説明

レーダ装置

【課題】選択された表示態様や自船の回頭、移動状況等に対して素早く的確なレーダ検知画像を表示する。
【解決手段】処理用画像メモリ10Aは、固定の方位を基準とする固定直交座標系により各画素のアドレスが設定されている。表示用画像メモリ10Bは、処理用画像メモリ10Aのような画素構成からなる仮定の画像メモリを設定し、当該画像メモリの全体領域を所定数の二次元配列された画素からなる画素ブロックで分割し、当該画素ブロックの画素データ群を、高速読み出し可能な一ライン上に配列して記憶する。そして、表示モード、自船位置データ、船首方位データにより読出アドレスが設定される。これにより、自船の移動・回頭状況や表示モード、モーション設定に影響されることなく、簡素な構成で且つ煩雑な処理を行わずに、素早く且つ的確な画像表示を実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極座標系の受信データを直交座標系の画素データに変換して表示するレーダ装置に関するものである。特に、複数の表示モードを備えたレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自船の全方位の物標を検知するレーダ装置では、レーダアンテナを所定周期で回転させながら極座標系の受信信号を取得する。レーダ装置は、この極座標系の受信信号を直交座標系の画素データに変換して画像メモリに書き込み、所定タイミングで画像メモリに記憶された各画素データを読み出す。この際、画像メモリには一般的にSDRAMが用いられている。表示器は二次元配列された表示ドット群からなり、画素データを所定周波数(例えば60Hz)でラスタスキャンしながら表示する。
【0003】
図7は、従来の一般的な画像メモリの画素アドレスDMと表示器のドットアドレスDDとの関係を示した図であり、図7(A)が画像メモリの画素アドレスDMを示し、図7(B)が表示器のドットアドレスDMを示す。
【0004】
図7に示すように、従来のレーダ装置では、SDRAMである画像メモリのCol方向(行方向)と表示器のドットマトリクスのラスタスキャン方向とが一致するように設定されている。これは、SDRAMがRow方向(列方向)に沿ってデータを読み出すよりも、Col方向に沿ってデータを読み出すほうが、高速にデータの読み出しを行えるからであり、これにより、表示器のラスタスキャンの速度に対応するようにしている。
【0005】
ところで、現在、レーダ装置では、自船や自船以外の物標等に対する表示態様が異なる複数のモードを設定することができる。例えば、北方向を基準方位と設定して当該基準方位を表示画像の上方向に設定する表示モード(以下、North−Upモードとする。)、自船の船首方位を表示画像の上方向に設定する表示モード(以下、Head−Upモードとする。)、目的地までの方位や表示モード設定時の船首方位など、予め設定した方位を上方向に設定する表示モード(以下、Course−Upモードとする。)を選択することができる。また、自船位置を表示画像上の中心に固定するモード(以下、Relativeモーションとする。)か、自船の移動に応じて自船位置を表示画像上で移動させるモード(以下、Trueモーションとする。)かを選択することもできる。
【0006】
ここで、これらのモードの組み合わせ方や、自船の移動や回頭に応じて表示画像を変化させる必要が生じる。このため、画像メモリのCol方向と表示器のラスタスキャン方向との間に角度差が生じたり、自船の回頭等により当該角度差が変化する場合に問題が生じる。
【0007】
図8は従来の表示方法の問題を説明するための図であり、図8(A)は画像メモリのCol方向と表示器のラスタスキャン方向とが所定の角度を成す場合のこれら方向の関係を表す図であり、図8(B)は画像メモリからの読み出し方法を説明するための画像メモリの拡大表示図である。なお、図8(B)において、黒丸が表示器の各ドットを模式的に示したものである。
図8に示すように、画像メモリのCol方向と表示器のスキャン方向とが異なる場合、表示器のラスタスキャン方向に沿った読み出しを行おうとすると、複数の行(Row)に跨って画素データを読み出さなければならない。ここで、SDRAMでは、Col方向は高速に読み出しを行えるが、Row方向は高速に読み出しを行うことができない。このため、ラスタスキャンによる画像描画に必要な画像の転送速度に画素データの読み出し速度を追随させることが難しくなる。
【0008】
そのため、従来のレーダ装置では、ラスタスキャンの方向とCol方向とを一致させる必要があり、アンテナが一回転して新しい画素データが画像メモリに書き込まれるまでは、前回書き込まれた画素データをそのまま表示器における同一位置の画素データとして読み出し、表示していた。このことから、Head−Upモードでレーダ画像を表示する場合には、仮に自船の船首方位が回頭したとしても、アンテナが一回転して画像メモリの全画素データが更新されるまでは、自船の船首方位にしたがった正しいレーダ画像を表示することができず、表示画像と自船の回頭をスムーズに追従させることができなかった。
【0009】
この問題を解決する方法として、特許文献1に記載のレーダ装置がある。特許文献1に記載のレーダ装置では、当該特許文献1の発明の図2に示すように、所定の二次元配列された画素数からなる分割ブロックを画像メモリ内に配列設定し、表示のタイミングに応じて当該ブロック毎に画素データを読み出し、一旦SRAMに記憶しておく。そして、特許文献1に記載のレーダ装置は、画像メモリのCol方向と表示器のスキャン方向との角度差に応じて、SRAMに一次記憶された画素データのうちの必要な画素データをSRAMから読み出し、表示している。
【特許文献1】特許第3696502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1に示す方法では、通常画像メモリとして利用されるSDRAMとは別にSRAMを設けなければならず、装置としての構成要素が増加してしまうとともに、コストアップしてしまう。また、読み出しに際して、(1)SDRAMからSRAMへの一括転送、(2)表示方法に応じたSRAMからの読み出し、という二度の読み出しを行わなければならない。さらに、(1)のSDRAMからの読み出しの際には、画像メモリの複数のRowの画素データを同時に読み込まなくてはならず、例えばRow毎に並列に複数のSDRAMを配置して、当該複数のSDRAMから同時に読み出しを行う等の処理を実行しなければならず、大幅なコストアップとなる。
【0011】
このような問題を鑑みて、本発明の目的は、選択された表示態様や自船の回頭、移動状況等に対して、簡素な構成で且つ煩雑な処理を行わずに素早く的確な画像表示を行うことができるレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、所定の周期で回転しながら所定の周波数信号の送受信を繰り返すことにより全周方向の受信データを取得するアンテナと、直交座標系で配列された画素データ群により構成され、極座標系の受信データを直交座標系の画素データに変換して記憶する画像メモリとを備えたレーダ装置に関するものである。そして、このレーダ装置は、データ書込部とデータ読出部とを備える。データ書込部は、所定の表示モードで画像データを記憶した際に、直交座標系において一方の座標軸上にM個分(Mは2以上の自然数)、他方の座標軸上にN個分(Nは2以上の自然数)のM×N個の画素データからなる画素ブロックが画像メモリにおける高速に読み出せる同一ライン上に配置されるように、画像メモリへ画素データを書き込む。スキャン方向設定部は、ラスタスキャンの方向を設定する。データ読出部は、設定されたラスタスキャンの方向に画素データの読み出しを画素ブロック毎に行うことにより、表示器に表示する表示用画像データの読み出しを行う。
【0013】
この構成では、特定の絶対方位を基準方位とする固定直交座標系(例えば、北方向を基準方位とするNorth−Up座標系)を仮定する。以下、この固定直交座標系を「仮定の画像メモリ用座標系」と称する。そして、仮定の画像メモリ用座標系において、一方の座標系上にM個分(Mは2以上の自然数)、他方の座標系上にN個分(Nは2以上の自然数)のM×N個の画素データからなる画素ブロックを設定する。そして、この画素ブロック内に配列されたM×N個の画素データを、画像メモリの高速読み出し可能な同一ライン上に配列されるようにアドレス設定する。これにより、極座標系の物標検出データは直交座標系に変換される際に、さらに当該アドレスに変換されて画像メモリへ書き込まれる。
【0014】
このように書き込まれた画像メモリから画素データを読み出す場合、表示器のラスタスキャン方向にしたがって画素ブロック毎に画素データを読み出す。この際、同一の画素ブロックに含まれる複数の画素データは、画像メモリ上の高速読み出し可能な同一のライン上に配列されているので、高速に読み出しが可能である。ここで、仮定の画像メモリ用座標系の基準方位と表示画面の基準方位(表示器の上方向が示す方位)とが異なる等により、仮定の画像メモリ用座標系と実際の表示画面上の座標系とが所定の角度を有することがある。この場合、画素ブロックが仮定の画像メモリ用座標系の平面(二次元)領域に対応するので、この角度に応じて、単一の画素ブロック内にラスタスキャン方向に沿った複数の画素が存在する。したがって、このような対象となる画素データを表示対象の画素データとして選択して読み出せば、仮定の画像メモリ用座標系の基準方位と表示画面の基準方位とが異なっていても、表示器のラスタスキャン方向に応じた表示画像が高速で得られる。これにより、表示器の画像更新タイミングすなわちアンテナからの検知データの更新周期よりも高速な表示器のラスタスキャン周期に応じて画像を更新処理することができ、自船の状況に応じた違和感の無い画像の表示が可能になる。
【0015】
また、この発明のレーダ装置のスキャン方向設定部は、自船の船首方位に応じて表示用画像データの表示器における基準方位が変化する表示モード(Head−Upモード)時に、船首方位の変化に追従してラスタスキャンの方向を設定する。
【0016】
この構成では、ラスタスキャンの方向が船首方位に応じて変化すると、仮定の画像メモリ用座標系におけるラスタスキャンの方向の角度が変化する。したがって、変化後の角度に応じて画素データを読み出すことで、自船の船首方位に応じて表示の基準方位が変化する場合であっても、素早く画像が表示更新される。
【0017】
また、この発明のレーダ装置は、表示器における自船位置の振る舞いを設定するモーション設定部をさらに備える。そして、レーダ装置のデータ読出部は、モーション設定(自船位置の振る舞い)および自船位置の変化に応じて設定されたラスタスキャンの読出領域に基づいて、表示用画像データを構成する画素データを読み出す。
【0018】
この構成では、モーション設定によりスイープ回転の中心位置(自船位置)が常時表示画面上の特定位置に存在し続けるか、自船の移動によりスイープ回転の中心位置(自船位置)が移動するかの選択ができる。そして、このような表示方法の違いにより、読み出し対象となる画素データは変化する。ここで、モーション設定の変化に応じてラスタスキャンの開始位置および終了位置を適宜設定することで、対象となる画素データを正確に選択できるので、選択したモーション設定および自船の移動に応じて、素早く画像が表示更新される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、自船の移動・回頭状況や表示モード、モーション設定に影響されることなく、簡素な構成で且つ煩雑な処理を行わずに、素早く且つ的確な画像表示を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態に係るレーダ装置について図を参照して説明する。なお、本実施形態では、レーダ装置を例に説明するが、ソナー等、物標を検知して表示する装置であれば、本実施形態は適用することができる。
【0021】
図1は本実施形態のレーダ装置の主要構成を示すブロック図である。
レーダアンテナ1は、所定回転周期で水平面を回転しながら、回転周期とは異なる送受信周期で、パルス状電波を放射するとともに、自装置周囲にいる物標からの反射波を極座標系で受信する。レーダアンテナ1は、受信信号を受信部2に出力するとともに、スイープ角度データをアンテナ相対角度発生部5に出力する。
【0022】
受信部2は、レーダアンテナ1からの受信信号を検波して増幅し、AD変換部3に出力する。AD変換部3は、このアナログ形式の受信信号を複数ビットからなるデジタルデータ(エコーデータ)に変換する。
【0023】
スイープメモリ4は、デジタル変換された1スイープ分のエコーデータを実時間で記憶し、次の送信により得られるエコーデータが再び書き込まれるまでに、この1スイープ分のエコーデータを、スキャン相関処理部9へ出力する。
【0024】
アンテナ相対角度発生部5は、スイープ回転の中心に対する所定方向(例えば船首方向)を基準としたアンテナ角度θを処理用書込アドレス発生部8および表示用書込アドレス発生部11へ出力する。
【0025】
位置・方位センサ6は、GPS測位装置等からなり、自船の現在位置を示す自船位置データおよび自船の船首方位を示す船首方位データを検出して、CPU7へ出力する。CPU7は、自船位置データおよび船首方位データを処理用書込アドレス発生部8および表示用書込アドレス発生部11へ出力する。また、CPU7は、操作部15で選択された表示モード(North−Upモード,Head−Upモード,Course−Upモード)とモーション設定(Trueモーション,Relativeモーション)との組み合わせから表示仕様を設定し、表示仕様データを作成する。
【0026】
CPU7は、自船位置データ、船首方位データ、および表示仕様データに基づいて表示領域(本発明の「ラスタスキャンの読出領域」に相当する。)を設定し、当該表示領域を読み出すためのスタートアドレス(表示用読出スタートアドレス)およびエンドアドレス(表示用読出エンドアドレス)と、ラスタスキャン方向を表示用読出アドレス発生部12へ出力する。このように、CPU7が本発明の「スキャン方向設定部」の機能を有する。
【0027】
処理用書込アドレス発生部8は、例えば上述のNorth−Upモードのように基準方位を北方位(North−UP)とし、自船の移動によってスイープ回転の中心が変化する(Trueモーション)直交座標系により画素がマッピングされた処理用画像メモリ10Aに対する書込アドレスを発生する。この際、処理用書込アドレス発生部8は、アンテナ相対角度発生部5からのアンテナ角度θと、スイープメモリ4からのスイープ回転の中心を基準とした1スイープ上の読み出し位置rと、CPU7からの自船位置データおよび船首方位データとに基づいて、処理用画像メモリ10A用の書込アドレスを発生する。
【0028】
処理用画像メモリ10Aは、海面反射による受信信号やノイズなどの、アンテナ回転毎にランダムに現れるエコーデータを抑圧するスキャン相関処理を行うためのスキャン相関データが記憶される記憶媒体であり、上述のような直交座標系のアドレスで設定された二次元配列の画素でマッピングされるSDRAMからなる。
【0029】
スキャン相関処理部9は、スイープメモリ4からのエコーデータが入力されて極座標系から直交座標系へ変換されるのに同期して、処理用画像メモリ10Aにおける今回のエコーデータに対応する位置の過去の複数スキャン分のスキャン相関データを読み出し、スキャン相関処理を行う。スキャン相関処理部9は、今回のスキャン相関データを、処理用画像メモリ10Aの対応する画素アドレスに更新記憶するとともに、表示用画像メモリ10Bへ出力する。
【0030】
表示用書込アドレス発生部11は、図3に示すメモリマッピングからなる表示用画像メモリ10Bに対する書込アドレスを発生する。この際、表示用書込アドレス発生部11は、処理用画像メモリ10Aと同様のNorth−Upモード/Trueモーションの直交座標系を仮定した上で、アンテナ相対角度発生部5からのアンテナ角度θと、スイープメモリ4の1スイープ上の読み出し位置rと、CPU7からの自船位置データおよび船首方位データとに基づいて上記直交座標系における画素アドレスを算出する。そしてさらに、以下に示す特定のアドレス変換処理を行うことで、表示用画像メモリ10B用の書込アドレスを発生する。
【0031】
表示用画像メモリ10Bは、SDRAMからなり、図3に示すようなメモリマッピングで各画素のアドレスが設定され、当該画素毎に画素データが記憶されている。
【0032】
ここで、表示用画像メモリ10Bのアドレス設定方法について、図2、図3を参照して説明する。
図2は、表示用画像メモリ10Bのアドレス設定の概念を説明するための図であり、図2(A)がアドレス設定のために仮定の画像メモリ用座標系で設定したNorth−Upモードでの仮定の画像メモリ全体をブロック分けしてなる画素ブロックBAの配列概念を示し、図2(B)が画素ブロックを構成する画素の配列概念を示す。
図3は、図2に示す概念を利用した表示用画像メモリ10Bのメモリマッピングを示す図である。
【0033】
なお、以下では、表示用画像メモリ10Bが、直交座標系の一方の軸方向であるCol方向へ1024画素、他方の軸方向であるRow方向へ1024画素となる画素数で構成されている場合について説明する。
【0034】
まず、Col方向1024画素×Row方向1024画素からなる図2(A)に示すような画像メモリを、上述の処理用画像メモリ10Aと同様の画素配列からなる仮定の画像メモリとして設定する。この際、図2(A)の例であれば、North−Upモードであるので、Row方向に沿って南北方向が設定されるとともに、当該仮定の画像メモリ全体のスタートアドレスを最北西の画素に割り当てるようにアドレスを設定する。
【0035】
次に、この仮定の画像メモリの全体領域を、Col方向16画素×Row方向16画素からなる画素ブロックBAで分割する。これにより、仮定の画像メモリでは、それぞれが16画素×16画素からなる画素ブロックBAが、Col方向およびRow方向に沿って二次元配列されているように設定される。この際、先のスタートアドレスの画素を含む画素ブロックBA0が最北西の画素ブロックに割り当てられるとともに、他の画素ブロックBA1〜BA4095も二次元配列されるように設定される。より具体的には、スタートアドレスを含む最北西端には、画素ブロックBA0が配置され、Col方向に沿って、順に画素ブロックBA1,BA2,・・・,BA63が配列される。そして、仮定の画像メモリのCol方向の端部に達すると、Row方向へ割り当て領域をシフトし、同様にCol方向に沿って画素ブロックBA64〜BA127が配列される。このような画素ブロックBA群の配列は順次行われ、最南東の画素(すなわちスタートアドレスとは正反対の当該仮定の画像メモリのエンドアドレスの画素)を含む画素ブロックBA4095までが図2(A)に示すように順次配列される。
【0036】
各画素ブロックBAは、上述のように16画素×16画素からなる。各画素ブロックBAは、当該画素ブロック内における最北西端の画素に最も小さいアドレスを与え、最南東端の画素D255に最も大きいアドレスが割り当てられるように、画素が配列される。例えば、図2(B)に示す画素ブロックBA0であれば、最北西端の画素がアドレスD0となり、Col方向に沿ってD1,D2,・・・,D15とアドレスが割り当てる。次にアドレス設定をRow方向へ一つシフトさせて、Col方向に沿ってD16〜D31のアドレスを割り当てる。このようなアドレス設定を繰り返し、画素ブロックBA0の最南東端の画素にアドレスD255を割り当てる。次に、図示しないが、画素ブロックBA0にCol方向で隣り合う画素ブロックBA1では、当該画素ブロックBA1内の最北西端の画素にアドレスD256を割り当て、画素ブロックBA1内の最南東端の画素にアドレスD511を割り当てる。以下、各画素ブロックBAに対しても、同様に画素のアドレス割当が設定される。これにより、各画素ブロックBAは、仮定の画像メモリ上の二次元領域の画素データを記憶するように設定される。
【0037】
このような基準方位を有しブロック分けされた仮定の画像メモリに対して、表示用画像メモリ10Bでは、一つの画素ブロックBAを構成する画素群が、同じRowアドレス上に配置される。この際、一つの画素ブロックBAを構成する画素群はCol方向(高速読出方向)に沿ってアドレスが増加するように配列される。例えば、具体的に図3に示すように、画素ブロックBA0を構成する256個の画素は、Row(N1)上において、アドレスD0の画素からアドレスD255の画素の順でCol方向に沿って順次配列される。同様に、画素ブロックBA1を構成する256個の画素は、画素ブロックBA0の画素群に引き続き、Row(N1)上においてアドレスD256の画素からアドレスD511の画素の順でCol方向に沿って配列される。さらに、画素ブロックBA2を構成する256個の画素は、画素ブロックBA1の画素群に引き続き、Row(N1)上においてアドレスD512の画素からアドレスD767の画素の順でCol方向に沿って配列される。このような配列が全ての画素ブロックBA0〜BA4095に対して行われる。
【0038】
このように、表示用画像メモリ10Bは、基準方位を有する直交座標系の仮定の画像メモリ領域を分割する複数の画素ブロックを設定して、当該設定された各画素ブロックにおける二次元配列の画素群を、高速読み出し可能な同一ライン上に配列するようにアドレスマッピングを行い、当該画素毎に画素データを記憶する。
【0039】
そして、このようなアドレスマッピングが行われた表示用画像メモリ10Bに対して、表示用読出アドレス発生部12から読出アドレスが与えられる。
【0040】
表示用読出アドレス発生部12は、CPU7からの表示用読出スタートアドレスおよび表示用読出エンドアドレスと、ラスタスキャン方向に応じて、表示用画像メモリ10Bに対する読出アドレスを設定する。この読み出し処理は、表示器14の画面の更新タイミングに同期して行われる。すなわち、アンテナの回転速度により決定される表示用画像メモリ10Bへの更新書き込み処理よりも高速な表示器14のラスタスキャン速度(周波数)に同期して行われる。
【0041】
図4および図5はCPU7および表示用読出アドレス発生部12による読出アドレスの設定方法をより具体的に説明するための図である。図4は読出アドレスの決定方法を示す図であり、図5は表示用画像メモリ10Bからの読出方法を説明する図である。
【0042】
CPU7は、表示仕様データ(表示モードとモーション設定との組み合わせ)、自船位置データおよび船首方位データに基づいて、仮定の画像メモリ上における表示器14のラスタスキャン方向、表示用読出スタートアドレスおよび表示用読出エンドアドレスを設定する。具体的には、CPU7は、表示画面の左上角のドットアドレスを仮定の画像メモリ上のアドレスに変換した画素アドレスを表示用読出スタートアドレスに設定し、表示画面の右下角のドットアドレスを仮定の画像メモリ上のアドレスに変換した画素アドレスを表示用読出エンドアドレスに設定する。これにより、仮定の画像メモリ上に、実際に表示器14上に表示される表示対象エリアを設定する。
【0043】
例えば、図4は、Head−Upモード/Trueモーションが設定された場合を示しており、この場合、CPU7は、表示器14の中心ドットを仮定の画像メモリ領域の中心アドレスに設定する。また、CPU7は、船首方位データが得られているので、船首方位に応じて仮定の画像メモリ領域のCol方向に所定角を成すラスタスキャン方向と表示用読出スタートアドレスおよび表示用読出エンドアドレスとを設定する。これらのデータは、CPU7から表示用読出アドレス発生部12へ与えられる。これらのデータはCPU7により自船位置の変化や自船の回頭、表示モードやモーションの設定変更に応じて逐次決定され、表示用読出アドレス発生部12へ与えられる。
【0044】
表示用読出アドレス発生部12は、設定されたラスタスキャン方向と、表示用読出スタートアドレスおよび表示用読出エンドアドレスとに基づいて、表示器14の各ドット位置と仮定の画像メモリ領域の各画素との重なりを検出し、重なる位置の画素アドレスを取得する。この際、表示用読出アドレス発生部12は、この処理を、図4(B)に示すように画素ブロックBA毎で且つスキャンライン毎に行う。
【0045】
この処理について、より具体的に、図4(A)に示すような位置に設定された画素ブロックBAaに対して、スキャンラインLA,LBが交差する場合を例に説明する。まず、表示用読出アドレス発生部12は、表示用読出スタートアドレス、表示用読出エンドアドレス、およびラスタスキャン方向に基づいて、先に読み出させるべきスキャンラインLAが画素ブロックBAaの領域に交差することを検出すると、このスキャンラインLA上に存在する表示器14の各ドット位置(図4(B)に示す黒丸)を用いて取得し、当該ドット位置に重なり合う画素(図4(B)におけるハッチングの画素)のアドレスを読み出し対象として設定する。このようなスキャンラインLAに対する読出アドレスの設定は、画素ブロックBAaに対する設定の後も、スキャンラインLAが交差する画素ブロック毎に順次行われる。この後、表示用読出アドレス設定部12は、スキャンラインLBが画素ブロックBAaの領域に交差することを検出すると、スキャンラインLAの場合と同様に、スキャンラインLB上のドット位置に対応する読み出し対象となるアドレスを設定する。
【0046】
表示用読出アドレス発生部12は、このような読み出し対象となるアドレスの設定処理を、表示器14の全てのドットについてスキャンライン毎に行い、表示用画像メモリ10Bに対する読出アドレスを決定し、表示用画像メモリ10Bへ与える。
【0047】
表示用画像メモリ10Bでは、表示用読出アドレス発生部12から受け付けた読出アドレスにしたがって、画素ブロック毎に順次画素データの読み出しを行う。ここで、前述のように、単一の画素ブロックBAを構成する二次元配列からなる全ての画素データが同一Rowアドレス上に配列されているので、一度の読み出し処理により、基準方位を有する直交座標系の仮定の画像メモリにおける二次元配列された画素データを高速に読み出すことができる。すなわち、従来例のようにCol方向とラスタスキャン方向とが異なる場合に、複数のRowを連続して順次読み出さなくても(図7(B)参照)、一つの画素ブロックに含まれるラスタスキャン方向に沿った二次元配列の画素データの読み出しを、高速読み出し可能な一つのRowの読み出しだけで実行することができる(図5参照)。これにより、一つのRowを読み出す本実施形態の手法を用いれば、複数のRowを順次読み出すよりもラスタスキャン方向に沿った画素データを高速に読み出すことができる。
【0048】
このように読み出された画素データは、表示用ラインバッファ13へ出力される。表示用ラインバッファ13は、表示器14のドットライン(スキャンライン)毎に画素データをバッファ処理して、表示器14へ出力する。表示器14は、表示用ラインバッファ13からの画素データを、当該画素データ毎のレベルに応じて輝度等を設定して表示画面上に表示する。
【0049】
以上のように、本実施形態の構成を用いれば、各種の表示モードや自船の移動・回頭等により表示器上のラスタスキャン方向と、固定直交座標系で設定された画像メモリの高速読み出し方向が一致しなくなっても、表示器の画像更新に同期して高速に現況に応じた画像を表示することができる。
【0050】
なお、上述の説明では、現況画像を表示するレーダ装置を例にしたが、航跡(トレイル)を表示するレーダ装置についても同様に上述の構成を適用することができる。図6は、現況画像と航跡画像とを同時に表示するレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【0051】
図6に示すように、現況画像と航跡画像とを同時に表示するレーダ装置は、上述の図1に示したレーダ装置の構成に追加して、航跡データ生成部21と、航跡用画像メモリ10Cと、画像合成部22と、航跡用書込アドレス発生部23とを備える。航跡データ生成部21は、航跡用画像メモリ10Cに記憶されている一スキャン前の航跡画像データを読み出し、スキャン相関処理後の今回のエコーデータと一スキャン前の航跡画像データを用いて、今回の航跡画像データを生成する。航跡用書込アドレス発生部23は、航跡データ生成部21が生成した今回の航跡画像データを、航跡用画像メモリ10Cの対応する画素アドレスに更新記憶するための書込アドレスを発生する。航跡用画像メモリ10Cは、処理用画像メモリ10Aと同じSDRAMで且つ同様のアドレスマッピングからなり、航跡用書込アドレス発生部23からの書込アドレスにしたがって航跡用画像データを記憶する。画像合成部22は、同じアドレスマッピングからなる処理用画像メモリ10Aからの画素データと航跡用画像メモリ10Cからの対応する画素データ同士とを合成して、表示用画像メモリ10Bへ出力する。この表示用画像メモリ10Bへの書き込みは上述のように表示用書込アドレス発生部11からの書込アドレスにしたがって行われる。そして、このようにして書き込まれた画素データは上述の読み出し処理により読み出され、表示される。
【0052】
これにより、航跡を表示するレーダ装置であっても、自船の移動、回頭等に応じた的確な画像表示を素早く実行することができる。
【0053】
また、上述の説明では、処理用画像メモリと表示用画像メモリとを別に設置した例を示したが、一つの画像メモリにしてもよい。すなわち、処理用画像メモリとしての機能と表示用画像メモリとしての機能とを兼用する画像メモリを用いてもよい。このような構成を用いる場合、兼用の画像メモリには、上述の表示用画像メモリと同様に表示用の書込アドレスを用いて画素データが記憶される。したがって、スキャン相関処理部9は、当該表示用の書込アドレスにより書き込まれた画素データを用いてスキャン相関処理を行う。
【0054】
ここで、自船の移動や回頭が有ればスキャン相関処理用の読出アドレスを変更しなければならないが、固定直交座標系からなる上述の仮定の画像メモリにおける画素のシフト量や基準方位の変化を自船の移動や回頭の検出状況に応じて設定することで、今回のエコーデータに対応する画素データの仮定の画像メモリ上におけるアドレスを正確に決定して読み出すことができる。すなわち、画素のシフト量や基準方位の変化を加味して、仮定の画像メモリ上における今回のエコーデータに対応する画素アドレスを取得し、当該画素アドレスの画素データをスキャン相関処理部9に与える。スキャン相関処理部9は、このように与えられた画素データと今回のエコーデータとを用いてスキャン相関処理を行い、兼用の画像メモリ上に更新記憶する。このような処理を行うことで、兼用の画像メモリが二次元配列された画素ブロックの画素データを一つのRow方向に配列するような構成であっても、自船の移動・回頭状況や表示モード、モーション設定に影響されることなく、正確にスキャン相関処理を行うことができる。また、このような兼用の画像メモリに対して、ラスタスキャン方向や表示用読出スタートアドレス、表示用読出エンドアドレスを設定すれば、自船の移動・回頭状況や表示モード、モーション設定に影響されることなく、的確な画像表示を素早く行うことができる。
【0055】
また、上述の説明では、各画像メモリの画素数を1024×1024としたが、画像メモリの画素数はこれに限るものではない。また、画素ブロックを構成する画素数、上述のような16×16に限る必要はなく、適宜設定すればよい。この際、二次元配列は正方形領域に限らず長方形領域であってもよい。すなわち直交座標系の一方の軸に沿った画素数と他方の軸に沿った画素数とは同じでなくてもよい。
【0056】
また、上述の処理用画像メモリ10Aおよび仮定の画像メモリ用座標は、North−Upモード/Trueモーションに設定した場合を示したが、表示モードはNorth−Upモードに限らず固定の方位を基準とする直交座標系でアドレス設定されていればよい。また、船首方位の変化に追従して表示用画像データの向きを回転表示させるためであれば、モーション設定をTrueモーションに設定する必要はなく、他のモーション設定であってもよい。
【0057】
また、上述の説明では、表示モードとモーション設定とが選択可能な場合を例に示したが、いずれか一方のみが選択可能な装置であっても上述の構成を適用することができる。
【0058】
また、上述の説明では、表示器のラスタスキャンのタイミングに同期する例を示したが、表示用画像メモリへの書き込みと読み出しとが別であり、高速な読み出しが必要な場合であれば、上述の構成を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態のレーダ装置の主要構成を示すブロック図である。
【図2】表示用画像メモリ10Bのアドレス設定の概念を説明するための図である。
【図3】図2に示す概念を利用した表示用画像メモリ10Bのメモリマップを示す。
【図4】読出アドレスの決定方法を示す図である。
【図5】表示用画像メモリ10Bからの読出方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態のレーダ装置の別の主要構成を示すブロック図である。
【図7】従来の一般的な画像メモリの画素アドレスDMと表示器のドットアドレスDDとの関係を示した図である。
【図8】従来の表示方法の問題を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1−レーダアンテナ、2−受信部、3−AD変換部、4−スイープメモリ、5−アンテナ相対角度発生部、6−位置・方位センサ、7−CPU、8−処理用書込アドレス発生部、9−スキャン相関処理部、10A−処理用画像メモリ、10B−表示用画像メモリ、11−表示用書込アドレス発生部、12−表示用読出アドレス発生部、13−表示用ラインバッファ、14−表示器、15−操作部、21−航跡データ生成部、22−画像合成部、23−航跡用書込アドレス発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で回転しながら所定の周波数信号の送受信を繰り返すことにより、全周方向の受信データを取得するアンテナと、
直交座標系で配列された画素データ群により構成され、極座標系の前記受信データを前記直交座標系の画素データに変換して記憶する画像メモリとを備えたレーダ装置であって、
所定の表示モードで画像データを記憶した際に、前記直交座標系において一方の座標軸上にM個分(Mは2以上の自然数)、他方の座標軸上にN個分(Nは2以上の自然数)のM×N個の画素データからなる画素ブロックが、前記画像メモリにおける高速に読み出せる同一ライン上に配置されるように、前記画像メモリへ前記画素データを書き込むデータ書込部と、
ラスタスキャンの方向を設定するスキャン方向設定部と、
前記ラスタスキャンの方向に前記画素データの読み出しを前記画素ブロック毎に行うことにより、表示器に表示する表示用画像データの読み出しを行うデータ読出部と、を備えたレーダ装置。
【請求項2】
前記スキャン方向設定部は、自船の船首方位に応じて前記表示用画像データの表示器における基準方位が変化する表示モード時に、船首方位の変化に追従して前記ラスタスキャンの方向を設定する、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
表示器における自船位置の振る舞いを設定するモーション設定部をさらに備え、
前記データ読出部は、前記自船位置の振る舞い及び自船位置の変化に応じて設定された前記ラスタスキャンの読出領域に基づいて、前記表示用画像データを構成する画素データを読み出す、請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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