説明

ロータリーバーナ

【課題】回転駆動される気化筒の内面に液体燃料を供給し、供給された液体燃料を、気化筒の回転駆動により発生する遠心力により、外筒と内筒とで構成される燃焼室の内周面に飛散させ、点火プラグにより燃焼室の内周面に飛散した液体燃料に点火して燃焼させ、この燃焼熱により気化筒の内面に供給された液体燃料を気化させて気化燃料とし、この気化燃料をファンの強制送風により外筒と内筒との間を通して、内筒の上方部に設けられた炎口から噴出させて燃焼させるロータリーバーナにおいて、気化筒を大きくすることなく、NOの発生を確実に抑制することができるロータリーバーナを提供する。
【解決手段】ファン53から強制送風される空気の一部を燃焼室2の外方から気化筒6の天板6aの上面に向けて供給する冷却風供給手段10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータを用いずに液体燃料を気化し燃焼させるロータリーバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転駆動される気化筒の内面に液体燃料を供給し、供給された液体燃料を、気化筒の回転駆動により発生する遠心力により、外筒と内筒とで構成される燃焼室の内周面に飛散させ、点火プラグにより燃焼室の内周面に飛散した液体燃料に点火して燃焼させ、この燃焼熱により気化筒の内面に供給された液体燃料を気化させて気化燃料とし、この気化燃料をファンの強制送風により外筒と内筒との間を通して、内筒の上方部に径方向に貫通するように設けられた炎口から噴出させて燃焼させるロータリーバーナが知られている。この種のロータリーバーナは、燃焼温度が高く、燃焼室の上方に発生する高温領域が広いため、NOが発生し易いという問題点があった。
【0003】
この問題点を解決すべく、従来、気化筒の天板に大きな貫通孔を複数形成し、この貫通孔から燃焼用空気を吹き出させることにより、燃焼室の中央部の燃焼温度を低下させると共に、燃焼室の上方中央部に高温領域が形成され難くし、NOの発生を抑制させるロータリーバーナも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このロータリーバーナでは、気化筒内で気化した気化燃料が貫通孔から吹き出し、気化筒の天板上で炎が発生する虞がある。そして、天板上で炎が発生してしまうと、燃焼室の中央部の燃焼温度が下がらず、燃焼室の上方に広い高温領域が発生し、NOの発生を抑制することができない場合があった。
【0005】
又、気化筒は、回転駆動するため、軸がぶれて耐久性が低下することや振動や騒音を発生することを防止すべく、精密に製造する必要がある。そして、従来のロータリーバーナのように気化筒の天板に大きな貫通孔を形成するとなると、気化筒を大きくする必要があり、気化筒の回転バランスの調整が難しく、気化筒の製造が困難になるという不都合があった。
【特許文献1】特開平6−129612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、気化筒を大きくすることなく、NOの発生を確実に抑制することができるロータリーバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、有底筒状の外筒と、外筒の内面から間隔を存して気化燃料用の流路を形成するように設けられ径方向に貫通する炎口を上方部に備える有底筒状の内筒とで構成され、底壁部に貫通孔を備える燃焼室と、内筒内に配置され鉛直方向を軸にしてモータにより回転駆動され上方から下方に向かって次第に拡径し天板を有する気化筒と、燃焼室の下方に設けられたファンにより強制送風された空気を貫通孔を介して気化筒内に供給し気化筒内の空気を流路へ案内するように外筒の底壁部に設けられた送風筒と、気化筒の内周面に液体燃料を供給する燃料供給手段と、気化筒の下端縁から内筒の内周面の下方部に向かって飛散した液体燃料に点火し内筒の下方部で燃焼させる点火手段と、点火手段による液体燃料の燃焼熱により気化筒の内周面に供給された液体燃料を気化させ、この気化燃料をファンによる強制送風により空気と混合させて混合気とし、混合気を流路を介して炎口から噴出させて燃焼させるロータリーバーナにおいて、ファンから強制送風される空気の一部を燃焼室の外方から気化筒の天板の上面に向けて供給する冷却風供給手段を備えることを特徴とする。
【0008】
係る構成によれば、従来品のように天板から気化燃料が吹き出す虞はなく、冷却風供給手段により燃焼室の外方から天板の上面に冷却風が供給されるため、確実に天板の上方の燃焼温度を低下させて、燃焼室の上方中央部に高温領域が発生し難くすることができ、NOの発生を抑制することができる。又、従来品のように気化筒の天板に大きな貫通孔を形成する必要がないため、気化筒を大きくせずにすむ。これにより、従来品と比較して、気化筒の回転バランスの調整が困難になることを防止することができる。
【0009】
又、本発明のロータリーバーナにおいては、気化筒の天板の上面に、冷却風供給手段により供給された空気を径方向外方に飛散させる飛散手段を設けることが好ましい。係る構成によれば、天板上で冷却風が適度に径方向外方に飛散し、燃焼室上方の中心部の温度を低下させ、NOの発生を確実に抑制させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のロータリーバーナの実施の形態を図1を参照して説明する。図1は本実施形態のロータリーバーナを示す説明的断面である。
【0011】
本発明の実施形態のロータリーバーナ1は、暖房器具に用いられるものであり、外筒21と内筒22とで構成される略有底筒状の燃焼室2を備える。この燃焼室2には外筒21と内筒22との間で間隔を存することにより気化燃料用の流路3が形成されている。内筒22には、流路3を流れる気化燃料が上方へ吹き出さないように径方向外方に広がり外筒21の上縁部に接触する拡径部22aが設けられている。又、内筒22の上部には、流路3の上方部に位置させて径方向に貫通する複数の炎口22bが形成されている。又、外筒21と内筒22との底壁部の中央には、夫々貫通孔21a、22cが形成されている。
【0012】
燃焼室2の下方には、燃焼室2を支持する支持台4が設けられている。支持台4内には、モータ5が配置され、モータ5の出力軸51が上方に向かって燃焼室2の貫通孔21a,22cを介し燃焼室2内まで延設されている。出力軸51の上端部には雄ねじ51aが形成されている。そして、この雄ねじ51aには中心軸上に沿って貫通するねじ孔を有する円柱体51bが雄ねじ51aを貫通させるように螺合されている。
【0013】
又、内筒22内には、天板6aを有し上方から下方に向かって次第に拡径する略円錐台形状の気化筒6が配置されている。気化筒6の天板6aは中央に出力軸51が挿通される孔部6bが形成されている。そして、気化筒6は、出力軸51が孔部6bに挿通されて円柱体51bの上面で係止され、上方から雄ねじ51aに螺合する六角型のナット51cで締め付けられて固定される。気化筒6及びナット51cはモータ5により回転駆動される。
【0014】
又、気化筒6内には下方から上方に向かって拡径する略円錐台形状の拡散体7が配置されている。拡散体7は、天板6aと円柱体51bとの間に挟まれるように配置された円板体7aの外縁から垂下するように延びる支持脚7bに固着され、これにより支持されると共にモータ5により回転駆動される。又、拡散体7の内周面に灯油等の液体燃料を供給する送油パイプ8が設けられている。本実施形態においては、気化筒6の内周面に液体燃料を供給する燃料供給手段は、送油パイプ8と拡散体7とで構成される。
【0015】
又、燃焼室2の周壁を貫通して点火手段としての点火プラグ9が気化筒6の下端縁と同一の高さに位置させて設けられている。
【0016】
又、モータ5には下方に延びる回転軸52が設けられている。この回転軸52には上方に空気を強制送風するファン53が設けられている。外筒21の内底面には、貫通孔21aが形成された位置に送風筒21bが設けられている。ファン53により上方に強制送風された空気は貫通孔21a,22c及び送風筒21bを介して気化筒6内に供給される。気化筒6内に供給された空気は、気化筒6と送風筒21bと間を通り流路3へと流れる。
【0017】
又、支持台4の上方部には、ファン53により強制送風される空気の一部を燃焼室2の外方を介して天板6aの上面のナット51cの側面に導く冷却風供給手段としての冷却風用パイプ10が設けられている。
【0018】
次いで、本実施形態のロータリーバーナ1の作動について説明する。
【0019】
まず、モータ5を駆動させ、出力軸51を介して気化筒6と拡散体7とを回転駆動させる。次に、送油パイプ8から液体燃料が拡散体7の内周面に供給される。拡散体7の内周面に付着した液体燃料は、拡散体7の回転駆動による遠心力により拡散体7の内周面を上昇していく。そして、液体燃料は、拡散体7の上端縁から遠心力により径方向外方に飛散し、気化筒6の内周面に付着する。
【0020】
そして、気化筒6の回転駆動による遠心力により、液体燃料は内周面を下降していく。そして、液体燃料は、気化筒6の下端縁から径方向外方に遠心力により飛散して霧化し、内筒22の内周面下方に付着する。
【0021】
内筒22の内周面下方に付着した液体燃料は、点火プラグ9により点火され燃焼する。この燃焼により気化筒6が加熱されていく。気化筒6が加熱されると、気化筒6の内周面に付着した液体燃料が気化する。
【0022】
このようにして気化された燃料は、ファン53から送風筒21bを介して気化筒6内に供給される空気と混合して混合気となり、燃焼室2と内筒22との間に形成された流路3を通り、炎口22bから噴出し燃焼する。
【0023】
又、ファン53による強制送風の空気の一部が冷却風用パイプ10を通り、気化筒6の天板6aの上面のナット51cの側面に冷却用空気として供給される。冷却風用パイプ10によりナット51cの側面に供給された冷却用空気は、ナット51cの回転駆動により径方向外方に飛散する。即ち、本実施形態においては、ナット51cが飛散手段に該当する。
【0024】
本実施形態のロータリーバーナ1によれば、ファン53により強制送風される空気の一部を冷却用空気として冷却風用パイプ10を介して天板6aの上面に供給するため、燃焼室2の中央部の燃焼温度を低下させることができる。これにより、ロータリーバーナ1の燃焼室2の上方中央部に高温領域が発生し難くなり、NOの発生を抑制することができる。又、冷却風用パイプ10により供給される冷却用空気によりナット51cが冷却されるため、ナット51cの焼付けを防止することができる。このため、焼付けによりナット51cが出力軸51から外せなくなり気化筒6が交換できなくなることを防止でき、ロータリーバーナ1のメンテナンスが容易となる。
【0025】
又、従来のロータリーバーナ1のように気化筒6の天板6aに大きな貫通孔を形成していないため、気化燃料が気化筒6の天板6aから噴出することを防止することができる。又、気化筒6を大きくする必要がないため、気化筒6の回転バランスの調整が容易となり、気化筒6の製造が容易となる。
【0026】
尚、本実施形態においては、飛散手段として六角型のナット51cを用いて説明したが、飛散手段としてはこれに限られず、例えば、径方向外方へ空気を送るファンを気化筒6の上面に設けて気化筒6と共に回転駆動させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のロータリーバーナの実施形態を示す説明的断面。
【符号の説明】
【0028】
1…ロータリーバーナ、 2…燃焼室、 21…外筒、 21a…貫通孔、 21b…送風筒、 22…内筒、 22a…拡径部、 22b…炎口、 22c…貫通孔、 3…流路、 4…支持台、 5…モータ、 51…出力軸、 51a…雄ねじ、 51b…円柱体、 51c…ナット、 52…回転軸、 53…ファン、 6…気化筒、 6a…天板、 6b…孔部、 7…拡散体、 7a…円板体、 7b…支持脚、 8…送油パイプ、 9…点火プラグ、 10…冷却風用パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の外筒と、該外筒の内面から間隔を存して気化燃料用の流路を形成するように設けられ径方向に貫通する炎口を上方部に備える有底筒状の内筒とで構成され、底壁部に貫通孔を備える燃焼室と、
前記内筒内に配置され鉛直方向を軸にしてモータにより回転駆動され上方から下方に向かって次第に拡径し天板を有する気化筒と、前記燃焼室の下方に設けられたファンにより強制送風された空気を前記貫通孔を介して前記気化筒内に供給し該気化筒内の空気を前記流路へ案内するように該外筒の底壁部に設けられた送風筒と、前記気化筒の内周面に液体燃料を供給する燃料供給手段と、該気化筒の下端縁から前記内筒の内周面の下方部に向かって飛散した液体燃料に点火し前記内筒の下方部で燃焼させる点火手段と、該点火手段による液体燃料の燃焼熱により気化筒の内周面に供給された液体燃料を気化させ、この気化燃料を前記ファンによる強制送風により空気と混合させて混合気とし、該混合気を前記流路を介して前記炎口から噴出させて燃焼させるロータリーバーナにおいて、
前記ファンから強制送風される空気の一部を前記燃焼室の外方から前記気化筒の前記天板の上面に向けて供給する冷却風供給手段を備えることを特徴とするロータリーバーナ。
【請求項2】
前記気化筒の天板の上面には、前記冷却風供給手段により供給された空気を径方向外方に飛散させる飛散手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のロータリーバーナ。

【図1】
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