説明

ロボット教示方法、ロボット教示装置およびプログラム

【課題】ロボットが実行する作業に関する情報を簡便に教示できるロボット教示方法を提供する。
【解決手段】ロボット教示方法は、ワーク10に対して行なう作業に関わる動作をロボット1へ教示するための方法であって、ロボット1に備えられたカメラ6によって、マーカー15を有するワーク10の撮像を取得する撮影ステップ(ステップS2)と、当該撮像からマーカー15を検出する検出ステップ(ステップS3)と、マーカー15を解析して、ロボット1が動作をするための教示情報を取得する解析ステップ(ステップS4、S5)と、教示情報を記憶する記憶ステップ(ステップS6)と、を有する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに動作を教示するためのロボット教示方法と、このロボット教示方法に基づいてロボットに動作を教示することが可能なロボット教示装置と、ロボット教示方法に準拠しロボット教示装置に搭載可能なプログラムと、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットの教示方法として、ロボットが有する関節の数以上の自由度を有する教示用アームを用いる方法が開示されており、この方法によれば、教示用アームの先端を変位させることで、ロボットに対して該変位を教示する。つまり、教示作業の際に、教示用アームの変位量に応じてロボットのアームが連動するようになっていて、実際のロボットを操作することなく、ロボットの教示ができ、しかも極めて直感的に行うことが可能である。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−346827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1においては、直感的に教示が可能な情報は、ロボットの位置や姿勢に関する形態情報に留まっている。つまり、ロボットがその位置およびその姿勢でどのような作業、即ち動作を行なうのか、といった動作情報は、別途データベース等から得なくてはならない。この場合、該形態情報と該動作情報との整合性をとらなくてはならず、この整合作業がたいへん煩雑である、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るロボット教示方法は、ワークに対して行なう作業に関わる動作をロボットへ教示するための方法であって、前記ロボットに備えられた撮影装置によって、マーカーを有する前記ワークの撮像を取得する撮影ステップと、前記撮像から前記マーカーを検出する検出ステップと、前記マーカーを解析して、前記ロボットが前記動作をするための教示情報を取得する解析ステップと、前記教示情報を記憶する記憶ステップと、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
このロボット教示方法によれば、ロボットに動作を教示するために、まず撮影ステップにおいて、ワークの撮像を取得し、次いで、検出ステップにおいて、取得した撮像からマーカーを検出する。このマーカーは、ロボットが作業の動作を行なうワークの側に配置されていて、該作業を行なうためのロボットの動作を示す教示情報を含んでいる。教示情報とは、例えば、ワークへねじ等の部材を取り付ける作業の場合、ワークの取付穴に対し、ねじをどの方向からどのくらいのトルクで締め付けるか等を示す情報である。解析ステップでは、この教示情報を、マーカーを解析することによって取得する。そして、記憶ステップにおいて、該教示情報をロボットに係る記憶装置に記憶する。このように、ロボット教示方法は、ロボットの位置や姿勢に関する形態情報と、ロボットがその位置およびその姿勢で行なう作業に関する動作情報と、を、ワークに配置されたマーカーから一括して取得する。そのため、従来のように、別々に取得した形態情報および動作情報の整合性を図る必要がほとんどない。また、ロボットへの教示情報の変更も、マーカーを変更することで容易に行なえるようになるため、変更の迅速化が可能である。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係るロボット教示方法において、前記マーカーは、前記ワークへの前記作業が行なわれる位置の近傍に配置され、前記教示情報を含む二次元コードを有している、ことが好ましい。
【0009】
この方法によれば、マーカーは、二次元コードの形式で教示情報を保有しているため、多量の情報を有することができ、狭いスペースに配置されても、教示情報として必要十分な情報を有することが可能である。また、マーカーは、ワークへの作業が行なわれる位置近傍に配置されているため、撮影装置を当該位置へ概略移動させるだけで、マーカーの撮像を取得することが可能である。
【0010】
[適用例3]本記適用例に係るロボット教示装置は、ワークに対して行なう作業に関わる動作をロボットへ教示するためのものであって、前記ロボットに備えられた撮影装置によって、マーカーを有する前記ワークの撮像を取得する撮影部と、前記撮像から前記マーカーを検出する検出部と、前記マーカーを解析して、前記ロボットが前記動作をするための教示情報を取得する解析部と、前記教示情報を記憶する記憶部と、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
このロボット教示装置によれば、ロボットに動作を教示するために、まず撮影部によって、ワークの撮像を取得し、次いで、検出部によって、取得した撮像からマーカーを検出する。このマーカーは、ロボットが作業の動作を行なうワークの側に配置されていて、該作業を行なうためのロボットの動作を示す教示情報を含んでいる。教示情報とは、例えば、ワークへねじ等の部材を取り付ける作業の場合、ワークの取付穴に対し、ねじをどの方向からどのくらいのトルクで締め付けるか等を示す情報である。解析部は、この教示情報を、マーカーを解析することによって取得する。そして、記憶部は、該教示情報をロボットに係る記憶装置に記憶する。このように、ロボット教示装置は、ロボットの位置や姿勢に関する形態情報と、ロボットがその位置およびその姿勢で行なう動作に関する動作情報と、を、ワークに配置されたマーカーから一括して取得する。そのため、従来のように、別々に取得した形態情報および動作情報の整合性を図る必要がほとんどない。また、ロボットへの教示情報の変更も、マーカーを変更するだけで可能となり、変更したマーカーをロボット教示装置が取得することにより、容易に行なえるようになる。そのため、教示情報において、その変更の迅速化を図ることが可能である。
【0012】
[適用例4]本適用例に係るプログラムは、ワークに対して行なう作業に関わる動作をロボットへ教示する制御を実行するためのものであって、前記ロボットに備えられた撮影装置によって、マーカーを有する前記ワークの撮像を取得する撮影ステップと、前記撮像から前記マーカーを検出する検出ステップと、前記マーカーを解析して、前記ロボットが前記動作をするための教示情報を取得する解析ステップと、前記教示情報を記憶する記憶ステップと、を前記ロボットへ教示する、ことを特徴とする。
【0013】
このプログラムによれば、ロボットに動作を教示するために、まず撮影ステップにおいて、ワークの撮像を取得し、次いで、検出ステップにおいて、取得した撮像からマーカーを検出する。このマーカーは、ロボットが作業の動作を行なうワークの側に配置されていて、該作業を行なうためのロボットの動作を示す教示情報を含んでいる。教示情報とは、例えば、ワークへねじ等の部材を取り付ける作業の場合、ワークの取付穴に対し、ねじをどの方向からどのくらいのトルクで締め付けるか等を示す情報である。解析ステップでは、この教示情報を、マーカーを解析することによって取得する。そして、記憶ステップにおいて、該教示情報をロボットに係る記憶装置に記憶する。このように、プログラムでは、ロボットの位置や姿勢に関する形態情報と、ロボットがその位置およびその姿勢で行なう動作に関する動作情報と、を、ワークに配置されたマーカーから一括して取得してプログラムへ組み込む。そのため、従来のように、別々に取得した形態情報および動作情報の整合性を図る必要がほとんどない。また、ロボットへの教示情報の変更も、マーカーを変更することによりプログラムへ組み込めるため、容易に行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ロボットへの教示の一形態に係る構成例を示す斜視図。
【図2】ロボットの教示装置に係る構成を示すブロック図。
【図3】ロボットへの教示手順を示すフローチャート。
【図4】(a)ワークへカメラを移動させる状態を示す斜視図、(b)マーカー情報の取得を示す斜視図。
【図5】(a)ねじの把持状態を示す斜視図、(b)ねじの取付部への移動状態を示す斜視図、(c)ねじの取付状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のロボット教示方法、ロボット教示装置およびプログラムにおける好適な一例について、添付図面を参照して説明する。
(実施形態)
【0016】
図1は、ロボットへの教示の一形態に係る構成例を示す斜視図である。図1は、ワーク10へ、ねじ21またはねじ22の部材を取り付ける作業を、ロボット1へ教示する場合を一例として示している。このロボット1は、直線状のアーム部3と、アーム部3の回動動作の支点である関節部2と、支持部7と、を有し、支持部7から順に、関節部2およびアーム部3を一組として三組が延伸している構成となっている。また、ロボット1は、支持部7から最遠位置のアーム部3の先端に、3本の指からなり部材を把持するための把持部5を有している。つまり、ロボット1は、関節部2およびアーム部3により自在な動作が可能な、いわゆる多関節ロボットである。さらに、ロボット1は、支持部7に隣接して設けられロボット1の動作を制御するためのロボット制御装置4と、ロボット制御装置4に接続している教示部8と、把持部5が設けられているアーム部3に配置されたカメラ(撮影装置)6と、を有している。このカメラ6は、取り付けられているアーム部3の先端方向を撮影するように配置されている。
【0017】
ロボット1が動作を行なう対象であるワーク10は、ねじ21,22を取り付ける作業が行なわれる位置である取付部11と、取付部11へ、ねじ21,22を取り付ける動作をロボット1へ教示するための情報である、教示情報を示す二次元コードを有するマーカー15と、を備えている。実作業の場合、ワーク10は、ベルトコンベアー12によって、順次、作業位置へ正確に搬送されるようになっている。また、ねじ21,22は、パーツフィーダー(不図示)により整列した状態で、供給部A,Bの所定位置にそれぞれ並べられている。これらワーク10および供給部A,Bは、ロボット1の作業可能な範囲内に配置されている。
【0018】
ここで、教示部8は、いわゆるティーチングペンダントであって、ロボット1に対し、ワーク10の取付部11へねじ21,22を取り付ける作業に関わる動作の教示を補助的に行なうためのものである。教示部8は、各種データやカメラ6による撮像等を表示するための液晶表示部8aと、データ等を入力するための操作部8bと、ロボット制御装置4へ接続するためのケーブル8cと、を有していて、ロボット制御装置4と共にロボット教示装置として機能する。また、マーカー15は、ワーク10の取付部11の近傍に印刷された二次元コードであって、二次元コードには、ねじ21,22を取付部11へ取り付ける作業に関わる、ロボット1の動作を教示するための教示情報が記されている。また、教示部8は、ロボット制御装置4を介して、関節部2、アーム部3およびカメラ6を制御し、カメラ6で撮影したマーカー15の撮像を解析して取得した、教示情報を得るために機能する。これら一連の教示方法については、図3を参照して後述する。
【0019】
そして、マーカー15の有する二次元コードは、水平方向および垂直方向の二次元方向に情報を持つコードであって、例えば一次元コードであるバーコード等と比較すると、少面積の中に多大な情報量を持つことが可能である。また、二次元コードは、漢字、かな、英字、数字およびバイナリーデータ等を扱うことができる。本実施形態において、二次元コードは、教示情報として、取付部11に取り付けるのは供給部Aに供されているねじ21である、という部材のデータや、ワーク10の上面に形成されている取付部11に、ねじ21を取り付ける、という取り付け位置を示すデータや、取付部11が該上面に対して垂直方向のねじ穴である、という取り付け方向を示すデータや、ねじ21を右方向に回転させて、例えば、トルク5N・mで締める、という取り付け方法のデータ等を含んでいる。
【0020】
次に、ロボット1における動作の教示を制御し、教示部8とロボット制御装置4とから成って機能するロボット教示装置の構成について説明する。図2は、ロボットの教示装置の構成を示すブロック図である。図2に示すロボット1は、厳密には、ロボット駆動に関わる関節部2、アーム部3および把持部5を指している。図2を参照して、ロボット教示装置のロボット制御装置4は、マーカー15を含むワーク10の撮像を取得するためにカメラ6の制御をするカメラ制御部(撮影部)41と、該撮像を解析して教示情報を取得するマーカー情報解析部(解析部)42と、ロボット1の動作を制御するロボット駆動制御部43と、教示部8との接続をするための入出力インターフェース44と、を有している。そして、ロボット制御装置4は、ロボット駆動制御部43が参照してロボット1を制御するためのプログラム等が記憶されているROM(Read Only Memory)47と、カメラ6が撮影したワーク10の撮像および撮像に含まれているマーカー15から取得した教示情報を一時的に記憶しておくRAM(Random Access Memory)46と、ROM47に記憶されているプログラム等の情報に基づきカメラ制御部41、マーカー情報解析部42およびロボット駆動制御部43の制御を実行するCPU(Central Processing Unit)45と、を有している。なお、ROM47は、いわゆるフラッシュメモリーであって、ロボット1への教示がなされた後、記憶部として教示情報を記憶する。
【0021】
以上のようなロボット1、ねじ21,22、ワーク10および教示部8による構成において、ねじ21、または、ねじ22のいずれかをワーク10へ取り付ける締付作業を一例として取り上げ、この締付作業をロボットに教示する場合の具体的手順を説明する。図3は、ロボットへの教示手順を示すフローチャートである。そして、図4(a)は、ワークへカメラを移動させる状態を示す斜視図、図4(b)は、マーカー情報の取得を示す斜視図である。図3に示すフローチャートは、ロボット教示部である教示部8およびロボット制御装置4が、ロボット1の関節部2、アーム部3、把持部5およびカメラ6を制御し、ロボット1へ締付作業に関わる動作の教示をするステップを示している。また、図4は、フローチャートの主要なステップにおけるロボット1への教示状態を示している。
【0022】
まず、ステップS1において、ワーク10の近傍へ移動する。詳細には、教示部8に入力されたワーク10の位置情報およびロボット1への指示情報に基づき、ロボット制御装置4が関節部2およびアーム部3を制御して、アーム部3に取り付けられているカメラ6をワーク10の近傍まで移動させる。ワーク10の位置情報は、所定位置にあるワーク10の位置を座標値で示した情報であり、指示情報は、ワーク10へカメラ6を移動するための命令情報である。所定位置へ移動したカメラ6は、図4(a)に示すように、ワーク10の方向へ向いており、ワーク10の取付部11およびマーカー15と対面するように位置した状態となっている。この場合、カメラ6が、取付部11の近傍に印刷されているマーカー15を含む撮像を得ることが可能な、好ましい位置に移動しているか否かは、教示部8の液晶表示部8aで確認することができる。そして、カメラ6がワーク10の近傍へ移動したと、CPU45が判断した後、ステップS2へ進む。
【0023】
ステップS2において、カメラ撮影を行なう。この撮影は、ワーク10のほぼ全体を対象にして、教示部8に入力された撮影の指示に基づき、カメラ制御部41がカメラ6を制御することにより行なわれる。このカメラ6によれば、図4(b)に示すように、ワーク10の方向へ向いて位置しており、マーカー15を含むワーク10の撮像を確実に得ることができる。カメラ6で撮影した撮像は、RAM46へ一時的に記憶される。このステップS2は、撮影ステップに該当する。そして、撮影した撮像を取得した後、ステップS3へ進む。
【0024】
ステップS3において、マーカー15を認識したか否かを判断する。これは、CPU45が、検出部としてRAM46に記憶した撮像を分析し、ワーク10に印刷されているべきマーカー15が検出されたかどうかを判断することにより行なわれる。このステップS3は、検出ステップに該当する。そして、マーカー15が検出されれば、ステップS4へ進み、一方、マーカー15が検出されなければ、フローを終了する。
【0025】
マーカー15が検出されると、ステップS4において、マーカー15の情報を取得する。これは、教示部8の指示により、マーカー情報解析部42が、RAM46に記憶した撮像に含まれるマーカー15から、締付作業に係わる動作をロボット1に教示するための教示情報が含まれる、二次元コードを認識することにより取得される。マーカー15の情報を取得後、ステップS5へ進む。
【0026】
ステップS5において、マーカー15の情報に基づいて教示情報を取得する。教示情報は、マーカー情報解析部42が、マーカー15の検出に続いてマーカー15の二次元コードを解析することにより、取得される。この教示情報については既述したが、ワーク10へ取り付ける部材が、ねじ21であることと、ねじ21をワーク10の取付部11へ取り付けることと、ねじ21を垂直方向に取付部11へ挿入することと、ねじ21を右方向に回転させて、例えば、トルク5N・mで締め付けること等の取り付けに係る情報、およびこれら情報によりロボット1が行なう動作に関する動作情報が含まれている。このステップS5とステップS4とは、解析ステップに該当する。マーカー情報解析部42により教示情報を取得した後、ステップS6へ進む。
【0027】
ステップS6において、教示情報を記憶する。これは、図4(b)に示すように、教示部8の指示に基づき、CPU45が、ROM47に記憶されているロボット1の制御のためのプログラムへ、取得した教示情報を組み込んで記憶することにより行われる。これにより、ロボット制御装置4は、関節部2、アーム部3および把持部5を制御して、ねじ21をワーク10の取付部11へ取り付ける締付作業を実行することが可能となる。このステップS6は、記憶ステップに該当する。教示情報の記憶後、ステップS7へ進む。
【0028】
ステップS7において、ロボット動作の確認を行う。これは、ロボット制御装置4が、教示部8と協同して取得した教示情報に基づいて、ロボット1に締付作業に関わる動作を実行させ、締付作業が正しく実行されるか否かを確認することにより行われる。以下に、この締付作業の確認について説明する。図5(a)は、ねじの把持状態を示す斜視図、図5(b)は、ねじの取付部への移動状態を示す斜視図、図5(c)は、ねじの取付状態を示す斜視図である。
【0029】
まず、図5(a)に示すように、ロボット制御装置4のロボット駆動制御部43(図2)が、教示情報である部材のデータを基に、ねじ21を部材として認識し、ねじ21を把持する。この場合、ねじ21は、供給部Aに整列しており、ロボット駆動制御部43は、ロボット1の関節部2およびアーム部3を制御して、把持部5を供給部Aのねじ21の位置まで移動させる。この制御は、教示情報から得られた、ねじ21の位置を示す座標値に基づいて、関節部2およびアーム部3が把持部5を移動させることにより行なわれる。そして、把持部5の3本の指は、ねじ21を掴んで供給部Aから抜き出す。
【0030】
次に、図5(b)に示すように、把持部5は、教示情報である取り付け位置を示すデータを基に、ねじ21を把持してワーク10の取付部11へ移動する。これは、把持部5がねじ21を把持した状態を維持しつつ、ロボット駆動制御部43が関節部2およびアーム部3を制御して、把持部5の把持しているねじ21を、取付部11の位置まで、運ぶことにより行われる。この場合、ワーク10の有する取付部11は1箇所であり、ねじ21を取付部11へ移動させるための、取付部11の位置情報である座標値は、教示情報から取得されてROM47のプログラムへ組み込まれている。
【0031】
そして、図5(c)に示すように、把持部5は、教示情報である取り付け方向を示すデータおよび取り付け方法のデータを基に、取付部11へねじ21の取り付けを行なう。これは、ロボット駆動制御部43が把持部5を制御して、ねじ21を右回転させながら、ねじ21の先端部から取付部11へ挿入していくことにより行なわれる。また、この挿入において、把持部5は、ねじ21を取付部11に対して、トルク5N・mの強さで締め付ける。これら取り付け方向および方法に係るデータは、教示情報から取得されてROM47のプログラムへ組み込まれている。このようにして、マーカー15から取得した教示情報に基づいて、ロボット1の締付作業に関わる動作の確認が行われる。これらステップS1からステップS7の各ステップを経て、フローが終了する。以降、ロボット1に対し、実行する動作が締付作業であることを指示するだけで、ロボット1は、教示情報に基づき締付作業に関わる動作を行なう。
【0032】
以上説明した実施形態におけるロボット教示方法の主要な効果としては、締付作業におけるロボット1の動作に係わる情報を、ワーク10に印刷されているマーカー15から教示情報として取得するため、ロボット制御装置4が事前に記憶しておかなくてはならないプログラムの容量を軽減できることが挙げられる。さらに、ロボット1の動作を変更したい場合、ワーク10へ印刷するマーカー15を変更することによって容易に行なうことができ、ロボット制御装置4のROM47のプログラムを変更する必要がほとんどないことも挙げられる。つまり、教示情報には、従来における形態情報と動作情報とが一緒に含まれており、従来のように、これら形態情報と動作情報との整合性を図らなくても良い、という大きな効果がある。これは、ロボット教示方法が、撮影ステップ、検出ステップ、解析ステップおよび記憶ステップを経ることにより、部材を取り付けるワーク10に印刷されているマーカー15から、部材が何であるかを示す部材のデータや部材のワーク10への取り付け方法等を含む、教示情報を取得してROM47のプログラムへ組み込むことに、特徴を有することによる。そして、この教示情報を含むプログラムに基づいて、ロボット1は、ステップS7に示すように、ワーク10へ部材であるねじ21を取り付ける動作を確実に行なうことができる。
【0033】
また、ロボット教示方法、ロボット教示装置およびプログラムは、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0034】
(変形例1)ロボット教示方法において、教示情報は、マーカー15の有する二次元コードを解析して取得する方法であるが、この方法に限定されることはない。例えば、二次元コードの代わりにバーコード等の他の手段による方法であっても良い。あるいは、マーカー15は、ロボット制御装置4内等の参照すべき参照プログラムやデータを指定するのみの設定であっても良い。ロボット制御装置4が事前に記憶しなければならないプログラム等の容量が本実施形態より膨大になってしまうが、ロボット1は、当該プログラムやデータに基づいて作業をすることができる。
【0035】
(変形例2)マーカー15は、ワーク10に印刷されている形態であるが、マーカー15がワーク10への印刷ではなく、ラベル状になっていて、ワーク10へ貼付する形態等であっても良い。これによれば、教示情報の変更や更新をする場合、マーカー15の印刷に比べて、より迅速に行なうことができる。
【0036】
(変形例3)カメラ6は、ロボット1のアーム部3に設けられている構成に限定されず、必要時に把持部5が他所から運んできて、撮影をする方法であっても良い。但し、カメラ6は、ロボット制御装置4の管理下にあることが好ましい。
【0037】
(変形例4)ロボット1は、関節部2およびアーム部3を一組として三組を有する構成であるが、三組以外の他の構成であっても良い。例えば、ロボット1が、6軸または7軸等の構成を有する多関節ロボットや、双腕ロボット等のような、複数のアームを有するロボットであっても良い。即ち、ロボット教示方法は、いろいろな作業に関わる動作を行なうために、種々の機構形態で構成されたロボットに対しても、有効に適用することができる。また、ねじ21,22は、供給部A,Bに整列して並べられているが、ロボット1が、箱等にランダムに収められている部材の中から、ねじ21,22のそれぞれの向き等を判断して、同一姿勢で把持する方法であっても良い。さらに、ワーク10は、ベルトコンベアー12で搬送される構成に限定されない。
【0038】
(変形例5)ロボット1の把持部5は、3本の指からなる構成であるが、これに限定されない。把持部5は、指が3本以外の本数であっても良く、例えば、人間の手に近いフレキシブルで多目的な5本指の把持部構成や、特定の部材の把持に特化したグリッパーのような把持部構成等であっても良い。また、把持部5は、部材の単純移動等のために、真空引きや磁力等により部材を吸着する形態であっても良い。
【0039】
(変形例6)ロボット1への教示は、ロボット制御装置4に教示部8を接続して行っているが、教示部8を用いずに、作業者がアーム部3を直接動かして位置移動させる方法であってもよい。これによれば、より直感的にロボット1の教示が行える。この場合、ロボット制御装置4がロボット教示装置として機能することになる。また、教示部8は、ティーチングペンダントに限定されるものではなく、PC(パーソナルコンピューター)等であっても良い。
【0040】
(変形例7)図3のフローチャートにおいて、解析ステップであるステップS4およびステップS5では、教示情報として、ワーク10へ取り付ける部材がねじ21であることや、ねじ21の取り付け方法等の詳細を含めて取得しているが、この取得方法に限定されず、例えば、解析ステップでは、部材が、ねじ21であることのみを教示情報として取得し、ねじ21の取り付け方法等の詳細は、ロボット制御装置4に記憶している情報から取得する方法等であっても良い。これによれば、情報量の少ないバーコード等であっても、教示情報を有するマーカー15として活用することができる。
【0041】
(変形例8)図3のフローチャートにおいて、解析ステップであるステップS4およびステップS5は、まとめて1つのステップにしても良い。また、撮影ステップ(ステップS2)、検出ステップ(ステップS3)および解析ステップ(ステップS4,S5)のそれぞれにおける実行内容は、ステップS7の記憶ステップにおいて教示情報の記憶ができる形態となっていれば、実施形態に限定されるものではない。
【0042】
(変形例9)図3のフローチャートは、教示情報をROM47へ記憶するステップS6の後のステップS7において、ロボット1の動作の確認をしているが、この動作確認をステップS6の前に行い、ロボット1の正常な動作を確認してから教示情報をROM47へ記憶しても良い。また、ロボット教示方法のフローチャートには、ステップS7を含まなくても良い。
【0043】
(変形例10)実施形態では、マーカー15の教示情報に基づき、1つの取付部11へ、ねじ21を取り付ける作業を、ロボット1へ教示する単純な例について説明したが、複数の取付部へ異なる部材を取り付けるような、複雑な作業の教示にも、ロボット教示方法は十分に対応することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…ロボット、2…関節部、3…アーム部、4…ロボット制御装置、5…把持部、6…撮影装置としてのカメラ、8…教示部、10…ワーク、11…取付部、15…マーカー、21…ねじ、22…ねじ、41…カメラ制御部、42…マーカー情報解析部、43…ロボット駆動制御部、47…(プログラム記憶の)ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して行なう作業に関わる動作をロボットへ教示するためのロボット教示方法であって、
前記ロボットに備えられた撮影装置によって、マーカーを有する前記ワークの撮像を取得する撮影ステップと、
前記撮像から前記マーカーを検出する検出ステップと、
前記マーカーを解析して、前記ロボットが前記動作をするための教示情報を取得する解析ステップと、
前記教示情報を記憶する記憶ステップと、を有する、ことを特徴とするロボット教示方法。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット教示方法において、
前記マーカーは、前記ワークへの前記作業が行なわれる位置の近傍に配置され、前記教示情報を含む二次元コードを有している、ことを特徴とするロボット教示方法。
【請求項3】
ワークに対して行なう作業に関わる動作をロボットへ教示するためのロボット教示装置であって、
前記ロボットに備えられた撮影装置によって、マーカーを有する前記ワークの撮像を取得する撮影部と、
前記撮像から前記マーカーを検出する検出部と、
前記マーカーを解析して、前記ロボットが前記動作をするための教示情報を取得する解析部と、
前記教示情報を記憶する記憶部と、を有する、ことを特徴とするロボット教示装置。
【請求項4】
ワークに対して行なう作業に関わる動作をロボットへ教示する制御を実行するためのプログラムであって、
前記ロボットに備えられた撮影装置によって、マーカーを有する前記ワークの撮像を取得する撮影ステップと、
前記撮像から前記マーカーを検出する検出ステップと、
前記マーカーを解析して、前記ロボットが前記動作をするための教示情報を取得する解析ステップと、
前記教示情報を記憶する記憶ステップと、を前記ロボットへ教示する、ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228757(P2012−228757A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99242(P2011−99242)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】