説明

ロータリセンサ

【課題】 360°以上の回転量を検出することが可能なロータリセンサを提供する。
【解決手段】 基準体に対して連結されるコイル11の巻回軸と、検出対象に対して連結され基準体に対する検出対象の回動に伴ってコイル11への挿入量を変化させるコア21とを、それぞれヘリカル形状とした。コイル11の巻回軸とコア21とがそれぞれ円弧形状となっている場合と違い、コア21のコイル11への挿入量の変化に伴ってコア21がコイル11に対して回転移動だけでなく回転軸方向への平行移動も行う。これにより、コイル11に対するコア21の挿入量を小さくしていっても、コア21におけるコイル11への挿入方向の反対側の一端がコイル11に干渉することがないから、360°以上の回転量の検出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基準体と基準体に対して回転可能な検出対象とにそれぞれ連結され、基準体に対する検出対象の回転量を検出するロータリセンサが提供されている。基準体は例えば機器の本体であり、検出対象は例えば機器の操作用のレバーやハンドルである。
【0003】
この種のロータリセンサとして、例えば図4及び図5に示すものがある(例えば、特許文献1参照)。このロータリセンサは、円弧形状であって軸方向の一面に溝10aを有し中心軸を基準体(図示せず)に対する検出対象(図示せず)の回転軸に合わせて基準体に対して固定されるボビン10と、ボビン10に巻回されることにより巻回軸が円弧形状に湾曲した検出コイル11とからなる固定側ブロック1と、円柱形状の本体部20aと本体部20aの外周面から径方向に突設された腕部20bとを有し固定側ブロック1に対してボビン10及びコイル11の巻回軸の中心軸周りに回転可能に連結されるとともに基準体に対する検出対象の回転に連動するように検出対象に対して連結された可動ベース20と、磁性材料からなりボビン10の溝10a及びコイル11に挿抜可能な円弧形状であって周方向の一端部が可動ベース20の腕部20bに対して固定され可動ベース20の回転に伴ってボビン10への挿入量すなわちコイル11への挿入量を変化させるコア21とを有する可動ブロック2とを備える。すなわち、基準体に対する検出対象の回転に伴ってコイル11へのコア21の挿入量が変化し、これによるコイル11のインピーダンスの変化を検出することにより、固定側ブロック1に対する可動側ブロック2の回転量θ(すなわち基準体に対する検出対象の回転量)の検出が可能となっている。
【0004】
コイル11のインピーダンスの変化は、例えば図6のような構成によって検出される。図6の構成では、コイル11の一端はグランドに接続され、他端は、コイル11に対して電流Idを出力する通電部3と、コイル11の両端電圧Vsに基いてコイル11のインピーダンスを検出して検出されたインピーダンスに応じた(すなわち基準体に対する検出対象の回転量に応じた)電圧Voutを出力する信号処理回路4とに接続されている。通電部3は、交流電流Iacを出力する発振回路3aと、発振回路3aが出力した交流電流Iacに一定の直流電流Idcを重畳してコイル11へ出力するV−I回路3bとからなる。上記の発振回路3a、V−I回路3b、及び信号処理回路4はそれぞれ周知技術で実現可能であるので、詳細な図示並びに説明は省略する。
【特許文献1】特開2004−29002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のロータリセンサでは、可動側ブロック2を固定側ブロック1に対して図4での時計回りに回転させ、コイル11に対するコア21の挿入量を小さくしていったときに、やがて可動ベース20の腕部20bにおいてコア21が突出した面の反対面とボビン10とが干渉(当接)するため、固定ブロック1に対する可動ブロック2の可動範囲すなわちコイル11に対するコア21の可動範囲は180°より小さくなっており、回転量を変換するための歯車等のリンクを可動ブロック2と検出対象との間に介在させなければ180°以上の回転量を検出することはできなかった。上記の例では可動ベース20の腕部20bがボビン10に当接することにより検出可能な回転量が制限されているが、可動ベース20やボビン10の形状をどのように変更しても、コイル11の巻回軸やコア21が上記のように円弧形状である限りは、コア21がコイル11に干渉することにより、検出可能な回転量の上限は180°以下となってしまう。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、360°以上の回転量を検出することが可能なロータリセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、基準体と基準体に対して回転可能な検出対象とにそれぞれ連結され、基準体に対する検出対象の回転量を検出するロータリセンサであって、基準体に対して固定されるコイルと、磁性体からなり少なくとも一部がコイルに挿入されるとともに検出対象に対して機械的に連結され基準体に対する検出対象の回転に連動してコイルに対して回転することによりコイルに対する挿入量を変化させるコアと、コイルのインピーダンスを検出し検出されたインピーダンスに基いて基準体に対する検出対象の回転量を検出する検出回路とを備え、コアは、コイルに対するコアの回転軸を中心軸とするヘリカル形状であることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、コアがヘリカル形状となっているので、コイルの巻回軸とコアとがそれぞれ円弧形状となっている場合と違い、コアのコイルへの挿入量の変化に伴ってコアがコイルに対して回転移動だけでなく回転軸方向への平行移動も行うことにより、コイルに対するコアの挿入量を小さくしていっても、コアにおけるコイルへの挿入方向の反対側の一端がコイルに干渉することがないから、360°以上の回転量の検出が可能となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、コアはコイルよりも長く、コアにおいて、コイルへの挿入量がコイルの全長に至るまでコイルに挿入されない部位と、コイルへの挿入方向に限界まで変位したときにコイルから突出する部位との少なくとも一方には、コイルへの挿入方向に直交する断面での断面形状がコイルへの挿入方向に向かって変化する部位が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、コイルへのコアの挿入量がコイルの全長に至った後にも、コアの変位に伴ってコイル内のコアの体積が変動することになるから、コイルのインピーダンスが変化する。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、コイルへの挿入方向に直交する断面でのコアの断面形状は、短手方向をコイルに対するコアの回転軸方向とした矩形状であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、コイルへの挿入方向に直交する断面でのコアの断面形状が長手方向をコイルに対するコアの回転軸方向とした矩形状である場合に比べ、コアのコイルに対する回転軸方向での寸法を小さくしたい場合に適する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、コイルに挿入されるコアがヘリカル形状となっているので、コイルの巻回軸とコアとがそれぞれ円弧形状となっている場合と違い、コアのコイルへの挿入量の変化に伴ってコアがコイルに対して回転移動だけでなく回転軸方向への平行移動も行うことにより、コイルに対するコアの挿入量を小さくしていっても、コアにおけるコイルへの挿入方向の反対側の一端がコイルに干渉することがないから、360°以上の回転量の検出が可能となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、コアはコイルよりも長く、コアにおいて、コイルへの挿入量がコイルの全長に至るまでコイルに挿入されない部位と、コイルへの挿入方向に限界まで変位したときにコイルから突出する部位との少なくとも一方には、コイルへの挿入方向に直交する断面での断面形状がコイルへの挿入方向に向かって変化する部位が設けられているので、コイルへのコアの挿入量がコイルの全長に至った後にも、コアの変位に伴ってコイル内のコアの体積が変動することになるから、コイルのインピーダンスが変化する。
【0015】
請求項3の発明によれば、コイルへの挿入方向に直交する断面でのコアの断面形状は、短手方向をコイルに対するコアの回転軸方向とした矩形状であるので、コイルへの挿入方向に直交する断面でのコアの断面形状が長手方向をコイルに対するコアの回転軸方向とした矩形状である場合に比べ、コアのコイルに対する回転軸方向での寸法を小さくしたい場合に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態は、巻回軸がヘリカル形状となったコイル11と、同様にヘリカル形状であってコイル11への挿入量を変化させるようにコイル11に対して変位可能なコア21とを備える。つまり、上記の各ヘリカル形状の中心軸は、それぞれ、コイル11に対するコア21の回転軸と一致している。このようなコイル11は、例えばヘリカル管形状であってコア21が挿通されるボビン(図示せず)に巻線を巻回することによって形成可能である。コイル11は基準体に対して固定され、コア21は、基準体に対する検出対象の回転に連動して上記ヘリカル形状の中心軸周りに回転可能となるように、且つ、上記ヘリカル形状の軸方向(図1での左右方向)には検出対象に対して自由に平行移動可能となるように、検出対象に対し適宜のリンクを介して機械的に連結される。コイル11のインピーダンスの変化は、従来例と同様に、図6の構成によって検出可能である。図6の構成を用いる場合、通電部3と信号処理回路4とが請求項における検出回路を構成する。
【0018】
上記構成によれば、コイル11の巻回軸及びコア21がそれぞれヘリカル形状となっていることにより、従来例のようにコイル11の巻回軸とコア21とがそれぞれ円弧形状となっている場合と違い、コイル11へのコア21の挿入量の変化に伴ってコア21がコイル11に対して回転移動だけでなく回転軸方向(つまりヘリカル形状の軸方向であり、図1での左右方向)への平行移動も行うので、コイル11に対するコア21の挿入量を小さくしていっても、コア21におけるコイル11への挿入方向の反対側の一端がコイル11に干渉することがないから、360°以上の回転量を検出可能とすることができる。
【0019】
さらに、例えば図2に示すように、コイル11に対するコア21の変位方向においてコア21がコイル11よりも長い場合には、コア21において、コイル11への挿入方向に直交する断面(すなわち上記ヘリカル形状の中心軸を含む断面)での断面積を、コイル11への挿入方向に向かって変化させてもよい。この構成を採用すれば、コイル11へのコア21の挿入量がコイルの全長に至った後にも、コア21の変位に伴ってコイル11内のコア21の体積が変動することになるから、コイル11のインピーダンスが変化する。つまり、コイル11の全長の割に広い範囲の角度を検出することができる。また、この場合には、コイル11の巻回軸をヘリカル形状としなくとも、360°以上の回転を検出可能とすることができる。なお、図2は、コア21の全長とコイル11の全長との関係を分かり易くするために、コイル11に対するコア21の変位方向(挿抜方向)を、ヘリカル形状ではなく直線形状に描いている。また、図2の例では、コア21の全長がコイル11の全長に対して2倍以上あるため、コア21の全体が、コイル11への挿入量がコイル11の全長に至るまでコイル11に挿入されない部位(以下、「後側突出部」と呼ぶ。)と、コイル11への挿入方向に限界まで変位したときにコイル11から突出する部位(以下、「前側突出部」と呼ぶ。)との一方(両端部)又は両方(中央部)となっており、コア21の全体の上記断面積をコア21の一端から他端に向かって徐々に小さくしている。しかし、実際には、上記断面積はコア21全体について変化させる必要はなく、後側突出部と前側突出部との少なくとも一方において上記のように断面積をコイル11への挿入方向に向かって変化させるようにすれば、上記の効果はいうことができる。
【0020】
なお、図1や図2の例では、コイル11への挿入方向に直交する断面(つまり上記ヘリカル形状の中心軸を含む断面)でのコア21の断面形状を円形状としているが、コア21の形状は上記に限られない。例えば、図3に示すように、コア21の上記断面形状を、コイル11に対するコア21の回転軸方向(すなわちコイル11及びコア21のヘリカル形状の軸方向であり、図1での左右方向)を短手方向とする矩形状とすれば、コア21の断面積の割に、上記ヘリカル形状の軸方向でのコア21やコイル11の寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図2】同上の別の形態を示す説明図である。
【図3】同上の別の形態のコアを示す一部破断した斜視図である。
【図4】従来例を示す平面図である。
【図5】図5のA−A’断面の要部を示す断面図である。
【図6】コイルのインピーダンス変化を検出する構成の一例を示す回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
3 通電部
4 信号処理回路
11 コイル
21 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準体と基準体に対して回転可能な検出対象とにそれぞれ連結され、基準体に対する検出対象の回転量を検出するロータリセンサであって、
基準体に対して固定されるコイルと、
磁性体からなり少なくとも一部がコイルに挿入されるとともに検出対象に対して機械的に連結され基準体に対する検出対象の回転に連動してコイルに対して回転することによりコイルに対する挿入量を変化させるコアと、
コイルのインピーダンスを検出し検出されたインピーダンスに基いて基準体に対する検出対象の回転量を検出する検出回路とを備え、
コアは、コイルに対するコアの回転軸を中心軸とするヘリカル形状であることを特徴とするロータリセンサ。
【請求項2】
コアはコイルよりも長く、
コアにおいて、コイルへの挿入量がコイルの全長に至るまでコイルに挿入されない部位と、コイルへの挿入方向に限界まで変位したときにコイルから突出する部位との少なくとも一方には、コイルへの挿入方向に直交する断面での断面形状がコイルへの挿入方向に向かって変化する部位が設けられていることを特徴とする請求項1記載のロータリセンサ。
【請求項3】
コイルへの挿入方向に直交する断面でのコアの断面形状は、短手方向をコイルに対するコアの回転軸方向とした矩形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロータリセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−175106(P2009−175106A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16898(P2008−16898)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】