説明

ロータリダンパ

【課題】充分な減衰力を発揮しつつも小型化することが可能なロータリダンパを提供することである。
【解決手段】本発明の課題解決手段は、シャフト1と、シャフト1の外周に設けた複数のベーン2と、シャフト12を周方向への回転を許容しつつ軸支するとともに内部にベーン2を収容するケーシング3と、ケーシング3内に設けられてシャフト1のベーン2,2間のそれぞれに配置される複数の隔壁部材4と、ケーシング3内であって隔壁部材4間に形成される空間Lをベーン2で仕切って形成される一方室R1と他方室R2とを備えたロータリダンパDにおいて、液体の流れに抵抗を与える補償通路5を介して一方室R1と他方室R2の少なくとも一方に連通される温度補償室Rを任意の隔壁部材4内に設け、温度補償室R内に内部に気体が封入されるアキュムレータ6を収容した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリダンパの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリダンパにあっては、シャフトと、シャフトの外周に設けた複数のベーンと、シャフトを周方向への回転を許容しつつ軸支する一対のサイドパネルと、これらのサイドパネルで挟持されて内部にベーンを収容するケース部材と、ケース部材の内周に設けられてシャフトのベーン間外周のそれぞれに摺接する複数の隔壁部材と、ケース部材内であってこれらの隔壁部材間に形成される空間をベーンで仕切って形成した一方室と他方室と、一方室と他方室とを連通する減衰通路とを備えて構成されている。
【0003】
そして、ロータリダンパは、たとえば、シャフトに外部から回転力が加わると、シャフトの回転に伴ってベーンが圧力室内で移動して一方室を縮小し、他方室を拡大するよう動作し、縮小される一方室から拡大される他方室へ移動する油の流れに減衰通路で抵抗を与えることで、シャフトの回転を抑制する減衰力を発揮するようになっている。
【0004】
このように、ロータリダンパでは、シャフトが回転してベーンが一方室と他方室を拡縮する構造を採用しているため、拡大側の室と縮小側の室の容積変化が等しいため、片ロッド直動型のダンパと異なり作動補償のためのリザーバや気室は不要である。しかしながら、ロータリダンパは、シャフトを揺動させる運動エネルギを熱エネルギに変換することで接続機器の振動を減衰させるため、連続してシャフトが揺動すると油温が上昇し、油の体積が変化する。そこで、この油の体積変化を補償するため、ロータリダンパは、ケース部材の側方に油温補償用の温度補償室を設けている。この温度補償室内には、フリーピストンが摺動自在に挿入されており、温度補償室を油室と気室とに区画し、油室を一方室と他方室とを連通する減衰通路に接続するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−82593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなロータリダンパでは、ケース部材の側方に温度補償室を設けなくてはならず、ロータリダンパが大きくなる。また、温度補償室の内周にフリーピストンを摺動自在に挿入していることから、内周面を滑らかに仕上げなくてはならず加工コストも嵩むといった問題がある。
【0007】
これを嫌って、たとえば、実開平3−110229号公報に開示されているように、一方室或いは他方室内に内部に気体を封入したゴム袋を収容して、当該ゴム袋内の気体の体積変化で上記温度補償をしようとする試みもある。このロータリダンパでは、温度補償室がなくなるためにその分ロータリダンパを小型化することができるものの、ゴム袋に直接的に一方室或いは他方室内の圧力が作用するので、ゴム袋内への気体封入圧を非常に高圧としておかないと、ロータリダンパの減衰力が不足したり、減衰力発生の応答性が悪化したりいった新たな問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、充分な減衰力を発揮しつつも小型化することが可能なロータリダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の課題解決手段は、シャフトと、上記シャフトの外周に設けた複数のベーンと、上記シャフトを周方向への回転を許容しつつ軸支するとともに内部に上記ベーンを収容するケーシングと、当該ケーシング内に設けられて上記シャフトのベーン間のそれぞれに配置される複数の隔壁部材と、上記ケーシング内であって上記隔壁部材間に形成される空間を上記ベーンで仕切って形成される一方室と他方室とを備えたロータリダンパにおいて、液体の流れに抵抗を与える補償通路を介して上記一方室と上記他方室の少なくとも一方に連通される温度補償室を任意の隔壁部材内に設け、当該温度補償室内に内部に気体が封入されるアキュムレータを収容したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロータリダンパによれば、充分な減衰力を発揮しつつも小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施の形態におけるロータリダンパの横断面図である。
【図2】一実施の形態におけるロータリダンパのAA縦断面図である。
【図3】一実施の形態のロータリダンパにおける隔壁部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態におけるロータリダンパDは、シャフト1と、シャフト1の外周に設けた二つのベーン2と、シャフト1を周方向への回転を許容しつつ軸支するとともに内部に各ベーン2を収容するケーシング3と、ケーシング3内に設けられてシャフト1のベーン2,2間のそれぞれに配置される二つの隔壁部材4と、ケーシング3内であって隔壁部材4,4間に形成される空間Lをベーン2で仕切って形成される一方室R1と他方室R2と、各隔壁部材4内に設けられて一方室R1と他方室R2の少なくとも一方に補償通路5を介して連通される温度補償室Rと、温度補償室R内に収容されて気体が内部に封入されるアキュムレータ6とを備えて構成されている。そして、このロータリダンパDは、シャフト1をケーシング3に対して周方向へ回転させると、このシャフト1の回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0013】
以下、このロータリダンパDの各部について詳細に説明する。まず、シャフト1は、先端に設けられて図示しない継手等への連結を可能とするセレーション1aと、途中に設けた他部よりも大径な拡径部1bと、当該拡径部1bの外周であって周方向に180度の位相をもって設けた二つのベーン2,2と、拡径部1bのベーン2,2間の側部から開口して反対側のベーン2,2間へ通じるとともに互いに軸方向へずれて交わらない二つの連通孔7,8とを備えている。なお、上記したところでは、図外の継手等への連結のためにセレーション1aを設けているが、これに限定されない。
【0014】
ケーシング3は、詳細には後述するが、筒状のケース本体9と、ケース本体9の図2中上下に積層固定されるサイドパネル10,11とを備えて構成されており、シャフト1は、サイドパネル10,11に回転自在に軸支されて、ベーン2,2は、ケーシング3内に収容されている。
【0015】
ベーン2は、先端に円弧状面を備えており、ケーシング3におけるサイドパネル10に摺接する図2中上端、ケーシング3におけるケース本体9の内面に摺接する先端、およびケーシング3におけるサイドパネル11に摺接する図2中下端にかけて、コ字状のシール12が装着されており、このシール12は、ケーシング3におけるケース本体9、サイドパネル10,11に摺接してベーン2、ケーシング3との間をシールしている。
【0016】
ケース本体9は、筒状とされており、その図2中上端に間隔を開けて設けた複数の螺子孔9aと、図2中下端に間隔を開けて設けた複数の螺子孔9bとを備えて構成されている。
【0017】
また、ケース本体9の内周には、図1に示すように、周方向に180度の位相をもって二つの凹部9c,9cが設けられており、この凹部9c,9cのそれぞれには、隔壁部材4が嵌合されている。
【0018】
サイドパネル10は、この実施の形態の場合、筒状でシャフト1の図2中上端が挿通されるシャフト保持部10aと、シャフト保持部10aの図2中下端外周に設けたフランジ状のキャップ部10bと、キャップ部10bに同一円周上に間隔を開けて設けた複数のボルト挿通孔10cとを備えている。また、シャフト保持部10aの内周には、シャフト1の図2中上方側に摺接する筒状のベアリング16、シャフト1の外周をシールする環状のシール部材17およびダストシール18が装着されている。サイドパネル10は、ケース本体9の図2中上方に積層されて、ボルト挿通孔10cに通したボルト21を螺子孔9aに螺着することで、これらが一体化される。なお、ボルト21は、強度上要求される数を用いればよく、ボルト21の数に対応する数のボルト挿通孔10cおよび螺子孔9aを設ければよい。
【0019】
他方のサイドパネル11は、この実施の形態の場合、有底筒状であってシャフト1の図2中下端が挿入されるシャフト保持部11aと、シャフト保持部11aの図2中上端外周に設けたフランジ状のキャップ部11bと、キャップ部11bに同一円周上に間隔を開けて設けた複数のボルト挿通孔11cとを備えている。また、シャフト保持部11aの内周には、シャフト1の図2中下端外周に摺接する筒状のベアリング19と、シャフト1の外周をシールする環状のシール部材20が装着されている。サイドパネル11は、ケース本体9の図2中下方に積層されて、ボルト挿通孔11cに通したボルト22を螺子孔9bに螺着することで、これらが一体化される。なお、ボルト22は、強度上要求される数を用いればよく、ボルト22の数に対応する数のボルト挿通孔11cおよび螺子孔9bを設ければよい。
【0020】
隔壁部材4は、図1から図3に示すように、箱型とされており、底面に相当してシャフト1の拡径部1bの外周であってベーン2,2間に対向するシャフト対向壁4aと、シャフト対向壁4aの周方向の両端各端から伸びてケース本体9の凹部9cに嵌合されて固定される二つの側壁4b,4cと、シャフト対向壁4aと側壁4b,4cに架け渡される上壁4dおよび下壁4eとを備えて構成されており、また、側壁4cには補償通路5が設けられている。また、上壁4dからシャフト対向壁4a、下壁4eへかけて凹部4fが形成されており、当該凹部4fには、シャフト1およびサイドパネル10,11に接してこれらをシールするコ字状のシール13が装着されている。なお、シャフト対向壁4aをシャフト1の拡径部1bの外周であってベーン2,2間に摺接させてもよい。
【0021】
そして、ケース本体9の図2中上方には、サイドパネル10が積層され、ケース本体9の図2中下方には、サイドパネル11が積層され、シャフト1をこれらケース本体9、サイドパネル10,11に挿通しつつ、これらを一体化すると、ケーシング3内が密閉される。また、シャフト1のベーン2,2間に配置される隔壁部材4,4によって、ケーシング3内に二つの扇状の空間Lが形成される。さらに、上記空間Lは、シャフト1に設けたベーン2によって、それぞれ、一方室R1と他方室R2とに区画され、たとえば、作動油等の液体が封入される。
【0022】
具体的には、一方室R1は、図1中では、シャフト1の軸から見てベーン2の左側に区画され、他方室R2は、シャフト1の軸から見てベーン2の右側に区画されており、シャフト1が図1中で時計回りに回転する場合、ベーン2によって各一方室R1が拡大されるとともに各他方室R2が縮小され、反対に、シャフト1が図1中で反時計回りに回転する場合、ベーン2によって各一方室R1が縮小されるとともに各他方室R2が拡大されるようになっている。
【0023】
そして、シャフト1の回転に伴って容積がともに拡大或いは縮小される一方室R1同士をシャフト1の連通孔7によって連通し、同じく、シャフト1の回転に伴って容積がともに拡大或いは縮小される他方室R2同士をシャフト1の連通孔8によって連通してある。また、連通孔7の開口位置は、シャフト1が回転しても一方室R1同士が連通孔7によって連通状態に維持されようベーン2の付根に設けてあり、連通孔8の開口位置もまた、シャフト1が回転しても他方室R2同士が連通孔8によって連通状態に維持されるようベーン2の付根に設けてある。
【0024】
そして、一方のベーン2には、一方室R1と他方室R2とを連通する一方減衰通路14が設けられており、他方のベーン2にも、一方室R1と他方室R2とを連通する他方減衰通路15が設けられている。
【0025】
そして、一方減衰通路14は、一方室R1と他方室R2とを連通する流路14aと、一方室R1から他方室R2へ向かう液体の流れのみを許容するとともにこの流れに抵抗を与える減衰弁14bとを備えて構成されている。他方減衰通路15は、他方室R2と一方室R1とを連通する流路15aと、他方室R2から一方室R1へ向かう液体の流れのみを許容するとともにこの流れに抵抗を与える減衰弁15bとを備えて構成されている。
【0026】
したがって、シャフト1が時計回りに回転して、ベーン2が他方室R2を圧縮すると、他方室R2から押し出された作動油は、減衰弁15bを通過し他方減衰通路15を通じて拡大する一方室R1へ移動することになり、この作動油の流れに減衰弁15bが抵抗を与えることで、他方室R2と一方室R1とに差圧を生じせしめて、上記シャフト1の回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0027】
他方、シャフト1が反時計回りに回転して、ベーン2が一方室R1を圧縮すると、一方室R1から押し出された作動油は、減衰弁14bを通過し一方減衰通路14を通じて拡大する他方室R2へ移動することになり、この作動油の流れに減衰弁14bが抵抗を与えることで、一方室R1と他方室R2とに差圧を生じせしめて、上記シャフト1の回転を抑制する減衰力を発揮する。
【0028】
この実施の形態では、一方減衰通路14における減衰弁14bが液体の流れに与える抵抗は、他方減衰通路15における減衰弁15bが液体の流れに与える抵抗よりも大きくなるように設定してある。そのため、シャフト1が一方室R1を圧縮する反時計回りに回転する場合の一方室R1の圧力と、シャフト1が他方室R2を圧縮する時計回りに回転する場合の他方室R2の圧力とを比較すると、シャフト1の回転速度が同じであれば、一方室R1の圧力の方が他方室R2の圧力よりも高くなるようになっている。
【0029】
なお、減衰弁14b,15bには、たとえば、リーフバルブ、ポペット弁や絞り弁を使用することができ、一方減衰通路14における減衰弁14bが液体の流れに与える抵抗は、他方減衰通路15における減衰弁15bが液体の流れに与える抵抗よりも大きくするには、減衰弁14bの弁開度や流路面積を減衰弁15bのそれよりも小さくなるように設定すればよい。
【0030】
温度補償室Rは、上記隔壁部材4内に形成されており、他方室R2に面する側壁4cに設けた補償通路5を介して他方室R2に連通されている。そして、この隔壁部材4内には、内部に所定圧で気体が封入されたアキュムレータ6が収容されている。この温度補償室R内であってアキュムレータ6外は、一方室R1および他方室R2内に充填されている液体と同様の液体が充填されていて液室23とされている。
【0031】
補償通路5は、具体的には、たとえば、オリフィス、チョークやその他のバルブといった通過する液体の流れに抵抗を与える抵抗要素を含んで構成され、本実施の形態では、オリフィスを備えた通路とされている。なお、隔壁部材4とケース本体9の凹部9cの嵌合部に、微小隙間を設けておき、これを補償通路5として用いてもよく、また、隔壁部材4の上壁4dと下壁4eの一方または両方を廃して、サイドパネル10,11と隔壁部材の側壁4b,4cとの間の隙間を補償通路5としてもよい。
【0032】
上記のアキュムレータ6は、可撓性材料で形成されていて、内部に封入された気体が外部流出しないように袋状とされている。アキュムレータ6は、温度補償室R内の圧力が上昇すると内部の気体が圧縮されるので凋んで温度補償室R内の液室23の容積を増大せしめ、反対に、温度補償室R内の圧力が減少すると内部の気体が膨張して膨らみ温度補償室R内の液室23の容積を減少させるようになっている。
【0033】
したがって、ロータリダンパDでは、液体温度が上昇して液体の体積が大きくなると、一方室R1内と他方室R2内で液体が余剰となるが、アキュムレータ6が余剰液体体積に見合って凋んで余剰の液体を上記の補償通路5を介して温度補償室Rで吸収する。反対に、液体温度が低下して液体の体積が小さくなると、一方室R1内と他方室R2内で液体が不足するが、アキュムレータ6が不足液体体積に見合って膨らんで、一方室R1内と他方室R2内へ不足分の液体を上記の補償通路5を介して温度補償室Rから供給する。
【0034】
このように、ロータリダンパDにあっては、隔壁部材4内に温度補償室Rを設けて、当該温度補償室R内に内部に気体が封入されるアキュムレータ6を収容したので、温度補償室Rをケーシング3の側方に設ける必要がなく、ロータリダンパDの全体が小型化される。
【0035】
また、アキュムレータ6が隔壁部材4内に収容されるとともに、温度補償室Rが補償通路5を介して一方室R1と他方室R2の一方または両方に連通するようにしているので、ロータリダンパDの作動中において高圧となる一方室R1と他方室R2の圧力が直接的に温度補償室R内に伝播しないようになっている。そのため、温度補償室R内の圧力は、ロータリダンパDの作動中において一方室R1内および他方室R2内の圧力上昇を妨げることがない。その結果、温度補償室R内の圧力より常に高圧に保つ必要がなくなり、アキュムレータ6内への気体封入圧を非常に高圧に設定せずともよく、ロータリダンパDは、充分な減衰力を発揮することができ、減衰力発生の応答性も悪化することがない。以上から、本発明のロータリダンパDによれば、充分な減衰力を発揮しつつも小型化することができる。
【0036】
さらに、温度補償室R内にフリーピストンを設ける必要がなく、フリーピストンを摺動させるための内面加工を要しないので、フリーピストンを備えたロータリダンパに比較して、ロータリダンパDの加工コストを低減することができる。
【0037】
本実施の形態では、一方室R1から他方室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方減衰通路14と、他方室R2から一方室R1へ向かう液体の流れのみを許容する他方減衰通路15とを設け、一方減衰通路14が液体の流れに与える抵抗を他方減衰通路15が液体の流れに与える抵抗よりも大きくし、他方室R2のみを温度補償室Rに連通している。このようにすることで、シャフト1が同じ回転速度で回転しても、圧縮側の室のうち他方室R2の方が一方室R1よりも低圧となるので、温度補償室Rを高圧側の一方室R1へ連通する場合に比較して、温度補償室R内の圧力上昇を低く抑えることができる。そのため、本実施の形態のロータリダンパDにあっては、アキュムレータ6に作用する圧力が小さくて済むため、アキュムレータ6の劣化を抑制することができる。なお、温度補償室Rを高圧側の一方室R1へ連通するようにすることもでき、その場合にあっても、充分な減衰力を発揮しつつもロータリダンパDを小型化することができると言う利点は失われない。
【0038】
さらに、本実施の形態におけるロータリダンパDにあっては、一方減衰通路14と他方減衰通路15をベーン2に設けたので、ケーシング3にこれら一方減衰通路14と他方減衰通路15を設ける場合に比較して、ロータリダンパDをより一層小型化することができる。なお、一方減衰通路14と他方減衰通路15を別々のベーン2に設けているが、これら一方減衰通路14と他方減衰通路15を同一のベーン2に設けることもできる。また、上記したところでは、一方減衰通路14と他方減衰通路15とを設けているが、シャフト1の回転方向でロータリダンパDの発生減衰力の特性を異ならしめる必要がない場合には、一方室R1と他方室R2とを連通するとともに双方向通行を可能として通過液体の流れに抵抗を与える減衰通路を設けるようにしてもよい。その場合にでも、減衰通路をベーン2に設けることで、上記したように、ロータリダンパDの小型化に寄与することができる。
【0039】
また、隔壁部材4は、ケーシング3と別部品とされているが、隔壁部材4と、ケース本体9を一部品としてもよい。なお、隔壁部材4は、シャフト1の外周に摺接するシャフト対向壁4aと、シャフト対向壁4aの両端各端から伸びてケーシング3の内周であるケース本体9の内周へ固定される一対の側壁4b,4cを備え、側壁4b,4cへ補償通路5を設けることで、温度補償室Rの形成と補償通路5の設置が容易となる。また、補償通路5をオリフィスとして側壁4b,4cへ設ける場合には、補償通路5の加工が容易となる。
【0040】
さらに、上記したところでは、シャフト1が二つのベーン2を備えており、隔壁部材4もベーン2,2間の二箇所に配置させるように二つ設けられているが、ベーン数と隔壁数はこれに限られず、共に同数とする限り三つ以上とされてもよい。そして、隔壁部材4のうち任意の一部の隔壁部材4に温度補償室Rを設けるようにしてもよいが、全ての隔壁部材4内に温度補償室Rを設けてアキュムレータ6を収容するようにすることで、温度補償時における個々のアキュムレータ6の膨縮変形量を小さくすることができるので、アキュムレータ6の劣化を抑制することができる。
【0041】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、種々の用途のロータリダンパに利用でき、たとえば、車両のサスペンションに使用されるロータリダンパに利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
D ロータリダンパ
L 空間
R 温度補償室
R1 一方室
R2 他方室
1 シャフト
2 ベーン
3 ケーシング
4 隔壁部材
4a シャフト対向壁
4b,4c 側壁
5 補償通路
6 アキュムレータ
14 一方減衰通路
15 他方減衰通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、上記シャフトの外周に設けた複数のベーンと、上記シャフトを周方向への回転を許容しつつ軸支するとともに内部に上記ベーンを収容するケーシングと、当該ケーシング内に設けられて上記シャフトのベーン間のそれぞれに配置される複数の隔壁部材と、上記ケーシング内であって上記隔壁部材間に形成される空間を上記ベーンで仕切って形成される一方室と他方室とを備えたロータリダンパにおいて、液体の流れに抵抗を与える補償通路を介して上記一方室と上記他方室の少なくとも一方に連通される温度補償室を任意の隔壁部材内に設け、当該温度補償室内に内部に気体が封入されるアキュムレータを収容したことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
上記一方室と上記他方室とを連通するとともに液体の流れに抵抗を与える減衰通路を上記ベーンに設けたことを特徴とする請求項1に記載のロータリダンパ。
【請求項3】
上記一方室から上記他方室へ向かう液体の流れのみを許容する一方減衰通路と、上記他方室から上記一方室へ向かう液体の流れのみを許容する他方減衰通路とを設け、上記一方減衰通路が液体の流れに与える抵抗を上記他方減衰通路が液体の流れに与える抵抗よりも大きくし、上記他方室のみを温度補償室に連通したことを特徴とする請求項1に記載のロータリダンパ。
【請求項4】
上記一方減衰通路と上記他方減衰通路を上記ベーンに設けたことを特徴とする請求項3に記載のロータリダンパ。
【請求項5】
上記隔壁部材は、上記シャフトの外周に対向するシャフト対向壁と、上記シャフト対向壁の両端各端から伸びて上記ケーシングの内周へ固定される一対の側壁を備え、上記側壁へ上記補償通路を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のロータリダンパ。
【請求項6】
上記隔壁部材のうち、全ての内部に上記温度補償室を設け、当該全ての温度補償室内に上記アキュムレータを収容したことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のロータリダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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