説明

レーザ穿刺装置とこれを用いた血液検査装置

【課題】レーザ光の照射強度を一定に保つため、レンズの汚れを防止する透明部材の交換が煩わしかった。
【解決手段】筐体12と、この筐体12に設けられた穿刺開口部13と、この穿刺開口部13に対向して設けられたレーザユニット14と、このレーザユニット14と穿刺開口部13との間に設けられた透明部材15aとを備え、透明部材15aは、回転可能な円盤形状にするとともに穿刺回数に基づいて透明部材15aを予め定められた量回転させるものである。これにより、所期の目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ穿刺装置とこれを用いた血液検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のレーザ穿刺装置を説明する。図23は、従来のレーザ穿刺装置とその周辺の断面図である。従来レーザ穿刺装置1は、筐体2と、この筐体2に設けられた穿刺開口部3と、この穿刺開口部3に対向して設けられたレーザユニット4と、このレーザユニット4と穿刺開口部3との間に設けられた透明部材5とで構成されていた。
【0003】
以上のように構成されたレーザ穿刺装置1の動作について以下説明する。レーザユニット4からレーザ光4aが発射すると、このレーザ光4aはレンズ6と透明部材5を貫通(透過)して、患者の皮膚9を穿刺する。皮膚9が穿刺されると先ずこの皮膚9から蒸散物7が蒸散する。その後、穿刺された皮膚9から血液10が滲出する。
【0004】
皮膚9から蒸散した蒸散物7がレンズ6に付着するとレーザ光4aの照射強度が減衰する。そのため、透明部材5を交換可能に挿入している。即ち、蒸散物7がレンズ6に付着する前にこの透明部材5に付着させることにとり、レンズ6を汚れから保護している。
【0005】
しかしながら、透明部材5に蒸散物7が付着しても同じ理由で、やはりレーザ光4aの照射強度が減衰する。この照射強度の減衰を防止するために、透明部材5は着脱可能に設けられており、皮膚を穿刺する毎にあるいは予め定められた回数の穿刺を行なう度に新しい透明部材5と取替えていた。
【0006】
図24は、10回程度レーザ光4aで穿刺した場合における透明部材5に付着した蒸散物7の様子を示す平面図である。このように10回程度穿刺することにより、レーザ光4aの透過性能が1割程度減少するので、透明部材5の交換が必要となる。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】米国特許第5993439号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような従来のレーザ穿刺装置1では、予め定められた回数の穿刺を行なう度に新しい透明部材5と取替える必要があり、その取り替えは煩わしいものであった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決したもので、透明部材の取替え回数を少なく或いは不要としたレーザ穿刺装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明のレーザ穿刺装置の透明部材は、回転可能な点対称形状にするとともに穿刺回数に基づき前記透明部材を予め定められた角度回転させるものである。これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明のレーザ穿刺装置の透明部材は、回転可能な点対称形状にするとともに穿刺回数に基づき前記透明部材を予め定められた角度回転させるものであり、穿刺回数に基づき透明部材を回転させることにより未使用部分を使用することになるので、蒸散物によるレーザ光の照射強度を減衰させることなく、透明部材の取替え回数を格段に減少或いは不要とすることができる。従って、透明部材の取替えの煩さは著しく減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態1におけるレーザ穿刺装置11の断面図である。図1において、12は樹脂で形成されるとともに略直方体形状をした筐体であり、この筐体12の一方には穿刺開口部13が形成されている。この穿刺開口部13に対向してレーザユニット14が装着されており、このレーザユニット14と穿刺開口部13との間に透明ユニット15が装着されている。また、この透明ユニット15に連結して駆動部16が設けられている。
【0013】
穿刺開口部13に採血すべき皮膚9を当接し、レーザユニット14から照射されてレーザ光14aが透明ユニット15を貫通して一直線上に皮膚9を穿刺するように配置されている。即ち、穿刺開口部13に対向してレーザユニット14が配置されており、このレーザユニット14と穿刺開口部13との間に透明ユニット15が配置されている。なお、穿刺開口部13には、レーザ照射時以外は穿刺開口部13を閉じる蓋(カバー)を設けておくことが好ましい。
【0014】
以下、透明ユニット15について説明する。透明ユニット15には、円盤形状の透明部材15aが回転可能に装着されている。なお、この透明部材15aは交換可能に設けても良い。透明部材15aは、透光性を有するフッ素系の樹脂(PFA、FEP、PTFE等)で形成されており、回転軸15bに固定されている。この回転軸15bは、透明ユニット15の筐体15c内においてギア15dで回転可能に装着されている。この回転軸15bは駆動部16と連結されており、駆動部16により透明部材15aを回転させる。
【0015】
透明部材15aの円周上をレーザ光14aが貫通する。14bは、レーザ光14aの光軸上に配置されたレンズであり、レーザユニット14と透明部材15aとの間に装着されている。その働きはレーザ光14aを皮膚9上に集光させるものである。なお、このレンズ14bは、レーザユニット14内に設けても良い。
【0016】
透明部材15aは、図2に示すように直径24mmのものを用いている。この透明部材15aの円周上を穿刺の度に直径2mmの円15e内をレーザ光14aが貫通(透過)する。レーザ光14aの貫通の度に皮膚9から蒸散した蒸散物7がこの円15e内に付着し、レンズ14bの汚れを保護する。
【0017】
このように蒸散物7は円15e内に付着するので、レンズ14bが汚れることはない。一つの円15eにレーザ光14aを数回から10回程度照射させてもその透過性能は殆ど劣化しない。また、蒸散物7で円15e内が汚れ、レーザ光14aが劣化するレベルになったら、透明部材15aは駆動部16で回転させて、次の円15eに移動することができるので、レーザ光14aの強度が低下を防止するとともに、透明部材15aの交換の煩わしさを減少或いは無くすことができる。
【0018】
透明部材15aの円周上には円15eが30個ほど形成することができる。従って、一つの透明部材15aで合計300回程度の使用が可能となる。駆動部16による透明部材15aの回転制御は、穿刺の度に回転させて合計300回の穿刺に使用しても良いし、一つの円15eに数回から10回程度照射させた後、隣の円15eへ回転制御させて合計300回の穿刺に使用しても良い。
【0019】
以上のように、穿刺の度に、或いは穿刺回数に基づいて透明部材15aの未使用部分を使用するので、蒸散物7によるレーザ光14aを減衰させることなく、しかも透明部材15aの取替え回数を格段に減少させることができる。従って、取替えの煩さは著しく減少する。なお、この透明部材15aを交換可能とすることにより、使用寿命を更に延ばすことができる。
【0020】
(実施の形態2)
実施の形態2は、透明ユニット21(実施の形態1における透明ユニット15に該当する)において、透明部材15aを清掃するクリーナ部21aが装着されている点で実施の形態1と相違する。なお、実施の形態1と同部品には同じ符号を付して説明を簡略化している。以下の実施の形態についても同様とする。
【0021】
実施の形態2における透明ユニット21は、図3に示すように透明部材15aの下側(穿刺開口部13側)にクリーナ部21aが固定装着されている。このクリーナ部21aには図5に示すようにレーザ光14aが貫通する三角形状の切り込み21bが形成せれるとともに、その上面にはクリーナ21cが付着されている。
【0022】
クリーナ21cは、透明部材15aの円15eに当接するように配置されている。従って、透明部材15aが回転するとクリーナ21cで円15eを清掃して蒸散物7を拭き取ることになる。このクリーナ21cにより、円15eの透明性は保たれる。従って、透明部材15aの交換は不要となる。
【0023】
なお、レーザ光14aは、図3、図4に示すように、レンズ14bと透明部材15aとクリーナ部21aの切り込み21bと穿刺開口部13を貫通して皮膚9を穿刺する。
【0024】
(実施の形態3)
実施の形態3は、透明ユニット22(実施の形態1における透明ユニット15に該当する)において、透明部材15aの中心を偏心させる偏心部22aが装着されている点で実施の形態1と相違する。
【0025】
図6において、透明部材15aの下側に、透明部材15aの回転軸15bを偏心させる偏心部22aが装着されている。この偏心部22aを用いて、回転軸15bを移動させることにより、図7に示すように、第1の円周上の円15e或いは第2の円周上の円15fをレーザ光14aが貫通する透明部材として使用することができる。従って、第1の円周上における円15eでの約300回の使用と、第2の円周上における円15fでの約300回の使用と合計600回の使用が可能となり、透明部材15aの使用寿命を約2倍延ばすことができる。
【0026】
図8は、偏心部22aの平面図である。22cは偏心板22dの回転中心であり、22eは透明部材15aの回転軸15bの軸受け部である。
【0027】
図9(a)は、偏心部22aの第1の状態の断面図であり、レーザ光14aは透明部材15aの第1の円周上に形成される円15eを貫通する。この第1の円周上に形成された全ての円15eが蒸散物7で汚れた後、偏心板22dを180度回転させて図9(b)の状態にする。図9(b)は、偏心部22aの第2の状態の断面図であり、レーザ光14aは透明部材15aの第2の円周上に形成される円15fを貫通する。このようにして、透明部材15aの使用寿命を約2倍延ばしている。
【0028】
(実施の形態4)
実施の形態4は、透明ユニット23(実施の形態1における透明ユニット15に該当する)における透明部材23a(実施の形態1における透明部材15aに該当する)が容易に交換できる点で実施の形態1と相違する。
【0029】
図10において、透明部材23aは保護カバー23b内に収納されている。この保護カバー23bには、レーザ光14aが貫通する孔23c、23dが形成されている。この孔23c、23dは、透明部材23aを形成する第1の円周上に形成された円23e(実施の形態1における円15eに該当する)に対応して設けられている。
【0030】
透明部材23aは肉厚部材で形成されており、その外周の縁には回転駆動力が伝達される歯23fが形成されている。この歯23fは、保護カバー23bに形成された孔23c、23dと反対側に露出している。23gは回転軸であり、保護カバー23bに設けられた孔23hに嵌入されて回転自在に収納されている。本実施の形態において、透明ユニット23は保護カバー23bに収納されているので、駆動部16への連結と脱着が容易であり交換を容易に行うことができる。
【0031】
図11に透明ユニット23の駆動部16との連結を示す。図11(a)は断面図であり、駆動部16に連結された歯車23jに歯23fが歯合して駆動部16の動力を透明部材23aに伝達している。図11(b)は、その平面図であり、歯車23jが矢印24a方向に回転することにより、透明部材23aは矢印24b方向に回転する。
【0032】
なお、歯車23jによる回転力を透明部材23aへ伝達させる他の例として、図12、図13に示す構成がある。即ち、図12では、透明部材23p(透明部材23aに該当する)の回転軸23gに歯車23kを装着し、この歯車23kを歯車23jで回転させる。また、図13に示すように蓮歯車(歯車23kに該当する)23mと、この蓮歯車23mに歯合する蓮歯車23n(歯車23jに該当する)を用い、この蓮歯車23nで蓮歯車23mを回転させて透明部材23aを回転させても良い。これらの場合、回転軸23gを回転させて駆動力を伝達させるので、透明部材23pの薄型化を図ることができる。
【0033】
(実施の形態5)
実施の形態5は、透明ユニット25(実施の形態1における透明ユニット15に該当する)における透明部材25aが実施の形態4における透明部材23aと比較して低価格で実現できる点で相違する。
【0034】
この透明部材25aは肉厚部材(材質は透明部材15aと同じ)で形成されており、中心には回転軸25bが装着されている。また、外周の縁には歯25cが形成されている。この透明部材25aの外周上の上面と下面には夫々穴25d,25eが対向して形成されている。この穴25d、25eは、実施の形態1における円15eに該当した位置に設けられている。この穴25d,25eを形成することで、この穴25d,25e間には、レーザ光14aを透過させる肉薄部材で形成されたレーザ光14aの透過部25fが形成される。
【0035】
本実施の形態においては、実施の形態4で用いた保護カバー23bが不要となるので、低価格化を図ることができる。
【0036】
(実施の形態6)
実施の形態6は、透明ユニット26(実施の形態5における透明ユニット25に該当する)における透明部材25aが実施の形態5における透明部材25aと比較して容易に形成できる点で相違する。
【0037】
図15において、円盤形状をした透明部材26aの中心には回転軸26bが設けられており、円周の縁には透明部材26aに回転駆動力を与える歯26cが形成されている。また、実施の形態5における穴25d,25eの位置には貫通孔26dが形成されている。この貫通孔26dの上面にはフィルム26eが貼り付けてある。このフィルム26eの材質は、透明部材15aと同じ材質である。本実施の形態においては、レーザ光14aの通過路に貫通孔26dを設け、その上面(レンズ14b側)にフィルム26eを貼り付けることで形成でき、対向した穴25d,25eを設ける必要がなく製造が容易となる。
【0038】
(実施の形態7)
実施の形態7では、透明ユニット25(透明ユニット15、21,22,23、26でも同様)のレーザユニット14への装着関係を説明する。
【0039】
図16(a)において、レーザユニット14のレーザ光14aの放射部には、透明ユニット25が装着される。この透明ユニット25を構成する第1の軸受け25hには透明部材25aの回転軸25bの一方が回転自在に挿入される。この回転軸25bの他方は第2の軸受け25jで回転自在に支えられる。また、この第2の軸受け25jには、透明部材15aの縁に形成された歯25cに歯合する歯車23jが装着されており、この歯車23jは駆動部16(図1参照)に連結されている。
【0040】
図16(b)は、第1の軸受け25hとその周辺を上方から見た平面図である。図16(b)において、第1の軸受け25hの一方(歯車23jの反対側)には、レーザ光14aが貫通する孔25kが設けられており、この孔25k内にはレンズ14bが装着されている。
【0041】
図16(c)は、第2の軸受け25jとその周辺を下方から見た平面図である。図16(c)において、第2の軸受け25jの一方(歯車23jの反対側)には、透明部材25aに装着された回転軸25bを外方から水平方向に挿入する切り込み25mが設けられている。この切り込み25mの先端の点線25n内をレーザ光14aが貫通する。
【0042】
次に、図16(a)を用いてレーザユニット14を説明する。レーザユニット14を構成する発振チューブ14c内には、Er:YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ結晶14eとフラッシュ光源14f(光源の一例)が格納されている。発振チューブ14cの一方の端には透過率約1%の部分透過鏡14gが装着されており、他方の端には全反射鏡14hが装着されている。部分透過鏡14gの前方には凸レンズ14bが装着されており、レーザ光14aで患者の皮膚下に焦点を結ぶように設定されている。
【0043】
以上のように構成されたレーザユニット14について、以下にその動作を説明する。穿刺ボタン14j(図21参照)を押下する。そうするとフラッシュ光源14fが発光する。このフラッシュ光源14fから放射された光は、Er:YAGレーザ結晶14e内に入り、ここで、全反射鏡14hとYAGレーザ結晶14eと部分透過鏡14gの間を反射して共振するとともに増幅される。この増幅されたレーザ光の一部は誘導放出により部分透過鏡14gを通過する。この部分透過鏡14gを通過したレーザ光14aはレンズ14bを透過して放射され、皮膚9下で焦点を結ぶ。穿刺する際の焦点の深さは、皮膚9から0.1mm〜1.5mmが適しており、本実施の形態では0.5mmとしている。
【0044】
(実施の形態8)
実施の形態8では、本実施の形態1〜7で説明したレーザ穿刺装置11を用いた血液検査装置51について説明する。
【0045】
図17(a)は、血液検査装置51の側面から見た断面図である。図17(a)において、血液検査装置51を側面から見ると、本体部52aの一方に設けられた穿刺部53(実施の形態1における穿刺開口部13に該当する)と、この穿刺部53に対向して設けられたレーザユニット14と、このレーザユニット14と穿刺部53との間に設けられた透明ユニット25(これは実施の形態1〜7で説明した透明ユニット15、21,22,23、26の何れであっても良い)と、この透明ユニット25に連結された駆動部16とが配置されている。
【0046】
また、この血液検査装置51を第1の正面から見ると図17(b)に示すように、本体部52aと、この本体部52aと支点52cで回動自在に設けられた蓋部52bとで構成されている。この蓋部52bの開閉は開閉センサ52d(図17(c)参照)で検知される。
【0047】
本体部52a内には、血液センサ(以下センサという)55(図18,19,20参照)が積層収納されるとともに着脱自在なセンサカートリッジ54と、このセンサカートリッジ54の下方に設けられたセンサ出口54aと、このセンサ出口54aに連結されるとともに本体部52aの一方の辺の角に設けられた穿刺部53と、この穿刺部53に対向して設けられたレーザユニット14と、このレーザユニット14と、穿刺部53との間に設けられた透明ユニット25とが配置されている。54cは、センサカートリッジ54内に収納された乾燥剤である。この乾燥剤54cは、センサ55内に載置された試薬(図18参照)の湿気による劣化を防止するものである。
【0048】
ここで穿刺部53は、上ホルダ53aと下ホルダ53bとで構成されており、センサ出口54aに連結して一直線上に設けられている。上ホルダ53aは本体部52aに固定されており、下ホルダ53bは板バネで上ホルダ53a側へ付勢されている。そして、センサカートリッジ54内に積層収納されたセンサ55の内一番下のセンサ55aが、スライダ54bでセンサ出口54aを介して穿刺部53方向に搬送される。スライダ54bで搬送されたセンサ55は、上ホルダ53aと下ホルダ53bとの間に挿入されて狭持される。
【0049】
この血液検査装置51を第2の正面から見ると図17(c)に示すように、本体部52a内にレーザユニット14と透明ユニット25に隣接して測定回路部57と、電池58が収納されている。また、本体部52aの他方の面(上面)には、には穿刺ボタン14jが設けられている。
【0050】
図17(a)、(b)、(c)は、蓋部52bが開かれた状態を示している。蓋部52bは本体部52aに対して2段階の開角で停止可能に設けられている。2段階の開角による停止位置は、開角約30度で停止する第1段階の停止位置と、開角約90度で停止する第2段階の停止位置との2つの停止位置である。
【0051】
蓋部52bを開放すると、センサ出口54aが開き、センサカートリッジ54内の一番下のセンサ55がスライダ54bにより、上ホルダ53aと下ホルダ53bとの間にセットされる。
【0052】
この血液検査装置51は、穿刺部53に皮膚9(図1参照)を当接させて穿刺ボタン14jを押下することにより、レーザユニット14からはレーザ光14aが発射して皮膚9を穿刺するものである。このとき蓋部52bは、開角約30度の第1段階の停止位置としておくことにより、レーザ光14aが外部へ洩れることはなく安全である。また、センサカートリッジ54の交換においては、蓋部52bを開角約90度の第2段階の停止位置とすることにより容易にセンサカートリッジ54の挿抜を行うことができる。また、蓋部52bを閉じておくことにより、血液検査装置51の不使用時において、誤って穿刺ボタン14jを押下したとしてもレーザ光14aが外部へ発射されることはなく安全である。
【0053】
以下、本実施の形態における各部の詳細を説明する。図18は、センサ55の断面図である。このセンサ55は、基板31と、この基板31の上面に貼り合わされたスペーサ32と、このスペーサ32の上面に貼り合わされたカバー33とで構成されている。
【0054】
34は、血液10の貯留部であり、この貯留部34は、基板31の略中央に形成された基板孔31aと、この基板孔31aに対応してスペーサ32に形成されたスペーサ孔32aと、基板孔31aに対応してカバー33に形成されたカバー孔33aとが連通して形成されている。また、36は、センサ55の穿刺部53への装着位置を決める位置決め孔であり、センサ55を貫通して設けられている。
【0055】
35は、この貯留部34に一方の端が連結された血液10の供給路であり、貯留部34に溜められた血液10を毛細管現象で一気に検出部37へ導く路である。また、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。貯留部34の容積は0.904μLであり、供給路35の容積は0.144μLとしている。このように少量の血液10で検査可能とし、患者への負担を軽減している。
【0056】
40は、検出部37上に載置された試薬である。この試薬40は、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、PQQ−GDHを0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM添加して融解させて試薬溶液を調整し、これを基板31に形成された検出電極41,43(図19参照)上に滴下し、乾燥させることで形成したものである。この試薬40は吸湿すると性能の劣化が進行する。従って、この性能劣化を防止するために、センサカートリッジ54内には乾燥剤54cが収納されている。
【0057】
ここで、基板31の上面には金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法或いは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザ加工により検出電極41〜45と、この検出電極41〜45から夫々導出された接続電極41a〜45aと識別電極47aが一体的に形成されている。
【0058】
また、基板31、スペーサ32、カバー33の材質は共にポリエチレンテレフタート(PET)を用いている。材料の共用化を図ることにより、管理コストの低減を図っている。
図19は、センサ55の透視平面図であり、一方の端には、接続電極41a〜45aと、識別電極47aが形成されている。接続電極43aと識別電極47aとの間に、導電体パターンで形成された識別部47が形成されている。
【0059】
34は、センサカートリッジの略中央に設けられた血液10の貯留部であり、この貯留部34に一方の端が接続された供給路35が検出電極42に向かって設けられている。そして、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。この供給路35上には、貯留部34から順次接続電極44aに接続された検出電極44と、接続電極45aに接続された検出電極45と、再度接続電極44aに接続された検出電極44と、接続電極43aに接続された検出電極43と、接続電極41aに接続された検出電極41と、再度接続電極43aに接続された検出電極43と、接続電極42aに接続された検出電極42が設けられている。また、検出電極41,43上には、試薬40(図18参照)が載置される。
【0060】
接続電極43aと識別電極47a間の電気的な導通があるか無いかで、センサ55が穿刺部53に装着されたか否かを識別することができる。即ち、このセンサ55を穿刺部53に搬送したとき、接続電極43aと識別電極47a間の電気的な導通を検知することにより、センサ55が正しく穿刺部53に装着されたか否かを検知することができる。若し電気的な導通がなければ、センサ55が穿刺部53に装着されていない訳である。この場合は、血液検査装置51の表示部60(図21参照)へ警告表示することができる。
【0061】
また、識別部47の電気抵抗値を変えることにより、使用する検量線の情報を格納したり、製造情報を格納したりすることが可能となる。従って、これらの情報を用いて、より精密な血液検査を行なうことができる。
【0062】
図20は、センサ55の斜視図である。このセンサ55は長方形状をした板体で形成されている。この板体の略中央には貯留部34が形成されており、一方の端には接続電極41a〜45aと識別電極47aが形成されている。また、他方の端近傍には位置決め孔36が形成されている。この位置決め孔36は、貯留部34側が狭まった台形をしている。この位置決め孔36と貯留部34との間に空気孔38が形成されている。
【0063】
図21は、測定回路部57とその近傍のブロック図である。図21において、センサ55の接続電極41a〜45a、(図19参照)は、上ホルダ53aに形成されたコネクタ49a〜49eを介して切換回路57aに接続されている。この切換回路57aの出力は、電流/電圧変換器57bの入力に接続されている。そして、その出力はアナログ/デジタル変換器(以後、A/D変換器という)57cを介して演算部57dの入力に接続されている。この演算部57dの出力は、液晶で形成された表示部60と送信部57eに接続されている。また、切換回路57aには基準電圧源57fが接続されている。なお、この基準電圧源57fはグランド電位であっても良い。
【0064】
57gは制御部であり、この制御部57gの出力は、駆動部16と、レーザユニット14に接続された高電圧発生回路57hと、切換回路57aの制御端子と、演算部57dと、送信部57eに接続されている。また、制御部57gの入力には、開閉センサ52dと、穿刺ボタン14jと、タイマ57kと、コネクタ49fが接続されている。
【0065】
以下、測定回路部57の動作を説明する。先ず、穿刺ボタン14jを押下して、レーザユニット14で皮膚9を穿刺する。そして、穿刺により滲出した血液10の性質を測定する。測定動作では、切換回路57aを切換えて、検出電極41(図19参照)を電流/電圧変換器57bに接続する。また、血液10流入を検知するための検知極となる検出電極42を基準電圧源57fに接続する。そして、検出電極41及び検出電極42間に一定の電圧を印加する。この状態において、血液10が流入すると、検出電極41,42間に電流が流れる。この電流は、電流/電圧変換器57bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器57cによってデジタル値に変換される。そして、演算部57dに向かって出力される。演算部57dはそのデジタル値に基づいて血液10が十分に流入したことを検出する。
【0066】
次に、血液成分であるグルコースの測定が行なわれる。グルコース成分量の測定は、先ず、制御部57gの指令により、切換回路57aを切換えて、グルコース成分量の測定のための作用極となる検出電極41を電流/電圧変換器57bに接続する。また、グルコース成分量の測定のための対極となる検出電極43を基準電圧源57fに接続する。
【0067】
なお、血液中のグルコースとその酸化還元酵素とを一定時間反応させる間は、電流/電圧変換器57b及び基準電圧源57fをオフにしておく。そして、一定時間(1〜10秒)の経過後に、制御部57gの指令により、検出電極41と43間に一定の電圧(0.2〜0.5V)を印加する。そうすると、検出電極41,43間に電流が流れる。この電流は電流/電圧変換器57bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器57cによってデジタル値に変換される。そして、演算部57dに向かって出力される。演算部57dではそのデジタル値を基にグルコース成分量に換算する。
【0068】
グルコース成分量の測定後、Hct値の測定が行なわれる。Hct値の測定は次のように行なわれる。先ず、制御部57gからの指令により切換回路57aを切換える。そして、Hct値の測定のための作用極となる検出電極45を電流/電圧変換器57bに接続する。また、Hct値の測定のための対極となる検出電極41を基準電圧源57fに接続する。
【0069】
次に、制御部57gの指令により、電流/電圧変換器57b及び基準電圧源57fから検出電極45と41間に一定の電圧(2V〜3V)を印加する。検出電極45と41間に流れる電流は、電流/電圧変換器57bによって電圧に変換され、その電圧値はA/D変換器57cによってデジタル値に変換される。そして演算部57dに向かって出力される。演算部57dはそのデジタル値に基づいてHct値に換算する。
【0070】
この測定で得られたHct値とグルコース成分量を用い、予め求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、グルコース成分量をHct値で補正し、その補正された結果を表示部60に表示する。何れの検量線または検量線テーブルを用いるかは、センサ55内の識別部47に基づいて決定する。また、検量線または検量線テーブルで補正された結果を送信部57eからインスリンを注射する注射装置に向けて送信する。この送信は電波を用いることもできるが、医療器具への妨害のない光通信で送信することが好ましい。
【0071】
このように補正された測定データを送信部57eから送信することにより、インスリンの投与量が注射装置に自動的に設定されるようにすれば、患者が投与するインスリンの量を注射装置に設定する必要は無く、設定の煩わしさは無くなる。また、人為手段を介さずにインスリンの量を注射装置に設定することができるので、設定のミスを防止することができる。
【0072】
以上、グルコースの測定を例に説明したが、センサ55の試薬40を交換して、グルコースの測定の他に乳酸値やコレステロールの血液成分の測定にも適用できる。
次に、図22を用いて血液検査装置51を用いた検査方法を説明する。先ずステップ61において、血液検査装置51の蓋部52bを開ける。蓋部52bの開は開閉センサ52dで検知する。この開閉センサ52dの出力を検知した時点で高電圧発生回路57hを動作させて、コンデンサに高電圧チャージを開始させる。この蓋部52bの開に連動してセンサカートリッジ54に設けられたセンサ出口54aが開となる。
【0073】
次に、ステップ62に移行する。ステップ62では、スライダ54bによりセンサ55を搬送する。即ち、積層収納されたセンサ55の内、一番下のセンサ55aを穿刺部53へ搬送する。この搬送の確認は、センサ55の接続電極43aと識別電極47aの導通を検知することにより行う。そして、ステップ63に移行する。
【0074】
ステップ63において、患者は血液検査装置51を患者の皮膚9に当接させて穿刺ボタン14jを押下する。そして、ステップ64へ移行する。
【0075】
ステップ64では、皮膚9の穿刺により、滲出した血液10がセンサ55の貯留部34に取り込まれる。この貯留部34に取り込まれた血液10は、供給路35による毛細管現象により一気に(定まった流速で)検出部37に取り込まれる。そして、血液10の血糖値が測定される。
【0076】
ステップ64で血糖値が測定されたら、ステップ65に移行し、測定した血糖値を表示部60に表示するとともに、同一の透明ユニット25内での穿刺回数カウンタをカウントアップする。なお、この穿刺回数カウンタは透明ユニット25が新しく装着するときにリセットされる。
【0077】
そして、ステップ66へ移行する。ステップ66において穿刺回数カウンタが一つの円15e(図2参照)に対して10以内であったなら、ステップ67へ移行する。ステップ67では透明部材25aを一回転させ、ステップ68に移行する。ステップ68では、血液検査装置51の蓋部52bを閉じる。この蓋部52bの閉塞は開閉センサ52dで検出される。蓋部52bの閉塞動作に伴って、センサカートリッジ54のセンサ出口54aは閉じられる。
【0078】
ステップ66において、透明部材25aの円周上にある全ての円15eに対して穿刺回数カウンタが10を超えていたらステップ69へ移行する。そして表示部60へ透明ユニット25の交換を指示してステップ68へ移行する。
【0079】
以上、説明したように、ステップ66において、透明部材25aの使用回数をカウントして一つの円15eに対して10回以上穿刺しないように管理しているので、レーザ光14aの強度が低下を防止することができる。
【0080】
また、駆動部16による回転制御により、透明部材25aの取替え回数を格段に減少させることができる。従って、取替えの煩さは著しく減少する。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明にかかるレーザ穿刺装置は、透明部材の取替え回数を極端に少なくすることができるので、レーザユニットを用いた血液検査装置等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1におけるレーザ穿刺装置の断面図
【図2】同透明ユニットに用いられる透明部材の平面図
【図3】同実施の形態2におけるレーザ穿刺装置の要部断面図
【図4】同透明ユニットに用いられる透明部材とその近傍の平面図
【図5】同クリーナ部の斜視図
【図6】同実施の形態3におけるレーザ穿刺装置の要部断面図
【図7】同透明ユニットに用いられる透明部材の平面図
【図8】同偏心部の平面図
【図9】同動作説明図、(a)は同第1の状態を示す断面図、(b)は同第2の状態を示す断面図
【図10】同実施の形態4におけるレーザ穿刺装置に使用する透明部材の断面図
【図11】同透明部材とその周辺の説明図、(a)は同断面図、(b)は同平面図
【図12】同第2の例による要部断面図
【図13】同第3の例による要部断面図
【図14】同実施の形態5におけるレーザ穿刺装置に使用する透明部材の説明図、(a)は同断面図、(b)は同平面図
【図15】同実施の形態6におけるレーザ穿刺装置に使用する透明部材の断面図
【図16】同実施の形態7におけるレーザ穿刺装置の説明図、(a)は同断面図、(b)は同上方から見た平面図、(c)は同下方から見た平面図
【図17】同実施の形態8における血液検査装置の説明図、(a)は同側面から見た断面図、(b)は同第1の切断面による断面図、(c)は同第2の切断面による断面図
【図18】同穿刺部へ挿入されるセンサの断面図
【図19】同センサの透視平面図
【図20】同センサの外観斜視図
【図21】同測定回路部とその近傍のブロック図
【図22】同検査方法のフローチャート
【図23】従来のレーザ穿刺装置の断面図
【図24】同レーザ穿刺装置を構成する透明部材の平面図
【符号の説明】
【0083】
12 筐体
13 穿刺開口部
14 レーザユニット
15a 透明部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、この筐体に設けられた穿刺開口部と、この穿刺開口部に対向して設けられたレーザユニットと、このレーザユニットと前記穿刺開口部との間に設けられた透明部材とを備え、前記透明部材は、回転可能な点対称形状にするとともに穿刺回数に基づいて前記透明部材を予め定められた量回転させるレーザ穿刺装置。
【請求項2】
穿刺回数に基づいて透明部材を清掃する請求項1に記載のレーザ穿刺装置。
【請求項3】
透明部材の交換を可能とした請求項1に記載のレーザ穿刺装置。
【請求項4】
透明部材の回転中心を偏心可能とした請求項1に記載のレーザ穿刺装置。
【請求項5】
透明部材を保護カバーに収納した請求項3に記載のレーザ穿刺装置。
【請求項6】
前記透明部材の外周を歯車形状とし、レーザ光の透過部を肉薄とした請求項1に記載のレーザ穿刺装置。
【請求項7】
透明部材を肉厚の樹脂で形成するとともに、前記透明部材の外縁は歯車形状とし、レーザ光の透過部に複数個の孔部を設けるとともに、この孔部に光透過性のフィルムを装着した請求項3に記載のレーザ穿刺装置。
【請求項8】
透明部材の交換を報知する請求項3に記載のレーザ穿刺装置。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザ穿刺装置を用い、その透明部材と穿刺開口部との間に血液センサを着脱自在に装着し、この血液センサから出力される信号が接続された測定回路部を有する血液検査装置。
【請求項10】
筐体内に血液センサが積層収納されたセンサカートリッジを装着するとともに、穿刺の度にこのセンサカートリッジから血液センサを一枚ずつ穿刺開口部へ搬送する請求項9に記載に記載の血液検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−89994(P2009−89994A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265177(P2007−265177)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】