説明

ロック環を有する電気コネクタ

【課題】相手コネクタと機械的にロックするための部品点数を少なくし、コネクタのコスト、複雑さや組立て時間の増大をなくす。
【解決手段】電気コネクタ12は、ハウジング50と、ハウジングにより保持される電気コンタクト66とを具備し、ハウジングは、電気コネクタが相手コネクタと嵌合する際に相手コネクタに対面する嵌合端56を有する。ハウジングの本体には、ロック環16が移動可能に実装されている。ロック環は、ロック部材30、及び貫通する開口を有する内向きの肩を有する。ロック部材は、相手コネクタに電気コネクタをロックするために相手コネクタと係合するよう構成されている。肩は、ロック環が相手コネクタと係合完了する際に本体の保持フランジと係合する。本体の保持フランジは、ハウジングの本体上にロック環を保持するために、ロック環のロック部材と係合するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載され図示された主題は、概括的には電気コネクタに関し、特に電気コネクタを相手コネクタに機械的に接続するためのロック環を有する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのコネクタは、相手コネクタからの係合解除に対する抵抗が比較的低いという問題を抱えている。例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタを別の相補的なUSBコネクタから係合解除するために必要な軸方向の引っ張り力は、比較的低い。比較的低い軸方向の引っ張り力を有する電気コネクタは、例えばケーブルが不注意で引っ張られ又は捕まえられる際や、何かが電気コネクタに衝突する際に、相手コネクタから意図せず係合解除されるおそれがある。フラッシュドライブ(フラッシュメモリ)、無線アンテナや他の独立型の部品を接続するUSBコネクタは、特に意図しない係合解除を受けやすい。というのは、独立型の部品は、USBコネクタが嵌合するデバイスから外方へ延びることが多いからである。例えば、デバイスがラップトップ型コンピュータ等の移動型の場合や、デバイスの回りが比較的大きな機械等で混雑している場合、独立型の部品はより容易に人間又は物体に衝突するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気コネクタを相手コネクタに固定するために、電気コネクタのハウジングの周囲に延びて相手コネクタのハウジングに機械的に接続するロック環を有する電気コネクタがある。しかし、公知のロック環は、ばねクリップ、保持リング、巻き付けタイ(tie wrap)又は同様の部品等の、ハウジングとは別体の部品を使用して電気コネクタのハウジング上に保持される。電気コネクタのハウジングとは別体のこのような部品を使用することは、電気コネクタのコスト、複雑さや組立時間を増大させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段は、相手コネクタと嵌合するための電気コネクタにより提供される。この電気コネクタは、ハウジングと、ハウジングにより保持される電気コンタクトとを具備する。ハウジングは、電気コネクタが相手コネクタと嵌合する際に相手コネクタに対面する嵌合端を有する。ハウジングは、保持フランジを有する本体を具備する。ハウジングの本体には、ロック環が移動可能に実装されている。ロック環は、ロック部材、及び内向きの肩を有する。内向きの肩は、この肩を貫通する開口を有する。ロック部材は、相手コネクタに電気コネクタをロックするために相手コネクタと係合するよう構成されている。肩は、ロック環が相手コネクタと係合完了する際に本体の保持フランジと係合する。本体の保持フランジは、ハウジングの本体上にロック環を保持するために、ロック環のロック部材と係合するよう構成されている。
【0005】
別の実施形態において、相手コネクタと嵌合する電気コネクタが提供される。電気コネクタは、ハウジングと、ハウジングにより保持される電気コンタクトとを具備する。ハウジングは、電気コネクタが相手コネクタと嵌合する際に相手コネクタに対面する嵌合端を有する。ハウジングは、装填部材を有する保持フランジを具備する。ハウジングには、ロック環が移動可能に実装されている。ロック環は、相手コネクタに電気コネクタをロックするために相手コネクタと係合するよう構成されたロック部材を有する。ロック環のロック部材及び保持フランジの装填部材は、ハウジング上にロック環を装填し保持するために互いに圧入係合する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】電気コネクタの典型的な一実施形態及び典型的な相手コネクタの組立体を示す斜視図である。
【図2】典型的な相手コネクタを示す斜視図である。
【図3】電気コネクタの典型的な一実施形態のハウジングから取り外された、電気コネクタの典型的な一実施形態のロック環を示す、図1に示された電気コネクタの分解斜視図である。
【図4】電気コネクタの典型的な一実施形態のハウジング上に装填されたロック環を示す、図1及び図3に示された電気コネクタの断面図である。
【図5】図1、図3及び図4に示された電気コネクタのハウジングの正面図である。
【図6】典型的な一実施形態の凹部内に受容された典型的な一実施形態の突起を示す、図1、図3ないし図5に示された電気コネクタの一部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して本発明を例示により説明する。
【0008】
図1は、電気コネクタ12の典型的な一実施形態及び典型的な相手コネクタ14の組立体10を示す斜視図である。コネクタ12,14は、それらを電気的に接続するために互いに嵌合する。電気コネクタ12のロック環16は、相手コネクタ14のハウジング20に機械的に接続し、電気コネクタ12及び相手コネクタ14を共にロックする。
【0009】
典型的な一実施形態において、電気コネクタ12は、雄型ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタ(USB 2.0コネクタ、USB 3.0コネクタ等であるが、これらに限定されない)である。相手コネクタ14は、雌型USBコネクタ(USB 2.0コネクタ、USB 3.0コネクタ等であるが、これらに限定されない)である。さらに、典型的な一実施形態において、電気コネクタ12は、ブルートゥース(登録商標)アダプタ(このようなアダプタがUSBを含む場合、アダプタは「ブルートゥースUSBドングル」と呼ばれることがある)等の無線通信アダプタであるが、これに限定されない。しかし、コネクタ12,14はそれぞれ、他のシリアルコネクタ、モジュラープラグ、モジュラージャック、同軸コネクタ、オーディオコネクタ、ビデオコネクタ等(但し、これらに限定されない)の他のタイプのコネクタであってもよい。別の実施形態において、電気コネクタ12は雌型コネクタであり、相手コネクタ14は雄型コネクタである。
【0010】
典型的な実施形態において、相手コネクタ14のハウジング20は構造物に実装される。具体的には、ハウジング20は、コンピュータ、機械、サーバ等(但し、これらに限定されない)の、相手コネクタ14がその構成部品である大規模システムの典型的なパネル18内に実装される。パネル18は、ハウジング、ラック、支持構造物、壁や、大規模システムの同様のもの等(但し、これらに限定されない)の大規模システムの任意の部分を形成してもよい。或いは、パネル18は、大規模システムの一部を形成しない独立型パネルであってもよい。さらに、別の実施形態では、相手コネクタ14のハウジング20は別の構造物に実装されていない。ここでは、パネル18に機械的に接続された別体の構造物として図示されているが、別の実施形態では、相手コネクタ14のハウジング20は、パネル、ハウジング、ラック、支持構造物、壁や、ハウジング20が実装される同様のもの等の一体化された部分である。例えば、相手コネクタのハウジング20は、任意であるがパネル18の一体化された部分である。
【0011】
図2は、相手コネクタ14の斜視図である。典型的な実施形態において、相手コネクタ14は、ハウジング20、外側電気コンタクト22及び内側電気コンタクト組立体24を具備する。内側電気コンタクト組立体24は、複数の内側電気コンタクト26(図2には1個の内側電気コンタクト26のみが見える)を有する。相手コネクタ14は、任意の数の内側電気コンタクト26及び任意の数の外側電気コンタクト22を含む、全体で任意の数の電気コンタクトを有してもよい。例えば、実施形態によっては、相手コネクタ14は、外側電気コンタクトを有していないか、又は内側電気コンタクトを有していない。
【0012】
相手コネクタ14のハウジング20は、嵌合面27及び1個以上の機械的接続部材28を有する。機械的接続部材28は、電気コネクタ12(図1、図3、図4及び図6参照)のロック環16(図1、図3、図4及び図6参照)の1個以上のロック部材30(図3参照)と協働し、ハウジング20をロック環16に機械的に接続する。これにより、電気コネクタ12を相手コネクタ14にロックする。典型的な実施形態において、ロック環16及びハウジング20は、バヨネット型接続部を使用して機械的に接続する。具体的には、相手コネクタハウジング20の接続部材28は、螺旋状経路に沿ってハウジング20の外面44の周囲を少なくとも部分的に延びるねじ状部42を有する。各ねじ状部42は、ハウジング20の外面44の周囲を、凹部48を含む一端46まで延びる。
【0013】
図3は、電気コネクタ12の分解斜視図である。ロック環16は、内部室(interior cavity)32を有する本体34を具備する。ロック環16の本体34は、中心縦軸36に沿って所定長さで延びている。本体34の内面38は、ロック環16の内部室32を区画する。典型的な実施形態において、ロック環16のロック部材30は、内面38から中心縦軸36に対して半径方向内側に延びる突起40を有する。
【0014】
図2及び図3を参照すると、相手コネクタ14のハウジング20にロック環16を機械的に接続するために、ハウジング20はロック環16の内部室32内に受容され、突起40はねじ状部42内に受容される。ロック環16は中心縦軸36及び相手コネクタハウジング20の周りに回転するので、突起40はねじ状部42の経路に沿って一端46まで進み、ハウジング20をロック環16の凹部48内にさらに引っ張る。一端46では、突起40はねじ状部42の凹部48内へ摺動するので、ロック環は相手コネクタハウジング20と係合完了し、ロック環16をハウジング20上に保持する。
【0015】
さらに、或いはねじ状部42や突起40に代えて、相手コネクタハウジング20は、ロック環16の内面38内に延びる1本以上のねじ状部(図示せず)内に受容される1個以上の突起(図示せず)を有してもよい。3個の突起40が図示されているが、ロック環16は任意の数のロック部材30を有してもよく、相手コネクタハウジング20は任意の数の接続部材28を有してもよい。機械的接続部が開口状の形態内に受容される突起の形態を有する限り、バヨネット接続部に加えて他のタイプの機械的接続部を使用してもよい。実施形態によっては、ロック環16及び相手コネクタハウジング20間のバヨネット型接続部は、国際電気標準会議(IEC)規格61076−3−106条件1により定義される。
【0016】
図4は、電気コネクタ12の典型的な一実施形態のハウジング50上に装填されたロック環16を示す、電気コネクタ12の断面図である。図3及び図4を参照すると、電気コネクタ12はハウジング50を具備する。ハウジング50は、嵌合端56から閉じた一端58まで中心縦軸54に沿って所定長さで延びる本体52を有する。内部室(interior chamber)60は、嵌合端56を貫通してハウジング50内へ閉じた端58まで延びている。内部室60は、1個以上の電気部品62を保持するよう構成されている。典型的な一実施形態において、電気部品62は、ブルートゥース(登録商標)アダプタ部品等(但し、これに限定されない)の無線通信アダプタ部品である。さらに、或いはこれに代えて、内部室60は、他の任意のタイプの電気部品を保持してもよい。電気コネクタ12が相手コネクタ14(図1及び図2参照)と嵌合すると、ハウジング50の嵌合端56は、相手コネクタハウジング20(図1及び図2参照)の嵌合面27(図1及び図2参照)と対面する。任意であるが、ハウジング50は、相手コネクタハウジング20の嵌合面27でハウジング50の嵌合端56を封止するためのガスケット64を保持する。
【0017】
電気コネクタ12は、外側電気コンタクト66と、複数の内側電気コンタクト70(図3に不図示)を有する内側電気コンタクト組立体68(図3に不図示)とを有する。電気コネクタ12は、任意の数の内側電気コンタクト70及び任意の数の外側電気コンタクト66を含む、全体で任意の数の電気コンタクトを有してもよい。例えば、実施形態によっては、電気コネクタ12は、外側電気コンタクトを有していないか、又は内側電気コンタクトを有していない。外側電気コンタクト66はカバー72により保持される。カバー72は、ハウジング50の嵌合端56でハウジング50の内部室60内に保持される。外側電気コンタクト66は、嵌合端74から後端76まで所定長さで延びている。外側電気コンタクト66はカバー72により保持されるので、後端76は内部室60内に延び、嵌合端74はハウジング50の嵌合端56から外方へ延びている。外側電気コンタクト66は、コネクタ12,14が互いに嵌合して外側電気コンタクト66,22を電気的に接続する際に、相手コネクタ14の外側電気コンタクト22(図2参照)と係合する。
【0018】
外側電気コンタクト66は内部室78を有する。内側電気コンタクト組立体68は、外側電気コンタクト66の内部室78内に保持される電気絶縁ホルダ80(図3に不図示)を有する。ホルダ80は、外側電気コンタクト66の内部室78内に内側電気コンタクト70を保持する。ホルダ80は、外側電気コンタクト66を内側電気コンタクト70から電気的に絶縁する。各内側電気コンタクト70は、コネクタ12,14が互いに嵌合する際に、相手コネクタ14の対応する1個の内側電気コンタクト26(図2参照)と係合する嵌合インタフェース82(図3に不図示)を有する。内側電気コンタクト70,26は、これらの係合により電気的に接続される。
【0019】
電気コネクタ12のハウジング50の本体52は、中心縦軸54に対して半径方向外側へ延びる保持フランジ84を有する。後述するように、保持フランジ84は、電気コネクタ12のハウジング50上にロック環16を保持することを容易にする。保持フランジ84は、嵌合側面86から反対側の後面88まで所定長さで延びている。典型的な実施形態において、保持フランジ84は、ハウジング50の嵌合端56で半径方向外側へ延びている。しかし、保持フランジ84は付加的に或いは代わりに、例えば、閉じた端58や、嵌合端56及び閉じた端58間のハウジング50の長さに沿った任意の位置等の、ハウジング50の長さの任意の他の部分に沿って半径方向外側へ延びてもよい。
【0020】
ハウジング50の保持フランジ84は、ロック環16をハウジング50上に装填できる1個以上の装填部材90を有する。装填部材90はまた、後述するように、ハウジング50上にロック環16を保持することを容易にする。典型的な実施形態において、装填部材90は、中心縦軸54に対して半径方向内方へ延びる凹部92を有する。凹部92は、ロック環16の突起40を内部に受容するよう構成される。凹部92は、ロック環16がハウジング50上に装填されるとロック環16の突起40が凹部92を通過できるようにすることにより、ロック環16をハウジング50上に装填することができる。突起40及び凹部92に加えて、或いはこれらに代えて、保持フランジ84が、ロック環16の1個以上の凹部(図示せず)を通過する1個以上の突起(図示せず)を有してもよい。保持フランジ84は、任意の数の装填部材90を有してもよい。
【0021】
図5は、凹部92を示す、典型的な一実施形態のハウジング50の正面図である。各凹部92は、開放端94から底部96まで半径方向内方へ所定深さで延びている。各凹部92はまた、保持フランジ84を貫通する中心縦軸98に沿って所定長さで延びている。典型的な実施形態において、各凹部92の両側壁100の一部は、開放端94で凹部92の幅W1より大きな幅Wを有する。換言すると、凹部92の両側壁100は、凹部92が保持フランジ84内へ所定深さで延びるにつれ、底部96と交差するよう内方へ湾曲する前に中心縦軸98に対して外方へ広がる。底部96との交差点で内方へ湾曲する代わりに、1個以上の凹部92の1個以上の側壁100は、鋭利な縁(図示せず)で底部96と交差してもよい。また、1個以上の凹部92の1個以上の側壁100は、代わりに、側壁100が湾曲した縁又は鋭利な縁で底部96と交差してもしなくても、凹部92が保持フランジ84内へ所定深さで延びるにつれて中心縦軸98に対して内方へ広がってもよい。さらに、1個以上の凹部92の1個以上の側壁100は、側壁100が湾曲した縁又は鋭利な縁で底部96と交差してもしなくても、凹部92が保持フランジ84内へ深さ方向に延びるにつれて中心縦軸98からほぼ一定距離で延びてもよい。
【0022】
凹部92は、凹部92が突起40を受容できるようにするために、ロック環16(図1、図3、図4及び図6)の突起40に対して少なくとも部分的に相補的な形状を有する。実施形態によっては、1個以上の凹部92は1個以上の他の凹部92と異なる形状を有してもよいので、凹部92は各突起40に対して相補的な形状ではない。このような一実施形態では、ロック環16の突起40は、ハウジング50上にロック環16を装填するよう対応する凹部92と整列する必要はない。換言すると、凹部92及び突起40は、ロック環16がハウジング50に対して所定の回転位置にない場合、ロック環16がハウジング50上に装填されることを防止するキー機能を提供してもよい。さらに、或いは本明細書に示される凹部92の典型形状に代えて、凹部92が少なくとも1個の突起40に対して少なくとも部分的に相補的な形状である限り、各凹部92は任意の他の形状を有してもよい。
【0023】
図4を再度参照すると、ロック環16は、ハウジング50上に移動可能に実装されている。具体的には、ロック環16がハウジング50上に実装されると、ロック環16の本体34は、ハウジング50の中心縦軸54及びロック環16の中心縦軸36の回りをハウジング50に対して回転可能である。図4に見ることができるように、中心縦軸36,54は、ロック環16がハウジング50上に実装される際に整合する。ロック環16の本体34もまた、中心縦軸36,54に沿ってハウジング50に対して直線的に移動可能である。換言すると、ハウジング50の本体52は、ロック環16の本体34の内部室32に沿って直線的に移動可能である。ロック環16の本体34は、内面38とは半径方向逆向きである外面102を有する。外面102は、人の指や手を用いてロック環16の回転を容易にする、複数の任意の把持部104(図3参照)を有する。図4に示されるようにロック環16のハウジング50への装填が完了すると、ロック環16の突起40は、保持フランジ84の嵌合側面86に沿って延びる。
【0024】
ロック環16の本体34は、前面端106から後端108まで中心縦軸36に沿って所定長さで延びている。ロック環16の本体34は、ロック環16がハウジング50上に装填されると共に相手コネクタハウジング20(図1及び図2)に機械的に接続されると、ハウジング50の保持フランジ84に係合する内向きの肩110を有する。具体的には、肩110は、中心縦軸36に対して半径方向内向きに延びると共に、保持フランジ84の後面88と係合するよう配置された表面112を有する。開口114が肩110を貫通して延びている。開口114は、ロック環16の本体34の内部室32につながっている。典型的な実施形態において、肩110は、ロック環16の本体34の後端108で半径方向内方へ延びている。しかし、肩110は、さらに或いはこれに代えて、ロック環16の本体34の長さの全ての他の部分に沿って、例えば前面端106及び後端108の間の、本体34の長さに沿った位置で半径方向内向きや外向きに延びてもよい。
【0025】
ロック環16の突起40は、凹部92に対して少なくとも部分的に相補的な形状を有する。各突起40は、本体34の内面38を交差する基部116から一端118まで半径方向内向きの高さで延びている。典型的な実施形態において、各突起40の一端118は基部116とほぼ同じ幅を有し、各突起40の側壁120は鋭利な縁で基部116及び一端118と交差する。或いは、1個以上の突起40の基部116は、側壁120が鋭利な縁又は湾曲した縁で基部116や一端118と交差してもしなくても、突起40の一端118より大きな幅を有する。1個以上の突起40の一端118はまた、側壁120が鋭利な縁又は湾曲した縁で基部116や一端118と交差してもしなくても、突起40の基部116より大きな幅を有してもよい。円形形状を有して図示されているが、各突起40は、突起40が少なくとも1個の凹部92に対して少なくとも部分的に相補的な形状である限り、さらに或いはこれに代えて任意の他の形状を有してもよい。突起40が有する可能性がある他の形状の例は矩形、三角形等であるが、これらに限定されない。
【0026】
各凹部92の少なくとも一部は、突起40が圧入で凹部92内に受容されるように、少なくとも1個の突起40より小さな寸法を有する。換言すると、突起40が凹部92を通過すると、突起40の側壁120は、凹部92の側壁100と干渉する。この干渉は、凹部92を通る突起40の通過に抗する力を与える。従って、突起40は凹部92と圧入係合する。また、ロック環16がハウジング50上に実装されると、突起40は、ハウジング50の保持フランジ84と圧入係合するものと考えることができる。典型的な実施形態において、各突起40の幅W2は、開放端94で凹部92の側壁100の幅W1(図5参照)より大きい。しかし、突起40の任意の部分は、各突起40が少なくとも1個の凹部92と圧入係合する限り、凹部92の任意の部分より大きな寸法を有してもよい。
【0027】
図6は、凹部92内に受容される突起40を示す、電気コネクタ12の一部の拡大正面図である。突起40の側壁120は、凹部92の側壁100と干渉している。突起40及び凹部92の寸法差は、凹部92を通る突起40の通過に対して所定の抵抗力を与えるよう選択される。換言すると、突起40及び凹部92の相対寸法は、凹部92を通って突起40を押圧し又は引っ張るためにハウジング50に対してロック環16に所定の押圧力/引っ張り力を印加しなければならないように、選択される。抵抗力や押圧力/引っ張り力は、突起40が凹部92を通過すると、突起40や凹部92を損傷させたり塑性変形させたりしない力として任意に選択される。或いは、抵抗力や押圧力/引っ張り力は、例えばロック環16がハウジング50から取り外されることの防止を容易にするために、突起40や凹部92を損傷させたり塑性変形させたりしない力として選択されてもよい。突起40及び凹部92の寸法差は、任意の所望の抵抗力や押圧力/引っ張り力を与える任意の差であってもよい。実施形態によっては、突起40及び凹部92の寸法差は、ほぼ0.01mmからほぼ1mmの間である。また、実施形態によっては、突起40及び凹部92の寸法差は、ほぼ0.01mmからほぼ0.1mmの間である。さらに、実施形態によっては、突起40及び凹部92の寸法差は、ほぼ0.01mmからほぼ0.5mmの間である。本段落に引用された特定の寸法差は、例示に過ぎないことを意図されている。突起40の任意の部分は、所望の抵抗力や押圧力/引っ張り力を与える凹部92の任意の部分に対する任意の値の寸法差を有してもよい。
【0028】
図3を再度参照すると、ロック環16がハウジング50から取り外される取り外し段階が図示されている。ロック環16をハウジング50上に装填するために、ロック環16は、矢印Aの向きにハウジング50の閉じた端58上に装填される。具体的には、ハウジング50の閉じた端58はロック環16の内部室32内に挿入され、ロック環16は矢印Aの向きにハウジング50の中心縦軸54に沿って移動する。ロック環16はハウジング50に対して中心縦軸36,54に回りに回転可能に配置されるので、突起40は凹部92と整列する。矢印Aの向きの押圧力/引っ張り力は、突起40及び凹部92間の干渉により生ずる抵抗力を克服するようハウジング50に対してロック環16に印加され、これにより、突起40が凹部92を通過する。
【0029】
突起40が凹部92を一旦通過すると、図1及び図4に示されるように、ロック環16のハウジング50への装填が完了する。図4を参照すると、ロック環16のハウジング50への装填が完了すると、ロック環16はハウジング50の本体52の周囲に延び、突起40は保持フランジ84の嵌合側面86に沿って延びる。さらに、閉じた端58を有するハウジング50の末端片122は、ロック環16の後端108を超えて、開口114を通って肩110内に突出する。
【0030】
突起40が凹部92と整列しない場合、突起40及び保持フランジ84の係合は、ハウジング50上にロック環16を保持することを容易にする。突起40が凹部92と整列する場合、突起40及び凹部92の干渉により生ずる抵抗力は、ロック環16をハウジング50上に保持することを容易にする。換言すると、ハウジング50からロック環16を取り外すために、抵抗力を克服し、突起40が凹部92を通ることができるよう、十分な整列及び押圧力/引っ張り力をハウジング50に対してロック環16に印加しなければならない。
【0031】
図1を再度参照すると、ロック環16のハウジング50上への装填が一旦完了すると、コネクタ12,14は互いに嵌合することができ、ロック環16は相手コネクタハウジング20に機械的に接続することができる。コネクタ12,14が互いに嵌合し、ロック環16が相手コネクタハウジング20に嵌合完了すると、ハウジング50の保持フランジ84(図3ないし図5参照)は、ロック環16の肩110(図4参照)及び相手コネクタハウジング20の嵌合面27(図2参照)と係合し、これらの間に保持される。ロック環16が相手コネクタハウジング20と嵌合完了すると、コネクタ12,14は互いにロックされる。
【0032】
本明細書で説明され、例示された実施形態は、少なくともいくつかの公知の電気コネクタ組立体よりも低コストで、複雑でなく、組立に時間を要しない電気コネクタ組立体を提供する。
【符号の説明】
【0033】
12 電気コネクタ
14 相手コネクタ
16 ロック環
30 ロック部材
32 内部室
40 突起
110 肩
114 開口
50 ハウジング
52 本体
58 閉じた端
60 内部室
84 保持フランジ
92 凹部
56 嵌合端
62 電気部品
66 電気コンタクト
86 嵌合側面
88 後面
106 前面端
108 後端
122 末端片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタ(14)と嵌合するための電気コネクタ(12)であって、
ハウジング(50)と、
前記ハウジングにより保持される電気コンタクト(66)と
を具備し、
前記ハウジングは、前記電気コネクタが前記相手コネクタと嵌合する際に該相手コネクタに対面する嵌合端(56)を具備すると共に、保持フランジ(84)を有する本体(52)を具備し、
前記ハウジングの前記本体上に移動可能に実装されているロック環(16)であって、ロック部材(30)、及び貫通する開口(114)を有する内向きの肩(110)を有し、前記ロック部材は、前記相手コネクタと係合するよう構成されており、前記肩は、前記ロック環が前記相手コネクタと係合完了する際に前記本体の前記保持フランジと係合し、前記本体の前記保持フランジは、前記ハウジングの前記本体上に前記ロック環を保持するために前記ロック環の前記ロック部材と係合するよう構成されているロック環と
を具備することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記本体の前記保持フランジは凹部(92)を具備し、
前記ロック環の前記ロック部材は、前記凹部内に圧入で受容されるよう構成された突起(40)を具備することを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記本体の前記保持フランジは凹部(92)を具備し、
前記ロック環の前記ロック部材は、前記凹部内に受容されるよう構成された突起(40)を具備し、
前記突起が前記凹部内に受容される際に前記凹部及び前記突起が互いに干渉するように、前記凹部が、前記突起の少なくとも一部より小さな寸法を有することを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記本体の前記保持フランジは、嵌合側面(86)及び反対側の後面(88)まで延びており、
前記ロック環の前記ロック部材は、前記ロック環が前記ハウジングの前記本体上に装填完了される際に前記保持フランジの前記嵌合側面に沿って延びていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記ロック環は内部室(32)を具備し、
前記ハウジングの前記本体は、前記内部室を少なくとも部分的に貫通すると共に該内部室に沿って直線的に移動可能であることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記ロック環は、前面端(106)から後端(108)まで所定長さで延びており、
前記肩は、前記ロック環の前記後端で内向きに延びていることを特徴とする請求項1項記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングの前記本体は、前記開口を通って前記ロック環の前記肩内に突出すると共に前記ロック環が前記相手コネクタと嵌合完了する際に前記ロック環の後端を超えて突出する末端片(122)を具備することを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングの前記本体は、前記嵌合端から離れた閉じた一端(58)を具備し、
前記本体は、電気部品(62)を保持するよう構成された内部室(60)を有することを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記ロック環の前記ロック部材は、バヨネット接続部で前記相手コネクタと係合するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項10】
前記ロック環の前記ロック部材は、前記ハウジングの前記本体への前記ロック環の装填の間、前記ハウジングの前記本体の前記保持フランジと圧入係合するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項11】
前記本体の前記保持フランジは凹部を具備し、
前記ロック環の前記ロック部材は、前記凹部内に受容されるよう構成された突起を具備することを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−49165(P2011−49165A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−181408(P2010−181408)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(399132320)タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション (234)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
【Fターム(参考)】