説明

ロータリージョイント及びこれを用いたスイベルエルボ

【課題】本発明の目的の第1は、揺動・回転の機能を損なうことなく、小さくかつ軽く、そして安価なロータリージョイントを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のロータリージョイントは、インサートのノーズをニップルに嵌め込み、両者を軸の半径方向に回転可能とさせたロータリージョイントであって、ニップルの内径を前記ノーズ外径よりも大きな内径となし、このノーズに表面側が開放された断面台形の周溝が形成され、この溝内に複数の鋼球が嵌め込まれ、次いでこの鋼球を挟んで前記台形の周溝面と対向する傾斜面を持つ環状リテーナーを嵌め込み、さらに環状リテーナーの外側に係止部材を備えてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流路に用いられるジョイントに関するものであり、具体的には、自動車、建設機械及び工作機械等のジョイントに係り、特に、狭いスペースで用いるのに好適な揺動・回転自在なロータリージョイント及びこれを用いたスイベルエルボに係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、流体を移送する手段として鋼管やホース或いはチューブなど(以下、問題のない限り管という)がある。例えば、自動車などにあっては、各種の流体が多用されているが、いずれも狭いスペースなどで用いられる。このため、要求されるジョイントは、小型で、かつジョイントの前後の管が揺動・回転自在なものが求められている。しかしながら、従来のジョイントでは対応できないケースがしばしばあった。これは、従来のジョイントの構造が大型で、揺動・回転や曲げ機能に対して不具合な構造となっていたからである。
【0003】
しかるに、管の折損やねじれを防止するためのロータリージョイントが提案されている。即ち、管の回転機能をもたらす例としては、ジョイントの前後が回転可能とした構造のものがあり、揺動や曲げ機能をもたらすものとしてスイベルエルボがある。
【0004】
図1及び図2は、先行技術(非特許文献1)にかかるロータリージョイント及びスイベルエルボの概念図である。
【0005】
図1のロータリージョイント40において、インサート41のノーズ41Aとソケット42を嵌め込み、市販のスラストベアリング43鋼球43A リテーナー43B)を挟み込んでニップル44が嵌め込まれた構成となっている。スラストベアリング43の使用は、内部を流れる流体の圧力で発生する軸方向の引き抜き力により発生するインサート41とニップル44間の摩擦抵抗を軽減するためのものである。
【0006】
このため、外径寸法は使用するスラストベアリング43の大きさによって決められてしまい、ロータリージョイント40の外径が大きく、かつ重くなるという欠点があった。このことは、ロータリージョイント40の価格が高くなり、技術的には、ロータリージョイント40の組み立て性も悪いという欠点があった。なお、図にあって、45はセットスクリュー、46はOリング、47はバックアップリング、48はカットワッシャー、48Aはリング、49はダストシールである。
【0007】
図2のスイベルエルボ50においてシャフト51の穿孔部52に対してエルボ53が嵌め合わされ、エルボ53はシャフト51の軸方向に対し回転可能とされたものである。両者の間にはOリング54やダストシール55を介在させて回転可能としたものである。図中、56はエルボ53に備えられたユニオンナット、57はハウジング、58はエルボ53の抜けを防止するワッシャー、59はストップリングである。
【0008】
さて、かかる構造を持つスイベルエルボ50において、エルボ53は回転軸が一つしかない。従って、回転方向の自由度を上げるために、図1のロータリージョイント40をユニオンナット56に接続して使用している。しかしながら、接続するロータリージョイント40は前記したように外形が大きく、かつ重いため、これを組み付けたスイベルエルボ50は、回転半径が大きく、かつ重くなり、価格も高くなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】エービーシーカップリング工業所株式会社のカタログ(http://www.abc-coupling.co.jp/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の第1は、揺動・回転の機能を損なうことなく、小さくかつ軽く、そして安価なロータリージョイントを提供することを目的とするものである。
【0011】
そして、本発明の目的の第2は、小さくかつ軽く、そして安価な、さらには揺動・回転の自由度の大きなクランク型スイベルエルボを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1であるロータリージョイントは、インサートのノーズをニップルに嵌め込み、両者を軸の半径方向に回転可能とさせたロータリージョイントであって、ニップルの内径を前記ノーズ外径よりも大きな内径となし、このノーズに表面側が開放された周溝が形成され、この溝内に複数の鋼球が嵌め込まれ、次いでこの鋼球を挟んで前記周溝面と対向する傾斜面を持つ環状リテーナーを嵌め込み、さらに環状リテーナーの外側に係止部材を備えてなるものである。
【0013】
本発明の第2であるスイベルエルボは、シャフトのエルボ部に穿孔部を設け、この穿孔部に対してハウジングが回転可能に嵌め合わされ、シャフト及びハウジングに夫々インサートA及びBのノーズを嵌め込み、両者を軸の半径方向に回転可能とさせたスイベルエルボであって、シャフト及びハウジングの内径を前記の夫々のノーズ外径よりも大きな内径となし、この夫々のノーズに表面側が開放された周溝が形成され、この溝内に複数の鋼球が嵌め込まれ、次いでこの鋼球を挟んで前記周溝面と対向する傾斜面を持つ環状リテーナーを嵌め込み、さらに環状リテーナーの外側に係止部材を備えてなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1であるロータリージョイントは、従来の必須の構成であるインサートとニップル及びソケットの間に用いられるスラストベアリングを用いず、インサートとニップルとの間に、特殊な構成を採用して目的を達成したものである。即ち鋼球を挟むリテーナーとインサートに、対向する傾斜面を形成し、この面で鋼球を挟む構造であり、このため、容易に鋼球を組み込んでロータリージョイントを組み立てることができ、市販のスラストベアリングのような保持具が必要なく、ジョイントの外形をより小さくできる効果がある。
【0015】
そして、ロータリージョイントを小さくできたことにより、これが組み込まれるスイベルエルボにあっては、小さな回転半径で自由な回転が得られ、自由回転の際には、ハウジング側とシャフト側が接触・干渉しないという効果をあわせ持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、先行技術にかかるロータリージョイントの概念図である。
【図2】図2は、先行技術にかかるスイベルエルボの概念図である。
【図3】図3は、本発明の第1のロータリージョイントの半裁断面図である。
【図4】図4は、図3の主要部の拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2のスイベルエルボの一例を示すL型スイベルエルボの一部裁断断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2のスイベルエルボの一例を示すクランク型スイベルエルボの一部裁断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1のロータリージョイントを中心に述べると、外形の大きくなる原因である市販されているスラストベアリングを用いることをやめ、インサート表面に周溝を形成し、ここに鋼球を嵌め込み、更に、リテーナーの内径側に角度をもたせた構成であって、リテーナーと鋼球とインサートの周溝は、鋼球がこぼれ落ちない角度をもって接している構造とし、かつ、リテーナーはニップルにねじ又はリングなどの係止手段にて外れない構造となっている。従って、ロータリージョイントの外形が小さく、軽量化が実現され、しかも、流体を通過させた際に生じる内圧によって引き抜き力が生じても、インサートとニップルが低トルクで相互に回転可能にしたことを特徴とするものである。尚、鋼球としては金属球は勿論であるが、セラミック球などのいわゆるベアリング素材が利用可能である。又、周溝も特に限定されるものではないが、通常は断面が台形状或いは球形状の周溝である。
【0018】
本発明の第2のスイベルエルボは、この構造体を組み込んだことを特徴とするもので、L型或いはクランク型スイベルエルボが例示できる。
【実施例1】
【0019】
図3は本発明の第1のロータリージョイント10の一例を示す半裁断面図であり、図4は主要部の拡大断面図である。図中、1はニップルであり、ニップル1の内径内にインサートAのノーズaを嵌め込んだ構造である。この例では、ニップル1の内径を前記ノーズaの外径よりも大きな内径として、両者の間に空間を持たせる。そして、このノーズaに、ここでは表面側が開放された断面台形の周溝2を形成した。そして、この溝2内に複数の鋼球3が嵌め込まれる。次いで、この鋼球3を挟んで前記周溝2の傾斜面2Aと対向する傾斜面4Aを持つ環状リテーナー4を嵌め込み、さらに環状リテーナー4の外側に係止部材5を備えてなるロータリージョイントである。
【0020】
尚、図例にあっては、係止部材5はワイヤリングであり、ニップル1の内径面に形成された周溝6内に嵌め込まれ、環状リテーナー4が押さえ込まれて抜けが防止されるものである。又、この例では、インサートAにナット7(管連結手段)が装着され、ニップル1には、ねじ8(管連結手段)が刻設され、図示しない他の管や機材との連結に供されるように構成した例である。更に、9はOリング、9Aはバックアップリングで、ノーズaの回転を担保するものである。
【0021】
本発明の第1であるロータリージョイント10は、従来の必須の構成であるインサートとニップル及びソケットの間に用いられるスラストベアリングを用いず、鋼球3を挟む環状リテーナー4とインサートAのノーズaに、対向する傾斜面4Aと2Aを形成し、この面で鋼球3を挟む構造であり、容易にベアリング3を内部に組み込んでロータリージョイント10を組み立てることができ、ジョイント10の外形をより小さく、かつ軽くできるものとなった。
【0022】
具体的には、1/4サイズのロータリージョイントにあって、スラストベアリングを用いた従来品では、最大外径が32mm、全長73mm、重量200gであったが、本発明品にあっては、夫々22mm、57mm、90gであり、その小型化、軽量化が図れたことが実証される。
【0023】
しかも、流体を通過させた際に生じる内圧によって引き抜き力が生じても、対向する傾斜面4Aと2Aにて鋼球3を挟む構造であるため、抜け出すことはなく、しかも、インサートAとニップル1が低トルクで相互に回転する特徴を備えたものとなった。
【実施例2】
【0024】
図5は、本発明の第2のスイベルエルボの一例であるL型スイベルエルボ20の一部裁断断面図である。図中、21はシャフト、22はL字形のエルボである。かかるL型スイベルエルボ20を前記ロータリージョイントと対比させていえば、ニップル1を90度曲げた構造と同様であり、他の管や機材との連結に供されるように、ねじ30、31が刻設されたものである。
【0025】
図にあって、エルボ22の内径をインサートAのノーズaの外径よりも大きな内径となし、ノーズaには実施例1と同様に周溝25が形成され、この溝25内に複数の鋼球26が嵌め込まれ、次いでこの鋼球26を挟んで周溝25の面25Aと対向する傾斜面27Aを持つ環状リテーナー27を嵌め込み、さらに環状リテーナー27の外側に係止部材28を備えてなるL型のスイベルエルボ20である。そして、傾斜面27Aは、環状リテーナー27の内径側に形成し、周溝25の傾斜面25A間で鋼球26を挟んでなるものである。これら環状リテーナー27、鋼球26、周溝25の関係、その機能などは実施例1にて詳述したので省略する。尚、28はワイヤリング(係止部材)29を治める周溝である。
【実施例3】
【0026】
図6は、本発明の第2のスイベルエルボの一例であるクランク型スイベルエルボ20の一部裁断断面図である。図中、21はシャフト、22はシャフト21にL字形に接合されたエルボである。かかるエルボ22には、流体の通路となる穿孔部23が形成されている。この穿孔部23に対してハウジング24が回転可能に嵌め合わされ、シャフト21及びハウジング24に夫々インサートA及びBのノーズa及びbを嵌め込み、両者を軸の半径方向に回転可能とさせたスイベルエルボである。
【0027】
構造は実施例2とほぼ同様であるが、シャフト21及びハウジング24の内径を前記の夫々のノーズa及びbの外径よりも大きな内径となし、この夫々のノーズa及びbに表面側が開放された断面台形の周溝25が形成され、この溝25内に複数の鋼球26が嵌め込まれ、次いでこの鋼球26を挟んで前記台形の周溝25の面25Aと対向する傾斜面27Aを持つ環状リテーナー27を嵌め込み、さらに環状リテーナー27の外側に係止部材28を備えてなるクランク型のスイベルエルボ20である。そして、傾斜面27Aは、環状リテーナー27の内径側に形成し、周溝25の傾斜面25A間で鋼球26を挟んでなるものである。これら環状リテーナー27、鋼球26、周溝25の関係、その機能などは実施例1にて詳述したので省略する。尚、28はワイヤリング(係止部材)29を治める周溝である。
【0028】
尚、図例のスイベルエルボ20も、実施例1のロータリージョイント10と同様に他の管や機材との連結に供されることから、図例では、管連結手段としてインサートAにナット30が供えられ、ノーズb側にねじ31を刻設した例を示す。又、32はOリング、32Aはバックアップリングであり、かかるOリング32は、ハウジング24の回転、ノーズA、Bの回転を担保するものである。尚、33はワッシャー、34はC形止め輪、35はダストシールである。
【0029】
本発明の第1であるロータリージョイントを小さくできたことにより、これが組み込まれたスイベルエルボ、特にクランク型のスイベルエルボにあっては、回転の際、ハウジング側とシャフト側が干渉せず、小さな回転半径で自由な回転が得られることとなった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、以上の通りのロータリージョイント及びこれを適用したスイベルエルボを提供するものであり、自動車、建設機械及び工作機械等の狭いスペースで用いるのに好適な揺動・回転自在なロータリージョイント及びスイベルエルボを提供したものである。そして、特に組み立てがしやすく、小型化が達成でき、かつ軽量化をも達成したもので、その工業的価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0031】
A、B インサート
a、b ノーズ
1 ニップル
2、25 周溝
2A、25A 周溝の傾斜面
3、26 鋼球
4、27 環状リテーナー
4A、27A 環状リテーナーの傾斜面
5、28 係止部材
6、29 周溝
7、30 ナット
8、31 ねじ
9、32 Oリング
9A、32A バックアップリング
10 ロータリージョイント
20 クランク型スイベルエルボ
21 シャフト
22 エルボ
23 穿孔部
24 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートAのノーズをニップルに嵌め込み、両者を軸の半径方向に回転可能とさせたロータリージョイントであって、ニップルの内径を前記ノーズ外径よりも大きな内径となし、このノーズに表面側が開放された周溝が形成され、この溝内に複数の鋼球が嵌め込まれ、次いでこの鋼球を挟んで前記周溝面と対向する傾斜面を持つ環状リテーナーを嵌め込み、さらに環状リテーナーの外側に係止部材を備えてなるロータリージョイント。
【請求項2】
環状リテーナーの内径側に傾斜面を形成し、周溝との間で鋼球を挟んだ請求項1記載のロータリージョイント。
【請求項3】
インサートAに管連結手段を備えた請求項1又は2記載のロータリージョイント。
【請求項4】
管連結手段がナットである請求項3記載のロータリージョイント。
【請求項5】
ニップルに管連結手段を備えた請求項1又は2記載のロータリージョイント。
【請求項6】
管連結手段がねじである請求項5記載のロータリージョイント。
【請求項7】
シャフトのエルボ部に穿孔部を設け、この穿孔部に対してハウジングが回転可能に嵌め合わされ、シャフト及びハウジングに夫々インサートA及びBのノーズを嵌め込み、両者を軸の半径方向に回転可能とさせたスイベルエルボであって、シャフト及びハウジングの内径を前記の夫々のノーズ外径よりも大きな内径となし、この夫々のノーズに表面側が開放された周溝が形成され、この溝内に複数の鋼球が嵌め込まれ、次いでこの鋼球を挟んで前記周溝面と対向する傾斜面を持つ環状リテーナーを嵌め込み、さらに環状リテーナーの外側に係止部材を備えてなるスイベルエルボ。
【請求項8】
エルボがシャフトにL型に接合された請求項7記載のスイベルエルボ。
【請求項9】
環状リテーナーの内径側に傾斜面を形成し、周溝との間で鋼球を挟んだ請求項7記載のスイベルエルボ。
【請求項10】
インサートAに管連結手段を備えた請求項7又は8記載のスイベルエルボ。
【請求項11】
管連結手段がナットである請求項10記載のスイベルエルボ。
【請求項12】
インサートBのノーズに管連結手段を備えた請求項7又は8記載のスイベルエルボ。
【請求項13】
管連結手段がねじである請求項12記載のスイベルエルボ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169408(P2011−169408A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34024(P2010−34024)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(510045302)エービーシーカップリング工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】