説明

ローヤルゼリー含有組成物

【課題】固体状ローヤルゼリーにおいて、経時的な外観の変色を防止することができるローヤルゼリー含有組成物を提供する。
【解決手段】本発明のローヤルゼリー含有組成物は、ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られる。好ましくは、デンプン及びデキストロース当量が3以下のデキストリンが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体状、例えば粉末状ローヤルゼリーの保存中における変色を防止したローヤルゼリー含有組成物に関し、ローヤルゼリーと特定のデンプン等を溶媒中で溶解した後、凍結乾燥することより得られるローヤルゼリー含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ローヤルゼリーは、羽化後3〜15日の雌のミツバチが下咽頭腺及び大腮腺から分泌する分泌物を混合して作るゼリー状の物質で、特有のタンパク質、脂肪酸及びミネラル等が含有されていることが知られている。ローヤルゼリーは、血圧降下作用、抗腫瘍作用、創傷治癒促進、抗菌作用等の種々の生理作用を有していることが知られている。したがって、従来よりローヤルゼリーは、栄養価の高い健康食品のみならず、医薬品、化粧品等の用途にも用いられてきた。
【0003】
しかしながら、ローヤルゼリーは、保存安定性が悪く、経時的に空気中の酸素によって成分が酸化し、外観が変色するという問題があった。そこで、例えば特許文献1に開示されるように、ローヤルゼリーをカプセルに充填することにより保存安定性を高める方法が知られている。より具体的には、凍結乾燥したローヤルゼリーと油脂等を混合した後、ソフトカプセルに充填する方法について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−314283号公報
【特許文献2】特開2007−75062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ローヤルゼリーをカプセルに充填する方法であっても、未だ外観の変色抑制効果は十分でないという問題があった。また、カプセル形状のため用途が限られるとともに、また、カプセル充填のための製造装置等が必要になるという問題もあった。
【0006】
本発明は、特定のデンプン等をローヤルゼリーと混合し、溶媒中で溶解させた後、凍結乾燥処理することにより、経時的な変色を防止することができることを発見したことに基づくものである。
【0007】
ところで、従来より、特許文献2に開示されるように、錠剤又は粉末状ローヤルゼリーを製造する際に賦形剤としてデンプンを配合する構成が知られている。しかしながら、ローヤルゼリーとデンプン等を溶媒中で溶解させた後、凍結乾燥する方法については知られていない。
【0008】
本発明の目的とするところは、固体状ローヤルゼリーにおいて、経時的な外観の変色を防止することができるローヤルゼリー含有組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のローヤルゼリー含有組成物において、ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が3以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のローヤルゼリー含有組成物において、前記ローヤルゼリーは、プロテアーゼ及び多糖類分解酵素から選ばれる少なくとも一種を用いて処理されたものであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のローヤルゼリー含有組成物において、前記ローヤルゼリーの固形分の含有量と、前記デンプン及び前記デキストリンから選ばれる少なくとも一種の含有量の質量比は、4〜20:1であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固体状ローヤルゼリーにおいて、経時的な外観の変色を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のローヤルゼリー含有組成物を具体化した実施形態を説明する。
本実施形態のローヤルゼリー含有組成物は、ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種(以下、「デンプン等」という)を溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られる。かかる構成により、最終的に得られる固体状、例えば粉末状、粒子状、及び顆粒状のローヤルゼリーの経時的な変色(例えば褐変)を抑制することができる。
【0015】
原料のローヤルゼリーとしては、生ローヤルゼリー及び生ローヤルゼリーを凍結乾燥処理等により乾燥させて粉末化したローヤルゼリー粉末(FD−RJ)のいずれも使用することができる。本実施形態において使用される生ローヤルゼリー及び乾燥ローヤルゼリーの産地は、特に限定されないが、例えば中国、台湾、日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、ブラジル等の南アメリカ諸国、オセアニア諸国のいずれでもよい。
【0016】
さらに原料ローヤルゼリーとしては、前処理、例えば酵素処理、及び酸・アルカリ処理を行ったものを適用してもよい。例えば、低アレルゲン化するため又は抗酸性向上のため、ローヤルゼリーに対し特定のプロテアーゼ(蛋白質加水分解酵素)及び多糖類分解酵素を用いて処理を行う方法が知られているが、かかる酵素処理ローヤルゼリーを使用してもよい。
【0017】
プロテアーゼとしては、例えば、パパイン、フィチン、ブロメライン、マイクロバイアル・アスパルティック・プロテアーゼの一種アスペルギロペプチダーゼA、ペプシン、パンクレアチン、及びバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)由来の中性プロテアーゼ(例えばプロテアーゼN「アマノ」G(アマノエンザイム社製))が挙げられる。多糖類分解酵素としては、例えばセルラーゼ、アビセラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコシダーゼ、マンナナーゼ(例えばスミチームACH(新日本化学工業社製))、マンノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、及びキシラナーゼが挙げられる。酵素処理は、ローヤルゼリー、プロテアーゼ又は多糖類分解酵素、及び水(又は緩衝液)を含む反応液を、所定条件下でインキュベートすることにより実施される。酵素処理の処理条件は、酵素の種類、反応温度、酵素の力価等により適宜設定される。
【0018】
デンプン等は、ローヤルゼリーの保存期間中における変色を防止するために配合される。デキストリンが用いられる場合、デキストロース当量(DE:Dextrose Equivalent)が18以下、好ましくは3以下、より好ましくは1以下である。デキストロース当量は、還元糖をグルコースとして測定し、その還元糖の全固形分に対する割合であり、デンプン分解物の分解度の指標となる。また、DEの最大は100であり、固形分の全てがブドウ糖であることを示す。100/DEは、デンプン分解物の重合度を示し、平均分子量の指標となる。
【0019】
デンプンの由来としては特に限定されず、例えば穀類デンプン、イモ類デンプン、豆類デンプン、野草類デンプン、幹茎デンプン、及びこれらの改質デンプン(加工デンプン)が挙げられる。より具体的には、コーンスターチ、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、サゴデンプン、及びこれらの改質デンプンが挙げられる。改質デンプンとは、デンプンに対して、アセチル化、エーテル化、エステル化、グラフト化、架橋化等の誘導体化処理、焙焼、酵素変性、酸化、酸処理等の分解処理、α化、部分α化、造粒処理、多孔質化等の加工を施すことにより、デンプン本来の物性を人為的に変化させたものをいう。より具体的には、例えばヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、及びリン酸架橋デンプン等が挙げられる。デキストリンとしては、例えばデンプンの加水分解により得られるマルトデキストリン(DE10以上且つ18以下)及びデキストリン(DE10未満)、シクロデキストリン、並びに難消化性デキストリン等が挙げられる。
【0020】
原料であるローヤルゼリーの固形分の含有量と、前記デンプン等の含有量の質量比は、好ましくは4〜20:1、より好ましくは5〜10:1である。ローヤルゼリーの固形分の含有量がデンプン等の含有量に対し4未満であると、デンプン等の比率が高くなるため、溶解時に溶液がゲル化し、混合性が低下するおそれがある。一方、ローヤルゼリーの固形分の含有量がデンプン等の含有量に対し20を超えると、デンプン等の比率が低くなるため、ローヤルゼリー含有組成物の変色抑制効果が低下するおそれがある。
【0021】
本実施形態のローヤルゼリー含有組成物の製造方法は、原料としてのローヤルゼリーと、デンプン等とを、溶媒中で溶解した後、凍結乾燥(フリーズドライ)することにより得られる。溶媒としては、例えば水、親水性有機溶媒(例えば、エタノール)、及びそれらの混合物が挙げられる。溶媒としては、デンプン等の溶解性、安全性の観点から水が好ましく適用される。
【0022】
溶媒として水が用いられる場合、水溶液中での溶解は、原料としてのローヤルゼリーと上記デンプン等を水溶液中で懸濁させた後、水溶液を加熱して溶解させる方法、及び予め加熱した水に原料としてのローヤルゼリーと上記デンプン等を添加し、溶解させる方法が挙げられる。また、水溶液に一方の原料のみを添加し、水溶液を加熱した後、もう一方の原料を添加してもよい。ローヤルゼリー及びデンプン等を溶解させるための水溶液の温度は、配合するデンプン等の種類により適宜設定される。デンプンが用いられる場合、好ましくは70〜100℃、より好ましくは80〜95℃に設定される。デキストロース当量が18以下のデキストリンが用いられる場合、30℃〜40℃で溶解させることが好ましい。かかる温度範囲内で溶解させることにより、加熱によるローヤルゼリーの着色を抑制することができる。溶媒中での溶解は、好ましくは溶液を攪拌しながら行われる。尚、原料としてのローヤルゼリーと上記デンプン等を水溶液中で懸濁させた後、水溶液を加熱して溶解させる場合、溶液の温度を測定しなくとも、加熱しながら成分が完全に溶解した時を溶液の透明度により目視で判断することができる。
【0023】
凍結乾燥は、公知の方法を適宜採用することができる。溶媒として水が用いられる場合、たとえば上記のように得られた水溶液を0℃以下、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃に冷却することにより凍結される工程、次に減圧雰囲気下に置くことにより水を昇華させて乾燥する工程により実施される。凍結乾燥することにより、ローヤルゼリー含有組成物の変色・変質をより抑制することができる。
【0024】
上記のように得られたローヤルゼリー含有組成物は、経時的な変色が抑制される。したがって、保存期間中における外観の変化を抑制することができる。上記実施形態のローヤルゼリー含有組成物は、様々な公知の用途、例えば飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等に適用することができる。
【0025】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態のローヤルゼリー含有組成物は、ローヤルゼリーとデンプン等を、溶媒中で溶解した後、凍結乾燥することにより得られる。したがって、ローヤルゼリー含有組成物の経時的な外観の変色を防止することができる。
【0026】
(2)好ましくは、前記デンプン等は、デンプン及びデキストロース当量が3以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種である。したがって、ローヤルゼリー含有組成物の経時的な外観の変色をより防止することができる。
【0027】
(3)好ましくは、前記ローヤルゼリーは、プロテアーゼ及び多糖類分解酵素から選ばれる少なくとも一種を用いて処理されたものである。特定の酵素処理されたローヤルゼリーに対しても経時的な外観の変色を防止することができる。
【0028】
(4)好ましくは、前記ローヤルゼリーの固形分の含有量と、前記デンプン等の含有量の質量比は、4〜20:1である。したがって、ローヤルゼリー含有組成物の経時的な外観の変色をより防止することができる。
【0029】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態におけるローヤルゼリー含有組成物は、ヒトが摂取する飲食品及び医薬品等に対して適用することができるのみならず、家畜の飼料にサプリメント、栄養補助食品、医薬品等として配合してもよい。
【0030】
・上記実施形態において、原料のローヤルゼリーは、生ローヤルゼリー又は凍結乾燥ローヤルゼリーを使用することができる。しかしながら、生ローヤルゼリー及び凍結乾燥ローヤルゼリーから選ばれる少なくとも一種より抽出溶媒を用いて得られる不溶性の分画を原料として使用してもよい。かかる構成においても、ローヤルゼリー含有組成物の経時的な変色を防止することができる。
【0031】
・上記実施形態において、ローヤルゼリー含有組成物中に公知の添加剤を配合してもよい。ローヤルゼリー含有組成物の用途が飲食品の場合、例えば糖類、香料、甘味料、油脂、基材、賦形剤、副素材、増量剤、保存料、及び酸化防止剤等が挙げられる。用途が医薬品又は医薬部外品の場合、例えば賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等が挙げられる。用途が化粧品の場合、例えば界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、増粘剤、抗脂漏剤、血行促進剤、美白剤、pH調整剤、色素顔料、防腐剤及び香料等が挙げられる。
【0032】
・上記実施形態において、ローヤルゼリー含有組成物はカプセル剤として構成してもよい。かかる構成により、保存安定性をより向上させることができる。
・上記実施形態において、「溶解」とは、溶媒にローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種が混合して均一な液相を形成する現象を示す。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1:熱水溶解試験>
(実施例1)
まず、生ローヤルゼリー(RJ)500gに水500mLを加え、pH7に調整することにより、酵素処理用のRJ希釈液を調製した。次に、前記RJ希釈液に、中性プロテアーゼを添加することにより、反応液を調整した。中性プロテアーゼとしてバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)由来の中性プロテアーゼを使用した。バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)由来の中性プロテアーゼは、プロテアーゼN「アマノ」G(天野エンザイム社製)を使用した。プロテアーゼN「アマノ」Gは、150000U/g以上の力価を有している。プロテアーゼN「アマノ」Gを上記酵素処理用のRJ希釈液に1.750g添加することにより、反応液を調製した。
【0034】
続いて、中性プロテアーゼを添加した反応液を50℃で4.5時間インキュベートすることにより、生ローヤルゼリー中のタンパク質をペプチド化する分解処理を実施した。酵素処理終了後、反応液をそのまま凍結乾燥し、粉末状にすることにより酵素処理RJを調製した。
【0035】
次に、上記酵素処理RJ20gに水94.2gを添加し、溶解することにより酵素処理RJ溶液を調製した。次に、酵素処理RJ溶液にコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))2.22gを添加し、90℃に加熱し、30分間攪拌することにより酵素処理RJ及びコーンスターチを水中に完全に溶解させた。次に、−30℃に冷却することにより凍結させて、減圧雰囲気で水を昇華させることにより乾燥することにより、実施例1のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0036】
(比較例1)
実施例1に記載される酵素処理RJ溶液にコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))2.22gを添加し、60℃に加熱し、30分間攪拌することにより酵素処理RJ及びコーンスターチを溶液中に懸濁させた(溶解していない)以外、実施例1と同様に実施し、比較例1のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0037】
(比較例2)
実施例1に記載される酵素処理RJ溶液にコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))2.22gを添加し、25℃で、30分間攪拌することにより酵素処理RJ及びコーンスターチを溶液中に懸濁させた(溶解していない)以外、実施例1と同様に実施し、比較例2のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0038】
(比較例3)
実施例1に記載される酵素処理RJ20gとコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))2.22gを混合することにより、比較例3のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0039】
尚、コントロールとして実施例1に記載される酵素処理RJを使用した。
(加速試験及び色差の測定)
各例のローヤルゼリー含有組成物又はコントロール10gに95%(v/w)エタノール1.6gをピペットで加え、スパーテルでよく混合した。次に、丸シャーレに移し、60℃の乾燥機で24時間乾燥処理することにより加速試験を行った。
【0040】
次に、色差計(日本電色工業社製)を用いて、CIE(国際照明委員会)L色空間表示系において、a値、b値、及びL値(JISZ8729)を測定した(n=3)。加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のL***値から、下記の(1)式によって加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物の色差(ΔE1)を算出した。
【0041】
ΔEi={(Li−L02+(ai−a02+(bi−b021/2…(1)
i:加速試験前又は加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のL*
i:加速試験前又は加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のa*
i:加速試験前又は加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のb*
0,a0,b0:加速試験前におけるローヤルゼリー含有組成物のL*値、a*値及びb*
次に、ΔE1から下記の(2)式によって各例の着色抑制率[%]を算出した。
【0042】
着色抑制率(%)=[1−(各例のΔE1/コントロールのΔE1)]×100…(2)
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

表1に示されるように、酵素処理RJとコーンスターチを熱水下で溶解させた後、凍結乾燥した実施例1は、着色抑制率が酵素処理RJとコーンスターチを溶解温度以下で懸濁させた比較例1,2及び単に粉末同士を混合した比較例3に比べて極めて優れていることが確認された。
【0044】
<試験例2:デキストロース当量(DE)を変化させた場合の褐変抑制試験>
デキストロース当量(DE)を変化させた場合の褐変抑制効果について試験した。
(実施例2)
実施例1においてコーンスターチの代わりにDE1未満の酸化デンプン(スタビローズS−10:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例2のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0045】
(実施例3)
実施例1においてコーンスターチの代わりにDE3のデンプン分解物(パインデックス♯100:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例3のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0046】
(実施例4)
実施例1においてコーンスターチの代わりにDE8のデンプン分解物(パインデックス♯1:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例4のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0047】
(実施例5)
実施例1においてコーンスターチの代わりにDE11のデンプン分解物(パインデックス♯2:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例5のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0048】
(実施例6)
実施例1においてコーンスターチの代わりにDE18の低粘度デキストリン(TK−16:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例6のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0049】
(比較例4)
実施例1においてコーンスターチの代わりにDE25のデンプン分解物(パインデックス♯3:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより比較例4のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0050】
尚、コントロールとして実施例1に記載される酵素処理RJを使用した。
(加速試験及び色差の測定)
試験例1と同様の方法により加速試験を行うとともに、加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のL***値から、上記の(1)式によって加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物の色差(ΔE1)を算出した。また、上記の(2)式より各例の着色抑制率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

表2に示されるように、DEの値が18以下の場合に、ローヤルゼリー含有組成物に対して褐変抑制効果が発揮されることが確認された。
【0052】
<試験例3:加工デンプンの種類を変えた場合の褐変抑制試験>
加工デンプンの種類を変えた場合の褐変抑制効果について試験した。
(実施例7)
実施例1においてコーンスターチの代わりにα化デンプン(マツノリンM:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例7のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0053】
(実施例8)
実施例1においてコーンスターチの代わりに部分α化デンプン(PCS:旭化成ケミカルズ社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例8のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0054】
(実施例9)
実施例1においてコーンスターチの代わりにヒドロキシプロピルデンプン(松谷ゆり:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例9のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0055】
(実施例10)
実施例1においてコーンスターチの代わりにアセチル化デンプンとしての酢酸デンプン(松谷さくら:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例10のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0056】
(実施例11)
実施例1においてコーンスターチの代わりに架橋化デンプンとしてのリン酸架橋デンプン(SMS707:松谷化学工業社製)を使用した以外、同様に実施することにより実施例11のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0057】
尚、コントロールとして実施例1に記載される酵素処理RJを使用した。
(加速試験及び色差の測定)
試験例1と同様の方法により加速試験を行うとともに、加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のL***値から、上記の(1)式によって加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物の色差(ΔE1)を算出した。また、上記の(2)式より各例の着色抑制率(%)を算出した。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

表3に示されるように、いずれの改質デンプンを使用した場合においても、ローヤルゼリー含有組成物に対して優れた褐変抑制効果を発揮することが確認された。
【0059】
<試験例4:RJに多糖類分解酵素を作用させた場合の褐変抑制試験>
実施例1において、RJに中性プロテアーゼ及びマンナナーゼを作用させたRJについて、褐変抑制効果を付与できるかについて試験した。
【0060】
(実施例12)
生ローヤルゼリーを凍結乾燥させて粉末化した乾燥RJパウダー20gに水94.2gを添加し、溶解した後、コーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製)2.22gを添加し、90℃に加熱し、30分間攪拌することにより乾燥RJパウダー及びコーンスターチを完全に溶解させた。次に、実施例1と同様の凍結乾燥することにより、実施例12のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0061】
(実施例13)
実施例12においてコーンスターチの代わりにパインデックス♯1を使用するとともに、パインデックス♯1を5g添加した以外、同様に実施することにより実施例13のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0062】
(実施例14)
生RJ400gに水133mLを加え、pH7.5に調整することにより、酵素処理用のRJ希釈液を調製した。次に、前記RJ希釈液に、実施例1と同様のプロテアーゼN「アマノ」G6.68g及びマンナナーゼとしてスミチームACH(新日本化学工業社製)0.12gを添加することにより、反応液を調整した。反応液を50℃で2時間反応させることにより第1分解工程を行った。前記第1分解工程後のRJ希釈液をpH7.5に再調整することによりpH調整工程を行った後、さらに50℃で14時間反応させることにより第2分解工程を行った。酵素処理終了後、反応液をそのまま凍結乾燥し、粉末状にしてプロテアーゼ・マンナナーゼ酵素処理RJを調製した。
【0063】
次に、上記プロテアーゼ・マンナナーゼ酵素処理RJ20gに水94.2gを添加し、溶解した後、コーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製)2.22gを添加し、90℃に加熱し、30分間攪拌することによりプロテアーゼ・マンナナーゼ酵素処理RJ及びコーンスターチを完全に溶解させた。次に、実施例1と同様の凍結乾燥することにより、実施例14のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0064】
(実施例15)
実施例14においてコーンスターチの代わりにパインデックス♯1を使用するとともに、パインデックス♯1を5g添加した以外、同様に実施することにより実施例15のローヤルゼリー含有組成物を調製した。
【0065】
尚、実施例12,13のコントロールとして生ローヤルゼリーを凍結乾燥させて粉末化したものを使用した。実施例14,15のコントロールとしてプロテアーゼ・マンナナーゼ酵素処理RJを使用した。
【0066】
(加速試験及び色差の測定)
試験例1と同様の方法にて加速試験を行うとともに、加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のL***値から、上記の(1)式によって加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物の色差(ΔE1)を算出した。また、上記の(2)式より各例の着色抑制率(%)を算出した。結果を表4に示す。
【0067】
【表4】

表4に示されるように、RJが多糖類分解酵素(マンナナーゼ)で処理されたローヤルゼリー含有組成物に対しても、褐変抑制効果を発揮することが確認された。
【0068】
<試験例5:RJとデンプン等の含有比率を変化させた場合の褐変抑制試験>
RJとデンプン等の含有比率を変化させた場合の褐変抑制効果について試験した。
(実施例16)
実施例1に記載される酵素処理RJ20gに水94.2gを添加し、溶解することにより酵素処理RJ溶液を調製した。次に、酵素処理RJ溶液にコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))4gを添加し、90℃に加熱し、30分間攪拌することにより酵素処理RJ及びコーンスターチを完全に溶解させた。次に、実施例1と同様の凍結乾燥することにより実施例16のローヤルゼリー含有組成物を調製した。実施例16のローヤルゼリー含有組成物は、酵素処理RJの含有量とコーンスターチの含有量の質量比は、80:20(4:1)である。
【0069】
(実施例17)
実施例1に記載される酵素処理RJ20gに水94.2gを添加し、溶解することにより酵素処理RJ溶液を調製した。次に、酵素処理RJ溶液にコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))3.53gを添加し、90℃に加熱し、30分間攪拌することにより酵素処理RJ及びコーンスターチを完全に溶解させた。次に、実施例1と同様の凍結乾燥することにより、実施例17のローヤルゼリー含有組成物を調製した。実施例17のローヤルゼリー含有組成物は、酵素処理RJの含有量とコーンスターチの含有量の質量比は、85:15(5.6:1)である。
【0070】
(実施例18)
実施例1に記載される酵素処理RJ20gに水94.2gを添加し、溶解することにより酵素処理RJ溶液を調製した。次に、酵素処理RJ溶液にコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))2.22gを添加し、90℃に加熱し、30分間攪拌することにより酵素処理RJ及びコーンスターチを完全に溶解させた。次に、実施例1と同様の凍結乾燥することにより、実施例18のローヤルゼリー含有組成物を調製した。実施例18のローヤルゼリー含有組成物は、酵素処理RJの含有量とコーンスターチの含有量の質量比は、90:10(9:1)である。
【0071】
(実施例19)
実施例1に記載される酵素処理RJ20gに水94.2gを添加し、溶解することにより酵素処理RJ溶液を調製した。次に、酵素処理RJ溶液にコーンスターチ(日食コーンスターチIPW(日本食品化工社製))1.05gを添加し、90℃に加熱し、30分間攪拌することにより酵素処理RJ及びコーンスターチを完全に溶解させた。次に、実施例1と同様の凍結乾燥することにより、実施例19のローヤルゼリー含有組成物を調製した。実施例19のローヤルゼリー含有組成物は、酵素処理RJの含有量とコーンスターチの含有量の質量比は、95:5(19:1)である。
【0072】
コントロールとして実施例1に記載される酵素処理RJを使用した。
(加速試験及び色差の測定)
各例のローヤルゼリー含有組成物を40℃の恒温機で1ヶ月間保存することにより加速試験を行った。次に、加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物のL***値から、上記の(1)式によって加速試験前及び加速試験後におけるローヤルゼリー含有組成物の色差(ΔE1)を算出した。また、上記の(2)式より各例の着色抑制率(%)を算出した。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】

表5に示されるように、コーンスターチの含有量が増加すると着色抑制率も上昇することが確認された。しかしながら、コーンスターチの含有量が増加すると(特に実施例16)、熱溶解時に溶液がゲル化する傾向にあり、溶液の混合性が低下することが確認された。
【0074】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。(a)ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られるローヤルゼリー含有組成物の製造方法。
(b)固体状ローヤルゼリーの保存安定化方法において、ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解する工程、次に凍結乾燥する工程からなることを特徴とする固体状ローヤルゼリーの保存安定化方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られることを特徴とするローヤルゼリー含有組成物。
【請求項2】
ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が3以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られることを特徴とするローヤルゼリー含有組成物。
【請求項3】
前記ローヤルゼリーは、プロテアーゼ及び多糖類分解酵素から選ばれる少なくとも一種を用いて処理されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のローヤルゼリー含有組成物。
【請求項4】
前記ローヤルゼリーの固形分の含有量と、前記デンプン及び前記デキストリンから選ばれる少なくとも一種の含有量の質量比は、4〜20:1であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のローヤルゼリー含有組成物。