説明

レーザ溶着部品の製造方法

【課題】レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品を当接させてレーザ溶着するレーザ溶着部品の製造方法であって、レーザ溶着に異常をもたらす第1樹脂部品内の異物の有無を容易に検出して、該第1樹脂部品の良否を正確に判定することのできるレーザ溶着部品の製造方法を提供する。
【解決手段】予め検査レーザ光を第1樹脂部品40に走査しながら照射して、該第1樹脂部品40内に存在する異物40iによる温度上昇を検出し、該第1樹脂部品40の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品を当接させてレーザ溶着する、レーザ溶着部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品を当接させてレーザ溶着するレーザ溶着部品が、例えば、特開2006−275639号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
図7は、特許文献1に開示された回転検出装置100の模式的な断面図である。図7の回転検出装置100は、磁性体からなるロータ(被検出体)1の回転に伴うバイアス磁界の変化を磁気検出素子30により測定して、ロータ1の回転状態を検出する。
【0004】
図7の回転検出装置100において、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品が、一方の端部が閉じた円筒状のハウジング部品40であり、レーザ光の透過性が低い第2樹脂部品が、磁気検出素子30を搭載する保持部50hを有し、ハウジング部品40のもう一方の端部の開口を蓋する円柱状に形成されたキャップ部品50である。
【0005】
図7の回転検出装置100では、バイアス磁界を発生する(永久)磁石20と、保持部50hに搭載された磁気検出素子30とが、一方の端部が閉じた円筒状のハウジング部品40内に挿入配置されている。ハウジング部品40のもう一方の端部における開口は、円柱状に形成されたキャップ部品50で蓋され、磁石20が、ハウジング部品40の一方の閉じた端部とキャップ部品50の先端に接して固定されている。ハウジング部品40の円筒内周面とキャップ部品50の円柱外周面の所定部分は、レーザ溶着されて、溶着部60が形成されている。回転検出装置100では、ハウジング部品40とキャップ部品50はレーザ溶着されるため、残留応力が発生し難く、経時変化も起き難い。これによって、回転検出装置100は、高感度で高い精度を有する回転検出装置とすることができる。
【特許文献1】特開2006−275639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、図7の回転検出装置100の製造時における問題点を説明する図で、図8(a),(b)は、それぞれ、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品(ハウジング部品)40とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品(キャップ部品)50のレーザ溶着時における途中過程の様子を模式的に示した図である。レーザ溶着時の様子を分かり易くするため、図8は、レーザ溶着する第1樹脂部品40と第2樹脂部品50の円筒状の当接面Sを、該当接面Sの円周に沿って展開した図となっている。尚、図8に示した各部の符号は、図7に示した回転検出装置100における同等の部分に対応している。
【0007】
また、図9は、上記レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品40とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品50について、レーザ光の透過率の一例を示す図である。図9の第1樹脂部品40は、第2樹脂部品50に対して、約2倍のレーザ光の透過率を有している。
【0008】
図7の回転検出装置100における第1樹脂部品40と第2樹脂部品50のレーザ溶着では、十分な溶着強度を確保するだけでなく、溶着部60の内部の機密性が確保されることが好ましい。また、外観上も異常があってはならない。
【0009】
ここで、図8(a)に示すように第1樹脂部品40内に異物40iが存在すると、レーザ光の走査が達した時点で、第1樹脂部品40と第2樹脂部品50の当接面Sにエネルギが届かず、異物40iで発熱が生じ、第1樹脂部品40と第2樹脂部品50の当接面Sで溶着部60が形成されなくなる。該異物40iとして、例えば、第1樹脂部品40のペレット材を入れる袋や作業者から発生する繊維屑、あるいはペレット材の成型過程で発生する樹脂屑や金属屑等がある。図8(b)に示すように、レーザ光が異物40iを通り過ぎた後では、第1樹脂部品40の表面で焦げ40kが発生し、第1樹脂部品40と第2樹脂部品50の当接面Sで溶着部60が形成されなくなる。従って、図8に示すようなレーザ光の走査範囲において異物40iが存在する第1樹脂部品40では、十分な溶着強度や機密性を確保することができず、外観上にも異常が見られるようになる。
【0010】
図8(b)に示すように、外観上に焦げ40k等の異常が見られるようになると、レーザ溶着後の検査で不良品を除去することが可能であるが、異物40iが小さい場合には、レーザ溶着後の外観に異常が見られない場合でも、溶着強度が十分でない可能性がある。上記可能性を排除するために、成形後の第1樹脂部品40におけるレーザ光の走査範囲で、光学顕微鏡により、異物40iの検査が実施されている。しかしながら、小さな異物40iまで検出する必要があり、作業性が悪く、検査の精度も良くない。
【0011】
そこで本発明は、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品を当接させてレーザ溶着するレーザ溶着部品の製造方法であって、レーザ溶着に異常をもたらす第1樹脂部品内の異物の有無を容易に検出して、該第1樹脂部品の良否を正確に判定することのできるレーザ溶着部品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品と、レーザ光の透過性が低い第2樹脂部品とを当接させ、前記第1樹脂部品の外側からレーザ光を前記第2樹脂部品との当接面に走査しながら照射して、第1樹脂部品と第2樹脂部品をレーザ溶着するレーザ溶着部品の製造方法であって、予め検査レーザ光を前記第1樹脂部品に走査しながら照射して、該第1樹脂部品内に存在する異物による温度上昇を検出し、該第1樹脂部品の良否を判定することを特徴としている。
【0013】
上記レーザ溶着部品の製造方法によれば、予め検査レーザ光を用いて第1樹脂部品の良否を判定しているため、後のレーザ溶着工程において、第1樹脂部品内の異物を原因とするレーザ溶着不良を防止することができる。
【0014】
また、検査レーザ光を第1樹脂部品に走査しながら照射し、異物に該検査レーザ光が当たった時の局所発熱による温度上昇を検出して第1樹脂部品の良否を判定する上記第1樹脂部品の検査方法は、従来の光学顕微鏡による異物の検査方法と較べて、作業性が良い。また、上記第1樹脂部品の検査方法は、実際のレーザ溶着工程に近い方法であり、従来の光学顕微鏡による検査方法と較べて、異物の検査精度やレーザ溶着時における不良発生予測確度も高めることができる。
【0015】
以上のようにして、上記レーザ溶着部品の製造方法は、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品を当接させてレーザ溶着するレーザ溶着部品の製造方法であって、レーザ溶着に異常をもたらす第1樹脂部品内の異物の有無を容易に検出して、該第1樹脂部品の良否を正確に判定することのできるレーザ溶着部品の製造方法とすることができる。
【0016】
上記レーザ溶着部品の製造方法では、例えば請求項2に記載のように、前記第2樹脂部品に当接させていない単独の前記第1樹脂部品に前記検査レーザ光を照射して、該第1樹脂部品の良否を判定することが好ましい。これによってレーザ溶着時に不良発生確度の高い異物の存在する第1樹脂部品を効率的に排除し、良品のみを第2樹脂部品と組み付けることができる。これによって、組み付け工数の無駄をなくすことができる。
【0017】
一方、請求項3に記載のように、前記検査レーザ光を、レーザ溶着時より弱い強度のレーザ光とし、前記第2樹脂部品に当接させた状態にある前記第1樹脂部品に前記検査レーザ光を照射して、該第1樹脂部品の良否を判定するようにしてもよい。この場合には、例えば同じレーザ照射装置を用いて、上記検査レーザ光の照射による判定直後のそのままの状態で、実際のレーザ溶着を実施することができる。
【0018】
上記レーザ溶着部品の製造方法における前記温度上昇の検出手段は、請求項4に記載のように、放射温度計とすることが好ましい。上記放射温度計は、例えば1個の赤外線センサであってもよいし、複数個の赤外線センサをマトリックス状に並べた赤外線カメラであってもよい。上記温度上昇の検出手段として放射温度計を用いる場合、該放射温度計を第1樹脂部品と離れて設置できるため、任意形状の第1樹脂部品に対応可能である。
【0019】
一方、請求項5に記載のように、前記温度上昇の検出手段を、マトリックス状に配置された熱電対とすることも可能である。この場合には、検査レーザ光の入射方向と反対側の第1樹脂部品の裏面側に、該マトリックス状に配置された熱電対を設置する。
【0020】
上記レーザ溶着部品の製造方法において、前記第1樹脂部品の良否を判定するにあたっては、請求項6に記載のように、前記検査レーザ光の走査時における前記第1樹脂部品の温度の時間依存性から前記温度の時間微分を算出し、該温度の時間微分の値により第1樹脂部品の良否を判定することが好ましい。
【0021】
これによれば、測温データをそのまま利用して第1樹脂部品の良否を判定する場合に較べて、より高感度で温度上昇検出することができる。このため、より小さな異物による影響まで評価することができ、レーザ溶着時における不良発生予測確度も高めることができる。
【0022】
一方、請求項2に記載した単独の第1樹脂部品に検査レーザ光を照射する場合には、異物による実際の温度上昇を検出する代わりに、請求項7に記載のように、前記検査レーザ光照射後の前記第1樹脂部品の状態変化を測定して、該第1樹脂部品内に存在する異物による温度上昇を検出し、該第1樹脂部品の良否を判定するようにしてもよい。例えば、レーザ溶着時と同じ強度の検査レーザ光を照射して異物のある部分を積極的に焦がしてしまい、該焦げを画像認識することにより、第1樹脂部品の良否を判定する。
【0023】
上記レーザ溶着部品の製造方法において、例えば請求項8に記載のように、前記第1樹脂部品が、円筒状である場合には、該円筒状の第1樹脂部品を中心軸の周りに回転させながら、前記検査レーザ光を照射することが好ましい。
【0024】
この場合の好適な例として、請求項9に記載の前記レーザ溶着部品を挙げることができる。すなわち、前記レーザ溶着部品が、被検出体の回転に伴うバイアス磁界の変化を磁気検出素子により測定して被検出体の回転状態を検出する、回転検出装置の構成部品であって、前記第1樹脂部品が、一方の端部が閉じた円筒状のハウジング部品であり、前記第2樹脂部品が、前記磁気検出素子を搭載する保持部を有し、前記ハウジング部品のもう一方の端部の開口を蓋する円柱状に形成されたキャップ部品である場合である。
【0025】
上記レーザ溶着部品の製造方法によれば、第1樹脂部品内の異物の有無を容易に検出して該第1樹脂部品の良否を正確に判定することができる。このため、上記レーザ溶着部品の製造方法は、請求項10に記載のように、前記レーザ溶着部品が、安価で高い信頼性が要求される車載用の回転検出装置の構成部品である場合に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図に基づいて説明する。
【0027】
本発明は、図8と同様のレーザ光の透過性が高い第1樹脂部品40と、レーザ光の透過性が低い第2樹脂部品50とを当接させ、第1樹脂部品40の外側からレーザ光を第2樹脂部品50との当接面Sに走査しながら照射して、第1樹脂部品40と第2樹脂部品50をレーザ溶着するレーザ溶着部品の製造方法である。一方、本発明に係るレーザ溶着部品の製造方法は、図8に示した従来のレーザ溶着部品の製造方法と異なり、予め検査レーザ光を第1樹脂部品40に走査しながら照射して、該第1樹脂部品40内に存在する異物40iによる温度上昇を検出し、該第1樹脂部品40の良否を判定することを特徴としている。
【0028】
図1は、上記本発明に係るレーザ溶着部品の製造方法の一例を示した図で、図1(a),(b)は、それぞれ、第1樹脂部品40の上記検査レーザ光による検査過程の様子を模式的に示した図である。尚、図1は上記検査レーザ光による検査過程を図8のレーザ溶着過程と対応するように図示したもので、以下に示す各図において、図8と同様の部分については、同じ符号を用いている。
【0029】
図1(a),(b)に示すように、本発明に係るレーザ溶着部品の製造方法では、予め検査レーザ光を第1樹脂部品40に走査しながら照射して、該第1樹脂部品40内に存在する異物40iによる温度上昇を検出し、該第1樹脂部品40の良否を判定する。図1に示す例では、溶着相手である図8の第2樹脂部品50に当接させていない単独の第1樹脂部品40に検査レーザ光を照射して、異物40iによる温度上昇を放射温度計MRにより検出し、該第1樹脂部品40の良否を判定するようにしている。放射温度計MRは、例えば1個の赤外線センサであってもよいし、複数個の赤外線センサをマトリックス状に並べた赤外線カメラであってもよい。温度上昇の検出手段として放射温度計MRを用いる場合、放射温度計MRを第1樹脂部品40と離れて設置できるため、任意形状の第1樹脂部品40に対応可能である。
【0030】
図1に示すレーザ溶着部品の製造方法によれば、予め検査レーザ光を用いて第1樹脂部品40の良否を判定しているため、後のレーザ溶着工程において、第1樹脂部品40内の異物40iを原因とするレーザ溶着不良を防止することができる。
【0031】
また、検査レーザ光を第1樹脂部品40に走査しながら照射し、異物40iに該検査レーザ光が当たった時の局所発熱による温度上昇を検出して第1樹脂部品40の良否を判定する当該第1樹脂部品40の検査方法は、従来の光学顕微鏡による異物40iの検査方法と較べて、作業性が良い。また、当該第1樹脂部品40の検査方法は、実際のレーザ溶着工程に近い方法であり、従来の光学顕微鏡による検査方法と較べて、異物40iの検査精度やレーザ溶着時における不良発生予測確度も高めることができる。
【0032】
以上のようにして、図1に示すレーザ溶着部品の製造方法は、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品40とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品50を当接させてレーザ溶着するレーザ溶着部品の製造方法であって、レーザ溶着に異常をもたらす第1樹脂部品40内の異物40iの有無を容易に検出して、第1樹脂部品40の良否を正確に判定することのできるレーザ溶着部品の製造方法となっている。
【0033】
特に、図1の例では、溶着相手である図8の第2樹脂部品50に当接させていない単独の第1樹脂部品40に検査レーザ光を照射して、該第1樹脂部品40の良否を判定するようにしている。このため、レーザ溶着時に不良発生確度の高い異物40iの存在する第1樹脂部品40を効率的に排除し、良品のみを第2樹脂部品50と組み付けることができる。これによって、組み付け工数の無駄をなくすことができる。
【0034】
図2は、別の例を示した図で、(a),(b)は、第1樹脂部品40の検査レーザ光による検査過程の様子を模式的に示した図である。
【0035】
図1では、第2樹脂部品50に当接させていない単独の第1樹脂部品40に検査レーザ光を照射して、該第1樹脂部品40の良否を判定するようにしていた。これに対し、図2では、検査レーザ光を、レーザ溶着時より弱い強度のレーザ光とし、第2樹脂部品50に当接させた状態にある第1樹脂部品40に該検査レーザ光を照射して、第1樹脂部品40の良否を判定するようにしてもよい。この場合には、例えば同じレーザ照射装置を用いて、上記検査レーザ光の照射による判定直後のそのままの状態で、実際のレーザ溶着を実施することができる。
【0036】
図3も、別の例を示した図で、(a),(b)は、第1樹脂部品40の検査レーザ光による検査過程の様子を模式的に示した図である。
【0037】
図1と図2では、異物40iによる温度上昇を放射温度計MRにより検出していた。これに対して、図3では、異物40iによる温度上昇をマトリックス状に配置された熱電対MCで検出するようにしている。この場合には、図3に示すように、検査レーザ光の入射方向と反対側の第1樹脂部品40の裏面側に、該マトリックス状に配置された熱電対MCを設置する。
【0038】
図4は、上記検査過程の詳細を説明する図で、横方向を時間tの軸として、検査レーザ光の走査過程、放射温度計MRによる検出温度T、および温度の時間微分ΔT/Δtを一つにまとめて示した図である。
【0039】
放射温度計MRやマトリックス状に配置された熱電対MCを用いて異物40iによる温度上昇を検出する場合には、第1樹脂部品40の良否を判定するにあたって、図4に示すように、検査レーザ光の走査時における第1樹脂部品40の温度Tの時間t依存性から温度の時間微分ΔT/Δtを算出し、該温度の時間微分ΔT/Δtの値により第1樹脂部品40の良否を判定することが好ましい。これによれば、測温データをそのまま利用して第1樹脂部品40の良否を判定する場合に較べて、より高感度で温度上昇検出することができる。このため、より小さな異物40iによる影響まで評価することができ、レーザ溶着時における不良発生予測確度も高めることができる。
【0040】
図5は、別の例を示した図で、(a),(b)は、第1樹脂部品40への検査レーザ光の照射の様子を模式的に示した図である。
【0041】
図1〜図4では、検査レーザ光を照射した時の異物40iによる温度上昇を、放射温度計MRやマトリックス状に配置された熱電対MCで検出していた。一方、図5に示すように、単独の第1樹脂部品40に検査レーザ光を照射する場合には、異物40iによる実際の温度上昇を放射温度計MRやマトリックス状に配置された熱電対MCで検出する代わりに、レーザ溶着時と同じ強度の検査レーザ光を照射して異物40iのある部分を積極的に焦がしてしまい、該焦げ40kを画像認識することにより、第1樹脂部品40の良否を判定するようにしてもよい。この例のように、検査レーザ光照射後の第1樹脂部品40の状態変化を測定して、第1樹脂部品40内に存在する異物40iによる温度上昇を検出し、第1樹脂部品40の良否を判定することも可能である。
【0042】
図6は、図7の回転検出装置100における第1樹脂部品(ハウジング部品)40への本発明の好ましい適用例を示した図である。
【0043】
図7に示したレーザ溶着部品は、ロータ(被検出体)1の回転に伴うバイアス磁界の変化を磁気検出素子30により測定してロータ1の回転状態を検出する回転検出装置100の構成部品であって、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品40が、一方の端部が閉じた円筒状のハウジング部品であり、レーザ光の透過性が低い第2樹脂部品50が、磁気検出素子30を搭載する保持部50hを有し、ハウジング部品40のもう一方の端部の開口を蓋する円柱状に形成されたキャップ部品である。
【0044】
図7の回転検出装置100のように第1樹脂部品40が円筒状である場合には、図6に示すように、該円筒状の第1樹脂部品40を回転軸Aにセットして、中心軸の周りに回転させながら、検査レーザ光を照射することが好ましい。
【0045】
図6に示す構成において、検査フローを簡単に説明する。最初に、第1樹脂部品40を回転軸Aにセットし、モータMにより第1樹脂部品40を回転させる。次に、検査レーザ光を照射し、放射温度計MRで照射部を測温する。次に、コンピュータCで温度の時間微分ΔT/Δtを演算し、この結果を元に異物の有無を判定する。
【0046】
以上の検査フローにおいては、以下の事項が重要である。すなわち、1.第1樹脂部品40を一定速度(v)で回転すること。2.検査レーザ光の出力エネルギを一定とすること。3.第1樹脂部品40の温度上昇を防止するため、検査レーザ光を照射して一定時間内に測定を開始すること。4.L[mm]を検出対象である異物40iのサイズ、v[mm/s]を回転の周速度としたとき、放射温度計MRのサンプリングタイム(Δt)を、Δt≦(L/2)/v とすること。ここで、分子のL/2は、最も温度高い異物40i中心での測温をするためである。5.測定環境の温度影響を排除するために、温度の時間微分ΔT/Δtを元にして、異物40iの有無を判定することである。
【0047】
上記レーザ溶着部品の製造方法によれば、第1樹脂部品40内の異物40iの有無を容易に検出して該第1樹脂部品40の良否を正確に判定することができる。このため、上記レーザ溶着部品の製造方法は、上記したように、該レーザ溶着部品が、安価で高い信頼性が要求される車載用の回転検出装置の構成部品である場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るレーザ溶着部品の製造方法の一例を示した図で、(a),(b)は、それぞれ、第1樹脂部品40の上記検査レーザ光による検査過程の様子を模式的に示した図である。
【図2】別の例を示した図で、(a),(b)は、第1樹脂部品40の検査レーザ光による検査過程の様子を模式的に示した図である。
【図3】別の例を示した図で、(a),(b)は、第1樹脂部品40の検査レーザ光による検査過程の様子を模式的に示した図である。
【図4】検査過程の詳細を説明する図で、横方向を時間tの軸として、検査レーザ光の走査過程、放射温度計MRによる検出温度T、および温度の時間微分ΔT/Δtを一つにまとめて示した図である。
【図5】別の例を示した図で、(a),(b)は、第1樹脂部品40への検査レーザ光の照射の様子を模式的に示した図である。
【図6】図7の回転検出装置100における第1樹脂部品(ハウジング部品)40への本発明の好ましい適用例を示した図である。
【図7】特許文献1に開示された回転検出装置100の模式的な断面図である。
【図8】図7の回転検出装置100の製造時における問題点を説明する図で、(a),(b)は、それぞれ、レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品(ハウジング部品)40とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品(キャップ部品)50のレーザ溶着時における途中過程の様子を模式的に示した図である。
【図9】レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品40とレーザ光の透過性が低い第2樹脂部品50について、レーザ光の透過率の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
40 第1樹脂部品(ハウジング部品)
40i 異物
40k 焦げ
MR 放射温度計
MC マトリックス状に配置された熱電対
50 第2樹脂部品(キャップ部品)
S 当接面
60 溶着部
100 回転検出装置
30 磁気検出素子
50h 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の透過性が高い第1樹脂部品と、レーザ光の透過性が低い第2樹脂部品とを当接させ、
前記第1樹脂部品の外側からレーザ光を前記第2樹脂部品との当接面に走査しながら照射して、第1樹脂部品と第2樹脂部品をレーザ溶着するレーザ溶着部品の製造方法であって、
予め検査レーザ光を前記第1樹脂部品に走査しながら照射して、該第1樹脂部品内に存在する異物による温度上昇を検出し、該第1樹脂部品の良否を判定することを特徴とするレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項2】
前記第2樹脂部品に当接させていない単独の前記第1樹脂部品に前記検査レーザ光を照射して、該第1樹脂部品の良否を判定することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項3】
前記検査レーザ光が、レーザ溶着時より弱い強度のレーザ光であり、
前記第2樹脂部品に当接させた状態にある前記第1樹脂部品に前記検査レーザ光を照射して、該第1樹脂部品の良否を判定することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項4】
前記温度上昇の検出手段が、放射温度計であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項5】
前記温度上昇の検出手段が、マトリックス状に配置された熱電対であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1樹脂部品の良否を判定するにあたって、
前記検査レーザ光の走査時における前記第1樹脂部品の温度の時間依存性から前記温度の時間微分を算出し、該温度の時間微分の値により第1樹脂部品の良否を判定することを特徴とする求項1乃至5のいずれか一項に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項7】
前記検査レーザ光照射後の前記第1樹脂部品の状態変化を測定して、該第1樹脂部品内に存在する異物による温度上昇を検出し、該第1樹脂部品の良否を判定することを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項8】
前記第1樹脂部品が、円筒状であり、
該円筒状の第1樹脂部品を中心軸の周りに回転させながら、前記検査レーザ光を照射することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項9】
前記レーザ溶着部品が、被検出体の回転に伴うバイアス磁界の変化を磁気検出素子により測定して被検出体の回転状態を検出する、回転検出装置の構成部品であって、
前記第1樹脂部品が、一方の端部が閉じた円筒状のハウジング部品であり、
前記第2樹脂部品が、前記磁気検出素子を搭載する保持部を有し、前記ハウジング部品のもう一方の端部の開口を蓋する円柱状に形成されたキャップ部品であることを特徴とする請求項8に記載のレーザ溶着部品の製造方法。
【請求項10】
前記レーザ溶着部品が、車載用の回転検出装置の構成部品であることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶着部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−172960(P2009−172960A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16582(P2008−16582)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】