説明

ロータリー式操作装置

【課題】断電状態であっても節度感を切り替えることを可能とする。
【解決手段】操作ノブ1と一体に回転する第1の節度用回転部材4と第2の節度用回転部材5の第1の収容部形成凸部15との間に第1の節度機構19を設け、第2の節度用回転部材5と第3の節度用回転部材6の第2の収容部形成凸部31との間に第2の節度機構35を設け、第3の節度用回転部材6と節度用固定部材3の第3の収容部形成凸部40との間に第3の節度機構44を設ける。押圧部材49の押圧操作に基づき、前記節度用回転部材4,5,6の回転を選択的に拘束及び解除して前記節度機構19,35,44の一つを有効化するように切り替える機械的切替機構48を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ノブの回転操作時における節度感を切り替えることが可能なロータリー式操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリー式操作装置、例えばロータリースイッチ装置においては、回転操作される操作ノブと固定部との間に、操作ノブを複数の回転位置に保持するため、及び節度感を付与するために節度機構が設けられている。その節度機構は、一般に、複数の凹凸を有する節度面部と、付勢手段により節度面部に弾性的に接触するように設けられた節度ピース(例えばボール)とから構成されている。
【0003】
従来のこの種の操作装置においては、一つの操作装置について1種類の節度感しか得られない。このため、用途に合わせて複数の節度感を得るようにするためには、操作装置を複数設ける必要がある。複数の操作装置を並べると、多くのスペースが必要であり、操作する際に操作ノブを持ち替える必要がある。また、近年では、表示に連携して操作する操作装置においては、1つの操作装置で複数種類の入力が可能なものが要求されている。
【0004】
例えば特許文献1には、操作部の節度感を複数段に切り替え可能としたものが開示されている。具体的には、回転操作される操作ノブ(ダイヤルノブ)に、複数種類の節度面部(凹凸パターン)を有する節度山部材を一体回動可能に設ける。一方、アクチュエータとしてモータで回転動作するプランジャ取付部材の外周面に、それぞれ節度ピース及びこれを外方へ付勢する付勢部材を有するプランジャ部材を複数設け、複数のプランジャ部材と、対応する節度面部とで複数組の節度機構を構成する。そして、モータによりプランジャ取付部材を回転させ、プランジャ部材と節度面部との組み合わせを切り替えることで、節度感を切り替える構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−191843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1の構成のものでは、節度感を切り替えるために電気的アクチュエータ(モータ)を用いている。このため、前記電気的アクチュエータが断電状態の場合には、節度感の切り替えができないことになる。
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、節度感を切り替えることが可能なものでありながら、断電状態であっても節度感を切り替えることが可能なロータリー式操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明のロータリー式操作装置は、
回転操作される操作ノブと、
この操作ノブの軸方向に沿って複数配置され、それぞれ前記操作ノブと同方向に回転可能に設けられた複数の節度用回転部材と、
これら複数の節度用回転部材のうち前記軸方向に隣り合った節度用回転部材間、及び前記操作ノブから最も離れた前記節度用回転部材と固定部との間にそれぞれ設けられ、それぞれ節度用の凹凸パターンを有する節度面部及び付勢手段により対応する前記節度面部に弾性的に接触するように設けられた節度ピースを有し、互いに異なる節度感を付与する複数の節度機構と、
前記操作ノブの軸方向に押圧操作可能に設けられた押圧部材の押圧操作に基づき前記複数の節度用回転部材の回転を選択的に拘束及び解除して前記複数の節度機構の一つを有効化するように切り替える機械的切替機構と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
上記構成においては、押圧部材の押圧操作に基づき、機械的切替機構により複数の節度用回転部材の回転を選択的に拘束及び解除して複数の節度機構の一つを有効化するように切り替えることができる。これにより、節度感を切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押圧部材の押圧操作に基づき、機械的切替機構により節度感を切り替えることが可能となるものであるから、電気的アクチュエータを用いて切り替えるものとは違い、断電状態であっても節度感の切り替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、第1の節度機構が有効化された状態の縦断面図
【図2】左側面図
【図3】平面図
【図4】全体の概略的な斜視図
【図5】要部の分解斜視図
【図6】カム部部分を示す要部の拡大縦断面図
【図7】第2の節度機構が有効化された状態の縦断面図
【図8】第3の節度機構が有効化された状態の縦断面図
【図9】カム部と切替用ロータとの関係を示すもので(軸部材は省略されている)、(a)は切替用ロータが上位置にある状態の拡大縦断面図、(b)は切替用ロータが下位置にある状態の拡大縦断面図、(c)は切替用ロータが中間位置にある状態の拡大縦断面図
【図10】電気的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。この実施形態では、車両における空調用のロータリー式操作装置に適用した例を示している。
図1〜図5において、操作ノブ1は、軸方向の両端が開口した円筒状をなしていて、その円周方向である、図3及び図4の矢印A1方向及び矢印A2方向へ回転操作可能に設けられている。この場合、図1〜図5において、操作ノブ1の軸方向を上下方向として説明する。操作ノブ1の下部側には、側方へ張り出す鍔部1aが一体に設けられている。操作ノブ1の外周部の下部において、鍔部1aのすぐ上の部分には、ギヤ部2が全周にわたって設けられている。この操作ノブ1の下方には、固定部を構成する節度用固定部材3が固定状態に配置されている。
【0013】
操作ノブ1と節度用固定部材3との間には、複数の節度用回転部材、この場合、操作ノブ1側から順に、第1の節度用回転部材4と、第2の節度用回転部材5と、第3の節度用回転部材6が配設されている。これら第1〜第3の3個の節度用回転部材4,5,6は、それぞれほぼ短円筒状をなし、操作ノブ1の軸方向(上下方向)に沿って積み重なるように配置され、それぞれ操作ノブ1の回転方向である矢印A1方向及び矢印A2方向へ回転可能に設けられている。
【0014】
このうち第1の節度用回転部材4は、上部に側方へ張り出す円板環状の鍔部7を有するとともに、下部の円筒部の外周部に節度用の凹凸パターンを有する第1の節度面部8を有している。鍔部7の上面部には複数、この場合3個の回転伝達用凸部9が設けられていて、これら回転伝達用凸部9を、前記操作ノブ1の鍔部1aの下面に設けられた嵌合凹部10(図1、図6参照)に嵌合させることにより、第1の節度用回転部材4は操作ノブ1と一体に矢印A1方向及び矢印A2方向へ回転するように連結されている。
【0015】
第2の節度用回転部材5は、上部に側方へ張り出す円板環状の鍔部11を有するとともに、下部の円筒部の外周部に節度用の凹凸パターンを有する第2の節度面部12を有している。鍔部11の側方への張り出し量は、前記第1の節度用回転部材4の鍔部7よりも大きく設定されている。鍔部11の上面部における内周部寄りの部位には、環状をなす嵌合凸部13が設けられていて、この嵌合凸部13が、前記第1の節度用回転部材4の嵌合溝部(図1、図6参照)に回転可能に嵌合されている。
【0016】
鍔部11の上面における1箇所には第1の収容部形成凸部15が設けられていて、この第1の収容部形成凸部15に、横向きに開口した収容部16が形成されている。その収容部16は第2の節度用回転部材5の回転中心側が開口していて、その開口部は、前記第1の節度面部8に外側から対向している。収容部16には、付勢手段を構成する第1の圧縮コイルばね17と、ボールからなる第1の節度ピース18とが収容されていて、第1の圧縮コイルばね17の付勢力により付勢された第1の節度ピース18が第1の節度面部8に弾性的に接触している。ここで、第1の節度面部8と、第1の圧縮コイルばね17と、第1の節度ピース18とにより、第1の節度機構19を構成している。
【0017】
前記第2の節度面部12の凹凸パターンは、前記第1の節度面部8の凹凸パターンより円周方向のピッチが細かく形成されている。鍔部11の内周部には、歯車状の第1の切替用ギヤ部20が全周にわたって形成されている。
【0018】
前記第3の節度用回転部材6は、基本的に前記第2の節度用回転部材5と同様な構成となっていて、上部に側方へ張り出す円板環状の鍔部25を有するとともに、下部の円筒部の外周部に節度用の凹凸パターンを有する第3の節度面部26を有している。鍔部25の側方への張り出し量は、前記第2の節度用回転部材6の鍔部11とほぼ同じに設定されている。鍔部25の上面部における内周部寄りの部位には、環状をなす嵌合凸部27が設けられていて、この嵌合凸部27が、前記第2の節度用回転部材5の嵌合溝部に回転可能に嵌合されている。また、第3の節度用回転部材6の下面には、環状をなす嵌合溝部が形成されていて、この嵌合溝部が、節度用固定部材3に設けられた環状をなす嵌合凸部30に回転可能に嵌合されている。
【0019】
鍔部25の上面における1箇所には第2の収容部形成凸部31が設けられていて、この第2の収容部形成凸部31に、横向きに開口した収容部32が形成されている。その収容部32は第3の節度用回転部材6の回転中心側が開口していて、その開口部は、前記第2の節度面部12に外側から対向している。収容部32には、付勢手段を構成する第2の圧縮コイルばね33と、ボールからなる第2の節度ピース34とが収容されていて、第2の圧縮コイルばね33の付勢力により付勢された第2の節度ピース34が第2の節度面部12に弾性的に接触している。ここで、第2の節度面部12と、第2の圧縮コイルばね33と、第2の節度ピース34とにより、第2の節度機構35を構成している。
【0020】
前記第3の節度面部26の凹凸パターンは、前記第2の節度面部12の凹凸パターンより円周方向のピッチがさらに細かく、かつ深さが浅く形成されている。第3の節度面部26を形成した円筒部の下部の内周部には、歯車状の第2の切替用ギヤ部36が全周にわたって形成されている。
【0021】
節度用固定部材3の上面の1箇所には第3の収容部形成凸部40が設けられていて、この第3の収容部形成凸部40に、横向きに開口した収容部41が形成されている。その収容部41は操作ノブ1の回転中心側が開口していて、その開口部は、前記第3の節度面部26に外側から対向している。収容部41には、付勢手段を構成する第3の圧縮コイルばね42と、ボールからなる第3の節度ピース43とが収容されていて、第3の圧縮コイルばね42の付勢力により付勢された第3の節度ピース43が第3の節度面部26に弾性的に接触している。ここで、第3の節度面部26と、第3の圧縮コイルばね42と、第3の節度ピース43とにより、第3の節度機構44を構成している。
【0022】
ここで、第1の節度機構19における第1の圧縮コイルばね17の付勢力(ばね力)は、第2の節度機構35における第2の圧縮コイルばね33の付勢力より大きく設定され、第3の節度機構44における第3の圧縮コイルばね42の付勢力は、第2の圧縮コイルばね33の付勢力より小さく設定されている。したがって、複数、この場合3つの節度機構19,35,44における付勢手段(第1、第2、第3の圧縮コイルばね17,33,42)の付勢力は、操作ノブ1に近い側の節度機構の付勢手段ほど大きくなるように設定している。また、第1の節度機構19における第1の節度ピース18の大きさ(直径)は、第2の節度機構35における第2の節度ピース34より大きく設定され、第3の節度機構44における第3の節度ピース43の大きさ(直径)は、第2の節度ピース34より小さく設定されている。
【0023】
節度用固定部材3の下方には、中間部材45を介してベース部材46が固定状態に設けられている。操作ノブ1の内部には機械的切替機構48が配設されている。以下、この機械的切替機構48について説明する。機械的切替機構48は、押圧部材49を有している。この押圧部材49は操作ノブ1の中央部の開口部内に配置され、この押圧部材49の裏面には軸部材50が、当該押圧部材49に一体となるように連結されている。これら押圧部材49及び軸部材50は、操作ノブ1の軸方向に移動可能に設けられている。軸部材50の下部には、複数の斜面を有する押圧面51が形成されている。
【0024】
節度用固定部材3の上面には、押圧部材49の下方に位置させて、円筒状をなすシャフト52が固定状態に配設されている。このシャフト52は、前記第3の節度用回転部材6、第2の節度用回転部材5、第1の節度用回転部材4を上下方向に貫通するとともに、上部が操作ノブ1の内部に挿入された状態となっている。このシャフト52も本発明の固定部を構成している。シャフト52の開口部53に、軸部材50の下部が上方から移動可能に挿入されている。
【0025】
シャフト52の内周部の上部には、図6に示すようにカム部54が形成されている。このカム部54は、第1の係合溝55と、第2の係合溝56と、第3の係合溝57とを円周方向に2パターン有している(図6には1パターンのみ示している)。これらのうち、第1の係合溝55が上方側へ最も深く形成され、第2の係合溝56は上方側へ最も浅く形成され、第3の係合溝57は、第1の係合溝55よりは浅く、第2の係合溝56よりは深く形成されている。第2の係合溝56の上面56aは、上部(操作ノブ1側)から見て時計回り方向(矢印A1方向)の先側に行くに従って高くなる斜面により形成され、その端部にストッパ壁56bが形成されている。第2の係合溝56と第3の係合溝57との間の下面にも、上部(操作ノブ1側)から見て時計回り方向の先側に行くに従って高くなる斜面58が形成され、また、第3の係合溝57と次の第1の係合溝55との間の下面にも同様な斜面59が形成されている。
【0026】
シャフト52の上面と押圧部材49との間には圧縮コイルばね60が配設されていて、この圧縮コイルばね60の付勢力により押圧部材49及び軸部材50は上方(図1の矢印B1方向)へ付勢されている。なお、押圧部材49及び軸部材50は、抜け止め手段により上方への抜け止めがなされている。シャフト52の下部の周壁部には、上下方向(軸方向)へ延びる案内溝61が対向する2箇所に形成されている。
【0027】
シャフト52の内部には、切替用ロータ65と切替用拘束部材66が配設されている。このうち切替用ロータ65は、切替用拘束部材66の上方(軸部材50側)に配置されている。これら切替用ロータ65及び切替用拘束部材66は、シャフト52の軸方向(上下方向)に移動可能で、切替用拘束部材66と節度用固定部材3との間に配設された付勢手段を構成する圧縮コイルばね67の付勢力により上方(矢印B1方向)へ付勢されている。
【0028】
切替用ロータ65は、主体部がほぼ円柱状をなしていて、外周部の対向する2箇所に径方向の外側へ突出しかつ上下方向に延びる突条部68を一体に有している。両突条部68の上部には、上部から見て時計回り方向の先側に行くに従って高くなる斜面69(図9の(c)参照)が形成されている。この切替用ロータ65は、シャフト52及び切替用拘束部材66に対してシャフト52の軸心周り方向に回転可能とされている。
【0029】
ここで、押圧部材49が、圧縮コイルばね60の付勢力に抗して下方(矢印B2方向)へ押圧操作されると、軸部材50も同方向へ移動する。すると、軸部材50下部の押圧面51が、切替用ロータ65の突条部68の斜面69を押圧する。これに伴い、切替用ロータ65は、押圧面51と斜面69の作用により、下方へ移動しながら、上から見て時計回り方向(矢印A1方向)へ回動されるようになる。
【0030】
図1及び図9(a)の状態では、切替用ロータ65の両突条部68が前記カム部54における第1の係合溝55に係合していて、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66としては最も高い位置である上位置に保持されている。切替用ロータ65の両突条部68がカム部54における第2の係合溝56に係合した状態では、図7及び図9(b)に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66としては最も低い位置である下位置に保持される。そして、切替用ロータ65の両突条部68がカム部54における第3の係合溝57に係合した状態では、図8及び図9(c)に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66としては前記上位置と下位置の中間である中間位置に保持される。
【0031】
前記切替用拘束部材66は、主体部がほぼ円柱状をなし、その主体部における上下方向の中間部の外周部の対向する2箇所に側方へ突出する第1のアーム部71が一体に設けられている。また、切替用拘束部材66の主体部における下部の外周部の対向する2箇所にも、前記第1のアーム部71の下方に位置させて第1のアーム部71と同方向へ突出する第2のアーム部72が一体に設けられている。第1のアーム部71及び第2のアーム部72のそれぞれの先端部が、前記シャフト52の案内溝61に挿入されている。したがって、切替用拘束部材66は、案内溝61に沿って上下方向(シャフト52の軸方向)へは移動可能であるが、シャフト52の軸心周り方向(操作ノブ1の軸心周り方向)への回転はできない構成となっている。両第1のアーム部71の先端部には、前記第2の節度用回転部材5の第1の切替用ギヤ部20に係脱可能に係合する第1の係合ギヤ部73が形成されている。また、両第2のアーム部72の先端部にも、前記第3の節度用回転部材6の第2の切替用ギヤ部36に係脱可能に係合する第2の係合ギヤ部74が形成されている。
【0032】
ここで、図1に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66が上位置に位置した状態では、切替用拘束部材66における第2のアーム部72の第2の係合ギヤ部74は第3の節度用回転部材6の第2の切替用ギヤ部36には係合していないが、第1のアーム部71の第1の係合ギヤ部73が第2の節度用回転部材5の第1の切替用ギヤ部20に係合した状態となる。この状態では、第2の節度用回転部材5は回転が拘束された状態となる。なお、第3の節度用回転部材6は拘束が解除された状態となっているが、操作ノブ1が回転操作されても、第2の節度用回転部材5が回転しないため、第3の節度用回転部材6は回転しない。
【0033】
図7に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66が下位置に位置した状態では、切替用拘束部材66における第1のアーム部71の第1の係合ギヤ部73は第2の節度用回転部材5の第1の切替用ギヤ部20には係合していないが、第2のアーム部72の第2の係合ギヤ部74が第3の節度用回転部材6の第2の切替用ギヤ部36に係合した状態となる。この状態では、第2の節度用回転部材5の回転は許容(拘束解除)されるが、第3の節度用回転部材6の回転が拘束された状態となる。
【0034】
図8に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66が中間位置に位置した状態では、切替用拘束部材66における第1のアーム部71の第1の係合ギヤ部73及び第2のアーム部72の第2の係合ギヤ部74は、ともに第2の節度用回転部材5の第1の切替用ギヤ部20及び第3の節度用回転部材6の第2の切替用ギヤ部36には係合していない状態となる。この状態では、第2の節度用回転部材5も第3の節度用回転部材6もともに回転が許容(拘束解除)された状態となる。以上により、機械的切替機構48が構成されている。
【0035】
前記中間部材45には、図1の左側に位置させてセンサ取付部75が設けられている。このセンサ取付部75は上方へ突出していて、その上部75aが、前記第1の節度用回転部材4の鍔部7とほぼ同じ高さに位置している。その上部75aには回転角センサ76が取り付けられている。この回転角センサ76は、回転式のポテンショメータ或いはエンコーダにより構成されている。回転角センサ76の回転軸は上に向けられていて、その回転軸に円板状の平歯車77が取着されている。その平歯車77の歯が、操作ノブ1の前記ギヤ部2に噛み合っている。したがって、操作ノブ1の回転に基づき回転角センサ76の回転軸が回転し、その回転方向及び回転量を回転角センサ76にて検出できる構成となっている。回転角センサ76は、操作ノブ1の回転方向及び回転量を検出する検出手段を構成している。なお、検出手段はスイッチでもよい。
【0036】
センサ取付部75における上下方向の中間部にはプリント基板からなる配線基板78が設けられていて、この配線基板78に位置センサ79が取り付けられている。この位置センサ79は、リニアポテンショメータにより構成されていて、その操作子79a(図1参照)が上下方向に移動するように配置されている。
【0037】
前記ベース部材46には、前記節度用固定部材3の下方に位置させて、凹部80が形成されている。この凹部80に、可動部材81の下部が上下動可能な状態で収容されている。可動部材81は、それぞれ上方へ突出する2本のアーム部82,83を有している。そのうちの一方のアーム部82は、中間部材45及び節度用固定部材3に形成された貫通孔84,85を貫通して前記シャフト52内に突出していて、その先端部が前記切替用拘束部材66の下端部に下方から当接している。他方のアーム部83は、センサ取付部75内に突出していて、その先端部に前記位置センサ79の操作子79aが連結されている。可動部材81の下面と凹部80の底部との間には複数の圧縮コイルばね86が配設されていて、この圧縮コイルばね86の付勢力により、可動部材81は上方へ付勢されている。
【0038】
ここで、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66の上下方向の移動に伴い可動部材81が同方向へ移動し、これに伴い位置センサ79の操作子79aが同方向へ移動することに基づき、位置センサ79が切替用ロータ65及び切替用拘束部材66の上下方向の位置を検出する。
【0039】
一方、図10は本発明の操作装置に関係した電気的構成のブロック図を示している。この図10において、制御手段を構成する制御装置90は、マイクロコンピュータを含んでいて、予め制御プログラムを有している。この制御装置90には、前記位置センサ79と回転角センサ76からの信号が入力される。制御装置90は、それら位置センサ79と回転角センサ76からの信号と前記制御プログラムに基づき、車両の風の吹出し口のモードを切り替えるモード切替装置91、風量を制御するブロア92、吹き出す風の温度を制御する温度制御装置93を制御する機能を有している。
【0040】
次に上記構成の作用を説明する。
図1及び図9(a)の状態では、切替用ロータ65の両突条部68がカム部54における第1の係合溝55に係合していて、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66としては最も高い位置である上位置に保持されている。この状態では、切替用拘束部材66における下側の第2のアーム部72の第2の係合ギヤ部74は第3の節度用回転部材6の第2の切替用ギヤ部36には係合していないが、上側の第1のアーム部71の第1の係合ギヤ部73が第2の節度用回転部材5の第1の切替用ギヤ部20に係合した状態となっている。この状態では、第2の節度用回転部材5は回転が拘束された状態となっている。このとき、制御装置90は、位置センサ79の信号により、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66が上位置にあることを検出している。制御装置90は、これに基づき、操作装置が吹出し口切替モードにあると判断する。
【0041】
この状態で、操作ノブ1が矢印A1方向或いはA2方向へ回転操作されると、操作ノブ1と一体に第1の節度用回転部材4が第2の節度用回転部材5に対して同方向へ回転する。これに伴い、第1の節度機構19における第1の節度面部8が第1の節度ピース18に対して回転することで、使用者は第1の節度機構19による節度感が得られる。すなわち、第1の節度機構19が有効化されている。このとき、第1の節度面部8の凹凸パターンは円周方向のピッチが最も大きいので、大きな節度感が得られる。またこのとき、操作ノブ1の回転に伴い、ギヤ部2及び平歯車77を介して回転角センサ76の回転軸が回転し、これに基づき回転角センサ76の検出信号が制御装置90に出力される。制御装置90は、その検出信号に基づき操作ノブ1の回転方向及び回転量を検出し、それに基づきモード切替装置91を切り替え制御する。
【0042】
前記した図1及び図9(a)の状態から、押圧部材49が、圧縮コイルばね60の付勢力に抗して下方(矢印B2方向)へ押圧操作されると、軸部材50も同方向へ移動する。すると、軸部材50下部の押圧面51が、切替用ロータ65の突条部68の斜面69を押圧する。これに伴い、切替用ロータ65は、押圧面51と斜面69の作用により、下方へ移動しながら、上から見て時計回り方向(矢印A1方向)へ回動されるようになる。そして、押圧部材49に対する押圧力を解除すると、押圧部材49及び軸部材50は上方の原位置へ復帰するが、切替用ロータ65の両突条部68がカム部54における第2の係合溝56に係合した状態となる。
【0043】
この状態では、図7及び図9(b)に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66としては最も低い位置である下位置に保持される。この状態では、切替用拘束部材66における上側の第1のアーム部71の第1の係合ギヤ部73は第2の節度用回転部材5の第1の切替用ギヤ部20には係合していないが、下側の第2のアーム部72の第2の係合ギヤ部74が第3の節度用回転部材6の第2の切替用ギヤ部36に係合した状態となる。この状態では、第2の節度用回転部材5の回転は許容(拘束解除)されるが、第3の節度用回転部材6の回転が拘束された状態となる。またこのとき、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66の移動に伴い可動部材81も同方向へ移動し、位置センサ79の操作子79aも同方向へ移動し、これに基づき位置センサ79の検出信号が制御装置90に出力される。制御装置90は、その検出信号に基づき切替用ロータ65及び切替用拘束部材66が下位置にあることを検出する。制御装置90は、これに基づき、操作装置が風量切替モードに切り替えられたと判断する。
【0044】
この状態で、操作ノブ1が矢印A1方向或いは矢印A2方向へ回転操作されると、操作ノブ1と一体に第1の節度用回転部材4が回転するとともに、第1の節度機構19における第1の圧縮コイルばね17のばね力を介して第2の節度用回転部材5も第1の節度用回転部材4と共に、第3の節度用回転部材6に対して同方向へ回転する。これに伴い、第2の節度機構35における第2の節度面部12が第2の節度ピース34に対して回転することで、使用者は第2の節度機構35による節度感が得られる。すなわち、第2の節度機構35が有効化される。このとき、第2の節度面部12の凹凸パターンは円周方向のピッチが、第1の節度面部8と第3の節度面部26との中間であるので、中くらいの節度感が得られる。またこのとき、操作ノブ1の回転に伴い、回転角センサ76の検出信号が制御装置90に出力される。制御装置90は、その検出信号に基づき操作ノブ1の回転方向及び回転量を検出し、それに基づきブロア92を切り替え制御して風量を切り替える。
【0045】
図7及び図9(b)の状態から、押圧部材49が、圧縮コイルばね60の付勢力に抗して下方(矢印B2方向)へ押圧操作されると、軸部材50下部の押圧面51が、切替用ロータ65の突条部68の斜面69を押圧し、これに伴い、切替用ロータ65は、押圧面51と斜面69の作用により、下方へ移動しながら、上から見て時計回り方向(矢印A1方向)へ回動されるようになる。そして、押圧部材49に対する押圧力を解除すると、押圧部材49及び軸部材50は上方の原位置へ復帰するが、切替用ロータ65の両突条部68がカム部54における斜面58を通過して第3の係合溝57に係合した状態となる。
【0046】
この状態では、図8及び図9(c)に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66としては中間位置に保持される。この状態では、切替用拘束部材66における第1のアーム部71の第1の係合ギヤ部73及び第2のアーム部72の第2の係合ギヤ部74は、第2の節度用回転部材5の第1の切替用ギヤ部20及び第3の節度用回転部材6の第2の切替用ギヤ部36には係合していない。この状態では、第2の節度用回転部材5及び第3の節度用回転部材6は共に回転が許容された状態(拘束が解除された状態)となる。またこのとき、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66の移動に伴い可動部材81も同方向へ移動し、位置センサ79の操作子79aも同方向へ移動し、これに基づき位置センサ79の検出信号が制御装置90に出力される。制御装置90は、その検出信号に基づき切替用ロータ65及び切替用拘束部材66が中間位置にあることを検出する。制御装置90は、これに基づき、操作装置が温度制御モードに切り替えられたと判断する。
【0047】
この状態で、操作ノブ1が矢印A1方向或いはA2方向へ回転操作されると、操作ノブ1と一体に第1の節度用回転部材4が回転するとともに、第1の節度機構19における第1の圧縮コイルばね17のばね力を介して第2の節度用回転部材5も回転し、さらに第2の節度機構35における第2の圧縮コイルばね33のばね力を介して第3の節度用回転部材6も、節度用固定部材3に対して同方向へ回転する。これに伴い、第3の節度機構44における第3の節度面部26が第3の節度ピース43に対して回転することで、使用者は第3の節度機構44による節度感が得られる。すなわち、第3の節度機構44が有効化される。このとき、第3の節度面部26の凹凸パターンは円周方向のピッチが最も細かいので、最も小さな節度感が得られる。またこのとき、操作ノブ1の回転に伴い、回転角センサ76の検出信号が制御装置90に出力される。制御装置90は、その検出信号に基づき操作ノブ1の回転方向及び回転量を検出し、それに基づき温度制御装置93を切り替え制御して風の温度を切り替える。
【0048】
図8及び図9(c)の状態から、押圧部材49が、圧縮コイルばね60の付勢力に抗して下方(矢印B2方向)へ押圧操作されると、軸部材50下部の押圧面51が、切替用ロータ65の突条部68の斜面69を押圧し、これに伴い、切替用ロータ65は、押圧面51と斜面69の作用により、下方へ移動しながら、上から見て時計回り方向(矢印A1方向)へ回動されるようになる。そして、押圧部材49に対する押圧力を解除すると、押圧部材49及び軸部材50は上方の原位置へ復帰するが、切替用ロータ65の両突条部68がカム部54における斜面59を通過して再び第1の係合溝55に係合した状態となる。この状態では、図1及び図9(a)に示すように、切替用ロータ65及び切替用拘束部材66としては再び上位置に保持される。これに伴い、制御装置90は、操作装置が再び吹出し口切替モードに切り替えられたと判断する。
【0049】
上記した実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
操作ノブ1を回転操作するロータリー式の操作装置において、押圧部材49の押圧操作に基づき、第1、第2、第3の節度機構19,35,44のうちの一つの節度機構を有効化するように切り替えることで、節度感を3種類に切り替えることができる。
【0050】
押圧部材49の押圧操作に基づき、機械的切替機構48により節度感を切り替えることが可能となるものであるから、電気的アクチュエータを用いて切り替えるものとは違い、断電状態であっても節度感の切り替えを行うことができる。
【0051】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
上記した実施形態では、切替用ロータ65の上下方向の位置を制御するカム部54の係合溝を上、中、下の3位置に設定するとともに、節度機構を3つにすることで、節度感を3種類に切り替える構成としたが、これに代えて、切替用ロータ65の上下方向の位置を制御するカム部54の係合溝を上、下の2位置に設定するとともに、節度機構を2つにすることで、節度感を2種類に切り替える構成としたり、或いは、切替用ロータ65の上下方向の位置を制御するカム部54の係合溝を上下方向の4位置に設定するとともに、節度機構を4つにすることで、節度感を4種類に切り替える構成としたりすることも可能である。
【0052】
操作ノブ1の回転方向及び回転量を1個の回転角センサ76にて検出する構成としたが、これに代えて、第1の節度用回転部材4、第2の節度用回転部材5、及び第3の節度用回転部材6に対応して、それぞれ対応する節度用回転部材の回転方向及び回転量を検出する検出手段を設ける構成とすることもできる。
【0053】
第1、第2、第3の節度機構19,35,44は、節度用回転部材の円筒部の外周面に節度面部を設けるとともに、その節度用回転部材の下側の節度用回転部材または節度用固定部材の収容部形成凸部の収容部に付勢手段としての圧縮コイルばね及び節度ピースを設ける構成としたが、節度面部と、圧縮コイルばね及び節度ピースの配置を逆にしてもよい。具体的には、節度用回転部材の円筒部の外周部に、圧縮コイルばね及び節度ピースを収容する収容部を設け、その節度用回転部材の下側の節度用回転部材または節度用固定部材に、前記節度ピースが摺動する節度面部を設ける構成とする。
【0054】
上記した実施形態では、操作装置を、吹出し口切替モードと、風量切替モードと、温度制御モードを切り替えるものの例を示したが、他のモードを切り替えるものにも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は操作ノブ、3は節度用固定部材(固定部)、4は第1の節度用回転部材、5は第2の節度用回転部材、6は第3の節度用回転部材、8は第1の節度面部、12は第2の節度面部、17は第1の圧縮コイルばね(付勢手段)、18は第1の節度ピース、19は第1の節度機構、20は第1の切替用ギヤ部、26は第3の節度面部、33は第2の圧縮コイルばね(付勢手段)、34は第2の節度ピース、35は第2の節度機構、36は第2の切替用ギヤ部、42は第3の圧縮コイルばね、43は第3のピース、44は第3の節度機構、48は機械的切替機構、49は押圧部材、52はシャフト(固定部)、54はカム部、55は第1の係合溝、56は第2の係合溝、57は第3の係合溝、65は切替用ロータ、66は切替用拘束部材、73は第1の係合ギヤ部、74は第2の係合ギヤ部、76は回転角センサ、79は位置センサ、90は制御装置(制御手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作される操作ノブと、
この操作ノブの軸方向に沿って複数配置され、それぞれ前記操作ノブと同方向に回転可能に設けられた複数の節度用回転部材と、
これら複数の節度用回転部材のうち前記軸方向に隣り合った節度用回転部材間、及び前記操作ノブから最も離れた前記節度用回転部材と固定部との間にそれぞれ設けられ、それぞれ節度用の凹凸パターンを有する節度面部及び付勢手段により対応する前記節度面部に弾性的に接触するように設けられた節度ピースを有し、互いに異なる節度感を付与する複数の節度機構と、
前記操作ノブの軸方向に押圧操作可能に設けられた押圧部材の押圧操作に基づき前記複数の節度用回転部材の回転を選択的に拘束及び解除して前記複数の節度機構の一つを有効化するように切り替える機械的切替機構と、を具備したことを特徴とするロータリー式操作装置。
【請求項2】
前記複数の節度機構における前記付勢手段の付勢力は、前記操作ノブに近い側の節度機構の付勢手段ほど大きく設定していることを特徴とする請求項1記載のロータリー式操作装置。
【請求項3】
前記機械的切替機構は、
前記操作ノブの軸方向に押圧操作可能に設けられた押圧部材と、
固定部に設けられたカム部と、
前記押圧部材の押圧操作に基づき軸方向に移動するとともに軸心周りに回動して前記カム部に係合することにより前記軸方向の位置が変化する切替用ロータと、
この切替用ロータとともに前記軸方向へ移動が可能で、かつ前記軸心周り方向への回動は阻止された状態で設けられ、前記軸方向への移動に伴い前記節度用回転部材に選択的に係合及び解除してその節度用回転部材の回転を選択的に拘束及び解除する切替用拘束部材と、を具備していることを特徴とする請求項1または2記載のロータリー式操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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