説明

レーダ装置

【課題】アレーアンテナの開口面積が設定されてしまった後であっても、アレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得を必要に応じて制御することが可能なレーダ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ素子24−1〜24−nから送信信号を送信する際に、走査制御部30により送受信モジュール23−1〜23−nをオン/オフ制御することで、アレーアンテナの開口長及び開口面積を制御する。これにより、送信ビームのビーム幅及びアンテナ利得を制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複数のアンテナ素子で構成されたアレーアンテナを備えたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、複数のアンテナ素子で構成されたアクティブフェーズドアレーアンテナを備え、各アンテナ素子を介して送信する信号の位相を制御することにより、送信信号の指向性を自由に設定する。このとき、アレーアンテナのアンテナ利得及び、送信ビーム及び受信ビームのビーム幅は、基本的にはアレーアンテナのアンテナ開口面積及び送信信号の周波数によって決定される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のレーダ装置では、アレーアンテナのアンテナ開口面積が一度設定されてしまうと、開口面積を変更することが困難であるため、ビーム幅及びアンテナ利得の変更は困難であった。このとき、所定の処理によりビーム幅及びアンテナ利得の不足を補うことが可能である。ただし、レーダ装置の捜索範囲によっては、レーダリソースのロスが生じるという問題がある。例えば、捜索範囲が遠距離となる場合には、送信信号のパルス幅を長くとることで、アンテナ利得の不足を補うことが可能であるが、距離ブラインドが発生するという問題がある。また、捜索範囲が遠距離となる場合には、送信信号のパルス数を増加させることで、アンテナ利得の不足を補うことが可能であるが、目標の捜索時間が長くなり、データレートが低下するという問題がある。また、捜索範囲が広範囲に及ぶ場合には、複数の送信ビームを時系列に捜索することで、ビーム幅の狭さを補うことが可能であるが、探知時間が長くなり、データレートが低下するという問題がある。
【0004】
なお、特許文献1では、送信信号の周波数に応じて、アレーアンテナにおけるアンテナ素子のうち予め設定されたアンテナ素子をオフにすることで、送信信号の周波数が変化した場合でも同一のビーム幅を保つ技術が提案されている。しかしながら、特許文献1では、周波数が変化した場合にビーム幅を維持することについては記載されているが、一度開口面積が設定されてしまったアレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得を、必要に応じて制御することに関しては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−247922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来のレーダ装置では、アレーアンテナの開口面積が一度設定されてしまうと、アレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得の変更が困難であり、ビーム幅及びアンテナ利得の不足を補おうとした場合、レーダリソースのロスが生じるという問題があった。
【0007】
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、アレーアンテナの開口面積が設定されてしまった後であっても、アレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得を必要に応じて制御することが可能なレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るレーダ装置は、送信信号を生成する信号生成部と、前記生成された送信信号を複数系統に分配する分配部と、前記系統毎に設置され、前記分配された送信信号の位相を変化させる複数の送信モジュールと、前記複数の送信モジュールにそれぞれ接続され、前記送信信号を空間へ向けて送信する複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子により所望の方向に送信ビームを発生させるように前記複数の送信モジュールにおける位相変化を制御し、前記送信ビームのビーム幅及びアンテナ利得が所望のビーム幅及びアンテナ利得となるようにアンテナ開口長及びアンテナ開口面積を決定し、前記アンテナ開口長及びアンテナ開口面積を満たすように前記複数の送信モジュールのうちいずれかをオン/オフ制御する制御部とを具備する。
【0009】
上記構成によるレーダ装置では、送信ビームのビーム幅及びアンテナ利得が所望のビーム幅及びアンテナ利得となるように、送信モジュールをオン/オフ制御するようにしている。これにより、アンテナ開口長及びアンテナ開口面積がすでに設定された場合であっても、アンテナ開口長及びアンテナ開口面積を変更することが可能であるため、送信ビームのビーム幅及びアンテナ利得を制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、アレーアンテナの開口面積が設定されてしまった後であっても、アレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得を必要に応じて制御することが可能なレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示す図である。
【図2】図1のレーダ装置の送受信モジュールの構成を示す図である。
【図3】図1のビーム形成部の機能構成を示す図である。
【図4】図1のアレーアンテナの開口とビーム幅を示す図である。
【図5】図1のアレーアンテナの開口とビーム幅を示す図である。
【図6】図1のアレーアンテナの開口とビーム幅を示す図である。
【図7】図1のレーダ制御部が捜索距離に応じてビーム幅及びアンテナ利得を制御する際の図である。
【図8】従来のレーダ装置により所定の捜索範囲を捜索する際の図である。
【図9】本発明のレーダ装置に用いることが可能な受信モジュールの機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係るレーダ装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図1におけるレーダ装置は、レーダ制御部10、アクティブフェーズドアレーアンテナ20、走査制御部30、ビーム形成部40及び信号処理部50を具備する。レーダ制御部10は、レーダ装置全体の動作を制御するものであり、目標の捜索範囲に応じたタイミングで動作するようにアレーアンテナ20及び走査制御部30へ制御信号を出力する。
【0014】
アレーアンテナ20は、送信機21、電力分配器22、送受信モジュール23−1〜23−n、アンテナ素子24−1〜24−n及び受信機25を備える。送信機21は、レーダ制御部10からの制御信号に従って送信信号を生成する。電力分配器22は、送信信号を分配し、分配後の信号を送受信モジュール23−1〜23−nへ供給する。送受信モジュール23−1〜23−nは、電力分配器22から供給された信号をアンテナ素子24−1〜24−nを介して送信する。また、送受信モジュール23−1〜23−nは、アンテナ素子24−1〜24−nにより受信信号を受信する。受信機25は、送受信モジュール23−1〜23−nからの信号に対して受信処理を施し、処理後の信号をビーム形成部40へ出力する。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置の送受信モジュール23−1〜23−nの構成を示す模式図である。送受信モジュール23−1〜23−nは、スイッチ231、位相器232、切替器233、高出力増幅器234、低雑音増幅器235及びサーキュレータ236を備える。
【0016】
スイッチ231は、後述する走査制御部30の制御に従って信号の導出をオン/オフする。位相器232は、走査制御部30の制御に従い、受け取った信号の位相を制御する。このときの位相制御量は、走査制御部30により、ビーム走査角に応じてアンテナ素子24−1〜24−n毎に設定される。これにより、送信時にはアンテナ素子24−1〜24−nにより所望の方向に送信ビームが形成される。また、受信時にはアンテナ素子24−1〜24−nにより得られた複数の受信信号に基づいてビーム形成部40で所望の受信ビームが形成されることとなる。切替器233は、走査制御部30の制御に従って信号の導出先を切り替える。高出力増幅器234は、入力された送信信号を高出力で増幅する。低雑音増幅器235は、入力された受信信号を低雑音で増幅する。
【0017】
上記走査制御部30は、レーダ制御部10からの制御信号に従い、送受信モジュール23−1〜23−nのスイッチ231に対してオン/オフ制御を行う。また、走査制御部30は、レーダ制御部10からの制御信号に従い、切替器233に対して切替制御を行う。また、走査制御部30は、レーダ制御部10からの制御信号に従い、位相器232の制御を行う。
【0018】
ビーム形成部40は、例えば、図3に示す構成をとる。ビーム形成部40は、ビーム形成処理部41−1〜41−mを備える。ビーム形成部40は、ビーム形成処理部41−1〜41−mによりm種類の合成ビームを形成する。
【0019】
ビーム形成処理部41−1〜41−mは、それぞれミキサ素子411及び合成部412を備える。例えば、ビーム形成処理部41−1は、ミキサ素子411−11〜411−1n及び合成部412−1を備える。ミキサ素子411−11〜411−1n,411−21〜411−2n,…,411−n1〜411−nmそれぞれには、ビーム形成処理部41−1〜41−mで所望の合成ビームが形成されるように、予め設定されたウェイトが付加される。
【0020】
ビーム形成処理部41−1は、受信機25から出力されたn系統の受信信号に対してミキサ素子411−11〜411−1nでそれぞれ重み付けを行う。ビーム形成処理部41−1は、ミキサ素子411−11〜411−1nからの信号を合成部412−1で合成し、その合成信号を信号処理部50へ出力する。なお、ビーム形成処理部41−1は、必ずしも受信機25からのn系統の受信信号に基づいて合成ビームを形成する必要はない。例えば、ビーム形成処理部41−1は、受信機25からの受信信号のうちいずれかの複数の受信信号に基づいて合成ビームを形成するようにしてもよい。また、ビーム形成処理部41−2〜41−mは、ビーム形成処理部41−1と同様の処理を行い、合成部412−2〜412−mから合成信号を信号処理部50へ出力する。
【0021】
信号処理部50は、ビーム形成部40からの信号に対して信号処理を行い、レーダ制御部10へ出力する。
【0022】
次に、上記構成における動作を説明する。
【0023】
まず、アレーアンテナ20が送信信号を送信する際の動作について説明する。レーダ制御部10は、外部から入力されたパラメータに従って、アレーアンテナ20及び走査制御部30を制御する。ここで、外部から入力されたパラメータとは、アレーアンテナ20からの送信ビームのビーム幅、アンテナ利得、同時送信ビーム本数及び周波数等である。一般的にビーム幅は以下の式により算出される。
【0024】
B=K・λ/L (1)
ここで、Bはビーム幅を示し、Kは定数を示し、Lは開口寸法を示す。また、アンテナ利得は以下の式により算出される。
【0025】
G=(4πA)/λ (2)
ここで、Gはアンテナ利得を示し、Aは開口面積を示す。
【0026】
例えば、レーダ制御部10は、外部からビーム幅B及びアンテナ利得Gが所定の値となるように指定された場合、ビーム幅B及びアンテナ利得Gが指定された値となるように開口寸法L、開口面積A及び波長λを決定する。そして、レーダ制御部10は、決定した波長λに基づく周波数fの送信信号を捜索範囲に応じたタイミングで生成するように送信機21へ制御信号を出力する。また、レーダ制御部10は、アレーアンテナ20の開口寸法及び開口面積が、決定した開口寸法L及び開口面積Aとなるように、走査制御部30に対して制御信号を出力する。
【0027】
また、レーダ制御部10は、外部からビーム幅B及び周波数fが所定の値となるように指定された場合、ビーム幅B及び周波数fが指定された値となり、かつ、アンテナ利得Gが最適な値となるように開口寸法L及び開口面積Aを決定する。そして、レーダ制御部10は、周波数fの送信信号を捜索範囲に応じたタイミングで生成するように送信機21へ制御信号を出力する。また、レーダ制御部10は、アレーアンテナ20の開口寸法及び開口面積が、決定した開口寸法L及び開口面積Aとなるように、走査制御部30に対して制御信号を出力する。
【0028】
また、レーダ制御部10は、外部から同時送信ビーム本数が指定された場合、指定されたビーム本数を満たし、かつ、ビーム幅B及びアンテナ利得Gが最適な値となるように開口数S、開口寸法L、開口面積A及び波長λを決定する。そして、レーダ制御部10は、決定した波長λに基づく周波数fの送信信号を捜索範囲に応じたタイミングで生成するように送信機21へ制御信号を出力する。また、レーダ制御部10は、アレーアンテナ20の開口数、開口寸法及び開口面積が、決定した開口数S、開口寸法L及び開口面積Aとなるように、走査制御部30に対して制御信号を出力する。
【0029】
さらに、レーダ制御部10は、外部から捜索範囲の指定を受けた場合、その捜索範囲を捜索するのに適した送信ビームを形成するようにアレーアンテナ20及び走査制御部30を制御する。
【0030】
例えば、レーダ制御部10は、外部から捜索範囲Dが指定された場合、捜索範囲Dにおける捜索距離に応じて送信ビームのビーム幅B及びアンテナ利得Gを制御する。すなわち、レーダ制御部10は、遠距離捜索が必要である範囲はビーム幅Bよりもアンテナ利得Gを重視して、開口寸法L、開口面積A及び波長λを決定する。また、レーダ制御部10は、近距離捜索が必要である範囲はアンテナ利得Gよりもビーム幅Bを重視して、開口寸法L、開口面積A及び波長λを決定する。そして、レーダ制御部10は、決定した波長λに基づく周波数fの送信信号を捜索距離に応じたタイミングで生成するように送信機21へ制御信号を出力する。また、レーダ制御部10は、アレーアンテナ20の開口寸法及び開口面積が、決定した開口寸法L及び開口面積Aとなるように、走査制御部30に対して制御信号を出力する。 送信機21は、レーダ制御部10からの制御信号に従って送信信号を生成し、生成した送信信号を電力分配器22へ出力する。電力分配器22は、送信機21からの送信信号を各送受信モジュール23−1〜23−nへ分配する。 走査制御部30は、レーダ制御部10からの制御信号に従って、送受信モジュール23−1〜23−nのスイッチ231をオン/オフ制御する。すなわち、レーダ制御部10で決定された開口数S、開口寸法L及び開口面積Aが実現されるように、スイッチ231をオン又はオフとすることで、送信信号を処理する送受信モジュールの数を制御する。また、走査制御部30は、レーダ制御部10により指定された方向に送信ビームが指向性を有するように位相器232を制御する。また、走査制御部30は、送信信号の送信時においては、レーダ制御部10の制御に従い、切替器233を高出力増幅器234側へ切り替える。
【0031】
送受信モジュール23−1〜23−nのうち、走査制御部30によりスイッチ231がオンとされた送受信モジュールは、送信信号を位相器232で位相制御し、高出力増幅器234で増幅した後、アンテナ素子24−1〜24−nから出力する。 また、走査制御部30は、複数の送信ビームを同時に形成する旨の指示があった場合、スイッチ231をオン/オフ制御してアレーアンテナ20上に、指定された個数の開口面を形成させる。そして、走査制御部30は、位相器232を開口面毎に制御することで、複数の送信ビームを同時に形成する。
【0032】
次に、アレーアンテナ20が送信信号の反射信号を受信する際の動作について説明する。レーダ制御部10は、外部から入力されたパラメータに従って、アレーアンテナ20の開口数S、開口面積A及び開口寸法L等を決定し、走査制御部30を制御する。ここで、外部から入力されるパラメータとは、受信ビームのビーム幅、アンテナ利得、同時受信ビーム本数及び周波数等である。
【0033】
さらに、レーダ制御部10は、外部から捜索範囲の指定を受けた場合、その捜索範囲を捜索するのに適した送信ビームを形成するようにアレーアンテナ20及び走査制御部30を制御する。
【0034】
走査制御部30は、レーダ制御部10からの制御信号に従って、送受信モジュール23−1〜23−nのスイッチ231をオン/オフ制御する。すなわち、レーダ制御部10で決定された開口数S、開口寸法L及び開口面積Aが実現されるように、スイッチ231をオン又はオフとすることで、受信信号を処理する送受信モジュールの数を制御する。また、走査制御部30は、複数の受信ビームを同時に形成する旨の指示があった場合には、スイッチ231をオン/オフ制御してアレーアンテナ20上に、指定された個数の開口面を形成させる。
【0035】
また、走査制御部30は、レーダ制御部10により指定された方向に受信ビームが指向性を有するように位相器232を制御する。また、走査制御部30は、受信時においては、レーダ制御部10の制御に従い、切替器233を低雑音増幅器234側へ切り替える。
【0036】
アンテナ素子24−1〜24−nは、反射信号を受信し、それぞれに接続された送受信モジュール23−1〜23−nへ供給する。送受信モジュール23−1〜23−nは、受信信号を低雑音増幅器235で増幅し、位相器232で位相制御する。送受信モジュール23−1〜23−nは、位相制御後の受信信号に対して受信機25で受信処理を行う。受信機25は、入力された合成信号をIF(Intermediate Frequency)帯の周波数へ周波数変換し、アナログ−デジタル変換してデジタル信号に変化する。さらに受信機25は、デジタル信号を直交検波して複素形式のI/Q信号に変換する。
【0037】
ビーム形成部40は、n系統のI/Q信号が入力された場合、これらn系統のI/Q信号をビーム形成処理部41−1〜41−mでそれぞれ重み付け加算することで、m種類の合成ビームを形成する。一般的に合成ビームは、以下の式により算出される。
【数1】

【0038】
ただし、X1〜Xnは受信信号を示し、W1,1〜Wm,nはウェイト411に付加されるウェイト係数である。
【0039】
信号処理部50は、このm種類の合成ビームに基づいて信号処理を行うことで、目標の検出及び追尾等を行う。
【0040】
図4〜図6は、アレーアンテナ20の開口と、ビーム幅B及びアンテナ利得Gを示す模式図である。図3はアレーアンテナが全開口の場合の図であり、図4は部分開口の場合の図であり、図5は部分開口が2個ある場合の図である。送信信号の周波数が同一である場合、開口面積はA0>A1>A2>A3となり、アンテナ利得はG0>G1>G2>G3となり、ビーム幅はB0<B1<B2<B3となる。
【0041】
また、図7は、レーダ制御部10が捜索距離に応じてビーム幅B及びアンテナ利得Gを制御する際の模式図を示す。図7において、斜線部は捜索範囲を示す。レーダ制御部10は、捜索範囲内の遠距離範囲では、ビーム幅Bが狭く、アンテナ利得Gが高くなるように、開口寸法L、開口面積A及び波長λを決定する。また、レーダ制御部10は、捜索範囲内の近距離範囲では、ビーム幅Bは広く、アンテナ利得Gは低くなるように、開口寸法L、開口面積A及び波長λを決定する。
【0042】
以上のように、上記一実施形態におけるレーダ装置は、送受信モジュールのオン/オフを制御して、アレーアンテナ20の開口寸法及び開口面積を制御するようにしている。これにより、レーダ装置は、必要に応じて送信ビーム及び受信ビームのビーム幅B及びアンテナ利得Gを制御することが可能となる。このように、捜索範囲が遠距離となる場合には、開口面積を大きくとることで、アンテナ利得を増大させることが可能となるため、従来のようにパルス幅を長くする必要やパルス数を増やす必要がなくなる。すなわち、距離ブラインドが短縮され、捜索時間が短縮されることとなる。また、捜索範囲が広範囲となる場合には、ビーム幅が大きくなるように開口寸法をとることが可能となるため、従来のように複数の送信ビームを時系列に捜索する必要がなくなる。すなわち、捜索時間が短縮されることとなる。
【0043】
また、上記一実施形態に係るレーダ装置は、所定の捜索範囲が設定された場合、その捜索範囲内の捜索距離に応じて送信ビーム及び受信ビームのビーム幅B及びアンテナ利得Gを切り替えるようにしている。図8は、従来のレーダ装置により所定の捜索範囲を捜索する際の模式図を示す。従来のレーダ装置では、アレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得を変更させることが困難であるため、捜索範囲全体を一定のビーム幅で捜索する必要があった。このため、破線により囲まれた位置に無駄な捜索領域が存在することとなる。これに対し、本発明に係るレーダ装置はアレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得を変更することが可能であるため、図7に示すように、無駄な捜索領域が図8に対して少ない。つまり、本発明に係るレーダ装置は、レーダリソースのロスを抑えることが可能となる。
【0044】
また、上記一実施形態に係るレーダ装置は、送受信モジュールのオン/オフを制御することで、アレーアンテナ20において複数の部分開口を形成する。そして、レーダ装置は、部分開口毎に送受信モジュールの位相器を制御することで、それぞれのビームに指向性を持たせるようにしている。これにより、複数の送信ビームを同時に形成することが可能となる。すなわち、レーダ装置は、捜索角によって捜索距離が変わるような場合、広範囲の捜索をレーダリソースの無駄なく、同時に、かつ短い捜索時間で行うことが可能である。
【0045】
また、上記一実施形態に係るレーダ装置では、ビーム形成部40はm種類のビーム形成処理部41−1〜41−mを備え、m種類の合成ビームを形成するようにしている。これにより、レーダ装置は、複数の部分開口が形成される場合には、部分開口毎の受信信号に基づいて受信ビームを形成することが可能となる。レーダ装置は、複数の受信ビームを同時に形成することで、受信ビーム毎に目標の検出及び追尾等を行う。すなわち、レーダ装置は、受信マルチビームとすることで、広範囲かつ効率的な捜索が可能であり、捜索データレートの向上を図ることができる。 したがって、本発明に係るレーダ装置は、アレーアンテナの開口面積が設定されてしまった後であっても、アレーアンテナのビーム幅及びアンテナ利得を必要に応じて制御することができる。また、本発明に係るレーダ装置は、送信ビームは広いビーム幅により広範囲な覆域をカバーし、受信ビームでは狭いビーム幅により観測精度の向上を図るとともに、送信ビームの覆域内に複数の受信ビームを同時形成することができる。
【0046】
なお、この発明は上記一実施形態に限定されるものではない。例えば上記一実施形態では、アンテナ素子24−1〜24−nに送受信モジュール23−1〜23−nがそれぞれ接続され、この送受信モジュール23−1〜23−nにより受信信号が処理される例について説明したが、送受信モジュールの代わりに図9に示す受信モジュール26を設置し、この受信モジュール26により受信信号を処理する場合であっても同様に実施可能である。
【0047】
また、上記一実施形態では、送受信モジュール23−1〜23−nがスイッチ231を有する例について説明したが、スイッチ231は、送受信モジュールの内部に設置されていなくても、送受信モジュールと電力分配合成器との間に設置されていれば同様に実施可能である。
【0048】
さらに、この発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…レーダ制御部
20…アクティブフェーズドアレーアンテナ
21…送信機
22…電力分配器
23−1〜23−n…送受信モジュール
231…スイッチ
232…位相器
233…切替器
234…高出力増幅器
235…低雑音増幅器
236…サーキュレータ
24−1〜24−n…アンテナ素子
25…受信機
26…受信モジュール
30…走査制御部
40…ビーム形成部
41−1〜41−m…ビーム形成処理部
411−11〜411−1n、…、411−m1〜411−mn…ミキサ素子
412−1〜412−m…合成部
50…信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を生成する信号生成部と、
前記生成された送信信号を複数系統に分配する分配部と、
前記系統毎に設置され、前記分配された送信信号の位相を変化させる複数の送信モジュールと、
前記複数の送信モジュールにそれぞれ接続され、前記送信信号を空間へ向けて送信する複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子により所望の方向に送信ビームを発生させるように前記複数の送信モジュールにおける位相変化を制御し、前記送信ビームのビーム幅及びアンテナ利得が所望のビーム幅及びアンテナ利得となるようにアンテナ開口長及びアンテナ開口面積を決定し、前記アンテナ開口長及びアンテナ開口面積を満たすように前記複数の送信モジュールのうちいずれかをオン/オフ制御する制御部と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の送信ビームが形成されるように前記複数の送信モジュールのうちいずれかをオン/オフ制御することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記送信ビームのビーム幅及びアンテナ利得が、指定された捜索範囲における捜索距離に適したビーム幅及びアンテナ利得となるように、前記捜索距離に応じてアンテナ開口長及びアンテナ開口面積を決定し、前記アンテナ開口長及びアンテナ開口面積を満たすように前記複数の送信モジュールのうちいずれかをオン/オフ制御することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記複数のアンテナ素子が、前記送信信号が物体で反射された反射信号を受信する場合、
前記複数のアンテナ素子それぞれに接続され、前記受信信号の位相を変化させる複数の受信モジュールと、
前記複数の受信モジュールからの各受信信号に対して予め設定されたウェイトを付加し、前記ウェイトを付加した受信信号を合成して合成信号を生成する合成部と、
前記合成信号に基づいて信号処理を行い、目標の捜索及び追尾を行う信号処理部と
をさらに具備し、
前記制御部は、前記複数のアンテナ素子により得られた複数の受信信号を合成したときに受信ビームが形成されるように前記複数の受信モジュールにおける位相変化を制御し、前記受信ビームのビーム幅及びアンテナ利得が所望のビーム幅及びアンテナ利得となるように前記アンテナ開口長及びアンテナ開口面積を決定し、前記アンテナ開口長及びアンテナ開口面積を満たすように前記複数の受信モジュールのうちいずれかをオン/オフ制御することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のアンテナ素子で複数の部分開口が形成されるように前記複数の受信モジュールのうちいずれかをオン/オフ制御し、
前記合成部は、前記オン制御された複数の受信モジュールからの受信信号のうち、前記複数の部分開口のうち同一の部分開口からの複数の受信信号毎に予め設定されたウェイトを付加し、前記ウェイトを付加した受信信号を前記同一の部分開口毎に合成することで、前記受信ビームを複数形成することを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記受信ビームのビーム幅及びアンテナ利得が、指定された捜索範囲における捜索距離に適したビーム幅及びアンテナ利得となるように、前記捜索距離に応じてアンテナ開口長及びアンテナ開口面積を決定し、前記アンテナ開口長及びアンテナ開口面積を満たすように前記複数の受信モジュールのうちいずれかをオン/オフ制御することを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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