説明

ロック式シリンジシステム

本発明は、流体および物質を再調製し、再調製された物質を注射する方法および装置を提供する。装置は、流体の移送および/または再調製ならびに注射のための、ハブを有する注射針と、ハブを有する吸上げ針と、シリンジバレルまたは貯蔵器と係合する安全キャップとを有することができる。本装置は、シリンジの再調製された物質での充填中および物質の注射中における針のいずれかによる不注意の刺しを最小限にするように、針のハブおよび/またはキャップを固定して係合させる係合手段を有する。好ましくは、係合手段は、一方のハブの溝と他方のハブの突起とを組み込む。本システムは、注射用の物質および流体の迅速な吸込みのために第2ボアを組み込むことができる。好ましくは、本装置は、射出成形することができるポリマー材料を含む。本発明は、注射用の流体を吸い込み再調製する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を移送するカニューレおよび針ならびにシリンジの分野に関する。
【0002】
優先権の主張
本文書は、2009年9月25日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2009904666号明細書の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
患者内に安全に注射するために流体を吸い上げることは、医学界において長く関心が持たれてきており、毎年、数百万のシリンジが使用され廃棄されている。現時点で利用可能なシリンジには多くの問題がある。流体を最小限の痛みで送達するために患者に有効に穿刺するために必要な細いゲージの針により、流体を投与している専門家に創傷をもたらすことが多い。この問題は、針がまず流体収容バイアルのセプタムを穿孔しなければならない再調製(再溶解、reconstitution)プロセスに対して悪化し、そこでは、バイアルを穿孔して、患者に注射するために別の流体または乾燥物質と結合する流体を吸い上げるために必要ないくつかのステップによって、針刺し切創が発生する多くの機会が与えられる。従来技術による針では、注射用の流体を吸い上げる時のセプタムのコアリング、またはさらには患者の皮膚のくりぬき(coring)の問題が起こることが多い。さらに、針刺し切創により、吸上げ動作または注射動作において予め無菌の流体の不注意の感染または相互汚染がもたらされる可能性がある。
【0004】
従来技術には、針刺し切創問題および結果としての相互汚染または感染に対して多くの解決法がある。たとえば、その問題に対して有効な格納式針がある。こうした格納式針の1つの問題は、それらが使い捨てであり複雑であることが多い、ということである。こうした針の操作が複雑であることにより、製造プロセスが複雑になり、したがって費用がかかることとなり、シリンジが高価になる。
【0005】
再調製シリンジには、注射前にシリンジを充填するために、たとえば、封止セプタムを通してのシリンジの穿孔および引抜きに余分な力が必要であるという追加の問題がある。国際公開第2008/057361号パンフレットは、この問題に対する解決法を記載しており、それは、プロセスを容易にし、このプロセスに必要な余分な力を伝達するために、針またはカニューレに力支持翼もしくは指状フランジおよび出張りを追加することである。
【0006】
本技術分野では、再調製プロセスおよび注射プロセスにおける吸上げおよび注射のために、2つの皮下針を使用することが知られている。第1針、通常ゲージが大きい方の針が、バイアルから吸い上げるために使用される。そして、吸上げ針は、注射に使用されるゲージが小さい方の針と交換される。
【0007】
皮下針は、シリコーン潤滑剤で潤滑され、それにより問題が発生する可能性がある。潤滑剤は、注射中の痛みを低減することが意図されている。しかしながら、シリコーン潤滑剤の一部は、針がバイアルストッパ(セプタム)を穿孔するために用いられる時に押し出される可能性があり、吸い上げるために用いられる針において潤滑剤の作用が低減する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
必要なのは、注射用の物質を再調製する改善された方法と、注射用の物質を再調製するのをより容易にかつ好都合にする装置またはシステム、および物質を注射する装置またはシステムとである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流体が、1つまたは複数の針を通して貯蔵器内に吸い込まれ、限られた数のステップで患者内に注射する用意ができるのを、有利に可能にするシリンジシステムを提供する。特に、シリンジシステムは、吸上げ針と貯蔵器に係合する注射針とを備えることができる。本システムは、両方の針を覆い、注射針の意図しない創傷または相互汚染を防止するキャップを有することができる。最も有利には、本発明は、いくつかの実施形態において流体の貯蔵器内への吸上げを強化するために貯蔵器内に第2入口流路を提供することができる。本発明の目的は、注射用流体の吸上げまたは注射用物質の再調製中の意図されない針刺しの可能性を低減するシリンジシステムを提供することである。本発明のさらなる目的は、注射するためにバイアルから流体を吸い上げる改善された方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、注射用の物質を再調製する簡単な方法を提供することである。
【0010】
一態様では、本発明は、流体を移送するシリンジであって、バレルおよびハブを組み込んでいる少なくとも1つのカニューレを備え、流体送出用の少なくとも2つの流路を組み込んでいるシリンジを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、流体を移送する装置であって、流体を吸い上げる第1針と、注射針とを備え、注射針が、カニューレと、刃と反対側に配置された開口部を有する先端とを備える、装置を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、流体を移送する装置であって、ハブを有する第1カニューレと、第2ハブを有する第2カニューレと、を備え、前記カニューレの前記ハブが係合手段によって係合する、装置を提供する。好ましくは、係合手段は、前記第2ハブの係合面と係合する前記第1ハブの突起を備える。好ましくは、装置は、前記第2ハブに、前記突起を回転位置まで軸方向に案内する溝をさらに備える。好ましくは、本装置は、前記第2ハブ上に係合面をさらに備え、係合は、前記第1ハブを係合位置まで回転させることによって行われる。好ましくは、本装置は、シリンジのバレル等の液体貯蔵器をさらに備える。好ましくは、本装置は、貯蔵器を第1カニューレおよび第2カニューレと係合させる係合手段をさらに備える。好ましくは、貯蔵器をカニューレと係合させる係合手段は、ルアーロックである。最も好ましくは、本装置は、キャップを組み込んでいる。本装置は、完全に、射出成形に好適なポリマー材料を含む。しかしながら、針は、別法として金属材料を含んでいてもよい。
【0013】
本発明は、さらに、要素のさまざまな組合せを組み込んでいる外部包装を備えることができる。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、物質を混合する方法であって、少なくとも2つの流路を通して同時に流体を吸い込むステップと、流体を別の物質と混合するステップとを含む方法を提供する。本方法は、混合物を患者内に注射するステップをさらに含むことができる。本方法を、薬学的に活性である少なくとも1種の物質と使用することができる。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、一方が他方の中にあるハブを有する2つの針を係合させる方法であって、第1針のハブを第2針のハブの上の係合位置まで軸方向に移動させるステップと、第2針のハブを回転させて固定係合させるステップと、を含む方法を提供する。本方法は、最も有利には、針が吸上げ針および注射針を備える場合に使用される。
【0016】
本シリンジシステムのすべての部品を、たとえば米国特許第5,620,639号明細書に開示されている方法、またはポリマー注入法を用いる別の方法を用いてポリマー材料から製造することができる。部品がポリマー材料である場合、それらを、望ましい場合は、材料の再利用のために容易に廃棄することができる。別法として、針を金属製とすることができる。好ましくは、金属は鋼である。しかしながら、システムに金属部品を含めることにより、異なる材料の混和のために使用済みシリンジ材料を再利用する可能性が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の組立分解図を示す。
【図2】ロック式シリンジシステムの縦断面図を示す。
【図3】注射針およびハブの斜視図を示す。
【図4a】ルアーロック先端部を有するシリンジバレルの斜視図を示す。
【図4b】シリンジバレルのルアーロック係合部の拡大斜視図を示す。
【図5a】吸上げ針の実施形態の外面の斜視図を示す。
【図5b】図5aの吸上げ針の内面の斜視切取部および図を示す。
【図6】ロック式シリンジシステムキットの上面斜視図を示す。
【図7】本発明の第2実施形態を組立分解図で示す。
【図8】本発明の第2実施形態を係合した斜視図で示す。
【図9a】吸上げ針の第2実施形態の斜視図を示す。
【図9b】一部を切り取った、吸上げ針の第2実施形態の斜視図を示す。
【図10】注射針およびハブの第2実施形態の斜視図を示す。
【図11a】係合位置にあるロック式シリンジシステムの第2実施形態の縦断面図を示す。
【図11b】係合解除位置にあるロック式シリンジシステムの第2実施形態の縦断面図を示す。
【図12a】一部を切り取った、係合位置にあるロック式シリンジシステムの第2実施形態を斜視図で示す。
【図12b】一部を切り取った、係合位置にあるロック式シリンジシステムの第2実施形態を斜視図で示す。
【図13】シリンジシステム用のキャップを示す。
【図14a】ロック式シリンジシステムの実施形態の動作におけるステップを示す。
【図14b】ロック式シリンジシステムの実施形態の動作におけるステップを示す。
【図14c】ロック式シリンジシステムの実施形態の動作におけるステップを示す。
【図14d】ロック式シリンジシステムの実施形態の動作におけるステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的は、本明細書に記載する実施形態を参照し、図面を参照することによって最もよく理解される。当業者により、本発明は、図面に示す実施形態に限定されず、例示しないが明細書に添付されている特許請求の範囲の範囲内にある実施形態を含むことが理解されよう。
【0019】
図1は、貯蔵器またはシリンジバレル1、注射針ハブ2、注射針3、吸上げ針10およびピストン5からなる、本発明の主な要素を備えた実施形態の組立分解図を示す。実施形態は、キャップ6を有していてもよい。図2において本発明の好ましい実施形態の横縦断面で示すように、シリンジバレルまたは貯蔵器1は、注射針の流路8とともに導管を形成する第1流路7を有している。シリンジバレルは、少なくとも第2流路またはボア9を組み込むことができ、第2流路またはボア9の開口部は、本明細書に記載するように封止可能である。ボア9は、さらなる流路40と流体連通しており、流路40もまた、第1流路7とともにシリンジ貯蔵器1への導管を形成している。ボア9は注射針3によって提供される流路8に加えて、流路40を通る流体を吸い上げるための好都合な導管を提供する。第1流路7と流体連通する第2流路40を組み込む最も好ましい実施形態では、第1流路7および注射針流路8へのボア9および第2流路40の協働により、最も有利には、ピストンの1回の吸上げ工程で貯蔵器内に吸い込まれる流体の体積を大幅に増大させることができる。実施形態が、第1流路7を介して貯蔵器1と同様に流体連通するさらなるボア9および流路40を有することができることが理解されよう。最も有利には、貯蔵器を充填するように吸上げ工程を完了する、労力が低減した針は、貯蔵器を充填する効率を向上させるのに役立つ。
【0020】
図3にボアの実施形態を示し、そこでは、ボアは注射針のハブに位置している。本発明は、貯蔵器と針との間を流体が通過するための流路を画定するように1つまたは複数のこうした開口部またはボアを有している。たとえば、2つ以上の開口部があり得る。動作時、吸上げ針10が注射針ハブ2に係合して、吸上げ針10は、ボアへの入口が開放し、ボアが、流体が余分な体積で貯蔵器内に吸い込まれるように吸上げ針と貯蔵器との間を流体連通する流路を提供するように、向けられる。余分な体積を、ボアの全直径によって画定される、少なくとも1つのボアによって画定される追加の流路を通して、貯蔵器内に吸い上げることができる。そして、本明細書に記載するようにボアは閉鎖され、貯蔵器内の流体を、注射針を通して患者内に注射することができる。
【0021】
最も有利には、本発明は、流体を1回の吸上げ工程で複数の流路を通してシリンジバレルまたは貯蔵器内に吸い込むステップと、1回の注射工程によって流体を患者に投与するステップとを含む、容器から患者に流体を移送する方法を提供する。好ましくは、吸上げステップは、2つの流路を通して流体を同時に貯蔵器内に吸い込むことを含む。好ましくは、投与ステップは、単一流路を通して流体を患者に投与することを含む。本発明は、貯蔵器に対して平行な流路を画定する複数の針を係合させるステップと、複数の針を通して同時に流体を貯蔵器内に吸い込むステップと、貯蔵器から第1針を係合解除するステップと、貯蔵器からの流体を第2針によって患者に投与するステップとを含む、貯蔵器を流体で充填しその流体を患者に投与する方法を提供することができる。
【0022】
図5aに示すように、吸上げ針10は、ハブ11と針またはカニューレ4を備えている。好ましくは、ハブは、基端部18と比較して直径が低減した先端部17を備えている。先端部17の低減した直径により、吸上げ針4の上へのキャップ6の係合が可能になる。キャップは、存在する場合、覆われていない吸上げ針で発生する可能性のある意図されてない針刺し切創および相互汚染を防止することができる。ハブ11は、その外面に突起21を組み込むことができ、突起は、使用者が使用時に吸上げ針をより適切に把持するのに役立つ。好ましくは、突起21はリブ形状であるが、こぶ(nub)等の他の形状をとってもよい。図5bに示すように、吸上げ針ハブ11の内面は、注射針のハブの外面12(4つの突起として示す)と相補的に係合する凹部16を組み込んでいる。
【0023】
吸上げ針10、注射針3およびシリンジ1は、係合手段を組み込むことができる。係合手段の好ましい実施形態は、表面の相補的な突起および凹部を備えている。
【0024】
図5〜図14に、吸上げ針10、注射針3およびキャップ6の係合の実施形態を示す。図5〜図6に第1実施形態を示し、図7〜図14に第2実施形態を示す。最も好都合には、吸上げ針は、好ましい実施形態では90度回転させることによって容易にロック解除される。ロックシステムは、好ましくは、かつ最も有利には、クイックリリース(quick release)システムを組み込んでおり、それは、吸上げ針部材および注射針部材を係合するかまたは係合解除するために、1/4の回転しか必要としない。これは、本技術分野において既知であるルアーロックタイプの係合システムよりはるかに好都合である。図1〜図6に示す実施形態では、吸上げ針をロック解除することにより、流体ボア9は自動的に閉塞される。これらの実施形態では、吸上げ針の凹部16は、針ハブの突起13と係合し、吸上げ針の移動によって同時に針ハブも移動させる。
【0025】
係合手段は、図5aおよび図5bに示すような吸上げ針10上の出張り22と、図4に示すシリンジ1の先端側端部30におけるアンダーカット23とを備えることができる。吸上げ針10上の出張り22は、アンダーカット23内に挿入することができる破断(broken)リングを形成し、アンダーカット23は、好ましくは、吸上げ針の出張り22と確実に係合する延長部24を有する溝を画定する。
【0026】
吸上げ針10は、注射針ハブ2と摺動係合するハブ11を組み込んでいる。注射針ハブ2は、2つの部分、すなわち吸上げ針ハブ11と係合する係合突起13を有する先端部12と、ボア9を組み込んでいる基端部14とを備えている。吸上げ針の内面15は、注射針ハブ13の先端部12の外面に相補的な表面を画定する切取部または凹部16を組み込んでいる。吸上げ針が、注射針のハブ12の突起13の上を摺動すると、相補的な突起と凹部とが係合して有効なシールを形成する。好ましくは、突起13はリブ形状であり、凹部16は相補的な切取リブ形状であることにより、流体損失に対して有効なシールを形成する。リブの幅は可変であってもよいが、注射針ハブおよび吸上げ針ハブの相補的な表面は、最良のシールのために可能な限り近接するべきである。さらに、ハブ突起13および凹部16は、デッドスペースを最小限にするように締まり嵌めを有するべきである。
【0027】
吸上げ針10は、図4に示すような係合手段により貯蔵器またはシリンジバレルと係合する。好ましくは、シリンジ1のバレルは、先端側端部25において先細りになっている。好ましくは、シリンジバレル1の先端側端部25の、吸上げ針10の平滑な内面15との摺動係合により、防漏シールが形成されるように、吸上げ針のハブの基端部の内面31は平滑な相補的先細りを画定している。
【0028】
一実施形態では、注射針の係合手段、吸上げ針の係合手段およびシリンジバレルの係合手段は、協働して、有効なロック手段を提供する。別の実施形態では、注射針、吸上げ針およびキャップが協働して、有効なロック手段を提供する。一実施形態では、吸上げ針は、吸上げ針の先端部の出張りを、シリンジバレルの保持出張りの下に適合するような係合位置まで回転させることにより、シリンジバレルと係合するか、またはシリンジバレルの上に有効にロックされる。ロック係合により、有利に、吸上げ針10が使用者によって意図せずに係合解除する可能性がないことが確実になる。さらに、ロック係合は、偶発的な針刺し切創を防止する役割を果たす。別の実施形態では、注射針、吸上げ針およびキャップは、吸上げ針突起を注射針のハブの軸方向溝に沿って摺動させ、その突起を回転させて注射針のハブ内の係合表面または係合面と係合させることにより、有効に合わせてロックされる。そのように係合した注射針ハブおよび吸上げ針ハブは、容易には係合解除せず、したがって、偶発的な針刺し切創を防止するのに役立つ。いずれの実施形態における吸上げ針のハブとのキャップの摩擦係合によっても、吸上げ針から針刺し切創が発生する可能性が低くなる。
【0029】
図2は、一実施形態における、流体をシリンジ1内に吸い込む位置にある要素を示す。適所にあるとき、吸上げ針は、注射針のために有効な安全カニューレを形成する。吸上げ針ハブおよび注射針ハブ2ならびにシリンジの先細り先端側端部25は同心状に、吸上げ針のハブが最も外側で、注射針のハブが中間で、シリンジの先端側端部が最も内側で係合する。係合すると、シリンジの先端側端部25の内面および注射針の内面は、吸上げ針およびボアによって画定される流路と同心状に流体連通する流路を画定する。
【0030】
好ましくは、吸上げ針は、図5bに示すように流体を送出する側部ポート18を組み込んでいる。好ましくは、注射針は、図3に示すように流体を送出する側部ポート19を組み込んでいる。他の構造も可能であるが、側部ポートにより、有利に、製造プロセス中の針のコアリングの必要がなくなる。たとえば、開示内容がすべて参照により本明細書に援用される国際公開第2008/074065号パンフレットに開示されている針先端の発明を、本注射針に有利に組み込むことができる。
【0031】
本発明の範囲は、本明細書に記載する要素のさまざまな組合せを含むことが理解されよう。たとえば、上述したようにキャップが存在しなくてもよく、または注射針ハブが存在しなくてもよい。注射針ハブがない場合、注射針を、貯蔵器に直接取り付けてもよい。一実施形態では、本発明は、最も有利には、図6に示すような注射キットを含む。好ましくは、注射キット30は、ピストン5を有するシリンジ1、吸上げ針10、注射針(図示せず)および容器31を備え、シリンジは流体連通する少なくとも2つの流路を有している。好ましくは、容器31はブリスターパッケージである。好ましくは、キットは、1つが他の中にある、キャップ6、吸上げ針10および注射針を含む。キットは、本明細書に記載する係合機構またはロック機構を備えた吸上げ針、注射針およびキャップを含むことができる。
【0032】
キットの任意の要素またはすべての要素をポリマー材料から構成することができる。この実施形態では、キットの要素は、使用される時に容易に廃棄される。最も有利には、ポリマー材料からなるキットを収集し、たとえば単純に焼却して、キット要素を使用する再調製プロセスまたは注射プロセス中にキットの任意の要素によって捕捉される相互汚染または病原体の意図しない転移の可能性を最小限にすることができる。
【0033】
図7〜図14に示す本発明の別の実施形態は、図1に示すもののようなシリンジバレルと係合する、吸上げ針10、皮下針または注射針3および保護キャップ6を含む、吸上げおよび注射システムの要素を備えている。吸上げおよび注射システムの要素は、注射針の係合解除および上述したような不注意の汚染の可能性を制御して、有効にロックされたシステムとして好都合に係合可能である。本システムは、最も有利には、注射に必要となる前の注射針を露出させることなく、注射のための上述した物質の再調製等、物質の移送を可能にする。これのいくつかの実施形態は、上述したようなボア流路を含むことができる。
【0034】
図7および図8に示す一実施形態では、保護キャップ6は、キャップ6と吸上げ針10との間の摩擦嵌合によって確実に係合する。図7は、注射針3および注射針ハブ2の組立分解図を示し、注射針ハブは先端部35を組み込んでいる。吸上げ針10を、注射針のハブ2および吸上げ針のハブ11を採用する固定またはロック機構を係合させることにより、両注射針1と固定して係合させることができる。図8は、固定係合位置にある要素を示し、キャップ6および注射針ハブ2の先端部35が見えている。
【0035】
図9aは、吸上げ針10の実施形態を斜視図で示し、図9bは、ハブ部を図示するために吸上げ針10の一部が切り取られている実施形態を斜視図で示し、ともに吸上げ針ハブ11の先端部17および基端部18を含む。先端部17は、保護キャップ6を受け入れかつ係合するように直径が低減している。キャップ6の内面は、吸上げ針ハブ11の外面と摩擦係合するように形成されている。基端部18は、注射針のハブと係合する少なくとも1つのアンダーカットまたは突起36を有している。
【0036】
図10は、吸上げ針のハブ11と係合する係合手段を備えたハブ2を組み込んでいる注射針3の実施形態を斜視図で示し、注射針ハブ2は、先端部12および基端部14を有している。好ましくは、注射針ハブ2の係合手段は、係合手段を備えた吸上げ針突起36を注射針ハブ2上で方向づける溝39を組み込んでいる。好ましくは、注射針ハブ2の係合手段は、吸上げ針突起36と係合する係合面38を備えている。この実施形態は、最も好都合かつ有利には、使用者が、溝に沿って吸上げ針突起36を方向づけ、吸上げ針を捩って突起36を注射針ハブ2の係合面38に係合させるのを可能にする。そのように係合すると、注射針3と吸上げ針10とは1つのユニットを形成する。
【0037】
図11aおよび図11bは、吸上げ針ハブ11および注射針ハブ2の基端部14の係合位置および係合解除位置の実施形態を横縦断面で示す。図11aにおいて、吸上げ針ハブ11および注射針ハブは、断面Aにおいてより大きい詳細に示す係合位置にあり、そこでは、形成している吸上げ針ハブ11の端部の突起36が、注射針ハブの基端部14の相補的な形状面またはアンダーカット面50に隣接している。図11bは、間隙を示し、そこでは、吸上げ針ハブ11を注射針ハブから溝に沿って摺動可能に係合解除することができるように、吸上げ針ハブ11が係合面37から離れる方向に回転している。
【0038】
図12aは、係合している注射針ハブ2、吸上げ針ハブ11およびキャップ6の実施形態のさらなる詳細を示す。図12bは、注射針ハブ2の先端側端部12において係合する位置まで溝39に沿って軸方向に移動して、適所にある吸上げ針ハブ11を組立分解図で示す。(図12bは、図12aの拡大した断面図であり、アンダーカットの係合を斜視図で示す。)
【0039】
図13は、ロック式シリンジシステムに組み込むことができるキャップ6の斜視図を示す。キャップ6は、その表面に、流体をシリンジのバレルまたは貯蔵器内に吸い上げるために針およびそれらのハブと係合解除するのに役立つように、隆起または突起を有することができる。
【0040】
図14a〜図14dは、本発明によるロック式シリンジシステムの実施形態の要素を係合させ、シリンジシステムに注射用の流体を充填する単純かつ容易なステップを示す。図14aは、ロック式シリンジシステム60を斜視図で示し、それは、シリンジバレル1、注射針(ハブ3が見える)、吸上げ針10(ハブ11が見える)およびキャップ6を備え、すべての部材が係合している。図6に示すようなキットの一部としてパッケージを含む実施形態。好ましい実施形態では、注射針ハブ3は、ルアーロックまたはルアースリップによってシリンジと係合する。シリンジバレル1は、任意の好適な容積を有することができる。動作時、キャップ6は、図に示すように存在する場合、第1ステップで取り除かれる。しかしながら、キットはキャップを有していなくてもよく、このステップは不要であり得る。キャップが、存在する場合に取り除かれると、シリンジシステム60は、混合または注射のために移送される流体および物質を収容するバイアルまたは貯蔵器から、次のステップで充填する用意ができている。これを図14bに示し、そこでは、この時点で吸上げ針カニューレ4が見えている。次のステップ(図14c)において、吸上げ針4は、停止面37において停止位置まで回転している55。回転55方向は、溝および停止面の位置決めによって決まることが理解されよう。そして、吸上げ針ハブ10を、次のステップで、注射針3のハブ2の溝39(図10に示す溝39)に沿って軸方向に移動させることにより、注射針3から完全に係合解除することができる。注射針3およびシリンジ1は、この時点で、図14dに示すように注射に使用する用意ができている。上述した説明から、本発明の方法が、回転移動および並進または軸方向移動の両方を用いて部材を係合解除するステップを提供することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を移送するシリンジであって、
少なくとも1つのカニューレと、
バレルと、
ハブと、
を具備し、
流体送出用の少なくとも2つの流路を組み込んでいるシリンジ。
【請求項2】
流体を移送する装置であって、
流体を吸い上げる第1針と、
注射針と、
を具備し、
前記注射針が、カニューレと、刃と反対側に配置された開口部を有する先端とを備える、装置。
【請求項3】
流体を移送する装置であって、
ハブを有する第1カニューレと、
第2ハブを有する第2カニューレと、
を具備し、
前記カニューレの前記ハブが係合手段によって係合する、装置。
【請求項4】
さらに、前記係合手段が、前記第2ハブの係合面と係合する前記第1ハブの突起を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2ハブに、前記突起を回転位置まで軸方向に案内する溝をさらに具備する、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2ハブ上に係合面をさらに具備し、前記係合が、前記第1ハブを係合位置まで回転させることによって行われる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
液体貯蔵器をさらに具備する、請求項3〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記バレルを前記第1カニューレおよび前記第2カニューレと係合させる係合手段をさらに具備する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記係合手段がルアーロックである、請求項9に記載の装置。
【請求項10】
キャップをさらに具備する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
ポリマー材料から構成される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
外部包装をさらに具備する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
物質を混合する方法であって、
少なくとも2つの流路を通して同時に流体を吸い込むステップと、
前記流体を別の物質と混合するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記混合物を患者内に注射するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの物質が薬学的に活性である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
一方が他方の中にあるハブを有する2つの針を係合させる方法であって、
第1針の前記ハブを前記第2針のハブの上の係合位置まで軸方向に移動させるステップと、
前記第2針の前記ハブを回転させて固定係合させるステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記針が吸上げ針および注射針を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
流体を注射する装置であって、
注射針と、
吸上げ針と、
を具備し、
前記注射針および前記吸上げ針が可逆的に係合可能である、装置。
【請求項19】
前記吸上げ針と係合するキャップをさらに具備する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記注射針上にハブをさらに具備し、前記ハブが、前記吸上げ針上で係合手段を案内する溝を組み込んでいる、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記係合手段が、前記吸上げ針の前記ハブ上の突起である、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記注射針ハブ上に係合面をさらに具備する、請求項20または21に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも1つの針がポリマー材料を含む、請求項18〜22のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【公表番号】特表2013−505743(P2013−505743A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530054(P2012−530054)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001257
【国際公開番号】WO2011/035387
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512068710)エスエスビー テクノロジー プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】