説明

ロータリ耕耘装置

【課題】整地体のリヤカバーに対する回動角を規制して、整地体とリヤカバーとの干渉を防止する。
【解決手段】リヤカバー22の下部にアーム31を介して回動自在に支持された整地体30では、第1の規制手段により、アーム31の上方向及び下方向の回動を規制すると共に、第2の規制手段により整地体30の上方向及び下方向の回動を規制して、リヤカバー22に対する整地体30の回動を、上方回動位置及び下方回動位置に規定して整地体30がリヤカバー22と干渉することを防止している。また、上方回動位置にある整地体30の重心は、整地体の回動中心よりも後方に位置しているので、整地体30の自重により下方回動位置側へ戻ることができる。さらに、整地体30の左右両端には、延長整地体40が設けられているので、圃場面の均平幅を拡げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行機体に装着され、圃場を耕すロータリ耕耘装置に係り、詳しくは耕耘爪の後部を覆うリヤカバーに連結されて、圃場面を均平にする整地体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耕耘爪の後方を覆うリヤカバーに、横軸により回動自在に整地体を連結したロータリ耕耘装置が知られている。該ロータリ耕耘装置は、トラクタの後部に3点リンク装置を介して装着され、かつ左右のリフトアームを油圧シリンダにより昇降自在に構成され、圃場面に凹凸があるとしても、所定耕深にて略々水平になるように耕耘できる。また、耕耘砕土はリヤカバーの後部で押圧されると共に、整地体によっても押圧しており、耕耘後の土壌を均平にして田植などに適した圃場面を作り出している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−51604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記整地体は、リヤカバーにアームを介して回動自在に取付けられているので、整地体が大きな砕土塊と接触した際には、押圧しきれずに上方へ跳ね上げられてしまい、整地体とリヤカバーが干渉する場合がある。跳ね上げられた整地体は、リヤカバー側へ傾倒するので、自然力によっては元の圃場面と接触する位置に戻ることができず、耕耘作業等を中断して整地体を圃場面と接触する位置に戻す必要があった。
【0005】
さらに、トラクタがロータリ耕耘装置の後方を持上げた状態で凹凸状の路上や圃場を移動する際には、振動によって整地体が上方へ跳ね上げられる場合があり、この場合にも耕耘作業開始前に整地体を圃場面と接触する位置に戻す必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、リヤカバーに連結された整地体の回動を規制する第1及び第2の規制手段によって、整地体が跳ね上がった側の位置となる上方回動位置と、整地体が圃場面と接触する側の位置となる下方回動位置とを規定して、リヤカバーに対する整地体の回動を規制することにより、もって上記課題を解決したロータリ耕耘装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、耕耘爪(16)の後部を、ロータリカバー(21)に回動自在に支持されたリヤカバー(22)で覆い、該リヤカバー(22)の下部にアーム(31)を介して回動自在に支持された整地体(30)により、耕耘砕土を押えつけてなる、ロータリ耕耘装置(1)において、
前記リヤカバー(22)に対する前記アーム(31)の上方向及び下方向の回動を規制する第1の規制手段(31b、31e、37)と、
前記アーム(31)に対する前記整地体(30)の上方向及び下方向の回動を規制する第2の規制手段(31d、31f、39)と、を備え、
前記整地体(30)は、前記リヤカバー(22)に対する下方回動位置を規定されると共に、前記リヤカバー(22)に対する上方回動位置を規定される、
ことを特徴とするロータリ耕耘装置(1)にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記整地体(30)が前記リヤカバー(22)に対して上方回動位置に規定された状態において、前記整地体の重心(30G)が、前記アームの前記リヤカバーに対する回動中心を通る鉛直線上より後方に位置している、
請求項1記載のロータリ耕耘装置(1)にある。
【0009】
請求項3に係る本発明は、前記整地体(30)の左右端に、拡張時には底面が前記整地体の整地底面(30a)と面一となり、格納時には底面が前記整地体の上方に格納できる延長整地体(40)を設け、
前記整地体(30)が上方回動位置に規定された状態において、前記格納位置にある前記延長整地体(40)が前記リヤカバー(22)と干渉しない位置に配置されてなる、
請求項1または2記載のロータリ耕耘装置にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、リヤカバーに回動自在に支持したアームは、第1の制御手段により上方向及び下方向の回動が規制され、さらに、アームに回動自在に支持した整地体は、第2の制御手段により上方向及び下方向の回動が規制されているので、整地体は、リヤカバーに対する上方回動位置を規定できると共に、下方回動位置を規定でき、整地体が大きな砕土を乗越える等して跳ね上げられて回動した場合であっても、リヤカバーと干渉することがない。
【0012】
更に、ロータリ作業機を上昇して路上等を走行する際に、路面の凹凸による振動で整地体が跳ね上げられた場合であっても、整地体は、リヤカバーに対する上方回動位置を規定している共に、下方回動位置を規定しているので、整地体がリヤカバーと干渉することがない。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、上方回動位置に規定された整地体の重心は、アームのリヤカバーに対する回動中心と、整地体のアームに対する回動中心を通る鉛直線上より後方に位置しているので、跳ね上げられて上方回動位置にある整地体は、自重によって下方回動位置の方向に回動することができ、整地体を常に圃場面と接触する状態で保持することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、整地体の左右端には、延長整地体が設けられているので、リヤカバーの押圧によりリヤカバー側方からはみ出た砕土であっても、拡張した延長整地体によって均平にして綺麗な圃場面に仕上げることができる。また、延長整地体は、整地体の上方に格納することができるので、耕耘作業終了後にはロータリ耕耘装置の横幅を拡げることなく移動等できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。ロータリ耕耘装置1は、図1及び図2に示すように、トラクタ(走行機体)2の後方に3点リンク装置3を介して装着される。3点リンク装置3は、2本のロワーリンク5と、1本のトップリンク6とを有しており、2本のロワーリンク5は、トラクタ機体2の後部左右にピンにて連結されると共に、リフトロッド7を介してリフトアーム9に連結している。またトップリンク6は、トラクタ機体の後部中央に設けられたブラケット10に連結されており、これらロワーリンク及びトップリンクのロータリ側は、ヒッチ11に連結されている。上記左右のリフトロッド7の一方は、油圧シリンダ(図示せず)が介在しており、該油圧シリンダの伸縮により、トラクタ2に対してロータリ耕耘装置1を左右方向に揺動自在に制御している。
【0016】
ロータリ耕耘装置1は、トップマスト及び伝動ケース等からなる耕耘機体12を有しており、該機体が前記ヒッチ11に装着される。該機体の伝動装置には、トラクタ機体2のPTO軸からの出力がヨークを介して入力されており、その動力を、チェーンケース13内のチェーンを介して耕耘軸15に動力伝達する。耕耘軸15には多数の耕耘爪16が取付けられており、これら耕耘爪16の回転によりロータリ耕耘が行われる。また、前記機体12から後方に延びるアーム17を介してツールバー19が配置されており、該ツールバー19はハンドル20により高さ調節自在となっている。
【0017】
前記耕耘機体12には、上記耕耘爪16の上部を覆うようにロータリカバー21が前後方向調整自在に配置されており、該ロータリカバー21の後部にはリヤカバー22が横方向(機体左右方向)に延びる軸24を中心に回動自在に支持されていると共に、前記ロータリカバー21に、耕耘爪16の両側方を覆うようにサイドカバー23が取付けられている。また、ロータリカバー21及びリヤカバー22の外側における左右2箇所にそれぞれブラケット25,26が固設されており、下方ブラケット26に枢支されると共に上方ブラケット25に摺動自在にロッド27が配置されており、該ロッドにはスプリング(図示せず)が縮設されて、リヤカバー22を下方、即ち圃場面に向けて押圧するように付勢している。更に、上記ロッド27の上方突出量を検出する等して、リヤカバー22のロータリカバー21に対する回動量を検出し、ワイヤ等により該検出値がトラクタ2の制御部に送信される。
【0018】
そして、前記リヤカバー22の下端には整地体30が連結している。整地体30は、略々リヤカバー22と同じ幅からなり、かつリヤカバー22の厚さより厚い所定厚さの鋼材などを中空にして構成されており、耕耘砕土を自重圧にて押付ける比較的重い所定重量を有する。該整地体30は、リヤカバー22の左右両側面にアーム31,31を介して連結している。
【0019】
アーム31は、図3に詳示するように、リヤカバー側に丸孔31a及び突起31bを有し、かつ整地板側に長孔31c及び突起31d、突起31fを有しており、突起31bと突起31fとを繋ぐ斜縁31eにより、全体として側面視略3角形状を呈している。上記アーム31の丸孔31aは、リヤカバー22の下端左右に設けた(第1の)横軸32が嵌合している。整地体30の左右両側面にはピン(第2の横軸)35が突出形成されており、該ピンに前記アーム31の長孔31cが嵌合してワッシャ38を介して回動自在となっている。
【0020】
更に、リヤカバー22の左右側面にはストッパ37が突設しており、該ストッパ37は、アーム31が下方に回動した位置では突起31bに当接し(図4参照)、アーム31が上方に回動した位置では斜縁31eに当接して(図3参照)、リヤカバー22に対するアーム31の上方向及び下方向の回動を規制する第1の規制手段を構成している。
【0021】
同様に、整地体30の左右側面にもストッパ39が突設しており、該ストッパ39は、整地体30が下方に回動した位置では突起31dに当接し(図4参照)、整地体30が上方に回動した位置では突起31fに当接して(図3参照)、アーム31に対する整地体30の上方向及び下方向の回動を規制する第2の規制手段を構成している。
【0022】
また、図2および図3に示すように、整地体30の左右端部には、整地体の均平幅を拡げる延長整地体40が折畳自在に取付けられている。延長整地体40は、整地時には整地体30の左右端部から拡張して、整地体30の整地底面30aと面一となって耕耘面の均平幅を拡げる整地片44を有しており、整地片44は、上面側に固着した支持体42と、整地体30に固着した台座41とが連結ピン43、43、および付勢バネ45により揺動自在に連結している。
【0023】
ついで、本ロータリ耕耘装置1による作用について説明する。非作業状態にあっては、トラクタ2のリフトアーム9が上方に回動した状態にあり、ロータリ耕耘装置1は、整地体30が圃場面から離れた上方位置にある(図5参照)。この状態では、図4に示すように、リヤカバー22は下方に垂れ下がった状態にあり、アーム31は、その突起31bがストッパ37に当接して、リヤカバー22に対して斜め下方に傾斜した状態、すなわち、第1の規制手段により下方向の回動が規制された位置にある。更に整地体30は、アーム31の突起31dにストッパ39が当接して、アーム31に対して斜め下方に傾斜した状態、すなわち、第2の規制手段により下方向の回動が規制された位置にある。これにより、整地体30は、リヤカバー22に対して急勾配で斜め下方に傾斜した下方回動位置を規定している。
【0024】
この状態から、耕耘(含代掻)作業を行うべく、耕耘爪16を回転すると共にロータリ耕耘装置1を下降すると、深田であっても、耕耘爪16よりも先に整地体30が接地する。この際、整地体30は斜め下方に向けて傾斜しているので、ロータリ耕耘装置1の更なる下降に伴い、必ず後方に向けて回動する。そして、耕耘爪16が圃場面に接地して土壌を後方に跳ね飛ばすと、例えリヤカバー22が接地していなくとも、整地体30はリヤカバー22よりも先に接地しているので、上記後方に跳ね飛ばされた土壌を後方に飛散することはない。
【0025】
次に、ロータリ耕耘装置1は、図1に示すように、予め設定された耕耘深度になるまで下降し、トラクタ2と共に圃場内を走行することによって耕耘が進行する。耕耘作業にあっては、トラクタ2が走行する耕盤に凹凸がある等により、耕深が変化しても、リヤカバー22が枢支軸24を中心に回動することに基づき、リフトアーム9が昇降して、耕深が一定になるように制御される(耕深制御)。また、トラクタ2が上記耕盤の凹凸等により前後方向に傾斜しても、傾斜センサの信号に基づきリフトロッド7の一方の油圧シリンダが伸縮してロータリ耕耘装置を水平状態になるように制御する(水平制御)。
【0026】
耕耘爪16により耕耘砕土され、跳ね上げられた土塊は、リヤカバー22に当接して、膨軟状態で該リヤカバーの円弧形状部22aにて押えられる。この際、例え上記耕耘爪16からの土塊がリヤカバー22の下面から吹き出しても、整地体30が該吹き出した土塊をその自重で押える。また、リヤカバーの円弧形状部22aが耕耘跡上を滑り、かつ上記耕耘爪16により撹拌された排ワラ等による膨軟にされた土塊の復元力が相俟って、リヤカバー22のみでは耕耘跡が波状に凹凸になること(ささくれと呼ぶ)があるが、上記整地体30が、耕耘跡を自重で押えることにより、均平に均す。
【0027】
さらに、円弧形状部22aに押圧されて、サイドカバー23からはみ出てリヤカバー22よりも側方に押し退けられた砕土は、整地体30の両端部に取り付けられた延長整地体40により均平にすることができ、均平端を綺麗に仕上げている。
【0028】
また、耕耘作業中、希に耕耘砕土が大きな塊の状態で整地体30に到達する場合があるが、このような砕土塊を整地体30の自重で押さえつけることができないので、図3に示すように、リヤカバー22に対して整地体30が上方へ跳ね上げられる。整地体30が跳ね上げられた状態では、アーム31は、その斜縁31eがストッパ37に当接して、リヤカバー22に対して斜め上方に傾斜した位置、すなわち、第1の規制手段により上方向の回動が規制された位置となって、アーム31の上回転を規制すると共に、整地体30は、ストッパ39が突起31fに当接して、アーム31に対して斜め上方に傾斜した位置、すなわち、第2の規制手段により上方向の回動が規制された位置となって、整地体30の上回転が規制されている。結果として、整地体30は、リヤカバー22に対して上方に傾斜した上方回動位置を規定している。
【0029】
同様に、トラクタ2がロータリ耕耘装置1の後部を持上げて路上などを走行する際には、路面の凹凸により整地体30が跳ね上げられる場合があるが(図5参照)、本状態でも、上述した跳ね上がり状態と同じく、リヤカバー22に対するアーム31の回動規制、およびアーム31に対する整地体30の回動規制が働き、整地体30の回転角を規制することができ、整地体30、および延長整地体40が、リヤカバー22と干渉しない位置(上方回動位置)で固定することができる。
【0030】
跳ね上がり状態により上方回動位置にある整地体30では、整地体30の重心30Gが、第1の横軸32の回動中心を通る鉛直線上より後方に位置しているので、整地体30の自重によって、図4に示す下方向回動位置に復帰することができ、整地体30は、常に圃場面を均平できる状態を維持している。また、重心30Gは、第1の横軸32の回転中心と第2の横軸35の回転中心とを結ぶ線である移動線30Lよりも後方に位置していれば、より速やかに下方向回動位置に復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るロータリ耕耘装置の耕耘作業状態を示す側面図。
【図2】本発明に係るロータリ耕耘装置の平面図。
【図3】上方回動位置にある整地体部分を示す拡大側面図。
【図4】下方回動位置にある整地体部分を示す拡大側面図。
【図5】ロータリ耕耘装置が走行状態にある側面図
【符号の説明】
【0032】
1 ロータリ耕耘装置
2 走行機体(トラクタ)
16 耕耘爪
21 ロータリカバー
22 リヤカバー
30 整地体
30G 重心
30L 移動線
31 アーム
31b 突起
31d、31f 突起
31e 斜縁
32 第1の横軸
35 第2の横軸
37,39 ストッパ
40 延長整地体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘爪の後部を、ロータリカバーに回動自在に支持されたリヤカバーで覆い、該リヤカバーの下部にアームを介して回動自在に支持された整地体により、耕耘砕土を押えつけてなる、ロータリ耕耘装置において、
前記リヤカバーに対する前記アームの上方向及び下方向の回動を規制する第1の規制手段と、
前記アームに対する前記整地体の上方向及び下方向の回動を規制する第2の規制手段と、を備え、
前記整地体は、前記リヤカバーに対する下方回動位置を規定されると共に、前記リヤカバーに対する上方回動位置を規定される、
ことを特徴とするロータリ耕耘装置。
【請求項2】
前記整地体が前記リヤカバーに対して上方回動位置に規定された状態において、前記整地体の重心が、前記アームの前記リヤカバーに対する回動中心を通る鉛直線上より後方に位置している、
請求項1記載のロータリ耕耘装置。
【請求項3】
前記整地体の左右端に、拡張時には底面が前記整地体の整地底面と面一となり、格納時には底面が前記整地体の上方に格納できる延長整地体を設け、
前記整地体が上方回動位置に規定された状態において、前記格納位置にある前記延長整地体が前記リヤカバーと干渉しない位置に配置されてなる、
請求項1または2記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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