説明

レーダ装置および類似装置

【課題】指定した領域の航跡映像のみを消去し、追尾対象や検出対象の航跡映像はそのまま残して、目標の追尾や検出を効率よく行う。
【解決手段】消去領域の大きさが書き込まれた小容量のメモリを、消去動作時に消去タイミング発生部のXカウント値とYカウント値をアドレスとして読み出し、消去領域のテンプレートとして使用する。高速消去を可能とすることで小さなテンプレートでも消去指定位置を移動することにより、大きな領域を消去することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダまたはソナー装置において、受信される探知信号を全周囲にわたり画像メモリに記憶した後、画像メモリのデータを読み出し表示器に表示する装置に関するもので、特に、探知信号の時間経過に対する軌跡を表示する航跡表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶用レーダに用いる船舶の航跡は、物標の過去の映像を蓄積記録することにより得られる。これにより、航行している船舶のように動きのある物標は、尾引きがついたように描画され、尾引きの方向と長さにより他船の進行方向と船速が把握できる。また、ソナーの場合は、魚群の動向を把握することができる。
【0003】
しかし、単に蓄積するだけでは時間の経過とともに不要なノイズも蓄積され映像が見難くなる。これを防止するために、一定時間分の航跡のみ表示し、古い航跡は自動的に表示しない工夫がなされている。また、全航跡画面を消去して初期化し最初から記録し直すための消去機能がある。
【0004】
このような機能を有するレーダ装置の従来の構造について、図1を参照して各部の説明を行う。
【0005】
1はレーダアンテナであり、ある周期で水平面を回転しながら、ある周期でパルス状電波を発射すると同時に、物標で反射した電波を受信する。
【0006】
2は受信部であり、上記アンテナ1で受信した受信信号を検波し増幅する。
【0007】
3はAD変換部であり、上記受信部2で得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0008】
4はスイープメモリであり、上記AD変換部3でAD変換された1スイープ分のデータを実時間で記憶し、次の送信により得られるデータが再び書き込まれるまでに、1スイープ分のデータを後段の画像メモリに書き込むためのバッファである。
【0009】
5はラジアル描画アドレス発生部であり、スイープの中心を開始番地として、中心から周辺にむかって、例えば船首方向を基準としたアンテナの角度θと、スイープメモリ4の読み出し位置から、対応する直交座標で配列された画像メモリの画素を指定する番地を作成する。
【0010】
具体的には次式を実現するハードウエアにより構成される。
X=Xs + r・sinθ
Y=Ys + r・cosθ
但し、
X,Y:画像メモリの画素を指定する番地
Xs、Ys:中心番地
r:中心からの距離
θ:スイープの角度
であり、1点を始点として、アンテナ回転に同期して、方向を変えながら、始点から周辺へスイープする。本願ではこの描画をラジアル描画と称して説明する(図7参照)。
【0011】
6は現在映像用画像メモリであり、1画面分の記憶容量を持ち、アンテナの回転で得られる現在の物標映像を記憶する。さらに図示しない表示制御部により表示器の走査と同期して画像メモリが読み出され、表示出力合成部に記憶したデータを出力する。
【0012】
7は航跡データ検出部であり、ある一定の閾値以上の受信データである場合に物標データありとして航跡データ発生部11に出力する。
【0013】
8はFIRST/LAST検出部であり、同一画素に対しての初めての、あるいは最後のアクセスを検出する機能を持つ。過去映像用画像メモリ上の画素の更新は、アンテナ1回転で1回のみであることが必要であるから、FIRSTまたは、LASTのどちらか一方の信号を検出した場合にのみ画像メモリを更新する。この動作は、出願人による過去の出願、特公平3−582号(FIRST)や特開平11−352212号(両方)で詳細に開示済である。
【0014】
9は航跡時間設定部であり、後述する減算タイミング発生部10が発生する減算タイミング信号の周期を決定する。減算タイミング信号の周期は、設定する航跡の時間長と後述する過去映像用画像メモリ12の画素あたりのビット数で決まる減算タイミングの周期を変えることにより設定した時間分の過去映像のみ表示し、設定時間より古い過去映像を表示しない。
【0015】
10は減算タイミング発生部であり、前記航跡時間設定部9で設定する航跡の時間長と後述する過去映像用画像メモリ12の画素あたりのビット数で決まる周期毎に、アンテナ1回転期間にわたり減算タイミング信号を出力する。
【0016】
11は航跡データ発生部であり、航跡データ検出部7、FIRST/LAST検出部8、減算タイミング発生部10からの入力、後述する全消去処理タイミング発生部25が発生する消去タイミング信号と、過去映像用画像メモリ12から読み出したアンテナ1回転前の画素データから、過去映像用画像メモリ12への書き込みデータを発生する(図2参照)。
【0017】
12は過去映像用画像メモリであり、1画面分の記憶容量を持つメモリで、過去映像を一定時間蓄積記憶する。さらに図示しない表示制御部により表示器の走査と同期して画像メモリが読み出され、表示出力合成部にデータを出力する。
【0018】
13は表示出力合成部であり、物標の現在位置と過去の映像を重畳表示するために、現在映像用画像メモリ6の現在映像と過去映像用画像メモリ12の過去映像を合成する。現在映像と過去映像を識別するために、両者の表示色を変えるとともに、両者が同時に存在する場合は現在映像側を優先して表示する。また過去映像の出力は、過去映像用画像メモリの画素値に比例されることにより時間経過に比例して過去映像の輝度を減じて表示出来るデータを作成する。
【0019】
14は表示器であり、CRT、LCD等を用いる。
【0020】
25は全消去タイミング発生部であり、図示しない操作部からの指令により、過去映像用画像メモリの全領域を消去するための消去用アドレスと消去用の書き込みデータ'0'を発生する。
【0021】
16はセレクタであり、通常描画時はラジアル描画アドレス発生部5側を選択し、消去時は全消去処理タイミング発生部25が発生する消去期間だけ、全消去処理タイミング発生部25が発生する消去用アドレスを選択し、過去映像用画像メモリの書き込み用アドレスとする。
【0022】
上記構成からなる従来技術の動作を以下に説明する。
【0023】
図2において、航跡データ発生部11の処理動作は、以下の通りである。
・E=1の場合、F='0'とし、消去する。
・E=0かつC=0の場合、F=Bとし、更新しない。
・E=0かつC=1の場合で、さらに、
A=1の場合、F=最大値とし、物標が存在する場合には最大値を書き込む、
A=0かつD=0の場合、F=Bとし、物標が存在しない場合で、減算タイミングでない場合は、更新しない。
A=0かつD=1の場合、F=B−1とし、物標が存在しない場合かつ減算タイミングの場合は、'1'ずつ減算する(但しFの最小値は0であり、負の値にはならない)。
【0024】
上記の通り、減算タイミング発生部10が出力する減算タイミング信号の発生周期を変更して、一定時間分の航跡のみ表示させる。
【0025】
航跡データ発生部11の処理により、設定時間=T秒、過去映像用画像メモリ12の画素のビット構成により決まる最大カウント数=Nの場合、物標が存在した場合は、画素値(カウント値)=Nを過去映像用画像メモリ12に書き込み、物標が存在しない場合で、減算タイミングでない場合は、同じ画素値を書き込む。物標が存在しない場合で、減算タイミング信号の周期(T/N)秒毎に発生するアンテナ1回転の期間の減算タイミングの場合は、画素値−1を書き込む。
【0026】
その結果、物標が存在した場合に画素値=Nとした後、物標の移動により物標が検出されない画素は、T秒後に0となり過去映像が消え、T秒間分の航跡のみ表示される。
【0027】
例えば、過去映像用画像メモリ12の1画素が4ビットで構成されている場合、4ビットで表現できる数値は0から15であるから、N=15となる。
【0028】
設定時間T=3分の場合、減算タイミング発生部10が出力する減算タイミング信号の周期は、T/N=3・60/15=12(秒)となる。
【0029】
設定時間T=30分の場合、減算タイミング発生部10が出力する減算タイミング信号の周期は、T/N=30・60/15=120(秒)となる。
【0030】
また、減算後の最小値を1とし、値=1以上の画素を表示すると、存在した物標の過去の航跡が消えることなく連続して表示することも可能である。
【0031】
さらに、航跡表示を画素値に比例した輝度として表示すると、新しい航跡から古い航跡へ段階的に輝度を減じて表示出来る(例えば特許文献1参照)。
【0032】
また、設定した航跡映像消去範囲を表示するための航跡映像消去エリア表示用画像メモリと、設定した航跡映像消去範囲内には"0"レベルデータ、それ以外には"1"レベルデータを記憶する航跡映像消去データ用画像メモリを設け、航跡映像消去期間には新たな航跡映像データと航跡映像消去データ用画像メモリから読み出されたデータとのAND処理をし、それ以外の期間では新たな航跡映像データをそのまま、更新用航跡映像データとして出力することで、指定した領域の航跡映像のみを、(本願で言う「ラジアル描画で」)消去する技術も既に公開されている(例えば特許文献2参照)。
【0033】
【特許文献1】特開2004−361126
【特許文献2】特開2000−075016
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
ところが、上記で述べたような従来のレーダ装置には、以下に述べるような問題点があることが分かっている。
【0035】
まず上記特許文献1の方式では、海面反射、雨雪反射、他のレーダ装置との干渉波等の不要な信号も過去映像として描画する場合、時間の経過とともに不要な映像が蓄積表示されることにより必要な目標の観測に支障を来す。従来は、時間が経過することにより不要な映像が消えるのを待つか、一旦、全消去して最初から記録し直す必要があった。
【0036】
さらに、上記特許文献2の方式では、消去する領域を指定する操作により、一旦1画面分の容量を持つ過去映像消去データ用画像メモリに消去領域を描画した後、これをテンプレートとして、アンテナ回転に基づいた描画で対応する過去映像を消去している。従って、大容量のメモリが必要であるのと、アンテナ1回転(すなわち「ラジアル描画」)で消去を実行するため、1回の消去操作に時間が掛かる、という問題があることが分かっている。
【0037】
そこで本発明の目的は、不要な過去映像の中の消去する位置および消去する時間帯を指定し、更に指定した位置を高速消去する機能を付加することにより、消去する位置を任意位置に移動しながらの連続消去が可能で、消去操作が容易な航跡表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明のレーダ装置および類似装置は、アンテナが1回転して得られる受信データに基づく現在画像データと、前記受信データに基づいて得られる航跡画像データとを合成して、現在の物標の位置と物標の航跡とを同時に出力するレーダ装置および類似装置において、前記現在画像データを記憶する現在映像用画像記憶部6と、前記航跡画像データを記憶する過去映像用画像記憶部12と、前記過去映像用画像記憶部12に書き込むデータを作成する過去映像メモリ描画データ作成部17と、前記航跡画像データを構成する各画素データを所定周期で変化させながら前記過去映像メモリ描画データ作成部17に出力する航跡データ発生部11と、前記航跡画像データの航跡表示長を、時間で任意に設定する航跡時間設定部9と、前記航跡時間設定部9で設定する航跡の時間長と前記過去映像用画像メモリ12の画素あたりのビット数で決まる周期毎に、減算タイミング信号を出力する減算タイミング発生部10と、前記過去映像用画像記憶部12に記憶されている航跡画像データのうち、消去すべき領域を指定する消去処理タイミング発生部15と、前記航跡画像データと前記指定された消去データとを過去映像メモリ描画データ作成部17で合成して前記過去映像用画像記憶部12に出力したデータと、前記現在画像データとを合成して出力する表示出力合成部13とを備えたことを特徴とする。
【0039】
また、本発明のレーダ装置および類似装置は、さらに一画面分の容量を持つ画像メモリであって、前記航跡画像データを消去する位置及び大きさを描画する消去領域表示メモリ19と、前記消去領域表示メモリに、航跡画像データを消去する位置及び大きさを描画する為のアドレスと書込データを発生する消去領域用マーク発生部18とを備えることを特徴とする。
【0040】
また、本発明のレーダ装置および類似装置の前記過去映像メモリ描画データ作成部17は、消去処理期間信号と消去領域データを発生する消去処理タイミング発生部15からの入力に従って航跡画像データを消去することを特徴とする。
【0041】
また、本発明のレーダ装置および類似装置の前記過去映像メモリ描画データ作成部17は、さらに、消去処理を行う時間帯を指定する消去時間帯設定部20からの入力に従って航跡画像データを消去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
以上の構成により、
(1)1回の消去動作に要する時間が短いため、消去する位置をトラックボール操作で任意位置に移動しながら消去動作を連続的に実行することにより、不要な過去映像を連続的に消すことが可能。
(2)1回の消去動作で消す領域の大きさの選択が可能で、消去対象に適した大きさを選択することにより、細かな領域の修正や大きな領域の修正を素早く容易に行うことが可能。
(3)過去映像の中から不要な映像の「時間帯」を指定して消去可能とすることが可能、
という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の第一の実施形態に係るレーダ装置について、図3〜図11を参照して説明する。
【0044】
図3は、本発明の構成を表すブロック図である。図3の番号は、従来装置と類似の機能のものは同じ番号としている。また従来装置と同じ機能は説明を省略し、新しい機能のみ説明する。
【0045】
13は表示出力合成部であり、従来の現在映像用画像メモリ6の現在映像と過去映像用画像メモリ12に加え、消去領域表示メモリ19の出力を入力して合成し、表示画面に消去領域表示を重ねて表示する。
【0046】
15は消去処理タイミング発生部であり、過去映像用画像メモリの位置指定した部分を消去するための消去処理期間信号と消去用アドレスと消去領域データを発生する。
【0047】
17は過去映像メモリ描画データ作成部であり、航跡データ発生部11の航跡データ出力と、過去映像用画像メモリ12からの読み出しデータと、消去タイミング発生部15の消去期間出力と消去領域データと、消去時間帯設定部20の出力から、過去映像用画像メモリ12の書き込みデータを作成する(図4参照)。
【0048】
18は消去領域用マーク発生部であり、過去映像の修正する位置および修正する大きさをマークとして消去領域表示メモリ20に描画するためのアドレスと書き込みデータを発生する。尚、専用の処理部である必要はなく、レーダ画面上に表示する他のカーソル類の図形を描画するためのグラフィックコントローラ等と兼用でよい。
【0049】
19は消去領域表示メモリであり、1画面分の容量を持つ画像メモリで、過去映像を修正する位置および修正する大きさを示すマークとして表示すための図形を描画し、図示しない表示制御部により表示器の走査と同期して画像メモリが読み出され、表示出力合成部にマーク表示データを出力する。尚、専用のメモリである必要はなく、レーダ画面上に表示するカーソル類のデータを描画するメモリと兼ねることも可能である(つまり、トラックボールの操作で画面上を移動するカーソルマーク等を描画するメモリを兼用することも可能である)。
【0050】
消去位置は、CPUがトラックボール等のポインティングデバイスの操作量を読み取り、消去位置を示すマークを消去領域表示メモリ19に描画することにより消去位置が表示される。同時に、CPUが消去処理タイミング発生部15に、Xs、Ys、N、Mを与える。
【0051】
20は消去時間帯設定部であり、ユーザが消去する時間帯を指定する。
【0052】
次に、位置指定消去に関して、図5、図6、図8、図9及び図10を参照して説明する。
【0053】
図5は、消去処理タイミング発生部15の動作を説明する図であり、図6は、消去処理タイミング発生部15にある消去タイミング発生部115のタイミングチャートであり、図8は、消去描画アドレスの進み方を説明する図であり、図9は、テンプレートメモリ、図10は、図9で示すテンプレートの大きさを変えた場合の例を示す図を表している。
【0054】
消去タイミング発生部15の動作は、以下のようになる。
(1)操作部の部分消去操作ONにより消去開始トリガが発生する。
(2)消去開始トリガにより、消去期間信号=1となり、クロックによりX方向カウンタが1つ増加する。
(3)X方向長さ設定値N=Xカウント値となるとX方向カウンタがリセットされ値=0となる。同時にY方向カウンタが1つ増加する。
(4)以上の動作は、Y方向長さ設定値M=Yカウント値となるまで繰り返す。
(5)Y方向長さ設定値=Yカウント値で、消去期間信号=0となり消去動作は停止し、終了する。
【0055】
また消去描画アドレスX、Yの発生は、以下の通りである(図5及び図8参照)。
【0056】
加算器により、消去タイミング発生部が発生するXカウント値と過去映像用画像メモリ上の消去領域始点アドレスXsを加算して、X方向の消去アドレスとなる(X=Xs+n)。また加算器により、Yカウント値と過去映像用画像メモリ上の消去領域始点アドレスYsを加算して、X方向の消去アドレスとなる(Y=Ys+m)。X方向とY方向の消去アドレスにより、過去映像用画像メモリの画素を指定することが可能である。尚、消去領域始点アドレスXs、Ysはトラックボールを移動させて決定する。
【0057】
nは過去映像メモリ上の消去始点からのX方向の画素数であり、mは過去映像メモリ上の消去始点からのY方向の画素数である。
【0058】
さらに、図5のセレクタは、消去領域データ選択により、テンプレートメモリ出力側または、消去領域期間信号側のどちらか一方を選択するものである。
【0059】
次にテンプレートメモリの機能を説明する(図9及び図10参照)。
【0060】
テンプレートメモリは、1回の消去動作で消去する領域の大きさを書き込んだ1ビット構成のメモリで、消去動作時に消去タイミング発生部のXカウント値とYカウント値をアドレスとして読み出される。
【0061】
消去領域データ選択により、図5のセレクタ出力をテンプレートメモリ出力側とする。例えば消去領域を円形とし、消す領域='1'、消さない領域='0'とすると、消去処理期間中でテンプレートメモリから読み出したデータ='1'の場合は過去映像を消去し、'0'の場合は過去映像画像メモリを変更しない。小さなテンプレートでも指定位置を移動することにより、大きな領域を消去することが可能であるため、テンプレートメモリの容量は、小さなテンプレートを書き込むことができる小容量でよい。円の半径を変えることで消去領域の大きさを変更することができる(図10参照)。
【0062】
次に全画面一括消去の動作を説明する(図5参照)。
【0063】
全画面一括消去機能は、前記従来のレーダ装置にも用意されていた機能であるが、本願では、過去映像画像メモリ全体を初期化する場合、過去映像用画像メモリの容量と同じ大きさに、X方向とY方向の長さ設定値を設定し、同時に、消去領域データ選択により、消去処理期間信号側を消去領域データとする。つまり図8の、Nを過去映像用画像メモリの全体を初期化するに必要なX方向の大きさ、MをY方向の大きさに設定することで、テンプレートを使用することなく従来と同様に大きな領域を全画面一括消去できる。
【0064】
次に時間指定消去の方法を、図4を参照しながら説明する。
【0065】
図4において、過去映像メモリ描画データ作成部17の処理動作は、以下の通りである。
・ B=0の場合、F=Aとし、ラジアル描画時は航跡データ発生部の出力をWデータとする。
・ B=1の場合で、さらに
C=1かつ(n1≦E≦n2)の場合、F=‘0’とし、消去処理期間かつ消去領域データ=1かつ過去映像用画像メモリの画素データEが、n1〜n2の範囲の場合には、消去する。
上記以外の場合、F=Eで、過去映像用画像メモリを更新しない。
【0066】
例えば、過去映像用画像メモリ12の1画素が4ビットで構成されている場合、4ビットで表現できる数値は0〜15であるから、N=15となるので、設定時間T=15分の場合画素値=1は1分に対応する。
【0067】
従って、時間指定n1、n2の組み合わせにより、
n1=0 ,n2=15 :全消去
n1=15 ,n2=15 :経過時間が1分未満の映像を消去
n1=0 ,n2=5 :経過時間が10分以上の映像を消去
する等、経過時間を指定して自由に消去することが可能である。
【表1】

【0068】
時間指定消去の応用例として、ゲインによる映像調整時、一時的に海面反射等の不要信号を過去画面に記憶させてしまった場合に、新しいもののみ消去する時間設定として消去することにより、消す必要がない過去映像は消去されずに保存することが可能である。
【0069】
以上の構成からなる本願を用いた装置の操作手順は以下の通りである。
【0070】
指定領域消去操作の場合(基本操作)、まずキーボード等の操作部での操作により消去モードをONにする。
【0071】
次に、マークサイズ選択操作により1回の消去動作で消す領域の大きさを決定し、時間領域指定操作により消去時間領域を指定する。
【0072】
そして操作部のトラックボールを操作して、消去する位置にマークを移動し、操作部での消去操作ONにより、消去動作が起動され指定した領域が消去される。
【0073】
連続消去する場合、操作部での連続消去をONにして、トラックボール操作によりマークを移動する。消去動作が連続的に起動され、移動した領域が連続的に消去される(図11参照)。
【0074】
全画面一括全消去する場合、操作部で全画面一括全消去ONとする。マークサイズ、消去位置指定に無関係に全画面一括全消去する。
【0075】
尚、ラジアル描画と消去描画の関係であるが、過去映像用画像メモリに対して、ラジアル描画アクセスと消去描画アクセスが同時に発生した場合は、一方を優先させ他方は空き時間に描画する。
【0076】
例えば、ラジアル描画を優先した場合、ラジアル描画は、FIRSTまたはLASTの場合のみ描画アクセスが発生するので、ラジアル描画アクセスの発生頻度は低く、ラジアル描画していない時間のみの消去アクセスでも十分短時間で消去が完了する。
【0077】
この結果、全体としては、ラジアル描画と消去描画は並行的に実行される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】従来のレーダ装置の主要部の構成を示すブロック図
【図2】従来の航跡データ発生部の詳細図
【図3】本願のレーダ装置の主要部の構成を示すブロック図
【図4】本願の航跡データ発生部の詳細図
【図5】本願の消去タイミング発生部の詳細図
【図6】消去タイミング発生部の動作を示すタイミングチャート
【図7】ラジアル描画アドレスの進み方を示す図
【図8】消去描画アドレスの進み方を示す図
【図9】テンプレートメモリの一例を示す図
【図10】図9で示すテンプレートの大きさを変えた場合の例を示す図
【図11】連続消去動作の一例を示す図
【符号の説明】
【0079】
1−レーダアンテナ
3−AD変換機
4−スイープメモリ
5−ラジアル描画アドレス発生部
6−現在映像用画像メモリ
7−航跡データ検出部
8−FIRST/LAST検出部
9−航跡時間設定部
10−減算タイミング発生部
11−航跡データ発生部
12−過去映像用画像メモリ
14−表示器
15−消去処理タイミング発生部
16−消去時間設定部
17−過去映像メモリ描画データ作成部
18−消去領域用マーク発生部
19−消去領域表示メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナが1回転して得られる受信データに基づく現在画像データと、前記受信データに基づいて得られる航跡画像データとを合成して、現在の物標の位置と物標の航跡とを同時に出力するレーダ装置および類似装置において、
前記現在画像データを記憶する現在映像用画像記憶部と、
前記航跡画像データを記憶する過去映像用画像記憶部と、
前記過去映像用画像記憶部に書き込むデータを作成する過去映像メモリ描画データ作成部と、
前記航跡画像データを構成する各画素データを所定周期で変化させながら前記過去映像メモリ描画データ作成部に出力する航跡データ発生部と、
前記航跡画像データの航跡表示長を、時間で任意に設定する航跡時間設定部と、
前記航跡時間設定部で設定する航跡の時間長と前記過去映像用画像メモリの画素あたりのビット数で決まる周期毎に、減算タイミング信号を出力する減算タイミング発生部
と、
前記過去映像用画像記憶部に記憶されている航跡画像データのうち、消去すべき領域を指定する消去処理タイミング発生部と、
前記航跡画像データと前記指定された消去データとを過去映像メモリ描画データ作成部で合成して前記過去映像用画像記憶部に出力したデータと、前記現在画像データとを合成して出力する表示出力合成部と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置および類似装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーダ装置は、さらに
一画面分の容量を持つ画像メモリであって、前記航跡画像データを消去する位置及び大きさを描画する消去領域表示メモリと、
前記消去領域表示メモリに、航跡画像データを消去する位置及び大きさを描画する為のアドレスと書込データを発生する消去領域用マーク発生部と、
を備えることを特徴とする。
【請求項3】
前記過去映像メモリ描画データ作成部は、
消去処理期間信号と消去領域データを発生する消去処理タイミング発生部からの入力に従って航跡画像データを消去することを特徴とする請求項1または2記載のレーダ装置および類似装置。
【請求項4】
前記過去映像メモリ描画データ作成部は、さらに、
消去処理を行う時間帯を指定する消去時間帯設定部からの入力に従って航跡画像データを消去することを特徴とする請求項3記載のレーダ装置および類似装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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