説明

レールの溶接結合のための溶接ユニット

本発明は、軌道の2つのレール(7)の溶接結合のための溶接ユニット(1)であって、レール腹部(25)への当て付けのために設けられている締め付けジョー(6)を備えている形式のものに関する。締め付けジョーはそれぞれ、接触面(15)からレール垂直方向に離間された滑り面(16)を有し、滑り面は、レール(7)の中立軸線(17)に対して垂直に延びる横断面で見て円弧状に湾曲されている。締め付けジョー(6)の位置決めのために設けられるジョーホルダー(14)は、滑り面(18)を有し、滑り面は、締め付けジョー(6)の滑り面(16)に対応して湾曲されており、これにより、締め付けジョー(6)は、滑り面(16,18)に沿ってジョーホルダー(14)に対して可動となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の2つのレールの溶接結合のための溶接ユニットであって、移動用シリンダーによりレール長手方向でユニットガイドに沿って互いに相対的に運動可能である2つのユニット部分を有しており、ユニット部分は、それぞれ、レール腹部への当て付けのために設けられている接触面を有する締め付けジョーを備えている形式のものに関する。
【0002】
前記形式の溶接ユニットは、例えば欧州特許出願公開第0132227A2号明細書、又は米国特許出願公開第2003/0141283A1号明細書により公知である。溶接ユニットの締め付けジョーは、レールの突合せ溶接の目的でレールをその長手方向で互いに正確に接近するように移動させるために、大きな力でレール腹部に圧着されねばならない。
【0003】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の溶接ユニットに改良を加えて、レール腹部への大きな力の効果的な伝達を可能にすることにある。
【0004】
前記課題を解決するために、本発明の構成によれば、各締め付けジョーは、接触面からレール垂直方向に離間された滑り面を有しており、該滑り面は、レールの中立軸線(中立線)に対して垂直に延びる横断面で見て円弧状に湾曲されており、かつ、締め付けジョーの位置決めのために設けられるジョーホルダーは、滑り面を有しており、該滑り面は、締め付けジョーの滑り面に対応して湾曲されており、このような構成により、締め付けジョーは、両方の滑り面に沿ってジョーホルダーに対して相対的に可動となっている。
【0005】
円筒形の滑り面を用いることにより、締め付けジョーは、例えばレールの頭部の製作誤差に起因する不均一性の発生に際して、レール腹部の状態への最適な適合のために、わずかな自由度を有している。このような構成は、標準温度と異なる温度の範囲における突合せ溶接に必要な特に高い力の問題のない伝達を可能にしている。本発明の有利な形態が従属請求項に記載してある。
【0006】
次に、本発明を図示の実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】互いに相対的に可動となっている2つのユニット部分を有する溶接ユニットの斜視図である。
【図2】1つのユニット部分を部分的に破断して示す図である。
【図3】レール腹部に当接する締め付けジョーの横断面図である。
【図4】締め付けジョーの斜視図である。
【0008】
図1〜図3に示してある溶接ユニット1は、移動用シリンダー2によりユニットガイド3に沿って互いに相対的に移動可能となっている2つのユニット部分4を用いて構成されている。両方のユニット部分4は、それぞれ2つの締め付け駆動部5に連結されており、該締め付け駆動部により、締め付けジョー6が、相互に溶接結合すべきレール7に圧着可能となっている。
【0009】
ユニットガイド3に対して平行に延びる複数のタイロッド8は、第1のユニット部分4に取り付けられていて、第2のユニット部分4を通して案内されている。両方のタイロッド8は、クロスビーム9に結合されおり、該クロスビームには、両方の移動用シリンダー2も枢着されている。レール長手方向10に対して垂直に延びる締め付け駆動部5は、ピストンロッド11の領域に、それぞれタイロッド8の貫通のための切欠き部12を備えている。
【0010】
図2及び図3に示してあるように、レール垂直方向13で相対して位置する各締め付けジョー6は、それぞれ1つのジョーホルダー14内に支承されている。これらのジョーホルダーのうちの一方は、ユニット部分4に固定されており、相対する他方のジョーホルダー14はピストンロッド11に結合されている。
【0011】
図3に示してあるように、各締め付けジョー6は、接触面15から離間された滑り面16を有しており、該滑り面は、レールの中立軸線17に対して垂直に延びる横断面で見て、半径Rによって規定される円弧の形状に湾曲されている。締め付けジョー6の位置決めのために設けられたジョーホルダー14も、滑り面18を有しており、該滑り面は、締め付けジョー6の滑り面16に対応して、半径Rで湾曲されている。つまり、両方の滑り面16,18は、円筒面の一部分を成すものであり、従って、締め付けジョー6は、それぞれジョーホルダー14に対して、中立軸線17を中心として可動となっている。
【0012】
各締め付けジョー6と、対応する各ジョーホルダー14との間の結合は、ねじ23を用いて行われており、該ねじは、対応して形成された頭部により、締め付けジョー6のいわゆる回動を、約1〜2度の範囲で可能にしている。
【0013】
図2及び図3から見て取れるように、締め付け駆動部5と相対して位置するジョーホルダー14は、レール長手方向10に対して平行に延びるストッパー条片19に結合されている。これにより、溶接結合すべきレール7は、共通の1つの整列ラインに整合されるようになっている。互いに対を成して相対する両方の締め付けジョー6のうちの1つだけが、締め付け駆動部5により、レール対称面20に対して垂直な方向で、ジョーホルダー14に対して可動となっている。
【0014】
特に図4から見て取れるように、締め付けジョー6は、互いに平行にかつレール長手方向に延びていて接触面15を画成する2つの接触縁部21を有しており、該両方の接触縁部は、凹部22によって互いに隔てられている。孔24は、ねじ23の前述の頭部の受容のために設けられている。各締め付けジョー6若しくは接触縁部21に画成されている接触面15は、レール腹部25への摩擦結合を向上させるために、サブマージプラズマアーク溶接により熱処理されている。
【0015】
溶接過程の導入のために、レール7は、昇降装置(図示省略)によって軌道の枕木から持ち上げられて、ストッパー条片19に圧着される。次いで、締め付け駆動部5が、該締め付け駆動部に連結された締め付けジョー6を350tの締め付け力でレール7のレール腹部25並びに相対する締め付けジョー6に圧着するために、負荷される。
【0016】
ストッパー条片19に当接している両方のレール7が、例えば許容範囲内での横断面誤差に起因して、共通の1つのレール対称面20内に正確に位置していない場合には、締め付けジョー6の自動的な相応の回動による適合が行われる。これにより、レール腹部25への大きな締め付け力の問題のない伝達が可能になり、その結果、最終的に移動用シリンダー2を介して、レール7が、該レールの溶接結合のために相互に圧着される。
【符号の説明】
【0017】
1 溶接ユニット、 2 移動用シリンダー、 3 ユニットガイド、 4 ユニット部分、 5 締め付け駆動部、 6 締め付けジョー、 7 レール、 8 タイロッド、 9 クロスビーム、 10 レール長手方向、 11 ピストンロッド、 12 切欠き部、 13 レール垂直方向、 14 ジョーホルダー、 15 接触面、 16 滑り面、 17 中立軸線、 18 滑り面、 19 ストッパー条片、 20 レール対称面、 21 接触縁部、 22 凹部、 23 ねじ、 24 孔、 25 レール腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道の2つのレール(7)の溶接結合のための溶接ユニット(1)であって、移動用シリンダー(2)によりレール長手方向(10)でユニットガイド(3)に沿って互いに相対的に運動可能である2つのユニット部分(4)を有しており、該ユニット部分(4)は、それぞれ、レール腹部(25)への当て付けのために設けられている接触面(15)を有する締め付けジョー(6)を備えている形式のものにおいて、
a) 前記各締め付けジョー(6)は、前記接触面(15)からレール垂直方向(13)に離間された滑り面(16)を有しており、該滑り面は、前記レール(7)の中立軸線(17)に対して垂直に延びる横断面で見て円弧状に湾曲されており、
b) 前記締め付けジョー(6)の位置決めのために設けられるジョーホルダー(14)は、滑り面(18)を有しており、該滑り面は、前記締め付けジョー(6)の前記滑り面(16)に対応して湾曲されており、このような構成により、前記締め付けジョー(6)は、前記滑り面(16,18)に沿って前記ジョーホルダー(14)に対して可動となっていることを特徴とする、レールの溶接結合のための溶接ユニット。
【請求項2】
前記両方の滑り面(16,18)の円弧の中心点は、前記レール(7)の前記中立軸線(17)上に配置されている請求項1に記載の溶接ユニット。
【請求項3】
両方の前記ジョーホルダー(14)のうちの1つは、前記レール(7)のレール頭部への接触のためのストッパー条片(19)に結合されている請求項1に記載の溶接ユニット。
【請求項4】
両方の前記締め付けジョー(6)のうちの1つだけが、前記締め付け駆動部(5)により、前記レール対称面(20)に対して垂直な方向で、前記ジョーホルダー(14)に対して相対的に可動となっている請求項1から3のいずれか1項に記載の溶接ユニット。
【請求項5】
前記各締め付けジョー(6)は、互いに平行にかつ前記レール長手方向(10)に延びていて前記接触面(15)を画成する各2つの接触縁部(21)を有しており、該両方の接触縁部は、1つの凹部(22)によって互いに隔てられている請求項1から4のいずれか1項に記載の溶接ユニット。
【請求項6】
前記各接触縁部(21)に画成されている前記接触面(15)は、サブマージプラズマアーク溶接により成形されている請求項5に記載の溶接ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510576(P2012−510576A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538861(P2011−538861)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008078
【国際公開番号】WO2010/063362
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390014421)フランツ プラツセル バーンバウマシーネン−インズストリーゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Franz Plasser Bahnbaumaschinen−Industriegesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3,Wien,Austria
【Fターム(参考)】