説明

ロータリーダンパ

【課題】ベーンの上面及び/又は下面と対向する面との間に隙間がある場合に、シール部によって該隙間を小さくすることができるロータリーダンパを提供する。
【解決手段】本発明は、ベーン5が、軸部材3から突出する基部51と、該基部51と本体ケース1の内周面1bとの間に設けられるシール部52とを備え、シール部52が、基部51の高さ方向に沿って伸縮可能であり、シール部52の上面521dと該上面と対向する面2aとの間に隙間がある場合に、シール部52は、ベーン5又は隔壁4が軸部材3を中心として回転して、基部51とシール部52との間に介在する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって伸長して、前記隙間をなくすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体ケース内に設けられる軸部材と、前記本体ケースとともに回転し得るように設けられ、前記本体ケースの内周面と前記軸部材の外周面との間に形成される空間を仕切る隔壁と、前記軸部材とともに回転し得るように設けられ、前記空間を仕切るベーンと、前記隔壁及び前記ベーンによって仕切られた室に充填される粘性液体とを備えるロータリーダンパが知られている。
【0003】
この種のロータリーダンパの中には、前記本体ケースの内周面と前記ベーンとの間に形成される隙間をなくすために、前記ベーンが、前記軸部材から突出する基部と、該基部と前記本体ケースの内周面との間に設けられるシール部とを備えるものがある。
【0004】
例えば、特開平4−282039号公報には、前記基部に相当する突部と、前記シール部に相当する可動弁とを備えるベーンが記載されている。また、特開平8−109940号公報には、前記基部に相当する支持突起と、前記シール部に相当する可動弁とを備えるベーンが記載されている。また、特開平10−169688号公報には、前記基部に相当する第1のベーンと、前記シール部に相当する第2のベーンとを備えるベーンが記載されている。
【0005】
しかしながら、従来のロータリーダンパでは、シール部は、ベーン又は隔壁が軸部材を中心として回転して、基部とシール部との間に介在する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によってベーンの長さ方向に沿って移動して、本体ケースの内周面に密着するだけであり、ベーンの上面と該上面と対向する面との間及び/又はベーンの下面と該下面と対向する面との間に隙間がある場合に、シール部によって該隙間をなくし又は小さくすることができなかった。
【特許文献1】特開平4−282039号公報
【特許文献2】特開平8−109940号公報
【特許文献3】特開平10−169688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ベーンの上面と該上面と対向する面との間及び/又はベーンの下面と該下面と対向する面との間に隙間がある場合に、シール部によって該隙間を小さくすることができるロータリーダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下のロータリーダンパを提供する。
1.本体ケース(1)内に設けられる軸部材(3)と、
本体ケース(1)とともに回転し得るように設けられ、本体ケース(1)の内周面(1b)と軸部材(3)の外周面との間に形成される空間(1a)を仕切る隔壁(4)と、
軸部材(3)とともに回転し得るように設けられ、空間(1a)を仕切るベーン(5)と、
隔壁(4)及びベーン(5)によって仕切られた室(1c〜1f)に充填される粘性液体とを有し、
ベーン(5)が、軸部材(3)から突出する基部(51)と、該基部(51)と本体ケース(1)の内周面(1b)との間に設けられるシール部(52)とを備えるロータリーダンパであって、
シール部(52)が、基部(51)の高さ(h)方向に沿って伸縮可能であり、
シール部(52)の上面と該上面と対向する面との間及び/又はシール部(52)の下面と該下面と対向する面との間に隙間がある場合に、シール部(52)は、ベーン(5)又は隔壁(4)が軸部材(3)を中心として回転して、基部(51)とシール部(52)との間に介在する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって伸長して、前記隙間をなくすことを特徴とするロータリーダンパ。
2.シール部(52)が、基部(51)の長さ(L)方向に沿ってスライド可能に設けられ、
シール部(52)の背面と前記本体ケース(1)の内周面(1b)との間に隙間がある場合に、シール部(52)は、ベーン(5)又は隔壁(4)が軸部材(3)を中心として回転して、基部(51)とシール部(52)との間に介在する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって基部(51)から離れる方向へ移動して、前記隙間をなくすことを特徴とする前記1記載のロータリーダンパ。
3.基部(51)が、第1凹部(51a)又は第1凸部を有し、
シール部(52)が、基部(51)の第1凹部(51a)又は第1凸部と嵌合する第2凸部(521a)又は第2凹部及び背面(521c)が曲面である本体部(521b)を有する第1部材(521)と、基部(51)の第1凹部(51a)又は第1凸部と嵌合する第3凸部(522a)又は第3凹部及び背面(522c)が曲面である本体部(522b)を有する第2部材(522)とからなり、
第1部材(521)の本体部(521b)と第2部材(522)の本体部(522b)が、いずれか一方に形成される第4凹部(523)に、他方に形成される第4凸部(524)が嵌り込むことによって結合され、
シール部(52)が基部(51)の高さ(h)方向に沿って伸縮するときには、第1部材(521)の本体部(521b)と第2部材(522)の本体部(522b)のいずれか一方に形成された第4凸部(524)が、他方に形成された第4凹部(523)内で基部(51)の高さ(h)方向に沿ってスライドすることを特徴とする前記1記載のロータリーダンパ。
4.基部(51)が、第1凹部(51a)又は第1凸部を有し、
シール部(52)が、基部(51)の第1凹部(51a)又は第1凸部と嵌合する第2凸部(521a)又は第2凹部及び背面(521c)が曲面である本体部(521b)を有する第1部材(521)と、基部(51)の第1凹部(51a)又は第1凸部と嵌合する第3凸部(522a)又は第3凹部及び背面(522c)が曲面である本体部(522b)を有し、第1部材(521)に結合される第2部材(522)とからなり、
シール部(52)が基部(51)から離れる方向へ移動するときには、基部(51)の第1凸部又は第1部材(521)の第2凸部(521a)及び第2部材(522)の第3凸部(522a)が、第1部材(521)の第2凹部及び第2部材(522)の第3凹部又は基部(51)の第1凹部(51a)内で基部(51)の長さ(L)方向に沿ってスライドすることを特徴とする前記2記載のロータリーダンパ。
5.第4凸部(524)の背面が、第1部材(521)の背面(521c)又は第2部材(522)の背面(522c)と同一面上にあることを特徴とする前記3記載のロータリーダンパ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シール部(52)が、基部(51)の高さ方向に沿って伸縮可能であり、シール部(52)の上面と該上面と対向する面との間及び/又はシール部(52)の下面と該下面と対向する面との間に隙間がある場合に、シール部(52)は、ベーン(5)又は隔壁(4)が軸部材(3)を中心として回転して、基部(51)とシール部(52)との間に介在する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって伸長して、前記隙間をなくすため、ベーン(5)の上面と該上面と対向する面との間及び/又はベーン(5)の下面と該下面と対向する面との間に隙間がある場合に、シール部(52)によって該隙間を小さくすることが可能になる。これにより、ベーン(5)の周囲の密閉性が向上するので、ロータリーダンパの制動特性を高めることが可能になる。また、複数のロータリーダンパを製造した場合に、粘性液体が充填される室の高さにばらつきがあっても、シール部(52)によって室の高さとベーン(5)の高さとの差が補正されるので、個々のロータリダンパの制動特性をより均一にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態では、ロータリーダンパは、本体ケース1、蓋部材2、軸部材3、隔壁4、ベーン5及び粘性液体を有して構成される。
【0010】
本体ケース1は、ケーシング又はハウジングとも呼ばれるものであり、図1〜図6に示されている。本体ケース1は、典型的には、一端が開口し、他端が閉塞された筒状体であるが、これに限定されない。本体ケース1内には、軸部材3及びベーン5が収容され、かつ粘性液体が充填される空間1aがある(図4〜図6参照)。本体ケース1の開口部は、蓋部材2によって閉塞される(図1〜図3参照)。
【0011】
軸部材3は、本体ケース1内の空間の中央に位置するように設けられる(図4〜図6参照)。軸部材3は、中空であるものと中空でないもののいずれも用いることができる。本体ケース1と軸部材3は相対的に回転可能である。
【0012】
隔壁4は、本体ケース1とともに回転し得るように設けられ、本体ケース1の内周面1bと軸部材3の外周面との間に形成される空間1aを仕切るものである(図4〜図6参照)。隔壁4は、軸部材3が回転せず、本体ケース1が回転する場合には、軸部材3を中心として回転することによって粘性液体を押圧する。
【0013】
ベーン5は、軸部材3とともに回転し得るように設けられ、本体ケース1の内周面1bと軸部材3の外周面との間に形成される空間1aを仕切るものである(図4〜図6参照)。本体ケース1内の空間1aは、隔壁4及びベーン5によって仕切られ、それにより、本体ケース1内には、複数の室1c〜1fが形成される(図4〜図6参照)。粘性液体は、これらの室1c〜1f内に充填される。ベーン5は、本体ケース1が回転せず、軸部材3が回転する場合には、軸部材3を中心として回転することによって粘性液体を押圧する。
【0014】
ベーン5は、軸部材3から突出する基部51と、該基部51と本体ケース1の内周面1bとの間に設けられるシール部52とを有して構成される(図3、図5及び図6参照)。基部51は、シール部52の第2凸部521a及び第3凸部522aと嵌合する第1凹部51aを有する(図7(a)、図7(c)、図8及び図9参照)。第1凹部51aは、基部51の先端面、上面及び下面にわたって形成されている。本発明の好ましい実施形態では、基部51とシール部52は、互いに嵌合する凹部と凸部によって結合される。したがって、本発明の別の実施形態では、第1凹部51aに代えて、シール部52の第2凹部(図示せず)及び第3凹部(図示せず)と嵌合する第1凸部(図示せず)を基部51に設けてもよい。
【0015】
シール部52は、基部51の高さ(h)方向(図7(c)参照)に沿って伸縮可能に構成される。本発明の好ましい実施形態では、シール部52は、第1部材521及び第2部材522からなる(図10(b)〜図10(d)参照)。第1部材521は、基部51の第1凹部51aと嵌合する第2凸部521aを有する(図10(b)及び図10(c)参照)。第2凸部521aは、第1凹部51aのうち、基部51の先端面及び上面にわたって形成された部分と嵌合する。一方、基部51に第1凸部(図示せず)が形成される場合は、第1部材521には、第2凸部521aに代えて、第1凸部(図示せず)と嵌合する第2凹部(図示せず)が形成される。第2部材522は、基部51の第1凹部51aと嵌合する第3凸部522aを有する(図10(b)及び図10(c)参照)。第3凸部522aは、第1凹部51aのうち、基部51の先端面及び下面にわたって形成された部分と嵌合する。一方、基部51に第1凸部(図示せず)が形成される場合は、第2部材522には、第3凸部522aに代えて、第1凸部(図示せず)と嵌合する第3凹部(図示せず)が形成される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、第1部材521の本体部521bの背面521c及び第2部材522の本体部522bの背面522cは、いずれも、第1部材521の本体部521b及び第2部材522の本体部522bが本体ケース1の内周面1bに接したときに、それらの背面521c、522c全体が本体ケース1の内周面1bに密着し得るように、曲面である(図10(a)参照)。第1部材521の本体部521bの背面521c及び第2部材522の本体部522bの背面522cが曲面であることにより、シール部52が本体ケース1の内周面1bに接したときの、本体ケース1の内周面1bに対するシール部52の接触面積が大きくなるため、ベーン5と本体ケース1の内周面1bとの間の隙間を通じた粘性液体の流通を効果的に阻止することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、第1部材521の本体部521bと第2部材522の本体部522bは、いずれか一方に形成される第4凹部523に、他方に形成される第4凸部524が嵌り込むことによって結合される。すなわち、図10(b)及び図10(d)に示したように、例えば、第1部材521の本体部521bに第4凹部523を形成し、この第4凹部523に嵌り込む第4凸部524を第2部材522の本体部522bに形成する。これとは逆に、第4凹部523を第2部材522の本体部522bに形成し、第4凸部524を第1部材521の本体部521bに形成してもよい。
【0018】
図10(b)〜図10(d)は、第1部材521の本体部521bの下面と第2部材522の本体部522bの上面とが密着した状態を示している。この状態は、シール部52が基部51の高さ方向に沿って最も萎縮した状態である。シール部52がこの状態から基部51の高さ方向に沿って伸長するときには、第4凸部524が第4凹部523内で基部51の高さ方向に沿って一方向へスライドする。図11(a)〜図11(c)は、シール部52が基部51の高さ方向に沿って伸長した状態を示している。シール部52が伸長した状態から基部51の高さ方向に沿って萎縮するときには、第4凸部524が第4凹部523内で基部51の高さ方向に沿って逆方向へスライドする。
【0019】
上記のように第4凸部524を第4凹部523内でスライドさせることによってシール部52を伸縮可能にする構成は、シール部52が最も萎縮した状態から伸長したときでも、すなわち、図11(a)〜図11(c)に示したように、第1部材521の本体部521bの下面と第2部材522の本体部522bの上面とが離れたときでも、第4凹部523内から脱出した第4凸部524の一部分によって粘性液体の流通を阻止することを可能にする。
【0020】
第4凸部524の背面は、図10(c)、図10(d)、図11(b)及び図11(c)に示したように、第1部材521の背面(521c)又は第2部材522の背面(522c)と同一面上にあることが好ましい。これにより、第1部材521の本体部521bの背面521cと第2部材522の本体部522bの背面522cが本体ケース1の内周面1bに接したときに、第4凸部524の背面も本体ケース1の内周面1bに接することになるので、粘性液体の流通を効果的に阻止することが可能になる。第4凸部524が本体ケース1の内周面1bに接したときの、本体ケース1の内周面1bに対する第4凸部524の接触面積をより大きくするために、第4凸部524の背面は、その背面全体が本体ケース1の内周面1bに密着し得るように、曲面であることが好ましい。
【0021】
基部51と本体ケース1の内周面1bとの間にシール部52が配置されたときに、基部51とシール部52との間には、粘性液体が充填され得る隙間が存在する。これらの隙間は、ベーン5の両側面(ベーン5が軸部材3とともに回転した場合に粘性液体を押圧する面)にそれぞれ形成される(図5参照)。シール部52は、ベーン5又は隔壁4が軸部材3を中心として回転して、これらの隙間に存する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって伸長する(すなわち、シール部52全体の高さ(H)が高くなる(図10(d)及び図11(c)参照)。
【0022】
シール部52は、シール部52の上面(例えば、第1部材521の上面521d)と該上面と対向する面(例えば、蓋部材2の下面2a)との間及び/又はシール部52の下面(例えば、第2部材522の下面522d)と該下面と対向する面(例えば、本体ケース1の底壁の上面1g)との間に隙間がある場合(図12及び図16参照)には、シール部52自体が伸長して、シール部52の上面を該上面と対向する面に密着させ、及び/又はシール部52の下面を該下面と対向する面に密着させて、上記隙間をなくすことができる(図13及び図17参照)。
【0023】
シール部52は、基部51の長さ(L)方向(図7参照)に沿ってスライド可能に設けることができる。この場合、シール部52は、ベーン5又は隔壁4が軸部材3を中心として回転して、基部51とシール部52との間の隙間に存する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって基部51から離れる方向へ移動して、シール部52の背面を本体ケース1の内周面1bに密着させて、シール部52と本体ケース1の内周面1bとの間に形成される隙間をなくすことができる(図14〜図17参照)。
【実施例1】
【0024】
図1〜図6は、実施例1に係るロータリーダンパを示す図であり、図7〜図9は、本実施例で採用した軸部材3を示す図であり、図10及び図11は、本実施例で採用したシール部52を示す図であり、図12及び図13は、本実施例におけるシール部52の動作を説明するための図である。
【0025】
本実施例では、基部51が第1凹部51aを有し、シール部52が第1部材521と第2部材522とからなる。第1部材521は、基部51の第1凹部51aと嵌合する第2凸部521aと、背面521cが曲面である本体部521bとを有し、第2部材522は、基部51の第1凹部51aと嵌合する第2凸部522aと、背面522cが曲面である本体部522bとを有する。第1部材521には、第4凹部523が形成され、第2部材522には、第4凸部524が形成されている。第1部材521の本体部521bと第2部材522の本体部522bは、第4凸部524が第4凹部523に嵌り込むことによって結合されている。
【0026】
本実施例では、図12に示したように、シール部52の上面(第1部材521の上面521d)と該上面と対向する蓋部材2の下面2aとの間に隙間がある。この状態からベーン5又は隔壁4が軸部材3を中心として回転すると、粘性液体がベーン5又は隔壁4に押圧されることによって、基部51とシール部52との間に介在する粘性液体の圧力が上昇する。このとき、第1部材521は、粘性液体の圧力によって上方へ押し上げられ、第4凸部524は、第4凹部523内でスライドする。その結果、図13に示したように、シール部52が当初よりも伸長し、シール部52の上面(第1部材521の上面521d)が蓋部材2の下面2aに密着して、シール部52の上面(第1部材521の上面521d)と蓋部材2の下面2aとの間の隙間がなくなる。
【実施例2】
【0027】
図14及び図15は、実施例2におけるシール部52の動作を説明するための図である。実施例2に係るロータリーダンパは、実施例1に係るロータリーダンパと同様に構成されるが、実施例2では、図14に示したように、シール部52の背面521c,522cと本体ケース1の内周面1bとの間に隙間がある。
【0028】
この状態からベーン5又は隔壁4が軸部材3を中心として回転すると、粘性液体がベーン5又は隔壁4に押圧されることによって、基部51とシール部52との間に介在する粘性液体の圧力が上昇する。このとき、シール部52(第1部材521及び第2部材522)は、粘性液体の圧力によって基部51から離れる方向へ移動し、第1部材521の第2凸部521a及び第2部材522の第3凸部522aが、基部51の第1凹部51a内で基部51の長さ方向に沿ってスライドする。その結果、図15に示したように、シール部52の背面(第1部材521及び第2部材522の各背面521c,522c)が本体ケース1の内周面1bに密着して、シール部52の背面と本体ケース1の内周面1bとの間の隙間がなくなる。
【実施例3】
【0029】
図16及び図17は、実施例3におけるシール部52の動作を説明するための図である。実施例3に係るロータリーダンパは、実施例1に係るロータリーダンパと同様に構成されるが、実施例3では、図16に示したように、シール部52の下面(第2部材522の下面522d)と該下面と対向する本体ケース1の底壁の上面1gとの間及びシール部52の背面521c,522cと本体ケース1の内周面1bとの間にそれぞれ隙間がある。
【0030】
この状態からベーン5又は隔壁4が軸部材3を中心として回転すると、粘性液体がベーン5又は隔壁4に押圧されることによって、基部51とシール部52との間に介在する粘性液体の圧力が上昇する。このとき、第2部材522は、粘性液体の圧力によって下方へ押し下げられ、第4凸部524は、第4凹部523内でスライドする。また、これと同時に、シール部52(第1部材521及び第2部材522)が、粘性液体の圧力によって基部51から離れる方向へ移動し、第1部材521の第2凸部521a及び第2部材522の第3凸部522aが、基部51の第1凹部51a内で基部51の長さ方向に沿ってスライドする。その結果、図17に示したように、シール部52が当初よりも伸長し、シール部52の下面(第2部材522の下面522d)が本体ケース1の底壁の上面1gに密着して、シール部52の下面(第2部材522の下面522d)と本体ケース1の底壁の上面1gとの間の隙間がなくなり、また、シール部52の背面(第1部材521及び第2部材522の各背面521c,522c)が本体ケース1の内周面1bに密着して、シール部52の背面と本体ケース1の内周面1bとの間の隙間もなくなる。
【0031】
上記実施例1〜実施例3のように、本発明によれば、ベーン5の上面と該上面と対向する面との間及び/又はベーン5の下面と該下面と対向する面との間に隙間がある場合に、シール部52によって該隙間を小さくすることができる。これにより、ベーン5の周囲の密閉性が向上するので、ロータリーダンパの制動特性を高めることが可能になる。また、複数のロータリーダンパを製造した場合に、粘性液体が充填される室の高さにばらつきがあっても、シール部52によって室の高さとベーン5の高さとの差が補正されるので、個々のロータリダンパの制動特性をより均一にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係るロータリーダンパを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A部断面図である。
【図3】図1におけるB−B部断面図である。
【図4】図3におけるC−C部断面図である。
【図5】図3におけるD−D部断面図である。
【図6】図3におけるE−E部断面図である。
【図7】軸部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図8】図7(a)のF−F部断面図である。
【図9】図7(b)のG−G部断面図である。
【図10】シール部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は背面図である。
【図11】シール部が伸長した状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
【図12】シール部の動作を説明するための図であって、シール部の下面と該下面と対向する面との間に隙間がある状態を示す図である。
【図13】シール部の動作を説明するための図であって、シール部が伸長して、シール部の下面と該下面と対向する面との間の隙間をなくした状態を示す図である。
【図14】シール部の動作を説明するための図であって、シール部の背面と本体ケースの内周面との間に隙間がある状態を示す図である。
【図15】シール部の動作を説明するための図であって、シール部が基部から離れる方向へ移動して、シール部の背面と本体ケースの内周面との間の隙間をなくした状態を示す図である。
【図16】シール部の動作を説明するための図であって、シール部の下面と該下面と対向する面との間及びシール部の背面と本体ケースの内周面との間に隙間がある状態を示す図である。
【図17】シール部の動作を説明するための図であって、シール部が伸長し、かつ基部から離れる方向へ移動して、シール部の下面と該下面と対向する面との間及びシール部の背面と本体ケースの内周面との間の隙間をなくした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 本体ケース
1a 空間
1b 内周面
1c〜1f 室
2 蓋部材
2a 下面
3 軸部材
4 隔壁
5 ベーン
51 基部
51a 第1凹部
52 シール部
521 第1部材
521a 第2凸部
521b 本体部
521c 背面
521d 上面
522 第2部材
522a 第3凸部
522b 本体部
522c 背面
522d 下面
523 第4凹部
524 第4凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に設けられる軸部材と、
前記本体ケースとともに回転し得るように設けられ、前記本体ケースの内周面と前記軸部材の外周面との間に形成される空間を仕切る隔壁と、
前記軸部材とともに回転し得るように設けられ、前記空間を仕切るベーンと、
前記隔壁及び前記ベーンによって仕切られた室に充填される粘性液体とを有し、
前記ベーンが、前記軸部材から突出する基部と、該基部と前記本体ケースの内周面との間に設けられるシール部とを備えるロータリーダンパであって、
前記シール部が、前記基部の高さ方向に沿って伸縮可能であり、
前記シール部の上面と該上面と対向する面との間及び/又は前記シール部の下面と該下面と対向する面との間に隙間がある場合に、前記シール部は、前記ベーン又は隔壁が前記軸部材を中心として回転して、前記基部と前記シール部との間に介在する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって伸長して、前記隙間をなくすことを特徴とするロータリーダンパ。
【請求項2】
前記シール部が、前記基部の長さ方向に沿ってスライド可能に設けられ、
前記シール部の背面と前記本体ケースの内周面との間に隙間がある場合に、前記シール部は、前記ベーン又は隔壁が前記軸部材を中心として回転して、前記基部と前記シール部との間に介在する粘性液体の圧力が上昇したときに、該圧力によって前記基部から離れる方向へ移動して、前記隙間をなくすことを特徴とする請求項1記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記基部が、第1凹部又は第1凸部を有し、
前記シール部が、前記基部の第1凹部又は第1凸部と嵌合する第2凸部又は第2凹部及び背面が曲面である本体部を有する第1部材と、前記基部の第1凹部又は第1凸部と嵌合する第3凸部又は第3凹部及び背面が曲面である本体部を有する第2部材とからなり、
前記第1部材の本体部と前記第2部材の本体部が、いずれか一方に形成される第4凹部に、他方に形成される第4凸部が嵌り込むことによって結合され、
前記シール部が前記基部の高さ方向に沿って伸縮するときには、前記第1部材の本体部と前記第2部材の本体部のいずれか一方に形成された第4凸部が、他方に形成された第4凹部内で前記基部の高さ方向に沿ってスライドすることを特徴とする請求項1記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
前記基部が、第1凹部又は第1凸部を有し、
前記シール部が、前記基部の第1凹部又は第1凸部と嵌合する第2凸部又は第2凹部及び背面が曲面である本体部を有する第1部材と、前記基部の第1凹部又は第1凸部と嵌合する第3凸部又は第3凹部及び背面が曲面である本体部を有し、前記第1部材に結合される第2部材とからなり、
前記シール部が前記基部から離れる方向へ移動するときには、前記基部の第1凸部又は前記第1部材の第2凸部及び第2部材の第3凸部が、前記第1部材の第2凹部及び第2部材の第3凹部又は前記基部の第1凹部内で前記基部の長さ方向に沿ってスライドすることを特徴とする請求項2記載のロータリーダンパ。
【請求項5】
前記第4凸部の背面が、前記第1部材の背面又は前記第2部材の背面と同一面上にあることを特徴とする請求項3記載のロータリーダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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