説明

レーザ加工装置

【課題】対物レンズを透過したレーザ光を加工対象部材に安定的且つ容易に合焦点できるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置1は、光源2から出射されたレーザ光の光路上に、レンズ支持部4によって支持された対物レンズ5が配置されている。レンズ支持部4は、椀状の支持部材41と、その開口端面に固定された多孔質材料からなる多孔質部材43を有しており、支持部材41には、給気部から多孔質部材43へと空気を導く空気流路4aが形成されている。空気流路4aに接続された給気ホース44から給気すると、多孔質部材43からは、下方に空気が噴気され、レンズ支持部4が浮上し、支持部材41の内側空間に接続された排気ホース45により排気することにより、レンズ支持部4の高さが安定的に保持される。これにより、対物レンズ5を透過したレーザ光をガラス6に安定的且つ容易に合焦点できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象部材にレーザ光を照射して加工するレーザ加工装置に関し、特に、対物レンズを透過したレーザ光の焦点位置を非接触で調節可能なレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス等の透明な部材の種々の加工において、レーザ光を部材の所定位置に集光させて高エネルギースポットを形成して切断等を行うレーザ加工装置が使用されている。即ち、レーザ加工装置においては、加工対象部材の所定位置にレーザ光の焦点位置が調節(合焦点)される。
【0003】
このレーザ光の合焦点には、主に、以下の2つの手法が採用されている(例えば特許文献1及び2)。図7は、特許文献1に開示された従来のレーザ加工装置における焦点位置の調節機構を示す模式図である。図7に示す従来のレーザ加工装置10においては、光源2から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ7a、結像レンズ3、ビームスプリッタ7b及び対物レンズ5を順次透過して加工対象の例えばガラス6に照射される。結像レンズ3及び対物レンズ5は、夫々、レーザ光の光路上における位置を調節可能に構成されており、結像レンズ3及び対物レンズ5の位置を調節することにより、レーザ光をガラス6の厚さ方向の中央(図7における×印の位置)に集光する。そして、集光位置におけるレーザ光のエネルギー密度を高めた状態で、ガラス6をレーザ加工装置10に対して一定方向に走査(スキャン)することにより、ガラス6を切断することができる。
【0004】
よって、図7に示すレーザ加工装置10においては、対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置がガラス6の厚さ方向の中央となるように、レーザ光の光路上における結像レンズ3及び対物レンズ5の位置が調節される。この結像レンズ3及び対物レンズ5の位置の調節にあたり、特許文献1のレーザ加工装置10には、合焦点検出用の照明8a及びカメラ8bが設けられており、照明8aから出射したレーザ光は、ビームスプリッタ7bの反射透過面で反射され、対物レンズ5を介してガラス6に照射される。そして、ガラス6を反射したレーザ光は、対物レンズ5を透過した後、ビームスプリッタ7bの反射透過面及び結像レンズを透過して、ビームスプリッタ7aの反射透過面に反射された後、合焦点検出用のカメラ8bに入射される。そして、カメラ8bによる検出結果に基づいて、レーザ光の焦点位置が所定の位置にあるか否かを判定し、レーザ光の焦点位置が所定の位置からずれている場合には、所定の位置にレーザ光の焦点位置が移動されるように、結像レンズ3及び対物レンズ5の位置が調節され、レーザ光の焦点位置が校正される。
【0005】
図8は、特許文献2に開示された従来のレーザ加工装置における焦点位置の調節機構を示す模式図である。このレーザ加工装置11には、レーザ変位計9が設けられており、レーザ変位計9による測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置が所定の位置にあるか否かを判定し、レーザ光の焦点位置が所定の位置からずれている場合には、所定の位置にレーザ光が合焦点するように、結像レンズ3及び対物レンズ5の位置が調節され、レーザ光の焦点位置が校正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−193286号公報
【特許文献2】特開2006−119210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のように、加工対象部材へのレーザ光の合焦点に照明及びカメラを採用した場合、結像レンズ3及び対物レンズ5を高さ方向にスキャンしていくことにより焦点位置を調節する必要があり、合焦点に必要とするタクトが長くなる。また、焦点位置の調節のみに使用される特殊なカメラ及び照明を導入する必要があり、装置コストも増大するという問題点がある。
【0008】
また、特許文献2のように、レーザ光の焦点位置の調節にレーザ変位計を採用した場合においても、レーザ変位計による測定結果に基づいて、対物レンズを透過したレーザ光の焦点位置を校正する必要があり、校正精度により加工精度が変動しやすいという問題点がある。また、特許文献2においても、高価なレーザ変位計を採用することにより、装置コストが増大するという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、対物レンズを透過したレーザ光を加工対象部材に安定的且つ容易に合焦点できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ光を出射する光源と、前記光源からのレーザ光が入射され透過光を加工対象部材に照射する対物レンズと、この対物レンズを支持するレンズ支持部と、を有し、
前記レンズ支持部は、
開口を下方に向けて配置された椀状の支持部材と、
多孔質材料からなり前記支持部材の開口端面に固定された多孔質部材と、
前記支持部材に設けられた給気部に空気を供給する供給部材と、
前記支持部材に設けられ前記給気部から前記多孔質部材まで空気を導く空気流路と、
前記支持部材に設けられ支持部材の内側空間から空気を排出する排気孔と、
前記排気孔に接続されて空気を吸引する排気部材と、
を有し、
前記空気流路を経て前記多孔質部材に供給された空気を前記多孔質部材から前記加工対象部材に向けて噴気し、前記多孔質部材からの噴気及び前記排気部材による排気により、前記レンズ支持部を前記加工対象部材上に浮上させた状態で、前記対物レンズを透過したレーザ光を前記加工対象部材に合焦点させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る他のレーザ加工装置は、レーザ光を出射する光源と、前記光源からのレーザ光が入射され透過光を加工対象部材に照射する対物レンズと、この対物レンズを支持するレンズ支持部と、を有し、
前記レンズ支持部は、
開口を下方に向けて配置された椀状の支持部材と、
前記支持部材の開口端面に配置され、前記支持部材の開口端面側に空気の導入口が設けられ、前記加工対象部材側に前記導入口に夫々接続された複数個の微細な空気噴出孔が設けられた噴気部材と、
前記支持部材に設けられた給気部に空気を供給する供給部材と、
前記支持部材に設けられ前記給気部から前記噴気部材の前記導入口まで空気を導く空気流路と、
前記支持部材に設けられ支持部材の内側空間から空気を排出する排気孔と、
前記排気孔に接続されて空気を吸引する排気部材と、
を有し、
前記空気流路を経て前記噴気部材に供給された空気を前記噴気部材の前記空気噴出孔から前記加工対象部材に向けて噴気し、前記噴気部材からの噴気及び前記排気部材による排気により、前記レンズ支持部を前記加工対象部材上に浮上させた状態で、前記対物レンズを透過したレーザ光を前記加工対象部材に合焦点させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置は、例えば更に、前記光源と前記対物レンズとの間に配置された結像レンズを有し、この結像レンズの位置を前記レーザ光の光路上で移動させることにより、前記対物レンズを透過したレーザ光の焦点位置を調節可能である。この場合に、例えば前記結像レンズは前記光源からのレーザ光を平行光にして透過させる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置は、例えば、更に、前記加工対象部材に照射したレーザ光の反射光が前記対物レンズを透過して前記光源側に集光されるべき位置に配置された光検出器を有し、この光検出器に前記反射光が集光されるように前記レンズ支持部の位置が調節される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレーザ加工装置は、対物レンズを支持するレンズ支持部が開口を下方に向けて配置された椀状の支持部材を有し、この支持部材の開口端面に多孔質材料からなる多孔質部材が固定されているか、又は複数個の微細な空気噴出孔が形成された噴気部材が配置されており、支持部材には、給気部及び排気孔が設けられ、給気部から多孔質部材又は噴気部材の導入口まで空気を導く空気流路が設けられている。そして、供給部材により給気部に空気を供給することにより、空気流路を経て多孔質部材又は噴気部材に供給された空気を噴気し、排気部材により空気を吸引することにより、支持部材の内側空間から空気を排出し、多孔質部材又は噴気部材からの噴気及び排気部材による排気により、レンズ支持部を加工対象部材上に浮上させた状態で、対物レンズを透過したレーザ光を加工対象部材に合焦点させる。これにより、本発明のレーザ加工装置は、対物レンズ及びレンズ支持部を噴気により浮上させ、排気による空気の吸引によりその位置を安定的に保持でき、対物レンズを透過したレーザ光を加工対象部材に安定的に合焦点できる。また、供給部材からの給気及び排気部材の排気のみによりレーザ光を加工対象部材に合焦点させるため、給気及び/又は排気を調節するだけで、加工対象部材に対するレーザ光の合焦点を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工装置において、レンズ支持部4を接続する構成を一例として示す図である。
【図3】複数個の微細な噴出口が形成された噴気部材を一例として示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。
【図7】従来のレーザ加工装置における焦点位置を調節する機構を示す模式図である。
【図8】他の従来のレーザ加工装置における焦点位置を調節する機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置1は、光源2から出射されたレーザ光の光路上に2枚の凸レンズ3a及び3bにより構成された結像レンズ3が配置されており、更にレーザ光の光路上における下流には、対物レンズ5が配置されている。そして、対物レンズ5はレンズ支持部4により支持されている。
【0017】
光源2は、例えばNd:YAGレーザ光源であり、加工対象部材の例えばガラス6を切断するレーザ光として、例えば周期が1μm以下のパルスレーザ光を例えば平行光として出射する。
【0018】
結像レンズ3には、光源2からのレーザ光が入射され、入射光がレーザ光の光路上における上流側の凸レンズ3aに透過されることにより、凸レンズ3aを透過したレーザ光は、集光された後、拡散し、下流側の凸レンズ3bに入射される。これらの2枚の凸レンズ3a,3bに透過されることにより、レーザ光の光軸に垂直な面内における照射面積が変化する。また、凸レンズ3a,3bの少なくとも一方のレンズは、光軸に平行な方向における位置を移動可能に構成されており、これにより、2枚の凸レンズ3a,3b間にレーザ光が集光される位置が変化し、また、結像レンズ3を透過したレーザ光は、その光軸に垂直な面内における照射面積が変化する。即ち、結像レンズ3は、凸レンズ3a,3bの位置を調節することにより、透過光の進行方向が変化し、これにより、レーザ光の照射面積が変更可能に構成されている。
【0019】
対物レンズ5は、一般的に使用されている凸レンズであり、結像レンズ3からの入射光を加工対象のガラス6へ向けて透過させる。本実施形態においては、対物レンズ5はその周縁を略円筒状の支持体50により支持されている。対物レンズ5を支持するレンズ支持部4は、例えばアルミニウム部材又はアルミニウム部材を更に加工した部材であって、椀状に形成された支持部材41を有し、その開口が下方に向けて配置されている。そして、支持部材41の開口端面には、多孔質材料からなる多孔質部材43が固定されている。上方へ向けて湾曲した支持部材41の底部には、対物レンズ5用の支持体50を挿通させるための孔が設けられており、この孔に支持体50が挿通され、支持体50の外面と支持部材41との間の気密性が確保された状態で、支持体50が支持部材41に固定されている。そして、結像レンズ3の透過光が対物レンズ5に入射されるように、結像レンズ3の下方に、レンズ支持部4が配置され、多孔質部材43の下面及び支持部材41の内面がガラス6と向かい合うように配置される。
【0020】
図1に示すように、支持部材41の内部には、支持部材41の開口端面に固定された多孔質部材43の上面へと繋がる空気流路4aが形成されており、支持部材41の外面から空気流路4aへと接続される給気用の孔(本発明における給気部)が設けられている。そして、この給気孔41aに給気ホース44(本発明における供給部材)が接続されている。給気ホース44の他端は、例えばコンプレッサ等の圧縮空気を供給する装置に接続されている。また、支持部材41には、椀状に形成された内側の空間と外面とを結ぶように排気孔41bが設けられており、この排気孔41bに排気ホース45(本発明における排気部材)が接続されている。排気ホース45の他端は、例えば真空ポンプ等の吸引装置に接続されている。
【0021】
支持部材41の開口端面に固定された多孔質部材43は、例えば多孔質グラファイト、多孔質セラミックス、多孔質樹脂又は焼結金属等により形成されており、これにより、多孔質部材43は、その内部の隙間を介して、空気流路に面する上面側とガラス6に面する下面側とが連通している。よって、空気流路4aに給気ホース44から圧縮空気が給気されることにより、その正圧に対応した空気が多孔質部材43の下面から均一に噴気されるように構成されている。また、排気ホース45から支持部材41の内側空間の空気を排気することにより、支持部材41の内側空間は大気圧に対して負圧となり、ガラス6の表面から空気が吸引される。このように、多孔質部材43による噴気と排気ホース45による排気とを同時に進行させることにより、噴気による正圧によって対物レンズ5をレンズ支持部4と共にガラス6上に浮上させた状態で、排気ホース45による排気により、ガラス6上における対物レンズ5及びレンズ支持部4の位置が安定的に保持される。
【0022】
即ち、本実施形態においては、給気ホース44により供給する空気の圧力及び排気ホース45により排気する空気の圧力を調節することにより、対物レンズ5の高さ方向の位置を非接触で調節することができ、これにより、対物レンズ5を透過したレーザ光を加工対象部材に容易に合焦点することができる。
【0023】
図2は、本実施形態のレーザ加工装置において、レンズ支持部4とその他の構成とを接続する構成を一例として示す図である。但し、図2に示す例は一例であり、対物レンズ5及びレンズ支持部4を加工対象部材上に浮上させた状態で、対物レンズを透過したレーザ光の焦点位置を調節可能に構成されている限り、本発明は、この態様に限定されない。図2に示すように、レンズ支持部4には、支持部材41から上方に延出するように、3本の支持棒46が固定されている。また、結像レンズ3は、例えば2個の凸レンズ3a,3bをその周縁で支持する円筒状の枠体30を有し、この枠体30の側面には3本の突起30aが設けられている。支持棒46には、支持部材41に対して逆側の端部に長円形又は楕円形の孔46aが設けられており、この孔46aに前記結像レンズ3の枠体30に設けられた突起30aが遊嵌されている。これにより、対物レンズ5及びレンズ支持部4は、支持棒46の孔46aの大きさの範囲内で、結像レンズ3に対して自在に上下動可能であり、給気ホース44からの圧縮空気の圧力及び排気ホース45による排気圧力を変化させても、対物レンズ5及びレンズ支持部4は、光軸に平行な方向にのみ移動する。
【0024】
給気ホース44により供給する空気の圧力及び排気ホース45により排気する空気の圧力は、例えば予めガラス6の板厚等により測定された最適な圧力に設定することにより、レーザ光の最適な焦点位置を調節することができる。よって、本実施形態によれば、板厚が異なるガラス6を切断する際においても、レーザ光をガラス6の最適な位置に合焦点させることができ、切断速度が早く、加工効率を向上させることができる。
【0025】
本実施形態においては、上述の如く、結像レンズ3の各凸レンズ3a,3bは、レーザ光の光軸に平行な方向における位置を移動可能に構成されているため、対物レンズ5に対するレーザ光の入射角も各凸レンズ3a,3bにより変化し、これにより、対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置も変わる。よって、前記給気圧力及び排気圧力は、ガラス6の板厚に加えて、結像レンズ3の各凸レンズ3a,3bの位置に応じて、予め測定された最適な圧力に設定することにより、上記本実施形態の効果を得ることができる。
【0026】
次に、本実施形態のレーザ加工装置の動作について説明する。先ず、レーザ加工装置1の所定位置に切断対象の大型のガラス6の切断開始部位を配置する。次に、給気ホース44の他端に接続されたコンプレッサを駆動させると共に、排気ホース45の他端に接続された真空ポンプを駆動させる。このとき、給気ホース44による給気圧力及び排気ホース45による排気圧力は、ガラス6の板厚に応じて設定する。例えば結像レンズ3の各凸レンズ3a,3bの位置を調節する場合には、給気ホース44による給気圧力及び排気ホース45による排気圧力は、ガラス6の板厚に加えて、結像レンズ3の各凸レンズ3a,3bの位置に応じて、予め測定された最適な圧力に設定する。
【0027】
給気ホース44による給気が開始されると、図1に示すように、レンズ支持部4の支持部材41の内部に形成された空気流路4aには、圧縮空気が供給され、空気流路4a内に充填される。支持部材41の開口端面には、多孔質材料からなる多孔質部材43が固定されているため、空気流路4a内の圧縮空気は、多孔質部材43の上面へと導かれた後、多孔質部材43の内部の隙間を介して、多孔質部材43の下面から下方へと均一に噴気される。これにより、レンズ支持部4をガラス6から遠ざける方向の力が作用し、対物レンズ5はレンズ支持部4と共に、ガラス6上で浮上する。このとき、図2に示すように、レンズ支持部4には、支持部材41から上方に延出する支持棒46が固定されており、その端部に設けられた孔46aに結像レンズ3の枠体30に設けられた突起30aが遊嵌されているため、対物レンズ5及びレンズ支持部4は、レーザ光の光軸に平行な方向にのみ移動する。
【0028】
また、排気ホース45による排気により、椀状の支持部材41の内側空間の空気が徐々に吸引されていき、支持部材41の内側空間の圧力が大気圧に対して負圧となる。これにより、支持部材41には、レンズ支持部4をガラス6側へと引き寄せる方向の力が作用する。よって、ガラス6上における対物レンズ5及びレンズ支持部4の高さが安定的に保持され、給気ホース44により供給される空気の圧力と排気ホース45により排気される空気の圧力とが平衡となる高さで静止する。即ち、この高さは、対物レンズ5を透過したレーザ光が、ガラス6の板厚方向における中央に集光される高さであり、その焦点位置は、ガラス6を切断する際に、最適な切断速度が得られる位置である。
【0029】
この状態で、光源2からレーザ光を出射させる。光源2から出射されたレーザ光は、先ず、結像レンズ3の上方の凸レンズ3aに入射し、凸レンズ3aを透過した後、集光され、拡散されて下方の凸レンズ3bに入射される。そして、光軸に垂直な面内における照射面積が拡大されたレーザ光は、レンズ支持部4に支持された対物レンズ5に入射し、透過されて、ガラス6へ向けて集光されていく。
【0030】
本実施形態においては、対物レンズ5及びレンズ支持部4は、多孔質部材43からの噴気及び排気ホース45による排気によって高さが調節され、対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置がガラス6の板厚方向における中央となる。よって、集光位置におけるレーザ光のエネルギー密度が高まり、ガラス6は、板厚方向の中央部を起点として切断される。
【0031】
この状態で、ガラス6をレーザ加工装置1に対してスキャンしていくと、そのスキャン方向に沿って、ガラスが切断されていく。この際、レンズ支持部4の位置は、ガラス6のスキャンに影響されることはなく、対物レンズ5の位置は精度よく安定的に保持される。よって、ガラス6に対するレーザ光の集光位置が固定され、ガラス6を安定的に高い加工効率で切断することができる。例えば、ガラス6の表面に埃等が付着していても、本実施形態においては、レーザ光の焦点位置を非接触式に調節するため、埃等の付着物によって焦点位置がずれることもない。なお、本実施形態においては、圧縮空気を噴気させているため、ガラス6の表面の微小な付着物は、加工対象領域から吹き飛ばされやすく、加工精度に影響を及ぼす虞も少ない。
【0032】
なお、本実施形態のように、結像レンズ3が設けられている場合においては、対物レンズ5の透過光の焦点位置は、結像レンズ3の各凸レンズ3a,3bによっても調節することができ、対物レンズ5及びレンズ支持部4の高さを大きく調節する必要がある場合には、給気ホース44により供給する空気の圧力及び排気ホース45による排気圧力に加えて、結像レンズ3の各凸レンズ3a,3bの光軸に沿った位置を調節してもよい。この結像レンズ3は、特に必要がない場合は、設けられていなくてもよい。
【0033】
また、本実施形態においては、レーザ加工装置1によりガラス6を切断する場合について説明したが、本発明は、加工対象部材に照射するレーザ光の焦点位置を調整する場合に広く適用できるものであり、加工対象部材の種類及び加工方法によって、限定されるものではない。同様に、本実施形態における光源の種類及びレーザ光の波長等も、一例である。
【0034】
更に、本実施形態においては、支持部材41の開口端面に多孔質材料からなる多孔質部材43が固定され、この多孔質部材43の内部の隙間を介して、空気を下方に噴気させる場合を説明したが、図3に示すように、多孔質部材43に代えて、以下のような構成を有する噴気部材46が支持部材41の開口端面に配置されている場合においても、本実施形態と同様の効果が得られる。即ち、噴気部材46は、その上方の支持部材41側の表面に、空気の導入口46aが形成され、導入口46aは、支持部材41の空気流路4aに接続されている。また、噴気部材46は、導入口46aに夫々接続されるように、下方のガラス6側の表面には、複数個の微細な空気噴出孔46bが形成されている。これにより、上記多孔質部材43の場合と同様に、空気流路4aを介して導入口46aに導かれた空気は、空気噴出孔46bを介してガラス6に噴気される。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図4は本発明の第2実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。図4に示すように、本実施形態におけるレーザ加工装置の各構成は、第1実施形態と同一であるが、本実施形態においては、結像レンズ3は、光源2から入射されたレーザ光を平行光として透過させる。これにより、対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置はレンズ支持部4の高さのみによって調節可能となり、合焦点できる高さの範囲が第1実施形態に比して狭くなるが、対物レンズ5には常に平行光のレーザ光が入射されるため、対物レンズ5固有の焦点位置と対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置とが一致し、また、給気ホース44により供給される空気の圧力及び排気ホース45による排気圧力を結像レンズ3の各凸レンズ3a,3bの位置により調節する必要がなく、焦点位置の調節が容易である。
【0036】
なお、本実施形態におけるレーザ加工装置の動作は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図5は本発明の第3実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。図5に示すように、本実施形態においては、第1及び第2実施形態の結像レンズ3に代えて、ビームスプリッタ7cが設けられている。そして、光源2から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ7cに透過される。一方、ビームスプリッタ7cは、切断対象のガラス6に照射されたレーザ光の反射光が対物レンズ5に透過された後、再度入射された場合、反射光をその反射透過面で反射させるように構成されている。また、本実施形態においては、図5に示すように、ビームスプリッタ7cによる反射光が集光されるべき位置にピンホールが設けられたピンホール部材13と、ピンホール部材13のピンホールを透過したレーザ光を受光する点検出カメラ12が設けられている。
【0038】
本実施形態においては、ピンホール部材13及び点検出カメラ12が設けられていることにより、ガラス6の所定の位置にレーザ光が照射された場合には、その反射光がピンホール部材13のピンホールの位置に集光されてこれを透過し、点検出カメラ12により検出可能に構成されている。一方、ガラス6へのレーザ光の照射位置が所定の位置からずれている場合においては、図5に破線で示すように、ガラス6を反射したレーザ光の集光位置は、その光路上において、ピンホール部材13よりも上流側となる。よって、ピンホール部材13の透過光は、ピンホール部材13による絞りによりその照度が低下し、点検出カメラ12により検出される像も焦点がずれたものとなる。
【0039】
本実施形態においては、ピンホール部材13及び点検出カメラ12を設けることにより、対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置が所定の位置にあることを検出することができる。対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置が所定の位置からずれている場合においては、給気ホース44により供給される空気の圧力及び排気ホース45による排気圧力又はいずれか一方の圧力を調節することにより、焦点位置を補正する。例えば図5に破線で示すように、レーザ光の焦点位置が所定の位置よりも高い場合には、例えば給気ホース44により供給する空気の圧力を弱めるか、又は排気ホース45による排気圧力を強めることにより、対物レンズ5及びレンズ支持部4の高さを低くする。そして、ガラス6の所定の位置に対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置が補正された場合には、ガラス6により反射された光がピンホール部材13のピンホールの位置に集光され、点検出カメラ12に入射する。よって、点検出カメラ12により検出される光は照度が高く、鮮明な像が検出される。
【0040】
なお、本実施形態においては、給気ホース44により供給する空気の圧力及び/又は排気ホース45による排気圧力を調整することによりレーザ光の焦点位置を補正する場合を述べたが、第1実施形態と同様に、レーザ光の光路上に結像レンズ等の光学系を設け、これにより、対物レンズ5を透過したレーザ光の焦点位置を補正できるように構成してもよい。但し、この場合には、ガラス6による反射光の焦点位置も変化するため、結像レンズの凸レンズの移動と同時に、ピンホール部材13及び点検出カメラ12の位置も調整する必要がある。
【0041】
次に、本発明の第4実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図6は本発明の第4実施形態に係るレーザ加工装置を示す模式図である。図6に示すように、本実施形態のレーザ加工装置1cにおいては、光源2と対物レンズ5との間に結像レンズ3cが配置されており、光源2と結像レンズ3cとの間及び結像レンズ3cと対物レンズ5との間には、夫々ビームスプリッタ7c,7dが配置されている。また、光源2側のビームスプリッタ7cの側方には、第3実施形態と同様に、ピンホール部材13及び点検出カメラ12が設けられており、この点検出カメラ12により合焦点を検出可能に構成されている。本実施形態においては、対物レンズ5側のビームスプリッタ7dの側方に照明14が設けられており、照明14から出射された照明光をビームスプリッタ7dの反射透過面で反射させて、対物レンズ5を介して、ガラス6に照射することにより、レーザ光の焦点位置付近の照度を高めている。更に、本実施形態においても、結像レンズ3cは、レーザ光の光軸に平行な方向における位置を移動可能に構成されており、図6に示すように、光源2から出射したレーザ光を平行光にして透過させる。
【0042】
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1cにおいては、第2実施形態及び第3実施形態の双方の効果が得られる。また、結像レンズ3cにより、光源2からのレーザ光を平行光にして透過させることにより、ガラス6による反射光の焦点位置が特定の位置に定まり、レンズ支持部4の位置を変更してレーザ光の焦点位置を調節した場合においても、ピンホール部材13及び点検出カメラ12の位置を調整する必要はない。
【符号の説明】
【0043】
1,10,11:レーザ加工装置、2:光源、3:結像レンズ、4:レンズ支持部、41:支持部材、4a:空気流路、43:多孔質部材、44:給気ホース、45:排気ホース、46:噴気部材、5:対物レンズ、6:ガラス(加工対象部材)、7a,7b,7c,7d:ビームスプリッタ、8a:(合焦点用)照明、8b:(合焦点用)カメラ、9:レーザ変位計、12:点検出カメラ、13:ピンホール部材、14:照明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、前記光源からのレーザ光が入射され透過光を加工対象部材に照射する対物レンズと、この対物レンズを支持するレンズ支持部と、を有し、
前記レンズ支持部は、
開口を下方に向けて配置された椀状の支持部材と、
多孔質材料からなり前記支持部材の開口端面に固定された多孔質部材と、
前記支持部材に設けられた給気部に空気を供給する供給部材と、
前記支持部材に設けられ前記給気部から前記多孔質部材まで空気を導く空気流路と、
前記支持部材に設けられ支持部材の内側空間から空気を排出する排気孔と、
前記排気孔に接続されて空気を吸引する排気部材と、
を有し、
前記空気流路を経て前記多孔質部材に供給された空気を前記多孔質部材から前記加工対象部材に向けて噴気し、前記多孔質部材からの噴気及び前記排気部材による排気により、前記レンズ支持部を前記加工対象部材上に浮上させた状態で、前記対物レンズを透過したレーザ光を前記加工対象部材に合焦点させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
レーザ光を出射する光源と、前記光源からのレーザ光が入射され透過光を加工対象部材に照射する対物レンズと、この対物レンズを支持するレンズ支持部と、を有し、
前記レンズ支持部は、
開口を下方に向けて配置された椀状の支持部材と、
前記支持部材の開口端面に配置され、前記支持部材の開口端面側に空気の導入口が設けられ、前記加工対象部材側に前記導入口に夫々接続された複数個の微細な空気噴出孔が設けられた噴気部材と、
前記支持部材に設けられた給気部に空気を供給する供給部材と、
前記支持部材に設けられ前記給気部から前記噴気部材の前記導入口まで空気を導く空気流路と、
前記支持部材に設けられ支持部材の内側空間から空気を排出する排気孔と、
前記排気孔に接続されて空気を吸引する排気部材と、
を有し、
前記空気流路を経て前記噴気部材に供給された空気を前記噴気部材の前記空気噴出孔から前記加工対象部材に向けて噴気し、前記噴気部材からの噴気及び前記排気部材による排気により、前記レンズ支持部を前記加工対象部材上に浮上させた状態で、前記対物レンズを透過したレーザ光を前記加工対象部材に合焦点させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
更に、前記光源と前記対物レンズとの間に配置された結像レンズを有し、この結像レンズの位置を前記レーザ光の光路上で移動させることにより、前記対物レンズを透過したレーザ光の焦点位置を調節可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記結像レンズは前記光源からのレーザ光を平行光にして透過させることを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
更に、前記加工対象部材に照射したレーザ光の反射光が前記対物レンズを透過して前記光源側に集光されるべき位置に配置された光検出器を有し、この光検出器に前記反射光が集光されるように前記レンズ支持部の位置が調節されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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