説明

レーダ装置、レドーム

【課題】レーダ装置において、部品点数や組み付けの手間を増加させることなく、送受信間のアイソレーションを向上させる。
【解決手段】レドーム3に、送信アンテナ部51から受信アンテナ部53への回り込みを抑制する仕切壁33を設ける。これにより、仕切壁33の設置のために特別な組み付け作業を必要とせず、レーダ装置1の本体にレドーム3を組み付けるだけで仕切壁33を設置することができる。このようなレドーム3を用いることにより、部品点数や組み付けの手間を増加させることなく、レーダ装置1の送受信間のアイソレーションを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ波を送受信して物標を検出するレーダ装置およびレーダ装置に装着するレドームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波レーダ装置のアンテナとして、基板上に送信アンテナ用のパターン(以下、送信アンテナ部という)、および受信アンテナ用のパターン(以下、受信アンテナ部という)を形成することで構成される平面アンテナが用いられている。そして、装置を小型化するために、図4に示すように、送信アンテナ部151と受信アンテナ部153とを同一基板150上に並べて形成することも行われている。
【0003】
但し、このようなアンテナでは、送受信間のアイソレーションを十分に確保することが困難であり、図4(a)に示すように、送信アンテナ部151から放射されたレーダ波の一部が受信アンテナ部153にて直接受信されることによる回り込みノイズが発生する。
【0004】
この回り込みノイズは、受信信号のノイズフロアを上昇させ、物標の検出性能(検知距離等)を低下させてしまうという問題があった。
また、図4(b)に示すように、アンテナ部分を保護するレドーム130が設けられている場合、このレドーム130からの反射も送受信間のアイソレーションを低下させる要因の一つとなっていた。
【0005】
これに対して、図5に示すように、アンテナ基板150の表面に、送信アンテナ部151と受信アンテナ部153との間を仕切る金属板や電波吸収体からなる仕切板160を設けることによって、送受信間のアイソレーションを改善する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−126146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この手法では、アンテナ基板150に、当該基板とは材質の異なる物体である仕切板160を取り付ける必要があり、部品点数が増加するという問題や、組み付けに手間を要するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために、レーダ装置において、部品点数や組み付けの手間を増加させることなく、送受信間のアイソレーションを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載のレーダ装置は、レーダ波を送信する送信アンテナ部、およびレーダ波を受信する受信アンテナ部が同一面に形成されたアンテナ基板と、レーダ波を透過する材料で構成され、前記アンテナ基板のアンテナ形成面を覆うように設置されたレドームとを備えている。
【0010】
そして、本発明のレーダ装置では、レドームとアンテナ基板との間に形成される内部空間を、送信アンテナ部が位置する空間と受信アンテナ部が位置する空間とに分割する仕切壁が、レドームと一体に設けられている。
【0011】
このように構成された本発明のレーダ装置では、送信アンテナ部から受信アンテナ部への回り込みが、仕切壁によって抑制される。しかも、仕切壁がレドームに形成されているため、仕切壁の設置のために特別な組み付け作業を必要とせず、レーダ装置の本体にレドームを組み付けるだけで仕切壁を設置することができる。
【0012】
つまり、本発明のレーダ装置によれば、部品点数や組み付けの手間を増加させることなく、送受信間のアイソレーションを向上させることができる。
また、請求項2に記載のレドームは、レーダ波を透過する材料で構成され、前記レーダ波を送信する送信アンテナ部および前記レーダ波を受信する受信アンテナ部が同一面に形成されたアンテナ基板のアンテナ形成面を覆うように設置されるものである。
【0013】
そして、本発明のレドームは、設置時に当該レドームとアンテナ基板との間に形成される内部空間を、送信アンテナ部が位置する空間と受信アンテナ部が位置する空間とに分割する仕切壁が一体に設けられている。
【0014】
このように構成された本発明のレドームは、請求項1に記載のレーダ装置を構成する際に、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】レドームの全体構成を示す斜視図。
【図2】レドームを組み付けたレーダ装置の主要部の構成を示す断面図。
【図3】レドームの変形例の構成を示す斜視図。
【図4】従来の問題点を示す説明図。
【図5】従来装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[構成]
図1は、本発明が適用されたレドーム3の全体構成を示す斜視図、図2は、レドーム3をレーダ装置1の本体(図示せず)に組み付けた時のアンテナ基板5との位置関係を示す断面図である。但し、アンテナ基板5は、レーダ装置1の本体と一体に構成されている。
【0017】
なお、レーダ装置1は、車両に搭載され、ミリ波(本実施形態では76.5GHz)帯のレーダ波を送受信することで、レーダ波を反射した物標(先行車両、路上の障害物、路側物等)に関する情報(距離,相対速度,方位等)を求めるものである。
【0018】
図1に示すように、レドーム3は、一つの面が開放された直方体の箱状に形成されている。以下では、レドーム3が形成する内部空間の底を形成する部位を正面壁31、正面壁が形成された側の面を正面、内部空間と外部空間を連通する開口を形成する開口縁32を有する側の面を背面という。また、背面から正面に向かう方向をレーダ波の送信方向ともいう。
【0019】
そして、レドーム3の正面壁31には、内部空間を二つの直方体状の空間に仕切る仕切壁33が、レドーム3の他の部位と共に一体成形されている。
レドーム3は、レーダ波を透過する材料からなり、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS),ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT),シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)等が用いられる。また、レドーム3の厚さは、仕切壁33も含めて、使用するレーダ波の半波長程度(約2mm)に形成されている。
【0020】
アンテナ基板5は、図2に示すように、送信アンテナとして使用されるパターンが形成された送信アンテナ部51と、受信アンテナとして使用されるパターンが形成された受信アンテナ部53とからなり、送信アンテナ部51のパターンと受信アンテナ部53のパターンとは、アンテナ基板5の同一面(アンテナ形成面5a)に、少なくとも、仕切壁33の厚さより大きな間隔Wを空けて形成されている。
【0021】
そして、レドーム3の仕切壁33は、アンテナ基板5を覆うようにレーダ装置1の本体にレドーム3を固定した時に、送信アンテナ部51および受信アンテナ部53の両パターンの間にて、両パターンと接触することなく、アンテナ基板5のアンテナ形成面5aに接触するような位置および高さに形成されている。
【0022】
[作用]
レドーム3が組み付けられたレーダ装置1は、送信アンテナ部51から送信されたレーダ波は、レドーム3の正面壁31を透過して外部に放射され、物標に反射して戻ってくるレーダ波(反射波)は、レドーム3の正面壁31を透過して受信アンテナ部53にて受信される。
【0023】
また、送信アンテナ部51から送信されたレーダ波の一部は、仕切壁33に向かい、仕切壁33を透過して受信アンテナ部53にて受信される。しかし、仕切壁33は、入射するレーダ波の一部を反射する。特に仕切壁33への入射角度が90°から外れるほど、反射量は大きくなり、仕切壁33を介して受信アンテナ部51側に透過する(回り込む)レーダ波は減少する。
【0024】
[効果]
以上説明したように、レーダ装置1では、送信アンテナ部51から受信アンテナ部53への回り込みが、仕切壁33によって抑制される。しかも、仕切壁33がレドーム3に形成されているため、仕切壁33の設置のために特別な組み付け作業を必要とせず、レーダ装置1の本体にレドーム3を組み付けるだけで仕切壁33を設置することができる。
【0025】
つまり、レーダ装置1によれば、部品点数や組み付けの手間を増加させることなく、送受信間のアイソレーションを向上させることができる。
なお、仕切壁33と送信アンテナ部51および受信アンテナ部53のパターンとは、非接触の状態を確保できる範囲で、可能な限り接近させることが望ましく、接近させるほど、送受間のアイソレーションを向上させることができる。
【0026】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0027】
例えば、上記実施形態では、レドーム3の正面壁31は、レーダ装置1の本体に組み付けた時に、アンテナ基板5のアンテナ形成面5aに対して平行となるように構成されているが、図3に示すレドーム13のように、アンテナ形成面に対して角度(2deg以上が望ましい)を有するよう傾斜した形状に構成してもよい。
【0028】
この場合、正面壁31にて反射し仕切壁33を介して受信アンテナ部51側に透過する(回り込む)レーダ波を減少させることができ、送受信間のアイソレーションをより向上させることができる。
【0029】
上記実施形態では仕切壁33の厚さを、レドーム3の他の部分と同様の厚さ(レーダ波の半波長程度)としたが、これに限るものではなく、アンテナ指向性設計への影響が最小限に抑えられるように設定すればよい。
【0030】
また、上記実施形態では、送信アンテナ部51および受信アンテナ部53は固定した構造とされているが、これらが上下または左右に機械的に動くような構造を有している場合、仕切壁33は、その動きに応じたビームの稼働範囲を遮ることがないような形状に形成したり、ビームの稼働範囲を遮ることがないような範囲で設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…レーダ装置 3,13…レドーム 5…アンテナ基板 5a…アンテナ形成面 31…正面壁 32…開口縁 33…仕切壁 51…送信アンテナ部 53…受信アンテナ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ波を送信する送信アンテナ部、およびレーダ波を受信する受信アンテナ部が同一面に形成されたアンテナ基板と、
レーダ波を透過する材料で構成され、前記アンテナ基板のアンテナ形成面を覆うように設置されたレドームと、
を備えたレーダ装置であって、
前記レドームと前記アンテナ基板との間に形成される内部空間を、前記送信アンテナ部が位置する空間と前記受信アンテナ部が位置する空間とに分割する仕切壁を、前記レドームと一体に設けたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
レーダ波を透過する材料で構成され、前記レーダ波を送信する送信アンテナ部および前記レーダ波を受信する受信アンテナ部が同一面に形成されたアンテナ基板のアンテナ形成面を覆うように設置されるレドームであって、
設置時に当該レドームと前記アンテナ基板との間に形成される内部空間を、前記送信アンテナ部が位置する空間と前記受信アンテナ部が位置する空間とに分割する仕切壁が一体に設けられていることを特徴とするレドーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93305(P2012−93305A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242449(P2010−242449)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】