説明

ロープ式エレベータ、及び油圧式エレベータからロープ式エレベータへのリニューアル方法

【課題】油圧式エレベータからロープ式エレベータへリニューアルする場合、油圧式エレベータの構成部品をロープ式エレベータの構成部品として有効に利用し、リニューアル工事の短縮化及び低コスト化を図る。
【解決手段】油圧式エレベータをリニューアルして形成され、巻上装置19に巻き掛けられたロープ28に乗かご3とつり合い重り21とが吊り下げられたロープ式エレベータ16であって、つり合い重り21は、油圧式エレベータにおいて用いられていたジャッキ5に昇降可能に支持されていた中空状のプランジャ6内に重り材22を充填して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式エレベータをリニューアルして形成したロープ式エレベータ、及び油圧式エレベータからロープ式エレベータへのリニューアル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧式エレベータをロープ式エレベータにリニューアルする工事が行われている。このようなリニューアル工事では、油圧式エレベータのほとんどの構成部品、例えば、油圧ユニット、油圧配管、ジャッキ、プランジャー、乗かご等を撤去し、巻上装置や乗かご等の新たな構成部品を設置することが一般的であり、このリニューアル工事には多大な時間と手間とコストとがかかっている。
【0003】
一方、下記特許文献1に記載されたように、油圧式エレベータをロープ式エレベータにリニューアルする場合、油圧式エレベータの構成部品であるプランジャを撤去せずにロープ式エレベータの構成部品として利用したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−37563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたロープ式エレベータにおいては、つり合い重りを新規に設置する必要があり、つり合い重りを設置するスペースをエレベータ昇降路内に確保することが困難である。
【0006】
したがって、エレベータ昇降路内につり合い重りを設置するスペースを確保できない場合には、特許文献1に記載されたような方法で油圧式エレベータからロープ式エレベータにリニューアルすることは困難であった。
【0007】
また、つり合い重りを設置するスペースを確保できた場合でも、つり合い重りを新たに設置するため、コスト上の負担が大きい。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、油圧式エレベータからロープ式エレベータにリニューアルする場合、油圧式エレベータの構成部品をロープ式エレベータの構成部品として有効に利用し、リニューアル工事の短縮化及び低コスト化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、油圧式エレベータをリニューアルして形成され、巻上装置に巻き掛けられたロープに乗かごとつり合い重りとが吊り下げられたロープ式エレベータであって、前記つり合い重りは、前記油圧式エレベータにおいて用いられていたジャッキに昇降可能に支持されていた中空状のプランジャ内に重り材を充填して形成されていることである。
【0010】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、油圧式エレベータをリニューアルして形成され、巻上装置に巻き掛けられたロープに乗かごとつり合い重りとが吊り下げられたロープ式エレベータであって、前記つり合い重りは、前記油圧式エレベータにおいて用いられていたジャッキとこのジャッキに昇降可能に支持されていた中空状のプランジャとを一体に昇降可能に連結するとともに前記プランジャ内に重り材を充填して形成され、前記つり合い重りの下部に下部案内装置が設けられ、前記下部案内装置を上下方向摺動可能に案内するつり合い重りレールがエレベータ昇降路内に上下方向に延出して設けられている、ことである。
【0011】
本発明の実施の形態に係る第3の特徴は、油圧式エレベータをロープ式エレベータにリニューアルするエレベータのリニューアル方法であって、前記油圧式エレベータの油圧ユニットと油圧配管とを撤去するステップと、前記油圧式エレベータのジャッキに昇降可能に支持された中空状のプランジャ内に重り材填してつり合い重りを形成するステップと、
新たに設置した巻上装置にロープを巻き掛け、前記ロープに乗かごと前記つり合い重りとを吊り下げるステップと、を備えることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、油圧式エレベータの構成部品をロープ式エレベータの構成部品として有効に利用することができ、油圧式エレベータからロープ式エレベータへのリニューアル工事を短縮することができるとともに低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態のロープ式エレベータを示す正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】つり合い重りを示す縦断正面図である。
【図4】つり合い重りの上部側の支持構造を示す平面図である。
【図5】緩衝器と潤滑油の供給構造を示す縦断正面図である。
【図6】リニューアル前の油圧式エレベータを示す正面図である。
【図7】その平面図である。
【図8】リニューアルに際しての撤去対象部品を撤去した油圧式エレベータを示す正面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態のロープ式エレベータを示す正面図である。
【図10】つり合い重りの一部を示す縦断正面図である。
【図11】つり合い重りの一部を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を、図1ないし図8に基づいて説明する。図6及び図7は既存の油圧式エレベータ1を示すもので、この油圧式エレベータ1は、建物内に形成されたエレベータ昇降路2内に昇降可能に設置された乗かご3と、乗かご3を昇降させる油圧機構とを備えている。油圧機構は、エレベータ昇降路2内のピットの底部に固定されたスタンド4、スタンド4の上部に固定されたジャッキ5、ジャッキ5に昇降可能に支持されたプランジャ6、ジャッキ5に対してオイルを出し入れする油圧ユニット7、油圧ユニット7とジャッキ5との間に接続された油圧配管8等により構成されている。なお、プランジャ6は軽量化を図るため、中空円筒状のパイプ材が用いられている。プランジャ6の上端部には、プランジャシーブ9と案内装置10とが取付けられている。プランジャシーブ9には、プランジャ6の伸縮動作を乗かご3に伝えて乗かご3を昇降させるためのロープ11が巻き掛けられている。
【0016】
さらに、油圧式エレベータ1を構成する他の部品として、エレベータ昇降路2内には、上下方向に延出して乗かご3を昇降可能に案内する一対のかごレール12、上下方向に延出して案内装置10を昇降可能に案内する一対のプランジャレール13、ピットの底部に設けられた乗りかご3用の緩衝器13a等が設けられている。
【0017】
乗かご3の外周側下部にはかご側ロープヒッチ14が固定され、スタンド4にはスタンド側ロープヒッチ15が固定されている。プランジャシーブ9に巻き掛けられているロープ11の一端がかご側ロープヒッチ14に固定され、ロープ11の他端がスタンド側ロープヒッチ15に固定されている。
【0018】
この油圧式エレベータ1では、油圧ユニット7側からジャッキ5にオイルが供給されると、ジャッキ5内の油圧上昇によりプランジャ6がプランジャシーブ9と共に上昇し、プランジャシーブ9の上昇に伴なって乗かご3が上昇する。また、ジャッキ5から油圧ユニット7側にオイルが戻されると、ジャッキ5内の油圧低下によりプランジャ6がプランジャシーブ9と共に下降し、プランジャシーブ9の下降に伴なって乗かご3が下降する。
【0019】
なお、この油圧式エレベータ1では、乗かご3の昇降寸法とプランジャシーブ9の昇降寸法との関係は2:1である。また、プランジャシーブ9はかご側ロープヒッチ14より常に上方に位置しており、乗かご3の昇降時にかご側ロープヒッチ14がプランジャシーブ9に干渉するという事態は発生しない。
【0020】
油圧式エレベータ1をロープ式エレベータ16(図1,2参照)にリニューアルする場合には、図8に示すように、油圧式エレベータ1から、油圧ユニット7と油圧配管8とプランジャシーブ9と案内装置10とロープ11との各部品を撤去する。油圧式エレベータ1から撤去したこれらの部品以外の部品については、リニューアルするロープ式エレベータ16において使用する。
【0021】
図1及び図2は、リニューアルしたロープ式エレベータ16を示すもので、エレベータ昇降路2の上部にマシンベース17が設置され、マシンベース17上に、巻上シーブ18を備えた巻上装置19とそらせシーブ20とが設置されている。
【0022】
また、油圧式エレベータ1のプランジャ6を用いてつり合い重り21が形成されている。このつり合い重り21は、図3に示すように、プランジャ6の中空部分内に重り材22を充填することにより形成されている。重り材22としては、比重が大きく経年変化の少ない部材、例えば、直径が1〜2mmの鉄球や、鉄粉等を用いることができる。プランジャ6内への重り材22の充填は、プランジャ6の上端に固定された蓋部24aに形成されている吊ボルト用ネジ穴24から行なわれる。
【0023】
吊ボルト用ネジ穴24は、油圧式エレベータ1において案内装置10やプランジャシーブ9がネジ止めされていた箇所であり、リニューアルのために案内装置10やプランジャシーブ9を撤去し、重り材22を充填した後は、取付基部25がネジ止めされている。取付基部25には、つり合い重り用シーブ26と上部案内装置27とが取付けられている。
【0024】
つり合い重り用シーブ26と巻上シーブ18とそらせシーブ20とにはロープ28が巻き掛けられており、ロープ28の一端がかご側ロープヒッチ14に固定され、ロープ28の他端がスタンド側ロープヒッチ15に固定されている。なお、つり合い重り用シーブ26と巻上シーブ18とそらせシーブ20とかご側ロープヒッチ14とは、略同一の垂直面内に位置している。また、ロープ式エレベータ16において使用されている乗かご3は、油圧式エレベータ1において用いられていた乗かご3がそのまま使用されている。
【0025】
つり合い重り用シーブ26の直径は、図1及び図4に示すように、つり合い重り用シーブ26の垂直方向の投影面内にかご側ロープヒッチ14が入らない寸法に形成されている。
【0026】
上部案内装置27は、つり合い重り21をプランジャレール13に沿って上下方向摺動可能に案内する装置である。上部案内装置27は、図4に示すように、取付基部25からこの取付基部25の両側に位置するプランジャレール13に向けて延出するロッド29a,29bを有し、ロッド29a,29bの先端側にプランジャレール13に係合する係合部30が形成されている。かご側ロープヒッチ14の反対方向に延出している一方のロッド29aは、取付基部25を両側から挟む両持ち支持構造とされている。一方、かご側ロープヒッチ14側に延出している他方のロッド29bは、このロッド29bの垂直方向の投影面内にかご側ロープヒッチ14が入らない形状である片持ち支持構造とされ、乗かご3が昇降する場合にかご側ロープヒッチ14と干渉しないようになっている。片持ち支持構造のロッド29bは、両持ち支持構造のロッド29aに比べて厚肉材料で形成され、及び、ロッド29aとロッド29bとは強度が略同じになるように形成されている。
【0027】
ジャッキ5の上部には、図5及び図1に示すように、つり合い重り21が落下した場合にその衝撃を緩衝するためのつり合い重り22用の緩衝器31が設けられている。この緩衝器31は、コイルをつり合い重り21の外周に摺動可能に嵌合させることにより構成されている。つり合い重り21が落下した場合、つり合い重り21の上端部に固定された蓋部24a、又は、蓋部24aにネジ止めされた取付基部25が緩衝器31に衝突し、落下の衝撃が緩衝される。
【0028】
プランジャレール13には、図5及び図1に示すように、潤滑油を貯留した注油器32が取付けられ、注油器32には、ジャッキ5の上端部に向けて潤滑油を導く油路33が設けられている。ジャッキ5の上端部には、つり合い重り21の外周面に摺動可能に接触するオイルシール34が設けられており、注油器32から油路33を経由する潤滑油がオイルシール34に対して供給される。なお、このオイルシール34は、油圧式エレベータ1においても使用されていた部材である。
【0029】
このような構成において、図6及び図7に示した油圧式エレベータ1を図1及び図2に示したロープ式エレベータ16にリニューアルする場合には、まず、図8に示すように、リニューアルする際の撤去対象部品である、油圧ユニット7と油圧配管8とプランジャシーブ9と案内装置10とロープ11とを撤去する。なお、これらの撤去対象部品以外の部品については、リニューアルしたロープ式エレベータ16において使用する。
【0030】
ついで、リニューアルしたロープ式エレベータ16において必要となる部品であって油圧式エレベータ1では使用されていなかった部品、例えば、巻上装置19、つり合い重り21、つり合い重り用シーブ26、ロープ28、緩衝器31、注油器32等を追加する。
【0031】
そして、追加したロープ28を巻上シーブ19とつり合い重り用シーブ26とそらせシーブ20とに巻き掛け、ロープ28の一端をかご側ロープヒッチ14に固定するとともにロープ28の他端をスタンド側ロープヒッチ15に固定することにより、ロープ28への乗かご3とつり合い重り21との吊り下げが行なわれ、ロープ式エレベータ16へのリニューアルが終了する。
【0032】
追加する部品のうち、つり合い重り21は、油圧式エレベータ1において使用していたプランジャ6内に鉄球や鉄粉等の重り材22を充填することにより形成されている。
【0033】
したがって、油圧式エレベータ1からロープ式エレベータ16へリニューアルする場合に、油圧式エレベータ1のプランジャ6及びこのプランジャ6を昇降可能に支持していたジャッキ5を撤去する必要がなくなり、その撤去に要する手間と時間と費用とを削減することができる。
【0034】
さらに、つり合い重り21を、プランジャ6内に重り材22を充填することにより形成しているので、つり合い重り21を新規に設ける必要がなく、コストの削減を図ることができる。しかも、つり合い重り21を設置するための新たな設置スペースを必要とせず、つり合い重り21を設置する設置スペースを確保するという問題を生ずることなく油圧式エレベータ1からロープ式エレベータ16へのリニューアルを行うことができる。
【0035】
また、プランジャ6を利用してつり合い重り21が形成され、つり合い重り用シーブ26がプランジャシーブ9と略同じ位置に取付けられている。このため、ロープ式エレベータ16のロープ28の設置位置と、油圧式エレベータ1のロープ11の設置位置とが略同じ位置となる。このため、ロープ28の一端をかご側ロープヒッチ14に固定するとともにロープ28の他端をスタンド側ロープヒッチ15に固定することができ、油圧式エレベータ1で使用していた乗かご3をそのままロープ式エレベータ16において使用することができる。したがって、ロープ式エレベータ16へのリニューアルに際して乗かご3を交換又は改修する必要がなくなり、この点からも、ロープ式エレベータ16へリニューアルする場合に要する手間と時間と費用とを削減することができる。
【0036】
また、図4及び図1に示すように、つり合い重り用シーブ26の直径が、つり合い重り用シーブ26の垂直方向の投影面内にかご側ロープヒッチ14が入らない寸法に形成されている。したがって、乗かご3の昇降時に、かご側ロープヒッチ14がつり合い重り用シーブ26に干渉することを防止することができ、その干渉によるつり合い重り用シーブ26やかご側ロープヒッチ14の損傷を防止することができる。
【0037】
なお、このロープ式エレベータ16においては、乗かご3の昇降時における乗かご3の昇降寸法とつり合い重り21の昇降寸法とが2:1であり、かご側ロープヒッチ14がつり合い重り用シーブ26の上方に位置する場合と下方に位置する場合とが発生する。このため、乗かご3の昇降時にかご側ロープヒッチ14とつり合い重り用シーブ26との干渉を防止する対策を講じる必要が生じ、その対策として、上述したように、つり合い重り用シーブ26の直径を、つり合い重り用シーブ26の垂直方向の投影面内にかご側ロープヒッチ14が入らない寸法としている。
【0038】
さらに、図4に示すように、つり合い重り21の上部に連結されている上部案内装置27のロッド29bは片持ち支持構造とされ、乗かご3が昇降する場合にかご側ロープヒッチ14との干渉を避けることができる。したがって、乗かご3の昇降時に、かご側ロープヒッチ14が上部案内装置27に干渉することを防止することができ、その干渉による上部案内装置27やかご側ロープヒッチ14の損傷を防止することができる。
【0039】
また、図5に示すように、ジャッキ5の上部につり合い重り21用の緩衝器31が設けられているため、つり合い重り21が落下する事態が発生しても、つり合い重り21の落下に伴なう重大な事故の発生を防止することができる。
【0040】
また、図5に示すように、注油器32を設けてオイルシール34に潤滑油を供給しているため、ロープ式エレベータ16へのリニューアルによって油圧ユニット7からのオイル供給がなくなったオイルシール34の潤滑を良好に行なうことができ、オイルシール34の耐久性を維持することができる。
【0041】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を、図9ないし図11に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態で説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
ロープ式エレベータ41は油圧式エレベータ1(図6,7参照)をリニューアルして形成したエレベータであり、このロープ式エレベータ41の基本的構造は、第1の実施の形態のロープ式エレベータ16と同じである。
【0043】
第2の実施の形態のロープ式エレベータ41と第1の実施の形態のロープ式エレベータ16との異なる点は、つり合い重り42の構造である。
【0044】
つり合い重り42は、油圧式エレベータ1において用いられていたジャッキ5をスタンド4から取外し、ジャッキ5とこのジャッキ5に昇降可能に支持されていた中空状のプランジャ6とを一体に昇降可能に連結するとともに、プランジャ6内と、プランジャ6とジャッキ5との間の空間内とに、重り材22を充填して形成されている。
【0045】
プランジャ6内への重り材22の充填は、吊ボルト用ネジ穴24から行なわれる。プランジャ6とジャッキ5との間の空間内への重り材22の充填は、ジャッキ5の上端部に取付けられているオイルシール34とカバー43とを外して行なわれる。
【0046】
ジャッキ5とプランジャ6との連結は、図11に示すように、締結金具44を用いて行なわれている。締結金具44は、ネジ45によりカバー43に固定されており、さらに、吊ボルト用ネジ穴24にネジ止めされた取付基部25と締結金具44とがネジ46により固定されている。
【0047】
つり合い重り42の下部には、下部案内装置47が取付けられている。下部案内装置47は、つり合い重り42の下部をつり合い重りレール48に沿って上下方向摺動可能に案内する装置であり、つり合い重りレール48に向けて延出するロッド49と、ロッド49の先端部に設けられてつり合い重りレール48に係合する係合部50とを備えている。なお、ロッド49は、ロッド49の垂直方向の投影面内にかご側ロープヒッチ14が入らない形状に形成され、乗かご3が昇降する場合にかご側ロープヒッチ14と干渉しないようになっている。
【0048】
つり合い重りレール48は、プランジャレール13の下端部にこのプランジャレール13を延長するように連結されている。
【0049】
スタンド4の上部には、つり合い重り42が落下した場合にその衝撃を緩衝するためのつり合い重り42用の緩衝器51が設けられている。
【0050】
このような構成において、図6及び図7に示した油圧式エレベータ1を図9に示したロープ式エレベータ41にリニューアルする場合には、まず、図8に示すように、リニューアルする際の撤去対象部品である、油圧ユニット7と油圧配管8とプランジャシーブ9と案内装置10とロープ11とを撤去し、これらの撤去対象部品以外の部品については、リニューアルしたロープ式エレベータ16において使用する。
【0051】
ついで、リニューアルしたロープ式エレベータ16において必要となる部品であって油圧式エレベータ1では使用されていなかった部品、例えば、巻上装置19、つり合い重り42、つり合い重り用シーブ26、ロープ28、つり合い重り用レール48、緩衝器51等を追加する。
【0052】
そして、追加したロープ28を巻上シーブ19とつり合い重り用シーブ26とそらせシーブ20とに巻き掛け、ロープ28の一端をかご側ロープヒッチ14に固定するとともにロープ28の他端をスタンド側ロープヒッチ15に固定することにより、ロープ28への乗かご3とつり合い重り42との吊り下げが行なわれ、ロープ式エレベータ41へのリニューアルが終了する。
【0053】
追加する部品のうち、つり合い重り42は、油圧式エレベータ1において使用していたジャッキ5をスタンド4から取外し、ジャッキ5とプランジャ6とを一体に昇降可能に連結するとともに、プランジャ6内と、プランジャ6とジャッキ5との間の空間内とに、重り材22を充填することにより形成されている。
【0054】
したがって、油圧式エレベータ1からロープ式エレベータ41へリニューアルする場合に、油圧式エレベータ1のプランジャ6及びこのプランジャ6を昇降可能に支持していたジャッキ5を撤去する必要がなくなり、その撤去に要する手間と時間と費用とを削減することができる。
【0055】
さらに、つり合い重り42を、プランジャ6内と、プランジャ6とジャッキ5との間の空間内とに、重り材22を充填することにより形成しているので、つり合い重り42を新規に設ける必要がなく、コストの削減を図ることができる。しかも、つり合い重り42を設置するための新たな設置スペースを必要とせず、つり合い重り42を設置する設置スペースを確保するという問題を生ずることなく油圧式エレベータ1からロープ式エレベータ41へのリニューアルを行うことができる。
【0056】
また、つり合い重り42は、ジャッキ5とプランジャ6とを連結し、プランジャ6内と、プランジャ6とジャッキ5との間の空間内とに、重り材22を充填することにより形成しているため、つり合い重り42の重量を増大させることができ、乗かご3が大型の場合であっても重量の大きいつり合い重り42を確保することができ、油圧式エレベータ1からロープ式エレベータ41へのリニューアルを行うことができる。
【0057】
また、つり合い重り42の下部に下部案内装置47を設け、プランジャレール13の下端部にこのプランジャレール13を延長させるようにつり合い重りレール48を連結し、下部案内装置47をつり合い重りレール48に上下方向摺動可能に係合させている。このため、つり合い重り42は、上部を上部案内装置27により支持され、下部を下部案内装置47とにより支持されて、円滑に昇降する。
【0058】
なお、このロープ式エレベータ41のつり合い重り42においては、プランジャ6内と、プランジャ6とジャッキ5との間の空間内とに、重り材22を充填した場合を例に挙げて説明したが、乗かご3の重量との関係から、プランジャ6内にのみ重り材22を充填し、プランジャ6とジャッキ5との間の空間内には重り材22を充填しなくてもよい場合がありうる。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧式エレベータ
3 乗かご
4 スタンド
5 ジャッキ
6 プランジャ
7 油圧ユニット
8 油圧配管
13 プランジャレール
14 かご側ロープヒッチ
15 スタンド側ロープヒッチ
16 ロープ式エレベータ
19 巻上装置
21 つりあい重り
22 重り材
26 つり合い重り用シーブ
27 上部案内装置
28 ロープ
31 緩衝器
41 ロープ式エレベータ
42 つり合い重り
47 下部案内装置
48 つり合い重りレール
51 緩衝器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式エレベータをリニューアルして形成され、巻上装置に巻き掛けられたロープに乗かごとつり合い重りとが吊り下げられたロープ式エレベータであって、
前記つり合い重りは、前記油圧式エレベータにおいて用いられていたジャッキに昇降可能に支持されていた中空状のプランジャ内に重り材を充填して形成されていることを特徴とするロープ式エレベータ。
【請求項2】
油圧式エレベータをリニューアルして形成され、巻上装置に巻き掛けられたロープに乗かごとつり合い重りとが吊り下げられたロープ式エレベータであって、
前記つり合い重りは、前記油圧式エレベータにおいて用いられていたジャッキとこのジャッキに昇降可能に支持されていた中空状のプランジャとを一体に昇降可能に連結するとともに前記プランジャ内に重り材を充填して形成され、
前記つり合い重りの下部に下部案内装置が設けられ、
前記下部案内装置を上下方向摺動可能に案内するつり合い重りレールがエレベータ昇降路内に上下方向に延出して設けられている、
ことを特徴とするロープ式エレベータ。
【請求項3】
前記乗かごは、前記油圧式エレベータにおいて用いられていた乗かごがそのまま使用され、前記乗かごに設けられていたかご側ロープヒッチと、前記油圧式エレベータの前記ジャッキが取付けられていたスタンドに設けられていたスタンド側ロープヒッチとに、前記ロープの両端が連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載のロープ式エレベータ。
【請求項4】
前記ジャッキの上部に、前記つり合い重り用の緩衝器が設けられていることを特徴とする請求項1記載のロープ式エレベータ。
【請求項5】
前記油圧式エレベータの前記ジャッキが取付けられていたスタンドの上部に、前記つり合い重り用の緩衝器が設けられていることを特徴とする請求項2記載のロープ式エレベータ。
【請求項6】
前記つり合い重りの上部に前記ロープが巻き掛けられるつり合い重り用シーブが設けられ、
前記つり合い重り用シーブは、このつり合い重り用シーブの垂直方向の投影面内に前記かご側ロープヒッチが入らない寸法に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のロープ式エレベータ。
【請求項7】
前記つり合い重りの上部に連結され、前記油圧式エレベータにおいて用いられていた前記プランジャを上下方向摺動可能に案内するプランジャレールにより上下方向摺動可能に案内される上部案内装置が設けられ、
前記上部案内装置は、この上部案内装置の垂直方向の投影面内に前記かご側ロープヒッチが入らない形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のロープ式エレベータ。
【請求項8】
油圧式エレベータをロープ式エレベータにリニューアルするエレベータのリニューアル方法であって、
前記油圧式エレベータの油圧ユニットと油圧配管とを撤去するステップと、
前記油圧式エレベータのジャッキに昇降可能に支持された中空状のプランジャ内に重り材を充填してつり合い重りを形成するステップと、
新たに設置した巻上装置にロープを巻き掛け、前記ロープに乗かごと前記つり合い重りとを吊り下げるステップと、
を備えることを特徴とするエレベータのリニューアル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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