説明

ロータリ耕耘装置

【課題】 管理機等の歩行型農作業機のロータリ耕耘装置において、機体の前後方向に移動させる耕耘土量のバランスを図り乍ら、適度な速度で円滑で安定した耕耘作業を行う。【解決手段】 正転装置と逆転装置とを一体状に備えたロータリ耕耘装置において、前記正転装置と逆転装置とに夫々耕耘量が異なる形状の耕耘爪7a,7bを取付けた、また、正回転が伝達されるロータリ軸5aに、耕耘量の大きい耕耘爪7aを取付け、逆回転が伝達されるロータリ軸5bに、耕耘量の小さい耕耘爪7bを取付けた、更に、伝動ケース24の内側位置に耕耘量の小さい耕耘爪7bを、該両外側位置に耕耘量の大きい耕耘爪7aを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理機等の歩行型農作業機に係り、詳しくはそのロータリ耕耘装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
管理機等の歩行型農作業機において、作業部としてのロータリ中央正転爪の両外側に、該正転爪の軸と同軸状の回転軸を設けて、夫々の回転軸に逆転爪を装着した技術は既に知られている。(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特公平7−114561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来公知の上記特許文献1に記載のものは、上記ロータリに装着された正転爪と逆転爪とが、土との接触面積の比較的大なる略同一形状のナタ爪からなるので、耕耘作業時において、耕耘土を必要以上に前方側に飛散させてしまい〔図5(b)参照〕、この飛散土で耕耘部の中央が盛り上がる中高形状となって、耕耘作業をする際の抵抗となり、円滑な耕耘作業が出来ないとの課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の不具合を改善し、機体の前後方向に移動させる耕耘土量のバランスを図り乍ら、適度な速度での前進による円滑で安定した耕耘作業を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロータリ用伝動ケース(24)の左右に突出し、同軸状に構成された第1のロータリ軸(5a)と第2のロータリ軸(5b)とを備え、エンジン(2)からの回転を正回転として前記第1のロータリ軸(5a)に伝達すると共に、逆回転として前記第2のロータリ軸(5b)に伝達してなる、ロータリ耕耘装置において、
前記第1のロータリ軸(5a)及び前記第2のロータリ軸(5b)に、それぞれ耕耘量が異なる形状の耕耘爪(7)を取付けたことを第1の特徴とする。
【0007】
また、正回転が伝達される前記第1のロータリ軸(5a)に、耕耘量の大きい形状の耕耘爪(7a)を取付け、逆回転が伝達される第2のロータリ軸(5b)に、耕耘量の小さい形状の耕耘爪(7b)を取付けてなることを第2の特徴とする。
【0008】
更に、前記第1のロータリ軸(5a)に被嵌して前記第2のロータリ軸(5b)を配置し、
前記ロータリ用伝動ケース(24)に近い内側位置に、前記第2のロータリ軸(5b)に取付けた耕耘量の小さい形状の耕耘爪(7b)を配置し、
前記ロータリ用伝動ケース(24)から離れた外側位置に、前記第1のロータリ軸(5a)に取付けた耕耘量の大きい形状の耕耘爪(7a)を配置してなることを第3の特徴とする。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によると、正転又は逆転する第1及び第2のロータリ軸に、それぞれ耕耘量の異なる形状の耕耘爪を取付けたので、ダッシング防止量及び耕耘量のバランスを図り、ダッシングを防止しつつ、耕耘土をあまり跳上げずに、適度の耕耘高さからなる耕耘作業を行うことができる。
【0011】
また、請求項2によると、正転する第1のロータリ軸に耕耘量の大きい耕耘爪(例えばなた爪)を取付け、逆転する第2のロータリ軸に耕耘量の小さい耕耘爪(例えば直爪)を取付けたので、耕耘量の小さい耕耘爪の逆転に打勝って、耕耘量の大きい耕耘爪の正転により適度な速度での前進による適正な耕耘作業を、オペレータに負担をかけずに容易に行うことができる。
【0012】
更に、請求項3によると、内側に耕耘量の小さい形状の耕耘爪を配置し、外側に耕耘量の大きい形状の耕耘爪を配置したので、耕耘部の中央が盛り上がる中高形状となり易い耕耘跡形状を、むしろ中凹形状に近い平坦な耕耘跡形状とすることができ、また特に内側の耕耘爪を逆回転とすると、耕耘量の小さい即ち土に対する運動量の小さい形状であり、かつ土に対する運動量としては大きい逆回転である耕耘爪を内側に配置したことで、ロータリ耕耘装置の左右バランスを向上して、走行振れの少ない安定した耕耘作業を行うことができると共に、内側が逆回転であるにも拘らず、ロータリ用伝動ケース上での土溜りを減少することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に沿って本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は歩行型農作業機(管理機)Hの全体側面図であり、1は農作業機の機体であって、該機体1の中央上部にはエンジン2が備えてあり、該エンジン2の動力を、その下方の前後方向に長いミッションケース3内にある車軸4及びその前方に備えられた耕耘軸5に伝達し、図2の要部背面図で明らかな如く、前記車軸4の左右両端側には走行装置としての車輪6,6を、また、前記耕耘軸5の左右方向両側には、後述するようにロータリKを構成する複数の耕耘爪7・・・を装着して、圃場等での耕耘作業を行えるように構成されている。
【0014】
更に、前記ミッションケース3の前部側の伝動ケース24上方には、図1に記載の如く、上方に向けて扇状プレート8が延設されていて、該扇状プレート8には、前方に向けてゲージ輪9が取付けられる。そして、前記ゲージ輪9は、レバー10の位置設定操作により、前記扇状プレート8の扇状部分への取付位置を変更することによりその先端の車輪側が上下方向に調節自在となり、前記ゲージ輪9の高さを必要に応じて各種調節することにより、耕深調節等が行えるように構成されている。
【0015】
更にまた、図1で前記ミッションケース3の後部上方には、ハンドルフレーム12を介して、上方斜め後方に延びる運転操作用のループ状のハンドル13と、側方から見てこれに沿うようにして機体1の走行変速や耕耘作業への切換えを運転者が運転操作位置から操作出来るようにした変速レバー14とが延出されている。
【0016】
なお、前記運転操作用のハンドル13装着部には角度調節装置15があって、運転者が機体1の運転操作をし易い位置にハンドル13の取付角度を任意に調節したり、機体1の運搬時や収納時等にハンドル13を折り畳んで、機体1全体がコンパクトな状態に出来る構成となっている。
【0017】
ここで、16は前記変速レバー14の設定位置を案内する変速パネルであり、また、17は前記ロータリKの上部や両側部等を覆うロータリカバー、18の鎖線は、前記耕耘爪7・・・先端の回転軌跡を夫々示し、19は前記ハンドル13の上部側にあって、該ハンドル13に沿う形状に装着されたクラッチで、クラッチ入り状態では前記ハンドル13の上辺に沿う形状(図1の実線状態)となり、クラッチ切り状態では、起立した鎖線状態となる。
【0018】
また、図1の前記ロータリK後部にあるカバーは、前記ロータリKの耕耘爪7・・・で後方側に飛散させた耕耘土が必要以上に広がらないようにした飛散防止板20で、下部側は耕耘土の均平板21となっており、その詳細については後述する。
【0019】
更に、エンジン2からの動力は、前記変速レバー14の操作により、前記ミッションケース3内に収納された変速装置23を変更させて前記左右の車輪6,6及びロータリKに伝達されるものである。
【0020】
次に、前記ロータリK部分の構成の詳細を図3(a)の正断面図にて説明する。即ち、前記耕耘軸5は、前記ミッションケース3に連結した前記ロータリ用伝動ケース24先端の左右側に突出しており、その回転が正転方向の単一の軸からなる長い第1のロータリ軸5aと、該第1のロータリ軸5aに同軸状で且つ回転が逆転方向となる左右の位置にあるスリーブ状の第2のロータリ軸5b,5bとで構成されている。
【0021】
そして、前記伝動ケース24先端の中央には前記変速装置23で変速された動力をロータリKに伝達するチェン25が、前記第1のロータリ軸5aの中央に嵌着されたスプロケット26に張設されており、前記スプロケット26の左右両側に一体状又は別体状に設けた一対のウォーム歯車27,27が前記第1のロータリ軸5aと共に回転して、夫々がこれらと噛合する別途のウォーム歯車28,28を介して、前記第2のロータリ軸5b,5bに動力を伝達するので、その結果として第2のロータリ軸5b,5bは第1のロータリ軸5aと回転方向が逆となるものである。
【0022】
また、前記第1のロータリ軸5aの左右両端側には、一対のスリーブ29,29が、ピン30,30によって延設されると共に、各スリーブ29,29の左右両側周面には夫々一対のブラケット31,31aが溶接されていて、該ブラケット31,31a周囲に均等な4乃至3ヶ所〔図3(b)参照〕で夫々が複数個の緊締具32・・・を介して耕耘量の大きい耕耘爪(例えば土との接触面積の大なるナタ爪)7a・・・が装着されている。そして、該各耕耘爪(ナタ爪)7a・・・は、その先端側が正面視で湾曲した形状であると共に、各スリーブ29,29の両側から両湾曲部分が対向する状態に装着される一方、両スリーブ29,29の内側ブラケット31a,31aには、夫々2本の耕耘爪(ナタ爪)7a,7aの湾曲部が反対側を向く位置で、背中合わせに緊締具32,32にて装着されている〔図3(a)参照〕。
【0023】
更に、前記第2のロータリ軸5b,5bの周面部にも、ブラケット33,33が夫々溶接されていて、該ブラケット33,33周囲に均等な4乃至3ヶ所で緊締具32・・・を介して耕耘量の小さい耕耘爪(例えば土との接触面積の小なる直爪)7b・・・が夫々装着されている。そして、該各耕耘爪(直爪)7b・・・は、その形状が、所謂クランク形状を呈していて、先端側の直線状となっている部分が互いに内側に向くように装着されていて、爪の回転時には前記伝動ケース24の両側壁に近い部分を通過するようになっている。
【0024】
従って、ロータリKの耕耘爪7(7a,7b)は、内側が逆転する耕耘量の小さい耕耘爪(直爪)7b・・・で構成されてその耕耘爪(直爪)7b・・・の回転による前方への飛散土は少なく、更に、伝動ケース24の両側壁に付着しようとする耕耘土を取除くものである。
【0025】
また、左右両側が正転する耕耘量の大きい耕耘爪(ナタ爪)7a・・・で構成されているので、ダッシング防止量と耕耘量のバランスを図りながら機体1が前進し、ダッシングを防止しながら図5(a)に示すように、耕耘土を余り跳上げずに適度の耕耘高さからなる耕耘作業を行うことができるものである。
【0026】
更に、図4は飛散防止板20部分を前方から見た拡大詳細図であって、前記左右の飛散防止板20,20はゴム等の弾性材又は金属板等から構成され、前記中央に位置する逆転耕耘爪7b・・・の回転によって飛散された耕耘土が必要以上に拡散しないようにしており、下方側の均平板21は、ゴム等の弾性材又は弾性作用のある金属板等から構成されていて、耕耘爪7によって耕起された圃場の表面を均平化して前記伝動ケース24の底部で付けられる筋状の溝をも消すことが出来る。
【0027】
そして、これら飛散防止板20や均平板21の機体1への取付けは、ミッションケース3の左右の括れ部分(伝動ケース24)に設けたプレート35,35に、夫々上下のボルト36,36によって取付けられ、更に、上部の飛散防止板20,20と下部の均平板21とは、その上下の位置を一部分重複させて、別途のボルト37・・・にて装着し、その全体形状を保ち、強度を維持できるように構成されている。
【0028】
本発明のものは、以上の構成よりなるもので、機体1での前進・作業時には、変速レバー14を作業位置にセットすれば、エンジン2の動力が車軸4及び耕耘軸5に伝達されて、機体1の走行を行うと共に、ロータリKの耕耘爪7・・・が回転して耕耘作業が行われるものである。
【0029】
この時、同軸状に設けた耕耘量の小さい耕耘爪(例えば直爪)7b・・・は逆転し、左右両側に設けた耕耘量の大きい耕耘爪(例えばナタ爪)7a・・・は正転しながら作業が行われる。そして、正転又は逆転する第1及び第2のロータリ軸5a,5bに夫々耕耘量が異なる耕耘爪7a,7b・・・を取付けたので、ダッシングを防止することは勿論、耕耘量のバランスを図り、耕耘土を余り跳上げずに適度の耕耘高さとして耕耘作業を行うことができる。
【0030】
また、正転する第1のロータリ軸5aに耕耘量の大きい耕耘爪7a・・・を取付け、逆転する第2のロータリ軸5b,5bに耕耘量の小さい耕耘爪7b・・・を取付けたので、耕耘量の小さい耕耘爪7bの逆転に打勝って、耕耘量の大きい耕耘爪7aの正転により適度な速度での機体1の前進による適正な耕耘作業を、オペレータに負担をかけずに容易に行うことができる。
【0031】
更に、内側に耕耘量の小さい形状の耕耘爪7bを配置し、外側に耕耘量の大きい形状の耕耘爪7aを配置したので、耕耘部の中央が盛り上がる従来の中高形状〔図5(b)参照〕となり易い耕耘跡形状を、むしろ中凹形状に近い平坦な耕耘跡形状〔図5(a)〕とすることが出来、特に内側の耕耘爪7bを逆回転すると、耕耘量の小さい即ち土に対する運動量の小さい形状であり、かつ土に対する運動量としては大きい逆回転である耕耘爪7bを内側に配置したことで、ロータリ耕耘装置の左右バランスを向上して、左右への走行振れの少ない安定した耕耘作業を行うことができると共に、内側が逆回転であるにも拘らず、ロータリ用伝動ケース24上での土溜りを減少させることができる。
【0032】
なお、本発明の実施例ではロータリKを歩行型農作業機(管理機)Hの前方に配置した場合を示したが、該ロータリKを歩行型農作業機(管理機)Hの後方に配置しても良いし、第1のロータリ軸5aを正転、第2のロータリ軸5b,5bを逆転としたが、これを逆に回転させて、正転側に耕耘量の大きい耕耘爪7a・・・を、逆転側に耕耘量の小さい耕耘爪7b・・・を装着しても良いものである。
【0033】
更に、当実施例では、耕耘量の異なる大小の耕耘爪7a,7bの形状を、ナタ爪,直爪として示したが、必ずしもこの形状に限定されず、同一効果を奏するものであれば良く、又、前記ブラケット31,31a,33の周囲に装着した耕耘爪7の数も3乃至4本に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】歩行型農作業機(管理機)の全体側面図。
【図2】同上要部の背面図。
【図3】ロータリ部分の構成を示し、(a)は正断面図、(b)はブラケットに耕耘爪を3ヶ所取付けた場合の部分側面図。
【図4】飛散防止板部分を前方から見た拡大詳細図。
【図5】歩行型農作業機(管理機)で耕耘後の圃場の作用説明図で、(a)は本案、(b)は従来を夫々示す。
【符号の説明】
【0035】
1 機体
3 ミッションケース
5a 第1のロータリ軸
5b 第2のロータリ軸
7a 耕耘量の大きい耕耘爪
7b 耕耘量の小さい耕耘爪
20 飛散防止板
21 均平板
24 伝動ケース
24a 広幅基端部
29 スリーブ
31,31a,33 ブラケット
35 プレート
H 歩行型農作業機(管理機)
K ロータリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ用伝動ケースの左右に突出し、同軸状に構成された第1のロータリ軸と第2のロータリ軸とを備え、エンジンからの回転を正回転として前記第1のロータリ軸に伝達すると共に、逆回転として前記第2のロータリ軸に伝達してなる、ロータリ耕耘装置において、
前記第1のロータリ軸及び前記第2のロータリ軸に、それぞれ耕耘量が異なる形状の耕耘爪を取付けたことを特徴とするロータリ耕耘装置。
【請求項2】
正回転が伝達される前記第1のロータリ軸に、耕耘量の大きい形状の耕耘爪を取付け、逆回転が伝達される第2のロータリ軸に、耕耘量の小さい形状の耕耘爪を取付けてなる、
請求項1記載のロータリ耕耘装置。
【請求項3】
前記第1のロータリ軸に被嵌して前記第2のロータリ軸を配置し、
前記ロータリ用伝動ケースに近い内側位置に、前記第2のロータリ軸に取付けた耕耘量の小さい形状の耕耘爪を配置し、
前記ロータリ用伝動ケースから離れた外側位置に、前記第1のロータリ軸に取付けた耕耘量の大きい形状の耕耘爪を配置してなる、
請求項1又は2記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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