説明

ロータリー作業機

【課題】進行方向に形成された圃場の起伏に対して耕耘土の土厚を一定にすることが可能なロータリー作業機を提供する。
【解決手段】トラクタのエンジンからの駆動力によって回転する爪軸14と、爪軸14の半径方向外側に向けて突設された複数の耕耘爪15と、耕耘爪15を上方より覆うロータリーカバー16と、ロータリーカバー16の後端に、上下方向に回動自在に取り付けられたリヤカバー17とを備える。そして、リヤカバー17の下端部両側に向かい合うように一対のサイドリブ17Aを設け、それぞれのサイドリブ17Aに長孔LHを形成するとともに、長孔LHにそれぞれボルトBT1を遊嵌し、一対のボルトBT1で整地レベラー18を上下方向に回動自在に支持し、整地レベラー18の回動範囲が長孔LHによって規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源からの駆動力によって回転する爪軸と、爪軸の半径方向外側に向けて突設された複数の耕耘爪と、耕耘爪を上方より覆うロータリーカバーと、ロータリーカバーの後端に、上下方向に回動自在に取り付けられたリヤカバーとを備えるロータリー作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリー作業機は、トラクタなどの後部に連結して耕耘作業などを行うものであり、トラクタからの駆動力によって回転する耕耘爪、耕耘爪を上方および前方から覆うロータリーカバー、耕耘爪の後部を覆うリヤカバー、リヤカバーの下端に固設された整地板などで構成されている。そして、耕耘爪を回転させて圃場の土の耕耘作業を行って不整地となった耕耘土を整地板で平坦化させていた。しかし、整地板がリヤカバーに固定されているため圃場の起伏に対応できず、整地する耕耘土の土厚が不均一となってしまうという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1のように、整地板をリヤカバーの下部中央を支点として左右方向に対して回動自在(スイング自在)とすることを目的とした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−187107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような整地板では、ロータリー作業機の車幅方向にうねる起伏には対応可能で、耕耘土の土厚を一定にすることができる。しかし、ロータリー作業機の進行方向にうねる起伏には対応できないという問題があった。そこでこの発明は、進行方向に形成された圃場の起伏に対して耕耘土の土厚を一定にすることが可能なロータリー作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため請求項1に記載の発明は、動力源からの駆動力によって回転する爪軸と、
該爪軸の半径方向外側に向けて突設された複数の耕耘爪と、
該耕耘爪を上方より覆うロータリーカバーと、
該ロータリーカバーの後端に、上下方向に回動自在に取り付けられたリヤカバーとを備えるロータリー作業機において、
前記リヤカバーの下端部両側に向かい合うように一対のガイド板を設け、
該それぞれのガイド板に長孔を形成するとともに、
該長孔にそれぞれ棒状部材を遊嵌し、
該一対の棒状部材で整地板を上下方向に回動自在に支持し、
該整地板の回動範囲が前記長孔によって規制されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータリー作業機において、前記整地板を持ち上げるための把持部を前記整地板に設けることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のロータリー作業機において、前記リヤカバーの下端中央部と前記整地板の前端中央部とを、回動連結部によって回動自在に連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、動力源からの駆動力によって回転する爪軸と、爪軸の半径方向外側に向けて突設された複数の耕耘爪と、耕耘爪を上方より覆うロータリーカバーと、ロータリーカバーの後端に、上下方向に回動自在に取り付けられたリヤカバーとを備える。そして、リヤカバーの下端部両側に向かい合うように一対のガイド板を設け、それぞれのガイド板に長孔を形成するとともに、長孔にそれぞれ棒状部材を遊嵌し、一対の棒状部材で整地板を上下方向に回動自在に支持し、整地板の回動範囲が長孔によって規制される。
【0010】
したがって、進行方向に形成された圃場の起伏に対して耕耘土の土厚を一定にすることが可能なロータリー作業機を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、整地板を持ち上げるための把持部を整地板に設けるので、整地板の裏面側をメンテナンスすることを容易にする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、リヤカバーの下端中央部と整地板の前端中央部とを、回動連結部によって回動自在に連結するので、整地板の両端に加えて中央部もリヤカバーと回動自在に連結され、整地板の回動運動が安定するとともに、整地板のリヤカバーへの取り付け強度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一例のロータリー作業機の左後方からの斜視図である。
【図2】その、左前方からの斜視図である。
【図3】この例のロータリー作業機の整地レベラーの右側の取付状況を説明するための図である、(a)は組み付けた図、(b)はリヤカバー単体の図、(c)は整地レベラー単体の図である。
【図4】この例のロータリー作業機の整地レベラーの左側の取付状況を説明するための図である、(a)は組み付けた図、(b)はリヤカバー単体の図、(c)は整地レベラー単体の図である。
【図5】整地レベラーが起伏に合わせて回動する様子を示す図である。
【図6】整地レベラーとリヤカバーの中央部を回動自在に連結する回動連結部を示す図である。
【図7】整地レベラーによって圃場を整地する様子を示す図であり、(a)は進行方向に隆起がある地形を整地する様子を示す図、(b)は進行方向に窪みがある地形を整地する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1,2に示すように、この発明の一例としてのロータリー作業機10には、トラクタのエンジン(動力源)からの駆動力を受ける入力軸11と、入力軸11の駆動力を直交方向(車幅方向)に伝えるギアボックスGBと、ギアボックスGBから車幅方向に両側に延設された伝動ケース12と、伝動ケース12に内装された伝達軸などを備える。また、伝動ケース12の両端にはそれぞれ、側板30A,30Bを固設する。さらに、側板30Aには、伝動ケース13を固設する。この伝動ケース13上部には、前述の伝達軸の一端が回転自在に貫入して備え、その伝動軸の端部にはギアが固設されている。伝動ケース13内の下部には別のギアを備え、2つのギアには、チェーンが掛け回されている。なお、符号13Aは、伝動ケース13を路面から保護するための伝動ケースカバーである。
【0015】
伝動ケース13内の下部に配置されたギアの中心には爪軸14の一端を固設する。爪軸14は車幅方向全域にわたって延設され、爪軸14の半径方向外側に向けて複数の耕耘爪15を突設する。したがって、入力軸11から入力された駆動力は、ギアボックスGBを介して伝達軸に伝えられ、伝達軸からチェーンを介して爪軸14に伝達される。
【0016】
また、耕耘爪15を上方より覆うようにロータリーカバー16を備える。ロータリーカバー16は、耕耘土の跳ね上がりを防止するためのものであり、その後端には、上下方向に対して回動自在に取り付けられたリヤカバー17を備える。リヤカバー17の両側のサイドリブ17A,17Aには、回動支持ピンP2,P2をそれぞれ固設する。回動支持ピンP2は、2層構造となっており、内側には棒状の軸部を、外側には円筒状の筒部を備え、両者はボールベアリンクを介して回動自在に組み付けられている。軸部はリヤカバー17のサイドリブ17Aに固設されている。一方、筒部はそれぞれ側板30A,30Bに貫通して固設する。リヤカバー17の下端には、整地レベラー(整地板)18が上下方向に回動自在に取り付けられる。
【0017】
なお、ロータリーカバー16の外側面には、一対の補強リブ16A,16Aを進行方向に延びるように固設する。また、ギアボックスGBには上リンク部材H1が固設され、ギアボックスGBの両側に延設した伝動ケース12には、それぞれ下リンク部材H2,H3が固設されている。上リンク部材H1、下リンク部材H2,H3は、トラクタの後部に連結するためのものである。
【0018】
リヤカバー17の外側面には、一対の補強リブ21,21を上下方向に溶接によって固設する。補強リブ21の中央付近にはそれぞれ、ステー22を設ける。また、ロータリーカバー16の後端付近には一対のステー23をボルトで固定し、リヤカバー17のステー22,22との間に、それぞれサブロッド24,24を取り付ける。なお、サブロッド24の上端は、保持部材27を介してステー23に摺動自在に取り付けられている。保持部材27は金属板を側面視で略門型状に折り曲げて形成され、天面にはサブロッド24が摺動自在に貫通する貫通孔を設け、両側面には、固定ピンP1を貫通させるための貫通孔を設けてなる。サブロッド24の上端部外周には、コイルバネ25が備えられ、このコイルバネ25の抜け止めのためのスナップピンをサブロッド24の上端に掛け止める。コイルバネ25の下端は、保持部材27の天面に当接している。一方、サブロッド24の下端は、ステー22には回動自在に固定されている。なお、符号28はサイドカバー、符号29は、耕作面にスムーズに追随しやすくするためのスレッド部材である。
【0019】
整地レベラー18は、本体部18Mとその両端にそれぞれ回動連結部51を介して取り付けられた延長部18A,18Bを備える。また、本体部18Mの略中央部は、回動連結部41によってリヤカバー17と連結されている。
【0020】
図3,4には、リヤカバー17の両側と整地レベラー18との取り付けを示す。リヤカバー17両側のサイドリブ(ガイド板)17A,17Aの下端にはそれぞれ、円弧状の長孔LHと丸孔H1が形成されている。一方、整地レベラー18の両側にはそれぞれ、取付リブ181,181を直立に形成する。取付リブ181には丸孔H2,H3が形成されている。そして、取付リブ181の丸孔H3とサイドリブ17Aの円孔H1とを合わせボルトBT2を挿入してナットにて締め付ける。このとき、取付リブ181とサイドリブ17AとがボルトBT2に対して回動自在となるようにする。次に、取付リブ181の丸孔H2とサイドリブ17Aの長孔LHとを合わせ、ボルト(棒状部材)BT1を挿入してナットをネジつける。このとき、取付リブ181とサイドリブ17AとがボルトBT1に対して回動自在となるようにネジ止めする。したがって、ボルトBT1は長孔LH内に遊嵌している。なお、ボルトBT1は、ナットを緩めることで、取り外し可能である。
【0021】
なお、サイドリブ17Aは、リヤカバー17の側部に沿って上から下まで連続して設けなくてもよい。例えば、回動支持ピンP2を取り付けるためのリブをリヤカバー17の上部両側に設けるとともに、長孔LHを形成するための別のリブをリヤカバー17の下部両側に設けるようにしてもよい。また、ボルトBT1は、これに限定されるものではなく、長孔LHに遊嵌する棒状の部材であればどのようなものでもよい。
【0022】
また、符号18A,18Bは、整地レベラーの延長部を示す。延長部18A,18Bは、回動連結部51を介して整地レベラー18と回動自在に連結されている。延長部18A,18Bは、必要に応じて、作業者が必要に応じて、適宜、手で矢印(図3(a),(c)、4(a),(c))方向に折り畳んだり、広げたりする(折り畳み自在)ことができる。なお、整地レベラー18の両端と延長部18A,18Bとの間にはそれぞれ、コイルバネ52,52の両端を取り付け、延長部18A,18Bを閉じる動作を容易にしている。
【0023】
さらに、整地レベラー18の後端には複数の溝部18Gが形成され、各溝部18Gの間に形成された凸部が整地用レーキとして機能し、耕耘土をきめ細かくならすことができる。
【0024】
このように構成された整地レベラー18は、図5に示すように、リヤカバー17のサイドリブ17Aに形成された長孔LHの範囲内で回動することが可能となる。なお、整地レベラー18の左右端の取付リブ181,181は、左右のサイドリブ17A,17Aと近接して配置されるので、整地レベラー18は、車幅方向に偏ることなく、左右均一に上下回動するものとする。
【0025】
回動連結部41は、上記機構によって整地レベラー18が上下方向に回動する際、これをより確実に回動支持するためのものである。回動連結部41は、図6に示すように、回動支持リブ183、回動部185、固定部171などで構成される。回動支持リブ183は、一対の金属板片を所定の間隔で整地レベラー18に溶接にて固定してなる。回動支持リブ183の後端には貫通孔を備える。一方、固定部171は金属板片からなり、ボルトBT3にてリヤカバー17の中央後端に固設してなる。固定部171の後端には回動部185を固設する。回動部185は金属製の円筒からなり、その外周に固定部171の後端を溶接にて固定する。そして、回動部185の中心を回動支持リブ183の貫通孔と合わせ、固定ピンPNを通して回動部185と回動支持リブ183とを回動自在に取り付ける。このようにして、整地レベラー18は、その両端と中央部にてリヤカバー17に対して、上下方向に回動自在に取り付けられる。なお、符号184はハンドル(把持部)である。ハンドル184は、金属棒を折り曲げて形成され、その両端部を整地レベラー18の表面に溶接によって固定してなる。ハンドル184は、整地レベラー18の後端を上向きに持ち上げるときに使用するものであり、例えば、整地レベラー18の裏面の保守点検などを行う際に用いる。
【0026】
このように構成されたロータリー作業機10を用いて耕耘作業をする動作について、図1〜6を参照しつつ、図7を用いて説明する。まず、ロータリー作業機10をトラクタと連結する。詳しくは、トラクタのPTO軸を入力軸11と連結し、トラクタのエンジンの駆動力をロータリー作業機10に伝達可能とする。また、トラクタの後部に備えるヒッチと、上リンク部材H1、下リンク部材H2,H3とを連結する。
【0027】
そして、トラクタのエンジンをONにして、耕耘作業を開始する。入力軸11からの駆動力によって耕耘爪15が回転し、圃場を耕耘する。不整地なった耕耘土は、ロータリー作業機10の後端に備える整地レベラー18によって整地される。このとき、図7(a)に示すように、地形が隆起している(凸状地)箇所では、整地レベラー18は、圃場Gの隆起に追随して上方(前進方向)に向けて回動する。このとき、ボルトBT1が長孔LHに遊嵌しているため、整地レベラー18は長孔LHの範囲内で上方に向けて回動する。
【0028】
また、図7(b)に示すように、地形が窪んでいる(凹地)箇所では、整地レベラー18は、圃場Gの窪みに追随して下方(後進方向)に向けて回動する。このとき、ボルトBT1が長孔LHに遊嵌しているため、整地レベラー18は長孔LHの範囲内で下方に向けて回動する。すなわち、整地レベラー18は、長孔LHによって回動範囲を規制されている。
【0029】
前記ボルトBT1のナットを緩めてボルトBT1を長孔LHから取り外すことで、整地レベラー18は回動範囲の規制を解除することができる。このようにすると、より急傾斜な起伏の地形に追随して動作することができる。
【0030】
また、ボルトBT1を固く締め付けることで、整地レベラー18をリヤカバー17に対して固定するようにしてもよい。
【0031】
なお、上述の例では、ボルトBT1を長孔LHに遊嵌して、整地レベラー18の回動範囲を規制したが、この発明はこれに限定されるものではなく、ボルトに代えて、ピンなどを長孔LHに遊嵌させるようにして、整地レベラー18の回動範囲を規制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 ロータリー作業機
14 爪軸
15 耕耘爪
16 ロータリーカバー
17 リヤカバー
17A サイドリブ(ガイド板)
18 整地レベラー(整地板)
18A,18B 延長部
184 ハンドル(把持部)
41 回動連結部
BT1 ボルト(棒状部材)
LH 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの駆動力によって回転する爪軸と、
該爪軸の半径方向外側に向けて突設された複数の耕耘爪と、
該耕耘爪を上方より覆うロータリーカバーと、
該ロータリーカバーの後端に、上下方向に回動自在に取り付けられたリヤカバーとを備えるロータリー作業機において、
前記リヤカバーの下端部両側に向かい合うように一対のガイド板を設け、
該それぞれのガイド板に長孔を形成するとともに、
該長孔にそれぞれ棒状部材を遊嵌し、
該一対の棒状部材で整地板を上下方向に回動自在に支持し、
該整地板の回動範囲が前記長孔によって規制されることを特徴とする、ロータリー作業機。
【請求項2】
前記整地板を持ち上げるための把持部を前記整地板に設けることを特徴とする、請求項1に記載のロータリー作業機。
【請求項3】
前記リヤカバーの下端中央部と前記整地板の前端中央部とを、回動連結部によって回動自在に連結することを特徴とする、請求項1に記載のロータリー作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−130258(P2012−130258A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283071(P2010−283071)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】