説明

レーザ装置

【課題】光パルス間で発生するASE光の発生を抑制可能なレーザ装置を提供すること。
【解決手段】実施形態のレーザ装置は、第1の波長帯域で発振するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器を所定の周波数でパルス動作させるレーザ駆動部と、前記レーザ発振器の光出力を増幅する光ファイバ増幅部と、前記光ファイバアンプ部の増幅用光ファイバに、第2の波長帯域の励起光を供給する励起光源と、前記増幅用光ファイバに、その励起準位のエネルギーを消費させる第3の波長帯域のエネルギー消費光を前記所定の周波数に同期して供給するエネルギー消費光源と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ファイバ増幅器を有するレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器から出力される光出力を光ファイバ増幅器で増幅するレーザ装置は高出力化が可能であり、通信、医療、光計測、機械加工等の多くの分野で用いられている。このようなレーザ装置は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)光源と呼ばれる。
【0003】
従来のMOPA光源は、図10に示すように、シード光を発生させるレーザ発振器(MO)100と、このシード光を増幅する光増幅器(PA)101から構成される。レーザ発振器100はレーザ102と、これをパルス駆動する駆動回路103から構成される。
【0004】
また、光増幅器101に光ファイバ増幅器を用いる場合は、光増幅用ファイバ104、光増幅用ファイバ104にドープされた希土類イオンの励起準位にキャリアを励起するための励起光源105、および励起光を光増幅用ファイバ104に結合するカプラ106などから構成され、シード光が増幅されて高出力な出力光107が出力される。
【0005】
例えば、光増幅用ファイバ104にTm(ツリウム)がドープされた光ファイバ増幅器101を仮定した場合は、励起光源105として、波長793nmのCW動作可能なレーザダイオードを用い、レーザ発振器(MO)100の出力には、波長1800nmから2100nmのシード光を用いる。
【0006】
図11を用いてこのようなMOPA光源の動作を説明する。図11(a)は、レーザ発振器100から出力されるシード光の光出力波形111を示し、図11(b)は、励起光源105の光出力波形112(符号の添え字pはパルス、cは連続を表す)を示している。また、図11(c)は、レーザ増幅器101の光出力波形113を示している。
【0007】
通常、レーザ発振器100をパルス動作させ、励起光源105の出力をCW(Continues Wave)光112cとした場合、光ファイバ増幅器101からの出力には、シード光パルス111が増幅された出力光113cに加え、自然放出光が増幅されたASE(Amplified Spontaneous Emission)光114が出力される。
【0008】
このASE光114は、光ファイバ増幅器101出力をSHGなど(SHG:Second harmonic generation)の波長変換結晶に入射させる場合には、熱的な負担を与えることになる。また、センシングなどの光計測用途ではノイズの原因になる。
【0009】
これを防止するために、図11の矢印に示すようにレーザ発振器100の光出力波形111の光パルスにタイミングに合わせて、励起光源105の光出力112pをON/OFFさせることが考えられている。光パルス周波数が10Hz〜100Hz程度の低周波であれば、励起光源105のパルス幅とタイミングをシード光出力波形111のパルス動作周波数と同期させて調整することにより、ASE光114を有効に除去することが可能である。しかし、パルス動作周波数が200Hz以上になると、光増幅用ファイバの励起準位にキャリアを十分励起する時間(パルス幅)が確保できないため、光ファイバ増幅器101からの光出力113pが低下するという問題が生じる。このためこの方法は概ね100Hz以下の低周波のみに有効である。尚、ここでは説明のためこの方法を「励起光源ON/OFF方式」と呼ぶことにする。
【0010】
また、ASE光の過剰な発生を抑制するために一定出力の雑音抑制光を光増幅用ファイバに供給するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−273428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、上記問題を解決し、光パルス間で発生するASE光の発生を抑制可能なレーザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するために、実施形態のレーザ装置は、第1の波長帯域で発振するレーザ発振器と、前記レーザ発振器を所定の周波数でパルス動作させるレーザ駆動部と、前記レーザ発振器の光出力を増幅する光ファイバ増幅部と、前記光ファイバ増幅部の増幅用光ファイバに、第2の波長帯域の励起光を供給する励起光源と、前記増幅用光ファイバに、その励起準位のエネルギーを消費させる第3の波長帯域のエネルギー消費光を前記所定の周波数に同期して供給するエネルギー消費光源と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係るレーザ装置のブロック構成図。
【図2】同実施形態に係るエネルギー消費光源駆動部のブロック構成図。
【図3】同実施形態に係るレーザ装置の動作を説明する図。(a)は光ファイバ増幅器用励起光源の光出力波形、(b)はレーザ発振器の光出力波形、(c)は、エネルギー消費光源の光出力波形、(d)は、光ファイバ増幅器の光出力波形である。
【図4】3準位系レーザのエネルギー準位を表す概念図。
【図5】単一パルスで構成されるエネルギー消費光源のパルス光送出タイミング図。(a)はレーザ発振器出力、(b)はエネルギー消費光源の入力光パルスを示す。
【図6】複数のパルスで構成されるエネルギー消費光源のパルス光送出タイミング図。(a)はレーザ発振器出力、(b)はエネルギー消費光源の入力光パルスを示す。
【図7】同実施形態に係る光増幅用ファイバの構成例。
【図8】第2の実施形態に係るレーザ装置のブロック構成図。
【図9】同実施形態に係るエネルギー消費光源の光パルス送出タイミングを説明する図。(a)は単一パルスの場合、(b)は複数パルスの場合である。
【図10】従来のMOPA光源のブロック構成図。
【図11】従来のMOPA光源の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための実施形態について図1から図11を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のレーザ装置のブロック構成を示している。図1に示すように、本実施形態のレーザ装置は、シード光を発生するレーザ発振器(MO)10とレーザ発振器10から出力するシード光パルスを増幅する光ファイバ増幅器(PA)20から構成されている。
【0017】
レーザ発振器10は、ファイバレーザ発振器11と、このファイバレーザ発振器11を光励起により発振させるためのレーザ発振器用励起光源12、このレーザ発振器用励起光源12を制御してレーザ発振器10をパルス動作させ、その光出力パルス周波数を制御する発振器用励起光源駆動回路13、および光出力を一方向に出力させ、反射戻り光の影響を防止する光アイソレータ14を有する。
【0018】
ファイバレーザ発振器11は、Yb、Er、Ho、Tmなどの希土類が添加された発振用光ファイバ15の両端にFBG(ファイバブラッググレーティング)などで構成される高反射率なミラー11a、11bが設けられている。このミラー11a、11bは、発振波長に対して高反射率特性を有しているがレーザ発振器用励起光源12の波長に対しては透過する特性を有する。
【0019】
光ファイバ増幅器20は、光増幅用ダブルクラッドファイバ21、光増幅用ファイバ21に利得を生じさせるための光ファイバ増幅器用励起光源22、この光ファイバ増幅器用励起光源22を駆動する増幅器用励起光源駆動回路23、ASE光を減少させるため励起エネルギーに蓄積された過剰のキャリアを消費させるエネルギー消費光源24、このエネルギー消費光源24をレーザ発振器10から出力される光パルスの周波数と同期して駆動するエネルギー消費光源駆動回路25、光出力パルスの伝搬方向と逆方向に沿って、光ファイバ増幅器用励起光源22とエネルギー消費光源24の光出力を光増幅用ダブルクラッドファイバ21のインナークラッドに伝搬させるためのマルチモードコンバイナー26、および光ファイバ増幅器用励起光源22とエネルギー消費光源24の光出力を光増幅用ダブルクラッドファイバ21の端部で無反射終端を行う無反射終端部27を有する。以上の構成によってASE光を抑制した光出力28が得られる。
【0020】
また、図2にエネルギー消費光源駆動部25のブロック構成を示す。エネルギー消費光源駆動部25は、エネルギー消費光源24をレーザ発振器100の光出力パルス周波数と同期させるための駆動条件設定部251と、この駆動条件でエネルギー消費光源24を駆動するエネルギー消費光源駆動回路252を有する。
【0021】
駆動条件設定部251は、レーザ発振器10の光出力パルス周波数と同期させるための同期情報を取得し、エネルギー消費光パルスの送出タイミングを調整する送出タイミング調整部253、エネルギー消費光のパルス幅を調整するパルス幅調整部254、およびエネルギー消費光の光出力を調整する光出力調整部255を有する。
【0022】
以上の構成によって、本実施形態の動作について図3を用いて説明を行う。図3(a)は光ファイバ増幅器用励起光源22の光出力波形、図3(b)はレーザ発振器10の光出力波形、図3(c)は、消費エネルギー光源24の光出力波形、(d)は、光ファイバ増幅器20の光出力波形である。
【0023】
まず、本実施形態では、図3(a)に示すように光ファイバ増幅器用励起光源22の光出力波形31は一定出力とする。この時、図3(b)に示すように、レーザ発振器10の光出力波形は、周期(1/fp)(fp:光パルス繰り返し周波数)で発振し、光出力パルス32を出力させているものとする。
【0024】
ここで、図3(c)の矢印に示すように、エネルギー消費光源24の光出力パルス33を、レーザ発振器10の光出力パルス32間に挿入して光増幅用ダブルクラッドファイバ21に結合することにより、光増幅用ダブルクラッドファイバ21の励起準位に過剰に溜まったキャリアを誘導放出によって消費させ、図3(d)に示すように、光ファイバ増幅器20からはASE光の発生が抑制された光出力パルス34を得ることができる。
【0025】
図4は、3準位系ファイバレーザのエネルギー準位を表す概念図である。コアにTm(ツリウム)がドープされた光増幅用ダブルクラッドファイバ21の励起準位として3準位系を仮定している。光ファイバ増幅器用励起光源22によって基底準位E0にあるキャリア(電子)は、第1の励起準位E1へ励起され、所定のキャリア緩和時間τで第1のエネルギーE1より低い第2の励起準位E2に遷移する。第2の励起準位E2に遷移したキャリアは、レーザ発振器100から入力されるシード光を誘導放出過程により増幅する。
【0026】
従って、光ファイバ増幅器用励起光源22(105)の光出力を、シード光の光パルス周波数に同期させて供給する「励起光源ON/OFF方式」では、光パルス周波数が高くなると光ファイバ増幅器101から出力される光パルス113cの出力レベルを著しく低下させるが、この原因は、第1の励起準位E1から第2の励起準位E2へのキャリア緩和が十分できないためであり、このキャリア緩和時間τによって動作周波数が律速されていると考えられる。
【0027】
また光出力の低下防止のためには、光ファイバ用増幅器用励起光源22(105)の光出力をCWとして光増幅用ダブルクラッドファイバ21(104)に供給する必要があるが、逆に光パルス周波数が低周波の場合にはASE光が顕著に発生する。この理由は、キャリア緩和時間τ経過した後においても、シード光が入力されないため、第2の励起準位E2に過剰にキャリアが蓄積する。そのため第2の励起準位E2から基底準位E0に遷移して発生する自然放出光のレベルが増加し、この自然放出光が光ファイバ増幅器20内部でさらに増幅されることによりASE光の出力レベルが増加する。
【0028】
本実施形態では、このASE光を抑制するためにエネルギー消費光を用いる。エネルギー消費光の波長帯域は、光増幅用ダブルクラッドファイバの増幅利得を有する波長帯域内に設定を行う。
【0029】
尚、本実施形態のレーザ装置の出力波長を用いて通信や、計測を行う場合は、エネルギー消費光とシード光を増幅利得内の異なる波長に設定した方が雑音の観点から好ましい場合もある。
【0030】
次に、図5を用いてレーザ発振器10から出力されるシード光パルス間に挿入するエネルギー消費光源のパルス光送出タイミングについて説明する。図5(a)に示すように、レーザ発振器10から出力される光パルス間の1周期について、光パルス周波数fpで規定される1周期間(1/fp)で繰り返されるシード光パルスを前方光パルス32s、後方光パルス32eとする。図5(b)に示すように、パルス幅Wのエネルギー消費光パルス33pの送出タイミングは、シード光前方パルス32sよりT1時間経過した後に設定され、エネルギー消費光パルス33pと次のシード光後方パルス32eの時間間隔はT2時間に設定される。
【0031】
時間T1が、第1の励起準位E1から第2の励起準位E2へキャリアが遷移するキャリア緩和時間τより長いと自然放出光が光ファイバ増幅器20内で増幅され、ASE光の出力レベルが増加するため、時間T1は概ねキャリア緩和時間τよりは短い時間に設定し、エネルギー消費光パルス33pによって第2の励起準位E2のキャリアを消費させるように設定する。
【0032】
時間T2については、後方シード光パルス32eに対して、反転分布を生じさせるキャリア数までキャリア密度を上昇させる必要があるため、エネルギー消費光パルス33pの立下りによって第2の励起準位E2のキャリア消費が停止した後、概ねキャリア緩和時間τ程度の時間が設定されることが好ましい。
【0033】
以上の説明は、定性的な説明であって、シード光パルス32s、32eおよびエネルギー消費パルス33pの光出力レベルやパルス幅などの条件によって励起準位E2に蓄積または消費されるキャリア数は異なるため、これら時間T1、T2は、実験等により最適な時間に設定する必要がある。
【0034】
また、図5ではエネルギー消費光パルス33pについて単一パルスを仮定したが、図6に示すように、エネルギー消費光パルスを複数のパルスに分解して供給してもよい。図6(b)では、2つのエネルギー消費光パルス33p1,33p2の場合について示している。エネルギー消費光パルス33p1,33p2のパルス幅をそれぞれW1、W2とし、そのパルス間隔を時間T3とする。
【0035】
上述の議論と同様に、時間T3は、キャリア緩和時間τよりは短い時間に設定することが好ましい。この場合もエネルギー消費光の光出力レベル、パルス幅、送出タイミングは、シード光パルスのパルス幅、光出力、繰り返し周波数などの光出力特性なども加味して実験することにより、光増幅特性を犠牲にすることなくASE光の発生を抑制できる駆動条件を駆動条件設定部25に設定する。
【0036】
なお、シード光パルスがキャリア緩和時間τの逆数(1/τ)よりも十分高い周波数で駆動される場合には、励起準位E2に存在するキャリアは連続するシード光パルスの誘導放出によって消費される。この場合は過剰なASE光は発生しないため、エネルギー消費光パルスの供給は特に必要ではない。
【0037】
図7は、光増幅用ファイバの構成例である。本実施形態の光増幅用ダブルクラッドファイバ21は、コア71に光を増幅するための希土類(Tm)が添加されている。そしてコア71の周囲を囲むインナークラッド72と、その外周をさらに覆うアウタークラッド73の2層のクラッド構造を有する。インナークラッド72の屈折率は、アウタークラッド73の屈折率より高く構成されていることにより、アウタークラッド73をクラッドとし、インナークラッド72をコアとして光を伝搬させることができる。このインナークラッド72をコアとして伝搬する光はマルチモードである。 また、本実施形態の光増幅用ダブルクラッドファイバ21は、光ファイバ増幅器用励起光源22およびエネルギー消費光源24の光をインナークラッドに供給するためのマルチモードコンバイナー26を備え、増幅器用励起光源22の光を供給する光供給ポート26p、エネルギー消費光を供給する光供給ポート26cを光増幅用ダブルクラッドファイバ21の出力側に備える。これにより、光ファイバ増幅器用励起光およびエネルギー消費光は、シード光の増幅、伝搬方向とは逆方向に沿って供給される。
【0038】
このようにエネルギー消費光は、インナークラッド72内をシード光とは逆行して伝搬するため、第2の励起準位E2に蓄積したキャリアを消費するのみで逆方向に増幅することはない。しかし、逆方向に伝搬するエネルギー消費光がレーザ発振器10に入力されるとレーザ発振特性に影響を与えるため除去する必要がある。特にレーザ発振器10においてダブルクラッドファイバを用いている場合、アイソレータ14はコア71を伝搬するシングルモードにのみ効果があるため、インナークラッドを伝搬する光に対する光終端が必要になる。
【0039】
従って光増幅用ダブルクラッドファイバ21には、マルチモードコンバイナー26の反対側の端部に、無反射終端部27が形成されており、光供給ポート26p、26cから供給された増幅器用励起光およびエネルギー消費光はこの部分で終端され、レーザ発振器10に入力されたり、光増幅用ダブルクラッドファイバ21内部で多重反射することを防止することができる。
【0040】
この無反射終端部27は、例えば増幅用ダブルクラッドファイバ21のアウタークラッド73の一部を除去し、インナークラッド72の屈折率以上の屈折率を有するコーティング剤74でインナークラッド72の外周をコーティングすることによって形成できる。
【0041】
矢印で示すインナークラッドを伝搬する光は、この無反射終端部27によって、伝搬モードから放射モードとなるため、光は損失となりコーティング剤74の部分で吸収される。
【0042】
また、上述したように光供給ポート26cから供給されたエネルギー消費光は、コア71を通過する時には増幅されるが、インナークラッド72を伝搬する時は、増幅されず損失となるため、増幅用ダブルクラッドファイバ21の長さ、損失条件などによっては、必ずしも無反射終端部27はなくても良い。また、この無反射終端部27は必ずしも端部にある必要はない。
【0043】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、ASE光の発生を抑制するために、エネルギー消費光をシード光パルス間に供給することにより、過剰に蓄積した励起準位のキャリアを消費させることができるため、ASE光を大幅に減少することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態は、原理的には低周波から高周波までのどのような光パルスの繰り返し周波数に対してもASE光が有効に低減できる。特に従来の「励起光源ON/OFF方式」のように200Hz以上の光パルスの繰り返し周波数において光出力の低減が生じることがないという効果を奏する。
【0045】
尚、本実施形態は、Tmがコアにドープされたレーザ装置について説明したが、他の希土類がドープされた光ファイバについても同様の効果を有する。また、エネルギー消費光をシード光の伝搬方向と逆方向に供給したが、順方向に供給しても一定の効果が得られる。
【0046】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態をさらに簡略化した構成で同様の効果を奏する実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態に係るレーザ装置のブロック構成図である。
【0047】
本実施形態のレーザ装置は、第1の実施形態と同様に、シード光を発生するレーザ発振器(MO)10とレーザ発振器10から出力するシード光パルスを増幅する光ファイバ増幅器(PA)80から構成されている。レーザ発振器10は、第1の実施形態と同じなため説明を省略する。
【0048】
光ファイバ増幅器80は、第1の実施形態の構成からエネルギー消費光源24とエネルギー消費光源駆動回路25を廃し、その代わりにシード光の一部をエネルギー消費光として用いる。
【0049】
すなわち、第1の実施形態と同様に、光増幅用ダブルクラッドファイバ21、光増幅用ファイバ21に利得を生じさせるための光ファイバ増幅器用励起光源22、この光ファイバ増幅器用励起光源22を駆動する増幅器用励起光源駆動回路23、光出力パルスの伝搬方向と逆方向に沿って、光ファイバ増幅器用励起光源22とエネルギー消費光源の光出力を光増幅用ダブルクラッドファイバ21のインナークラッドに供給するマルチモードコンバインナー26、および光ファイバ増幅器用励起光源22とエネルギー消費光源24の光出力を光増幅用ダブルクラッドファイバ21の端部で無反射終端を行う無反射終端部27に加え、シード光を所定の分岐比で分岐する分岐カプラ81、および分岐したシード光を所定の時間だけ遅延させる光遅延回路82を設ける。
【0050】
ここで第1の実施例における光出力調整部255、パルス幅調整部254、および送出タイミング調整部253の機能がどのようにして達成されるかについて述べる。
【0051】
光出力調整は、分岐カプラ81の分岐比によって調整が可能である。また、必要に応じて光アッテネータを挿入してもよい。
【0052】
光送出タイミングにおいては、図9(a)に示すように、光ファイバ等の光導波路91aを用いて遅延し、シード光パルス間の所定の位置に供給できるように遅延時間を制御する。シード光の分岐光をエネルギー消費光として用いているため、光パルス周波数と自動的に同期が取れるという利点を持つ。
【0053】
また、光パルス幅の調整については、図9(b)に示すように、複数の遅延回路(図9では2つの遅延回路91a、91b)を設け、カプラ92で分岐し、カプラ93にて合波することにより、図5、6で示した、送出タイミング条件を満足することが可能となる。
【0054】
以上述べたように、第2の実施形態によれば、エネルギー消費光源24とエネルギー消費光源駆動回路25を廃し、その代わりにシード光の一部をエネルギー消費光として用いるためレーザ装置の装置構成が簡略化される。しかもパッシブ部品の追加のみで、第1の実施形態と同様な効果が得られるため、高信頼性や低価格化に大いに貢献する。
【0055】
本実施形態によれば、レーザ装置の光出力パルス間で発生するASE光の発生を大幅に抑制することが可能となる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、レーザ発振器10としてファイバレーザについて記述したが、半導体レーザなどを用いてもよい。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10…レーザ発振器、
11…ファイバレーザ発振器、
11a、11b…ファイバブラッググレーティング、
12…レーザ発振器用励起光源、
13…発振器用励起光源駆動回路、
14…光アイソレータ、
20…光ファイバ増幅器、
21…光増幅用ダブルクラッドファイバ、
22…光ファイバ増幅器用励起光源、
23…増幅器用励起光源駆動回路、
24…エネルギー消費光源、
25…エネルギー消費光源駆動回路、
26…マルチモードコンバイナー、
27…無反射終端部、
71…コア、
72…インナークラッド、
73…アウタークラッド、
74…コーティング剤、
82…光遅延回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長帯域で発振するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器を所定の周波数でパルス動作させるレーザ駆動部と、
前記レーザ発振器の光出力を増幅する光ファイバ増幅部と、
前記光ファイバアンプ部の増幅用光ファイバに、第2の波長帯域の励起光を供給する励起光源と、
前記増幅用光ファイバに、その励起準位のエネルギーを消費させる第3の波長帯域のエネルギー消費光を前記所定の周波数に同期して供給するエネルギー消費光源と、
を有するレーザ装置。
【請求項2】
前記光ファイバ増幅部から出力される光パルス間に前記エネルギー消費光が供給され、前記エネルギー消費光源の光出力、パルス幅、送出タイミングが前記光ファイバの励起準位の緩和時間に基づいて設定される請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記増幅用光ファイバはダブルクラッドファイバで構成され、前記エネルギー消費光は前記ダブルクラッドファイバのインナークラッドを伝搬するように供給される請求項2記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記ダブルクラッドファイバの一部に、インナークラッドを伝搬する光を無反射終端する無反射終端部を有する請求項3記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記レーザ発振器の光出力の一部を所定の分岐比、分岐数で分岐するカプラと、
前記カプラで分岐された分岐光の送出タイミングを遅延させる1つ以上の遅延回路と、
を有し、前記分岐光を前記エネルギー消費光源とする請求項4記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記無反射終端部は、前記ダブルクラッドファイバのアウタークラッドの一部を除去し、インナークラッドの屈折率以上の屈折率を有するコーティング剤でインナークラッド外周がコーティングされる請求項5記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記エネルギー消費光は、前記増幅用光ファイバの光出力パルスの伝搬方向と逆方向に沿って供給され、かつ前記無反射終端部が前記増幅用光ファイバの入力側に形成される請求項6記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記第3の波長帯域内に前記第1の波長帯域が含まれる請求項2記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−98457(P2013−98457A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242005(P2011−242005)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】