1)が存在するか否かを判断する。回転設定角度θ(n,1)が存在しない間は、上述したステップS206〜S210の処理を繰り返す。そして、データテーブルに回転設定角度θ(n,1)が存在すると判断した場合には、その処理をステップS212に進める。
【0076】
コントローラ90は、ステップS212において、回転角度検出回路56により検出された回転角度θを入力する。続いて、ステップS214において、回転角度θが、回転設定角度θ(n,1)から検出単位角度Δθ(n)を減算した角度以上であるか否かを判断する。回転角度θが(θ(n,1)−Δθ(n))に到達していない間は、ステップS212,S214の処理を繰り返す。こうした処理が繰り返され、回転角度θが(θ(n,1)−Δθ(n))に到達すると、コントローラ90は、ステップS216において、信号入力検出回路80に対して作動開始指令を出力する。
【0077】
上述したレーザ加工制御ルーチンにおいては、パルス信号供給装置50がレーザ駆動回路70に最初にパルス信号を出力するタイミングは、回転角度θが回転設定角度θ(n,m)となるタイミングである。従って、ステップS214において、「Yes」、つまり、回転角度θが(θ(n,1)−Δθ(n))に到達したと判定された時点においては、まだ、パルス信号供給装置50からレーザ駆動回路70にパルス信号が供給されていない。そして、テーブル21の回転角度がさらに検出単位角度Δθ(n)だけ増加すると、回転角度検出回路56は、回転角度θを表すデジタルデータをコントローラ90および信号入力検出回路80に出力する。これにより信号入力検出回路80は、信号が入力したことを表すハイレベルの信号入力検出信号(1パルス信号)を遅れ信号生成回路81に出力する。また、パルス信号供給装置50は、コントローラ90からのパルス信号の出力指令によりレーザ駆動回路70にパルス信号(発光信号)を出力する。
【0078】
遅れ信号生成回路81は、信号入力検出回路80から出力される信号がハイレベルになると自身の出力をハイレベルにし、信号増幅回路71から出力される信号がハイレベル(加工用強度のレーザ光の照射が検出されたときの信号レベル)になると、自身の出力をハイレベルからローレベルに切り換える。従って、遅れ信号生成回路81により生成される信号がハイレベルとなる期間は、回転角度検出回路56が回転設定角度θ(n,1)を検出したタイミングからレーザ光の強度が加工用強度に切り替わるタイミングまでの遅れ時間に相当する。以下、この遅れ時間をタイミングずれDevと呼ぶ。A/D変換器82は、遅れ信号生成回路81により生成される信号をデジタル信号に変換してコントローラ90に出力する。
【0079】
コントローラ90は、ステップS218において、A/D変換器82からデータを入力し、ステップS220において、このデータから、遅れ信号生成回路81により生成される信号のハイレベルとなる時間をタイミングずれDevとして計算する。続いて、コントローラ90は、ステップS222において、パルス信号供給装置50が出力するパルス信号におけるローレベル期間L(ローレベル期間Lの時間を意味する)を次式(7)により設定する。
L=(ΔPt(n)/SP−Dev) ・・・(7)
ここで、SPは加工対象物OB上を移動するレーザスポットの線速度である。
【0080】
レーザ加工制御ルーチンにおいては、上述したようにパルス信号供給装置50への2回目以降のパルス信号出力指令は、回転角度θがメモリ90aに記憶されている回転設定角度θ(n,m)から検出単位角度Δθ(n)だけ減算した角度以上となったとき出力される。つまり、本来のレーザ加工位置よりも検出単位角度Δθ(n)だけ手前の位置でパルス信号出力指令が出力される。このパルス信号出力指令の早出し時間がΔPt(n)/SPに相当する。従って、この早出し時間からタイミングずれDevを差し引いた時間を、パルス信号供給装置50の出力するパルス信号のローレベル期間Lに設定することで、本来のレーザ加工位置でレーザ光強度を加工用強度に変更することができる。つまり、設定加工位置で加工用強度のレーザ光を照射して加工跡を形成することができる。尚、ローレベル期間Lは、このステップS222の処理が行われるまでの間は、ゼロ(L=0)に設定されている。
【0081】
コントローラ90は、ステップS222においてローレベル期間Lを設定すると、続いて、ステップS224において、エンコーダ22aからインデックス信号が入力するまで待機する。この待機時においては、インデックス信号の確認と同時に、ステップS230にてレーザ照射停止指令が入力されたか否かを判断する。つまり、レーザ加工制御ルーチンにおけるステップS152の指令が出力されたか否かを判断する。
【0082】
コントローラ90は、インデックス信号の入力を検出すると、ステップS226において、変数nを値「1」だけインクリメントし、続くステップS228において、ΔPt(n)とΔPt(n−1)が等しいか否かを判断する。つまり、図6に示したデータテーブルを参照して、回転方向のピッチΔPt(n)が変化するか否かを判断する。これは、回転方向のピッチΔPt(n)は半径値rに応じて僅かに異なる場合があるからである。回転方向のピッチΔPt(n)が変化しない場合は、パルス信号供給装置50が供給するパルス信号の出力指令タイミングを変えなくても、適正位置に加工用強度のレーザ光を照射して加工跡を形成することができる。従って、その場合には、ステップS230に戻って同様な処理を行う。一方、回転方向のピッチΔPt(n)が変化する場合は、その処理をステップS222に戻して、ローレベル期間Lを再度設定する。
【0083】
こうした処理を繰り返すことにより、ローレベル期間Lが適切な値に維持される。そして、レーザ照射停止指令が入力すると(S230:Yes)、ステップS232にてローレベル期間設定ルーチンが終了する。図9は、パルス信号により加工用強度のレーザ光が照射されるタイミングを他の信号とともに表したタイミングチャートである。図中において(a)は回転角度検出回路56が出力する回転角度検出信号(デジタル信号)、(b)はコントローラ90がパルス信号供給装置50へ出力するパルス信号出力指令信号、(c)は信号増幅回路71が出力する信号(レーザ光の発光強度信号)、(d)は遅れ信号生成回路81が出力するパルス信号の波形を表す。
【0084】
時刻t1において、回転角度検出回路56によりレーザ照射開始設定位置(加工用強度のレーザ光を照射する最初の回転設定角度)が検出されると(S128:Yes)、時刻t2において、コントローラ90からパルス信号供給装置50に対してパルス信号出力指令が出力される(S130)。そして、時刻t3において、最初の加工用強度のレーザ光の照射が行われる。この最初の加工用強度のレーザ光照射時においては、まだローレベル期間Lが設定されていない(L=0)。従って、時刻t1から時刻t3までの経過時間が、遅れ時間、つまり、タイミングずれDevに相当する。コントローラ90は、このとき、ステップS220においてタイミングずれDevを計算し、ステップS222において、式(7)からローレベル期間Lを設定する。
【0085】
2つ目の加工用レーザ光の照射に関しては、そのレーザ照射設定位置よりも検出単位角度Δθ(n)だけ手前の位置、つまり、レーザ照射設定位置より一つ手前の回転角度を検出できる角度に到達した時刻t4において、回転角度検出回路56からコントローラ90に回転角検出信号が出力されると、コントローラ90は、時刻t5において、パルス信号供給装置50に対してパルス信号出力指令を出力する。この時点においては、すでに、ローレベル期間Lが設定されている。従って、パルス信号供給装置50は、先頭にローレベル期間Lを含んだパルス信号(発光信号)をレーザ駆動回路70に出力する。こうして、レーザ光は、レーザ照射設定位置となる時刻t6において非加工用強度から加工用強度に切り替わる。尚、図中(c)の波形において、太線部分がパルス信号供給装置50から供給されたパルス信号による出射期間を表している。3つ目以降の加工用レーザ光の照射についても同様に行われる。
【0086】
以上説明した本実施形態のレーザ加工装置1によれば、エンコーダ22aから出力される回転検出用パルス信号の周波数をk倍に増加させたパルス信号を周波数変更回路55により生成し、この周波数変更回路55から出力される周波数変更パルス信号のカウント数が所定値Cになるごとにそのカウント値を回転角度検出回路56から回転角度信号として出力する。そして、周波数を増加させる倍数kを半径値に関わらず回転角度を検出するピッチΔPtが一定になるように半径値に応じて設定している。従って、加工跡を形成する半径位置に左右されることなく加工精度を良好にすることができる。
【0087】
また、レーザ加工の開始時にタイミングずれDevを計算し、このずれDevと検出単位角度Δθ(n)だけ回転するのに要する時間(ΔPt(n)/SP)に基づいてローレベル期間Lを設定する。そして、レーザ照射設定位置より検出単位角度Δθ(n)だけ手前の回転角度を検出したときに、パルス信号供給装置50に対してパルス信号出力指令を出力するため、加工設定位置にて加工用レーザ光を照射することができる。これにより、加工精度を一層向上させることができる。この結果、例えば、ナノオーダーの微細な加工跡を精度良く正方形状あるいは六方細密状に配置して形成することができ、高品質のLED基板や液晶の基板を製造することができる。
【0088】
次に、ローレベル期間設定ルーチンの第1変形例について説明する。上述した実施形態においては、レーザ加工の開始時において1回だけタイミングずれDevを計算し、そのタイミングずれDevをレーザ加工の終了までローレベル期間Lの演算に使用したが、この第1変形例においては、所定の周期でタイミングずれDevを計算するものである。以下の説明においては、上述した実施形態におけるローレベル期間設定ルーチンと相違する処理について詳述し、実施形態と同じ処理については、図面に実施形態と同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0089】
図10A,図10Bは、第1変形例のローレベル期間設定ルーチンを表す。この第1変形例のローレベル期間設定ルーチンも、上述したレーザ加工制御ルーチン(図7A,図7B)と同時に開始される。第1変形例のローレベル期間設定ルーチンにおいては、ステップS204とステップS206との間にステップS302の処理が追加されている。コントローラ90は、ステップS302において、変数sを変数nと同じ値に設定する。従って、変数sは、ローレベル期間設定ルーチンの開始時においては「0」に設定される。コントローラ90は、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,1)が存在しない場合(S206:No)は、変数nを値「1」だけインクリメントする。こうした処理は、データテーブルに回転設定角度θ(n,1)が存在すると判断されるまで、エンコーダ22aからインデックス信号が入力するたびに繰り返される。従って、変数sも変数nの増加にともなって同様に増加していく。
【0090】
コントローラ90は、データテーブルに回転設定角度θ(n,1)が存在すると判断した場合には、回転角度検出回路56から回転角度θを入力し、回転角度θが回転設定角度θ(n,1)よりも検出単位角度Δθ(n)だけ手前となる角度に達したときに、信号入力検出回路80へ作動開始指令を出力する(S216)。そして、A/D変換器82からデータを入力して(S218)、タイミングずれDevを計算する(S220)。続いて、ステップS304において、変数nが変数sと等しいか否かを判断する。ローレベル期間設定ルーチンが起動して最初にステップS304の判断処理が行われる場合においては、n=sとなっている、従って、ステップS304の判断は「Yes」となり、ステップS306においてタイミングずれDev1の値を、ステップS220で計算したタイミングずれDevの値に設定する(Dev1←Dev)。続いて、ステップS310において、ローレベル期間Lを次式(8)により設定する。
L=(ΔPt(n)/SP−Dev1) ・・・(8)
【0091】
従って、この時点では、上述した実施形態と同じローレベル期間Lが設定されることとなる。そして、コントローラ90は、エンコーダ22aからインデックス信号が入力する度に、変数nを値「1」だけインクリメントし(S226)、ΔPt(n)とΔPt(n−1)が等しいか否かを判断する(S228)。データテーブルの回転方向のピッチΔPt(n)が変化しない場合は、ステップS230に戻って同様な処理を行う。一方、回転方向のピッチΔPt(n)が変化する場合には、ステップS312において、回転設定角度θ(n,1)が検出単位角度Δθ(n)の2倍の角度以上であるか否かを判断する。コントローラ90は、回転設定角度θ(n,1)が検出単位角度Δθ(n)の2倍の角度未満である場合には、その処理をステップS310に戻して、ローレベル期間Lを再度設定する。尚、ステップS312において、回転設定角度θ(n,1)が存在しない場合には、θ(n,1)=0°とする。
【0092】
一方、回転設定角度θ(n,1)が検出単位角度Δθ(n)の2倍の角度以上であれば、タイミングずれDevを検出できる状況(回転位置)にある。そこで、コントローラ90は、ステップS314において、式(8)によりローレベル期間Lを再度設定した後、その処理をステップS212に戻す。これにより、回転角度θが回転設定角度θ(n,1)よりも検出単位角度Δθ(n)だけ手前となる角度に達すると、ステップS216〜S220の処理により、再度、タイミングずれDevが計算されることになる。この場合、変数nの値はステップS226においてインクリメントされているため、変数sの値とは相違する。従って、続くステップS304の判断は「No」となり、ステップS308において、タイミングずれDev1が計算される。このタイミングずれDev1は、直前まで設定されていたタイミングずれDev1から今回ステップS220で計算したタイミングずれDevを減算した値に設定される(Dev1←Dev1−Dev)。これにより、ステップS310において、最新のタイミングずれDev1に基づいてローレベル期間Lが再設定される。
【0093】
こうした処理は、レーザ照射停止指令が入力するまで繰り返し実行される。この場合、変数sは、レーザ加工が開始された後は変更されないため、ステップS304の判断は常に「No」となる。つまり、ステップS304の判断は、タイミングずれDevの計算が1回目であるか2回目以降であるかを判断するものとなる。従って、タイミングずれDevの計算が2回目以降であれば、ステップS308において、直前に設定されていたタイミングずれDev1が補正されることになる。
【0094】
図11は、実施形態における図9に対応した信号出力波形を表したタイミングチャートである。この例では、すでにローレベル期間Lが設定されている状況を表す。時刻t11において、回転角度検出回路56が、レーザ照射設定位置よりも検出単位角度Δθ(n)だけ手前の回転角度を表す回転角度検出信号をコントローラ90に出力すると、コントローラ90は、時刻t12において、パルス信号供給装置50に対してパルス信号出力指令を出力する。この時点においては、すでに、ローレベル期間Lが設定されているため、レーザ照射設定位置でレーザ光の強度が加工用強度に切り替わるはずであるが、レーザ加工の最中にタイミングずれDevが変化することがある。そうした場合には、この図に示すように、若干のタイミングずれDevが発生してしまい、レーザ照射設定位置とは異なる位置でレーザ光の強度が加工用強度に切り替わる(時刻t13)。そうした場合であっても、この第1変形例においては、その後、タイミングずれDevを補正するため、次のレーザ照射設定位置において加工用レーザ光を出射できるようになる(時刻t14)。
【0095】
以上説明した第1変形例のローレベル期間設定ルーチンによれば、テーブル21が1回転してインデックス信号が入力するたびに、回転方向のピッチΔPt(n)が変化していれば、その周における最初のレーザ加工位置でタイミングずれDevを検出できる状況であるか否かを判断する(S312)。そして、タイミングずれDevを検出できる状況であれば、タイミングずれDevを検出し、それに基づいてローレベル期間Lを再設定するため、レーザ加工の最中にタイミングずれDevが変化しても、それを補正して加工跡を適正位置に形成することができる。この結果、レーザ加工精度を一層向上させることができる。
【0096】
次に、ローレベル期間設定ルーチンの第2変形例について説明する。上述した実施形態および第1変形例においては、図4に示すように、加工跡を形成する加工設定位置を回転角度検出回路56から回転角度データが出力される位置(m・Δθ)としたが、第2変形例においては、回転角度に関しては本来の加工位置(r,θ)の回転角度θを用いる。従って、図12に示すように、x,y座標から円座標(r’,θ’)を求める際、半径値に関しては、径方向の送りピッチΔPrごとに区分した半径値から半径値rに最も近い半径値r’を設定するが、回転角度に関しては、本来の回転角度θをそのまま回転角度θ’として設定する。
【0097】
この場合、コントローラ90のメモリ90aのデータテーブルには、加工跡の回転設定角度のデータとして、回転角度θ’の手前で回転角度を検出する位置の回転角度(m・Δθ)がθ(n,m)として記憶されるとともに、θ(n,m)の位置から回転角度θ’の位置までの距離がΔdt(n,m)として、θ(n,m)に対応して記憶される(図12参照)。
【0098】
以下、第2変形例のローレベル期間設定ルーチンについて説明するが、上述した実施形態および第1変形例と同じ処理については、図面にそれらと同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0099】
図13A,図13B,図13Cは、第2変形例のローレベル期間設定ルーチンを表す。この第2変形例のローレベル期間設定ルーチンも、上述したレーザ加工制御ルーチンと同時に開始される。第2変形例のローレベル期間設定ルーチンが開始されると、まず、ステップS402において、変数nに値「1」、変数mに値「2」、変数pに値「0」を設定する。続いて、上述したステップS204からの処理を行う。
【0100】
コントローラ90は、データテーブルに回転設定角度θ(n,1)が存在すると判断した場合(S212:Yes)には、回転角度θが回転設定角度θ(n,1)よりも検出単位角度Δθ(n)だけ手前となる角度に達したときに、信号入力検出回路80へ作動開始指令を出力する(S216)。そして、A/D変換器82からデータを入力して(S218)、タイミングずれDevを計算する(S220)。続いて、ステップS304において、変数nが変数sと等しいか否かを判断する。ローレベル期間設定ルーチンが起動して最初にステップS304の判断処理が行われる場合においては、n=sとなっているため、ステップS306においてタイミングずれDev1の値を、ステップS220で計算したタイミングずれDevの値に設定する(Dev1←Dev)。
【0101】
コントローラ90は、続いて、ステップS406において、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が存在するか否かを判断する。この場合、m=2に設定されているため、回転設定角度θ(n,2)の存在が判断される。回転設定角度θ(n,m)が存在する場合には、続くステップS408において、ローレベル期間Lを次式(9)により設定する。
L={(ΔPt(n)+Δdt(n,m))/SP−Dev1}・・・(9)
この式(9)では、(ΔPt(n)+Δdt(n,m))/SPが、本来のレーザ加工位置(r’,θ’)にレーザ光の照射位置が到達するタイミングよりも早めにパルス信号出力指令を出力する早出し時間に相当する。従って、この早出し時間からタイミングずれDev1を差し引いた時間のローレベル期間Lをパルス信号の先頭部に設けることで、本来のレーザ加工位置(r’,θ’)でレーザ光強度を加工用強度に変更することができる。
【0102】
こうしてローレベル期間Lを設定すると、続いて、ステップS410において、パルス信号出力指令が出力されたか否かを判断する。つまり、レーザ加工制御ルーチンにおけるステップS130の指令が出力されたか否かを判断する。コントローラ90は、パルス信号出力指令が出力されるまで待機する。この待機時においては、パルス信号出力指令の確認と同時に、ステップS230にてレーザ照射停止指令が入力されたか否かを判断する。
【0103】
コントローラ90は、ステップS410において、パルス信号出力指令が出力されたことを確認すると、続くステップS412において変数mを値「1」だけインクリメントする。この場合、変数mの値は「2」から「3」に変更される。続いて、ステップS414において、メモリ90aに記憶されているデータテーブルに加工跡の回転設定角度θ(n,m)が存在するか否かを判断する。回転設定角度θ(n,m)が存在する場合には、その処理をステップS408に戻して、次のレーザ加工位置における発光信号のローレベル期間Lを設定する。こうした処理は、レーザ照射停止指令が入力されない限り、回転設定角度θ(n,m)が存在しなくなるまで繰り返される。従って、n周目に設定された全てのレーザ加工位置において、発光信号のローレベル期間Lが設定される。尚、ステップS414において、回転設定角度θ(n,m)が存在しないと判断された場合には、ローレベル期間Lを設定する必要がないため、その処理をステップS224に進める。
【0104】
こうした処理が繰り返されてデータテーブルに回転設定角度θ(n,m)が存在しなくなると、コントローラ90は、ステップS224においてエンコーダ22aからインデックス信号が入力するまで待機する。そして、インデックス信号の入力を確認すると、ステップS226において、変数nを値「1」だけインクリメントし、ステップS416において、変数pを値「1」だけインクリメントする。続いて、ステップS418において、変数pが設定値N以上となったか否かを判断する。この設定値Nは、後述する処理から理解されるが、タイミングずれDevを検出する周期を設定するもので予め設定された値である。
【0105】
変数pが設定値Nに達していない場合(S418:No)には、ステップS420において変数mを値「1」に設定した後、その処理をステップS406に戻す。従って、次の周における回転設定角度θ(n,m)の存在が判断され、回転設定角度θ(n,m)が存在する場合には、その周に設定された全てのレーザ加工位置において発光信号のローレベル期間Lが設定される。こうしたステップS406〜S420の処理が繰り返されるうちに、変数pの値が設定値Nに到達すると(S418:Yes)、コントローラ90は、その処理をステップS312に進めて、回転設定角度θ(n,1)が検出単位角度Δθ(n)の2倍の角度以上であるか否かを判断する。つまり、タイミングずれDevを検出できる状況(回転位置)にあるか否かを判断する。コントローラ90は、回転設定角度θ(n,1)が検出単位角度Δθ(n)の2倍の角度未満である場合には、その処理をステップS420に戻して上述した処理を繰り返す。
【0106】
一方、回転角度θ(n,1)が検出単位角度Δθ(n)の2倍の角度以上であれば、ステップS422において、式(10)によりローレベル期間Lを設定する。
L={(ΔPt(n)+Δdt(n,1))/SP−Dev1}・・・(10)
続いて、ステップS424において変数pを値「0」に設定し、ステップS426において変数mを値「2」に設定した後、その処理をステップS212に戻す。これにより、回転角度θが回転設定角度θ(n,1)よりも検出単位角度Δθ(n)だけ手前となる角度に達すると、ステップS216〜S220の処理により、再度、タイミングずれDevが検出されることになる。この場合、変数nの値はステップS226においてインクリメントされているため、変数sの値とは相違する。従って、続くステップS304の判断は「No」となり、ステップS404において、タイミングずれDev1が計算される。このタイミングずれDev1は、距離Δdt(n,m)をレーザスポットが移動する時間分を考慮して次式(11)により計算される。
Dev1=Dev1−{Dev−(Δdt(n,m)/SP)}
ここで右辺のDev1は、直前回まで設定されていたタイミングずれDev1であり、Devは、今回ステップS220にて計算したタイミングずれである。
【0107】
これにより、レーザ加工中においてテーブル21がN回転するたびに、タイミングずれDev1が検出され、そのタイミングずれDev1とレーザスポットが距離Δdt(n,m)を移動する時間とに基づいて、各レーザ加工位置のそれぞれにおける発光信号のローレベル期間Lが設定される。そして、レーザ照射停止指令が入力すると(S230:Yes)ローレベル期間設定ルーチンは終了する。
【0108】
図14は、実施形態における図9に対応した信号出力波形を表したタイミングチャートである。加工用レーザ光の照射開始時においては、回転角度検出回路56からコントローラ90に回転角度信号が入力するタイミング(時刻t21)に対して、実際にレーザ光が加工用強度に切り替わるタイミング(時刻t22)が遅れる。しかし、このタイミングずれDevと、距離(ΔPt(n)+Δdt(n,m))をレーザスポットが移動する時間とに基づいて、ローレベル期間Lが設定されるため、次回からの加工用レーザ光の照射時においては、その加工設定位置が回転角度検出信号が出力される回転角度と相違する位置であっても、加工設定位置でレーザ光強度を加工用強度に切り換えることができる(時刻t23)。
【0109】
以上説明した第2変形例のローレベル期間設定ルーチンによれば、加工対象物OBの表面に形成する加工跡の位置を、回転角度検出回路56が回転角度を出力する角度と相違する位置に設定することができる。従って、加工跡を形成する配置の自由度を増すことができる。しかも、この場合でも、パルス信号のローレベル期間Lを、発光信号の供給指令を出力する回転角度と加工設定位置の回転角度との角度差分の距離をレーザスポットが通過するのに要する時間((ΔPt(n)+Δdt(n,m))/SP)と、タイミングずれDevとに基づいて設定するため、加工設定位置に加工用レーザ光を照射することができる。また、レーザ加工の最中にタイミングずれDevが変化しても、定期的にタイミングずれDevを計算し直し、最新のタイミングずれDevを使ってローレベル期間Lを設定するため、レーザ加工精度を一層向上させることができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0111】
例えば、本実施形態においては、1回のレーザ加工時に、タイミングずれを少なくとも1回検出してローレベル期間Lを設定したが、長期間においてタイミングずれが殆ど変動しない状況であれば、設定したローレベル期間Lをメモリ90a等に記憶しておき、記憶したローレベル期間Lを長期間使用するようにしてもよい。
【0112】
また、本実施形態においては、加工跡Pitを正方形状配置にて形成するが、例えば、六方細密状配置に形成してもよい。また、そうした配置に限るものでもない。
【0113】
また、本実施形態においては、加工対象物OBに照射されるレーザスポットをテーブル21の径方向に移動させるにあたって、テーブル21を移動させるようにしているが、加工ヘッド30をテーブル21の径方向に移動させる構成であってもよい。また、テーブル21と加工ヘッド30との両方を関連させて移動させるようにすることもできる。
【0114】
また、レーザ加工中にテーブル21の位置を径方向に移動させるにあたっては、レーザスポットがテーブル21の回転中心に近い側から遠い側に移動するようにしても、逆に、レーザスポットがテーブル21の回転中心の遠い側から近い側に移動するようにしてもどちらでもよい。
【0115】
また、レーザ加工は、加工対象物OBの表面に加工用レーザ光を照射してピットを形成するものに限らず、表面にフォトレジストを被覆した加工対象物OBに加工用レーザ光を照射してフォトレジストに反応跡を形成し、その後、現像液にて反応跡を除去し、残ったフォトレジストをマスクとして使ってエッチングにより加工対象物OBにピットを形成するものでもよい。
【0116】
尚、本実施形態における周波数変更回路55および倍数kを設定するコントローラ90の機能部が本発明の周波数変更手段に相当し、本実施形態における回転角度検出回路56が本発明のカウント手段に相当する。また、本実施形態におけるエンコーダ23aおよび半径位置検出回路52が本発明の径方向位置検出手段に相当する。また、本実施形態におけるパルス信号供給装置50およびレーザ駆動回路70からなる構成が本発明の発光信号供給手段に相当する。また、本実施形態におけるパルス信号供給装置50がレーザ駆動回路70を介してレーザ光源31に供給するレーザ駆動信号が本発明の発光信号に相当する。また、本実施形態におけるコントローラ90に設けられたメモリ90aが本発明の加工設定位置記憶手段に相当する。また、本実施形態におけるレーザ加工制御ルーチンを実行するコントローラ90の機能部が本発明のレーザ照射制御手段に相当する。また、本実施形態におけるローレベル期間設定ルーチンでステップS212〜S220によりタイミングずれを検出するコントローラ90の機能部が本発明のタイミングずれ検出手段に相当する。また、本実施形態におけるローレベル期間設定ルーチンでステップS222またはS310またはS408によりローレベル期間Lを設定するコントローラ90の機能部が本発明の発光信号供給タイミング調整手段に相当する。
【0117】
また、本実施形態におけるレーザ加工ルーチンにおいてステップS104,S118により開始される処理が本発明の移動ステップに相当し、ステップS126,S146により回転角度を検出する処理が本発明の回転角度検出ステップに相当し、ステップS118によりテーブル21を径方向に移動させるときコントローラ90が半径値を検出する処理が本発明の径方向位置検出ステップに相当し、レーザ加工制御ルーチンにおいてステップS130〜S148の処理が本発明のレーザ光照射制御ステップに相当する。また、本実施形態におけるエンコーダ22aがパルス信号を出力する処理が本発明の回転パルス信号出力ステップに相当し、本実施形態における周波数変更回路55および倍数kを設定するコントローラ90の行う処理が本発明の周波数変更ステップに相当し、回転角度検出回路56が周波数変更パルス信号をカウントする処理が本発明のカウントステップに相当する。また、本実施形態におけるローレベル期間設定ルーチンでステップS212〜S220によりタイミングずれを検出する処理が本発明のタイミングずれ検出ステップに相当し、本実施形態におけるローレベル期間設定ルーチンでステップS222またはS310またはS408によりローレベル期間Lを設定する処理が本発明の発光信号供給タイミング調整ステップに相当する。
【符号の説明】
【0118】
1…レーザ加工装置、21…テーブル、22…スピンドルモータ、22a…エンコーダ、23…フィードモータ、23a…エンコーダ、30…加工ヘッド、31…レーザ光源、50…パルス信号供給装置、50a…メモリ、52…半径位置検出回路、53…スピンドルモータ制御回路、54…フィードモータ制御回路、55…周波数変更回路、56…回転角度検出回路、70…レーザ駆動回路、80…信号入力検出回路、81…遅れ信号生成回路、82…A/D変換器、90…コントローラ、90a…メモリ、91…入力装置、92…表示装置、OB…加工対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物をセットするためのテーブルと、
前記テーブルを回転させる回転手段と、
レーザ光源を有し前記テーブルにセットされて回転する加工対象物に前記レーザ光源から出射されたレーザ光を対物レンズにより集光して照射する加工ヘッドと、
前記加工ヘッドと前記テーブルとの相対位置を変化させることにより、前記加工対象物に形成されるレーザスポットを前記テーブルの径方向に移動させる径方向移動手段と、
前記回転手段により回転するテーブルの回転位置を表す回転角度を検出する回転角度検出手段と、
前記径方向移動手段により変化する前記加工ヘッドと前記テーブルとの相対的な径方向位置を検出する径方向位置検出手段と、
前記レーザ光源に対して加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号を供給する発光信号供給手段と、
前記加工対象物に加工跡を形成する目標位置を加工設定位置として記憶する加工設定位置記憶手段と、
前記加工設定位置に前記加工用強度のレーザ光が照射されるように、前記回転角度検出手段により検出される回転角度と前記径方向位置検出手段により検出される径方向位置とに基づいて、前記発光信号供給手段に対して前記発光信号の供給指令を出力するレーザ光照射制御手段と
を備えたレーザ加工装置において、
前記回転角度検出手段は、
前記テーブルが所定角度回転するたびにパルス信号を出力する回転パルス信号出力手段と、
前記径方向位置検出手段により検出された径方向位置に基づいて、前記テーブルの回転により前記レーザスポットが前記加工対象物上で周方向移動する距離に対する前記パルス信号のパルス数が前記径方向位置に関わらず一定となるように、前記回転パルス信号出力手段が出力するパルス信号の周波数を変更したパルス信号を出力する周波数変更手段と、
前記周波数変更手段が出力するパルス信号のパルス数をカウントして、そのカウント値から前記テーブルの回転角度に相当する情報を取得するカウント手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記回転角度検出手段が予め設定された回転角度を検出したタイミングで前記加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号の供給指令を前記発光信号供給手段に出力した場合における、前記回転角度を検出したタイミングから前記レーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるタイミングまでのタイミングずれを検出するタイミングずれ検出手段と、
前記検出したタイミングずれに基づいて、前記発光信号供給手段が前記発光信号の供給指令を入力してから前記レーザ光源に対して前記加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号を供給するまでの時間を調整する発光信号供給タイミング調整手段と
を備え、
前記レーザ光照射制御手段は、前記回転角度検出手段により検出された回転角度が前記加工設定位置よりも所定角度手前となる回転角度に達したときに、前記発光信号供給手段に対して前記発光信号の供給指令を出力することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記発光信号供給手段から前記レーザ光源に供給される発光信号は、前記加工用強度のレーザ光を出射させる期間を設定するハイレベル期間に加えて、非加工用強度のレーザ光を出射させる期間を設定するローレベル期間を前記ハイレベル期間の前に設けたパルス信号であって、
前記発光信号供給タイミング調整手段は、前記検出したタイミングずれに基づいて、前記発光信号におけるローレベル期間を設定することを特徴とする請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記発光信号供給タイミング調整手段は、前記レーザ光照射制御手段が前記加工設定位置よりも手前で前記発光信号の供給指令を出力する回転角度と前記加工設定位置の回転角度との角度差分の距離をレーザスポットが通過するのに要する時間と前記タイミングずれの時間とに基づいてローレベル期間を設定することを特徴とする請求項3記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記タイミングずれ検出手段は、前記ローレベル期間の設定が行われた後において、更に、前記加工設定位置の回転角度を検出したタイミングから前記レーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるタイミングまでのタイミングずれの検出を行い、
前記発光信号供給タイミング調整手段は、前記ローレベル期間設定後のタイミングずれの検出が行われたときに、そのタイミングずれに基づいて前記ローレベル期間を再設定することを特徴とする請求項3または4記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
加工対象物をセットしたテーブルを回転させ、かつ、レーザ光源を有する加工ヘッドと前記テーブルとの相対位置を前記テーブルの径方向に移動させる移動ステップと、
前記テーブルの回転位置を表す回転角度を検出する回転角度検出ステップと、
前記加工ヘッドと前記テーブルとの相対的な径方向位置を検出する径方向位置検出ステップと、
目標位置として記憶した加工設定位置に加工用強度のレーザ光が照射されるように、前記回転角度検出ステップで検出された回転角度と前記径方向位置検出ステップで検出された径方向位置とに基づいて、前記レーザ光源に発光信号を供給する発光信号供給装置に対して発光信号の供給指令を出力するレーザ光照射制御ステップと
を含むレーザ加工方法において、
前記回転角度検出ステップは、
前記テーブルが所定角度回転するたびにパルス信号を出力する回転パルス信号出力ステップと、
前記径方向位置検出ステップで検出された径方向位置に基づいて、前記テーブルの回転により前記レーザスポットが前記加工対象物上で周方向移動する距離に対する前記パルス信号のパルス数が径方向位置に関わらず一定となるように、前記回転パルス信号出力ステップで出力されたパルス信号の周波数を変更したパルス信号を出力する周波数変更ステップと、
前記周波数変更ステップで出力されたパルス信号のパルス数をカウントして、そのカウント値から前記テーブルの回転角度に相当する情報を取得するカウントステップと
を含むことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項7】
前記回転角度検出ステップにより予め設定された回転角度が検出されたタイミングで前記加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号の供給指令を前記発光信号供給装置に出力した場合における、前記回転角度が検出されたタイミングから前記レーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるタイミングまでのタイミングずれを検出するタイミングずれ検出ステップと、
前記検出したタイミングずれに基づいて、前記発光信号供給装置が前記発光信号の供給指令を入力してから前記レーザ光源に対して前記加工用強度のレーザ光を出射させるための発光信号を供給するまでの時間を調整する発光信号供給タイミング調整ステップと
を含み、
前記レーザ光照射制御ステップにおいては、前記回転角度検出ステップで検出された回転角度が前記加工設定位置よりも所定角度手前となる回転角度に達したときに、前記発光信号供給装置に対して前記発光信号の供給指令を出することを特徴とする請求項6記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記発光信号供給装置から前記レーザ光源に供給される発光信号は、前記加工用強度のレーザ光を出射させる期間を設定するハイレベル期間に加えて、非加工用強度のレーザ光を出射させる期間を設定するローレベル期間を前記ハイレベル期間の前に設けたパルス信号であって、
前記発光信号供給タイミング調整ステップは、前記検出したタイミングずれに基づいて、前記発光信号におけるローレベル期間を設定することを特徴とする請求項7記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記発光信号供給タイミング調整ステップは、前記レーザ光照射制御ステップで前記加工設定位置よりも手前で前記発光信号の供給指令を出力する回転角度と前記加工設定位置の回転角度との角度差分の距離をレーザスポットが通過するのに要する時間と前記タイミングずれの時間とに基づいてローレベル期間を設定することを特徴とする請求項8記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記タイミングずれ検出ステップは、前記ローレベル期間の設定が行われた後において、更に、前記加工設定位置の回転角度を検出したタイミングから前記レーザ光源から加工用強度のレーザ光が出射されるタイミングまでのタイミングずれの検出を行い、
前記発光信号供給タイミング調整ステップは、前記ローレベル期間設定後のタイミングずれの検出が行われたときに、そのタイミングずれに基づいて前記ローレベル期間を再設定することを特徴とする請求項8または9記載のレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−56561(P2011−56561A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210692(P2009−210692)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】