レーダ装置
【課題】干渉波を受信したことを確実に検知する高性能で安価なレーダ装置を得る。
【解決手段】レーダ装置は、電磁波をパルス変調して送信する送信手段、目標物体で反射した電磁波を受信する受信手段および送信した電磁波および受信した電磁波に基づいて目標物体の距離または相対速度の少なくともいずれか1つを測定する距離・相対速度算出手段を備えたレーダ装置において、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して他の機器からの干渉波の受信を検知する干渉波検知手段を備えた。
【解決手段】レーダ装置は、電磁波をパルス変調して送信する送信手段、目標物体で反射した電磁波を受信する受信手段および送信した電磁波および受信した電磁波に基づいて目標物体の距離または相対速度の少なくともいずれか1つを測定する距離・相対速度算出手段を備えたレーダ装置において、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して他の機器からの干渉波の受信を検知する干渉波検知手段を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標物体との距離および相対速度を計測して車間距離などを制御するシステムに利用するレーダ装置は、送信パルスを増幅してアンテナから電磁波として送信し、目標物体で反射した電磁波をアンテナで受信し、増幅して受信パルスを得る。そして、送信パルスと受信パルスをミキシングして得られるビート信号に基づいて距離ゲートを特定し、その距離ゲートから目標物体との距離を検知するビート信号には目標物体の移動にともなうドップラシフトが現れ、そのドップラシフトから目標物体の相対速度を検知する。
このレーダ装置により検知された目標物体との距離、相対速度に基づいて、自車両の加減速度を演算し、スロットルやブレーキを制御する。また、車間距離警報システムでは、目標物体の距離、相対速度や自車速等から危険度を算出し、必要に応じて警告を発生する。
【0003】
しかし、このレーダ装置は他の無線機器や他のレーダ装置の干渉波(以下、干渉波と称す)を受信すると、干渉波により、ノイズレベルが上昇することでS/N比が劣化し検出不良となる場合がある。
また、干渉波により、本来存在しないはずのビート信号が現れ、誤検出を引き起こす場合がある。この結果、車間距離制御システムや車間距離警報システムにおいて問題が発生する。例えば検出不良は、車間距離制御装置において、先行車への衝突の危険が発生する。また、誤検出は車間距離制御装置において、先行車が存在しないにもかかわらず減速制御が行われる可能性がある。
【0004】
そこで、通常存在すると想定される目標物体の反射による受信信号やビート信号の振幅や周波数よりも大きい値をもつ信号が検知された場合に干渉と判定している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−168947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、振幅や周波数の閾値は想定されうる通常の目標物体の反射による受信信号以上に設定すると、閾値以下の振幅、周波数の干渉による信号は検知不能となる。
【0007】
この発明は、干渉波を受信したことを確実に検知する高性能で安価なレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わるレーダ装置は、電磁波をパルス変調して送信する送信手段、目標物体で反射した電磁波を受信する受信手段および送信した電磁波および受信した電磁波に基づいて目標物体の距離または相対速度の少なくともいずれか1つを測定する距離・相対速度算出手段を備えたレーダ装置において、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して他の機器からの干渉波の受信を検知する干渉波検知手段を備えた。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係わるレーダ装置の効果は、送信パルスの送信に先立つ時間帯に干渉波検知用ゲートを設定し、干渉波検知用ゲートで受信された信号を干渉波検知用メモリに記憶し、干渉波検知用メモリに記憶されているデータを高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求め、その周波数スペクトルのノイズレベルがノイズレベルしきい値以上のとき他の機器からの干渉波の受信を検知するので、レーダ装置の検知性能に影響を与える干渉波を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成図である。
この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置1は、図1に示すように、発振器2、パワーデバイダ3、送信アンプ4、送受切り替えスイッチ5、送受共用アンテナ6、受信アンプ7、ミクサ8、フィルタ9、AGCアンプ10、AD変換器11、信号処理装置12、各距離ゲートでサンプリングしたデータを記憶する距離ゲート用メモリ13、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを記憶する干渉波検知用メモリ14を備える。
レーダ装置1では、目標物体16の距離Dと目標物体16の相対速度vとを計測し、車間距離制御装置15に距離Dおよび相対速度vのデータを送る。
【0011】
信号処理装置12は、AD変換器11から入力するビート信号をそれぞれ各距離ゲートと干渉波検知ゲートでサンプリングし、サンプリングした値をそれぞれ距離ゲート用メモリ13と干渉波検知用メモリ14に記憶するデータ記憶手段21、各距離ゲートでサンプリングされたデータから目標物体16の距離Dおよび相対速度vを求める距離・相対速度算出手段22、干渉波検知ゲートでサンプリングされたデータから干渉波を受信したことを検知する干渉波検知手段23を有する。
【0012】
なお、信号処理装置12、距離ゲート用メモリ13および干渉波検知用メモリ14は、CPU、ROM、RAMおよびインターフェース回路を備えるコンピュータから構成されている。データ記憶手段21、距離・相対速度算出手段22および干渉波検知手段23は、その処理内容がROMにプログラムとして格納され、処理を実行するときはプログラムに従ってCPUで演算する。
【0013】
次に、実施の形態1に係わるレーダ装置1における電磁波送信動作を説明する。
信号処理装置12は、発振器2を制御して所定のパルス繰り返し周期で送信パルスを発振する。直前に送信した電磁波が受信されないだけの距離のマージンを考慮して最大計測距離が1000mに設定されているので、所定のパルス繰り返し周期は6.67μsと設定される。発振器2からは、例えば送信周波数f0=76.5GHzの送信パルスが出力される。その送信パルスはパワーデバイダ3を通過し、送信アンプ4により増幅される。電磁波を送信するとき、送受切り替えスイッチ5は送信アンプ4と送受共用アンテナ6を接続しているので、送信アンプ4により増幅された送信パルスは送受切り替えスイッチ5を通過し、送受共用アンテナ6から送信電磁波として空間に送信される。
【0014】
次に、実施の形態1に係わるレーダ装置1における電磁波受信動作を説明する。電磁波送信開始時点からパルス時間幅tg、例えば33.3ns(送信電磁波が距離5m離れた位置にある目標物体16で反射して送受共用アンテナ6に戻るに要する時間)だけ経過した時点で、送受切り替えスイッチ5を受信側に切り替え、送受共用アンテナ6と受信アンプ7を接続する。
一方、送受共用アンテナ6から空間に送信された送信電磁波は距離Dだけ離れた位置に存在する目標物体16で反射され、図2に示すように、送信電磁波に対して距離Dに対応する遅延時間Δtだけ遅れて送受共用アンテナ6により受信電磁波として受信される。
目標物体16が相対速度vで移動しているとき、受信電磁波の周波数は送信電磁波の周波数f0に対してドップラシフト周波数fbだけドップラシフトされている。
【0015】
送受共用アンテナ6で受信された受信電磁波は受信アンプ7により増幅され、ミクサ8によりパワーデバイダ3からのLO用電磁波とミキシングされ、ドップラシフト周波数fbに対応したビート信号として出力される。
得られたビート信号はカットオフ周波数が30MHzのフィルタ9を通過し、AGCアンプ10により増幅され、AD変換器11によりデジタルのビート信号に変換され、デジタルのビート信号は信号処理装置12に入力される。
【0016】
この実施の形態1に係わるレーダ装置1は、相対速度vの測定における速度分解能Δvは1km/hである。そして、は速度分解能Δvは周波数分解能Δfと式(1)の関係が成り立つので、周波数分解能Δfは141.64Hzである。
データ記憶手段21は、周波数分解能Δfを満足するように計測時間7.06msの間のデジタルのビート信号をサンプリングして、1群のデータとして記憶する。なお、λは送信電磁波の波長である。
【0017】
【数1】
【0018】
データ記憶手段21は、送信パルスの送信開始時点を原点とした時刻を時刻の進む方向にパルス時間幅tgで等間隔に距離ゲートを設定する。この距離ゲートを特定するために、原点側から1からの連番を付ける。そして、図3に示すように、距離ゲート毎にビート信号の振幅をサンプリングし、距離ゲート毎に距離ゲートに対応する距離ゲート用メモリ13の領域に記憶する。
また、データ記憶手段21は、送信パルスの送信開始時点を原点とした時刻で時刻の戻る方向に原点から時間tinfだけ遡った時点に干渉波検知用ゲートを設定する。そして、干渉波検知用ゲートでビート信号の振幅をサンプリングし、干渉波検知用メモリ14に記憶する。
【0019】
距離・相対速度算出手段22は、速度分解能1km/hを得るために、図4に示すように、距離ゲート用メモリ13の各距離ゲートに対応する領域に記憶されている1024回分のビート信号の振幅を読み出し、距離ゲート毎にビート信号のデータを周波数解析、例えば高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求める。目標物体16の距離Dに対応する距離ゲートの周波数スペクトルには、図5に示すように、送信周波数f0からドップラシフト周波数fbだけ偏移し、振幅Mのビート信号が得られる。
【0020】
距離・相対速度算出手段22は、周波数スペクトルにビート信号が現れた距離ゲートの番号nとドップラシフト周波数fbとを用いて、式(2)、式(3)から距離Dと相対速度vを算出する。なお、cは電磁波の速度である。
【0021】
【数2】
【0022】
次に、干渉波検知用ゲートについて説明する。この干渉波検知用ゲートでビート信号の振幅を(i−1)回目のサンプリングを行うことを考えると、i回目の送信パルスはまだ発振されていないので、i回目の送信電磁波の目標物体16で反射した受信電磁波を干渉波検知用ゲートでサンプリングすることはない。また、(i−1)回目の送信パルスが目標物体16に反射したことで得られる受信電磁波に関するビート信号が、干渉波検知用ゲートでサンプリングできたとすると、その目標物体16までの距離はパルス繰り返し周期に相当する距離1000mに近い値となる。このレーダ装置1からの電磁波は150m程度の距離を伝搬する間に減衰するので、150m以上の距離に存在する目標物体16は検知できないように設計されており、実際にこのような距離の目標物体16の反射による受信電磁波に関するビート信号を干渉波検知用ゲートでサンプリングすることはない。
【0023】
従って、もし干渉波検知用ゲートでなんらかの電磁波に関するビート信号をサンプリングするということは、干渉波がこのレーダ装置1に入射し、検知されたと考えることができる。干渉波が入射されていなければ、干渉波検知用ゲートでの高速フーリエ変換により得られる周波数スペクトルは、図6に示すように、低いノイズレベルのノイズのみが観測されることになる。一方、干渉波が入射されていると、図7に示すように、周波数スペクトルのノイズレベルが上昇したり、図8に示すように、周波数スペクトルにピークが発生したりする。ノイズレベルが上昇するか、ピークが発生するかの違いは、入射する干渉波の周波数、変調方法によって異なる。
【0024】
図9は、この発明の実施の形態1の干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。
次に、この発明の実施の形態1に係わる干渉波検知処理ルーチンについて図9を参照して説明する。この干渉波検知処理ルーチンは、所定の周期毎に開始される。また、干渉波検知用しきい値の初期値が記憶されており、レーダ装置1の電源投入直後の測定開始時にはその初期値をノイズレベルしきい値として読み込まれている。
ステップS1で、各距離ゲートのデータを用いて、目標物体16の距離D、相対速度vを算出してステップS2に進む。
ステップS2で、干渉波検知用メモリ14に記憶されたデータについて高速フーリエ変換をこない、周波数スペクトルを求めてステップS3に進む。
ステップS3で、周波数スペクトルのノイズレベルを算出してステップS4に進む。ノイズレベルの算出方法は、干渉波検知用ゲートでは本来ピークが検知されないので、単に全データの平均値を取るだけでも良いし、さらに精度の良い算出方法を用いても良い。
【0025】
ステップS4で、ノイズレベルがノイズレベルしきい値以上であるか否かを判断し、ノイズレベルがノイズレベルしきい値以上であるとき、ステップS5に進み、ノイズレベルがノイズレベルしきい値未満であるとき、ステップS6に進む。
ステップS5で、干渉波検知フラグをONにしてステップS9に進む。
ステップS6で、干渉波検知フラグをOFFにしてステップS7に進む。
ステップS7で、今回のノイズレベルを記憶してステップS8に進む。
【0026】
ステップS8で、今回および過去に記憶されたノイズレベルのデータから、ノイズレベルしきい値を更新してステップS9に進む。毎回の測定におけるノイズレベルはある程度の変動が考えられるため、所定の時間内の平均値を算出し、算出した平均値の所定倍の値をノイズレベルしきい値としている。
【0027】
ステップS9で、ステップS1〜ステップS6までの処理で求めた、目標物体16の距離D、相対速度vおよび干渉波検知フラグの状態を出力して干渉波検知処理ルーチンを終了する。レーダ装置1を使用する車両制御システムでは、干渉波検知フラグがONになっている場合、制御を中止したり、警告メッセージを表示し運転手に干渉波検知を通知したりすることができる。
【0028】
この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置1は、送信パルスの送信の直前の時間帯に干渉波検知用ゲートを設定し、干渉波検知用ゲートでサンプリングされたデータを干渉波検知用メモリ14に記憶し、干渉波検知用メモリ14に記憶されているデータを高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求め、その周波数スペクトルのノイズレベルがノイズレベルしきい値以上のとき送受共用アンテナ6で干渉波を受信したと検知するので、確実に干渉波を受信したことを検知することができる。
【0029】
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成図である。
この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置1Bは、図10に示すように、実施の形態1に係わるレーダ装置1と干渉波検知手段23Bが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる干渉波検知手段23Bは、計測時間の間に干渉波検知用ゲートでサンプリングしたビート信号の振幅のデータを読み出し、そのデータを高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求め、周波数スペクトルに現れるピークの数に基づいて干渉波を受信したことを検知する。
【0030】
次に、この発明の実施の形態2に係わる干渉波検知処理ルーチンについて図11を参照して説明する。図11は、この発明の実施の形態2に係わる干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。この干渉波検知処理ルーチンは、所定の周期毎に開始される。
ステップS11で、通常の距離ゲートのデータに基づいて目標物体16との距離、相対速度を算出してステップS12に進む。
ステップS12で、干渉波検知用メモリ14に記憶されたデータを用いて高速フーリエ変換を行って周波数スペクトルを求めてステップS13に進む。
ステップS13で、周波数スペクトルのノイズレベルを求め、ノイズレベルの所定倍をピーク検知しきい値とし、スペクトルの振幅の極大値がピーク検知しきい値以上である周波数をピークとして検知してステップS14に進む。
【0031】
ステップS14で、検知したピークの数をカウントしてステップS15に進む。
ステップS15で、カウントしたピークの数が所定個以上か否かを判断し、ピークの数が所定個以上の場合ステップS16に進み、ピークの数が所定個未満の場合ステップS17に進む。
ステップS16で、干渉波検知フラグをONにしてステップS20に進む。
【0032】
ステップS17で、干渉波検知フラグをOFFにしてステップS18に進む。
ステップS18で、ステップS13で検知した全てのピークの振幅の平均値を求めて記憶してステップS19に進む。原理上、干渉波の受信がなければ、ピークの数は常に零であると考えられるが、実際には他のノイズ等によるピークが存在することも考えられるため、干渉の誤検知を防止するため、干渉波非検知状態での過去のピーク検知状態を記憶しておくのである。
【0033】
ステップS19で、今回および過去に記憶されたピークの振幅の平均値から、ピーク検知しきい値を更新する。毎回の測定におけるピークの振幅の平均値はある程度の変動があるため、所定の時間内の平均値を算出し、算出した平均値の所定倍の値をピーク検知しきい値とする。
【0034】
ステップS20で、ステップS11からステップS17までの処理で求めた、目標物体16の距離D、相対速度vおよび干渉波検知フラグの状態を出力して干渉波検知処理ルーチンを終了する。
そして、このレーダ装置1Bを使用する車両制御システムは、干渉波検知フラグがONになっている場合、制御を中止したり、警告メッセージを表示し運転手に干渉波検知を通知したりすることができる。
【0035】
この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置1Bでは、干渉波検知用ゲートでサンプリングされたデータの周波数スペクトルに干渉波を受信したときにはピークが増えること利用して、検出不良や誤検知の可能性がある場合に、その状態を検知することができる。
【0036】
なお、この実施の形態2では、ピークの個数のみについて述べているが、周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。
【0037】
また、一定の周波数雑音が発生するのであれば、その周波数を記憶して、記憶された周波数のピークについては干渉波検知処理から除外してもよい。
また、他の雑音等によるピークの振幅が、干渉波の受信によるピークの振幅より十分低い場合には、所定の振幅値より小さいピークを干渉波検知から除外しても良い。
【0038】
また、周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上に上昇し、且つ周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上のとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。このようにノイズレベルとピーク数に関して判断することにより、干渉波の受信の誤検知を防止することができる。
また、周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上に上昇し、且つ周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。このようにノイズレベルとピークの振幅の平均値に関して判断することにより、干渉波の受信の誤検知を防止することができる。
【0039】
また、周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上で、且つ周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。このようにピーク数とピークの振幅の平均値に関して判断することにより、干渉波の受信の誤検知を防止することができる。
【0040】
また、1回の干渉波の受信の検知だけでは信頼性が低いと考えられる場合は、所定の時間継続して干渉波の受信が検知されたとき、他の機器による電磁波の干渉が発生したと判断してもよい。このように所定の時間に亘って干渉波の受信が検知されたときだけ他の機器からの電磁波の干渉が発生したと判断するので、干渉波の受信の検知の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成図である。
【図2】実施の形態1に係わるレーダ装置の干渉波検知用ゲートのサンプリングタイミングを示した説明図である。
【図3】計測時間に亘って任意の距離ゲートでビート信号の振幅をサンプリングする様子を示す図である。
【図4】任意の距離ゲートでサンプリングされたデータを時系列的に示した図である。
【図5】目標物体の距離に対応する距離ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図6】干渉波がない場合の、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図7】干渉波が存在する場合の、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図8】別の種類の干渉波が存在する場合の、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図9】この発明の実施の形態1の干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成図である。
【図11】この発明の実施の形態2の干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1、1B レーダ装置、2 発振器、3 パワーデバイダ、4 送信アンプ、5 送受切り替えスイッチ、6 送受共用アンテナ、7 受信アンプ、8 ミクサ、9 フィルタ、10 AGCアンプ、11 AD変換器、12 信号処理装置、13 距離ゲート用メモリ、14 干渉波検知用メモリ、15 車間距離制御装置、16 目標物体、21 データ記憶手段、22 距離・相対速度算出手段、23、23B 干渉波検知手段。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標物体との距離および相対速度を計測して車間距離などを制御するシステムに利用するレーダ装置は、送信パルスを増幅してアンテナから電磁波として送信し、目標物体で反射した電磁波をアンテナで受信し、増幅して受信パルスを得る。そして、送信パルスと受信パルスをミキシングして得られるビート信号に基づいて距離ゲートを特定し、その距離ゲートから目標物体との距離を検知するビート信号には目標物体の移動にともなうドップラシフトが現れ、そのドップラシフトから目標物体の相対速度を検知する。
このレーダ装置により検知された目標物体との距離、相対速度に基づいて、自車両の加減速度を演算し、スロットルやブレーキを制御する。また、車間距離警報システムでは、目標物体の距離、相対速度や自車速等から危険度を算出し、必要に応じて警告を発生する。
【0003】
しかし、このレーダ装置は他の無線機器や他のレーダ装置の干渉波(以下、干渉波と称す)を受信すると、干渉波により、ノイズレベルが上昇することでS/N比が劣化し検出不良となる場合がある。
また、干渉波により、本来存在しないはずのビート信号が現れ、誤検出を引き起こす場合がある。この結果、車間距離制御システムや車間距離警報システムにおいて問題が発生する。例えば検出不良は、車間距離制御装置において、先行車への衝突の危険が発生する。また、誤検出は車間距離制御装置において、先行車が存在しないにもかかわらず減速制御が行われる可能性がある。
【0004】
そこで、通常存在すると想定される目標物体の反射による受信信号やビート信号の振幅や周波数よりも大きい値をもつ信号が検知された場合に干渉と判定している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−168947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、振幅や周波数の閾値は想定されうる通常の目標物体の反射による受信信号以上に設定すると、閾値以下の振幅、周波数の干渉による信号は検知不能となる。
【0007】
この発明は、干渉波を受信したことを確実に検知する高性能で安価なレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わるレーダ装置は、電磁波をパルス変調して送信する送信手段、目標物体で反射した電磁波を受信する受信手段および送信した電磁波および受信した電磁波に基づいて目標物体の距離または相対速度の少なくともいずれか1つを測定する距離・相対速度算出手段を備えたレーダ装置において、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して他の機器からの干渉波の受信を検知する干渉波検知手段を備えた。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係わるレーダ装置の効果は、送信パルスの送信に先立つ時間帯に干渉波検知用ゲートを設定し、干渉波検知用ゲートで受信された信号を干渉波検知用メモリに記憶し、干渉波検知用メモリに記憶されているデータを高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求め、その周波数スペクトルのノイズレベルがノイズレベルしきい値以上のとき他の機器からの干渉波の受信を検知するので、レーダ装置の検知性能に影響を与える干渉波を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成図である。
この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置1は、図1に示すように、発振器2、パワーデバイダ3、送信アンプ4、送受切り替えスイッチ5、送受共用アンテナ6、受信アンプ7、ミクサ8、フィルタ9、AGCアンプ10、AD変換器11、信号処理装置12、各距離ゲートでサンプリングしたデータを記憶する距離ゲート用メモリ13、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを記憶する干渉波検知用メモリ14を備える。
レーダ装置1では、目標物体16の距離Dと目標物体16の相対速度vとを計測し、車間距離制御装置15に距離Dおよび相対速度vのデータを送る。
【0011】
信号処理装置12は、AD変換器11から入力するビート信号をそれぞれ各距離ゲートと干渉波検知ゲートでサンプリングし、サンプリングした値をそれぞれ距離ゲート用メモリ13と干渉波検知用メモリ14に記憶するデータ記憶手段21、各距離ゲートでサンプリングされたデータから目標物体16の距離Dおよび相対速度vを求める距離・相対速度算出手段22、干渉波検知ゲートでサンプリングされたデータから干渉波を受信したことを検知する干渉波検知手段23を有する。
【0012】
なお、信号処理装置12、距離ゲート用メモリ13および干渉波検知用メモリ14は、CPU、ROM、RAMおよびインターフェース回路を備えるコンピュータから構成されている。データ記憶手段21、距離・相対速度算出手段22および干渉波検知手段23は、その処理内容がROMにプログラムとして格納され、処理を実行するときはプログラムに従ってCPUで演算する。
【0013】
次に、実施の形態1に係わるレーダ装置1における電磁波送信動作を説明する。
信号処理装置12は、発振器2を制御して所定のパルス繰り返し周期で送信パルスを発振する。直前に送信した電磁波が受信されないだけの距離のマージンを考慮して最大計測距離が1000mに設定されているので、所定のパルス繰り返し周期は6.67μsと設定される。発振器2からは、例えば送信周波数f0=76.5GHzの送信パルスが出力される。その送信パルスはパワーデバイダ3を通過し、送信アンプ4により増幅される。電磁波を送信するとき、送受切り替えスイッチ5は送信アンプ4と送受共用アンテナ6を接続しているので、送信アンプ4により増幅された送信パルスは送受切り替えスイッチ5を通過し、送受共用アンテナ6から送信電磁波として空間に送信される。
【0014】
次に、実施の形態1に係わるレーダ装置1における電磁波受信動作を説明する。電磁波送信開始時点からパルス時間幅tg、例えば33.3ns(送信電磁波が距離5m離れた位置にある目標物体16で反射して送受共用アンテナ6に戻るに要する時間)だけ経過した時点で、送受切り替えスイッチ5を受信側に切り替え、送受共用アンテナ6と受信アンプ7を接続する。
一方、送受共用アンテナ6から空間に送信された送信電磁波は距離Dだけ離れた位置に存在する目標物体16で反射され、図2に示すように、送信電磁波に対して距離Dに対応する遅延時間Δtだけ遅れて送受共用アンテナ6により受信電磁波として受信される。
目標物体16が相対速度vで移動しているとき、受信電磁波の周波数は送信電磁波の周波数f0に対してドップラシフト周波数fbだけドップラシフトされている。
【0015】
送受共用アンテナ6で受信された受信電磁波は受信アンプ7により増幅され、ミクサ8によりパワーデバイダ3からのLO用電磁波とミキシングされ、ドップラシフト周波数fbに対応したビート信号として出力される。
得られたビート信号はカットオフ周波数が30MHzのフィルタ9を通過し、AGCアンプ10により増幅され、AD変換器11によりデジタルのビート信号に変換され、デジタルのビート信号は信号処理装置12に入力される。
【0016】
この実施の形態1に係わるレーダ装置1は、相対速度vの測定における速度分解能Δvは1km/hである。そして、は速度分解能Δvは周波数分解能Δfと式(1)の関係が成り立つので、周波数分解能Δfは141.64Hzである。
データ記憶手段21は、周波数分解能Δfを満足するように計測時間7.06msの間のデジタルのビート信号をサンプリングして、1群のデータとして記憶する。なお、λは送信電磁波の波長である。
【0017】
【数1】
【0018】
データ記憶手段21は、送信パルスの送信開始時点を原点とした時刻を時刻の進む方向にパルス時間幅tgで等間隔に距離ゲートを設定する。この距離ゲートを特定するために、原点側から1からの連番を付ける。そして、図3に示すように、距離ゲート毎にビート信号の振幅をサンプリングし、距離ゲート毎に距離ゲートに対応する距離ゲート用メモリ13の領域に記憶する。
また、データ記憶手段21は、送信パルスの送信開始時点を原点とした時刻で時刻の戻る方向に原点から時間tinfだけ遡った時点に干渉波検知用ゲートを設定する。そして、干渉波検知用ゲートでビート信号の振幅をサンプリングし、干渉波検知用メモリ14に記憶する。
【0019】
距離・相対速度算出手段22は、速度分解能1km/hを得るために、図4に示すように、距離ゲート用メモリ13の各距離ゲートに対応する領域に記憶されている1024回分のビート信号の振幅を読み出し、距離ゲート毎にビート信号のデータを周波数解析、例えば高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求める。目標物体16の距離Dに対応する距離ゲートの周波数スペクトルには、図5に示すように、送信周波数f0からドップラシフト周波数fbだけ偏移し、振幅Mのビート信号が得られる。
【0020】
距離・相対速度算出手段22は、周波数スペクトルにビート信号が現れた距離ゲートの番号nとドップラシフト周波数fbとを用いて、式(2)、式(3)から距離Dと相対速度vを算出する。なお、cは電磁波の速度である。
【0021】
【数2】
【0022】
次に、干渉波検知用ゲートについて説明する。この干渉波検知用ゲートでビート信号の振幅を(i−1)回目のサンプリングを行うことを考えると、i回目の送信パルスはまだ発振されていないので、i回目の送信電磁波の目標物体16で反射した受信電磁波を干渉波検知用ゲートでサンプリングすることはない。また、(i−1)回目の送信パルスが目標物体16に反射したことで得られる受信電磁波に関するビート信号が、干渉波検知用ゲートでサンプリングできたとすると、その目標物体16までの距離はパルス繰り返し周期に相当する距離1000mに近い値となる。このレーダ装置1からの電磁波は150m程度の距離を伝搬する間に減衰するので、150m以上の距離に存在する目標物体16は検知できないように設計されており、実際にこのような距離の目標物体16の反射による受信電磁波に関するビート信号を干渉波検知用ゲートでサンプリングすることはない。
【0023】
従って、もし干渉波検知用ゲートでなんらかの電磁波に関するビート信号をサンプリングするということは、干渉波がこのレーダ装置1に入射し、検知されたと考えることができる。干渉波が入射されていなければ、干渉波検知用ゲートでの高速フーリエ変換により得られる周波数スペクトルは、図6に示すように、低いノイズレベルのノイズのみが観測されることになる。一方、干渉波が入射されていると、図7に示すように、周波数スペクトルのノイズレベルが上昇したり、図8に示すように、周波数スペクトルにピークが発生したりする。ノイズレベルが上昇するか、ピークが発生するかの違いは、入射する干渉波の周波数、変調方法によって異なる。
【0024】
図9は、この発明の実施の形態1の干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。
次に、この発明の実施の形態1に係わる干渉波検知処理ルーチンについて図9を参照して説明する。この干渉波検知処理ルーチンは、所定の周期毎に開始される。また、干渉波検知用しきい値の初期値が記憶されており、レーダ装置1の電源投入直後の測定開始時にはその初期値をノイズレベルしきい値として読み込まれている。
ステップS1で、各距離ゲートのデータを用いて、目標物体16の距離D、相対速度vを算出してステップS2に進む。
ステップS2で、干渉波検知用メモリ14に記憶されたデータについて高速フーリエ変換をこない、周波数スペクトルを求めてステップS3に進む。
ステップS3で、周波数スペクトルのノイズレベルを算出してステップS4に進む。ノイズレベルの算出方法は、干渉波検知用ゲートでは本来ピークが検知されないので、単に全データの平均値を取るだけでも良いし、さらに精度の良い算出方法を用いても良い。
【0025】
ステップS4で、ノイズレベルがノイズレベルしきい値以上であるか否かを判断し、ノイズレベルがノイズレベルしきい値以上であるとき、ステップS5に進み、ノイズレベルがノイズレベルしきい値未満であるとき、ステップS6に進む。
ステップS5で、干渉波検知フラグをONにしてステップS9に進む。
ステップS6で、干渉波検知フラグをOFFにしてステップS7に進む。
ステップS7で、今回のノイズレベルを記憶してステップS8に進む。
【0026】
ステップS8で、今回および過去に記憶されたノイズレベルのデータから、ノイズレベルしきい値を更新してステップS9に進む。毎回の測定におけるノイズレベルはある程度の変動が考えられるため、所定の時間内の平均値を算出し、算出した平均値の所定倍の値をノイズレベルしきい値としている。
【0027】
ステップS9で、ステップS1〜ステップS6までの処理で求めた、目標物体16の距離D、相対速度vおよび干渉波検知フラグの状態を出力して干渉波検知処理ルーチンを終了する。レーダ装置1を使用する車両制御システムでは、干渉波検知フラグがONになっている場合、制御を中止したり、警告メッセージを表示し運転手に干渉波検知を通知したりすることができる。
【0028】
この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置1は、送信パルスの送信の直前の時間帯に干渉波検知用ゲートを設定し、干渉波検知用ゲートでサンプリングされたデータを干渉波検知用メモリ14に記憶し、干渉波検知用メモリ14に記憶されているデータを高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求め、その周波数スペクトルのノイズレベルがノイズレベルしきい値以上のとき送受共用アンテナ6で干渉波を受信したと検知するので、確実に干渉波を受信したことを検知することができる。
【0029】
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成図である。
この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置1Bは、図10に示すように、実施の形態1に係わるレーダ装置1と干渉波検知手段23Bが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる干渉波検知手段23Bは、計測時間の間に干渉波検知用ゲートでサンプリングしたビート信号の振幅のデータを読み出し、そのデータを高速フーリエ変換して周波数スペクトルを求め、周波数スペクトルに現れるピークの数に基づいて干渉波を受信したことを検知する。
【0030】
次に、この発明の実施の形態2に係わる干渉波検知処理ルーチンについて図11を参照して説明する。図11は、この発明の実施の形態2に係わる干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。この干渉波検知処理ルーチンは、所定の周期毎に開始される。
ステップS11で、通常の距離ゲートのデータに基づいて目標物体16との距離、相対速度を算出してステップS12に進む。
ステップS12で、干渉波検知用メモリ14に記憶されたデータを用いて高速フーリエ変換を行って周波数スペクトルを求めてステップS13に進む。
ステップS13で、周波数スペクトルのノイズレベルを求め、ノイズレベルの所定倍をピーク検知しきい値とし、スペクトルの振幅の極大値がピーク検知しきい値以上である周波数をピークとして検知してステップS14に進む。
【0031】
ステップS14で、検知したピークの数をカウントしてステップS15に進む。
ステップS15で、カウントしたピークの数が所定個以上か否かを判断し、ピークの数が所定個以上の場合ステップS16に進み、ピークの数が所定個未満の場合ステップS17に進む。
ステップS16で、干渉波検知フラグをONにしてステップS20に進む。
【0032】
ステップS17で、干渉波検知フラグをOFFにしてステップS18に進む。
ステップS18で、ステップS13で検知した全てのピークの振幅の平均値を求めて記憶してステップS19に進む。原理上、干渉波の受信がなければ、ピークの数は常に零であると考えられるが、実際には他のノイズ等によるピークが存在することも考えられるため、干渉の誤検知を防止するため、干渉波非検知状態での過去のピーク検知状態を記憶しておくのである。
【0033】
ステップS19で、今回および過去に記憶されたピークの振幅の平均値から、ピーク検知しきい値を更新する。毎回の測定におけるピークの振幅の平均値はある程度の変動があるため、所定の時間内の平均値を算出し、算出した平均値の所定倍の値をピーク検知しきい値とする。
【0034】
ステップS20で、ステップS11からステップS17までの処理で求めた、目標物体16の距離D、相対速度vおよび干渉波検知フラグの状態を出力して干渉波検知処理ルーチンを終了する。
そして、このレーダ装置1Bを使用する車両制御システムは、干渉波検知フラグがONになっている場合、制御を中止したり、警告メッセージを表示し運転手に干渉波検知を通知したりすることができる。
【0035】
この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置1Bでは、干渉波検知用ゲートでサンプリングされたデータの周波数スペクトルに干渉波を受信したときにはピークが増えること利用して、検出不良や誤検知の可能性がある場合に、その状態を検知することができる。
【0036】
なお、この実施の形態2では、ピークの個数のみについて述べているが、周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。
【0037】
また、一定の周波数雑音が発生するのであれば、その周波数を記憶して、記憶された周波数のピークについては干渉波検知処理から除外してもよい。
また、他の雑音等によるピークの振幅が、干渉波の受信によるピークの振幅より十分低い場合には、所定の振幅値より小さいピークを干渉波検知から除外しても良い。
【0038】
また、周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上に上昇し、且つ周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上のとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。このようにノイズレベルとピーク数に関して判断することにより、干渉波の受信の誤検知を防止することができる。
また、周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上に上昇し、且つ周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。このようにノイズレベルとピークの振幅の平均値に関して判断することにより、干渉波の受信の誤検知を防止することができる。
【0039】
また、周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上で、且つ周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波を受信したと判断してもよい。このようにピーク数とピークの振幅の平均値に関して判断することにより、干渉波の受信の誤検知を防止することができる。
【0040】
また、1回の干渉波の受信の検知だけでは信頼性が低いと考えられる場合は、所定の時間継続して干渉波の受信が検知されたとき、他の機器による電磁波の干渉が発生したと判断してもよい。このように所定の時間に亘って干渉波の受信が検知されたときだけ他の機器からの電磁波の干渉が発生したと判断するので、干渉波の受信の検知の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるレーダ装置の構成図である。
【図2】実施の形態1に係わるレーダ装置の干渉波検知用ゲートのサンプリングタイミングを示した説明図である。
【図3】計測時間に亘って任意の距離ゲートでビート信号の振幅をサンプリングする様子を示す図である。
【図4】任意の距離ゲートでサンプリングされたデータを時系列的に示した図である。
【図5】目標物体の距離に対応する距離ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図6】干渉波がない場合の、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図7】干渉波が存在する場合の、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図8】別の種類の干渉波が存在する場合の、干渉波検知用ゲートでサンプリングしたデータを高速フーリエ変換して得られた周波数スペクトルである。
【図9】この発明の実施の形態1の干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2に係わるレーダ装置の構成図である。
【図11】この発明の実施の形態2の干渉波検知処理ルーチンの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1、1B レーダ装置、2 発振器、3 パワーデバイダ、4 送信アンプ、5 送受切り替えスイッチ、6 送受共用アンテナ、7 受信アンプ、8 ミクサ、9 フィルタ、10 AGCアンプ、11 AD変換器、12 信号処理装置、13 距離ゲート用メモリ、14 干渉波検知用メモリ、15 車間距離制御装置、16 目標物体、21 データ記憶手段、22 距離・相対速度算出手段、23、23B 干渉波検知手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波をパルス変調して送信する送信手段、目標物体で反射した電磁波を受信する受信手段および送信した電磁波および受信した電磁波に基づいて目標物体の距離または相対速度の少なくともいずれか1つを測定する距離・相対速度算出手段を備えたレーダ装置において、
電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して他の機器からの干渉波の受信を検知する干渉波検知手段を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
他の機器からの干渉波の受信を所定の時間継続して検知したとき、他の機器による電磁波の干渉が発生したと判断することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上であり、且つ得られた周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上であるとき、または得られた周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上で、且つ得られた周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項1】
電磁波をパルス変調して送信する送信手段、目標物体で反射した電磁波を受信する受信手段および送信した電磁波および受信した電磁波に基づいて目標物体の距離または相対速度の少なくともいずれか1つを測定する距離・相対速度算出手段を備えたレーダ装置において、
電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して他の機器からの干渉波の受信を検知する干渉波検知手段を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
他の機器からの干渉波の受信を所定の時間継続して検知したとき、他の機器による電磁波の干渉が発生したと判断することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルのノイズレベルが所定のノイズレベルしきい値以上であり、且つ得られた周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上であるとき、または得られた周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
上記干渉波検知手段は、電磁波をパルス変調して送信する直前の時間帯で上記受信手段を動作して取得した計測時間の間に亘るデータを周波数解析し、得られた周波数スペクトルに存在するピークの数が所定個以上で、且つ得られた周波数スペクトルに存在するピークの振幅の平均値が所定の平均値しきい値以上であるとき、他の機器からの干渉波の受信を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−89505(P2008−89505A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273062(P2006−273062)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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