説明

ローダ・アンローダのエアー圧式制御装置およびローダ・アンローダの制御方法

【課題】スイングアームの初速を遅くする必要がなく、しかもスイングアームの停止時の衝撃を小さくすることができる。
【解決手段】タイヤ搬入・搬出用のスイングアームと、スイングアームを回転させるエアーシリンダーと、エアーシリンダーを制御する制御手段とを備えており、エアーシリンダーは、ピストンにより駆動室および逆噴射室に区分けされるシリンダーハウジングを備えており、制御手段は、駆動室に駆動エアーを供給してスイングアームを回転させ、逆噴射室に逆噴射エアーを供給してスイングアームのスイング速度を減速させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫機に用いられるローダ・アンローダのエアー圧式制御装置およびローダ・アンローダの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローダは、グリーンタイヤをタイヤ加硫機に搬入するものであり、アンローダは、加硫済タイヤをタイヤ加硫機から搬出するものである。
【0003】
ローダ・アンローダの制御装置は、タイヤ搬入・搬出用のスイングアームを備えており、このスイングアームの速度を制御してタイヤの生産性を向上させるための技術が種々提案されており、ローダ・アンローダの制御方法についても種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
図5は、従来のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置を模式的に示す図である。図5に示すローダ・アンローダの制御装置は、スイングアーム100の駆動源としてエアーシリンダー101を用いたものである。エアーシリンダー101は、速度制御が困難であるため、スイングアーム100の停止位置にショックアブソーバー(ショック吸収手段)102を配置し、スイングアーム100をショックアブソーバー102に衝突させて強制的に停止させるようになっている。
【0005】
このような構成のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置は、スイングアーム100の初速を速くすることにより、タイヤの生産性を向上させることができるが、スイングアーム100がショックアブソーバー102に衝突するときの衝撃力が大きくなる。
【0006】
このため、スイングアーム100の停止時にスイングアーム100が大きく跳ね返り、スイングアーム100のバウンドが収束するまでの時間が長くなり、タイヤの生産性に悪影響を与える。また、ショックアブソーバー102に毎回大きな衝撃力が加えられるため、ショックアブソーバー102の磨耗周期が短くなり、高価なショックアブソーバー102のメンテナンス費用が高くなる。また、ローダの場合には、スイングアーム100の停止時の衝撃により、タイヤ加硫機へのタイヤの投入位置がずれて不良品が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−38735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、これらの問題を解決するため、スイングアームの初速を遅くしてスイングアームを停止させるときの衝撃を和らげる制御方法も提案されていたが、タイヤの生産性が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、スイングアームの初速を遅くする必要がなく、しかもスイングアームの停止時の衝撃を小さくすることができるローダ・アンローダのエアー圧式制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
グリーンタイヤをタイヤ加硫機に搬入するローダ、および加硫済タイヤを前記タイヤ加硫機から搬出するアンローダを制御するローダ・アンローダのエアー圧式制御装置であって、
タイヤ搬入・搬出用のスイングアームと、
前記スイングアームを回転させるエアーシリンダーと、
前記エアーシリンダーを制御する制御手段と
を備えており、
前記エアーシリンダーは、ピストンにより駆動室および逆噴射室に区分けされるシリンダーハウジングを備えており、
前記制御手段は、前記駆動室に駆動エアーを供給して前記スイングアームを回転させ、前記逆噴射室に逆噴射エアーを供給して前記スイングアームのスイング速度を減速させるように制御することを特徴とするローダ・アンローダのエアー圧式制御装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置を用いたローダ・アンローダの制御方法であって、
前記スイングアームの出発点から到達点までの間に、第1区間、第2区間、第3区間が設けられ、
前記第1区間では、前記駆動室に前記駆動エアーを供給して前記スイングアームを回転させ、
前記第2区間では、前記駆動室への前記駆動エアーの供給を停止すると共に、前記逆噴射室に前記逆噴射エアーを供給して前記スイングアームのスイング速度を減速させ、
前記第3区間では、前記駆動室への前記駆動エアーの供給を再開すると共に、前記逆噴射室への前記逆噴射エアーの供給を停止して前記スイングアームのスイング速度をソフトランディング状態にする
ことを特徴とするローダ・アンローダの制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、スイングアームの初速を遅くする必要がなく、しかもスイングアームの停止時の衝撃を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置に用いられるエアーシリンダーを模式的に示す図である。
【図3】スイングアームのスイング速度の変化を示す図である。
【図4】アンローダにおけるスイングアームのスイング速度の変化を示す図であって、(a)はスイングアームをサーボモータにより回転させる従来例に関するものであり、(b)は本発明の実施の形態に関するものである。
【図5】従来のローダ・アンローダの制御装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置を模式的に示す図である。図2は、本発明の実施の形態のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置に用いられるエアーシリンダーを模式的に示す図である。
【0016】
1.ローダ・アンローダのエアー圧式制御装置
図1に示すように、ローダ・アンローダのエアー圧式制御装置は、タイヤ搬入・搬出用のスイングアーム1と、エアーシリンダー2と、エアーシリンダー2を制御する制御手段3とを備えている。
【0017】
スイングアーム1は、タイヤ加硫機用のローダ(図示省略)およびアンローダ(図示省略)に使用されるものである。スイングアーム1の一端部は、図外の支持体に回転自在に取り付けられ、スイングアーム1の先端部には、タイヤの把持部5が取り付けられている。
【0018】
また、図1に示すように、スイングアーム1の停止位置には、ショックアブソーバー4が設けられている。
【0019】
エアーシリンダー2は、スイングアーム1を回転させることにより、スイングアーム1のタイヤの把持部5を移動させるものである。図2に示すように、エアーシリンダー2は、シリンダーハウジング2aと、ピストンロッド2bと、シリンダーハウジング2a内を往復するピストン2cとを備えている。
【0020】
シリンダーハウジング2a内は、ピストン2cにより駆動室および逆噴射室を形成する第1室C1および第2室C2に区分けされている。また、第1室C1および第2室C2にはそれぞれ吸気ポート(図示省略)および排気ポート(図示省略)が設けられている。
【0021】
また、第1室C1および第2室C2は、それぞれ駆動室および逆噴射室を兼ねている。すなわち、エアーシリンダー2は、タイヤの把持部5を2つの点(出発点、到達点)の間を往復動させるために、往動時には、第1室C1に駆動エアーを供給し、第2室C2に逆噴射エアーを供給する一方、復動時には、第2室C2に駆動エアーを供給し、第1室C1に逆噴射エアーを供給する。
【0022】
エアーシリンダー2のシリンダーハウジングは図外の支持体に取り付けられ、エアーシリンダー2のピストンロッド2bの先端は、スイングアーム1に回転自在に取り付けられている。
【0023】
制御手段3は、エアー供給源(図示省略)に接続されるエアー供給路6から分岐する分岐路6a、6bと、電磁弁7と、電磁弁7の制御部(図示省略)とを備えており、分岐路を開閉制御することにより、エアーシリンダー2の第1室C1および第2室C2にエアーを選択的に供給するものである。なお、前記制御部については、タイマー制御であり、例えば、遅延タイマーが用いられる。
【0024】
2.ローダ・アンローダの制御方法
図3は、スイングアームのスイング速度の変化を示す図である。図3の左側縦軸はスイングアームのスイング速度を表わし、右側縦軸はショックアブソーバーへの衝撃力を表わし、横軸は時間経過を表わしている。
【0025】
また、曲線L1、L2、L3は、スイング速度とショックアブソーバーへの衝撃と時間経過との関係を示しており、曲線L1、L2は、逆噴射機能のないエアーシリンダーを用いた場合の曲線であり、スイング速度を途中で減速していない。また、曲線L2は、曲線L1よりも初速を速くなるように設定している。これに対して、曲線L3は、逆噴射機能を有する本実施の形態の曲線を示している。
【0026】
図3に示すように、本実施の形態の場合は、スイングアーム1が出発点から到達点に至る区間は、スイング速度の面から第1区間(始動加速区間)A、第2区間(減速区間)B、第3区間(速度微調整区間)Cに分けられている。
【0027】
図3に示すように、第1区間では、駆動室に駆動エアーを供給してスイングアーム1を始動加速させる。
【0028】
次に、第2区間では、駆動室への駆動エアーの供給を停止すると共に、逆噴射室に逆噴射エアーを供給してスイングアーム1のスイング速度を減速させる。すなわち、スイング速度がバウンドライン(ショックアブソーバー4の大きな衝撃を与えないための指標となる速度ライン)を超えた時点で、エアーを逆噴射させる。
【0029】
次に、第3区間では、駆動室への駆動エアーの供給を再開すると共に、逆噴射室への逆噴射エアーの供給を停止してスイング速度をソフトランディング状態にすることにより、ショックアブソーバーへの衝撃力を極力小さくする。
【0030】
このように、本実施の形態では、スイングアーム1が到達点に達する前に、第2区間においてスイングアーム1を減速するため、スイングアーム1の停止時の衝撃力を小さくすることができる。しかも、第1区間において、スイング速度を上げることにより、タイヤの生産性を向上させることができる。
【0031】
3.次に、スイングアームの制御内容について具体的に説明する。
図4は、アンローダにおけるスイングアームのスイング速度の変化を示す図であって、(a)は、サーボモータを用いて、スイングアームを回転させる従来例に関するものであり、(b)は本発明の実施の形態に関するものである。また、図4の縦軸はスイング速度を表わし、横軸は時間経過を表わしている。
【0032】
アンローダの場合には、スイングアーム1により、タイヤ加硫機の金型から加硫済タイヤを取出してポストキュアインフレータ(PCI)まで搬送し、加硫済タイヤを解放してリム装置にセットする。
【0033】
スイングアーム1は、タイヤ加硫機の金型中心と、ポストキュアインフレータ(PCI)のリム装置中心との間を往復し、また、スイングアーム1の待機位置は、金型中心とリム装置中心との間に位置する。
【0034】
スイングアーム1の具体的な動作は、図4(b)に示す通りである。
(1)スイングアーム1のタイヤの把持部5は、待機位置(出発点イ)から、加速、減速、再加速を経て、金型中心位置(到達点ロ)に到達し、加硫済タイヤを把持する。
【0035】
(2)次に、金型中心位置(出発点ロ)から、加速、減速、再加速を経て、リム装置中心位置(到達点ハ)に到達して加硫済タイヤを解放する。
【0036】
(3)次に、リム装置中心位置(出発点ハ)から、加速、減速、再加速を経て、待機位置(到達点ニ)に到達する。
【0037】
そして、本実施の形態のように逆噴射を利用した場合には、サーボモータを用いて、上記(1)〜(3)の工程を行った場合と比べて、減速時間をt短縮でき、このためトータル時間が短くなって生産性が向上することが分かる。なお、破線は、第2区間Bおよび第3区間Cを示す。
【0038】
4.本実施の形態の効果
(1)本実施の形態によれば、スイングアーム1が到達点に達する前に、スイングアーム1を減速させることができるため、スイングアーム1の停止時の衝撃を小さくすることができる。
【0039】
(2)これにより、ショックアブソーバー4のメンテナンス費用を低減でき、また、タイヤ投入位置のずれによる不良品の発生を抑えることができる。
【0040】
(3)しかも、スイングアーム1の初速を充分に速くすることができるため、タイヤの生産性の要求にも応えることができる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 スイングアーム
2 エアーシリンダー
2a シリンダーハウジング
2b ピストンロッド
2c ピストン
3 制御手段
4 ショックアブソーバー
5 タイヤの把持部
6 エアー供給路
6a、6b 分岐路
7 電磁弁
100 スイングアーム
101 エアーシリンダー
102 ショックアブソーバー
A 第1区間
B 第2区間
C 第3区間
C1 第1室
C2 第2室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤをタイヤ加硫機に搬入するローダ、および加硫済タイヤを前記タイヤ加硫機から搬出するアンローダを制御するローダ・アンローダのエアー圧式制御装置であって、
タイヤ搬入・搬出用のスイングアームと、
前記スイングアームを回転させるエアーシリンダーと、
前記エアーシリンダーを制御する制御手段と
を備えており、
前記エアーシリンダーは、ピストンにより駆動室および逆噴射室に区分けされるシリンダーハウジングを備えており、
前記制御手段は、前記駆動室に駆動エアーを供給して前記スイングアームを回転させ、前記逆噴射室に逆噴射エアーを供給して前記スイングアームのスイング速度を減速させるように制御することを特徴とするローダ・アンローダのエアー圧式制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のローダ・アンローダのエアー圧式制御装置を用いたローダ・アンローダの制御方法であって、
前記スイングアームの出発点から到達点までの間に、第1区間、第2区間、第3区間が設けられ、
前記第1区間では、前記駆動室に前記駆動エアーを供給して前記スイングアームを回転させ、
前記第2区間では、前記駆動室への前記駆動エアーの供給を停止すると共に、前記逆噴射室に前記逆噴射エアーを供給して前記スイングアームのスイング速度を減速させ、
前記第3区間では、前記駆動室への前記駆動エアーの供給を再開すると共に、前記逆噴射室への前記逆噴射エアーの供給を停止して前記スイングアームのスイング速度をソフトランディング状態にする
ことを特徴とするローダ・アンローダの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187781(P2012−187781A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52395(P2011−52395)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】