説明

レーザ加工装置

【課題】データテーブルを有することなく、簡易に可視光レーザの照射位置の補正精度を向上させることができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】加工用レーザをfθレンズ20によって収束させて加工対象物Wに照射することにより加工対象物Wに対して加工を行うレーザ加工装置10であって、ガイド用レーザを出射するガイド用レーザ光源14と、加工用レーザとガイド用レーザとが同軸上になるように、ガイド用レーザを案内するビームコンバイナ16と、加工用レーザ及びガイド用レーザを走査させる光走査部18と、光走査部18を駆動制御させる光走査制御部58と、fθレンズ20の中心に入射する加工用レーザの加工対象物W上の照射位置を原点として、半径方向にずれる加工用レーザの照射位置とガイド用レーザの照射位置とのズレ量を算出するズレ量算出部54と、算出されたズレ量を用いてガイド用レーザの照射位置を補正する補正部56とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用レーザを照射することで加工対象物に加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ加工装置においては、加工用レーザを実際に加工対象物に照射する前に、可視光であるガイド光を加工対象物に照射することで、加工用レーザの照射位置と加工対象物との位置合わせや加工サイズの決定を行うことが知られている。
【0003】
また、レーザ加工装置には、レーザを焦点位置に収束させるための収束レンズとして機能するfθレンズが設けられており、fθレンズは、レーザを焦点距離に配置された加工対象物上で結像させて照射点を形成する。この照射点の位置が照射位置となる。
【0004】
この場合は、加工用レーザは、可視光以外の波長(例えば、赤外波長の光)の光が用いられるため、fθレンズにおける可視光レーザの屈折率と加工用レーザの屈折率とが異なる。そのため、可視光レーザの照射位置が加工用レーザの照射位置とズレてしまい、ガイド光としての機能が損なわれてしまう。
【0005】
このような、問題を解決すべく、下記に示す特許文献1には、加工平面上に設定された直交座標系の各格子点における加工用レーザの照射位置と可視光レーザの照射位置とのズレに関するデータを記憶したデータテーブルを有し、ガイド光である可視光の照射位置が格子点と対応する場合は、前記データテーブルにあるデータを用いて該照射位置の補正を行い、ガイド光の照射位置が格子点以外にある場合は、格子点に関するデータを用いた補間によって得られたデータを用いて該照射位置の補正を行う。これにより、ガイド光の照射位置と実際の加工用レーザの照射位置とのズレをなくすというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3494960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術では、データテーブルを作成するために、可視光レーザと加工用レーザとの照射位置を測定しなければならず、手間がかかる。また、fθレンズ毎に測定値が異なるため、レーザ加工装置の初期化やレンズ交換の際には、再び測定しなければならない。さらに、ガイド光の照射位置が、格子点以外にある場合は、格子点に関するデータを用いた補間によって得られたデータを用いて照射位置の補正を行うので、補正精度が下がってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、データテーブルを有することなく、簡易に可視光レーザの照射位置の補正精度を向上させることができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、加工用レーザ出射部から出射される加工用レーザを収束レンズによって収束させて加工対象物に照射することにより、前記加工対象物に対して加工を行うレーザ加工装置であって、前記加工用レーザの照射位置を視覚的に確認するために用いられる可視光の波長帯域のガイド用レーザを出射するガイド用レーザ出射部と、前記加工用レーザと前記ガイド用レーザとが同軸上になるように、前記ガイド用レーザを案内する光案内部と、前記加工用レーザ及び前記ガイド用レーザを走査させる光走査部と、前記光走査部を駆動制御させる光走査制御部と、前記収束レンズの中心に入射する加工用レーザの前記加工対象物上における照射位置を原点として、半径方向にずれる前記加工用レーザの照射位置とガイド用レーザの照射位置とのズレ量を、加工用レーザの照射位置と前記原点との距離である半径のべき級数で級数展開した数式により算出するズレ量算出部と、算出された前記ズレ量を用いて、ガイド用レーザの照射位置を補正する補正部と、を備え、前記光走査制御部は、補正された前記照射位置に基づいて、前記ガイド用レーザを走査させることを特徴とする。
【0010】
前記ズレ量算出部は、下記数1に示す前記級数展開した数式のうち、所定項までを用いてズレ量を算出することを特徴とする。
【0011】
【数1】

(但し、A(r):半径方向のズレ量,K、K、・・・K2n:係数,r:加工用レーザの照射位置と原点との距離)
【0012】
前記ズレ量算出部は、下記数2を用いてズレ量を算出することを特徴とする。
【0013】
【数2】

【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガイド用レーザL2の加工用レーザL1に対する照射位置のズレは、半径方向に発生することに着目し、半径方向にズレる加工用レーザL1の照射位置とガイド用レーザL2の照射位置のズレ量A(r)を、加工用レーザの照射位置と原点との距離である半径のべき級数で級数展開した数式により求めるようにしたので、わざわざ複雑なテーブルを有する必要がなく、簡易にガイド用レーザL2の照射位置の補正精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態のレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】加工パターンデータが同一の場合における、加工用レーザによって加工対象物W上に印字される加工パターンと、ガイド用レーザの走査によって浮かびあがる加工パターンとの一例を示す図である。
【図3】本実施の形態の照射位置の補正を説明するための図である。
【図4】図1に示す制御部の機能ブロック図である。
【図5】印字のシミュレーション時における制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るレーザ加工装置ついて好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0017】
図1は、実施の形態のレーザ加工装置10の概略構成図である。レーザ加工装置10は、加工用レーザ(例えば、気体レーザであるCOガスレーザ、固定レーザであるYAGレーザ等)L1を発生して出射する加工用レーザ光源(加工用レーザ出射部)12と、可視光の波長帯域のレーザ(ガイド用レーザ)L2を発生して出射するガイド用レーザ光源(ガイド用レーザ出射部)14と、加工用レーザL1とガイド用レーザL2とが同軸上になるように、ガイド用レーザL2を案内するビームコンバイナ(光案内部)16と、加工用レーザL1及びガイド用レーザL2を走査させて、加工用レーザL1及びガイド用レーザL2の照射位置を変移させる光走査部18と、加工用レーザL1及びガイド用レーザL2を収束してスポット光とするfθレンズ(収束レンズ)20と、レーザ加工装置10の全体を制御するコンピュータ等の情報処理装置(例えば、CPU)で構成された制御部22とを備える。
【0018】
ビームコンバイナ16は、加工用レーザ光源12が出射した加工用レーザL1を透過して光走査部18に入射させる。また、ビームコンバイナ16は、ガイド用レーザ光源14が出射したガイド用レーザL2を反射させて光走査部18に入射させる。これにより、ビームコンバイナ16は、加工用レーザL1とガイド用レーザL2とを同軸にさせることができる。
【0019】
光走査部18は、入射された加工用レーザL1及びガイド用レーザL2の加工対象物W上における照射位置を変えるものであり、加工対象物W上における照射位置をx軸方向に変えるガルバノスキャナ32xと、照射位置をy軸方向に変えるガルバノスキャナ32yとを備える。ガルバノスキャナ32xは、ガルバノミラー34xと該ガルバノミラー34xを回動可能に支持する駆動モータ36xとを有する。ガルバノスキャナ32yは、ガルバノミラー34yと、該ガルバノミラー34yを回動可能に支持する駆動モータ36yとを有する。ガルバノミラー34yは、ガルバノミラー34xが反射した加工用レーザL1及びガイド用レーザL2が加工対象物Wに入射するように設けられている。ガルバノミラー34yを反射した光は、fθレンズ20を介して加工対象物に入射させる。
【0020】
駆動モータ36xが、ガルバノミラー34xを回動させることで(回動位置を変移させることで)、加工対象物W上における加工用レーザL1及びガイド用レーザL2の照射位置をx軸方向に移動することができる。駆動モータ36yが、ガルバノミラー34yを回動させることで(回動位置を変移させることで)、加工対象物W上における加工用レーザL1及びガイド用レーザL2の照射位置をy軸方向に移動させることができる。このように、駆動モータ36x、36yがガルバノミラー34x、34yを回動させることで、加工対象物W上における加工用レーザL1及びガイド用レーザL2を走査させることができる。
【0021】
fθレンズ20は、fθレンズ20の焦点距離に配置された加工対象物Wの表面上において、入射した加工用レーザL1及びガイド用レーザL2を結像させる。
【0022】
制御部22は、加工用レーザ光源12、ガイド用レーザ光源14、及び駆動モータ36x、36yを駆動制御することで、加工用レーザL1及びガイド用レーザL2を走査して、加工対象物W上に加工用レーザL1及びガイド用レーザL2を照射させる。制御部22は、加工パターンデータ(加工によって印字すべき英数字等の文字、図形、記号等の印字パターン、印字サイズ、印字位置等を示すデータ)に基づく照射位置に、加工用レーザL1が照射されるように駆動モータ36x、36yを駆動制御する。
【0023】
また、制御部22には、入力装置40が接続されており、該入力装置40は、様々なデータを制御部22に入力するためのものであり、ユーザがデータを入力するためのキーボード、マウス、或いはタッチパネル等の入力インターフェースを有する。入力装置40は、パーソナルコンピュータ等で構成されていてもよい。入力装置40は、少なくとも加工パターンデータを制御部22に入力する。
【0024】
記憶部42は、ハードディスクドライブ、ROM、RAM、EEPROM等の情報を記憶することができるものであり、入力装置40によって入力された加工パターンデータを記憶する。記憶部42には、所定のプログラムが記憶されており、制御部22が該所定のプログラムを読み込むことによって、本実施の形態のレーザ加工装置10として機能する。
【0025】
制御部22は、加工用レーザL1を用いてレーザ加工を行う前に、ガイド用レーザL2を用いることで、加工対象物W上にレーザ加工される印字パターンを表示させる。これにより、レーザ加工による印字のシミュレーションを行うことができる。具体的には、制御部22は、入力装置40によって入力された加工パターンデータに基づいて、ガイド用レーザ光源14及び駆動モータ36x、36yを駆動させることで、加工対象物W上にガイド用レーザL2を繰り返し走査させる。ある程度以上に高速で走査を繰り返すことで、加工対象物W上に加工パターンデータに基づく印字パターンが浮かびあがり(描画され)、ユーザは、予めレーザ加工を行う前に(加工パターン加工される印字パターン、その大きさ及び位置等)を加工対象物W上で視認することができる。
【0026】
ユーザは、この加工対象物W上に浮かびあがった印字パターン等を観察して、印字パターン、印字サイズ、印字位置等に問題がないか否かを判断する。印字パターン、印字サイズ、印字位置等が所望するものと異なっている場合は、ユーザは入力装置40に設けられた入力インターフェースを操作することで、加工パターンデータを修正することができる。
【0027】
印字のシミュレーションの終了後に、制御部22は、加工用レーザL1を用いて、加工対象物Wの表面をレーザ加工させて、印字パターンを印字させる。具体的には、制御部22は、入力装置40によって入力された加工パターンデータに基づいて、加工用レーザ光源12及び駆動モータ36x、36yを駆動させることで、加工用レーザL1を走査させて加工対象物Wの表面をレーザ加工する。これにより、加工対象物Wの表面上に加工パターンが印字される。
【0028】
ここで、上述したように、ガイド用レーザL2は、可視光の波長帯域のレーザを用いるため、赤外波長であることが多い加工用レーザL1に比べ、fθレンズ20における屈折率が大きくなる。つまり、fθレンズ20の屈折率は、短波長であるほど大きくなる。これにより、ガイド用レーザL2の加工対象物W上における走査位置と、加工用レーザL1の加工対象物W上の照射位置はズレてしまう。したがって、加工パターンデータが同じであっても、ガイド用レーザL2の走査によって浮かびあがる加工パターンは、実際に加工用レーザL1を走査することで、加工対象物W上に印字される加工パターンとは異なる。
【0029】
図2は、加工パターンデータが同一の場合における、加工用レーザL1によって加工対象物W上に印字される加工パターンと、ガイド用レーザL2の走査によって浮かびあがる加工パターンとの一例を示す図である。
【0030】
実線は加工用レーザL1によって加工対象物W上に印字された加工パターンを示し、点線はガイド用レーザL2によって加工対象物W上に浮かびあがる加工パターンを示している。加工用レーザL1によって印字された加工パターンは、英文字「E」であるが、ガイド用レーザL2によって描画される加工パターンは、「E」という文字が歪んでしまう。また、ガイド用レーザL2は、加工用レーザL1に比べ、fθレンズ20における屈折率が高いので、ガイド用レーザL2によって描画される加工パターンの大きさは、加工用レーザL1によって印字される加工パターンより小さくなる。
【0031】
このガイドレーザL2により描画される加工パターンを加工用レーザL1によって印字される加工パターンと同一にするために、印字のシミュレーションにおいては、加工パターンデータを補正して、駆動モータ36x、36yを駆動させる。
【0032】
図3は、本実施の形態の照射位置の補正を説明するための図である。駆動モータ36x、36yの回動位置が同じ場合に、加工用レーザL1がfθレンズ20を通過して加工対象物W上に照射された照射位置と、ガイド用レーザL2がfθレンズ20を通過して加工対象物W上に照射された照射位置とは、同じであることが好ましいが、fθレンズ20の屈折率の関係でズレてしまう。
【0033】
短波長であるガイド用レーザL2は、加工用レーザL1に比べ、fθレンズ20における屈折率が高くなり、加工用レーザの加工対象物W上の照射位置に比べ内側に屈折する。
【0034】
ガイド用レーザL2の加工用レーザL1に対する照射位置のズレは、fθレンズ20の中心では0と考えられる。つまり、fθレンズ20の中心では屈折率は略同一であり、fθレンズ20の中心に入射したガイド用レーザL2の照射位置と加工用レーザL1の照射位置とは略同一と考えられる。したがって、fθレンズ20の中心に入射した加工用レーザL1の照射位置を原点とし、該原点に遠くなるほど、ガイド用レーザL2の加工用レーザL1に対する照射位置のズレが大きくなる。
【0035】
また、fθレンズ20の波長による屈折率差によって生じる照射位置の位置ズレは、回転対称に発生するので、(x,y)座標ではなく2次元の極座標(r,θ)が適している。fθレンズ20によるガイド用レーザL2の加工用レーザL1に対する照射位置のズレ量Aは、常にr(半径)方向にずれ、θ(回転)方向には殆どずれないと考えられる。したがって、fθレンズ20によるガイド用レーザL2の加工用レーザL1に対する照射位置のズレ量は、A(r)で表すことができる。ズレ量A(r)は、θによらずrのみの関数であることを意味する。
【0036】
ズレ量A(r)をrのべき級数で級数展開すると、以下のように表すことができる。なお、K、K、K、・・・等は係数であり、rは、加工用レーザの照射位置と原点との距離を示す。
【0037】
【数3】

【0038】
ズレ量A(r)は、なめらかな曲面であるfθレンズ20によって発生するものであることを考えると、級数のKには2つの制約がある。第1の制約として、上述したように、fθレンズ20の中心(r=0)ではガイド用レーザL2に対する加工用レーザL1の照射位置のズレ量は0と考えられるため、K=0となる。つまり、fθレンズ20の波長による屈折率差によって生じる照射位置の位置ずれは、回転対称に発生するので回転の中心ではズレ方向が定義できず、方向まで含めたズレ量A(r)がr=0で連続であるためには、r=0で、A(r)の値が0でなければならないからである。
【0039】
第2の制約として、ガイド用レーザL2の加工用レーザL1に対するズレ量A(r)が、y=0のx軸上であり、r>0の場合は、ズレ量A(r)と、ズレ量を(x,y)座標で表したズレ量A(x)とは同じ関数となる。しかし、xの負の領域まで含めて考えると、A(x)は、xの全領域でなめらかであり、且つxの±反転に対して対称でなければならない。したがって、2つの制約を考慮すると、ズレ量A(r)は、以下のように表すことができる。
【0040】
【数4】

【0041】
級数展開の初項のみで十分な精度が得られるため本実施の形態では、ズレ量A(r)は、以下のように表すことができる。
【0042】
【数5】

【0043】
したがって、事前に各fθレンズ20に対してKの値を測定しておけば、任意の照射位置(r,θ)に対するガイド用レーザL2のズレ量を求めることができる。加工用レーザL1を照射位置(r,θ)に照射するのに対し、ガイド用レーザL2を照射位置(r+A(r),θ)に照射するように、駆動モータ36x、36yを駆動させてやれば、加工用レーザL1の照射位置とガイド用レーザL2との照射位置を同じにすることができる。
【0044】
図4は、制御部22の機能ブロック図である。制御部22は、加工パターンデータ取得部50、照射位置算出部52、ズレ量算出部54、補正部56、及び光走査制御部58とを備える。
【0045】
加工パターンデータ取得部50は、入力装置40によって入力された加工パターンデータを取得する。加工パターンデータ取得部50は、取得した加工パターンデータを照射位置算出部52に出力する。
【0046】
照射位置算出部52は、加工パターンデータ(印字パターン、印字サイズ、印字位置等)に基づいて、照射位置(x,y)を複数算出する。この場合、xy座標の原点は、fθレンズ20の中心に入射した加工用レーザL1の照射位置を原点とする。つまり、xy座標上の原点とrθ座標上の原点は同一である。照射位置算出部52は、算出した照射位置をズレ量算出部54及び光走査制御部58に出力する。光走査制御部58は、加工用レーザ光源12を駆動制御するとともに、該算出された複数の照射位置(x,y)に基づいて、光走査部18を駆動制御する。これにより、加工用レーザL1を複数の照射位置(x,y)に照射させることができる。
【0047】
ズレ量算出部54は、算出した照射位置(x,y)に基づいて、ガイド用レーザL2を照射した場合におけるガイド用レーザL2の照射位置のズレ量A(r)を算出する。具体的には、加工用レーザL1の照射位置(x,y)を極座標(r,θ)の座標系に変換する。そして、変換後のrから数5を用いてズレ量A(r)を算出する。xy座標からrθ座標への変換は、x=r×sinθ,y=r×cosθ、の関数を用いて変換することができる。
【0048】
補正部56は、算出されたズレ量A(r)を用いて、照射位置(x,y)を補正する。具体的には、rθ座標における照射位置(r,θ)に、算出したズレ量A(r)を加算して、rθ座標における補正後の照射位置(r´,θ)を算出する。rθ座標における補正後の照射位置(r´,θ)は、(r+A(r),θ)となる。そして、該算出したrθ座標上における補正後の照射位置(r´,θ)をxy座標に変換する。xy座標に変換後の補正後の照射位置(x´,y´)は、(r´cosθ,r´sinθ)となる。補正部56は、補正した照射位置を、光走査制御部58に出力する。
【0049】
光走査制御部58は、ガイド用レーザ光源14を駆動制御するとともに、該算出された複数の補正後の照射位置(x´,y´)に基づいて光走査部18を制御することで、加工パターンデータに基づく照射位置(x,y)にガイド用レーザL2を照射することできる。
【0050】
次に、印字のシミュレーション時における制御部22の動作を図5のフローチャートにしたがって説明する。加工パターンデータ取得部50は、入力装置40によって入力された加工パターンデータを取得する(ステップS1)。
【0051】
次いで、照射位置算出部52は、取得した加工パターンデータに基づいて、xy座標上における照射位置(x,y)を複数算出する(ステップS2)。
【0052】
次いで、ズレ量算出部54は、複数算出したxy座標上の照射位置をrθ座標上の照射位置(r,θ)に変換する(ステップS3)。この変換は、x=r×sinθ、y=r×cosθの関数を用いて変換することができる。
【0053】
次いで、ズレ量算出部54は、ステップS3で変換された複数の照射位置(r,θ)のrから、数5を用いてそれぞれの照射位置(r,θ)におけるズレ量A(r)を算出する(ステップS4)。
【0054】
次いで、補正部56は、それぞれの照射位置(r,θ)と、算出したそれぞれの照射位置(r,θ)におけるズレ量A(r)を用いて、rθ座標上における補正後の照射位置(r´,θ)を複数算出する(ステップS5)。具体的には、rθ座標上における照射位置(r,θ)に算出されたズレ量A(r)を加算して、(r´,θ)を算出する。補正後の照射位置(r´,θ)=(r+A(r),θ)となる。
【0055】
次いで、補正部56は、算出したrθ座標上における補正後の複数の照射位置(r´,θ)をxy座標上の照射位置(x´,y´)に変換する(ステップS6)。xy座標上の照射位置(x´、y´)は、(r´cosθ、r´sinθ)=((r+A(r))cosθ,(r+A(r))sinθ)となる。
【0056】
次いで、光走査制御部58は、補正後の照射位置(x´,y´)に基づいて、ガイド用レーザL2を走査させる(ステップS7)。具体的には、ガイド用レーザ光源14を駆動制御するとともに、補正後の照射位置(x´,y´)に基づいて光走査部18を駆動制御する。これにより、加工パターンデータに基づく複数の照射位置(x,y)にガイド用レーザL2を照射させることができる。
【0057】
印字のシミュレーションが終了すると、光走査制御部58は、加工用レーザ光源12を駆動制御するとともに、複数の照射位置(x,y)に加工用レーザL1が照射されるように光走査部18を駆動制御する。
【0058】
このように、本実施の形態では、ガイド用レーザL2の加工用レーザL1に対する照射位置のズレは、半径方向に発生することに着目し、半径方向にズレる加工用レーザL1の照射位置とガイド用レーザL2の照射位置のズレ量A(r)を、加工用レーザL1の照射位置と前記原点との距離である半径のべき級数で級数展開した数式により求めるようにしたので、わざわざ複雑なテーブルを有する必要がなく、簡易にガイド用レーザL1の照射位置の補正精度を向上させることができる。
【0059】
また、ズレ量A(r)は、級数展開の初項のみを用いて求めることができるので、係数Kを予め測定しておけばよく、わざわざ複雑なテーブルを有する必要がなく、簡易にガイド用レーザL2の照射位置の補正精度を向上させることができる。
【0060】
なお、上記実施の形態では、級数展開の初項のみを用いてズレ量A(r)を算出するようにしたが、所定項まで(例えば、第1項〜第2項まで)を用いて求めるようにしてもよい。この場合であっても、複雑なテーブルを有する必要がなく、簡易にガイド用レーザL2の照射位置の補正精度を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0062】
10…レーザ加工装置 12…加工用レーザ光源
14…ガイド用レーザ光源 16…ビームコンバイナ
18…光走査部 20…fθレンズ
32x、32y…ガルバノスキャナ 34x、34y…ガルバノミラー
36x、36y…駆動モータ 40…入力装置
42…記憶部 50…加工パターンデータ取得部
52…照射位置算出部 54…ズレ量算出部
56…補正部 58…光走査制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用レーザ出射部から出射される加工用レーザを収束レンズによって収束させて加工対象物に照射することにより、前記加工対象物に対して加工を行うレーザ加工装置であって、
前記加工用レーザの照射位置を視覚的に確認するために用いられる可視光の波長帯域のガイド用レーザを出射するガイド用レーザ出射部と、
前記加工用レーザと前記ガイド用レーザとが同軸上になるように、前記ガイド用レーザを案内する光案内部と、
前記加工用レーザ及び前記ガイド用レーザを走査させる光走査部と、
前記光走査部を駆動制御させる光走査制御部と、
前記収束レンズの中心に入射する加工用レーザの前記加工対象物上における照射位置を原点として、半径方向にずれる前記加工用レーザの照射位置とガイド用レーザの照射位置とのズレ量を、加工用レーザの照射位置と前記原点との距離である半径のべき級数で級数展開した数式により算出するズレ量算出部と、
算出された前記ズレ量を用いて、ガイド用レーザの照射位置を補正する補正部と、
を備え、
前記光走査制御部は、補正された前記照射位置に基づいて、前記ガイド用レーザを走査させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記ズレ量算出部は、下記数1に示す前記級数展開した数式のうち、所定項までを用いてズレ量を算出することを特徴とするレーザ加工装置。
【数1】

(但し、A(r):半径方向のズレ量,K、K、・・・K2n:係数,r:加工用レーザの照射位置と原点との距離)
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工装置であって、
前記ズレ量算出部は、下記数2を用いてズレ量を算出することを特徴とするレーザ加工装置。
【数2】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−30251(P2012−30251A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171606(P2010−171606)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000161367)ミヤチテクノス株式会社 (103)
【Fターム(参考)】