説明

レーザ溶接モニタリング装置

【課題】モニタリング光の計測精度を向上し得るレーザ溶接モニタリング装置を提供する。
【解決手段】溶接の加工点30に向ってレーザ光を照射するための照射手段100と、加工点30におけるレーザ光の反射光を含んでいるモニタリング光の計測に基づいて、加工点30における溶着状態を判定する品質判定手段170と、モニタリング光を受光して品質判定手段に入力するための受光手段150と、を有するレーザ溶接モニタリング装置100である。受光手段150は、レーザ光の進行方向と逆方向かつレーザ光と同軸で、照射手段の内部に入射したモニタリング光を集光する集光レンズと、集光されたモニタリング光を品質判定手段170に入力するための出力端子部と、集光レンズが配置される一端部と出力端子部が配置される他端部とを有し、集光されたモニタリング光の光路の外側を取り囲むように延長している円柱状あるいは円錐台状のハウジング部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接モニタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ発振器の品質向上が進み、ビーム品質の良いレーザが開発されており、焦点距離の長い集光レンズを有し、一度に広範囲な領域を加工できるスキャナヘッドが、レーザ溶接に適用されることが多くなっている。その際、溶接が様々な位置でなされるため、モニタリング光(溶接時に生じるプラズマプルーム光や照射レーザの反射光)を、照射レーザ光と同軸から計測(観察)することにより、溶着状態をインプロセスで判定している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−148795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スキャナヘッドの光学系が複雑であるため、スキャナヘッド内部におけるモニタリング光の散乱が大きくなる。散乱光(迷光)は、モニタリング光のノイズ成分として計測されるため、モニタリング光の変化を正確に計測できず、溶着状態による差異が小さくなってしまう。そのため、モニタリングの判定精度が低下し、例えば、良品を不良品と判定してしまう等の問題を生じる。
【0005】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、モニタリング光の計測精度を向上し得るレーザ溶接モニタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、溶接の加工点に向ってレーザ光を照射するための照射手段と、前記加工点における前記レーザ光の反射光を含んでいるモニタリング光の計測に基づいて、前記加工点における溶着状態を判定する品質判定手段と、前記モニタリング光を受光して前記品質判定手段に入力するための受光手段と、を有するレーザ溶接モニタリング装置である。また、前記受光手段は、前記レーザ光の進行方向と逆方向かつ前記レーザ光と同軸で、前記照射手段の内部に入射した前記モニタリング光を集光する集光レンズと、集光された前記モニタリング光を前記品質判定手段に入力するための出力端子部と、前記集光レンズが配置される一端部と前記出力端子部が配置される他端部とを有し、集光された前記モニタリング光の光路の外側を取り囲むように延長している円柱状あるいは円錐台状のハウジング部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハウジング部は円柱状あるいは円錐台状であり、ハウジング部の他端部における出力端子部の周囲には、集光レンズを透過した散乱光の一部が入射する部位が存在するため、出力端子部に入射する散乱光が削減される。つまり、散乱光(迷光)がモニタリング光に混入することが抑制されるため、散乱光に基づくノイズ成分が低減され、モニタリング光の計測精度が向上する。したがって、良好なモニタリング光の計測精度を有するレーザ溶接モニタリング装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための概略構成図である。
【図2】図1に示されるモニタリング光受光部を説明するための断面図である。
【図3】実施の形態1に係る比較例を説明するための断面図である。
【図4】モニタリング光のS/N比を説明するための概念図である。
【図5】実施の形態1に係る変形例1を説明するための断面図である。
【図6】実施の形態1に係る変形例2を説明するための断面図である。
【図7】実施の形態2に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための断面図である。
【図8】実施の形態2に係る比較例を説明するための断面図である。
【図9】図7に示される保護ガラスの角度と反射光強度との関係を説明するためのグラフである。
【図10】実施の形態3に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための断面図である。
【図11】実施の形態3に係る比較例を説明するための断面図である。
【図12】実施の形態4に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための断面図である。
【図13】実施の形態4に係る変形例1を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、実施の形態1に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための概略構成図である。
【0011】
実施の形態1に係るモニタリング装置100は、例えば、自動車の溶接工程に用いられるリモートレーザ溶接における溶着状態をインプロセスで判定するために使用され、スキャナヘッド110と、モニタリング光受光部150と、品質判定部170と、を有する。
【0012】
スキャナヘッド110は、溶接の加工点30に向ってレーザ光を照射するための照射手段であり、レーザ発振器120と、第1光学系130と、第2光学系132と、を有する。スキャナヘッド110は、一度に広範囲な領域を加工するため、例えば、ロボットハンドに取り付けられる。被溶接材は、例えば、板材10,20である。
【0013】
レーザ発振器120は、例えば、YAGレーザ、ファイバーレーザまたはディスクレーザが適用される。第1光学系130は、レーザ発振器120から出力されたレーザ光を平行光に変換するために使用される。第2光学系132は、第1光学系130を通過したレーザ光の進行方向を変更し、溶接の加工点30に向けるために使用され、ベンディングミラー134と、集光光学系(集光レンズ)136と、スキャナミラー138と、保護ガラス141と、を有する。
【0014】
ベンディングミラー134は、第1光学系130を通過したレーザ光の進行方向を変更し(略90度)、集光光学系136に向けるために使用される。集光光学系136は、第1光学系130を通過し平行となったレーザ光を加工点に集光するために使用される。スキャナミラー138は、レーザ光の反射方向を変化させることにより加工エリア内の意図した位置にレーザ光を照射するために使用される。保護ガラス141は、レーザ光の射出口を覆うように配置されており、溶接材料の原子がスキャナヘッド内部に進入することを防ぐことにより、溶接材料のスパッタリングから第1光学系130および第2光学系132を保護している。
【0015】
モニタリング光受光部150は、加工点30におけるレーザ光の反射光およびプラズマプルーム光を含んでいるモニタリング光を受光して、品質判定部170に入力するための受光手段であり、導光部材である光ファイバー102を介して品質判定部170に連結されている。なお、モニタリング光は、レーザ光の進行方向と逆方向かつレーザ光と同軸で、スキャナヘッド内部(第2光学系132)に入射し、ベンディングミラー134を透過したものである。また、レーザ光の反射光は、近赤外域の波長(約1000nm)を有し、プラズマプルーム光は、可視域の波長(約400から800nm)を有する。
【0016】
品質判定部170は、モニタリング光の計測に基づいて、加工点30における溶着状態を判定するために使用される品質判定手段であり、光ファイバー102が連結されるモニタリング光入力部172と、アンプ180と、演算部190と、を有する。
【0017】
モニタリング光入力部172は、反射ミラー174と、光学フィルタ176と、フォトダイオード178と、を有する。反射ミラー174は、光ファイバー102を経由して入力されるモニタリング光の進行方向を変更し(略90度)、光学フィルタ176に向けるために使用される。光学フィルタ176は、モニタリング光に含まれるノイズとなる波長領域の光をカットするために使用される。フォトダイオード178は、光学フィルタ176を経由したモニタリング光の強度に応じた電気信号を出力するために使用される。
【0018】
アンプ180は、フォトダイオード178からの電気信号を増幅するために使用される。
【0019】
演算部190は、例えば、コンピュータからなり、アンプ180によって増幅された電気信号に基づいて、加工点30における溶着状態(未溶着状態の発生の有無)を判定するために使用される。判定方法は、特に限定されないが、例えば、溶接中の加工点30からのモニタリング光の電気信号波形の経時的な強度変化と、未溶着が発生した時におけるモニタリング光の電気信号波形の経時的な強度変化とを比較し、強い相関関係が検出される場合、未溶着状態が発生したと判定することが可能である。
【0020】
次に、モニタリング光受光部150を詳述する。
【0021】
図2は、図1に示されるモニタリング光受光部を説明するための断面図、図3は、実施の形態1に係る比較例を説明するための断面図、図4は、モニタリング光のS/N比を説明するための概念図である。
【0022】
モニタリング光受光部150は、反射ミラー152と、集光レンズ154と、ハウジング部160と、光ファイバー102が連結される出力端子部104と、を有する。反射ミラー152は、ベンディングミラー134を透過したモニタリング光の進行方向を変更(略90度)するために使用される。集光レンズ154は、反射ミラー152で反射されたモニタリング光を集光するために使用される。
【0023】
ハウジング部160は、集光レンズ154が配置される一端部162と、出力端子部104が配置される他端部164と、を有する。ハウジング部160の形状は、集光レンズ154によって集光されたモニタリング光の光路の外側を取り囲むように延長している円錐台状である。
【0024】
ハウジング部160は、上述のように、モニタリング光の光路の外側を取り囲むように延長している円錐台状であり、ハウジング部の他端部164における出力端子部104の周囲には、集光レンズ154を透過した散乱光の一部が入射する部位が存在するため、出力端子部104に入射する散乱光が削減されることになる。
【0025】
一方、図3に示される比較例に係るハウジング部260は、円錐形状であり、かつ、モニタリング光の光路の広がり角(NA)より小さな角度を有しているため、集光レンズ154を透過した散乱光の全てが、実質的に出力端子部104に入射することなる。
【0026】
つまり、実施の形態1においては、比較例の場合と異なり、品質判定部170に入力されるモニタリング光に散乱光(迷光)が混入することが抑制されるため、散乱光に基づくノイズ成分が低減され、モニタリング光の計測精度を向上させることが可能である。特に、可視光領域の光に対して種々検討されてノイズ低減方法は、近赤外域の光(レーザ光の反射光)に適用することが困難であるため、実施の形態1は有意義である。
【0027】
なお、実施の形態1に係るハウジング部160を使用した場合におけるモニタリング光の波形を計測したところ、図4に示されるS/N比(=AC成分/DC成分)が、比較例に係るハウジング部260を使用した場合に比較して向上しており、モニタリング光の強度変化が大きく現れるようになり、判定精度が向上することが確認できた。
【0028】
図5は、実施の形態1に係る変形例1を説明するための断面図である。
【0029】
ハウジング部160の形状は、円錐台状に限定されず、図5に示されるように、円柱状(ストレート)とすることも可能である。この場合、ハウジング部160の製造が容易であり、製造コストを低減することが可能である。また、テーパー形状のハウジング部の在庫がある場合、当該ハウジング部を追加工(修正)することにより、転用することが可能であるため好ましい。
【0030】
図6は、実施の形態1に係る変形例2を説明するための断面図である。
【0031】
ハウジング部160の他端部164は、光ファイバー102が連結される出力端子部104の周辺を取り囲むように配置される凹部165を有することも可能である。この場合、凹部165に入射した散乱光が、集光レンズ側に反射する(逆方向へ逃げる)ため、出力端子部104に入射する散乱光をさらに削減することが可能である。
【0032】
以上のように、実施の形態1においては、モニタリング光受光部のハウジング部は、モニタリング光の光路の外側を取り囲むように延長している円錐台状であり、光ファイバーが連結される出力端子部の周囲には、集光レンズを透過した散乱光の一部が入射する部位が存在するため、出力端子部に入射する散乱光が削減されることになる。つまり、品質判定部に入力されるモニタリング光に散乱光(迷光)が混入することが抑制されるため、散乱光に基づくノイズ成分が低減され、モニタリング光の計測精度を向上させることが可能である。したがって、良好なモニタリング光の計測精度を有するレーザ溶接モニタリング装置を提供することが可能である。
【0033】
また、モニタリング光受光部のハウジング部が、円柱状である場合も、出力端子部に入射する散乱光を削減することが可能であり、かつ、ハウジング部の製造が容易であり、製造コストを低減することが可能であり、また、テーパー形状のハウジング部の在庫がある場合、当該ハウジング部を追加工(修正)することにより、転用することが可能である。
【0034】
モニタリング光受光部のハウジング部の他端部に、出力端子部の周辺を取り囲むように配置される凹部を有する場合、凹部に入射した散乱光が、集光レンズ側に反射する(逆方向へ逃げる)ため、出力端子部に入射する散乱光をさらに削減することが可能である。
【0035】
次に、実施の形態2を説明する。
【0036】
図7は、実施の形態2に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための断面図、図8は、実施の形態2に係る比較例を説明するための断面図である。
【0037】
実施の形態2に係るスキャナヘッド110は、レーザ光の照射口112に配置される集光レンズ140と、溶接材料のスパッタリングから集光レンズ140を保護するための第1および第2保護ガラス144,142と、を有する。
【0038】
集光レンズ140は、例えば、Fθレンズである。第1保護ガラス144は、第2保護ガラス142より外側に位置しており、集光レンズ140に対して傾斜して設置されている。第2保護ガラス142は、集光レンズ140に近接して配置されており(第1保護ガラス244の内側に位置しており)、集光レンズに対して平行に設置されている。第2保護ガラス142は、集光レンズ140に対して平行に設置されているため、溶接材料のスパッタリングから集光レンズ140を確実に保護することが可能である。
【0039】
第1保護ガラス144の傾斜角度は、集光レンズ140を通過するレーザ光の軸と、第1保護ガラス144の集光レンズ側表面145からのレーザ光の反射光の軸と、が同軸とならないように、設定されている。したがって、第1保護ガラス144の集光レンズ側表面145からの反射光が、モニタリング光の光路であるレーザ光の光路からずれることになる。例えば、第1保護ガラス144の傾斜が角度αである場合、反射光の傾斜は、角度2αとなり、モニタリング光の光路に進入することが抑制される。
【0040】
一方、図8に示される比較例に係る第1保護ガラス244は、集光レンズ240および第2保護ガラス242に対して平行に設置されている。したがって、集光レンズ240と、第2保護ガラス242と、第1保護ガラス244と、の間でレーザ光が多重反射し、スキャナヘッド内部へ戻ってきてしまい、モニタリング光として計測される虞がある。
【0041】
つまり、実施の形態2においては、比較例の場合と異なり、第1保護ガラス244に角度を持たせることにより、反射光の光路をずらし、多重反射の発生を抑制しているため、第1保護ガラス144の集光レンズ側表面145からの反射光に起因するモニタリング光のノイズ成分を低減することが可能である。
【0042】
図9は、図7に示される保護ガラスの角度と反射光強度との関係を説明するためのグラフである。
【0043】
第1保護ガラス144の傾斜角度の影響を調査するために、焦点距離の倍以上の位置に斜めに設置した保護ガラスにレーザ光を照射し、その際に計測されるレーザ光の反射光(錯乱光に相当する)を計測した。その結果、図9に示されるように、保護ガラスの傾斜角度が増加するに従って、反射光強度が低下し、例えば、1度以上傾けることにより、反射光強度が40%程度削減することが可能であることが確認された。
【0044】
以上のように、実施の形態2においては、第1保護ガラスの集光レンズ側表面からの反射光が、モニタリング光の光路からずれることになるため、第1保護ガラスの集光レンズ側表面からの反射光に起因するモニタリング光のノイズ成分を低減することが可能である。また、集光レンズに対して平行に設置されている第2保護ガラスを有するため、溶接材料のスパッタリングから集光レンズを確実に保護することが可能である。なお、保護ガラスの枚数は、特に2枚に限定されない。
【0045】
次に、実施の形態3を説明する。
【0046】
図10は、実施の形態3に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための断面図、図11は、実施の形態3に係る比較例を説明するための断面図である。
【0047】
実施の形態3に係るスキャナヘッド110は、ベンディングミラー134の裏面の直下に配置されるレーザ光吸収手段114を有する。レーザ光吸収手段114は、ベンディングミラー134で反射されることなく透過したレーザ光を吸収することが可能である。
【0048】
一方、図11に示される比較例に係るスキャナヘッド210においては、ベンディングミラー234を透過したレーザ光は、ベンディングミラー234の裏面の直下で反射を繰返し、その光路が、モニタリング光の光路と略一致することで、モニタリング光として計測される虞がある。
【0049】
つまり、実施の形態3においては、比較例の場合と異なり、ベンディングミラー134を透過したレーザ光を、レーザ光吸収手段114によって吸収することで、モニタリング光に混入することが抑制されるため、ベンディングミラー134を透過したレーザ光に起因するモニタリング光のノイズ成分を低減することが可能である。
【0050】
レーザ光吸収手段114は、例えば、レーザ光吸収材料あるいはレーザ光吸収塗料被膜からなり、この場合、レーザ光吸収手段114を容易に構成することが可能である。レーザ光吸収材料は、例えば、カーボンブラックや複合酸化物系顔料等の無機系着色材、フタロシアニン系顔料やポリメチン系顔料等の有機系着色材を含有したプラスチック板である。レーザ光吸収塗料は、例えば、上記レーザ光吸収材料を含有している塗料である。
【0051】
以上のように、実施の形態3においては、ベンディングミラーを透過したレーザ光を、レーザ光吸収手段によって吸収することで、モニタリング光に混入することが抑制されるため、ベンディングミラーを透過したレーザ光に起因するモニタリング光のノイズ成分を低減することが可能である。また、レーザ光吸収手段がレーザ光吸収材料あるいはレーザ光吸収塗料被膜からなる場合、レーザ光吸収手段を容易に構成することが可能である
次に、実施の形態4を説明する。
【0052】
図12は、実施の形態4に係るレーザ溶接のモニタリング装置を説明するための断面図、図13は、実施の形態4に係る変形例1を説明するための断面図である。
【0053】
実施の形態4に係るスキャナヘッド110は、ベンディングミラー134を透過したモニタリング光の光路と、ベンディングミラー134で反射されることなく透過したレーザ光の光路と、を異ならせる光路分離手段116を有する。
【0054】
光路分離手段116は、ベンディングミラー134を透過したモニタリング光の光路から隔離された通路117を有する。通路117は、ベンディングミラー134を透過したレーザ光を導入するための開口部118と、開口部118を通過したレーザ光を反射してレーザ光の進行方向を通路117の延長方向に一致させるミラー(反射部材)119と、を有する。
【0055】
したがって、ベンディングミラー134を透過したモニタリング光の光路と、ベンディングミラー134で反射されることなく透過したレーザ光の光路と、が異なり、ベンディングミラー134を透過したレーザ光が、ベンディングミラー134を透過したモニタリング光に混入することが抑制されるため、ベンディングミラー134を透過したレーザ光に起因するモニタリング光のノイズ成分を低減することが可能である。
【0056】
また、光路分離手段116が、開口部118およびミラー119を有する通路117によって構成されるため、その構造をコンパクトにすることが可能である。
【0057】
なお、通路117の延長方向は、スキャナヘッド110から離間する方向に限定されず、図13に示されるように、スキャナヘッド110に近接する方向とすることも可能である。しかし、加工点30におけるレーザ光の反射光およびプラズマプルーム光に起因する光が、通路117に進入し、モニタリング光のノイズ成分となる虞を抑制するためには、通路117の延長方向は、スキャナヘッド110から離間する方向が好ましい。
【0058】
以上のように、実施の形態4においては、ベンディングミラーを透過したモニタリング光の光路と、ベンディングミラーで反射されることなく透過したレーザ光の光路と、が異なり、ベンディングミラーを透過したレーザ光が、ベンディングミラーを透過したモニタリング光に混入することが抑制されるため、ベンディングミラーを透過したレーザ光に起因するモニタリング光のノイズ成分を低減することが可能である。また、光路分離手段が、開口部およびミラーを有する通路によって構成されるため、その構造をコンパクトにすることが可能である。
【0059】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、レーザ溶接モニタリング装置は、リモートレーザ溶接に適用される形態に限定されない。
【符号の説明】
【0060】
10,20 板材、
30 加工点、
100 レーザ溶接モニタリング装置、
102 光ファイバー(導光部材)、
104 出力端子部、
110 スキャナヘッド、
112 照射口、
114 レーザ光吸収手段、
116 光路分離手段、
117 通路、
118 開口部、
119 ミラー(反射部材)、
120 レーザ発振器、
130 光学系、
132 光学系、
134 ベンディングミラー、
136 集光光学系(集光レンズ)、
138 スキャナミラー、
140 集光レンズ、
141 保護ガラス、
142 第2保護ガラス、
144 第1保護ガラス、
145 集光レンズ側表面、
150 モニタリング光受光部(受光手段)、
152 反射ミラー、
154 集光レンズ、
160 ハウジング部、
162 一端部、
164 他端部、
165 凹部、
170 品質判定部(品質判定手段)、
172 モニタリング光入力部、
174 反射ミラー、
176 光学フィルタ、
178 フォトダイオード、
180 アンプ、
190 演算部、
210 スキャナヘッド、
234 ベンディングミラー、
240 集光レンズ、
242 第2保護ガラス、
244 第1保護ガラス、
260 ハウジング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接の加工点に向ってレーザ光を照射するための照射手段と、
前記加工点における前記レーザ光の反射光を含んでいるモニタリング光の計測に基づいて、前記加工点における溶着状態を判定する品質判定手段と、
前記モニタリング光を受光して前記品質判定手段に入力するための受光手段と、を有し、
前記受光手段は、
前記レーザ光の進行方向と逆方向かつ前記レーザ光と同軸で、前記照射手段の内部に入射した前記モニタリング光を集光する集光レンズと、
集光された前記モニタリング光を前記品質判定手段に入力するための出力端子部と、
前記集光レンズが配置される一端部と前記出力端子部が配置される他端部とを有し、集光された前記モニタリング光の光路の外側を取り囲むように延長している円柱状あるいは円錐台状のハウジング部と、
を有することを特徴とするレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項2】
前記ハウジング部は、円柱状であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項3】
前記ハウジング部の他端部は、前記出力端子部の周辺を取り囲むように配置される凹部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項4】
前記照射手段は、前記レーザ光の照射口に配置される集光レンズと、溶接材料のスパッタリングから前記集光レンズを保護するための保護ガラスと、を有しており、
前記保護ガラスは、
前記集光レンズを通過する前記レーザ光の軸と、前記保護ガラスの集光レンズ側表面からの前記レーザ光の反射光の軸と、が同軸とならないように、前記集光レンズに対して傾斜して設置されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記集光レンズと前記保護ガラスとの間に配置される第2の保護ガラスを有しており、
前記第2の保護ガラスは、前記集光レンズに対して平行に設置されている
ことを特徴とする請求項4に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項6】
前記照射手段は、
前記レーザ光を出射するレーザ発振器と、
光透過性を有し、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光の進行方向を変更するために前記レーザ光を反射すると共に前記モニタリング光を前記受光手段に導入するために前記モニタリング光が透過するベンディングミラーと、
前記ベンディングミラーで反射されることなく透過したレーザ光を吸収するためのレーザ光吸収手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項7】
前記レーザ光吸収手段は、レーザ光吸収材料あるいはレーザ光吸収塗料被膜からなることを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項8】
前記照射手段は、
前記レーザ光を出射するレーザ発振器と、
光透過性を有し、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光の進行方向を変更するために前記レーザ光を反射すると共に前記モニタリング光を前記受光手段に導入するために前記モニタリング光が透過するベンディングミラーと、
前記ベンディングミラーを透過した前記モニタリング光の光路と、前記ベンディングミラーで反射されることなく透過したレーザ光の光路とを異ならせる光路分離手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ溶接モニタリング装置。
【請求項9】
前記光路分離手段は、前記ベンディングミラーを透過した前記モニタリング光の光路から隔離された通路を有し、
前記通路は、
前記ベンディングミラーを透過したレーザ光を導入するための開口部と、
前記開口部を通過した前記レーザ光を反射して、前記レーザ光の進行方向を前記通路の延長方向に一致させる反射部材と、
を有することを特徴とする請求項8に記載のレーザ溶接モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−35307(P2012−35307A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178936(P2010−178936)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】