説明

レーザ加工装置

【課題】 ワークを貫通したレーザ光による不具合を解消するとともに、簡単な構造でありながらワーク平面度を高精度に確保して加工精度を向上させる。
【解決手段】 加工時にレーザ光Lが照射される照射範囲の外側を囲むように開口した開口部11を有するテーブル10と、開口部11内にレーザ光Lの照射方向と交差する方向へ所定間隔ごとに複数配置される支持具20と、開口部11を覆うように支持具20の上に載置され、レーザ光Lを通過させる貫通孔31が所定パターンで設けられたプレート30と、プレート30の下面32に沿って支持具20をレーザ光L照射方向と交差する方向へ移動させる移動手段40とを備え、移動手段40は、支持具20とプレート30の貫通孔31がレーザ光Lの照射方向へ重ならないように支持具20を移動可能であり、支持具20とプレート30の貫通孔31がレーザ光Lの照射方向へ重ならない位置で、レーザ光Lの照射によるワークWの加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシートやその他の可撓性シート等のワークに対してレーザ光を照射して穿孔等の加工を施すレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックグリーンシートやその他の可撓性シート等の薄膜部材をワークとしたレーザ加工では、ハニカムや格子等の形状に形成されたテーブル上にワークを支持してレーザ加工を行うと、レーザ光がワークを容易に貫通するので、貫通したレーザ光がハニカムや格子等のテーブルにも照射され、該テーブルの表面を損傷する不具合が生じるとともに、テーブルの表面でレーザ光が反射してワーク裏面の損傷に繋がる。
さらに、ハニカムや格子等の開口部でワークが撓むことから平面度を確保することが難しく、高精度な加工ができない。
したがって、このようなレーザ加工においては、装置のメンテナンスが頻繁に必要になり、ワークの加工品質が低下するという問題がある。
【0003】
これに対して、下記特許文献1には、レーザビームを用いて可撓性材料に穴加工または切断加工を行なう装置であって、穴加工領域または切断加工領域を包含する空間部を有するテーブルと、テーブルの空間部上に載置され、各穴の位置または各切断位置に対応しかつレーザビームを通過させる複数の貫通穴が設けられた非可撓性の支持板とを備え、支持板上に可撓性材料を載置した状態で穴加工または切断加工を行なうものが提案されている。
【特許文献1】特開平11−58061号公報
【0004】
また、下記特許文献2には、頂部に回転部材を備えた支持棒と、その支持棒を組み付けたハウジングとからなる板材の支持具を、レーザ加工ヘッドの移動経路に対応して、板材の幅方向と板材の送り方向の一方もしくは双方に水平移動可能に取り付けた保持装置を備えたものが提案されている。
【特許文献2】特開平11−192576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1では、特にテーブルの空間部が広がると、支持板が垂れて下方へ撓み易くなり、これに伴って可撓性材料も撓み変形するため、レーザ光の焦点位置にズレが生じて加工精度が低下するという問題があった。
【0006】
また、前述した特許文献2では、可撓性材料からなる板材を撓み変形することなく水平に支持するには多数の支持具を板材の幅方向及び送り方向へ夫々水平移動可能に取り付ける必要があるため、その分だけ構造が複雑化してコスト高になるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。
すなわち、ワークを貫通したレーザ光による不具合を解消するとともに、簡単な構造でありながらワーク平面度を高精度に確保して加工精度を向上させること等が、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるレーザ加工装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
レーザ加工装置において、加工時にレーザ光が照射される照射範囲の外側を囲むように開口した開口部を有するテーブルと、前記開口部内に前記レーザ光の照射方向と交差する方向へ所定間隔ごとに複数配置される支持具と、前記開口部を覆うように前記支持具の上に載置され、前記レーザ光を通過させる貫通孔が所定パターンで設けられたプレートと、前記プレートの下面に沿って前記支持具を前記レーザ光の照射方向と交差する方向へ移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、前記支持具と前記プレートの貫通孔が前記レーザ光の照射方向へ重ならないように前記支持具を移動可能であり、前記支持具と前記プレートの貫通孔が前記レーザ光の照射方向へ重ならない位置で、前記レーザ光の照射による前記ワークの加工を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
前述した特徴を有する本発明は、ワークを貫通したレーザ光による不具合を解消するとともに、簡単な構造でありながらワーク平面度を高精度に確保して加工精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の加工テーブルを示す説明図(図1が縦断正面図、図2が部分的な分解斜視図)である。
本発明の実施形態に係るレーザ加工装置は、加工テーブル10、支持具20、パターンプレート30、移動手段40を主要な構成要素として備えている。
さらに必要に応じて、パターンプレート30上の所定位置にワークWを載置するための位置決め手段50を備えることが好ましい。
【0012】
加工テーブル10は、その中央にレーザ光照射部(図示せず)から照射されるレーザ光Lの照射範囲の外側を囲むように開口した開口部11を有するもので、後述するパターンプレート30の平面的な載置スペースを形成するものである。
これら加工テーブル10及び開口部11は、レーザ光照射部に対して相対的に配置されており、常にレーザ光照射部から照射されるレーザ光Lの光軸が開口部11内を通過するように構成されている。
【0013】
図示の例(図1参照)では、加工テーブル10の底面に整合ピン12を設け、レーザ加工装置の本体60側に形成される凹部61と係合させることで加工テーブル10がセットされ、この本体60に形成される吸塵受け62と、加工テーブル10の開口部11とを連通して、レーザ光LによるワークWのレーザ加工時に生じるガスや屑等が吸引除去されるようにしている。
【0014】
支持具20は、開口部11内にレーザ光Lの照射方向と交差する横方向(水平方向)へ所定間隔ごとに複数配置されて、後述するパターンプレート30を下から支持する板状体又は棒状体である。
支持具20が板状体である場合には、各板状体の間にスペーサー21を該板状体と交差する方向へ配置して、これら板状体とスペーサー21を一体的に組み付け、板状体と交差する方向へ移動可能に支持している。
支持具20の数は多くしてそれらの間隔が狭くなるように配置することが好ましく、さらに該支持具20の少なくとも上部をレーザ光照射部へ向け徐々に肉厚寸法が薄くなるように形成するか、又は全体の肉厚寸法を薄くして、レーザ光照射部から照射されるレーザ光Lと干渉し難くすることが好ましい。
そして、図示の例(図1及び図2参照)では、平面矩形の開口部11に対し、その一辺11Aの方向へ延びて該一辺11Aの全長寸法と略同じ長さを有する薄板状の支持具20と、開口部11の他辺11Bの方向へ延びて該他辺11Bの全長寸法よりも短いスペーサー21とを夫々複数ずつ設け、これらスペーサー21に形成される係合部22に各支持具20を係止させることで、支持具20が等間隔ごとに平行に配置され、他辺11Bへ延びる支持台11C上に摺動可能に載置している。
なお、スペーサー21の係合部22を支持具20の数だけ形成しているが、支持具20の数よりも多く形成して、その任意位置の係合部22に各支持具20を着脱自在に係止させることで選択的に配置することも可能である。
【0015】
また、その他の例として、スペーサー21が開口部11の4辺11A,11Bに沿って隙間を空けて配置され、これらに亘って薄板状の支持具20を井桁状に組み、平行に並んだ一方の支持具20を、それらと直交して並んだ他方の支持具20に対し移動可能に支持するか、或いは井桁状に組まれた支持具20全体を移動可能に支持することも可能である。
さらに、その他の例として、スペーサー21としてブロック状に分割されたスペーサーブロックを使用し、これらスペーサーブロックの間に薄板状の支持具20を挟持するとともに、これらスペーサーブロック及び支持具20を一体的に移動させるように支持することも可能である。
【0016】
パターンプレート30は、セラミックグリーンシートやその他の可撓性シート等の薄板であり、加工テーブル10の開口部11よりも大きくて、ワークWと略同じ大きさ又はそれより大きく形成される。
パターンプレート30は、加工テーブル10の開口部11を覆うように各支持具20の上に載置されて、その上面がワークWの平面的な載置スペースを形成するとともに、レーザ光照射部から照射されたレーザ光Lを通過させる貫通孔31が設けられる。
この貫通孔31は、ワークWにレーザ加工される孔W1と対応した位置に同じパターンで形成される。
すなわち、パターンプレート30には、その上に載置したワークWにレーザ加工される孔W1の加工パターンとレーザ光Lの光軸方向へ重なり合うように貫通孔31が開穿される。
そのため、ワークWにレーザ加工される孔W1の加工パターンが換わる度に、それに対応して貫通孔31が開穿されたパターンプレート30を別個に用意する必要がある。
図示の例(図1参照)では、パターンプレート30貫通孔31及びワークWの孔W1が円形で、支持具20の軸方向(開口部11の一辺11Aの方向)及びそれと直交する方向(開口部11の他辺11Bの方向)へ夫々等間隔ごとに開穿している。
【0017】
移動手段40は、パターンプレート30の下面33に沿って各支持具20を前記レーザ光Lの照射方向と交差する方向へ移動させるものである。
移動手段40は、手動操作により各支持具20をパターンプレート30の貫通孔31とレーザ光Lの照射方向へ重ならないように移動させて微調整するか、又はパターンプレート30の貫通孔31の位置をセンサーなどの検出手段(図示せず)で検出し、それに基づいて各支持具20をパターンプレート30の貫通孔31とレーザ光Lの照射方向へ重ならないように自動的に調整移動させて微調整する。
図示の例(図1参照)では、移動手段40としてスペーサー21の一端に当接する調整ネジ部41と、スペーサー21の他端に当接する押圧部42と、この押圧部42をスペーサー2の他端へ向けて押圧するスプリングなどの弾性体43を備え、ネジ部41を進退移動させることで、スペーサー21とともに各支持具20を平行状態のまま往復動させている。
【0018】
そして、移動手段40により各支持具20をパターンプレート30の貫通孔31とレーザ光Lの照射方向へ重ならないように移動させた状態で、レーザ光照射部が作動を開始するように制御し、パターンプレート30に予め形成される加工パターンと同じようにワークWへ向けレーザ光Lを照射して加工が行われる。
なお、センサーなどの検出手段でパターンプレート30の貫通孔31と各支持具20とを位置検出し、この位置検出データに基づき移動手段40を自動制御して、各支持具20と貫通孔31がレーザ光Lの照射方向へ重ならないように移動させた後に、レーザ光照射部の作動を開始させるようにすることも可能である。
また、ワークWにレーザ加工される孔W1の加工パターンが換わった時には、それと対応する位置に貫通孔31が開穿されたパターンプレート30に交換し、移動手段40により該パターンプレート30の貫通孔31とレーザ光Lの照射方向へ重ならないように各支持具20を移動させ、その後に、レーザ光照射部の作動が開始されてワークWのレーザ加工を行う。
【0019】
このような実施形態によると、レーザ光LによるワークWのレーザー加工時には、各支持具20がパターンプレート30の貫通孔31とレーザ光Lの照射方向へ重ならない位置に退避されるため、ワークWを貫通したレーザ光が各支持具20の表面を損傷させる不具合や各支持具20で反射してワークWを損傷させる不具合は起こらない。
そして、パターンプレート30とワークWは、開口部11をよりも狭く区切った各支持具20で下から支持されているため、ワークWが垂れて撓み変形しなくなり、簡単な構造でありながらワークWの平面度を高精度に確保して加工精度を向上させることができる。
【0020】
さらに、パターンプレート30は、ワークWにレーザ加工される孔W1の加工パターンごとに作成して用意する必要があるものの、貫通孔31の加工方法としてはエッチング工法や機械加工等を利用してパターンプレート30が製作できるため、低コスト化が可能である。
また、ワークWの加工パターンが換わっても、それ専用のパターンプレート30を交換すれば良いので、加工パターンの変更作業が容易である。
【0021】
位置決め手段50は、加工テーブル10の開口部11に対してパターンプレート30を位置決めするとともに、該パターンプレート30上の所定位置にワークWを載置するためガイドである。
図示の例(図1参照)では、位置決め手段50として開口部11の開口縁に額縁状の凹部51を凹設し、この凹部51にパターンプレート30の外側面32とワークWの外側面W2を夫々突き当てることで、加工テーブル10の開口部11に対しパターンプレート30とワークWを着脱自在に位置決めしている。
また、その他の例として、凹部51にパターンプレート30やワークWの整合穴に対する整合ピンを設けることで、パターンプレート30やワークWを位置決め整合したり、上下方向のみにパターンプレート30やワークWと着脱自在に嵌合する凹凸部を設けることも可能である。
【0022】
さらに、凹部51にパターンプレート30やワークWを吸着するためのエアー吸引通路を設けることも可能である。
このような例によると、前述の特徴に加えて、レーザ光Lの照射によるワークWのレーザ加工時に、パターンプレート30やワークWの浮きを減少させ、それによりレーザ光の焦点位置がズレなくなって加工精度を向上することができる。
さらに、吸引源からエアー吸引通路への吸引作動を停止すれば、開口部11からパターンプレート30やワークWを容易に着脱できて、ワークWの加工パターンの変更に伴って、それ専用のパターンプレート30とワークWを容易に交換できて、加工パターンの変更作業が更に容易になるという利点がある。
【0023】
なお、前述した実施形態では、支持具20が板状体である場合を説明したが、これに代えて、この薄板体の全長方向へ棒状の支持具を所定間隔毎に複数配置しても良い。
その具体例としては、複数のスペーサーに亘って杆材を横架し、この杆材の上面に棒状の支持具を所定間隔毎に立設し、これら棒状の支持具の上端部をパターンプレート30の下面33に当接させる。
さらに、ワークWにレーザ加工される孔W1の加工パターンが換わった時には、この加工パターンと対応するパターンプレート30に代え、その加工パターンを回避するように各支持具20を移動調整するが、ワークWの加工パターンによっては、このような移動調整だけではいくつかの支持具20が回避できないことも考えられる。
その対処方法としては、予め各支持具20の配置間隔が異なるスペーサー21を複数用意しておき、必要に応じて交換するか、又はスペーサー21に対して該当位置の支持具20を位置変更したり、若しくは該当箇所の支持具20のみをスペーサー21から取り外すなどが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の加工テーブルを示す説明図(縦断正面図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の加工テーブルを示す説明図(部分的な分解斜視図)である。
【符号の説明】
【0025】
L レーザ光 W ワーク
W3 外周部 10 テーブル
11 開口部 20 支持具
30 プレート 32 下面
40 移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工時にレーザ光(L)が照射される照射範囲の外側を囲むように開口した開口部(11)を有するテーブル(10)と、
前記開口部(11)内に前記レーザ光(L)の照射方向と交差する方向へ所定間隔ごとに複数配置される支持具(20)と、
前記開口部(11)を覆うように前記支持具(20)の上に載置され、前記レーザ光(L)を通過させる貫通孔(31)が所定パターンで設けられたプレート(30)と、
前記プレート(30)の下面(32)に沿って前記支持具(20)を前記レーザ光(L)の照射方向と交差する方向へ移動させる移動手段(40)とを備え、
前記移動手段(40)は、前記支持具(20)と前記プレート(30)の貫通孔(31)が前記レーザ光(L)の照射方向へ重ならないように前記支持具(20)を移動可能であり、
前記支持具(20)と前記プレート(30)の貫通孔(31)が前記レーザ光(L)の照射方向へ重ならない位置で、前記レーザ光(L)の照射による前記ワーク(W)の加工を行うことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−131662(P2010−131662A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312141(P2008−312141)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(303003225)UHT株式会社 (9)
【Fターム(参考)】