説明

レール底部腐食検知装置及びレール底部腐食検知方法

【課題】 環境変化によらずに安定的に底部腐食を捕らえることができて、自動的に底部腐食の進行度を判断することができるレール底部腐食検知装置を提供する。
【解決手段】 レール1に対して当接されながら移動して、該当接面に垂直に超音波を順次入射してする反射エコーを受信する超音波探触子と、反射エコーのビーム路程を求めるビーム路程演算部24と、レール1に対する移動位置に応じてビーム路程演算部で得られるビーム路程のうちで、少なくとも着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程から、着目する移動位置における基準の底面の位置に関する基準底面位置情報を求める基準底面演算部26と、ビーム路程演算部24で求めたビーム路程に対応する反射源の位置と、基準底面演算部26で求めた基準底面位置との比較を行い、反射源が基準底面位置よりも当接面寄りの所定範囲にあるときに、当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定する進行度判定部27と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールに超音波を入射することによりレールの底部腐食の存在を自動的に判定するレール底部腐食検知装置及びレール底部腐食検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底部腐食検知装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1では、レールの頂面に当接される超音波探触子を備え、該超音波探触子から屈折角10°〜25°の範囲にある縦波超音波をレール内へ入射し、レール底部の腐食部で散乱した超音波の一部を該超音波探触子で受信するようにしている。そして、超音波探触子で受信した信号が所定閾値よりも大きい場合に、底部腐食が存在すると判定している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−305111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際に底部腐食が発生していたとしても、その進行程度は様々な筈である。しかしながら、従来は、受信信号と所定閾値との比較により一律に底部腐食の有無を判定していただけで、その進行程度を知る手段が確立されておらず、その後の底部腐食対策への指針とすることが困難であるという問題があった。
【0005】
レール底部付近の超音波の散乱源としては、図5(a)に示した底部腐食の他に、図5(b)に示したレールの溶接によって底部が盛り上がる溶接余盛といったレール固有の構造があり、このような溶接余盛があった場合に、正常であるにもかかわらず底部腐食があるものと誤って検出するおそれがある、という問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、自動的に底部腐食の進行度を判断することができ、底部腐食以外のレール固有の構造との識別を確実に行うことができるレール底部腐食検知装置及びレール底部腐食検知方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、レールに対して当接されながら移動して、該当接面に垂直に超音波を順次入射する超音波探触子を備え、該超音波探触子が反射エコーを受信することにより底部腐食の存在を自動的に判定するレール底部腐食検知装置であって、
反射エコーのビーム路程を求めるビーム路程演算手段と、
レールに対する移動位置に応じてビーム路程演算手段で得られるビーム路程のうちで、少なくとも着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程から、着目する移動位置における基準の底面の位置に関する基準底面位置情報を求める基準底面演算手段と、
ビーム路程演算手段で求めたビーム路程に対応する反射源の位置と、前記基準底面演算手段からの基準底面位置との比較を行い、反射源が基準底面位置よりも当接面寄りの所定範囲にあるときに、当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定する進行度判定手段と、
を備える。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記基準底面位置情報が、着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程の統計的代表値から求めることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載のものにおいて、ビーム路程演算手段は、所定検出時間範囲内において前記反射エコーの受信レベルが所定の検出レベルを超えたときを受信時点として、送信時点から受信時点までの時間に対応する値をビーム路程とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、少なくとも前記進行度判定手段の動作のON/OFFを行なう動作ON/OFF切替手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のものにおいて、レールに対する移動位置に応じて少なくとも前記進行度判定手段のON/OFFの動作を規定する情報を記録する動作規定情報記録手段と、
超音波探触子のレールに対する移動距離即ち移動位置を演算する移動距離演算手段と、
をさらに備え、
前記動作ON/OFF切替手段は、前記移動距離演算手段で演算された移動位置に応じて、動作規定情報記録手段で規定される情報を参照して、ON/OFF動作を行なうことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、レールに対して超音波探触子を当接しながら移動させて、該当接面に垂直に超音波を順次入射して、その反射エコーを受信することにより底部腐食の存在を自動的に判定するレール底部腐食検知方法であって、
前記反射エコーからそのビーム路程を求める工程と、
レールに対する移動に応じて前記工程で得られるビーム路程のうちで、少なくとも着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程から、着目する移動位置における基準の底面の位置に関する基準底面位置情報を求める工程と、
着目する移動位置における前記工程で求められたビーム路程に対応する反射源の位置と、該移動位置における前記基準底面位置との比較を行い、反射源が基準底面位置よりも当接面寄りの所定範囲にあるときに、当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レールに対して垂直に超音波を入射しており、且つ比較するべき基準底面位置情報を、得られる反射エコーのビーム路程から求めているために、レールが摩耗してレール高さが既定値と異なる場合でも底部腐食を検知することができる。また、温度変動の影響を受けにくく、安定して且つ客観的に腐食の検知を行なうことができる。また、底部腐食によって底面が侵されている状態にあっても、基準底面位置情報を取得することができる。
【0014】
そして、ビーム路程は反射源の位置に対応し、底部腐食が進行していれば、反射源の位置が底面よりもより当接面に近づくはずであるために、反射源の当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定することで、底部腐食の進行度を正確に判定することができる。
【0015】
また、底部腐食は、必ず底部よりも当接面寄りの所定範囲にあり、レールの溶接余盛といったレール固有の構造は、必ず底部よりも遠い反当接面側にあるので、この違いにより、底部腐食以外のレール固有の構造を底部腐食と誤認することを防ぐことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、基準底面位置情報を、着目する(即ち判定処理対象の)移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程の統計的代表値とし、統計処理することによって、底部腐食の影響を受けた反射エコーのビーム路程に起因する基準底面位置の誤差を低減させることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、ビーム路程を決定する際に、所定検出時間範囲内において反射エコーの受信レベルが所定の検出レベルを超えたときを受信時点として、可能な限り最短のビーム路程を採用することにより、底部腐食の広がりなどにより着目している移動位置以外に存在する他の散乱源からの影響を防ぐことができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、レールの底部腐食が発生する可能性の高い状況でのみ動作をONとすることにより、処理するべきデータ量を絞り、効率的に且つ高速に処理することができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、レールの底部腐食が発生する可能性の高い場所は限定されているために、予め移動位置に応じた動作を規定しておくことにより、適切に動作のON/OFFを切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のレール底部腐食検知装置及び底部腐食検知方法の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1において、この底部腐食検知装置は、レール探傷車などに搭載され、被検査体であるレール1に当接しレール1上を移動しながら当接面に対して垂直に超音波パルスをレール1内部に入射し、その反射エコーを受信する垂直探触子12を備えている。
【0022】
また、この底部腐食検知装置は、垂直探触子12と共に移動し、その移動距離を測定するエンコーダ等からなる移動距離センサ16を有している。
【0023】
底部腐食検知装置は、さらに、垂直探触子12及び移動距離センサ16に接続され、垂直探触子12からの受信信号及び移動距離センサ16からの距離信号を受信して、その処理を行なう信号処理部20を有している。
【0024】
信号処理部20は、超音波送受信部22、反射エコー検出部23、ビーム路程演算部24、基準底面演算部26、進行度判定部27、移動距離演算部28、表示部30、記録部31、動作ON/OFF切替部32及び動作規定情報記録部34を備える。
【0025】
超音波送受信部22は、垂直探触子12の移動中に一定間隔で送信信号を送出するとともに、垂直探触子12で受信される受信信号を増幅して出力するものである。尚、増幅率は、通常の傷検出や底面エコーの検出を行なうときの増幅率に比べて高いものとするとよい。
【0026】
反射エコー検出部23は、図2に示したようにゲート回路を通じて超音波送受信部22が出力する受信信号から所定の検出時間範囲内にあるものだけを抽出し、かつ、その受信信号レベルを所定の検出レベルと比較し、この受信信号レベルにおける検出レベル以上の部分を反射エコーとして検出して、デジタル信号に変換して、後述の移動距離演算部28からの移動距離情報と共に出力するものである。この所定検出時間範囲は、底部付近で反射して戻った受信信号を抽出することができる範囲とする。また、この検出レベルは、通常の傷検出や底面エコーの検出を行なうときの検出レベルに比べて低いものとするとよい。
【0027】
前述の超音波送受信部22の増幅率を上げる及び/または反射エコー検出部23の検出レベルを下げることで、従来の傷検出や底面エコーの検出よりも高感度とすることにより、受信レベルが低下すると考えられる底部腐食の部分からの反射エコーを確実に受信できるようになる。
【0028】
ビーム路程演算部24は、反射エコー検出部23からの垂直探触子12で受信された反射エコーからビーム路程(超音波が伝搬した片道の距離)を演算するものである。
【0029】
基準底面演算部26は、ビーム路程演算部24で演算されたビーム路程から基準の底面の位置を求めるものである。基準の底面の位置とは、当接面からの底面の相対位置であり、底部腐食がない健全な底面位置にできるだけ近い位置である必要がある。レールの摩耗等により時間の経過または位置に応じて健全な底面位置自体が変化するので、着目している(即ち判定処理対象の)移動位置付近のビーム路程から基準の底面の位置を決める。
【0030】
進行度判定部27は、ビーム路程演算部24で演算されたビーム路程情報及び基準底面演算部26で演算された基準底面位置情報から、探触子12で受けた反射エコーの反射源が腐食であるかどうか、及び腐食である場合に、進行程度がどの程度であるかの腐食の進行度を判定するものである。
【0031】
移動距離演算部28は、移動距離センサ16からの信号を受信して、受信信号をカウントするなどして、移動距離を演算し、移動位置に対応する移動距離情報を出力するものである。
【0032】
表示部30は、CRT、LCRなどで構成され、進行度判定部27で判定した腐食についてその位置などと共に腐食の進行度の判定結果を画面表示するものである。
【0033】
記録部31は、任意の記憶装置で構成され、判定した腐食の位置及び腐食の進行度の判定結果を記憶し、または、印刷したハードコピー(記録紙)を出力するものである。
【0034】
動作ON/OFF切替部32は、信号処理部20の動作をON/OFFするものであり、動作規定情報記録部34は、信号処理部20の動作を規定する情報を記録する記憶装置からなる。
【0035】
以上の信号処理部20の反射エコー検出部23、ビーム路程演算部24、基準底面演算部26、進行度判定部27、移動距離演算部28及び動作ON/OFF切替部32は、ゲート回路、A/D変換器、カウンタ、CPU、メモリ、I/O回路及びデバイスコントローラ等で構成することができる。
【0036】
次に、この実施形態の構成における動作について説明する。図1に示したように、図示しないレール探傷車に搭載されて、垂直探触子12が検査対象のレール1上を接触しながら移動し、この移動距離が移動距離センサ16で検出される。
【0037】
この際、超音波送受信部22は、移動距離演算部28または移動距離センサ16からの移動距離情報に基づいて、移動しながら一定間隔で送信信号を垂直探触子12に出力し、垂直探触子12から超音波パルスがレール1へ放射される。この超音波パルスがレール1の底面や底部腐食などで反射し、再び垂直探触子12で受信される。
【0038】
垂直探触子12からの受信信号は超音波送受信部22で増幅されて、反射エコー検出部23に出力される。反射エコー検出部23では、図2に示した所定の検出時間範囲内及び検出レベル以上の受信信号を反射エコーとしてデジタル信号に変換して、出力する。
【0039】
底部腐食がない場合、反射エコーは平坦な底面で反射したものであるが、底部腐食がある場合、底部腐食で反射したものとなる。底部腐食があると、底部腐食が無い場合に比べて、反射面積は小さくなるために、受信信号は小さくなる。
【0040】
ビーム路程演算部24は、反射エコー検出部23からの探触子12の反射エコーからそのビーム路程、言い換えれば底面位置に関係する値を求める。このビーム路程または底面位置は、超音波パルスが探触子12からレール1へ放射されてから、底面で反射して受信されるまでの伝播時間の1/2と等価である。
【0041】
ここで、ビーム路程を求めるときの受信される時点としては、パルス幅のある反射エコーを受信している間の任意の時点とすることができるが、図2に示すように、反射エコーの前縁、つまり検出時間範囲内において受信信号が検出レベルを超えた時点、とすることが好ましい。こうして可能な限り最短のビーム路程を採用することにより、底部腐食の広がりなどにより、着目(即ち判定処理対象の)または測定している移動位置からの垂線上以外に存在する他の散乱源からの影響を防ぐことができる。
【0042】
基準底面演算部26では、リアルタイムで処理を行なっているときの最新の複数の反射エコーのビーム路程、または今着目している垂直探触子12で反射エコーが得られたレール1における当接位置の近傍位置で受信する複数の反射エコーのビーム路程を取り込み、これらの複数の値に対して統計的処理を施して統計的代表値を求める。統計的処理とは、例えば単純平均または移動平均とすることができる。或いは、複数の値の中の最頻値または中間値とすることができる。こうして、統計的処理により底面位置情報を得ることができる。
【0043】
最新または近傍位置における複数の反射エコーのビーム路程の統計的代表値をとることによって、現在着目している移動位置近傍の健全な底面位置情報に近い基準底面位置情報を正確に得ることができる。底部腐食がある場合、底面位置が健全な底面位置よりも高くなり、ビーム路程は小さくなるので、底部腐食によって基準底面位置情報が真の健全な底面位置からずれる可能性がある。統計的処理によって底面位置を求めることにより、その影響を排除または低減することができる(図3参照)。
【0044】
次に、進行度判定部27では、ビーム路程演算部24で求めたビーム路程Lと、基準底面演算部26で求めた基準のビーム路程Lとの比較を行い、差分ΔL=L−Lを求める。
【0045】
差分ΔLが負となるときには、反射エコーの反射源は底面よりも下方にあるので、反射エコーの反射源は底部腐食ではなく、溶接余盛であると判断することができる。この場合、進行度の決定は行わない。溶接余盛であることを表す情報を移動距離情報と共に表示部30に出力するか、または何の情報も出力しない、とする。
【0046】
差分ΔLが正となるときには、反射エコーの反射源は底面よりも上方にあるので、反射エコーの反射源は底部腐食であると判断することができる。この場合、そのΔLの大きさに応じてその底部腐食の進行度を決定する。底部腐食が進行すればそれだけ反射源の位置が底面よりもより当接面に近づくはずであるために、ΔLが大きくなればなるほど、進行度は高いものと判定する。そして、決定した進行度を表す信号を移動距離信号と共に表示部30に出力する。
【0047】
表示部30では、進行度判定部27からの情報を表示し、記録部31では進行度判定部27からの情報を記録する。
【0048】
以上のようにして、底部腐食の進行度を評価することができるようになり、レールの摩耗の影響を受けることなく、また、温度変化などの環境変化に対して安定的に評価を行なうことができる。同時に、底部腐食からの反射エコーを、溶接余盛といった底部腐食以外のレール固有の構造に基づく反射源からの反射エコーと混同することなく、底部腐食のみを捕らえて進行程度を決定することができる。
【0049】
次に、動作ON/OFF切替部32の動作について説明する。通常、レールの底部腐食は、踏切部やトンネル部など発生する場所が限定されている。そのため、それ以外の底部腐食の発生しにくい場所で、上記の腐食の進行度の判定を行なっていると、大量のデータ処理をしなければならず、処理の遅延が発生し、または、データ処理した結果を保存するための大容量の記録部31が必要になり高コストになる。
【0050】
この実施形態では、底部腐食が発生しやすいことが予めわかっている場所でのみ処理を行なうようにしており、このため、動作規定情報記録部34には、図4に示したような予め、底部腐食検知処理を行なうべきレール1の移動距離の区間即ち動作区間が記録されており、具体的には、移動位置とON/OFFとの動作とが関連付けて記録されている。
【0051】
動作ON/OFF切替部32は、移動距離演算部28からの移動距離即ち移動位置を得て、動作規定情報記録部34に記録された動作区間に達したかどうかを判定している。動作区間に達したことが判定されると、装置をONにする。従って、超音波の入射及び反射エコーの受信が、順次なされて、腐食進行度判定が行なわれる。動作区間が終了すると、信号処理部20全体、レール底部腐食検知装置全体または少なくとも進行度判定部27をOFFとする。
【0052】
ここで、動作規定情報記憶部34を設ける代わりに、信号処理部20とは別の外部から手動または自動で切替信号を動作ON/OFF切替部32に送出して、ON/OFF動作をさせることも可能である。自動で行うものとしては、動作区間の始まりと終わりのレール近傍の位置に非接触で読み取り可能なデータを保持するデータキャリアを配置し、レール底部腐食検知装置にデータキャリアのデータを読み取るリーダを備えて、リーダが動作区間の始まりのデータを読み取ることにより、動作ON/OFF切替部32に切替信号を送出し、リーダが動作区間の終わりのデータを読み取ることにより、動作ON/OFF切替部32に切替信号を送出するようにしてもよい。または、操作者による手動のボタンのON/OFFにより動作ON/OFF切替部32に切替信号を送出するようにしてもよい。
【0053】
こうして、限定された区間にのみ信号処理を行なうようにして、処理するデータ量を圧縮して、効率的に且つ高速に処理することができるようになる。
【0054】
また、以上の例では、レールに対する移動と共にリアルタイムで底部腐食の進行度を決定することを主として想定して説明したが、これに限るものではない。レールに対して移動していきながら、反射エコーを順次受信し、ビーム路程演算部24、基準底面演算部26、進行度判定部27での処理は、遅れて行なうようにしてもよく、また、反射エコーの受信データを記録媒体に記録し、記録媒体を別の場所に運んで、ビーム路程演算部24、基準底面演算部26、進行度判定部27を構成するコンピュータにおいて、処理を行なうようにしてもよい。リアルタイムで処理を行なわない場合には、基準底面演算部26で着目する移動位置におけるビーム路程に対する基準底面位置を求める際に、着目する移動位置における前後の近傍位置におけるビーム路程を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるレール底部腐食検知装置及び底部腐食検知方法の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】受信時間と反射エコーとの関係を表す図である。
【図3】(a)腐食部と(b)Bスコープ画像との関係を表し、Bスコープ画像において、太線は垂直超音波探触子からの反射エコーによる画像、細線は基準底面演算部で求めた底面位置を表す。
【図4】レールと動作区間との関係を表す説明図である。
【図5】(a)底部腐食と(b)溶接余盛の違いを表す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 レール
12 垂直探触子
24 ビーム路程演算部
26 基準底面演算部
27 進行度判定部
28 移動距離演算部
32 動作ON/OFF切替部
34 動作規定情報記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに対して当接されながら移動して、該当接面に垂直に超音波を順次入射する超音波探触子を備え、該超音波探触子が反射エコーを受信することにより底部腐食の存在を自動的に判定するレール底部腐食検知装置であって、
反射エコーのビーム路程を求めるビーム路程演算手段と、
レールに対する移動位置に応じてビーム路程演算手段で得られるビーム路程のうちで、少なくとも着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程から、着目する移動位置における基準の底面の位置に関する基準底面位置情報を求める基準底面演算手段と、
ビーム路程演算手段で求めたビーム路程に対応する反射源の位置と、前記基準底面演算手段で求めた基準底面位置との比較を行い、反射源が基準底面位置よりも当接面寄りの所定範囲にあるときに、当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定する進行度判定手段と、
を備えるレール底部腐食検知装置。
【請求項2】
前記基準底面位置情報は、着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程の統計的代表値から求めることを特徴とする請求項1記載のレール底部腐食検知装置。
【請求項3】
ビーム路程演算手段は、所定検出時間範囲内において前記反射エコーの受信レベルが所定の検出レベルを超えたときを受信時点として、送信時点から受信時点までの時間に対応する値をビーム路程とすることを特徴とする請求項1または2に記載のレール底部腐食検知装置。
【請求項4】
少なくとも前記進行度判定手段の動作のON/OFFを行なう動作ON/OFF切替手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレール底部腐食検知装置。
【請求項5】
レールに対する移動位置に応じて少なくとも前記進行度判定手段のON/OFFの動作を規定する情報を記録する動作規定情報記録手段と、
超音波探触子のレールに対する移動距離即ち移動位置を演算する移動距離演算手段と、
をさらに備え、
前記動作ON/OFF切替手段は、前記移動距離演算手段で演算された移動位置に応じて、動作規定情報記録手段で規定される情報を参照して、ON/OFF動作を行なうことを特徴とする請求項4記載のレール底部腐食検知装置。
【請求項6】
レールに対して超音波探触子を当接しながら移動させて、該当接面に垂直に超音波を順次入射して、その反射エコーを受信することにより底部腐食の存在を自動的に判定するレール底部腐食検知方法であって、
前記反射エコーからそのビーム路程を求める工程と、
レールに対する移動に応じて前記工程で得られるビーム路程のうちで、少なくとも着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程から、着目する移動位置における基準の底面の位置に関する基準底面位置情報を求める工程と、
着目する移動位置における前記工程で求められたビーム路程に対応する反射源の位置と、該移動位置における前記基準底面位置との比較を行い、反射源が基準底面位置よりも当接面寄りの所定範囲にあるときに、当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定する工程と、
を備えるレール底部腐食検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−220569(P2006−220569A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35254(P2005−35254)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000003388)株式会社トキメック (103)
【出願人】(504412451)株式会社トキメックレールテクノ (14)
【Fターム(参考)】